JP3993421B2 - 船外機操作装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,船外機操作装置に関し,特に船舶側からの制御信号に基づき船外機を制御する船外機操作装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶に取り付けて船舶の航行を行う船外機が用いられている。従来の船外機では船体側からワイヤーによって力を伝達し、エンジンのスロットル等の制御を行っていた。
しかしながら、近年の情報技術の発達に伴い、船体と船外機とをLAN(Local Area Network)で接続して船体側から制御信号を送ることによって船外機を操作する船内LAN方式が試みられている。船内LANを用いることで、1本のケーブルへの多数の機器の接続が可能となり、船体と船外機間の配線を簡略化できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ここで,船舶が複数の操船席を有する場合がある。このとき複数の操船席で同時に操船が可能とすると,複数の操船席同士が互いに矛盾する操作を行い,結果的に正常な操船が行えなくなる可能性がある。従い,複数の操船席を有する船舶においては,操船可能な操縦席は単一として,かつ操船可能な操船席(操船権を有する操船席)を適宜に切り換えられることが望ましい。本発明はこのような課題を解決するためになされたもので,複数の操船席を有する船舶において操船可能な操船席を適宜に切り換えることができる,船外機操作装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る船外機操作装置は,船外機のエンジンを始動または停止するための始動/停止情報を入力する第1の始動/停止スイッチと,前記第1の始動/停止スイッチで入力される始動/停止情報を前記船外機に送信する第1の送信部と,操船席を切り換える操船席切換情報を入力する第1の操船席切換スイッチと,前記第1の操船席切換スイッチで入力される操船席切換情報を記憶する第1の操船席切換情報記憶部と,前記第1の操船席切換情報記憶部に記憶される操船席切換情報に基づいて,前記第1の送信部からの始動/停止情報の送信の開始,停止を制御する第1の制御部と,前記第1の操船席切換スイッチで入力される操船席切換情報を送信する第2の送信部と,前記エンジンを始動または停止するための始動/停止情報を入力する第2の始動/停止スイッチと,前記第2の始動/停止スイッチで入力される始動/停止情報を前記船外機に送信する第3の送信部と,操船席を切り換える操船席切換情報を入力する第2の操船席切換スイッチと,前記第2の操船席切換スイッチで入力される操船席切換情報を記憶する第2の操船席切換情報記憶部と,前記第2の送信部から送信される操船席切換情報を受信する第1の受信部と,前記第1の受信部で受信される操船席切換情報に基づき,前記第2の操船席切換情報記憶部の記憶内容を書き換える第1の書換部と,前記第2の操船席切換情報記憶部に記憶される操船席切換情報に基づいて,前記第1の送信部での送信の開始,停止とは逆に,前記第3の送信部からの始動/停止情報の送信の開始,停止を制御する第2の制御部と,を具備することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態に係る船舶10の外観を表す斜視図である。
本図に示されるように船舶10は、船体12と船外機13からなり、船体12側に2つの操船席15(主操船席15A、副操船席15B)を備える。さらに2つの操船席15に対応して、リモート・コントロール20A、20B、ステアリング(ステアリング・ハンドル)31A、31B、船内表示装置41A、41Bをそれぞれ対応して有する。
この結果、主操船席15A、副操船席15Bのいずれからも船舶10の操船、およびその状態の監視が可能となっている。
【0021】
図2は船舶10上に構成される船内LANシステム11を表すブロック図である。
本図に示すように船内LANシステム11は、船体12側、船外機13側の機器がLAN(Local Area Network)14で接続されることで構成される。
船体12のリモート・コントロール20A、20Bはそれぞれ、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bを有する。また、ステアリング31A、31Bはそれぞれ、ステアリング・ユニット30A、30Bに取り付けられている。
【0022】
始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bはそれぞれ、始動/停止スイッチ211A、211B、操船席切換情報記憶部212A、212B、通信経路情報記憶部213A、213B、CPU214A、214B、送受信部215A、215Bを有する。
シフト/スロットル・ユニット22A、22Bはそれぞれ、リモコンレバー221A、221Bに接続されたレバー角度センサ222A、222B、操船席切換スイッチ223A、223B、操船席切換情報記憶部224A、224B、通信経路情報記憶部225A、225BおよびCPU226A、226B、および送受信部227A、227Bを有する。
ステアリング・ユニット30A、30Bはそれぞれ、ステアリング31A、31Bに接続されたステアリング目標角度センサ32A、32B、操船席切換情報記憶部33A、33B、通信経路情報記憶部34A、34BおよびCPU35A、35B、および送受信部36A、36Bを有する。
【0023】
船外機13は、ECU(エンジンコントロールユニット)61およびエンジン(図示せず)を有し、ECU61にはスロットル開度センサ71、シフト位置センサ72、ステアリング角度センサ73等のセンサ類と、スロットル・アクチュエータ81、シフト・アクチュエータ82、ステアリング・アクチュエータ83等のアクチュエータ類が接続されている。
【0024】
LAN14は、メインバス141、サブバス142、およびローカルバス143A、143Bから構成される。
メインバス141は、ECU61の第1の送受信端と、送受信部215A、215B、227A、227B、および船内表示装置41A、41Bの第1の送受信端とを接続する。一方、サブバス142は、ECU61の第2の送受信端と、送受信部36A、36Bの第2の送受信端とを接続する。
即ち、送受信部215A、215B、227A、227B、36A、36B、および船内表示装置41A、41Bの第1の入出力端には、メインバス141とサブバス142のいずれかが接続されている。
【0025】
ローカルバス143Aは送受信部215A、227A、36A、および船内表示装置41Aの第2の送受信端を互いに接続し、ローカルバス143Bは送受信部215B、227B、36B、および船内表示装置41B第2の送受信端を互いに接続する。即ち、操船席15A側の機器はローカルバス143Aを、操船席15B側の機器はローカルバス143Bを用いて互いに通信できる。
この結果、後述するように、操船席15に係る機器(始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B等)は、メインバス141とサブバス142の双方を通信経路として利用することができるようになる。
なお、LAN14は、有線、無線(赤外線、電波、超音波等)いずれで構成されていても差し支えない。
【0026】
(船体12側の詳細)
始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bは、船外機13のエンジンの始動および停止を行うための制御信号たる始動信号、停止信号を出力するためのユニットである。
操作情報入力部たる始動/停止スイッチ211A、211Bを操船者が操作することにより、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bそれぞれからの始動信号、および停止信号の出力が行われる。
【0027】
操船席切換情報記憶部212A、212Bは、図3に示すような主操船席15A、副操船席15Bのいずれから操船が行えるか(操船権を有するか)を表す操船席切換情報(操船権情報)を記憶する。この操船権情報に基づき、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bからの制御信号(始動信号、停止信号)の出力の停止、開始が行われる。即ち、操船権情報が、その操船席15側が操船権を有していることを表しているときには、その始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bから制御情報が出力される。一方、操船権情報が、その操船席15側が操船権を有していないことを表しているときには、その始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bからの制御情報の出力が停止される。なお、後述するように操船席切換情報記憶部212A、212Bの操船席切換情報は、操船席切換スイッチ223A、223Bの操作に基づき変更される。
【0028】
通信経路情報記憶部213A、213Bは、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bからの制御信号をメインバス141、サブバス142のどちらを経由して出力するかを表す通信経路情報を記憶する。
図4は、通信経路情報記憶部213A、213Bに記憶された通信経路情報の1例である。図4に示す通信経路情報には、通信状態が通常、非常のいずれであるかを表す通信状態情報、および通信状態と制御信号の出力先との対応を表す出力先テーブルが含まれる。
通信状態が「通常」か「非常」か否かは、ECU61から送信される信号の異常(信号の途絶、波形の異常等)に基づき判定できる。
始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bからの制御信号はそれぞれ、通常時にはメインバス141に、非常時にはローカルバス143A、143Bに出力される。後述するように、ローカルバス143A、143Bに出力された制御信号はそれぞれ、ステアリング・ユニット30A、30Bによりサブバス142へと転送される。
これら通信経路情報記憶部213A、213B、通信経路情報記憶部213A、213Bは、船内LANシステム11の停止後も記憶内容を保持可能な記憶装置(例えば、ROM、補助記憶装置(ハードディスク、CD−ROM等))上に構成される。
【0029】
CPU214A、214Bは、中央処理装置であり、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B全体の動作を管理する。具体的には、操船席切換情報記憶部212A、212Bに記憶された操船席切換情報に基づく制御信号の出力の停止、開始、および通信経路情報記憶部213A、213Bに記憶された通信経路情報に基づく制御信号の出力先の変更等を行う。
送受信部215A、215Bは、メインバス141およびローカルバス143A、143Bとの通信を行う。
【0030】
シフト/スロットル・ユニット22A、22Bは、エンジンのスロットルおよびシフトを制御するための制御信号たるスロットル制御信号(スロットル目標開度信号)およびシフト制御信号(シフト目標位置信号)を出力する。
操作情報入力部たるリモコンレバー221A、221Bに対する操船者の操作に基づき、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bからの制御信号の出力が行われる。リモコンレバー221A、221Bが、ニュートラル(中立)から所定の角度以上船首側に倒されると船舶10が前進し、船尾側に倒されると船舶10が後進するようにエンジンのシフト、即ちプロペラの回転方向が変化する。そして、この所定の角度を超えて船首、または船尾側にリモコンレバー221A、221Bが倒されるとエンジンのスロットルが徐々に開かれ、プロペラの回転速度(最終的には船速)が大きくなる。
レバー角度センサ222A、222Bは、リモコンレバー221A、221Bそれぞれの傾き(角度)を検知する検知器である。
【0031】
操船席切換スイッチ223A、223Bはそれぞれ、2つの操船席15の間で操船権の移行(操船可能な操船席15の切換)を行う操船席切換情報を入力するための開閉器である。操船席切換スイッチ223A、223Bを操作した側の操船席15で操船が可能なように操船権が移り変わる。即ち、操船席切換スイッチ223A、223Bの操作により、操船席切換情報記憶部224A、224Bの操船席切換情報が変更される。
【0032】
操船席切換情報記憶部224A、224Bは、操船席切換情報記憶部212A、212Bと同様、図3に示すような主操船席15A、副操船席15Bのいずれから操船が行えるか(操船権を有するか)を表す操船席切換情報(操船権情報)を記憶する。この操船権情報に基づき、リモコンレバー221A、221Bの操作に基づく制御信号(スロットル制御信号、シフト制御信号)の出力の停止、開始が行われる。
【0033】
通信経路情報記憶部225A、225Bは、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bからの制御信号をメインバス141、サブバス142のどちらを経由して出力するかを表す通信経路情報を記憶する。
図5は、通信経路情報記憶部225A、225Bに記憶された通信経路情報の1例である。この通信経路情報には、通信状態が通常、非常のいずれであるかを表す通信状態情報、通信状態と制御信号の出力先との対応を表す出力先テーブル、および通信状態と転送の有無との対応を表す転送可否テーブルが含まれる。
シフト/スロットル・ユニット22A、22Bからの制御信号はそれぞれ、通常時にはメインバス141に、非常時にはローカルバス143A、143Bに出力される。後述するように、ローカルバス143A、143Bに出力されたシフト/スロットル・ユニット22A、22Bからの制御信号は、ステアリング・ユニット30A、30Bによりサブバス142へと転送される。
【0034】
通常時において、ステアリング・ユニット30A、30Bからの制御信号は、ローカルバス143A、143Bを通じてシフト/スロットル・ユニット22A、22Bで受信される。シフト/スロットル・ユニット22A、22Bは、受信したステアリング・ユニット30A、30Bからの制御信号をメインバス141へと転送する。
一方、ECU61からステアリング・ユニット30A、30Bに送信された信号は、メインバス141からローカルバス143A、143Bへと転送され、ステアリング・ユニット30A、30Bに到達する。
即ち、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bは、通常時においてステアリング・ユニット30A、30Bの信号を中継する中継機として機能する。
【0035】
これら通信経路情報記憶部225A、225Bは、船内LANシステム11の停止後も記憶内容を保持可能な記憶装置上に構成される。
CPU226A、226Bは、中央処理装置であり、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bそれぞれ全体の動作を管理する。具体的には、操船席切換情報記憶部224A、224Bに記憶された操船席切換情報に基づく制御信号の出力の停止、開始、および通信経路情報記憶部225A、225Bに記憶された通信経路情報に基づく制御信号の出力先の変更、転送処理等を行う。
送受信部227A、227Bは、メインバス141および対応するローカルバス143A、143Bとの通信を行う。
【0036】
ステアリング・ユニット30A、30Bは、操船者によるステアリング31A、31Bの操作に基づき、船外機13の向き(船舶10の進行方向)を制御するためのステアリング制御信号(ステアリング目標角度信号)を出力する。
ステアリング目標角度センサ32A、32Bは、ステアリング31A、32Bの操作状態(角度)を検知する検知器である。
【0037】
操船席切換情報記憶部33A、33Bは、操船席切換情報記憶部212A、212B等と同様、図3に示すような主操船席15A、副操船席15Bのいずれから操船が行えるか(操船権を有するか)を表す操船席切換情報(操船権情報)を記憶する。この操船権情報に基づき、ステアリング31A、31Bの操作に基づく制御信号(ステアリング目標角度信号)の出力の停止、開始が行われる。
【0038】
通信経路情報記憶部34A、34Bは、ステアリング・ユニット30A、30Bからの制御信号をメインバス141、サブバス142のどちらを経由して出力するかを表す通信経路情報を記憶する。
図6は、通信経路情報記憶部34A、34Bに記憶された通信経路情報の1例である。この通信経路情報には、通信状態が通常、非常のいずれであるかを表す通信状態情報、通信状態と制御信号の出力先との対応を表す出力先テーブル、および通信状態と転送の有無との対応を表す転送可否テーブルが含まれる。
ステアリング・ユニット30A、30Bからの制御信号はそれぞれ、通常時にはサブバス142に、非常時にはローカルバス143A、143Bに出力される。既述のように、ローカルバス143A、143Bに出力されたステアリング・ユニット30A、30Bからの制御信号は、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bによりサブバス142へと転送される。
【0039】
異常時において、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bおよびシフト/スロットル・ユニット22A、22Bからの制御信号は、ローカルバス143A、143Bを通じてステアリング・ユニット30A、30Bで受信される。ステアリング・ユニット30A、30Bは、受信した始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bおよびシフト/スロットル・ユニット22A、22Bからの制御信号をサブバス142へと転送する。
一方、ECU61から始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bおよびシフト/スロットル・ユニット22A、22Bに送信された信号は、サブバス142からローカルバス143A、143Bへと転送され、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bに到達する。
即ち、ステアリング・ユニット30A、30Bは、異常時において始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B等の信号を中継する中継機として機能する。
これら通信経路情報記憶部34A、34B、通信経路情報記憶部34A、34Bは、船内LANシステム11の停止後も記憶内容を保持可能な記憶装置上に構成される。
【0040】
CPU35A、35Bは、中央処理装置であり、ステアリング・ユニット30A、30Bそれぞれ全体の動作を管理する。具体的には、操船席切換情報記憶部33A、33Bに記憶された操船席切換情報に基づく制御信号の出力の停止、開始、および通信経路情報記憶部34A、34Bに記憶された通信経路情報に基づく制御信号の出力先の変更、転送処理等を行う。
送受信部36A、36Bは、サブバス142および対応するローカルバス143A、143Bとの通信を行う。
【0041】
船内表示装置41A、41Bは、例えばCRT(陰極線管)、LCD(液晶表示装置)であり、操船者等に各種情報を提供する表示装置である。
船内表示装置41A、41Bは、対応するローカルバス143A、143Bおよびメインバス141による2つの通信経路でECU61との通信が行える。図示していないが、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bと同様の通信経路記憶部を有することで、送信情報の出力先をメインバス141、とローカルバス143A、143Bで切り換えることで、ECU61への情報送信を行える。なお、異常時におけるECU61との信号の送受信には、ステアリング・ユニット30A、30Bによる中継を受けるものとする。
【0042】
(船外機13側の詳細)
ECU61は、船外機13の制御全般を行うものであり、CPU(中央演算装置)、記憶装置(RAM、ROM等)、補助記憶装置(不揮発性のRAM、ハードディスク、CD−ROM、光磁気ディスク等)、クロック等から構成される。
ECU61は図7に示すような通信経路情報を記憶する通信経路記憶部(図示せず)を備え、船体12側との通信の状態に応じて信号の出力先をメインバス141とサブバス142とで切り換えるものとする。
【0043】
エンジンは、伝達機構(図示せず)を介してプロペラを回転させ、船舶10に推進力を与える。エンジンは、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bからの始動信号、停止信号に基づいて、停止状態からの始動、稼働状態からの停止を行う。エンジンはその燃焼室内に供給する混合気(燃料ガスと空気の混合ガス)の供給量を制御するスロットル(図示せず)を備える。
伝達機構は、エンジンとプロペラの動力伝達状態を変化させるシフター(図示せず)を備えている。シフターの操作によって、プロペラを無回転としたり(ニュートラル)、回転方向(順回転:船舶10の前進、逆回転:船舶の後進)を変化させたりすることができる。
【0044】
スロットル開度センサ71は、エンジンのスロットルの開閉状態を検知する検出器であり、検出したスロットル開度情報を出力する。
シフト位置センサ72は、伝達機構のシフターの状態(位置:ニュートラル、前進、後進)を検出する検出器であり、検出したシフト位置情報を出力する。
ステアリング角度センサ73は、船外機13の船体12に対する向き(角度)を検知する検出器であり、検出したステアリング角度情報を出力する。
【0045】
スロットル・アクチュエータ81は、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bからのスロットル目標開度信号に基づき、エンジンのスロットルを作動する作動装置である。
シフト・アクチュエータ82は、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bからのシフト目標位置信号に基づき、伝達機構のシフターを作動する作動装置である。
ステアリング・アクチュエータ83は、ステアリング・ユニット30A、30Bからのステアリング目標角度信号に基づき、船外機13の向きを変化させる作動装置である。
【0046】
(船内LANシステム11の動作の詳細)
以下に、船内LANシステム11の具体的な動作を示す。
A. 船体12と船外機13間の通信経路の切換
船体12と船外機13間の通信経路には何らかの通信異常が発生する可能性がある。
この通信異常の例を図8(A)、(B)に示す。図8(A)、(B)はそれぞれ、バス90が断線、短絡した状態を表す。
バスが断線(90A)した場合には、船体12と船外機13間の通信が行われない。即ち、船体12側では船外機13側からの、船外機13側では船体12側からの信号が受信されなくなる。
一方、バスが短絡(90B)した場合には、同一の信号が分岐して伝送される。このように信号が分岐すると、同一の信号がわずかに時間をずらして伝送され、相手側に到達する。その結果、相手側に到達した信号は波形が崩れることになる。
このように通信経路での異常は、船体12と船外機13間の通信の困難をもたらす。
【0047】
船体12側のユニット(始動/停止スイッチ・ユニット21A等)と船外機13側のECU61は、2つの通信経路(メインバス141、サブバス142)を用いた通信が可能である。このため、メインバス141、サブバス142のいずれかに通信異常が発生しても他方を用いて通信を続行することが可能であり、単一の通信経路のみを用いる場合に比べてより通信が確実に行われる(通信経路のバックアップシステム)。
即ち、船内LANシステム11では、通信経路(メインバス141、サブバス142)を切り換えることで、通信異常に対応することができる。以下、通信経路への異常の発生の有無に区分して詳細に説明する。
【0048】
(1)通信経路に異常が発生してないとき(通常時)
▲1▼通常時における船体12側のユニットと船外機13側のECU61間の通信はメインバス141によって行われる。
このときサブバス142は通信に使用されない。これは、サブバス142側に異常が生じても船体12、船外機13間の通信に影響が及ばないようにするためである。
【0049】
▲2▼始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B、シフト/スロットル・ユニット22A、22B、船内表示装置41A、41Bは、メインバス141への入出力端を有しているので、メインバス141によって直接ECU61との通信を行える。なお、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B等からの制御情報の出力は操船権を有している操船席15側からのみ出力される。
【0050】
▲3▼ステアリング・ユニット30A、30Bは、ローカルバス143A、143Bに制御信号を出力する。この制御信号はシフト/スロットル・ユニット22A、22Bに一旦受信され、メインバス141上に転送されてECU61に到達する。
【0051】
▲4▼一方、ECU61からステアリング・ユニット30A、30Bに向けた信号は、一旦シフト/スロットル・ユニット22A、22Bに一旦受信され、ローカルバス143A、143B上に転送されてステアリング・ユニット30A、30Bに到達する。
このようにシフト/スロットル・ユニット22A、22Bが、ステアリング・ユニット30A、30BとECU61との間での信号の中継機として機能することで、直接的にはメインバス141に接続されていないステアリング・ユニット30A、30BがECU61と通信することが可能となる。
【0052】
(2)通信経路に異常が発生したとき(非常時)
図9は、通信経路に異常が発生したときに通信経路の切換を行う手順の一例を表すフロー図である。
▲1▼メインバス141に異常が発生した場合を考える(ステップS11)。
通信経路での異常は、既に述べたように受信側での受信信号の異常(非受信、受信波形の異常)をもたらす。
即ち、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B、シフト/スロットル・ユニット22A、22B、ステアリング・ユニット30A、30B、船内表示装置41A、41Bでは、ECU61からの信号に異常が生じ、ECU61では始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B等からの信号に異常が生じる。
【0053】
▲2▼始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B等が、この受信信号の異常を検知し(ステップS12)、以下のように通信経路の切換を行う。
この異常は、ECU61からの信号の途絶、受信信号波形の異常に基づき検知できる。
始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B等は、通信経路情報記憶部213A、213B等の通信状態情報を書き換え、「通常」から「非常」とする(ステップS13)。
ECU61も同様に、受信信号の異常の検知によって、信号の入出力端をメインバス141からサブバス142へと切り換えるものとする。
【0054】
▲3▼通信経路情報記憶部213A、213B等の通信状態情報の書き換えの結果、情報の出力先が切り換えられる(ステップS14)。
即ち、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bは、出力先をメインバス141からローカルバス143A、143Bに変更する。一方、ステアリング・ユニット30A、30Bは、出力先をローカルバス143A、143Bからサブバス142に変更する。
なお、船内表示装置41A、41Bは、情報を送信するのであれば、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bと同様に転送処理情報記憶部を備え、転送処理情報の書き換えおよびこの情報に基づく出力先の切換を行うものとする(信号をECU61に送信する必要がなければこのような機構は不要である)。
【0055】
▲4▼シフト/スロットル・ユニット22A、22B、ステアリング・ユニット30A、30Bでの信状態情報の書き換えは、さらに転送可否の変更を伴う(ステップS15)。
即ち、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bは、転送処理を停止し、ステアリング・ユニット30A、30Bは転送処理を開始する。この結果、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bそれぞれがローカルバス143A、143Bに出力した制御信号は、ステアリング・ユニット30A、30Bによってサブバス142に転送されECU61に到達する。
【0056】
▲5▼同様にECU61から始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B、シフト/スロットル・ユニット22A、22B、船内表示装置41A、41Bへと送信された信号は、ステアリング・ユニット30A、30Bを経由して、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B、シフト/スロットル・ユニット22A、22Bへと届けられる。
【0057】
▲6▼このようにステアリング・ユニット30A、30Bが、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bおよびシフト/スロットル・ユニット22A、22B、船内表示装置41A、41B、とECU61との間での信号の中継機として機能することで、直接的にはサブバス142に接続されていない始動/停止スイッチ・ユニット21A、21Bおよびシフト/スロットル・ユニット22A、22BがECU61と通信することが可能となる。
以上のように、メインバス141、サブバス142のいずれかが通信可能であれば、中継経路を含む通信経路を自動的に切り換えることで継続的な通信を行うことが可能となる。
【0058】
B. 操船席15の切換
図10は、操船可能な操船席15の切換(操船権の変更)を行う手順の一例を表すフロー図である。以下、図10に沿って説明する。
(1)操船を行いたい操船席15の操船者は、操船席切換スイッチ223A、223Bを操作する(ステップS21)。以下、説明の判り易さのために、副操船席15Bの操船席切換スイッチ223Bが操作されたものとして説明する。
【0059】
(2)操船席切換スイッチ223Bから入力された操船席切換情報に基づき、シフト/スロットル・ユニット22Bから操船席切換情報が送信される(ステップS22)。
この送信は、メインバス141を用いた相手側のシフト/スロットル・ユニット22Aへの送信と、ローカルバス143Bを用いた始動/停止スイッチ・ユニット21B、ステアリング・ユニット30Bへの送信の双方が含まれる。
さらに、相手側のシフト/スロットル・ユニット22Aは、ローカルバス143Aを用いて、受信した操船席切換情報を始動/停止スイッチ・ユニット21A、ステアリング・ユニット30Aへ転送する。
このようにして、始動/停止スイッチ・ユニット21A、21B、シフト/スロットル・ユニット22A、22B、ステアリング・ユニット30A、30Bの全てが操船席切換情報を入手する。
なお、ここで送信、あるいは転送される操船席切換情報は、主操船席15A、副操船席15Bのどちらに操船権があるかを示す情報でも、操船席15の切換を行うべきことを表すいわば操船権を有する操船席15を間接的に表すもののいずれであっても差し支えない。
【0060】
(3)操船席切換情報記憶部212A、212B、224A、224B、33A、33Bに記憶された操船権情報が書き換えられる(ステップS23)。
この書き換えの結果として制御情報の送信元が切り替わる(ステップS24)。
即ち、始動/停止スイッチ・ユニット21A、シフト/スロットル・ユニット22A、ステアリング・ユニット30Aからの制御情報の送信が停止され、始動/停止スイッチ・ユニット21B、シフト/スロットル・ユニット22B、ステアリング・ユニット30Bからの制御情報の送信が開始される。
このようにして、操船権を有する操船席15側からのみ制御情報が送信されることとして、安定した操船を可能としている。しかもこの操船権の変更は、操船席15の操船席切換スイッチ223A、223Bを操作するだけで行えるので、極めて簡便に行える。
【0061】
(その他の実施形態)
本発明の実施形態は上記実施形態には限られず拡張、変更できる。拡張、変更された実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。以下に拡張、変更の例を示す。
(1)図2に示した実施形態では、操船席の切換、通信経路の切換の双方を行う構成を示したが、これらの機能は必ずしも一体不可分なものではなく、必要に応じて分離することも可能である。
これらの機能を分離した例を図11、図12に示す。
図11、図12はそれぞれ、操船席の切換を行う構成例、通信経路の切換を行う構成例を示している。
▲1▼図11に示す船内LANシステム11(1)では、船体12側と船外機13側との通信はメインバス141(1)のみによって行われている。このときには、図10のステップS22における操船切換情報の送信等はメインバス141(1)のみを用いて行われる。
▲2▼図12に示す船内LANシステム11(2)では、副操船席15B側の機器(始動/停止スイッチ・ユニット等)、操船席切換スイッチ等は不要となる。
【0062】
(2)3つ以上の操船席で、操船権の切換を行っても差し支えない。このときは、1つの操船席で入力された操船席切換情報を他の全ての操船席に送信することで、他の操船席からの操作情報の送信が停止される。
【0063】
(3)実施形態では、船体側と船外機側の通信はメインバスとサブバスの一方のみを用いて行われているが、通常時にこの双方を用いて通信を行い、非常時には通信可能なバスのみを用いて通信を行っても差し支えない。このようにすると通常時の通信効率を向上できる。
【0064】
(4)実施形態では各ユニット毎に通信の異常を検知し、通信経路の切換を行っている(一種の分散制御)。いずれかのユニットで通信の異常を検知し、他のユニットに何らかのコマンドを送信することで通信経路の切換を行っても差し支えない(一種の集中制御)。
このとき、コマンドの送受信をローカルバスで行うようにすれば、メインバス、サブバスでの通信異常の影響を受けないようにすることができる。
【0065】
(5)実施形態ではメインバスのみで通信異常を検知しているが、サブバスのみ、およびメインバスとサブバスの双方で通信異常を検知するようにしてもよい。
【0066】
(6)船体側と船外機側の通信経路としては、例えば有線と無線を併用する等異なった種類の通信経路を確保しておいてもよく、また3つ以上の通信経路を確保しておいても差し支えない。
このようにすると船体側と船外機側の通信の確実性をより向上できる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によれば複数の操船席を有する船舶において操船可能な操船席を適宜に切り換えることができる船外機操作装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の1実施形態に係る船舶の外観を表す斜視図である。
【図2】 本発明の1実施形態に係る船舶上に構成される船内LANシステムを表すブロック図である。
【図3】 操船席切換情報の一例を表す図である。
【図4】 通信経路情報の一例を表す図である。
【図5】 通信経路情報の一例を表す図である。
【図6】 通信経路情報の一例を表す図である。
【図7】 通信経路情報の一例を表す図である。
【図8】 通信異常の具体例を表す図である。
【図9】 通信経路を切り換える手順の一例を表すフロー図である。
【図10】 操船可能な操船席を切り換える手順の一例を表すフロー図である。
【図11】 本発明の一変形例を表すブロック図である。
【図12】 本発明の他の変形例を表すブロック図である。
【符号の説明】
10…船舶、11…船内LANシステム、12…船体、13…船外機、14…LAN、141…メインバス、142…サブバス、143A、143B…ローカルバス、15…操船席、15A…主操船席、15B…副操船席、20A,20B…リモート・コントロール、21A,21B…始動/停止スイッチ・ユニット、211A,211B…始動/停止スイッチ、212A,212B…操船席切換情報記憶部、213A,213B…通信経路情報記憶部、214A,214B…CPU,215A、215B…送受信部、 22A、22B…シフト/スロットル・ユニット、221A,221B…リモコンレバー、222A,222B…レバー角度センサ、223A,223B…操船席切換スイッチ、224A,224B…操船席切換情報記憶部、225A,225B…通信経路情報記憶部、226A,226B…CPU、227A,227B…送受信部、30A,30B…ステアリング・ユニット、31A,31B…ステアリング、32A,32B…ステアリング目標角度センサ、33A,33B…操船席切換情報記憶部、34A,34B…通信経路情報記憶部、35A,35B…CPU、36A,36B…送受信部、41A,41B…船内表示装置、61…ECU、71…スロットル開度センサ、72…シフト位置センサ、73…ステアリング角度センサ、81…スロットル・アクチュエータ、82…シフト・アクチュエータ、83…ステアリング・アクチュエータ
Claims (2)
- 船外機のエンジンを始動または停止するための始動/停止情報を入力する第1の始動/停止スイッチと,
前記第1の始動/停止スイッチで入力される始動/停止情報を前記船外機に送信する第1の送信部と,
操船席を切り換える操船席切換情報を入力する第1の操船席切換スイッチと,
前記第1の操船席切換スイッチで入力される操船席切換情報を記憶する第1の操船席切換情報記憶部と,
前記第1の操船席切換情報記憶部に記憶される操船席切換情報に基づいて,前記第1の送信部からの始動/停止情報の送信の開始,停止を制御する第1の制御部と,
前記第1の操船席切換スイッチで入力される操船席切換情報を送信する第2の送信部と,
前記エンジンを始動または停止するための始動/停止情報を入力する第2の始動/停止スイッチと,
前記第2の始動/停止スイッチで入力される始動/停止情報を前記船外機に送信する第3の送信部と,
操船席を切り換える操船席切換情報を入力する第2の操船席切換スイッチと,
前記第2の操船席切換スイッチで入力される操船席切換情報を記憶する第2の操船席切換情報記憶部と,
前記第2の送信部から送信される操船席切換情報を受信する第1の受信部と,
前記第1の受信部で受信される操船席切換情報に基づき,前記第2の操船席切換情報記憶部の記憶内容を書き換える第1の書換部と,
前記第2の操船席切換情報記憶部に記憶される操船席切換情報に基づいて,前記第1の送信部での送信の開始,停止とは逆に,前記第3の送信部からの始動/停止情報の送信の開始,停止を制御する第2の制御部と,
を具備することを特徴とする船外機操作装置。 - 前記第2の操船席切換スイッチで入力される操船席切換情報を送信する第4の送信部と,
前記第4の送信部から送信される操船席切換情報を受信する第2の受信部と,
前記第2の受信部で受信された操船席切換情報に基づき,前記第1の操船席切換情報記憶部の記憶内容を書き換える第2の書換部と,
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の船外機操作装置。
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