JP4017683B2 - ラック駆動装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ラックと駆動ギアとの間のバックラッシを補償する手段を有するラックドライブに係わり、設置スペースが小さく、成形を要する部位が少数であるにもかかわらず、ラックと駆動ギアとの間の遊びが小さくガタが少ないために高い位置決め精度を有し、また、摩擦が小さいラック駆動機構に関する。本発明は、特に、光学記録媒体の記録・再生装置の位置決め装置用に好適であるが、適用分野はこれに限定されるものではない。
【0002】
【従来の技術】
ラック駆動装置において、高い位置決め精度を実現し、ラックと駆動ギアとの間の遊び及びガタを低減するためには、公差を補償する手段が必要である。なぜならば、バックラッシは各部品の製造公差と、ラックの支持点と駆動ギアの支持点との間における公差の連鎖とによって生ずるからである。
【0003】
公差を補償する手段として、互いに弾性的に押圧された2つのラックを有するディスク再生装置がEP0356984A2の図18〜図21に開示されている。上記公知のラック装置は、走査・記録装置に固定されて2本のガイドロッド上をスライドする構成となっているため、ラックの歯面と案内面の平行誤差もまたラックと駆動ギアの間隔を変化させる。上記文献が開示するラック装置においては、平行に配設された2つのラック、すなわち2ピースラックの歯列がピニオンすなわち駆動ギアと噛み合う。そして、これら2つのラックがばねによって互いに押圧されるため、ピニオンすなわち駆動ギアの歯は遊びなしに配設される。
【0004】
上述のように上記公知のラック装置は、ばねによって互いに押圧される、第1のラックと第2のラックとを有している。第1のラックの両端部にはそれぞれT型開口が設けられ、中央部には2つのラックを互いに押圧するためのばねが配設される中央部開口が設けられている。T型開口には、第2のラックの係合突起を案内及び保持するためのくびれ部位が設けられている。第2のラックの係合突起は、第1のラックのT型開口に対応する位置に設けられている。さらに、第1のラックには、ピンが装着された突起が中央部開口に突出して設けられており、この突起によって付圧用ばねが保持される。
【0005】
第2のラックにも中央部開口とピンが装着され中央部開口に突出する突起とが設けられており、この突起によってバネが保持される。第2のラックは第1のラックと共に組み立てられ、バックラッシ補償機能を有するラック装置を構成する。この場合、第2のラックの係合突起は第1のラックのT型開口に貫通される。そして、2つのラックはばねによって互いに押圧される。ラック装置を駆動ギアすなわちピニオンと噛合させるためには、それぞれのラックの側面に設けられた歯は互いに整列されなければならない。このため、第2のラックが、ばねに抗して第1のラックに対して長手方向に変位する。すると、駆動ギアあるいは平歯車駆動装置すなわち駆動ピニオンの歯は、ばねによって互いに押圧される2つのラックの歯列によって挟持される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述の如く上記従来のラック駆動装置においては、平歯車駆動装置の歯が、弾性的に押圧される歯列の間に挟持されることによって、ラックと駆動ギアとの間のバックラッシすなわちガタが低減される。しかし、その一方、摩擦損失が大きく、大きなパワーが必要になるという問題が生ずる。特に、主電源を用いずに稼働する携帯型装置のバッテリー寿命に対して不利となる。
【0007】
さらに、2つのラックとラック駆動装置の組み立てには大きなコストが必要である。ラックの支持点と駆動ピニオンの支持点との間に公差連鎖が生ずるために、バックラッシ補償の手段が備えられているにもかかわらず、各部品は精密に製造されなければならない。2つのラックが必要となる上、これらのラックは多くの成形部位と、複数の異なった形状とを有する。このため、製造コストが高くなり、また、複雑な形状の工具が必要となる。なお、T型開口、T型係合突起、突起、ピン及び中央の開口は成形される。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、設置スペースが小さく、また、構成部品及び成形部位が少ないにもかかわらず、ラックと駆動ギアとの間のバックラッシが小さく、また、遊びやガタが少なくかつ摩擦が小さいために高い位置決め精度を有し、さらに、組み付け性の点、及び、成形部位数あるいは成形部位形状の点で従来の方法の有していた問題が解決されたラック駆動装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は、歯列に平行な案内開口を有するラックからなるサスペンション歯要素を備え、前記案内開口は前記ラックの駆動ピニオンのベアリングボルトによって案内され、好ましくは前記サスペンション歯要素が駆動ピンを介して可変的に位置決め可能な装置に連結され、前記サスペンション歯要素はアセタール樹脂から一体成形により製造されるラック駆動装置により実現される。
【0010】
サスペンション歯要素はバックラッシ補償のために用いられる。このサスペンション歯要素は、歯列に平行な案内開口を有するラックからなる。案内開口はラックの駆動ギアのベアリングボルトによって案内される。かかるラック駆動機構は光学記録媒体の記録・再生装置の走査・記録装置の制御用として好適である。
本発明はある面では、バックラッシが小さく、また、構成部品及び形成部位が少ないラック駆動装置を提供することである。このため、本ラック駆動装置はサスペンション歯要素の構成部品であるただ一つのラックのみを備えている。本ラック駆動装置はただ一つのラックしか備えていないにもかかわらず、ラックと駆動ギアとの間の遊び及びガタが少ないために高い位置決め精度を有し、また、摩擦も小さい。
【0011】
かかるラック駆動装置は、ラックの唯一の構成部品であるサスペンション歯要素が駆動ギアのシャフトすなわち支持点に直接案内されることにより実現される。これにより、ラックの支持点と駆動ギアの支持点との間の公差連鎖は低減され、ただ1つのラックすなわちサスペンション歯要素のみで、ラックと駆動ギアの間の遊びやガタが小さいことが保証される。
【0012】
駆動ギアの歯は挟持されないので、ラック駆動装置の摩擦は小さい。2つ目のラック及び2つのラックを押圧するためのばねは不要である。一つのラックすなわちサスペンション歯要素は少数の形成部位しか有せず、例えば良好な摺動特性を有するアセタール樹脂等から一体的に製造できる。
一つのラックのみが必要とされ、また、駆動ギアとラックは共通の支持点を有する。このため、駆動ギア及びラックの歯形として、例えばハイブリッド歯形等を用いることにより、回転方向のバックラッシをさらに低減することができる。2つのラックから構成されるラック装置の場合のような、ラックの歯列をばねに抗して変位させて駆動ギアと噛み合わせるといった組み立て作業は不要となる。
【0013】
サスペンション歯要素は歯列に平行な案内開口を有するラックから構成される。駆動ギアがサスペンション歯要素の歯と噛合することによりラック駆動装置が構成される。駆動ギアのベアリングボルトはラックとサスペンション歯要素の案内としても作用する。ラックすなわちサスペンション歯要素の案内開口は、駆動ギアとラックの噛合時には、ベアリングボルトによって支えられるように設けられている。これにより、駆動ギアとラックが離間されることを防ぎ、動作中すなわちラックと駆動ギア間の伝動中のバックラッシを防止している。
【0014】
ラックが駆動ギアのベアリングボルトによって支持され、2つのラックを互いに押圧しながら結合し変位させる手段を備えた2つのラックを有するラック装置を用いる必要がないため、ラック駆動装置の設置スペースを小さくすることができる。設置スペースを小さくすることができるので、光学記録媒体の携帯型記録・再生機の位置決め装置、例えば、走査・記録装置等の制御に適している。しかし、用途はこれらに限定されるものではない。
【0015】
ラックすなわちサスペンション歯要素はドライバーピンを介して、走査・記録装置(ピックアップとも称す)に連結されている。このため、従来はラック前面、ガイドロッド及び走査・記録装置の案内部間の平行度を高精度に保証する必要があったが、本発明のラック駆動装置においては、かかる平行度の保証は不要である。
【0016】
ドライバーピン及びドライバーピンが挿入される開口は、サスペンション歯要素あるいはピックアップに任意に設けることができる。これにより、ラックと走査・記録装置が柔軟に連結されるため、ラックと駆動ギアとの間のバックラッシはさらに低減される。このようにラックと走査・記録装置がピンで柔軟に連結されることは、ただ一つのラックを用いてバックラッシの小さいラック駆動装置を実現する上で有利にはたらく。さらに、かかる構成のラック駆動装置を記録再生装置に用いた場合、例えばピックアップの交換を、ピックアップをドライバーピンとベアリングシャフトから外すだけで手間をかけずに行えるなど、保守上においても有利である。つまり駆動装置すなわち伝動装置の一部を分解する必要がない。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図を参照しながら詳細に説明する。図1は光学記録媒体であるCDの記録再生装置用位置決め機構として用いられるラック駆動装置を示す。ラック駆動装置はサスペンション歯要素2から構成されている。サスペンション歯要素2は駆動ピニオン4と噛み合うように配設されている。サスペンション歯要素2は、好ましいことに、唯一の構成部品であるラック21から構成されている。図2はラック21を3方向から見た図を示す。図2に示すようにラック21は案内開口22を有している。
【0018】
バックラッシの補償手段を有するラック21を構成するサスペンション歯要素2は、好ましくは、良好な摺動特性を有する、例えばアセタール樹脂などの成形部品である。図2からわかるように、サスペンション歯要素2の成形部位は少数である。図2に示すようにラック21すなわちサスペンション歯要素2には、ラック21の歯列及び溝型の案内開口22と共にただ1つの開口部6が設けられている。開口部6には、図1に示すドライバーピン5が回転可能に挿着される。ドライバーピン5を介してラック21すなわちサスペンション歯要素2が走査・記録装置(ピックアップとも称す)に連結される。
【0019】
走査・記録装置すなわちピックアップは、案内部を有するガイドロッド7上をスライドするように配設され、ラック駆動装置によって位置決めが行われる。上述のように、ラック21すなわちサスペンション歯要素2とピックアップとは柔軟に連結されている。このため、従来の方法であればラック2の歯面とガイドロッド7及び走査記録装置の案内部との間の平行度を保証する必要があったが、本実施例のラック駆動装置によれば、かかる平行度の保証は不要である。このため、個々の部品への製作要求精度を緩和することができる。
【0020】
バックラッシが小さく、小型であるとともに構成部品及び成形部位が少ないにもかかわらず、遊びすなわちガタが小さく摩擦も小さいために高い位置決め精度を有し、また、組み立て性の点においても、また、成形部位の数や形状の点においても従来の方法が有していた問題を解決した本ラック駆動装置は、サスペンション歯要素2として設計されたただ一つのラック21に、好ましいことに駆動ギアすなわち駆動ピニオン4が装着された図1に示すベアリングボルト3によって案内される、溝型に形成された案内開口22を設けることにより実現されている。
【0021】
ラック2の歯列および溝型の案内開口22を備えてラック2を構成するサスペンション歯要素2を用いることにより、従来の平歯車を用いたラック駆動装置においてはラック装置内で累積していた公差連鎖が十分に低減される。このため、本発明のラック駆動装置においては、バックラッシは小さい。ラック駆動装置はただ一つのラック2から構成されるため構成部品や成形部位の数も少ない。ただ一つのラック2のみが備えられているので、組み立てコストもわずかである。
【0022】
ラック21が駆動ギアすなわち駆動ピニオン4のベアリングボルト3によって案内されるため、2つのラックを互いに押圧するとともに連結、変位させる手段は不要である。このため、ラック駆動装置の設置スペースは小さい。設置スペースが小さいため光学記録媒体の携帯型記録・再生機の位置決め装置、例えば、走査・記録装置の制御等に特に適している。しかし、このような用途のみに限定されるものではなく、高精度の位置決めを簡単な方法で行うことを目的とした全ての直動機構に適用できる。
【0023】
図3及び図4は公知の方法に関するものであり、公知技術として示している。この公知技術はEP0356984A2に開示されている。図3は本発明に関連して示されており、上記公報の図18と主要部分において対応している。一方、図4は上記公報の図19と対応している。このため、上記公知技術の参照記号を、図3及び図4においても使用している。初めに述べたように、上記公報の図18〜図20に示されるラック装置は、バックラッシを補償するために2つのラック81、82を有している。これらラック81、82は互いに弾性的に押圧されている。
【0024】
ラック装置は第1のラック81と第2のラック82から構成され、これらラック81、82はばね154によって互いに押圧されている。第1のラック81はその両端部にT型開口87を有すると共に中央部開口86bを有している。T型開口87はくびれ部を有しており係合突起89により第2のガイドロッド82を案内する。T型係合突起89は第2のラック82上の、第1のラック81のT型開口87に対応する位置に設けられている。
【0025】
さらに第1のラック81には四辺形のピン89aが装着された突起86が設けられている。突起86は中央部開口86bに突出して設けられており、ばね154が取り付けられる。第2のラック82にも中央部開口88bと四辺形のピン88aが装着され中央部開口88bに突出する突起88とが設けられている。バックラッシ補償機能を有する上記公知のラック装置を構成するために、図4に示す第2のラックが180°回転され、図3に示す第1のラックに組み付けられる。2つの係合突起89は共にT型開口87に貫通され、ラック81及82はばね154によって互いに押圧される。ラック配置を図21に示す駆動ギアすなわちピニオン59と噛合させるために、ラック81及び82の側面に設けられた歯81a,82aは互いに整列されなければならない。このため、第2のガイドロッド82は、ばね154に抗して第1のラック81に対して長手方向に変位される。
【0026】
第2のラック82は第1のラックのT型開口87のくびれ部のみで支持されているため、組み付け時に、第2のラック82が飛び出しやすい。このため、複雑な組み立て作業はさらに煩雑なものとなる。また、分解にも影響する。さらに、ラック81、82は、多くの成形部位を有している。なおT型開口87、T型係合突起89、突起86、88、四辺形突起86a,88a及び中央部開口86b及び88bを成形部位と称している。
【0027】
このように公知のラック配置は高い製造コストを必要とする。図5は公知のラック駆動装置すなわち伝動機構51を示す。伝動機構51は平歯車駆動装置として駆動ピニオン59を備える2つ一組のラック8から構成され、ピックアップに適用されている。本装置において駆動ピニオン59は、駆動モータ52のシャフトに固定されたギアホイール56、第1のギアホイール57及び第2のギアホイール58を介して駆動モータ52によって駆動される。これにより、ラック駆動装置の送り速度とモータの回転速度とを適合させている。
【0028】
図6はサスペンション歯要素2から構成されるラック駆動装置を示す。サスペンション歯要素を案内するベアリングボルト3は基板1に装着されている。基板1には、また、図1に示すようにガイドロッド7を介して走査記録装置が装着されている。走査記録装置は、図6に示すように、駆動ピン5を介してサスペンション歯要素2に連結されている。この結果、サスペンション歯要素2から構成されるラック駆動装置の物理的体積は小さい。また、このように体積が小さく、サスペンション歯要素2の構成部品として1つのラック21しか要しないにもかかわらず、本ラック駆動装置はバックラッシが小さいために高い位置決め精度を保証している。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学記録媒体の記録・再生装置の位置決め装置用ラック駆動装置を示す図である。
【図2】サスペンション歯要素として設計されたラックの3方向から見た図である。
【図3】公知のラック装置の公知の第1のラックの斜視図である。
【図4】公知のラック装置の公知の第2のラックの斜視図である。
【図5】駆動ギアの歯に締着するために3列の歯を有する公知のラック装置を示す図である。
【図6】バックラッシ補償のためにサスペンション歯要素として設計されたラックを有するラック装置を示す図である。
【符号の説明】
2 サスペンション歯要素
3 ベアリングボルト
4 駆動ピニオン
5 ドライバーピン
6 開口部
7 ガイドロッド
21 ラック
22 案内開口
Claims (2)
- バックラッシ補償手段を備えたラック駆動装置であって、
サスペンション歯要素(2)を有し、
前記サスペンション歯要素(2)は、
ラック(21)と、
案内開口(22)と、を含み、
前記ラック(21)は、該ラック(21)を駆動する駆動ピニオン(4)と係合するように構成され、
前記案内開口(22)は、
前記ラック(21)の歯列が設けられた面とは異なる、該歯列面と平行な面に形成されるとともに、
前記ラック(21)が前記駆動ピニオン(4)によって駆動されているときに該駆動ピニオン(4)のベアリングボルト(3)上を案内されて、前記バックラッシ補償手段として機能するように構成され、
前記案内開口(22)の幅は、前記駆動ピニオン(4)の直径より小さい、
ことを特徴とするラック駆動装置。 - 光学記録媒体(CD)用の記録・再生装置において走査・記録ユニットを制御する位置決め装置であって、
請求項1記載のラック駆動装置を有することを特徴とする位置決め装置。
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