JP3972347B2 - 液状硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液状硬化性樹脂組成物に関する。更に詳しくは、プラスチック成型物、塗装物等の表面に耐摩耗性、滑り性、耐汚染性、耐候性、耐溶剤性および耐アルカリ性を持つ硬化被膜を形成することができ、特にプラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック成型体等のハードコート材、または建築内装材としての床材、壁材等の汚染防止もしくは傷つき防止コーティング材として用いることができる液状硬化性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子等のプラスチック成型体物、または建築内装材としての床材、壁材等の塗装物の表面を保護する方法として、部材表面のハードコート処理が行なわれてきた。これらのハードコート材料として、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化性アクリル系ハードコート材が採用されているが、これらだけでは耐擦傷性、滑り性、耐汚染性等を向上させることは出来なかった。
【0003】
プラスチック成形体に耐擦傷性、滑り性、耐汚染性等を発現させる方法として、シリカに代表されるような無機フィラーまたはポリエチレン粉末やポリカーボネート粉末などの有機フィラーを添加させる方法、およびシリコーンなどの添加剤を加えることがよく知られている。しかし、無機あるいは有機フィラーを添加する方法では、得られた塗膜のヘーズ値が上昇したり、あるいは外観が損なわれるといった欠点がある。また、シリコーン等の添加剤を加える方法では、塗膜面の滑り性は改良されるが、磨耗輪による耐擦傷性は発現しない。さらにタッチパネル用途等のハードコートにはアルカリエッチングの後処理工程があり、通常のシリコーン等の添加剤ではアルカリ加水分解を受けて、塗膜の外観が損なわれたり、プラスチック成形体から塗膜が剥離してしまう欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、プラスチック成形体の表面に耐摩耗性、滑り性、耐汚染性、耐候性、耐溶剤性および耐アルカリ性を持たせたコーティング材として用いることができるハードコート用被覆材組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、本発明の上記目的は、
(A)分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ含む多官能(メタ)アクリル化合物(以下「成分A」という)および(B) 重合性不飽和基とウレタン結合基、下記式(1)で示される有機基とを有するアルコキシシラン化合物およびシリカ粒子を反応させて得られる反応生成物(以下「成分B」という)、
【0006】
【化2】
【0007】
(式中、Xは−NH−、−O−または−S−であり、Yは酸素原子またはイオウ原子である、但しXが−O−のときYはイオウ原子である)
(C)シリコーンを側鎖にもつグラフト共重合体(以下「成分C」という)、並びに(D)放射線重合開始剤(以下「成分D」という)を含有することを特徴とする液状硬化性樹脂組成物によって達成される。
【0008】
本発明で(A)成分として用いられる分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ含む多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2ーヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0009】
なお、分子内に(メタ)アクリロイル基を少なくとも3つ含む多官能性モノマーの市販品としては、例えばカヤラッド DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、D−310、D−330、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、TPA−330(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−315、M−325(以上、東亞合成(株)製)等が挙げられる。
【0010】
本発明で成分Bとして用いられる反応生成物は、分子中に、重合性不飽和基と−NH(C=O)−で表されるウレタン結合基と前記式(1)で表される有機基とを有するアルコキシシラン化合物(以下「アルコキシシラン化合物」という)とシリカ粒子とを反応させて得られる。
本発明で成分Bとして用いられる反応生成物は、アルコキシシラン化合物とシリカ粒子とを少なくとも混合する操作を含む方法により製造される。シリカ粒子に固定されたアルコキシシラン化合物残渣の含有量は0.01重量%以上であり、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは1重量%以上のものが用いられる。シリカ粒子中に固定されたアルコキシシラン化合物残渣の含有量が0.01重量%未満の場合、組成物中のシリカ粒子、およびコロイダルシリカの分散性、透明性、耐磨耗性は十分でない場合がある。また成分B製造時の原料組成物中におけるアルコキシシラン化合物の割合は好ましくは10重量%以上であり、特に好ましくは30重量%以上である。アルコキシシラン化合物の割合が10重量%未満の場合、本発明組成物の成膜性が悪い場合がある。また、成分Bの原料組成物中のシリカ粒子の割合は好ましくは50重量%以下であり、特に好ましくは20重量%以下である。成分Bの原料組成物中のシリカ粒子の割合が50重量%以上の場合、本発明組成物の分散性、透明性、耐磨耗性が十分でない場合がある。
【0011】
アルコキシシラン化合物は分子中に重合性不飽和基、ウレタン結合基、前記式(1)で表される有機基およびアルコキシシリル基を構成成分として少なくともそれぞれ1個含むことを特徴とするものである。アルコキシシリル基は加水分解、縮合反応によりシリカ粒子の表面に存在するシラノ−ル基と結合する成分であり、また、重合性不飽和基とは、活性ラジカル種により付加重合を経て分子間で化学架橋する成分である。また、前記式(1)で表される2価の有機基である−X(C=Y)NH−基およびウレタン結合基はこれらアルコキシシリル基を有する分子片と重合性不飽和基を有する分子片とを直接もしくは他の分子片を介して結合する構成単位であると同時に分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、本発明組成物の硬化物に優れた力学的強度、基材との密着性、耐熱性等の性能を発生せしめると考えられる。
−X(C=Y)NH−基としては、−S(C=O)NH−基が好ましい。
【0012】
アルコキシシラン化合物の構造としては例えば、
一般式(2);
【0013】
【化3】
【0014】
に示すアルコキシシラン化合物をあげることができる。
【0015】
一般式(2)中、R1は水素原子、およびC1からC8の1価の有機基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、オクチル基等である。R2は水素原子、およびC1からC3の1価のアルキル基である。mは1,2もしくは3であり、(R1O)mR2Si3-mで示されるアルコキシシリル基としては例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等をあげることができ、好ましくは、トリメトキシシリル基およびトリエトキシシリル基である。
【0016】
また、式中、−[(C=O)NH−R4−NH(C=O)O−X−O]p−として示される構造単位は前記式(2)に示す構造において分子鎖を延長することを目的として導入される。R3はC1からC3の2価の有機基である。R4は2価の有機基であり、R3と同一でも異なっていてもよく、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量78から1000の2価の有機基の中から選ばれ、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式または多環式の2価の有機基;ビニレン、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;等をあげることができ、また、これらのアルキル基置換体、アリ−ル基置換体も用いることができる。これら2価有機の構造中には炭素、水素原子以外の元素から構成される原子団を含んでいてもよい。式中、pは0もしくは1であり、Xは2価の有機基であり、さらに詳しくは、イソシアネ−ト基と付加反応できる活性水素原子を分子内に2個以上有する化合物から誘導される2価の有機基であり、例えば、ポリアルキレングリコ−ル類、ポリアルキレンチオグリコ−ル類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリカ−ボネ−ト類、ポリアルキレンジアミン類、ポリアルキレンジカルボン酸類、ポリアルキレンジオ−ル類、ポリアルキレンジメルカプタン類から活性水素原子を2個除くことで誘導される2価の有機基を例示することができる。また、R5は(n+1)価の有機基である。かかる有機基は、好ましくは鎖状、分岐状または環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、脂環式基の中から選ばれる。また、nは好ましくは1から20の正の整数であり、より好ましくは1から10であり、さらに好ましくは3から5である。前記式中Yは活性ラジカル種の存在下、分子間架橋反応をする重合性不飽和基を分子中に有する1価の有機基を表し、例えば、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレエ−ト基、アクリルアミド基等があげられる。これらの中でアクリロキシ基が好ましい。
【0017】
アルコキシシラン化合物の分子構造の構築には、通常、メルカプト基を有するアルコキシシラン、すなわちメルカプトアルコキシシランと、ポリイソシアネ−ト化合物およびイソシアネ−ト基と付加反応を起こす活性水素を有する活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加反応により行うことができる。
【0018】
アルコキシシラン化合物の製造方法としては例えば、
(A)法;はじめにメルカプトアルコキシシランとポリイソシアネ−ト化合物との付加体を反応させることで分子中にアルコキシシリル基、−S(C=O)NH−結合基、およびイソシアネ−ト基を含む中間体を製造し、次に中間体中に残存するイソシアネ−トに対して活性水素基含有重合性不飽和化合物を反応させウレタン基を介して結合させる方法。
(B)法;はじめにポリイソシアネ−ト化合物と活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加体を反応させることで分子中に重合性不飽和基、ウレタン結合基、およびイソシアネ−ト基を含む中間体を形成し、これにメルカプトアルコキシシランを反応させ−S(C=O)NH−基を介して結合させる方法
等をあげることができる。さらに、前記(A)または(B)法において、鎖延長単位としてさらに、イソシアネ−トと付加反応を起こす活性水素を分子内に2個以上有する鎖状、環状または分岐状の化合物をポリイソシアネ−ト化合物とのウレタン結合を介して延長することもできる。
【0019】
前記式(3)に示した化合物を製造において、直接、ポリイソシアネ−ト化合物との反応により−S(C=O)NH−結合を形成することができるアルコキシシランの例としては、反応生成物としてアルコキシシリル基とメルカプト基を分子中にそれぞれ1個以上有する化合物の中から選ぶことができる。
【0020】
例えば、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、メルカプイトプロピルメトキシジメチルシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリフェノキシシラン、メルカプトプロピルトリブトキシシラン等のメルカプトアルコキシシランをあげることができ、好ましくはメルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシランである。市販されているメルカプトアルコキシシランとしては、例えば東レ・ダウ・コ−ニング(株)製SH6062をあげることができる。これらメルカプトアルコキシシランは単独または2種以上を混合して用いてもよく、さらに、メルカプトアルコキシシランの例としては、アミノ置換アルコキシシランとエポキシ基置換メルカプタンとの付加生成物、エポキシシランとα、ω−ジメルカプト化合物との付加生成物を利用することができる。アルコキシシラン化合物を製造する際に利用する、ポリイソシアネ−ト化合物としては鎖状飽和炭化水素、環状飽和炭化水素、芳香族炭化水素で構成されるポリイソシアネ−ト化合物の中から選ぶことができ、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。1分子中のイソシアネ−ト基の個数は、通常2以上、30未満であり、好ましくは2以上10未満である。30を越えると生成物の粘度が高くなり作業性が低下する場合がある。
【0021】
このようなポリイソシアネ−ト化合物の例としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネ−ト、ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネ−ト等の鎖状炭化水素ポリイソシアネ−ト化合物;イソフォロンジイソシアネ−ト、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、水添ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、水添キシレンジイソシアネ−ト、水添トルエンジイソシアネ−ト、1,3−ビス(イソシアナ−トメチル)シクロヘキサン等の環状飽和炭化水素ポリイソシアネ−ト化合物;2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、パラフェニレンジイソシアネ−ト、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネ−ト、4,4’−ビフェニレンジイソシアネ−ト、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネ−ト、4−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、ポリジフェニ−ルメタンのポリイソシアネ−ト等の芳香族炭化水素ポリイソシアネ−ト化合物を挙げることができる。
【0022】
これらの中で好ましい例を挙げると、環状飽和炭化水素ポリイソシアネ−ト化合物および芳香族炭化水素ポリイソシアネ−ト化合物であり、さらに好ましくは環状飽和炭化水素のポリイソシアネ−ト化合物をあげることができる。好ましい具体例としては、イソフォロンジイソシアネ−ト、水添キシレンジイソシアネ−ト、水添トルエンジイソシアネ−トである。また市販されているポリイソシアネ−ト化合物を例示すると、三井日曹ウレタン(株)製のTDI−80/20、TDI−100、MDI−CR100、MDI−CR300、MDI−PH、NDIや日本ポリウレタン工業(株)製のコロネ−トT、ミリオネ−トMT、ミリオネ−トMR、HDI、武田薬品工業(株)製 タケネ−ト600をあげることができる。
【0023】
これらポリイソシアネ−ト化合物の使用量は、前記(A)法に示す製造法においては、メルカプトアルコキシシランのメルカプト基1当量に対してのイソシアネ−ト基当量としては、通常0.1から100の範囲内で、好ましくは0.5から10の範囲で、さらに好ましくは0.9から1.2の範囲で添加される。ポリイソシアネ−ト化合物基当量の添加量が0.1当量未満の場合、未反応メルカプトシランが0.9当量以上存在することになり、塗膜の磨耗性が十分でない場合がある。また、100当量を越えたポリイソシアネ−ト化合物の使用は、未反応イソシアネ−ト基が過剰に存在することになり耐候性が低下する場合がある。
【0024】
一方前記(B)法に示す製造法においては、活性水素基含有重合性不飽和化合物中の活性水素基1当量に対し、ポリイソシアネート化合物はイソシアネート基当量として通常0.1から100の範囲であり、好ましくは0.5から10当量の範囲で、さらに好ましくは0.9から1.2の範囲で添加される。
【0025】
これら前記(A)または(B)法いずれの方法においても、反応時間の短縮を目的として触媒を添加してもよい。この触媒としては、塩基性触媒および酸性触媒のいずれかが用いられる。塩基性触媒の例としては、ピリジン、ピロ−ル、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、アンモニアなどのアミン類;トリブチルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン等のフォスフィン類を挙げることができる。これらの中でピリジン、トリエチルアミン等の3級アミンが好ましい。また酸性触媒としては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、メチルDABCO、トリブトキシアルミニウム、トリチタニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等の金属アルコキシド類;3フッ化硼素ジエチルエ−テラ−ト、塩化アルミニウムなどのルイス酸類;2−エチルヘキサン酸錫、オクチル錫トリラウレ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル錫ジアセテ−ト等の錫化合物をあげる。これら触媒の中で好ましいものは酸性触媒であり、特に好ましくは錫化合物であり、さらに好ましくはオクチル錫トリラウレ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、オクチル錫ジアセテ−ト等である。これら触媒の添加量はポリイソシアネ−ト化合物100重量部に対して0.01から5重量部であり、好ましくは0.1から1重量部である。0.01重量部未満では触媒添加による反応時間の短縮効果はわずかであり、一方、5重量部を越えると生成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0026】
アルコキシシリル化合物の製造において、前記ポリイソシアネ−ト化合物と付加反応によりウレタン結合を介し結合できる重合性不飽和化合物の例としては、分子内にイソシアネ−ト基との付加反応によりウレタン結合を形成できる活性水素原子を分子中に1個以上有し、重合性不飽和基を分子中に1個以上含む化合物の中から単独もしくは2種以上の混合物として用いることができる。
【0027】
そのような化合物としては、カルボン酸含有重合性不飽和化合物、水酸基含有重合性不飽和化合物がある。例えば、カルボン酸を含有する重合性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、ケイヒ酸、マレイン酸、フマル酸、2−(メタ)アクリロキシプロピルヘキサヒドロゲンフタレ−ト、2−(メタ)アクリロキシエチルヘキサヒドロゲンフタレ−ト等の不飽和脂肪族カルボン酸類;2−(メタ)アクリロキシプロピルフタレ−ト、2−(メタ)アクリロキシプロピルエチルフタレ−ト等の不飽和芳香族カルボン酸類;をあげることができる。また、水酸基含有重合性不飽和化合物として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレ−ト、1,4ブタンジオ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェ−ト、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレ−ト、ネオペンチルグリコ−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、ポリ(ペンタメチレンオキシカルボキシレ−ト)エトキシ(メタ)アクリレ−ト、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシアルファメチルスチレン、ヒドロキシエチルスチレン、ヒドロキシ末端ポリエチレングリコ−ルスチリルエ−テル、ヒドロキシ末端ポリプロピレングリコ−ルスチリルエ−テル、ヒドロキシ末端ポリテトラメチレングリコ−ルスチリルエ−テル、末端ヒドロキシポリエチレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、末端ヒドロキシポリプロピレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、末端ヒドロキシポリテトラエチレングリコ−ル(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパンジ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパンモノ(メタ)アクリレ−ト、EO変性トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、PO変性トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスルト−ルペンタ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルトリ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルジ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルモノ(メタ)アクリレ−ト、等の水酸基含有アクリレ−ト類、水酸基含有メタクリレ−ト類、水酸基含有スチレン類をあげることができる。
【0028】
これらの中で好ましいのは、不飽和脂肪族カルボン酸類、水酸基含有アクリレ−ト化合物であり、さらに好ましくは、水酸基含有アクリレ−ト化合物であり、例えば、2−ヒドロキシルエチルアクリレ−ト、2−ヒドロキシプロピルアクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルトリアクリレ−ト、ジペンタエリスルト−ルペンタアクリレ−トをあげることができる。
【0029】
これら重合性不飽和化合物の使用量はその活性水素基の当量として、メルカプトアルコキシシランとポリイソシアネ−ト化合物との付加反応により得られる中間体中の残存イソシアネ−ト基1当量に対し、通常、1当量以上である。1当量未満ではアルコキシシリル化合物中に活性イソシアネ−ト基が残存する為、水分との反応による発泡、増粘、着色などの好ましくない性能が発現する場合がある。
【0030】
アルコキシシリル化合物の製造においては、塗膜の柔軟性や基材に対する密着性向上を目的として、ポリイソシアネ−ト化合物との付加反応によりアルコキシシリル基と重合性不飽和基との間に2価の有機基を導入してもよく、そのような2価の有機化合物単位の前駆体としてはイソシアネ−ト基と付加反応を起こす活性水素を分子内に2個以上有する鎖状、環状、分岐状の有機化合物を利用できる。ここで活性水素を有する基の例としては、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基、シラノ−ル基等をあげることができる。これらの有機化合物は、活性水素を2個以上、好ましくは2個以上10個未満、さらに好ましくは2個を有する。そのような活性水素を有する化合物の分子量は通常、50から10万であり、好ましくは100から5万、さらに好ましくは500から1万である。そのような2価の有機化合物としては、例えば、ポリアルキレングリコ−ル類、ポリアルキレンチオグリコ−ル類、ポリエステルジオ−ル類、ポリアミド類、ポリカ−ボネ−トジオ−ル類、ポリアルキレンジアミン類、ポリアルキレンジカルボン酸類、ポリアルキレンジオ−ル類、ポリアルキレンジメルカプタン類を挙げることができる。これらの中でポリアルキレングリコ−ルが好ましい。市販されているポリアルキレングリコ−ル類としては例えば、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラエチレングリコ−ル、ポリヘキサメチレングリコ−ルや、これらの2種以上のポリアルキレングリコ−ルとの共重合体の中から選ぶことができ、日本油脂(株)製のユニセ−フDC1100、ユニセ−フDC1800、ユニセ−フDCB1100、ユニセ−フDCB1800、保土谷化学(株)製のPPTG4000,PPTG2000、PPTG1000、PTG2000、PTG3000、PTG650、PTGL2000、PTGL1000、旭硝子(株)製のEXENOL1020、第一工業製薬(株)製のPBG3000、PBG2000、PBG1000、Z3001等が挙げられる。
【0031】
上記の2価の有機基を構成成分として含む重合性不飽和基含有アルコキシシランを製造する場合をポリアルキレングリコ−ルを例にして製造法(C)法および(D)法として示す。
【0032】
製造法(C)法:末端に活性イソシアネ−ト基を有する、メルカプトアルコキシシランとポリシソシアネ−ト化合物との付加体に対し、ポリアルキレングリコ−ルを加え、片末端ヒドロキシのアルコキシシランとしたのち、これに対し別途合成した、末端に水酸基を有する重合性不飽和化合物とポリイソシアネ−ト化合物との付加体を反応させウレタン結合で両者をつなぐ方法。
【0033】
製造法(D)法:末端に活性イソシアネ−ト基を有する、メルカプトアルコキシシランとポリイソシアネ−ト化合物との付加体に対し、別途合成した、末端に活性水酸基を有する、ポリアルキレングリコ−ルポリイソシアネ−ト化合物、水酸基含有重合性不飽和化合物との付加体を反応させウレタン結合で両者をつなぐ方法を挙げることができる。
前記(C)法または(D)法におけるウレタン結合の形成条件は前記(A)または(B)法と同様であり、結合に関与する、末端に活性イソシアネ−ト基を有する化合物に対する末端に水酸基を有する化合物の当量比は通常、1.0から1.2の範囲である。1.0未満の場合は未反応のイソシアネ−ト基による着色、増粘が起こりやすい。
【0034】
また、アルコキシシラン化合物の製造において重合性不飽和基修飾アルコキシシランの加水分解物として他の有機アルコキシシランとの加水分解生成物を用いてもよく、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等のアルキルアルコキシシランとの縮合物を用いても良い。加水分解生成物を製造する場合、加水分解に用いる水の量は全アルコキシ基に対して通常0.5から1.5当量であり、溶剤の存在下もしくは非存在下で、0℃から成分の沸点以下の温度で5分から24時間加熱攪拌することで加水分解、縮重合物を得ることができる。その際、反応時間の短縮を目的に酸性触媒もしくは塩基触媒を併用することもできる。
【0035】
成分B製造に用いられるシリカ粒子は粉体状シリカまたはコロイダルシリカであり、粒子の平均径としては、例えば、0.001μmから20μmのものである。本発明を用いて透明な皮膜を形成することを目的とする場合、好ましい粒子径は0.01μmから2μm、さらに好ましくは、0.01μmから0.05μmである。シリカ粒子の形状は球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、もしくは不定形状であり、好ましくは球状である。シリカ粒子の比表面積は0.1から3000m2/gであり、好ましくは10から1500m2/gである。これらシリカ粒子の使用形態は乾燥状態の粉末、もしくは水もしくは有機溶剤で分散した状態で用いることができ、コロイダルシリカとして当業界に知られている微粒子状のシリカ粒子の分散液を直接用いることができる。特に透明性を追求する目的においてはコロイダルシリカの利用が好ましい。コロイダルシリカの分散溶媒が水の場合、その水素イオン濃度はpH値として2から10の範囲であり、好ましくはpH3から7の酸性コロイダルシリカが用いられる。また、コロイダルシリカの分散溶媒が有機溶剤の場合、有機溶剤としてメタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、エチレングリコ−ル、ブタノ−ル、エチレングリコ−ルモノプロピルエ−テル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド等の溶剤もしくはこれらと相溶する有機溶剤もしくは水との混合物として用いても良い。好ましい分散溶剤はメタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、メチルエチルケトン、キシレンである。シリカ粒子の市販品としては、例えば、コロイダルシリカとしては日産化学工業(株)製のメタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、およびST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等をあげることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製のアエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製のシルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製のE220A、E220 富士シリシア(株)製のサイリシア470、日本板硝子(株)製のSGフレ−ク等を挙げることが出来る。
【0036】
成分Bに固定されたアルコキシシラン化合物は通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の重量減少%の恒量値として、例えば、空気中で室温から通常800℃までの熱重量分析により求めることが出来る。
【0037】
成分Bの製造においてアルコキシシラン化合物の加水分解で消費される水の量は、1分子中のケイ素上のアルコキシ基の少なくとも1個が加水分解される量あればよい。好ましくは加水分解の際に添加、もしくは存在する水の量は、ケイ素上の全アルコキシ基のモル数に対し3分の1以上であり、さらに好ましくは全アルコキシ基のモル数の2分の1以上3倍未満である。完全に水分の存在しない条件下で前記式(2)に示すアルコキシシラン化合物とシリカ粒子とを混合して得られる生成物は、シリカ粒子表面にアルコキシシラン化合物が物理吸着した生成物であり、そのような成分から構成される組成物においては本発明の組成物の一つの目的である耐磨耗性の発現の効果は低い。
【0038】
本発明の成分Bの製造においては前記式(2)に表されるアルコキシシラン化合物を別途加水分解操作を行った後、これと粉体シリカ粒子もしくはコロイダルシリカを混合し、加熱、攪拌操作を行う方法;もしくは、前記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物の加水分解をシリカ粒子の存在下で行う方法;また、他の成分、例えば、多官能不飽和有機化合物、単価不飽和有機化合物、光重合開始剤等の存在下、シリカ粒子の表面処理を行う方法等を選ぶことができるが、前記式(2)で表されるアルコキシシラン化合物の加水分解をシリカ粒子の存在下で行う方法が好ましい。成分Bを製造する際、その製造時の温度は通常、20℃以上150℃以下であり、また処理時間は5分から24時間の範囲である。
【0039】
シリカ粒子は、通常の保管状態として粒子表面に吸着水として水分を含むことが知られている。例えば、有機溶剤分散コロイダルシリカ中においても通常製品として0.5%相当の水分を含有する。したがって、成分Bの製造においては、アルコキシシラン化合物とシリカ粒子とを混合し、加熱、攪拌処理することにより原料中に含まれる水分を利用して製造することも可能である。
【0040】
本発明の成分Bの製造において、粉体状のシリカ粉体を用いる場合、アルコキシシラン化合物との反応を円滑にかつ、均一に行わせることを目的として、水と相溶する有機溶媒を添加してもよい。そのような有機溶媒の好ましい種類は、アルコ−ル類、ケトン類、エ−テル類、アミド類であり、アルコ−ル類としてはメタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ル、エチレングリコ−ルモノメチルエ−テル、エチレングリコ−ルモノブチルエ−テル等、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アミド類としてはジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ガンマブチロラクトン等をあげることができる。これらの溶剤の添加量は反応を円滑、均一に行わせる目的に合う限り特に制限はない。
【0041】
また、成分Bの製造において、反応を促進するため、触媒として酸もしくは塩基を添加してもよく、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、等の無機酸、もしくはメタンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、フタル酸、マロン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸や、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸等の不飽和有機酸やテトラメチルアンモニウム塩酸塩、テトラブチルアンモニウム塩酸塩等のアンモニウム塩をあげることがでる。また、塩基としては、アンモニア水、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級、2級または3級脂肪族アミン、ピリジン等の芳香族アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類を挙げることができる。これらの中で好ましい例を挙げると酸としては、有機酸、不飽和有機酸、塩基としては3級アミンもしくは4級アンモニウムヒドロキシドを挙げられる。これら、酸もしくは塩基の添加量は、アルコキシシラン化合物100重量部に対して0.001重量部から1.0重量部、好ましくは0.01重量部から0.1重量部である。
【0042】
本発明で成分Cとして用いられるシリコーンを側鎖にもつグラフト共重合体は、好ましくはシリコーンを側鎖にもつアクリル系グラフト共重合体である。アクリル変性シリコーン高分子モノマーとラジカル重合性単量体をラジカル重合させて成るシリコーン系グラフト共重合体としては、前記アクリル変性シリコーンが、下記式(3)で示されるシリコーンと下記式(4)で示されるアクリル化合物とを縮合させて成る生成物をあげることができる。
【0043】
【化4】
【0044】
(式中R6およびR7は炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基、フェニル基または一価のハロゲン化炭化水素基を表す。qは1以上の正数である。)
【0045】
【化5】
【0046】
(式中R8は水素原子またはメチル基を表す。R9はメチル基、エチル基、またはフェニル基を表し、2つのR9は互いに同一もしくは異なっていてもよい。Zは塩素原子、メトキシ基またはエトキシ基を表す。)
【0047】
ここで用いられる前記式(3)で示されるシリコーンは市販品として入手でき、目的にあったものを使用することができる。前記式(3)におけるR6およびR7は炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基、フェニル基または一価のハロゲン化炭化水素であり、炭素数1〜10の一価の脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、アシル基等が挙げられ、一価のハロゲン化炭化水素としては、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロ−3,3−ジフルオロブチル基、2−クロロエチル基等が挙げられる。R8および R9として特に好ましいのはメチル基である。
【0048】
前記式(3)でqは1以上の正数であるが、一般にqの数が100以上という高分子量のシリコーンから誘導されるアクリル変性シリコーンとラジカル重合性単量体との共重合からはオイル状のものが得られやすい傾向にあり、qの数が100以下という低分子量シリコーンから誘導されるアクリル変性シリコーンとラジカル重合性単量体との共重合からは用いるモノマーの種類によりオイル状、ゼリー状、固体状等各種のものを得ることができる。
【0049】
次に前記式(4)で示されるアクリルシラン化合物としては、例えばγ−メタクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルジフェニルクロロシラン、γ−アクリルオキシプロピルジメチルクロロシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリクロロシラン等が挙げられる。
これらのアクリルシラン化合物は、特公昭33−9969号の方法等に従い、ケイ素化合物と脂肪族性多重結合を有する化合物とを塩化白金酸の存在下で反応させることにより容易に得られる。
【0050】
また、アクリル変性シリコーンとラジカル重合性単量体とのラジカル共重合は、従来公知の方法を使用でき、放射線照射法、ラジカル重合開始剤を用いる方法を使用できる。さらに紫外線照射法により共重合させる場合は、ラジカル重合開始剤として公知の増感剤を使用し、電子線照射により共重合させる場合はラジカル重合開始剤を使用する必要はない。
このようにして得られたシリコーン共重合体は、ラジカル重合性単量体を幹とし、シリコーンを枝とする櫛形グラフト共重合体である。
【0051】
シリコーン共重合体の市販品としては、サイマックUS−150、US−270、US−350、US−450、レゼダGP−700(以上、東亞合成(株)製)等を挙げることができる。
【0052】
本発明で成分Dとして用いられる放射線重合開始剤としては、放射線照射により分解してラジカルを発生して重合を開始せしめるものであればよく、必要に応じてさらに光増感剤を用いることもできる。このような放射線重合開始剤としては、放射線照射により分解してラジカルを発生して重合を開始せしめるものであればいずれでもよい。なお、本発明で「放射線」という語は、赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、α線、β線、γ線等をいう。
【0053】
上記放射線重合開始剤の具体例としては、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン系化合物、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、ビスアシルフォスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)等が挙げられ、さらにBTTBと色素増感剤、例えばキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン等との組み合わせ等が挙げられる。
これらのうち、特にベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が好ましい。
【0054】
放射線重合開始剤の市販品としてはイルガキュア184、651、500、907、369、784、2959(以上、チバガイギー社製)、ルシリンTPO(BASF社製)、ダロキュア1116、1173(以上、メルク社製)、ユベクリルP36(UCB社製)、エスカキュアKIP150、KIP100F(以上、ランベルティ社製)等を挙げることができる。
【0055】
また、増感剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等があり、市販品としてはユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0056】
本発明の成分Dである前記放射線重合開始剤の組成物中に占める割合は、通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。10重量%を超えると、組成物の保存安定性や硬化物の物性等に悪影響を及ぼすことがあり、0.01重量部未満では、硬化速度が低下することがある。
【0057】
本発明では任意成分として上記の成分A以外のビニル基または(メタ)アクリロイル基を含有する重合性モノマーを使用することができ、これらは単官能性モノマーであっても多官能性モノマーであってもよい。
【0058】
上記単官能性モノマーとしては、例えばN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン等のビニル基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレートを挙げることができる。
これらのうち、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルカルバゾール、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、特にN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドンおよびアクリロイルモルフォリンが好ましく用いられる。この中でもさらに好ましくは、アクリロイルモルフォリンである。
【0059】
これら単官能性モノマーの市販品としては、例えばアロニックスM−111、M−113、M−117(以上、東亞合成化学(株)製)、カヤラッド TC110S、R−629、R−644(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート3700(大阪有機化学工業(株)製)などを使用することができる。
【0060】
また、多官能性モノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAの両末端(メタ)アクリル酸エステル、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAの両末端(メタ)アクリル酸エステル、エチレンオキシド付加テトラブロムビスフェノールAの両末端(メタ)アクリル酸エステル、プロピレンオキシド付加テトラブロムビスフェノールAの両末端(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、テトラブロムビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、リエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有モノマーを挙げることができる。
【0061】
これらのうち、エチレンオキシド付加ビスフェノールAの両末端(メタ)アクリル酸エステル、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAの両末端(メタ)アクリル酸エステル、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0062】
なお、多官能性モノマーの市販品としては、例えばユピマーUV、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート700(大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−604、(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210(東亞合成化学(株)製)などを使用することができる。
【0063】
本発明には、また必要に応じて各種添加剤を添加することができるが、これらの添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、溶媒、無機系充填材、有機系充填材、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤等がある。
【0064】
酸化防止剤の市販品としては、イルガノックス1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー社製)等が挙げられ、紫外線吸収剤としては、チヌビン P、234、320、326、327、328、213、400(以上、チバガイギー社製)、スミソーブ110、130、140、220、250、300、320、340、350、400(以上、住友化学工業(株)製)等があげられ、光安定剤の市販品としては、チヌビン292、144、622LD(以上、チバガイギー社製)、サノールLS−770、765、292、2626、1114、744(以上、三共化成工業(株)製)等が挙げられ、シランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、市販品としては SH6062、SZ6030(以上、東レ・ダウ コーニング・シリコーン社製)、KBE903、KBM803(以上、信越シリコーン(株)製)等が挙げられ、老化防止剤の市販品としては、アンティジェン W、S、P、3C、6C、RD−G、FR、AW(以上、住友化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0065】
また本発明の組成物には、その他の添加剤としてエポキシ樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、プロペニルエーテル、マレイン酸誘導体等の重合性化合物、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリブタジエン、クロロプレン、ポリエーテル、ポリエステル、ペンタジエン誘導体、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン/ブテン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー等のポリマーまたはオリゴマーも配合できる。
【0066】
本発明の放射線硬化性樹脂組成物を硬化させると、その硬化物の23℃での鉛筆硬度がH〜9Hの物が得られる。また硬化にともなう硬化収縮率は、通常10%以下、好ましくは6%以下である。さらに得られた硬化物は耐擦傷性、耐アルカリ性等に優れている。
【0067】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0068】
アルコキシシラン化合物の製造
参考例−1
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン7.8部、ジブチル錫ジラウレート0.2部からなる溶液に対し、イソフォロンジイソシアネート20.6部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間攪拌した。これにペンタエリスリトールトリアクリレート71.4部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱攪拌することでアルコキシシラン化合物であるシラン化合物を得た。これをシラン化合物Aという。生成物中の残存イソシアネート量を分析したところ0.1%以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。
【0069】
成分Bの製造
参考例−2
参考例−1で製造したシラン化合物A8.1重量部、メタノールシリカゾルMEK−ST(日産化学(株)製、メチルエチルケトン分散コロイダルシリカ(平均粒径0.01〜0.02μm)、シリカ濃度30%)90.5重量部、イオン交換水0.1重量部の混合液を、60℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.3重量部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の分散液を得た。これを分散液1aという。
【0070】
組成物の配合実施例
以下、本発明に用いる組成物の調製法について説明する。各成分の配合重量比を表1に示す。
【0071】
実施例−1
紫外線を遮蔽した容器中において、参考例−2で調製した分散液1aを71重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3重量部、サイマックUS−150を1重量部を室温下、30分攪拌することで均一溶液として表1に示す配合例−1の組成物を得た。同様の操作法により表1に示す配合例−2〜−8に示す組成物を得た。
【0072】
試験例
上記実施例で得られた樹脂組成物を用いて下記の手法で試験片を作成し、下記の如く鉛筆硬度、耐擦傷性、耐磨耗性、基板密着性および耐アルカリ性を評価した。結果を表2に示す。
【0073】
試験片の作成:
ワイヤーバーコーター(No.10)を用いて市販PETフィルム上(膜厚188μm)に実施例および比較例で得られた樹脂組成物を約5μmの厚みに塗布し、40℃の赤外線乾燥炉中で一分間放置後、空気雰囲気下で0.3J/cm2の紫外線を照射し硬化膜を得た。次いで、23℃、相対湿度50%の状態で24時間保持し、これを試験片とした。
【0074】
鉛筆硬度測定:
JIS K5400に従い、鉛筆引っかき試験機を用いて、上記試験片の鉛筆硬度を測定した。
【0075】
耐擦傷性試験:
学振型磨耗試験機に上記試験片をのせ、スチールウール#0000の上に200gの荷重をかけて10往復させた。擦傷の状況を肉眼で判定した。
判定基準
◎:全く傷が付かない
○:1〜3本の傷が付く
△:4〜10本の傷が付く
×:10本以上の傷が付く
【0076】
耐磨耗性試験:
JIS R3221に従い、テーバー磨耗試験器を用いて、上記試験片のテーバー試験(磨耗輪CS−10F,荷重500g、100回転)後のΔH(ヘーズ)値を測定した。
【0077】
基板密着性:
JIS K5400に従った。硬化試験片の表面に1mm間隔で縦、横11本ずつの切れ目を入れて100個の碁盤目をつくり、市販のセロファンテープをその表面に密着させた後、急激に剥がした時に、剥離せずに残存したマス目の数(X)をX/100で表示する。
【0078】
外観:
表面のクラック、白化、くもり等の欠陥について目視にて判定した。
判定基準
○:目立った欠陥なし
△:わずかにクラック、くもり等の発生が見られる
×:いちじるしく外観を損ねている
【0079】
耐アルカリ性試験:
恒温槽にて45℃に保った5wt%NaOH水溶液中に上記試験片を入れ1時間放置後の外観および樹脂硬化物の基板密着性を評価した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
本発明の放射線硬化性樹脂組成物はプラスチック成型物、塗装物等の表面に耐摩耗性、滑り性、耐汚染性、耐候性、耐溶剤性および耐アルカリ性を付与するといった特徴を有しており、特にプラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック成型体等のハードコート材、または建築内装材としての床材、壁材等の汚染防止もしくは傷つき防止コーティング材として用いることができるハードコート用被覆材組成物に好適である。
Claims (2)
- (C)シリコーンを側鎖にもつグラフト共重合体が、シリコーンを側鎖にもつアクリル系グラフト共重合体である、請求項1に記載の液状硬化性樹脂組成物。
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