以下に図面を用いて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下で述べる各種スイッチの作用、特に各種スイッチの操作を組み合わせて電動リールにおける動作を変更する内容は、説明のための例示であって、電動リールの仕様に応じ適宜変更が可能である。以下におけるスプールの回転速度及び巻上速度、オンオフデューティの値、所定周期の長さ、正転駆動期間の長さ、逆転駆動期間の長さ、デューティ変化特性等は、説明のための例示であり、電動リールの仕様に応じ適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、電動リール10の外観図であり、図2は、電動リール10の断面図である。図1,2において、前後方向と上下方向と左右方向とを示す。前後方向は、略直方体である電動リール10のリール本体12の長手方向に沿った方向で、置き台部14、スプール16側が前方側、その逆方向が後方側である。上下方向は、リール本体12において、スプール16が設けられる面の側が上方側で、置き台部14が設けられる面の側が下方側である。置き台部14を船べり等にセットしたとき、下方側が重力方向となる。左右方向は、リール本体12において下方側を重力方向として、前後方向を示す前後方向軸の右方が右側、左方が左側である。図2は、右側から見た断面図に相当する。
リール本体12は、図示しないユーザが手に把持してフィット感がよい形状に形成された筐体ケース部である。リール本体12の材質は、意匠色を兼ねたブラック樹脂等の熱硬化性樹脂を用い、外表面は、メタリックブラック等の外装色塗装が施される。リール本体12の樹脂色、外装色は、電動リール10の機種によって異なる複数種類とできる。例えば、樹脂色として、ホワイト樹脂、グレー樹脂等を用いることができ、外装色として、メタリックレッド、ブルーシルバー、つや消しブラック、光沢ブラック等を用いることができる。置き台部14は、例えば船べり等に電動リール10を置いた場合に、電動リール10の前方側がやや上方側を向くようにするためのもので、樹脂材料を所定の形状に成形したものが用いられる。リール本体12の後方側に設けられるケーブル穴15は、モバイル電源等の高容量電源から直流電力を引き込むためのケーブル64(図6参照)を通す穴である。
スプール16は、電動リール10の糸巻き部分で、図2の断面図に示すように、糸6が巻かれる部分がV字形の谷形状を有するVスプールである。Vスプールにすることで、ラインと呼ばれる糸6を均一に巻取ることができ、おもり落下時にはスムーズな糸6の放出が可能になる。以下では、特に断らない限り、糸6をライン6と呼ぶ。スプール16は、中心軸17が適当な軸受を介してリール本体12に回転自在に支持される。
図3は、スプール16の回転状態の検出を示す図である。図3(a)は、スプール16の下方側の円形底面18に配置された2つの磁石MN,MSと、円形底面18に向かい合うリール本体12側に配置される2つのホール素子20,21の関係を示す図である。(b)は、2つのホール素子20,21の検出信号を示す図である。ホール素子20,21は、検出回路を含むホールICでもよい。
図3(a)に示すように、スプール16の下方側の円形底面18には、円形底面18の表面側がN極に着磁された磁石MNと、円形底面18の表面側がS極に着磁された磁石MSが互いに180度の円周角度を隔てて配置され埋めこまれる。スプール16の円形底面18に向かいあって、リール本体12側には、2つのホール素子20,21が互いに90度の円周角度を隔てて配置される。それぞれのホール素子20,21は、図3(b)に示すように、例えば、N極磁石を検出すると「H」レベルに検出信号が立ち上がり、S極磁石を検出すると「L」レベルに検出信号が立ち下がる交番検出方式で検出回路が構成される。ホール素子20とホール素子21のそれぞれにおいて、検出信号の1周期TSは、スプール16の1回転の時間を示すので、TSを用いてスプール16の回転速度が分かる。また、ホール素子20の検出信号とホール素子21の検出信号とは、1周期を電気角の360度として、90度の位相差を有するので、スプール16の回転方向が分かる。このように、交番検出回路の構成を用いることで、スプール16の正転、逆転を区別でき、また、スプール16の1回転、(1/2)回転を検出できる。スプール16のVスプールの寸法の一例を挙げると、スプール16の1回転は、ライン6の4.6cm、(1/2)回転は2.3cmに相当する。したがって、ライン6の先端のおもり8(図6参照)の水深位置は、分解能2.3cmで検出できる。
図2に戻り、リール本体12の内部には、公称電圧3Vの内部電源22として、単4のアルカリ電池が2つ直列に接続されて配置される。単4のアルカリ電池の電力容量には限りがあるので、これよりも高容量のモバイル電源等を利用することもできる。例えば、約5Vの端子電圧を有するモバイル電源等の外部電源60からの直流電力を利用する場合は、公称電圧3Vに近い約3.2V〜3.5Vの定電圧に降圧するレギュレータ電源回路62を内部電源22に置き換える(図6参照)。リール本体12の外部に設けられる外部電源60と、リール本体12の内部に配置されるレギュレータ電源回路62との間は、リール本体12の後方側に設けたケーブル穴15に適当なケーブル64を通して接続される。
制御部24は、電動リール10の動作を全体として制御するマイクロプロセッサである。制御部24には、モータ駆動回路25が接続される(図6、図7参照)。制御部24の機能の詳細については後述する。
電動のモータ26は、円筒形の外径を有し、出力軸28は、電動リール10の前後方向に延びる。出力軸28には、ゴムチューブが被覆される。したがって、出力軸28の円筒外周面は、ゴム面であり、このゴム面がスプール16の円形底面18に接触し、摩擦力を介して、スプール16を中心軸17周りに回転駆動する。
図4は、モータ26の出力軸28の回転方向と、スプール16の中心軸17回りの回転方向と、ライン6の巻上げ繰出しの関係を示す図である。ここでは、ライン6がスプール16に巻上げられる場合のスプール16の中心軸17回りの回転方向を巻上げ方向とし、スプール16の中心軸17回りの回転方向が巻上げ方向である場合のモータ26の出力軸28回りの回転方向をモータ26の正転方向とする。このとき、後述する表示部50の水深カウンタ部52は、数値が減少する。逆に、ライン6がスプール16から繰出される場合のスプール16の中心軸17回りの回転方向は繰出し方向で、スプール16の中心軸17回りの回転方向が繰出し方向である場合のモータ26の出力軸28回りの回転方向はモータ26の逆転方向である。このとき、表示部50の水深カウンタ部52は、数値が増加する。
図1、図2に戻り、クラッチレバー30は、モータ26の出力軸28の円筒外周面と、スプール16の円形底面18との関係について、ロック状態とフリー状態との間で切り替えるレバーである。クラッチレバー30は、通常はロック状態で、ユーザの操作によってのみフリー状態となる。ロック状態は、モータ26の出力軸28の円筒外周面と、スプール16の円形底面18とが互いに接触している状態で、モータ26が回転するときはスプール16も回転し、モータ26が回転しないときは、スプール16は回転がロックされて、ライン6は繰出されず、固定される。ユーザがクラッチレバー30をフリー状態の側に倒すと、クラッチレバー30はモータ26の出力軸28の円筒外周面を下方側に押し、図示しない傾斜機構の作用によって、図2の矢印及び二点鎖線で示すように、モータ26は下方側に傾斜し、モータ26の出力軸28の円筒外周面と、スプール16の円形底面18とは、離間状態となる。これにより、ライン6は自由状態となり、おもり8の自重によって、水中に繰出すことができる。クラッチレバー30がフリー状態の場合でも、傾斜したモータ26の出力軸28の外周円筒面にクラッチレバー30は接触しているので、モータ26が駆動されると、クラッチレバー30は出力軸28の回転方向に押され、自動的にロック状態に戻る。
電動リール10は、Aスイッチ32、Bスイッチ34、CLスイッチ36、CRスイッチ38、Dスイッチ40の5つのスイッチを備える。これらの内、Dスイッチ40を除く4つのスイッチは、ユーザが操作するユーザ操作子である。
Aスイッチ32は、リール本体12の上面において、表示部50よりも後方側に並べて配置される2つのスイッチの内の左側のスイッチである。Aスイッチ32の主たる機能は、内部電源22のオン/オフ操作である。Aスイッチ32は、ユーザが2秒以上押すことで、電動リール10における内部電源22のオン/オフを操作できる。内部電源22がオフのときは、制御部24のマイクロプロセッサは省電力待機状態(スリープ状態)で、表示部50は不点灯状態、ホール素子20,21の動作はオフ状態である。この状態でユーザがAスイッチ32を2秒以上押すと、内部電源22はオンとなり、制御部24のマイクロプロセッサは起動状態となり、表示部50は点灯状態となり、ホール素子20,21の動作はオン状態となる。さらにユーザがAスイッチ32をもう一度2秒以上押すと、内部電源22がオフ状態となる。以下、同様に、ユーザが2秒以上押すたびに、内部電源22のオン/オフが切り換わる。
Bスイッチ34は、リール本体12の上面において、表示部50よりも後方側に並べて配置される2つのスイッチの内の右側のスイッチである。Bスイッチ34の主たる機能は、ライン6のおもり8を停止させる棚位置を設定することである。棚位置とは、ユーザが釣り場において、釣りの対象とする魚がいる魚層と考える水深位置である。釣りの対象とする魚がワカサギのように底層を好む場合は、棚位置は、釣り場の底の位置である。棚位置は、ユーザが魚層と考える水深の位置であるので、釣り場の状況に応じてユーザが任意に設定できる。クラッチレバー30をフリー状態として、ライン6を水中に放出しておもり8の自重によって沈んでゆく任意の水深位置のところでユーザがBスイッチ34を2秒未満で押すと、その水深の位置が棚位置として設定され、制御部24はその棚位置を記憶する。設定された棚位置の利用の詳細は後述する。
CLスイッチ36、CRスイッチ38は、リール本体12の左右側面に配置される2つのスイッチで、左側面にCLスイッチ36が配置され、右側面にCRスイッチ38が配置される。CLスイッチ36、CRスイッチ38のそれぞれの主たる機能は、制御部24に対して、モータ26を駆動させてスプール16を回転させてライン6を巻上げることを要求するスイッチである。ライン6の巻上要求は、ユーザが右利きでも左利きでも行えるように、CLスイッチ36またはCRスイッチ38のいずれか一方を押すことで行える。ライン6の巻上げは、ユーザがCLスイッチ36またはCRスイッチ38のいずれか一方を押している期間中、継続して行われ、ユーザがCLスイッチ36及びCRスイッチ38の双方のいずれも押さなくなると、ライン6の巻上げは停止する。また、CLスイッチ36またはCRスイッチ38のいずれか一方を2秒以上押すことで、自動連続巻上となり、この場合には、再びCLスイッチ36またはCRスイッチ38のいずれか一方を2秒以上押すまで、ライン6の巻上げが自動的に継続する。したがって、CLスイッチ36、CRスイッチ38は、ユーザから見れば、ライン6の巻上げを行う巻上スイッチである。以下では、CLスイッチ36、CRスイッチ38を、特に断らない限り、巻上スイッチと呼ぶ。ライン6の巻上げは、予め設定されたスプール16の巻上速度に従って行われる。巻上速度は、最も低速のL速から、高速側に向って、1速、2速、3速、そして最も高速のH速の5段階の内の1つに設定できる。巻上速度の設定の詳細については後述する。
Dスイッチ40は、ユーザのCLスイッチ36またはCRスイッチ38のいずれか1の操作によってライン6が巻上げられ、電動リール10に対して所定の位置まで巻上げられたときにモータ26の回転を止めるリミットスイッチである。電動リール10に対して所定の位置は、船べり停止位置と呼ばれる。図2に示すように、ライン6には、適当な位置に船べりビーズ7が取り付けられる。Dスイッチ40を押すガイド部42の先端には、ライン6は通すが、船べりビーズ7は通さない大きさのリングが設けられる。ユーザのCLスイッチ36またはCRスイッチ38のいずれか1の操作によってライン6が巻上げられ、船べりビーズ7がガイド部42の先端のリングで止められると、ガイド部42が後方側に倒れ、Dスイッチ40をオンする。Dスイッチ40がオンすると、モータ26は回転を停止する。この状態が船べり停止位置で、表示部50において後述する水深カウンタ部52はリセットされて、水深位置=0である「00.0」を表示する。棚位置は、この船べり停止位置を基準とした水深位置で示される。例えば、棚位置=20.0mとは、船べり停止位置からライン6の先端のおもり8が20.0m水中に沈んだ位置である。
スプール16の外周に3箇所設けられる糸フック44は、ユーザが棚位置設定を機械的に行いたいと考えるときに用いられる棚位置セット手段である。ユーザが、棚位置と考える水深位置までライン6のおもり8が沈んだときに、3箇所の糸フック44のいずれか1箇所にライン6を巻き付ける。このようにすることで、次にクラッチレバー30をフリーにしてライン6を水中に放出すると、ライン6を巻き付けた糸フック44がスプール16の最も前方側に来たときにライン6の繰出しは停止する。このように、糸フック44は、棚位置でライン6の繰出しを停止させるラインストッパである。
スプール16の前方側に設けられるロッド取付穴46は、釣り竿(ロッド)4の根元を差し込んで固定するためのガイド穴である。
表示部50は、電動リール10の上方側の面上に配置される液晶ディスプレイである。表示部50の表示内容は、図5に示すように、水深カウンタ部52、巻上速度表示部54、モータ回転表示部56の3つの部分で構成される。
水深カウンタ部52の主たる機能は、船べり停止位置を基準としたおもり8の水深位置の表示である。水深カウンタ部52は、7セグメントの選択的な点灯・消灯で、0から9までの1桁の数字を表示する。これを3桁用い、間に小数点セグメントを点灯することで、00.0から99.9までの数字を表示する。表示される数値は、おもり8の水深位置をm単位で示す。おもり8の水深位置は、ホール素子20,21の検出信号に基づいて、船べり停止位置からのスプール16の回転数Nを算出し、4.6cm/回転の換算係数を用いて、ライン6の巻上げ長さまたは繰出し長さに換算し、これをm単位として求めることができる。
巻上速度表示部54の主たる機能は、スプール16の巻上速度の設定レベルの表示である。スプール16の巻上速度は、最も低速側のL速から最も高速のH速までの5段階の内の1つに設定できる。巻上速度表示部54が「L」と表示する場合は、スプール16の巻上速度がL速に設定されていることを示し、巻上速度表示部54が「H」と表示する場合は、スプール16の巻上速度が最もH速に設定されていることを示す。巻上速度の設定の一例を挙げると、L速は、スプール16が約13回転/sで、ライン6の巻上速度に換算すると約60cm/sであり、H速は、スプール16が約27回転/sで、ライン6の巻上速度に換算すると約125cm/sである。これらの数値は説明のための例示であり、電動リール10の仕様に応じ適宜変更が可能である。
巻上速度の設定レベルは、電動リール10の工場出荷時にはL速に設定されている。L速から他の設定レベルに変更するには、ユーザがAスイッチ32を2秒未満で押すことで行われる。L速の状態でAスイッチ32を2秒未満で押すと「1速」に設定され、1速の状態でAスイッチ32を2秒未満で押すと「2速」に設定され、2速の状態でAスイッチ32を2秒未満で押すと「3速」に設定され、3速の状態でAスイッチ32を2秒未満で押すと「H速」に設定される。設定レベルの変更に伴い、巻上速度表示部54の表示も、例えば、「L」,「1」,「2」,「3」,「H」と変更される。Aスイッチ32の主たる機能は、2秒以上押すことで内部電源22をオン/オフすることであるが、2秒未満で押すことで、Aスイッチ32は、主たる機能とは別に、巻上速度の設定レベルの変更の機能となる。
Aスイッチ32を用いるのは、モータ26がまだ回転してなくてライン6が停止している場合である。既にモータ26が回転しライン6が巻上げ中のときは、Bスイッチ34を2秒未満で押すことで、巻上速度の設定レベルを変更できる。この場合は、Aスイッチ32を用いる場合と異なり、Bスイッチ34を2秒未満で押すたびに、高速段から低速段に向って1段ずつ変更される。H速の状態でBスイッチ34を2秒未満で押すと「3速」に設定され、3速の状態でBスイッチ34を2秒未満で押すと「2速」に設定され、2速の状態でBスイッチ34を2秒未満で押すと「1速」に設定され、1速の状態でBスイッチ34を2秒未満で押すと「L速」に設定される。巻上速度は、モータ26の正転駆動パルスのオンオフデューティを変更することで行われる。その詳細については後述する。
モータ回転表示部56の主たる機能は、モータ26が回転してスプールが回転中のときに、その回転方向を表示することである。モータ回転表示部56は、円周を6つのセグメントに分割されているので、その内の対角線の2つのセグメントを消灯させ、消灯させたセグメントの位置を時間経過とともに時計回りまたは反時計に回転させ、あたかも回転マークが回転しているように表示して、モータ26が正転状態または逆転状態であることを示す。
次に、制御部24の機能について詳細に説明する。図6は、電動リール10の構成を示すブロック図である。制御部24は、ユーザ操作子であるAスイッチ32、Bスイッチ34、CLスイッチ36、CRスイッチ38から伝送されるユーザの要求信号を取得する。ユーザの要求信号としては、電源オンオフ要求、巻上速度設定要求、棚位置設定要求、巻上要求が含まれる。また、Dスイッチ40から伝送される信号によって船べり停止位置か否かを取得する。さらに、ホール素子20,21から伝送されるスプール回転速度に関する信号を取得する。また、内部電源22の端子電圧VBを検出して取得する。なお、内部電源22に代えて外部電源60に接続されるレギュレータ電源回路62を電源として用いる場合は、端子電圧VBとしてレギュレータ電源回路62の端子電圧を取得する。
制御部24は、これらの取得信号等に基づき、内部のメモリに記憶されているソフトウェアである電動リール制御プログラムを実行して、電動リール10のモータ26の駆動制御、表示部50の表示制御等を行う。制御部24は、動作制御として、通常巻上モード70、微速巻上モード72、フィードバックモード74を有する。微速巻上モード72は、追い食いモード76と誘いモード78とを含む。これらのモードは、モータ26の駆動制御に関連する。次に、モータ26に接続され、制御部24の制御の下で動作するモータ駆動回路25について述べる。
モータ駆動回路25は、図6に示すように、制御部24とモータ26の間に配置される。図7に、モータ駆動回路25の詳細図を示す。モータ駆動回路25は、プラス側電源端子VDD、マイナス側電源端子VSSを介して動作電力の供給を受ける。また、入力端子として、制御部24からの正転駆動信号を受け取るF端子と、逆転駆動信号を受け取るR端子とを有し、出力端子として、モータ26の2端子に接続されるM1端子とM2端子とを有する。なお、図6において、マイナス側電源端子VSSを接地電位としたが、場合によっては、プラス側電源端子VDDを接地電位としてもよい。
モータ駆動回路25の内部回路は、PチャネルMOSFET80とNチャネルMOSFET82とが直列接続された第1アーム部と、PチャネルMOSFET84とNチャネルMOSFET86とが直列接続された第2アーム部とを含む。第1アーム部と第2アーム部とは互いに並列接続され、PチャネルMOSFET側がVDD、NチャネルMOSFET側がVSSに接続される。
第1アーム部のPチャネルMOSFET80のゲート端子とNチャネルMOSFET82のゲート端子とは互いに接続され、R端子から逆転駆動信号を受け取る。第2アーム部のPチャネルMOSFET84のゲート端子とNチャネルMOSFET86のゲート端子とは互いに接続され、F端子から正転駆動信号を受け取る。
第1アーム部のPチャネルMOSFET80のドレイン端子とNチャネルMOSFET82のドレイン端子とは互いに接続され、その接続点はM2端子に接続される。第2アーム部のPチャネルMOSFET84のドレイン端子とNチャネルMOSFET86のドレイン端子とは互いに接続され、その接続点はM1端子に接続される。
モータ駆動回路25の動作は以下の通りである。制御部24からF端子に「H」レベルの信号が供給され、R端子に「L」レベルの信号が供給されると、第1アーム部のPチャネルMOSFET80と第2アーム部のNチャネルMOSFET86とがオンするので、VDD端子からPチャネルMOSFET80を通り、M2端子からモータ26の駆動コイルを経由し、M1端子からNチャネルMOSFET86を介してVSS端子に向けて電流が流れる。モータ26の駆動コイルに流れる電流の向きを実線矢印で示す。これがモータ26における正転駆動電流である。
制御部24からF端子に「L」レベルの信号が供給され、R端子に「H」レベルの信号が供給されると、第2アーム部のPチャネルMOSFET84と第1アーム部のNチャネルMOSFET82とがオンするので、VDD端子からPチャネルMOSFET84を通り、M1端子からモータ26の駆動コイルを経由し、M2端子からNチャネルMOSFET82を介してVSS端子に向けて電流が流れる。モータ26の駆動コイルに流れる電流の向きを破線矢印で示す。これがモータ26における逆転駆動電流である。
図6に戻り、制御部24の通常巻上モード70について述べる。通常巻上モード70は、モータ駆動回路25に対し、正転駆動パルスの駆動信号を与えて、モータ26をスプール16の巻上方向に回転させる動作制御モードである。正転駆動パルスの駆動信号は、R端子は常に「L」レベルとして、F端子に与える所定の周波数のパルス信号である。所定の周波数は、モータ26の駆動に適した周波数で、16kHzを用いる。この周波数は、説明のための例示であり、モータ26の仕様等に応じて適宜変更が可能である。スプール16の巻上速度は、ユーザの要求に応じて、最も低速側のL速から最も高速のH速へ向かってL速、1速、2速、3速、H速の5段階に変更できる。このスプール16の巻上速度の変更は、F端子に与える所定の周波数のパルス信号のオンオフデューティを変更して行われる。
図8に、実例を示す。図8は、スプール16の巻上速度が「L速」に設定されている状態で、ユーザがCLスイッチ36を押した場合のタイムチャートである。図8(a)は、横軸が時間で、縦軸は、上段から下段に向って、CLスイッチ36のオンオフ状態、F端子に入力される正転駆動パルスの状態、R端子に入力される信号状態を示す。CLスイッチ36のオンオフは、押されたときが「H」レベルのVDD、押されないときが「L」レベルのVSSレベルである。この例では、CLスイッチ36が時間t0でオンし、時間t1でオフする。この場合、F端子には、時間t0から時間t1まで、16kHzのパルス信号が連続して入力される。R端子は、常に「L」レベルである。図7のモータ駆動回路25においては、16kHzのパルス信号が「H」レベルのときは、第1アーム部のPチャネルMOSFET80と第2アーム部のNチャネルMOSFET86とがオンするので、モータ26の駆動コイルに実線矢印で示す電流が流れ、モータ26は正転する。16kHzのパルス信号が「L」レベルのときは、全てのMOSFETはオフであるので、モータ26の駆動コイルに電流が流れないが、モータ26には慣性があるのでその限りにおいて、「H」レベルのときのときとほぼ同じ回転速度で回転する。
図8(b)は、1つの正転駆動パルスの波形の拡大図である。1つの正転駆動パルスの1周期T0は、(1/16kHz)=62.5μsである。この1周期の間の「H」レベルと「L」レベルとの比がオンオフデューティである。以下では、特に断らない限り、オンオフデューティである[{「H」レベルの時間}/T0]を、デューティDと呼ぶ。このデューティDが大きいほどモータ26に単位時間当たりの駆動電流をより多く供給できるので、モータ26の回転速度が高速となり、スプール16の巻上速度が高速になる。
図9は、スプール16の巻上速度と、1つの正転駆動パルスの1周期T0と、デューティDとの関係を示す図である。通常巻上モードにおいて、制御部24は、モータ駆動回路25に対して、スプール16の巻上速度が最も低速側のL速デューティから最も高速のH速デューティまでの複数段のいずれかのデューティによる駆動を行わせる。
次に、制御部24の微速巻上モード72について述べる。通常巻上モード70は、最も低速のL速デューティでも0.6である。このときのスプール16は約16回転/sで回転するので、巻上速度は、{(約16回転/s)×(4.6cm/回転)}で、約60cm/sである。この巻上速度でライン6を引き上げると、仕掛けが高速で移動するので、魚は惑わされず、仕掛けに掛からない。生餌があると魚が惑うようにライン6を引き上げる速度は、L速の約60cm/sに比べ格段にゆっくりで、一例を挙げると、1cm/s〜10cm/s程度である。これを図10に基づいて類推すると、デューティDは、0.01〜0.10程度となり、この小さいデューティDでは、巻上げの際にモータ26に供給する(電流×時間)が小さすぎて魚を引き上げる力が不足する。
微速巻上モード72では、予め定めた所定周期内において、モータ26をスプール16の巻上方向に回転させる正転駆動の次に、正転駆動とは逆方向に回転させて正転駆動に対しブレーキを掛ける逆転駆動を行わせるモードである。これにより、巻上げの際にモータ26に供給する(電流×時間)を適度に確保して、通常巻上モード70のL速デューティによる駆動よりも低速でスプールにライン6を巻上げることが可能になる。
図10は、微速巻上モードにおける正転駆動パルスと逆転駆動パルスの詳細を示す図である。図10(a)は、スプール16の巻上速度が「微L速」に設定されている状態のタイムチャートである。図5で述べた表示部50の巻上速度表示部54は、通常巻上モード70の「L速」の場合は「L」の文字を点灯し、微速巻上モード72の「微L速」の場合は、「L」の文字を点滅させて区別するが、文字表示はいずれも「L」である。以下では、混同を避けるために、微速巻上モード72における微速巻上速度には「微」を付す。
図10(a)の横軸は時間で、縦軸は、上段から下段に向って、微速巻上モード実行の状態、F端子に入力される正転駆動パルスの状態、R端子に入力される逆転駆動パルスの状態を示す。微速巻上モード実行の状態としては、実行状態を「H」レベルのオン状態とし、「L」レベルのオフ状態は微速巻上モードが実行されていない状態を示す。微速巻上モード実行の状態がオフ状態からオン状態となる条件は、追い食いモード76と誘いモード78とで異なる。その詳細は、追い食いモード76と誘いモード78のそれぞれにおいて述べる。図10(a)では、時間t2から時間t3の間の区間において微速巻上モード72が実行される。
通常巻上モード70では、正転駆動パルスのみが用いられるので、R端子は常に「L」レベルとされたが、微速巻上モード72では逆転駆動パルスも用いるので、R端子に逆転駆動パルスが入力される。微速巻上モード72では、予め定めた所定周期T1内において、F端子に正転駆動パルスが入力される正転駆動期間TFの後に引き続いて、R端子に逆転駆動パルスが入力される逆転駆動期間TRが配置される。「引き続いて」とは、所定周期T1に比べごく短い遷移期間を置くことを含む。遷移期間の一例を述べると、(T0=62.5μs)の数倍程度である。したがって、所定周期T1は、実質的に{(正転駆動期間TF)+(逆転駆動期間TR)}である。
図10(b)は、1つの正転駆動パルスの波形の拡大図、及び、1つの逆転駆動パルスの波形の拡大図である。1つの正転駆動パルスの1周期と1つの逆転駆動パルスの1周期は同じで、図8で述べたT0=62.5μsである。正転駆動パルスのデューティをDF、逆転駆動パルスのデューティをDRと示す。「微L速」では、TF>TR、DF>DRである。
微速巻上モード72では、僅かな遷移期間を挟んで正転駆動と逆転駆動とが切り替わるので、モータ26に流れる電流の流れる方向が急変する。実際に実験すると、スプール16は、ゆっくり巻上げ方向に回転した後、僅かに逆回転するか一瞬停止状態になり、ユーザの操作感に改善の余地があることが分かった。そこで、微速巻上モード72において、時間経過に従って、例えば、正転駆動におけるスプール16の巻上速度がゼロから漸増して最大値になるとそこから漸減してゼロに向かい、そこで逆転駆動に切替わるようにする。逆転駆動においても、スプール16の繰出速度がゼロから漸増して最大値になるとそこから漸減してゼロに向かい、そこで正転駆動に切替わるようにする。このような所定のデューティ変化特性を用いることで、正転駆動と逆転駆動との間の切替の際にスプール16巻上速度の変化が滑らかとなり、ユーザの操作感が向上する。時間経過に対して滑らかなデューティ変化特性としては、正弦波変化特性を用いることができる。
図11は、所定周期T1における正転駆動期間TFと逆転駆動期間TRのそれぞれについて、正転駆動パルスのデューティDFと逆転駆動パルスのデューティDRのデューティ変化特性として正弦波変化特性を用いる例を示す図である。
図11(a)は、図10(a)の所定周期T1における正転駆動期間TFと逆転駆動期間TRの関係を示す図である。図11(b)は、所定周期T1において、正転駆動期間TFにモータ26に供給される電流IFと、逆転駆動期間TRにモータ26に供給されるIRを示す図である。ここで、モータ26の駆動コイルの抵抗をRとして、電流IFは、{+(DF×T0)(VDD−VSS)/R}となり、(+DF)に比例する。同様に、電流IRは、{−(DR×T0)(VDD−VSS)/R}となり、(−DR)に比例する。したがって、モータ26に流れる電流は、正転駆動期間TFにおいて(+DF)に比例した(+IF)と、逆転駆動期間TRにおいて(−DR)に比例した(−IR)となる。比例係数を規格化して、(+IF)を(+DF)とし、(−IR)を(−DR)とすると、図11(b)に示されるように、正転駆動と逆転駆動との切替時に、モータ26に流れる電流は、(+DF)から(−DR)に急変する。
図11(c)は、図11(b)に示す正転駆動の(電流×時間)である(+DF×TF)と、逆転駆動の(電流×時間)である(−DR×TR)とは同じ大きさのままとして、時間経過に関する(+DF)から(−DR)への急変を滑らかな変化特性とした図である。図11(c)の破線は、図11(b)の階段状の(+IF)と(−IR)であり、実線は、正弦波変化特性を有する(+IF)と(−IR)である。ここでは、正転駆動期間TFにおける正転駆動パルスのデューティは、時間経過と共に正弦波変化特性に従って、ゼロから漸増して最大値になるとそこから漸減してゼロに向かい、そこで逆転駆動期間TRに切替わる。逆転駆動期間TRにおける逆転駆動パルスのデューティも、時間経過と共に正弦波変化特性に従って、ゼロから漸増して最大値になるとそこから漸減してゼロに向かい、そこで正転駆動期間TFに切替わる。これにより、階段状の(+IF)と(−IR)でなく、時間経過と共に正弦波変化特性に従って、モータ26の駆動コイルに流れる電流が滑らかに変化する。
図11(c)において、正弦波のデューティ変化特性の振幅を変更すると、正転駆動パルスの最大デューティが変更できる。正弦波のデューティ変化特性が(+IF)=(−IR)=0と交差する位置であるオフセット量を変更すると(TF/TR)を変更でき、オフセット量を大きくすると(TF/TR)が大きくでき、オフセット量を小さくすると(TF/TR)が小さくできる。また、所定周期T1を変更すると、正転駆動期間における(電流×時間)の最大値を変更できる。このように、正弦波のデューティ変化特性に関する振幅、オフセット量、所定周期T1の設定によって、微速巻上モード72における微速巻上速度を複数段階に調整できる。
図12は、時間経過と共に正弦波変化特性に従って、正転駆動パルスのデューティ変化と、逆転駆動パルスのデューティ変化の例を示す図である。図12(a)は、図10(a)と同様の図である。図12(b)は、左側に、1つの正転駆動期間TFについて時間軸上で18区分し、それぞれの正転駆動パルスのデューティ変化を示し、右側に、1つの逆転駆動期間TRについて時間軸上で18区分し、それぞれの逆転駆動パルスのデューティ変化を示す。1つの正転駆動期間TFについて、正転駆動パルスのデューティは、時間経過と共に正弦波変化特性に従って、ゼロから漸増して最大値になるとそこから漸減してゼロに向かい、そこで逆転駆動期間TRに切替わる。同様に、1つの逆転駆動期間TRについて、逆転駆動パルスのデューティは、時間経過と共に正弦波変化特性に従って、ゼロから漸増して最大値になるとそこから漸減してゼロに向かい、そこで正転駆動期間TFに切替わる。
微速巻上モード72は、ユーザが釣り手法を楽しむため、釣りの成果を向上させたいために、ユーザの要求に従って通常巻上モード70から変更される。そこで、微速巻上モード72における2つの動作制御モードである追い食いモード76と誘いモード78について以下に述べる。
追い食いモード76は、ライン6をゆっくりと引き上げる「追い食いモード」をユーザがユーザ操作子によって要求したことを検出した場合に、制御部24がモータ駆動回路25に対し、微速巻上モードを実行させる動作モードである。ユーザの「追い食いモード」の要求は、ユーザ操作子であるCLスイッチ36とCRスイッチ38とを同時に押すことで、制御部24に伝達され、制御部24は、これにより、微速巻上モード72の実行を開始する。一旦追い食いモード76に入った後に、ユーザがCLスイッチ36またはCRスイッチ38のいずれかを押すと、追い食いモード76は解除される。
追い食いモード76は、通常巻上モード70における最も低速のL速よりもゆっくりした微速巻上速度でライン6を巻上げる。微速巻上速度は、最も低速の「微L速」から最も高速の「微H速」まで10段階に変更できる。微速巻上速度の設定方法は、通常巻上モード70における巻上速度の設定方法と同様であり、追い食いモード76に移行してからAスイッチ32またはBスイッチ34を2秒未満押すことを繰り返して行うことができる。微速巻上速度の一例を挙げると、ライン6の巻上げ速度で、「微L速」は約1cm/s、「微H速」は通常巻上モード70の「L速」の約半分の速度である。追い食いモード76における10段階の微速巻上速度について、所定周期T1、正転駆動期間TF、逆転駆動期間TRを図13に示す。
誘いモード78は、「誘いモード」をユーザがユーザ操作子によって要求したことを検出した場合に、制御部24がモータ駆動回路25に対し微速巻上モードを実行させる動作制御モードである。「誘いモード」とは、ユーザが所定の水深位置を棚位置として、棚位置から静かにライン6を引上げ、少し停止させ、また引上げる、を複数回繰り返し、所定位置まで引き上げた後、棚位置まで繰出す動きを繰り返す釣り手法である。
ユーザの「誘いモード」の要求は、ユーザ操作子であるAスイッチ32とBスイッチ34とを同時に押すことで、制御部24に伝達される。これを受けて、制御部24は、ライン6の水深位置が棚位置になったことを検出すると、自動的にモータ駆動回路25に対し、微速巻上モードを実行させ、これにより、微速巻上モード72の実行が開始される。一旦誘いモード78に入った後に、ユーザが再びAスイッチ32とBスイッチ34とを同時に押すと、誘いモード78は解除される。
誘いモード78は、通常巻上モード70における最も低速のL速よりもゆっくりした微速巻上速度でライン6を巻上げることは、追い食いモード76と同様である。また、微速巻上速度は、最も低速の「微L速」から最も高速の「微H速」まで10段階に変更できることも、微速巻上速度の設定方法も、追い食いモード76の場合と同様である。誘いモード78の10段階の微速巻上速度の具体的な速度は、追い食いモード76の10段階の微速巻上速度の具体的な速度と異なる。誘いモード78における10段階の微速巻上速度について、所定周期T1、正転駆動期間TF、逆転駆動期間TRを図14に示す。
誘いモード78には、さらに、モータ26の逆転駆動のみでライン6を繰出す動作制御があることが追い食いモードと異なる。誘いモード78の10段階の微速繰出速度について、所定周期T1、正転駆動期間TF、逆転駆動期間TRを図15に示す。いずれの繰出速度段においても、正転駆動期間TF=0で、逆転駆動期間TR=所定周期T1であり、繰出速度を変えるのは、逆転駆動パルスのデューティDRの変更により行われる。
誘いモード78は、ライン6を巻上げ、少し停止させ、また巻上げることを複数回繰り返し、所定位置まで引上げ後、棚位置まで繰出す動作制御モードであるが、巻上げの時間、停止の時間、繰返しの回数、所定位置、繰出しの時間等について、複数のモードを有し、ユーザはその内の1つを選択できる。
電動リール10の初期状態において、Aスイッチ32が2秒以上押されて内部電源22がオンされ、制御部24が始動し表示部50が図5で述べた通常の表示状態となった後に、Bスイッチ34を2秒以上押すと、誘いモード78における「モード選択」の機能設定になる。
「モード選択」の機能設定の状態において、Aスイッチ32を2秒未満押すことを繰り返すことで、順次「モード1」、「モード2」、「モード3」を選択できる。例えば、Bスイッチ34を2秒以上押し、次にAスイッチ32を1回、2秒未満で押すと、「モード1」が選択できる。これに引き続き、さらにAスイッチ32を1回、2秒未満で押すと「モード2」が選択できる。選択を行った後、Bスイッチ34を2秒未満押すことを4回繰り返すことで、表示部50が通常の表示状態に戻り、これにより、モード選択が確定する。図6において、表示部50は図5の通常の表示状態と異なっている。これは、「モード選択」の機能設定の状態において、「モード2」を選択した直後の表示状態である。表示部50の巻上速度表示部54の「1」の表示は、1番目の機能設定である誘いモード78における「モード選択」の状態であることを示し、水深カウンタ部52の「P2」の表示は、「モード2」を選択したことを示す。
図16は、誘いモード78の一例として、「モード2」の内容を示す図である。微速巻上速度は、デフォルト状態の「微4速」であり、微速繰出速度もデフォルト状態の「微4速」である。図16は、「モード2」におけるライン6の動きを示すタイムチャートで、横軸は時間である。縦軸は、上段から下段に向って、「Aスイッチ+Bスイッチ」について押された状態、水深カウンタ部52の表示と棚位置との一致状態、水深位置である。図16の例では、時間t4において、「Aスイッチ+Bスイッチ」が同時押しの状態になり、時間t5において、水深カウンタ部52の表示が棚位置と一致した状態になったので、時間t5から微速巻上モード72の誘いモード78について実行が開始される。
誘いモード78の「モード2」は、棚位置からライン6を「微4速」で5s巻上げ、0.5s停止し、再びライン6を「微4速」で5s巻上げ、0.5s停止し、もう1度ライン6を「微4速」で5s巻上げる。「微4速」は約2cm/sであるので、これでライン6は、棚位置から30cm上に巻上げされた状態である。この状態が所定位置まで巻上げた状態である。その過程で、魚が仕掛けに掛れば、ユーザはこれを検知して、CLスイッチ36またはCRスイッチ38を押し、通常巻上モード70を用いてライン6を巻上げ、魚を釣り上げる。
棚位置から30cm上に巻上げされた所定位置の状態で魚が仕掛けに掛らない場合は、モータ26を逆転駆動し、ライン6を棚位置に戻す。逆転駆動における繰出速度も、誘いモード78における微速巻上速度の設定に対応した10段階の微速繰出速度に設定されている。「微4速」の場合の微速繰出速度は、約10cm/sである。したがって、ライン6は、約3sかけてゆっくりと棚位置に戻る。クラッチレバー30をフリー状態にしてライン6をおもり8の自重によって棚位置に戻すことも可能であるが、おもり8の水中における落下速度はかなり速いので、ライン6のそばに魚がいても逃げてしまう。微速繰出速度でライン6を降下させることで、棚位置における魚を驚かすことなく、この過程で魚が仕掛けに掛かることも期待できる。「モード2」は、この3回の微速巻上げ、3回の停止、1回の微速繰出しを単位として、誘いモード78が解除されるまで、これが繰り返される。
上記では、モータ26の逆転駆動による微速繰出しを誘いモード78において行った。誘いモード78でなくても、クラッチレバー30をフリー状態にしてライン6をおもり8の自重で水中に繰出すことに代えて、モータ26の逆転駆動による微速繰出しを行ってもよい。誘いモード78以外における微速繰出速度は、ライン6がおもり8の自重で繰出される速度よりも低速に設定される。例えば、図15に示す誘いモード78の10段の微速繰出速度をそのまま誘いモード78以外の微速繰出速度としてもよい。このようにすることで、ライン6に設けた仕掛けがゆっくりと水中に沈むので、魚を驚かすことなく、釣りを進めることができ、場合によっては、その過程で魚が仕掛けに掛ることも期待できる。
通常巻上モード70及び微速巻上モード72は、仕掛けに掛かった魚の質量や運動量がモータ26に負荷として懸る。モータ26のトルクあるいは駆動コイルに供給される(電流×時間)が変動すると、負荷に対して十分な巻上速度が得られないことが生じる。そこで、制御部24のフィードバックモード74は、スプールの回転速度と、電源電圧とに基づいて、モータの駆動パルスのオンオフデューティを変更し、スプールの巻上速度を目標速度に近づけるフィードバックを実行する。
図17は、スプール16の回転速度を示すものとして、図3に述べたホール素子20,21の検出信号の1周期TSを用い、通常動作状態として設定された1周期TS0に対して実際の1周期TSが長くなるときに行われるフィードバックを示す図である。長くなった1周期TSを通常動作状態の1周期TS0に戻すのは、モータ26のデューティDを増加させるフィードバックによって行われる。
図17は、通常巻上モード70の5つの巻上速度のそれぞれについて、実際の1周期TSに対するデューティDを示す。例えば、L速においては、通常動作状態の1周期TS0は約80ms以下であるので、実際の1周期TSが90ms以上となると、デューティDを増加させる。デューティDの増加は、実際の1周期TSが長くなることに応じて、段階的に行われる。図17の例では、実際の1周期TSが95msとなると、L速のデューティDは、通常動作状態の0.60から0.64に増加させる。実際の1周期TSが105msとなると、L速のデューティDは、通常動作状態の0.60から0.72に増加させる。実際の1周期TSが110ms以上のときは、L速のデューティDは、通常動作状態の0.60から0.80に増加させる。
図18は、電源電圧が変化したときのフィードバックを示す図である。図18の横軸はTSで、縦軸はデューティである。図18は、通常巻上モード70のL速について、TSと電源電圧に応じてデューティDを変更することを示す図である。実線は、図17のL速についてTSの変化に応じたデューティDの変更特性を示す。実線は、内部電源22の端子電圧VBが公称の3Vである状態である。破線は、電源電圧である内部電源22の端子電圧VBが3Vよりも低下した場合に増加させるデューティDを示す。内部電源22の端子電圧VBが3Vよりも低下すると、モータ26のトルクあるいは駆動コイルに供給される(電流×時間)が低下するので、これを公称の3Vの場合の状態に戻すために、デューティDを増加させる。
負荷が懸けられた場合や、電源電圧である端子電圧VBが低下した場合に、モータ26のトルクあるいは駆動コイルに供給される(電流×時間)の低下が生じるが、これらは、通常巻上モード70よりも微速巻上モード72における巻上げに大きな影響を及ぼす。その観点からは、微速巻上モード72におけるTSに基づくデューティDへのフィードバックが好ましいが、微速巻上モード72ではスプール16が微速回転し、安定したTSを取得するのにかなりの時間を要する。そこで、短時間で安定したTSの取得が可能な通常巻上モード70において、デューティDへのフィードバックを行うことがよい。
図18における二点鎖線は、外部電源60からの直流電力を利用して、内部電源22から置き代わったレギュレータ電源回路62の端子電圧VBが3Vに比較して高圧である場合に、端子電圧VBの差異に応じたデューティDの変更特性を示す。大容量の外部電源を用いる場合には、アルカリ電池等の内部電源22をデフォルトとして設定されたデューティDでは高すぎることが生じる。そこで、図18の二点鎖線の変更特性に従って、端子電圧VBの差異に応じてデューティDを変更する。