JP5320703B2 - ハードコートフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ディスプレイ、例えば、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の表面を保護する目的等で使用される、透明基材フィルム上にハードコート層を設けたハードコートフィルムに関する。
液晶ディスプレイ(LCD)又は陰極管表示装置(CRT)等の画像表示装置における画像表示面は、取り扱い時に傷がつかないように、耐擦傷性を付与することが要求される。これに対して、基材フィルムにハードコート(HC)層を形成させた光学積層体(以下、ハードコートフィルムと呼称する。)を利用することにより、画像表示装置の画像表示面の耐擦傷性を向上させることが一般になされている。
一般的にプラスチック表面を硬質化する技術としては、オルガノシロキサン系、メラミン系等の熱硬化性樹脂をコーティングしたり真空蒸着法やスパッタリング法等で金属薄膜を形成する方法、あるいは多官能アクリレート系の活性エネルギー線硬化性樹脂をコーティングする方法などが挙げられる。
ところで、ディスプレイの前面に貼り付けたり、配置したりして、外光の反射を防止し、映像を見やすくする目的などに使用される反射防止フィルムとして用いられる光学フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この光学フィルムは、透明プラスチックの基材フィルム上に硬化層が形成されている。硬化層表面(基材フィルム反対面)側に低屈折微粒子である中空シリカを偏在させることで、見かけ上の低屈折率層を形成し、優れた反射防止性が得られることが記載されている。中空シリカとしては、空腔部の割合を大きくして屈折率を更に低いものとするため、平均粒径が30nm以上のものを用いると記載され、実施例では平均粒径が40nmのものが用いられている。中空シリカを硬化層表面側に偏在させるため、中空シリカをフッ素含有化合物で表面処理し、表面自由エネルギーを小さくしている。
特開2007−086764号公報
本発明は上記実状に鑑みて成し遂げられたものであり、従来のハードコートフィルムより、耐擦傷性に優れるハードコートフィルムを提供することを目的とする。
本発明に係るハードコートフィルムは、透明基材フィルム上にハードコート層を設けてなるハードコートフィルムであって、
当該ハードコート層は、平均粒径が5nm以上26nm以下の範囲にあり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基aを表面に有するフッ素を含有しない中実の反応性無機微粒子A、及び、前記反応性無機微粒子Aの反応性官能基aとの架橋反応性を有する反応性官能基bを有するバインダー成分Bを含み、系内における硬化反応性も有する硬化性バインダー系、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の界面及びその近傍の表層領域に、当該表層領域よりも透明基材フィルム側の領域に比べて、当該ハードコート層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が多いスキン層を有しており、
当該スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が、当該ハードコート層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数の2倍以上であることを特徴とする。
本発明によれば、反応性無機微粒子Aが、ハードコート層の透明基材フィルム側とは反対側の界面に密集してスキン層が形成され、当該スキン層は、反応性無機微粒子Aの反応性官能基aとバインダー成分Bの反応性官能基bによる架橋点の増加と、反応性無機微粒子Aの硬度により、高い硬度と膜強度を有し、優れたハードコート性を示すハードコートフィルムを得ることができる。
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記スキン層によるハードコート性向上効果をさらに高めるためには、前記スキン層の厚さは、前記透明基材フィルムとは反対側の界面から前記反応性無機微粒子Aの平均粒径の等倍から2倍までの厚さであることが好ましく、また、前記スキン層において、前記反応性無機微粒子Aが密集していることが好ましい。
さらに、前記スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が2000個/μm以上であり、且つ、前記ハードコート層全体の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が2000個/μm以下であることが好ましい。
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、前記反応性無機微粒子Aは、その表面の少なくとも一部が有機成分で被覆されており、前記反応性官能基aが当該有機成分により前記反応性無機微粒子Aの表面に導入されており、当該有機成分が、被覆前の無機微粒子の単位表面積当たり1.00×10−3g/m以上含まれることが、硬化膜の硬度を向上させる点から好ましい。
前記反応性無機微粒子Aの反応性官能基a、及び、前記バインダー成分Bの反応性官能基bは、ハードコート性の点から、いずれも重合性不飽和基を有するものであることが好ましい。
また、有機成分含有量が少なくても膜強度の向上が可能であることから、前記反応性無機微粒子Aが、飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られるものが好ましい。
有機成分により前記反応性無機微粒子Aを効率よく表面修飾することができることから、前記表面修飾化合物が、水素結合形成基を有する化合物であることが好ましい。また、反応性無機微粒子Aに導入された反応性官能基aとバインダー成分Bの反応性官能基bが架橋結合を形成しやすく、さらに膜強度を向上することが可能であることから、前記表面修飾化合物の少なくとも1種が、前記反応性官能基aとなる重合性不飽和基を有することが好ましい。
前記反応性無機微粒子Aが、当該反応性無機微粒子A表面に導入される反応性官能基a、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られるものであることが、有機成分への分散性、及び膜強度が向上する点から好ましい。
化学式(1)
−Q−C(=Q)−NH−
(化学式(1)中、Qは、NH、O(酸素原子)、またはS(硫黄原子)を示し、QはO又はSを示す。)
前記バインダー成分Bとしては、前記反応性無機微粒子Aの反応性官能基aと結合可能な反応性官能基bを3つ以上有する化合物であることが好ましい。
前記反応性無機微粒子Aの含有量は、全固形分に対して、10〜60重量%であることが好ましい。
本発明のハードコートフィルムにおいては、前記透明基材フィルムが、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とすることが好ましい。
本発明によれば、前記ハードコート層の表面を、#0000番のスチールウールで、500g/cmの荷重をかけながら、速度50mm/secで10往復摩擦させる耐スチールウール試験において、当該ハードコート層表面に傷が付かないハードコート層を備えたハードコート性に優れるハードコートフィルムを提供することが可能である。
本発明のハードコートフィルムにおいては、前記ハードコート層の膜厚が、2〜30μmであることが、当該ハードコート層を良好に作製できる点で好ましい。
本発明に係るハードコートフィルムは、ハードコート層において、透明基材フィルムとは反体側界面及びその近傍の表層領域に、特定粒径を有し、且つ、ハードコート層を形成するバインダー成分と架橋結合を形成し得る反応性官能基を有する反応性無機微粒子を、偏在させることによって、ハードコート層のハードコート性を向上させたものであり、優れたハードコート性を備えている。
本発明のハードコートフィルムは、透明基材フィルム上にハードコート層を設けてなるハードコートフィルムであって、
当該ハードコート層は、
平均粒径が5nm以上30nm以下の範囲にあり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基aを表面に有する反応性無機微粒子A、及び、
前記反応性無機微粒子Aの反応性官能基aとの架橋反応性を有する反応性官能基bを有するバインダー成分Bを含み、系内における硬化反応性も有する硬化性バインダー系、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
当該ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の界面及びその近傍の表層領域に、当該表層領域よりも透明基材フィルム側の領域に比べて、当該ハードコート層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が多いスキン層を有しており、
当該スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が、当該ハードコート層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数の2倍以上であることを特徴とするものである。
ここで、スキン層とは、ハードコート層の透明基材フィルム側とは反対側の界面(いわゆる空気界面)から一定の深さに亘る表層領域に、反応性無機微粒子Aが偏在して形成された層状構造であり、ハードコート層の空気界面側の最表面を構成するものである。スキン層は、該ハードコート層の該表層領域よりも透明基材フィルム側の領域と比較して、反応性無機微粒子Aを多く含有しており、ハードコート層において、透明基材フィルムとは反対側の界面から一定の深さを過ぎると、その厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数は、透明基材フィルム側に向かって急激に減少し、スキン層の境界の存在を明瞭に判別することができる。スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数は、該スキン層を含むハードコート層全体の厚み方向断面における単位面積当りの平均粒子数の2倍以上となっている。
図1に、本発明のハードコートフィルムの一形態例を示す。図1に示すハードコートフィルム10において、透明基材フィルム2の一方の面上には、直接、ハードコート層1が設けられている。ハードコート層1は、該ハードコート層1の透明基材フィルム2側とは反対側の界面に、反応性無機微粒子4が偏在してなるスキン層5を有している。
ここで、本発明に係るハードコートフィルムのハードコート層1における反応性無機微粒子Aの分布状態について、図2を用いて説明する。
まず、ハードコート層1の厚さ方向断面において、透明基材フィルム2側の界面1a、該透明基材フィルムとは反対側の界面(空気側界面)1b、及び、ハードコート層1の厚さ方向に平行な2辺に囲まれた領域Sを切り取り、該領域Sの単位面積あたりの反応性無機微粒子Aの平均粒子数Pを、該ハードコート層1全体の厚さ方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数とする。
領域Sにおいて、空気側界面から一定の深さDまでの領域sにおける単位面積当りの平均粒子数pを測定すると、p>P×2である。空気側界面からの深さDをDよりも深くし、空気側界面から深さDまでの領域sにおける単位面積当りの平均粒子数pを測定していくと、単位面積当りの平均粒子数pが、p=P×2となる深さDがある。そして、空気側界面からの深さがDよりも深い、深さDm+1までの領域sm+1では、単位面積当りの平均粒子数pm+1は、pm+1<P×2となる。このとき、空気界面側から深さDまでの領域sをスキン層5と考えることができる。
なお、ハードコート層における反応性無機微粒子Aの分布状態は、ハードコート層の透過電子顕微鏡(STEM)写真などにより確認することができ、反応性無機微粒子Aが偏在してなるスキン層は、その領域の境界を目視で明瞭に判別することができる。
また、ハードコート層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数は、以下のようにして求めることができる。すなわち、ハードコート層の深さ方向断面のSTEM写真等により、反応性無機微粒子Aの数をカウントし、カウントした粒子が存在する面積で除することによって単位面積当りの平均粒子数を算出することができる。
このように、ハードコート層において、透明基材フィルム側とは反対側の界面及びその近傍の表層領域に反応性無機微粒子Aを偏在させ、該表層領域以外の領域よりも反応性無機微粒子Aを多く存在させることによって、まず、反応性無機微粒子Aそのものが有する高い硬度により、ハードコート層の硬度を向上させることができる。さらには、反応性無機微粒子Aとバインダー成分Bとの架橋点の偏在により、膜強度を向上させることができる。このように反応性無機微粒子Aを偏在させることによって、同量の反応性無機微粒子Aをハードコート層全体に分散させた場合と比較して、ハードコート層表面のハードコート性を著しく且つ効率よく高めることが可能である。
しかも、本発明のハードコートフィルムにおいては、ハードコート層の表面から一定の深さまでに反応性無機微粒子Aが偏在しており(スキン層)、厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数は上記一定の深さを超えると急激に減少するものである。このように、反応性無機微粒子Aが偏在する領域(スキン層)の境界が明瞭となるように反応性無機微粒子Aを分布させることによって、ハードコート層の表面から除々に反応性無機微粒子の密度が減少するような傾斜構造で偏在させる場合と比較して、効果的にハードコート層のハードコート性を高めることができる。
スキン層の厚さは、透明基材フィルムとは反対側の界面から反応性無機微粒子Aの平均粒径の等倍から2倍までの厚さであることが好ましい。このように、ハードコート層の空気界面側の非常に限定された狭い表層領域に反応性無機微粒子Aを偏在させることによって、効率良くハードコート層のハードコート性を高めることができる。
また、スキン層によるハードコート性向上効果を高めるためには、スキン層において反応性無機微粒子Aが密集していることが好ましい。ここで、反応性無機微粒子Aが密集しているとは、隣接する反応性無機微粒子A同士が互いに接触している状態である。このように、スキン層における反応性無機微粒子Aの偏在性を高めることで、ハードコート層表面の硬度及び膜強度をさらに高めることができる。
スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数は、スキン層を含むハードコート層の全体の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数の2倍以上であれば、ハードコート層のハードコート性を充分に向上させることができるが、特に3倍以上、さらに5倍以上の倍率であることが好ましい。
さらに具体的には、スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数が2000個/μm以上であり、且つ、ハードコート層全体の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数が2000個/μm以下であることが好ましい。ハードコート層のハードコート性の観点からは、特に、スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの反応性無機微粒子Aの平均粒子数が3000個/μm以上であることが好ましい。
尚、ハードコートフィルムにおいて、ハードコート層は必ず観察者側の表面に配置される。ここで、本発明において観察者側とは、本発明に係るハードコートフィルムを画像表示装置の前面に配置する際に、観察者に向ける面を意味する。また、本発明において、表示装置側とは、本発明に係るハードコートフィルムを画像表示装置の前面に配置する際に、画像表示装置本体に向ける面を意味する。
また、図1に示すハードコートフィルム10は、透明基材フィルム上に直接、ハードコート層が設けられているが、他の層を介して、透明基材フィルム上にハードコート層を設けてもよい。また、ハードコート層は、単一層に限定されず2層以上からなる積層構造を有していてもよい。具体的な積層構造については、後述する。
以下、本発明のハードコートフィルムについて、詳しく説明していく。
なお、本明細書中において(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを表し、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。また、本願明細書中の光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
また、反応性官能基には、光硬化性官能基及び熱硬化性官能基が含まれる。光硬化性官能基とは、光照射により重合反応や架橋反応等を進行させて塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、光ラジカル重合、光カチオン重合、光アニオン重合のような重合反応、あるいは、光二量化を経て進行する付加重合または縮重合等の反応形式により反応が進行するものが挙げられる。また、本明細書中の熱硬化性官能基とは、加熱によって同じ官能基同士または他の官能基との間で重合反応または架橋反応等を進行させて塗膜を硬化させることができる官能基を意味し、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等を例示することができる。
本発明に用いられる反応性官能基としては、特に、硬化膜の硬度を向上させる観点から、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合及びエポキシ基等が挙げられる。
<透明基材フィルム>
透明基材フィルムの材質は、特に限定されないが、ハードコートフィルムに用いられる一般的な材料を用いることができ、例えば、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とするものが挙げられる。ここで、「主体とする」とは、透明基材フィルム構成成分の中で最も含有割合が高い成分を示すものである。
セルロースアシレートの具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂等が挙げられ、より具体的には、日本ゼオン(株)製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト(株)製のスミライトFS-1700、JSR(株)製のアートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製のアペル(環状オレフィン共重合体)、Ticona社製のTopas(環状オレフィン共重合体)、日立化成(株)製のオプトレッツOZ-1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。
アクリレート系ポリマーの具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリルとはアクリル、メタクリル又はその両方の混合系を意味する。
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
本発明にあっては、透明基材フィルム2は薄膜の柔軟性に富んだフィルム状体であり、その厚さは、20μm以上300μm以下、好ましくは上限が200μm以下であり、下限が30μm以上である。透明基材フィルム2は、その上にハードコート層1を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤もしくはプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行なってもよい。
<ハードコート層>
ハードコート層は本発明のハードコートフィルムに必須の層であり、観察者側の表面に設けられる。ハードコート層は1層又は2層以上からなる。
本発明にあっては、上記透明基材フィルム等の表面に、予め成形しておいたハードコート層を積層してもよい。
本発明のハードコートフィルムにおけるハードコート層は、ハードコート性を高めるための反応性無機微粒子A、及び基材や隣接する層に対する密着性を付与するためのバインダー成分Bを必須成分とする、硬化性バインダー系の硬化後にハードコート層のマトリクスを形成する成分を含有し、更に必要に応じて、帯電防止剤、レベリング剤等の添加剤、屈折率調整、架橋収縮防止、高押し込み強度付与のための無機フィラー等を含有して形成される。
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、ハードコート層の膜厚は、厚さは通常2〜30μmが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。「ハードコート層」とは、一般にJIS5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものをいうが、本発明に用いられるハードコート層1は鉛筆硬度試験によるハードコート層表面の硬度は「3H」以上であることが好ましい。
<反応性無機微粒子A>
無機微粒子をハードコート層に含有させることにより、ハードコート性を向上させることが一般になされている。また、架橋反応性を有する無機微粒子と、硬化性バインダーを架橋反応させ、架橋構造を形成することにより、ハードコート性を更に向上させることができる。反応性無機微粒子Aとは、コアとなる無機微粒子の少なくとも表面の一部に有機成分が被覆し、当該有機成分により導入された反応性官能基aを表面に有する無機微粒子のことである。反応性無機微粒子Aには、1粒子あたりコアとなる無機微粒子の数が2つ以上のものも含まれる。
本発明に係るハードコート層は、十分な耐擦傷性を有するように硬度を向上させることを目的として、反応性無機微粒子Aを含有する。反応性無機微粒子Aは、ハードコート層に更に機能を付与するものであっても良く、目的に合わせて適宜選択して用いる。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物微粒子などが挙げられる。金属微粒子、金属硫化物微粒子、金属窒化物微粒子等を用いても良い。
硬度が高い点からは、シリカ、酸化アルミニウムが好ましい。また、相体的に高屈折率層とするためには、ジルコニア、チタニア、酸化アンチモン等の膜形成時に屈折率が高くなる微粒子を適宜選択して用いることができる。同様に、相対的に低屈折率層とするためには、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物微粒子や、中空シリカ微粒子などの膜形成時に屈折率が低くなる微粒子を適宜選択して用いることができる。更に、帯電防止性、導電性を付与したい場合には、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ等を適宜選択して用いることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明のハードコートフィルムでは、中空シリカのような中空の反応性無機微粒子Aや、多孔質構造を有する反応性無機微粒子Aを用いた場合、その見かけ上の比重(中空部を含めて平均化した単位体積当りの質量)により、該反応性無機微粒子Aの空気界面側への偏在を促進することも期待できるが、中空や多孔質の無機微粒子は、その構造上、中実の無機微粒子と比較して硬度が低くなる。従って、本発明においては、典型的には中実の反応性無機微粒子Aを用いることによってその硬度を確保し、該反応性無機微粒子Aの偏在促進は、その粒径のコントロールにより行うことが好ましい。
無機微粒子の表面には通常、無機微粒子内ではこの形態で存在できない基を有する。これら表面の基は通常、相対的に反応しやすい官能基である。例えば金属酸化物の場合には、例えば水酸基及びオキシ基、例えば金属硫化物の場合には、チオール基及びチオ基、又は例えば窒化物の場合には、アミノ基、アミド基及びイミド基を有する。
本発明に用いられる反応性無機微粒子Aは、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基aを表面に有する。ここで、有機成分とは、炭素を含有する成分である。また、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆されている態様としては、例えば金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基にシランカップリング剤等の有機成分を含む化合物が反応して、表面の一部に有機成分が結合した態様のほか、例えば金属酸化物微粒子の表面に存在する水酸基に水素結合等の相互作用により有機成分を付着させた態様や、ポリマー粒子中に1個又は2個以上の無機微粒子を含有する態様などが含まれる。
当該被覆している有機成分は、無機微粒子同士の凝集を抑制し、且つ無機微粒子表面への反応性官能基数を多く導入して膜の硬度を向上させる点から、粒子表面のほぼ全体を被覆していることが好ましい。このような観点から、反応性無機微粒子Aを被覆している前記有機成分は、反応性無機微粒子A中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり1.00×10−3g/m以上含まれることが好ましい。
無機微粒子表面に有機成分を付着乃至結合させた態様においては、反応性無機微粒子Aを被覆している前記有機成分が、反応性無機微粒子A中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり2.00×10−3g/m以上含まれることが更に好ましく、3.50×10−3g/m以上含まれることが特に好ましい。
ポリマー粒子中に無機微粒子を含有する態様においては、反応性無機微粒子Aを被覆している前記有機成分が、反応性無機微粒子A中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり3.50×10−3g/m以上含まれることが更に好ましく、5.50×10−3g/m以上含まれることが特に好ましい。
当該被覆している有機成分の割合は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の重量減少%の恒量値として、例えば空気中で室温から通常800℃までの熱重量分析により求めることができる。
なお、単位面積当りの有機成分量は、以下の方法により求めたものである。まず、示差熱重量分析TG−DTAにより、有機成分重量/無機成分重量を測定する。次に、重量と用いた無機微粒子の比重から無機成分全体の体積を計算する。また、被覆前の無機微粒子が真球状であると仮定し、被覆前の無機微粒子の平均粒径から被覆前の無機微粒子1個当りの体積を計算する。無機成分全体の体積と被覆前の無機微粒子1個当りの体積から、被覆前の無機微粒子の個数を求める。次に、反応性無機微粒子A1個当りの有機成分重量を、被覆前の無機微粒子1個当りの表面積で割ることにより、被覆前の無機微粒子の単位面積当たりの有機成分量を求めることができる。
本発明において使用する反応性無機微粒子Aは、平均粒径が5nm以上30nm以下である。本発明は、このように比較的小粒径の反応性無機微粒子Aを用いることで、ハードコート層における該反応性無機微粒子Aの一定領域(透明基材フィルムとは反対側の界面及びその近傍の表層領域)への偏在を促進し、該反応性無機微粒子Aによるハードコート層のハードコート性の向上を達成するものである。
上記範囲の平均粒径を有する小粒径の反応性無機微粒子Aは、その比表面積が大きいため、硬化性樹脂組成物中において、バインダー成分との相溶性に基づく作用により、相分離しようとする力が大きくなる。その結果、透明基材フィルム上に塗布された硬化性樹脂組成物において、該反応性無機微粒子Aの一部は自然と空気界面側へと拡散し、偏在することとなる。
以上のように、本発明のハードコートフィルムは、反応性無機微粒子Aの小粒径化による相分離性及び拡散性の増大を利用することによって、該反応性無機微粒子Aの偏在を促進し、ハードコート層のハードコート性の向上を実現するものである。
反応性無機微粒子Aの平均粒径は、硬度の点及びスキン層の形成を良好にする点から5nm以上30nm以下であることが好ましく、5nm以上25nm以下であることがより好ましい。
反応性無機微粒子Aの平均粒径を5nm以上とすることで、ハードコート層のハードコート性を充分に向上させることが可能となる。一方、平均粒径が30nm以下の反応性無機微粒子Aを用いることで、該反応性無機微粒子Aの偏在を充分に促進することができ、反応性無機微粒子Aの偏在による充分なハードコート性向上効果が得られる。また、平均粒径が30nm以下の反応性無機微粒子Aは、比表面積が大きいことから、マトリクス内での架橋点を高めることができ、膜強度の高いハードコート層が得られるという利点もある。
また、透明性を損なうことなく、樹脂のみを用いた場合のハードコート層の復元率を維持しつつ、硬度を著しく向上させる点から、前記反応性無機微粒子Aは粒径分布が狭く、単分散であることが好ましい。
尚、ここでの平均粒径は、反応性無機微粒子Aを用いて作製したハードコートフィルムの断面TEM写真による観察を行い、反応性無機微粒子Aの粒径を測定してその平均値を算出する他、反応性無機微粒子Aを溶剤分散ゾルとし、該ゾルにおける50%平均粒径を、例えば、日機装(株)社製Nanotracまたは粒度分析計を用いて求めることができる。
また、反応性無機微粒子Aの反応性官能基aとしては、特に、硬化膜の硬度を向上させる観点から、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合及びエポキシ基等が挙げられる。
少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基aを表面に有する反応性無機微粒子Aを調製する方法としては、当該無機微粒子の種類と導入したい反応性官能基aにより、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。
中でも、本発明においては、被覆している有機成分が反応性無機微粒子A中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり1.00×10−3g/m以上含まれることが可能で、無機微粒子同士の凝集を抑制し、膜の硬度を向上させる点から、以下の(i)(ii)の無機微粒子のいずれかを適宜選択して用いることが好ましい。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基を有する無機微粒子。
(ii)当該無機微粒子に導入したい反応性官能基a、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基を有する無機微粒子。
化学式(1)
−Q−C(=Q)−NH−
(化学式(1)中、Qは、NH、O(酸素原子)、またはS(硫黄原子)を示し、QはO又はSを示す。)
以下、上記本発明において好適に用いられる反応性無機微粒子Aを順に説明する。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基を有する無機微粒子。
上記(i)の反応性無機微粒子Aを用いる場合には、有機成分含量が少なくても膜強度を向上できるというメリットがある。
上記(i)の反応性無機微粒子Aに用いられる上記表面修飾化合物は、カルボキシル基、酸無水物基、酸塩化物基、酸アミド基、エステル基、イミノ基、ニトリル基、イソニトリル基、水酸基、チオール基、エポキシ基、第一級、第二級及び第三級アミノ基、Si−OH基、シランの加水分解性残基、又はβ−ジカルボニル化合物のようなC−H酸基等の、分散条件下において上記無機微粒子の表面に存在する基と化学結合可能な官能基を有する。ここでの化学結合は、好ましくは、共有結合、イオン結合又は配位結合が含まれるが、水素結合も含まれる。配位結合は錯体形成であると考えられる。例えば、ブレンステッド又はルイスに従う酸性/塩基反応、錯体形成又はエステル化が、上記表面修飾化合物の官能基と無機微粒子表面の基の間で生じる。上記(i)の反応性無機微粒子Aに用いられる上記表面修飾化合物は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
上記表面修飾化合物は通常、無機微粒子の表面の基との化学結合に関与できる少なくとも1つの官能基(以下、第1の官能基という)に加えて、当該官能基を介して上記表面修飾化合物に結びついた後に、無機微粒子に新たな特性を付与する分子残基を有する。分子残基又はその一部は疎水性又は親水性であり、例えば無機微粒子の安定化、融和化、又は活性化させる。
例えば、疎水性分子残基としては、不活性化又は反発作用をもたらす、アルキル、アリール、アルカリル又はアラルキル基等が挙げられる。親水性基としてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はポリエステル基等が挙げられる。
反応性無機微粒子Aが後述するバインダー成分Bと反応できるように表面に導入される反応性官能基aは、当該バインダー成分Bが有する反応性官能基bに応じて、適宜選択される。当該反応性官能基aとしては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合及びエポキシ基等が挙げられる。
上記表面修飾化合物の上記分子残基中に、当該バインダー成分Bと反応できる反応性官能基aが含まれる場合には、上記表面修飾化合物中に含まれる第1の官能基を無機微粒子表面に反応させることによって、上記(i)の反応性無機微粒子Aの表面に当該バインダー成分Bと反応できる反応性官能基aを導入することが可能である。例えば、第1の官能基のほかに、更に重合性不飽和基を有する表面修飾化合物が、好適なものとして挙げられる。
一方で、上記表面修飾化合物の上記分子残基中に、第2の反応性官能基を含有させ、当該第2の反応性官能基を足掛かりにして、上記(i)の反応性無機微粒子Aの表面に当該バインダー成分Bと反応できる反応性官能基aが導入されても良い。例えば、第2の反応性官能基として水酸基及びオキシ基のような水素結合が可能な基(水素結合形成基)を導入し、当該微粒子表面上に導入された水素結合形成基に、更に別の表面修飾化合物の水素結合形成基が反応することにより、当該バインダー成分Bと反応できる反応性官能基aを導入されることが好ましい。すなわち、表面修飾化合物として、水素結合形成基を有する化合物と、重合性不飽和基などの当該バインダー成分Bと反応できる反応性官能基aと水素結合形成基を有する化合物とを併用して用いることが好適な例として挙げられる。
水素結合形成基の具体例としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシジル基、アミド基、といった官能基、もしくはアミド結合を示すものである。ここで、アミド結合とは、−NHC(O)や>NC(O)−を結合単位に含むものを示す旨である。本発明の表面修飾化合物に用いられる水素結合形成基としては、中でもカルボキシル基、水酸基、アミド基が好ましい。
上記(i)の反応性無機微粒子Aに用いられる上記表面修飾化合物の分子量は500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、200を超えないことが特に好ましい。このような低分子量を有するため、無機微粒子表面を急速に占有し、無機微粒子同士の凝集を妨げることが可能であると推定される。
上記(i)の反応性無機微粒子Aに用いられる上記表面修飾化合物は、表面修飾のための反応条件下で好ましくは液体であり、分散媒中で溶解性又は少なくとも乳化可能であるのが好ましい。中でも分散媒中で溶解し、分散媒中で離散した分子又は分子イオンとして一様に分布して存在することが好ましい。
飽和又は不飽和カルボン酸としては、1〜24の炭素原子を有しており、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クエン酸、アジピン酸、琥珀酸、グルタル酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びステアリン酸、並びに対応する酸無水物、塩化物、エステル及びアミド、例えばカプロラクタム等が挙げられる。前記カルボン酸には、炭素鎖がO−基、S−基又はNH−基により遮断されるものも含まれる。特に好ましいものとしては、カルボン酸モノエーテルやカルボン酸ポリエーテルなどのカルボン酸エーテル、並びに対応する酸水化物、エステル及びアミド(例えば、メトキシ酢酸、3,6−ジオキサヘプタン酸及び3,6,9−トリオキサデカン酸)等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸を用いると、重合性不飽和基を導入することができる。
好ましいアミンの例は、一般式Q3−nNH(n=0,1又は2)を有するものであり、残基Qは独立して、1〜12、特に1〜6、特別好ましくは1〜4の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル及びブチル)、並びに6〜24の炭素原子を有するアリール、アルカリル又はアラルキル(例えば、フェニル、ナフチル、トリル及びベンジル)を表す。また、好ましいアミンの例としては、ポリアルキレンアミンが挙げられ、具体例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、トルイジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンである。
好ましいβ−ジカルボニル化合物は4〜12、特に5〜8の炭素原子を有するものであり、例えば、ジケトン(アセチルアセトンなど)、2,3−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸、アセト酢酸−C−C−アルキルエステル(アセト酢酸エチルエステルなど)、ジアセチル及びアセトニルアセトンが挙げられる。
アミノ酸の例としては、β−アラニン、グリシン、バリン、アミノカプロン酸、ロイシン及びイソロイシンが挙げられる。
好ましいシランは、少なくとも1つの加水分解性基又はヒドロキシ基と、少なくとも1つの非加水分解性残基を有する加水分解性オルガノシランである。ここで加水分解性基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基及びアシルオキシ基が挙げられる。非加水分解性残基としては、反応性官能基aを有する及び/又は反応性官能基aを有しない非加水分解性残基が用いられる。
用いられるシランとしては特に限定されないが、例えば、CH=CHSi(OOCCH、CH=CHSiCl、CH=CH−Si(OC、CH=CHSi(OC、CH=CH−Si(OCOCH、CH=CH−CH−Si(OC、CH=CH−CH−Si(OC、CH=CH−CH−Si(OOCCH、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、γ−グリシジルオキシプロピルジメチルクロロシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、N−(2−アミノエチル)−3アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N'−(2'−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、ビス−(ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン及び3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
官能基を有する金属化合物としては、元素周期表の第1群III〜V及び/又は第2群II〜IVからの金属Mの金属化合物が挙げられる。ジルコニウム及びチタニウムのアルコキシド、M(OR)(M=Ti、Zr)、(式中、OR基の一部はβ−ジカルボニル化合物又はモノカルボン酸などの錯生成剤により置換される。)が挙げられる。重合性不飽和基を有する化合物(メタクリル酸など)が錯生成剤として使用される場合には、重合性不飽和基を導入することができる。
分散媒として、水及び/又は有機溶媒が好適に使用される。特に好ましい分散媒は、蒸留された(純粋な)水である。有機溶媒として、極性、非極性、非プロトン性溶媒が好ましい。それらの例として、炭素数1〜6の脂肪族アルコール(特にメタノール、エタノール、n−及びi−プロパノール及びブタノール)等のアルコール、アセトン及びブタノン等のケトン類、酢酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピランなどのエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類;スルホラン及びジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類及びスルホン類;及びペンタン、ヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族(任意にハロゲン化された)炭化水素類が挙げられる。これらの分散媒は混合物として使用することができる。
分散媒は、蒸留(任意に減圧下)により容易に除去できる沸点を有することが好ましく、沸点が200℃以下、特に150℃以下の溶媒が好ましい。
(i)の反応性無機微粒子Aの調製に際し、分散媒の濃度は、通常40〜90、好ましくは50〜80、特に55〜75重量%である。分散液の残りは、未処理の無機微粒子および上記表面修飾化合物から構成される。ここで、無機微粒子/表面修飾化合物の重量比は、100:1〜4:1とすることが好ましく、更に50:1〜8:1、より更に25:1〜10:1とすることが好ましい。
(i)の反応性無機微粒子Aの調製は、好ましくは室温(約20℃)〜分散媒の沸点で行われる。特に好ましくは、分散温度は50〜100℃である。分散時間は、特に使用される材料のタイプに依存するが、一般に数分から数時間、例えば1〜24時間である。
上記(i)の反応性無機微粒子Aの調製を行う際には、無機微粒子が表面修飾化合物の存在する分散媒において機械反応粉砕を受け、表面修飾化合物が粉砕されたコロイド無機微粒子と少なくとも部分的に化学結合する態様も好適に用いられる。
この場合の機械粉砕は一般的にミル、ニーダー(混練機)、シリンダーミル又は例えば高速度分散機で行われる。機械粉砕に適する粉砕機械は、ホモジナイザー、ターボ撹拌機、離れた粉砕工具を有するミル(ボールミル、ロッドミル、ドラムミル、コーンミル、チューブミル、自生粉砕ミル、遊星ミル、振動ミル及び撹拌機ミル)、ヘビーローラーニーダー、コロイドミル及びシリンダーミルである。中でも特に好ましいミルは、運動撹拌機と粉砕手段としての粉砕ボールを有する撹拌ボールミルである。
粉砕及びホモジナイジングを有する粉砕は好ましくは室温で行われる。所要時間は混合の種類と用いられる粉砕機により適宜調製する。
(ii)当該無機微粒子に導入したい反応性官能基a、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、コアとなる無機微粒子としての金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基を有する無機微粒子。
化学式(1)
−Q−C(=Q)−NH−
(化学式(1)中、Qは、NH、O(酸素原子)、またはS(硫黄原子)を示し、QはO又はSを示す。)
上記(ii)の反応性無機微粒子Aを用いる場合には、有機成分量アップの点から分散性、および膜強度がより高まるというメリットがある。
まず、当該無機微粒子に導入したい反応性官能基a、上記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物(以下、反応性官能基修飾加水分解性シランという場合がある。)について説明する。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、当該無機微粒子に導入したい反応性官能基aは、バインダー成分Bの反応性官能基bと反応可能なように適宜選択すれば特に限定されない。上述したような重合性不飽和基を導入するのに適している。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、上記化学式(1)に示す基[−Q−C(=Q)−NH−]は、具体的には、[−O−C(=O)−NH−]、[−O−C(=S)−NH−]、[−S−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=S)−NH−]、及び[−S−C(=S)−NH−]の6種である。
これらの基は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−NH−]基と、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1種を併用することが好ましい。前記化学式(1)に示す基[−Q−C(=Q)−NH−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化物にした場合、優れた機械的強度、基材との密着性及び耐熱性等の特性を付与することが可能になると考えられる。
また、加水分解によってシラノール基を生成する基としては、ケイ素原子上にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等を有する基を挙げることができ、アルコキシシリル基又はアリールオキシシリル基が好ましい。シラノール基又は、加水分解によってシラノール基を生成する基は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、金属酸化物微粒子と結合することができる。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランの好ましい具体例としては、例えば、下記化学式(2)に示す化合物を挙げることができる。
Figure 0005320703
化学式(2)中、R、Rは同一でも異なっていてもよいが、水素原子又はCからCのアルキル基若しくはアリール基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。ここでmは1、2又は3である。
[(RO) 3−mSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
はCからC12の脂肪族又は芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状又は環状の構造を含んでいてもよい。そのような有機基としては例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、キシリレン、ドデカメチレン等を挙げることができる。これらのうち好ましい例は、メチレン、プロピレン、シクロヘキシレン、フェニレン等である。
また、Rは2価の有機基であり、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。例えば、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式又は多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;及びこれらのアルキル基置換体、アリール基置換体を挙げることができる。また、これら2価の有機基は炭素及び水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合、さらには前記化学式(1)に示す基を含むこともできる。
は(n+1)価の有機基であり、好ましくは鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
Y’は反応性官能基を有する1価の有機基を示す。上述のような反応性官能基そのものであっても良い。例えば反応性官能基aを重合性不飽和基から選択する場合、(メタ)アクリロイル(オキシ)基、ビニル(オキシ)基、プロペニル(オキシ)基、ブタジエニル(オキシ)基、スチリル(オキシ)基、エチニル(オキシ)基、シンナモイル(オキシ)基、マレエート基、(メタ)アクリルアミド基等を挙げることができる。また、nは好ましくは1〜20の正の整数であり、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
本発明で用いられる反応性官能基修飾加水分解性シランの合成は、例えば特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。すなわち、例えば重合性不飽和基を導入したい場合、(イ)メルカプトアルコキシシランと、ポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応可能な活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加反応により行うことができる。また、(ロ)分子中にアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物と、活性水素基含有重合性不飽和化合物との直接的反応により行うことができる。さらに、(ハ)分子中に重合性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物と、メルカプトアルコキシシラン又はアミノシランとの付加反応により直接合成することもできる。
例えば、メルカプトアルコキシシランとしては、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を好適に用いることができる。
また、ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネアート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を好適に用いることができる。
また、活性水素含有重合性不飽和化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールペンタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物を用いることができる。
(ii)の反応性無機微粒子Aの製造においては、反応性官能基修飾加水分解性シランを別途加水分解操作を行った後、これと無機微粒子を混合し、加熱、攪拌操作を行う方法、もしくは反応性官能基修飾加水分解性シランの加水分解を無機微粒子の存在下に行う方法、また、他の成分、例えば多価不飽和有機化合物、単価不飽和有機化合物、放射線重合開始剤等の存在下、無機微粒子の表面処理を行う方法を選ぶことができるが、反応性官能基修飾加水分解性シランの加水分解を無機微粒子の存在下行う方法が好ましい。(ii)の反応性無機微粒子Aを製造する際、その温度は、通常20℃以上150℃以下であり、また処理時間は5分〜24時間の範囲である。
加水分解反応を促進するため、触媒として酸、塩もしくは塩基を添加してもよい。酸としては有機酸および不飽和有機酸;塩基としては3級アミンまたは4級アンモニウムヒドロキシドが好適な物として挙げられる。これら酸もしくは塩基触媒の添加量は反応性官能基修飾加水分解性シランに対して0.001〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%である。
本発明において、反応性無機微粒子Aは、フッ素を含有しないものでよい。ここで、フッ素を含有しないとは、反応性無機微粒子Aのコアを形成する無機微粒子がフッ素を含有せず、且つ、反応性無機微粒子Aの表面の一部を被覆する有機成分がフッ素を含有しないことが好ましいが、典型的には、反応性無機微粒子Aの表面にフッ素が存在しなければよく、具体的には、含フッ素表面処理剤による表面処理が施された反応性無機微粒子Aでないことを指す。
表面を含フッ素表面処理剤により表面処理した反応性無機微粒子Aは、ハードコート層用硬化性樹脂組成物におけるなじみがさらに低下するため、相分離を生じやすく、偏在しやすい。しかしながら、本発明においては、反応性無機微粒子Aの平均粒径を30nm以下とすることによって、該反応性無機微粒子Aの偏在による密集が充分に促進されているため、特許文献1のように含フッ素表面処理剤による表面処理を施さなくても、充分なハードコート性を発現する程度に反応性無機微粒子Aがハードコート層の空気界面側表層に偏在したハードコート層を形成することが可能である。
反応性無機微粒子Aがフッ素を含有しないことは、以下のようにして確認できる。すなわち、反応性無機微粒子Aを用いて作製したハードコートフィルムを斜め切削し、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析装置、例えばアルバック・ファイ社製)を用いて、反応性無機微粒子Aに含まれる成分を検出することで確認することができる。反応性無機微粒子Aがフッ素を含まなければフッ素原子は検出されない。
また、反応性無機微粒子Aとしては、分散媒を含有しない粉末状の微粒子を用いてもよいが、分散工程を省略でき、生産性が高い点から微粒子を溶剤分散ゾルとしたものを用いることが好ましい。
また、ハードコート層において、反応性無機微粒子Aの含有量は、ハードコート層の全固形分(反応性無機微粒子Aと硬化性バインダー系の構成成分の合計量)に対して、10〜60重量%であることが好ましく、特に、20〜40重量%であることが好ましい。
10重量%以上とすることで、ハードコート層表面の硬度を充分に向上させることができ、60重量%以下とすることで、反応性無機微粒子Aの充填率増加による膜強度の低下を防止することができる。
<硬化性バインダー系>
本明細書において、硬化性バインダー系の構成成分とは、バインダー成分Bの他に、必要に応じて当該バインダー成分B以外の硬化性バインダー成分、ポリマー成分、重合開始剤等の硬化後に後述するハードコート層のマトリクス成分となるものを表す。
(バインダー成分B)
ハードコート層を形成するバインダー成分Bは、前記反応性無機微粒子Aの反応性官能基aと架橋反応性を有する反応性官能基bを有し、前記反応性無機微粒子Aの反応性官能基aと当該バインダー成分Bの反応性官能基bとが架橋結合し、網目構造が形成される。また、当該バインダー成分Bは、充分な架橋性を得るために、当該反応性官能基bを3つ以上有することが好ましい。当該反応性官能基bとしては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合及びエポキシ基等が挙げられる。
バインダー成分Bとしては、硬化性有機樹脂が好ましく、塗膜とした時に光が透過する透光性のものが好ましい。その具体例としては、紫外線または電子線で代表される電離放射線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂と溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂など、塗工時に固形分を調整するための溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)との混合物、または熱硬化型樹脂の三種類が挙げられ、好ましくは電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂の具体例としては、(メタ)アクリレート基等のラジカル重合性官能基を有する化合物、例えば、(メタ)アクリレート系のオリゴマー、プレポリマー、或いは単量体(モノマー)が挙げられる。
より具体的には、(メタ)アクリレート系オリゴマー又はプレポリマーとしては、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリル酸エステルから成るオリゴマー又はプレポリマーが挙げられる。
また、(メタ)アクリレート系単量体としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリレート系化合物以外の例としては、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能又は多官能単量体、或いはビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、芳香族ビニルエーテル、脂肪族ビニルエーテル等のオリゴマー又はプレポリマー等のカチオン重合性官能基を有する化合物が挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂として使用する場合には、光重合開始剤または光重合促進剤として増感剤を添加することができる。
光重合開始剤の具体例としては、ラジカル重合性官能基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、ベンゾイン類、ベンゾインメチルエーテル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、アシルホスフィンオキシド類、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、等が挙げられ、これらを単独で、又は混合して用いる。1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンは、例えば商品名イルガキュア184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)として入手可能である。また、α-アミノアルキルフェノン類としては、例えば商品名イルガキュア907、369として入手可能である。
カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタセロン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いる。
また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
光重合開始剤の添加量は、電離放射線硬化性組成物100重量部に対し、0.1〜10重量部である。
電離放射線硬化型樹脂に混合して使用される溶剤乾燥型樹脂としては、主として熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は一般的に例示されるものが利用される。溶剤乾燥型樹脂の添加により、塗布面の塗膜欠陥を有効に防止することができる。好ましい熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、オレフィン系樹脂(脂環式オレフィン系樹脂を含む)、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(例えば、2,6−キシレノールの重合体)、セルロース誘導体(例えば、セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類)、シリコーン樹脂(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン)、ゴム又はエラストマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン等のジエン系ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム)等が好ましい。
熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等をさらに添加して使用することができる。
(ハードコート層の形成)
本発明のハードコートフィルムの一実施形態として、バインダー成分Bを含む硬化性バインダー系として光硬化性バインダー系を用い、ハードコート層が、透明基材フィルムの観察者側の表面に、当該光硬化性バインダー系に反応性無機微粒子Aを添加したハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗工してハードコート層を形成する方法によって形成されたハードコートフィルムを挙げることができる。
ハードコート層は、反応性無機微粒子A及び光硬化性バインダー系の構成成分を適切な溶剤に混合して得たハードコート層用硬化性樹脂組成物を、透明基材フィルムに塗布することにより形成することができる。
<樹脂組成物の調製>
ハードコート層用硬化性樹脂組成物は、一般的な調製法に従って、上記成分を混合し分散処理することにより調製される。混合分散には、ペイントシェーカー又はビーズミル等を用いることができる。前記反応性無機微粒子Aが溶剤中に分散された状態で得られる場合には、その分散状態のまま、前記硬化性バインダー系、溶剤を含むその他の成分を適宜加え、混合し分散処理することにより調製される。
溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、テトラクロルエタン等のハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素またはこれらの混合物が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に、含フッ素化合物以外である例えばシリコーン系などのレベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤を添加した塗工用組成物は、塗布または乾燥時に塗膜表面に対して塗工安定性、滑り性や防汚性を付与でき、かつ、耐擦傷性の効果を付与することを可能とする。
ハードコート層用硬化性樹脂組成物を透明基材フィルムに塗布する方法としては、ロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法等の塗布方法が挙げられる。ハードコート層用硬化性樹脂組成物の塗布後に、乾燥と紫外線硬化を行う。ハードコート層用硬化性樹脂組成物を、塗布後、数十秒から数分間程度の時間をかけて乾燥させることで、反応性無機微粒子Aが空気界面側に偏在して密集する。紫外線源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が挙げられる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、または直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
光硬化性バインダー系の構成成分を硬化させることにより、当該光硬化性バインダー系の構成成分中に含まれる、反応性無機微粒子Aの反応性官能基aとバインダー成分Bの反応性官能基bが架橋結合し、網目構造が形成されてハードコート層が形成される。
ハードコート層用硬化性樹脂組成物からハードコート層を形成する場合には、ハードコート層用硬化性樹脂組成物をゲル分率で30%以上80%以下、好ましくは下限が35%以上であり、より好ましくは40%以上であり、好ましくは上限が70%以下であり、より好ましくは60%以下で硬化させることが、ハードコート層と透明基材フィルムなどとの密着性と、耐擦傷性がよい点から好ましい。
尚、ゲル分率は、例えば、該組成物が紫外線硬化性樹脂の場合には、以下の方法により求めることができる。まず、サンプルとして、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の成分のうち、モノマー、オリゴマー、ポリマー、その他添加剤など、反応性無機微粒子A以外の成分を含むインキを作製し、厚さ50μmPET基材上に、5μmの膜厚に塗工し、10〜100mJの範囲で10mJ間隔でUV照射条件を変えて照射したサンプルを各々作製する。次に、当該サンプルを10cm角に切り、n数を三点取り、重さXを測定する。次に、モノマーが溶解すると考えられる溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、トルエン、及びその混合溶媒など。アクリレート系組成物の場合、代表的にはアセトン、メチルエチルケトン。)に12時間以上浸漬し、溶剤から各サンプルを取り出して、オーブンで十分乾燥(60℃×2分)し、乾燥したサンプルの重さBを測定する。次に、溶剤に浸漬前の重さXと、乾燥したサンプルYとの差をとり、この値をZとする。最後に、下記式を用いて各照射量毎のゲル分率(%)を算出する。
「ゲル分率(%)」=100−Z/X
本発明に係るハードコートフィルムにおいて、ハードコート層の膜厚は、2μm以上30μm以下であることが好ましく、更に5μm以上20μm以下であることが、硬度、耐擦傷性などの物性面が良好であり、生産性も良好な点から好ましい。膜厚を2μm以上とすることで充分なハードコート性を付与することができ、30μm以下とすることでクラックの発生を抑制することができる。
また、本発明によれば、以下の方法により行われる耐スチールウール試験において、表面に形成される傷が形成されない、高いハードコート性を有するハードコート層を備えたハードコートフィルムを提供することが可能である。
(耐スチールウール試験)
ハードコート層表面を、#0000番のスチールウールで、一定の荷重(例えば、500g/cm)をかけながら、速度50mm/secで10往復摩擦させる。往復摩擦を行うストローク幅は、5〜15cmとすることが好ましい。
この試験でハードコート層表面を目視で観察して傷が生じていなければ、耐スチールウール性は500g/cmであると言える。また、荷重を1000g/cmに変更して同様の試験を行って傷が生じなければ、耐スチールウール性は1000g/cmと言える。なお、本発明において、耐スチールウール性は500g/cm以上であることが好ましく、1000g/cm以上であることがより好ましい。
<他の実施形態>
本発明に係るハードコートフィルムは図1に示されている形態に限定されるものではない。例えば、透明基材フィルム2上に他の層を設けて、当該他の層上に前述したハードコート層1を設けても良い。なお、他の層としては、透明基材フィルム2とハードコート層1との間に光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とからなる層(以下、中間層と称する)が挙げられる。中間層を設けることで透明基材フィルムに薄いもの(例えば、厚み30〜50μm)を用いたときに透明基材フィルム単体では不足している剛性を補うことができる。これにより、ハードコート層が大きく変形しにくくなり、且つ、透明基材フィルムの変形に対して中間層が追随することにより、ハードコート層にかかる外部応力を緩和することができる。なお、透明基材フィルム2とハードコート層1との間には複数の層を設けても良い。
<その他の層>
本発明によるハードコートフィルムは、上記透明基材フィルム、ハードコート層により基本的には構成されてなる。しかしながら、ハードコートフィルムとしての機能または用途を加味して、本発明に係るハードコート層の他に、更に下記のような一又は二以上の層を含有していてもよい。
以下、低屈折率層について詳しく説明する。
〔低屈折率層〕
低屈折率層は、外部からの光(例えば蛍光灯、自然光等)が光学積層体の表面にて反射する際、多層膜での光の干渉効果によってその反射率を低くするという役割を果たす層である。本発明の好ましい態様によれば、ハードコート層の上に形成したものが好ましい。低屈折率層は、その屈折率が該層の下の層のそれより低いものである。
本発明の好ましい態様によれば、低屈折率層に隣接するハードコート層の屈折率が1.5以上であり、低屈折率層の屈折率が1.45以下であり、好ましくは1.42以下で構成されてなるものが好ましい。
低屈折率層としては、好ましくは1)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有する樹脂、2)低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂、3)シリカ又はフッ化マグネシウムを含有するフッ素系樹脂、4)シリカ又はフッ化マグネシウムの薄膜等のいずれかで構成される。フッ素樹脂以外の樹脂については、ハードコート層を構成する樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
上記フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物又はその重合体を用いることができる。重合性化合物は、特に限定されないが、例えば、電離放射線で硬化する官能基、熱硬化する極性基等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。
また、これらの反応性の基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、重合体とは、上記のような反応性基などを一切もたないものである。
電離放射線硬化性基を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールなど)を例示することができる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものとして、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロメタクリル酸メチル、α−トリフルオロメタクリル酸エチルのような、分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中に、フッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基又はフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物などもある。
熱硬化性極性基として好ましいのは、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基である。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカなどの無機超微粒子との親和性にも優れている。熱硬化性極性基を持つ重合性化合物としては、例えば、4−フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン−炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品などを挙げることができる。
電離放射線硬化性基と熱硬化性極性基とを併せ持つ重合性化合物としては、アクリル又はメタクリル酸の部分及び完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類、完全又は部分フッ素化ビニルエステル類、完全または部分フッ素化ビニルケトン類等を例示することができる。
また、フッ素原子を持つ重合性化合物や重合体とともに、ハードコート層用硬化性樹脂組成物で述べたような各樹脂成分を混合して使用することもできる。更に、反応性基等を硬化させるための硬化剤、塗工性を向上させたり、防汚性を付与させたりするために、各種添加剤、溶剤を適宜使用することができる。
本発明の好ましい態様によれば、低屈折率剤として、「空隙を有する微粒子」を利用することが好ましい。「空隙を有する微粒子」は低屈折率層の層強度を保持しつつ、その屈折率を下げることを可能とする。本発明において、「空隙を有する微粒子」とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/又は気体を含む多孔質構造体を有し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。また、本発明にあっては、微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜内部での微粒子の分散状態により、内部、及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。この微粒子を使用した低屈折率層は、屈折率を1.30〜1.45に調節することが可能である。
空隙を有する無機系の微粒子の具体例としては、特開2001−233611号公報で開示されている技術を用いて調製したシリカ微粒子が好ましくは挙げられる。また、特開平7−133105、特開2002−79616号公報、特開2006−106714号公報等に記載された製法によって得られるシリカ微粒子であってもよい。空隙を有するシリカ微粒子は製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、バインダーと混合して低屈折率層を形成した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率を1.20〜1.45程度の範囲内に調製することを可能とする。特に、空隙を有する有機系の微粒子の具体例としては、特開2002−80503号公報で開示されている技術を用いて調製した中空ポリマー微粒子が好ましく挙げられる。
塗膜の内部及び/又は表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子としては先のシリカ微粒子に加え、比表面積を大きくすることを目的として製造され、充填用のカラムおよび表面の多孔質部に各種化学物質を吸着させる除放材、触媒固定用に使用される多孔質微粒子、または断熱材や低誘電材に組み込むことを目的とする中空微粒子の分散体や凝集体を挙げることができる。そのような具体例としては、市販品として日本シリカ工業株式会社製の商品名NipsilやNipgelの中から多孔質シリカ微粒子の集合体、日産化学工業(株)製のシリカ微粒子が鎖状に繋がった構造を有するコロイダルシリカUPシリーズ(商品名)から、本発明の好ましい粒子径の範囲内のものを利用することが可能である。
「空隙を有する微粒子」の平均粒径は、5nm以上300nm以下であり、好ましくは下限が8nm以上であり上限が100nm以下であり、より好ましくは下限が10nm以上であり上限が80nm以下である。微粒子の平均粒径がこの範囲内にあることにより、低屈折率層に優れた透明性を付与することが可能となる。
(低屈折率層の形成)
低屈折率層の形成に当たっては、必要に応じて適宜な溶剤を用い、粘度を、樹脂組成物として好ましい塗布性が得られる0.5〜5cps(25℃)、好ましくは0.7〜3cps(25℃)の範囲のものとすることが好ましい。粘度を適切に調節することによって可視光線の優れた反射防止膜を実現でき、かつ、均一で塗布ムラのない薄膜を形成することができ、かつ基材に対する密着性に特に優れた低屈折率層を形成することができる。
樹脂の硬化手段は、ハードコート層の項で説明したのと同様であってよい。硬化処理のために加熱手段が利用される場合には、加熱により、例えばラジカルを発生して重合性化合物の重合を開始させる熱重合開始剤がフッ素系樹脂組成物に添加されることが好ましい。
さらに、本発明に係るハードコートフィルムは以下のような防汚層、防眩層などを備えていてもよい。
〔防汚層〕
本発明の好ましい態様によれば、低屈折率層の最表面の汚れ防止を目的として防汚層を設けてもよく、好ましくは低屈折率層が形成された基材フィルムの一方の面と反対の面側に防汚層が設けられてなるものが好ましい。防汚層は、ハードコートフィルムに対して防汚性と耐擦傷性のさらなる改善を図ることが可能となる。
防汚剤の具体例としては、分子中にフッ素原子を有する光硬化性樹脂組成物への相溶性が低く、低屈折率層中に添加することが困難とされるフッ素系化合物および/またはケイ素系化合物、分子中にフッ素原子を有する光硬化性樹脂組成物および微粒子に対して相溶性を有するフッ素系化合物および/またはケイ系化合物が挙げられる。
〔防眩層〕
防眩層は、透明基材フィルムとハードコート層または低屈折率層との間に形成されてよい。防眩層は樹脂と防眩剤とにより形成されてよく、樹脂としては、ハードコート層の項で説明したのと同様のものを用いることができる。
本発明の好ましい態様によれば、防眩層は微粒子の平均粒径をR(μm)とし、防眩層の凹凸の凸部分の鉛直方向での基材面からの最大値をHmax(μm)とし、防眩層の凹凸平均間隔をSm(μm)とし、凹凸部の平均傾斜角をθaとした場合に、下記式:
8R≦Sm≦30R、
R<Hmax<3R、
1.3≦θa≦2.5、
1≦R≦8、
全てを同時に満たすものが好ましい。
また、本発明の別の好ましい様態によれば、微粒子と樹脂組成物の屈折率をそれぞれ、n1、n2とした場合に、Δn=│n1−n2│<0.1を満たすものであり、且つ、防眩層内部のヘイズ値が55%以下である防眩層が好ましい。
防眩剤としては微粒子が挙げられ、微粒子の形状は、真球状、楕円状などのものであってよく、好ましくは真球状のものが挙げられる。また、微粒子は無機系、有機系のものが挙げられるが、好ましくは有機系材料により形成されてなるものが好ましい。微粒子は、防眩性を発揮するものであり、好ましくは透明性のものがよい。
微粒子の具体例としては、プラスチックビーズが挙げられ、より好ましくは、透明性を有するものが挙げられる。プラスチックビーズの具体例としては、スチレンビーズ(屈折率1.59)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。微粒子の添加量は、透明樹脂組成物100重量部に対し、2〜30重量部、好ましくは10〜25重量部程度である。
防眩層の膜厚(硬化時)は0.1〜100μm、好ましくは0.8〜20μmの範囲にあることが好ましい。膜厚がこの範囲にあることにより、防眩層としての機能を十分に発揮することができる。
<添加剤>
上記各層は、更に別の機能を有していてもよく、例えば、帯電防止剤、屈折率調整剤、防汚染剤、硬度調整剤等の機能付加成分を含んでなる組成物により形成されてもよい。
〔帯電防止剤(導電剤)〕
上記各層中に、帯電防止剤を含有させることにより、光学積層体の表面における塵埃付着を有効に防止することができる。帯電防止剤の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、或いは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
また、導電性微粒子が挙げられる。導電性微粒子の具体例としては、金属酸化物からなるものを挙げることができる。そのような金属酸化物としては、ZnO(屈折率1.90、以下、カッコ内の数値は屈折率を表す。)、CeO(1.95)、Sb(1.71)、SnO(1.997)、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫(1.95)、In(2.00)、Al(1.63)、アンチモンドープ酸化錫(略称;ATO、2.0)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称;AZO、2.0)等を挙げることができる。微粒子とは、1ミクロン以下の、いわゆるサブミクロンの大きさのものを指し、好ましくは、平均粒径が0.1nm〜0.1μmのものである。この平均粒径の範囲内であることにより、微粒子をバインダーに分散した折、ヘイズがほとんどなく、全光線透過率が良好な高透明な膜を形成できる組成物を作製できるという観点からみて好ましい。上記導電性金属酸化物微粒子の平均粒径は、動的光散乱法等によって測定することができる。
また、帯電防止剤として、導電性ポリマーが挙げられ、その具体例としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)が挙げられ、これら以外に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、前述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重合した高分子である導電性複合体等を挙げられる。
上記帯電防止剤は、上記バインダー樹脂量(溶剤を除く)に対する添加が5〜250質量%であることが好ましい。より好ましくは、上記添加量の上限が100以下であり、下限が7以上である。添加量を上記数値範囲に調整することにより、光学積層体としての透明性を保ち、また、ハードコート性等の性質に悪影響を与えることなく、帯電防止性能を付与することができる点で好ましい。
帯電防止層の形成の具体例としては、ハードコート層の上面に導電性金属もしくは導電性金属酸化物等を蒸着またはスパッタリングすることにより蒸着膜を形成する方法または樹脂中に導電性微粒子を分散した樹脂組成物を塗布するにより塗膜を形成する方法が挙げられる。
帯電防止層を蒸着により形成する場合、帯電防止剤としては、導電性金属もしくは導電性金属酸化物、例えばアンチモンドープのインジウム・錫酸化物(以下、「ATO」という)、インジウム・錫酸化物(以下、「ITO」という)が挙げられる。帯電防止層としての蒸着膜の厚さは、10nm以上200nm以下であり、好ましくは上限が100nm以下であり、下限が50nm以上である。
帯電防止層は帯電防止剤を含む塗液により形成されてもよい。この場合、帯電防止剤は、機能付加成分としての帯電防止剤において説明したものと同様のものを使用できる。導電性微粒子を用いて塗膜する場合、好ましくは硬化型樹脂を用いる。硬化型樹脂としては、ハードコート層を形成するものと同様であってよい。塗膜を形成するには、導電性微粒子に硬化型樹脂に含ませた塗液を、ロールコート法、ミヤバーコート法、グラビアコート法等の塗布方法により塗布する。塗布後に、乾燥と紫外線硬化を行う。
電離放射線硬化型樹脂組成物の硬化方法としては、電子線または紫外線の照射によって硬化する。電子線硬化の場合には、100KeV〜300KeVのエネルギーを有する電子線等を使用する。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。
〔屈折率調整剤〕
ハードコート層に、屈折率調整剤を添加することにより、ハードコート層表面の反射防止特性を調整することが可能となる。屈折率調整剤には、低屈折率剤、中屈折率剤、高屈折率剤等が挙げられる。
(1)低屈折率剤
低屈折率剤は、その屈折率がハードコート層より低いものである。本発明の好ましい態様によれば、ハードコート層の屈折率が1.5以上であり、低屈折率剤の屈折率が1.5未満であり、好ましくは1.45以下で構成されてなるものが好ましい。
具体的には、低屈折率層の説明において挙げた低屈折率剤を好ましく用いることができる。低屈折率剤の膜厚は、1μmよりも厚い方が好ましい。これは、この層が最外層となるため、耐擦傷性や硬度が必要であるからである。
(2)高屈折率剤/中屈折率剤
高屈折率剤、中屈折率剤の屈折率は1.46〜2.00の範囲内で設定されてよく、中屈折率剤は、その屈折率が1.46〜1.80の範囲内のものを意味し、高屈折率剤は、その屈折率が1.65〜2.00の範囲内のものを意味する。
これら高屈折率剤/中屈折率剤としては、微粒子が挙げられ、その具体例(かっこ内は屈折率を示す)としては、酸化亜鉛(1.90)、チタニア(2.3〜2.7)、セリア(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95)、アンチモンドープ酸化スズ(1.80)、イットリア(1.87)、ジルコニア(2.0)が挙げられる。
〔レベリング剤〕
ハードコート層は、レベリング剤を添加することができる。レベリング剤の好ましいものとしては、フッ素系またはシリコーン系等のレベリング剤が挙げられる。レベリング剤を添加したハードコート層用硬化性樹脂組成物は、塗布または乾燥時に塗膜表面に対して塗工適性を向上させ、滑り性や防汚性が付与でき、かつ、耐擦傷性の効果を付与することを可能とする。
〔防汚染剤〕
ハードコート層には防汚染剤を含有させることができる。防汚染剤は、光学積層体の最表面の汚れ防止を主目的とし、さらに光学積層体の耐擦傷性を付与することが可能となる。防汚染剤の具体例としては、撥水性、撥油性、指紋拭き取り性を発現するような添加剤が有効である。より具体例としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合化合物が挙げられる。より具体的には、2−パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有するものが好ましくは使用することができる。
〔硬度調整剤(高硬化剤)〕
ハードコート層には、耐擦傷性の効果を向上させることを目的として、硬度調整剤(高硬化剤)を添加することができる。硬度調整剤の具体例としては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートプレポリマー、或いは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを単独で或いはこれらの中から2種以上選択して組み合わせて配合した電離放射線硬化性樹脂を挙げることができる。
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。硬化性樹脂組成物に配合される単分散微粒子の粒度分布は、全て平均粒径±10nmのものを使用している。
なお、実施例において行った評価方法は以下のとおりである。
(評価1)鉛筆硬度
得られたハードコート層表面の鉛筆硬度をJIS K5600−5−4(1999)に準じて評価した。4Hの鉛筆を用いて、500g荷重で5本線を引きその後のハードコート層の傷の有無を目視し下記の基準にて評価した。
<評価基準>
評価◎:傷は0〜1本であった(鉛筆硬度は4Hである)。
評価○:傷は2〜3本であった(鉛筆硬度は約3Hに相当する)。
評価×:傷は4〜5本であった。
(評価2)耐スチールウール性(耐SW性)
得られたハードコートフィルムのハードコート層の表面を、#0000番のスチールウールを用いて、1000g/cmの摩擦荷重で10往復摩擦し、その後のハードコート層の剥がれの有無を目視し下記の基準にて評価した。
<評価基準>
評価◎:傷は0本であった(耐スチールウール性は1000g/cm)。
評価○:傷は1〜9本であった。
評価×:傷は10本以上であった。
(製造例1−1:反応性無機微粒子(i)の調製)
(1)表面吸着イオン除去
粒子径20nmの水分散コロイダルシリカ(スノーテックス20(商品名)、日産化学工業(株)製、pH9〜10)を陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK1B(商品名)、三菱化学(株)製)400gを用いて3時間イオン交換を行い、次いで、陰イオン交換樹脂(ダイヤイオンSA20A(商品名)、三菱化学(株)製)200gを用いて3時間イオン交換を行った後、洗浄し固形分濃度20重量%のシリカ微粒子の水分散体を得た。
この時、シリカ微粒子の水分散体のNaO含有量は、シリカ微粒子当たり各7ppmであった。
(2)表面処理(単官能モノマーの導入)
上記(1)の処理を行ったシリカ微粒子の水分散液10gに150mLのイソプロパノール、4.0gの3,6,9−トリオキサデカン酸、及び4.0gのメタクリル酸を加え、30分間撹拌し混合した。
得られた混合液を、60℃で5時間加熱しながら撹拌する事で、シリカ微粒子表面にメタクリロイル基が導入されたシリカ微粒子分散液を得た。得られたシリカ微粒子分散液を、ロータリーエバポレーターを用いて蒸留水、及びイソプロパノールを留去させ、乾固させないようにメチルエチルケトンを加えながら、最終的に残留する水やイソプロパノールを0.1重量%とし、固形分50重量%のシリカ分散メチルエチルケトン溶液を得た。
このようにして得られた反応性無機微粒子(i)は、日機装(株)社製Nanotrac粒度分析計により測定した結果、d50=21nmの平均粒径を有していた。また、シリカ微粒子表面を被覆する有機成分量は、熱重量分析法により測定した結果4.05×10−3g/mであった。
(製造例1−2:反応性無機微粒子(i−2)の調製)
製造例1−1で用いた粒子径20nmの水分散シリカに代えて、粒子径5nmの水分散コロイダルシリカ(スノーテックスXS(商品名)、日産化学工業(株)製、pH9〜10)を用いた以外は、製造例1−1と同様に表面吸着イオン除去及び表面処理を行った。
このようにして得られた反応性無機微粒子(i−2)は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=5nmの平均粒径を有していた。また、シリカ微粒子表面を被覆する有機成分量は熱重量分析法により測定した結果7.05×10−3g/mであった。
(製造例1−3:反応性無機微粒子(i−3)の調製)
製造例1−1で用いた粒子径20nmの水分散シリカに代えて、粒子径25nmの水分散コロイダルシリカ(スノーテックス50(商品名)、日産化学工業(株)製、pH9〜10)を用いた以外は、製造例1−1と同様に表面吸着イオン除去及び表面処理を行った。
このようにして得られた反応性無機微粒子(i−3)は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=26nmの平均粒径を有していた。また、シリカ微粒子表面を被覆する有機成分量は熱重量分析法により測定した結果3.24×10−3g/mであった。
(製造例1−4:反応性無機微粒子(i−4)の調製)
製造例1−1で用いた粒子径20nmの水分散シリカに代えて、粒子径60nmの水分散コロイダルシリカ(スノーテックスYL(商品名)、日産化学工業(株)製、pH9〜10)を用いた以外は、製造例1−1と同様に表面吸着イオン除去及び表面処理を行った。
このようにして得られた反応性無機微粒子(i−4)は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=63nmの平均粒径を有していた。また、シリカ微粒子表面を被覆する有機成分量は熱重量分析法により測定した結果2.04×10−3g/mであった。
(製造例2:反応性無機微粒子(ii)の調製)
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン7.8重量部、ジブチルスズジラウレート0.2重量部からなる溶液に対し、イソフォロンジイソシアネート20.6重量部を撹拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間撹拌した。これにペンタエリスリトールトリアクリレート71.4重量部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱撹拌することで化合物(1)を得た。
窒素気流下、メタノールシリカゾル(触媒化成(株)製、OSCALシリーズ(商品名)、メタノール分散液、粒子径20nm)88.5重量部(固形分26.6重量部)、上記で合成した化合物(1)8.5重量部、p−メトキシフェノール0.01重量部の混合液を、60℃、4時間撹拌した。続いて、この混合溶液に化合物(2)としてメチルトリメトキシシラン3重量部を添加し、60℃、1時間撹拌した後、オルト蟻酸メチルエステル9重量部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱撹拌することで反応性無機微粒子(ii)を得た。
このようにして得られた反応性無機微粒子(ii)は、上記粒度分析計により測定した結果、d50=22nmの平均粒径を有していた。また、表面を被覆する有機成分量は熱重量分析法により測定した結果7.08×10−3g/mであった。
<実施例1>
(1)ハードコート層用硬化性樹脂組成物の調製
以下の各成分を混合し、溶剤で固形分50重量%に調整し、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製した。
<ハードコート層用硬化性樹脂組成物の組成>
UV1700B(商品名、日本合成化学製;10官能、分子量2000):70重量部(固形分量換算値)
製造例(1−1)の反応性無機微粒子(i):30重量部(固形分量換算値)
メチルエチルケトン:100重量部
イルガキュア184(商品名、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、ラジカル重合開始剤):0.4重量部
(2)ハードコートフィルムの作製
透明基材フィルムとして80μmのセルローストリアセテート(TAC)フィルムを用い、当該透明基材フィルム上に、(1)で調製されたハードコート層用硬化性樹脂組成物をWET重量40g/m(乾燥重量20g/m)で塗布した。50℃にて30秒乾燥し、紫外線200mJ/cmを照射して、ハードコート層1の厚みが10μmのハードコートフィルム10を作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<実施例2>
前記実施例1のハードコート層用硬化性樹脂組成物において、製造例(1−1)の反応性無機微粒子(i)の代わりに製造例(2)の反応性無機微粒子(ii)を固形分重量部が30重量部となるように用いた以外は、実施例1と同様に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
また、このハードコートフィルムのハードコート層全体の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子の平均粒子数は1100個/μmであった。また、スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子の平均粒子数は2300個/μmであった(いずれもSTEM断面写真からの換算値。)。
以上の結果から、スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子の平均粒子数は、ハードコート層の平均粒子数に対して2.1倍であり、この時の鉛筆硬度及び耐SW性の何れの評価も◎であった(表1参照)。
<実施例3>
前記実施例1のハードコート層用硬化性樹脂組成物において、UV1700Bの代わりにDPHA((KAYARAD DPHA )(商品名)、日本化薬製;6官能、分子量800)を70重量部用いた以外は、実施例1と同様に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<実施例4>
前記実施例1のハードコート層用硬化性樹脂組成物において、製造例(1−1)の反応性無機微粒子(i)(平均粒径21nm)30重量部の代わりに製造例(1−2)の反応性無機微粒子)(i−2)(平均粒径5nm)30重量部用いた以外は、実施例1と同様に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<実施例5>
前記実施例1のハードコート層用硬化性樹脂組成物において、製造例(1−1)の反応性無機微粒子(i)(平均粒径21nm)30重量部の代わりに製造例(1−3)の反応性無機微粒子(i−3)(平均粒径26nm)30重量部用いた以外は、実施例1と同様に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<実施例6>
前記実施例1のハードコート層用硬化性樹脂組成物において、UV1700Bを90重量部、製造例(1−1)の反応性無機微粒子(i)を10重量部とした以外は実施例1と同様に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<実施例7>
前記実施例1のハードコート層用硬化性樹脂組成物において、UV1700Bを40重量部、製造例(1−1)の反応性無機微粒子(i)を60重量部とした以外は実施例1と同様に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<実施例8>
前記実施例1のハードコートフィルム作製において、透明基材フィルムをセルローストリアセテートフィルムの代わりに80μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムとした以外は実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<実施例9>
前記実施例1のハードコートフィルム作製において、透明基材フィルムをセルローストリアセテートフィルムの代わりに100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとした以外は実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<実施例10>
前記実施例1のハードコートフィルム作製において、透明基材フィルムをセルローストリアセテートフィルムの代わりに100μmのアクリル樹脂フィルムとした以外は実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<比較例1>
前記実施例1のハードコート層用硬化性樹脂組成物において、反応性無機微粒子(i)を30重量部用いた代わりに、未処理のシリカ微粒子(スノーテックスYL(商品名)、日産化学工業(株)製、平均粒径10nm、固形分濃度30重量%)を固形分換算で30重量部用いた以外は、実施例1と同様に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製した。なお、未処理のシリカ微粒子を用いたが、表1では便宜的に反応性無機微粒子の欄に、固形分重量部、平均粒径を示してある。また、未処理であるので有機成分量は無い。そして、実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
<比較例2>
前記実施例1のハードコート層用硬化性樹脂組成物において、平均粒径21nmの反応性無機微粒子(i)を30重量部用いた代わりに、平均粒径63nmの反応性無機微粒子(i−4)を固形分換算で30重量部用いた以外は、実施例1と同様に、ハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製した。そして、実施例1と同様にハードコートフィルムを作製した。表1に、上記評価結果についても併せて示す。
Figure 0005320703
表1に示すように、反応性無機微粒子を含有しない比較例1のハードコートフィルムは耐擦傷性に劣ることが分かる(鉛筆硬度及び耐SW性の何れも×)。また、平均粒径が63nmの反応性無機微粒子を用いた比較例2のハードコートフィルムは耐SW性に劣ることが分かる。これは、反応性無機微粒子の平均粒径が大き過ぎるためにスキン層における反応性無機微粒子の偏在が生じ難かったと思われる。
本発明に係る実施例1乃至実施例10で得られたハードコートフィルムは、反応性官能基を有する反応性無機微粒子の平均粒径が5nm以上30nm以下であり、当該反応性無機微粒子がハードコート層の空気界面側に偏在してスキン層を形成するため、ハードコート性が向上することが分かる。
本発明に係るハードコートフィルムの一例を模式的に示した断面図である。 本発明に係るスキン層を説明するための概略図である。
符号の説明
1 ハードコート層
2 透明基材フィルム
4 反応性無機微粒子
5 スキン層
10 ハードコートフィルム

Claims (15)

  1. 透明基材フィルム上にハードコート層を設けてなるハードコートフィルムであって、
    当該ハードコート層は、
    平均粒径が5nm以上26nm以下の範囲にあり、少なくとも表面の一部を有機成分で被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基aを表面に有するフッ素を含有しない中実の反応性無機微粒子A、及び、
    前記反応性無機微粒子Aの反応性官能基aとの架橋反応性を有する反応性官能基bを有するバインダー成分Bを含み、系内における硬化反応性も有する硬化性バインダー系、を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
    当該ハードコート層の透明基材フィルムとは反対側の界面及びその近傍の表層領域に、当該表層領域よりも透明基材フィルム側の領域に比べて、当該ハードコート層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が多いスキン層を有しており、
    当該スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が、当該ハードコート層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数の2倍以上であることを特徴とする、ハードコートフィルム。
  2. 前記スキン層の厚さは、前記透明基材フィルムとは反対側の界面から前記反応性無機微粒子Aの平均粒径の等倍から2倍までの厚さであることを特徴とする、請求項1に記載のハードコートフィルム。
  3. 前記スキン層において、前記反応性無機微粒子Aが密集していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のハードコートフィルム。
  4. 前記スキン層の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が2000個/μm以上であり、且つ、前記ハードコート層全体の厚み方向断面における単位面積当りの前記反応性無機微粒子Aの平均粒子数が2000個/μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  5. 前記反応性無機微粒子Aの表面の少なくとも一部が有機成分で被覆されており、前記反応性官能基aは当該有機成分により前記反応性無機微粒子Aの表面に導入されており、当該有機成分が、被覆前の無機微粒子の単位表面積当たり1.00×10−3g/m以上含まれることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  6. 前記反応性無機微粒子Aの反応性官能基a、及び、前記バインダー成分Bの反応性官能基bは、いずれも重合性不飽和基を有するものであることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  7. 前記反応性無機微粒子Aが、飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β−ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  8. 前記表面修飾化合物が、水素結合形成基を有する化合物であることを特徴とする、請求項に記載のハードコートフィルム。
  9. 前記表面修飾化合物の少なくとも1種が、前記反応性官能基aとなる重合性不飽和基を有することを特徴とする、請求項に記載のハードコートフィルム。
  10. 前記反応性無機微粒子Aが、当該反応性無機微粒子A表面に導入される反応性官能基a、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られることを特徴とする、請求項1乃至のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
    化学式(1)
    −Q−C(=Q)−NH−
    (化学式(1)中、Qは、NH、O(酸素原子)、またはS(硫黄原子)を示し、QはO又はSを示す。)
  11. 前記バインダー成分Bが、前記反応性無機微粒子Aの反応性官能基aと結合可能な反応性官能基bを3つ以上有する化合物であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  12. 前記反応性無機微粒子Aの含有量が、全固形分に対して、10〜60重量%であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  13. 前記透明基材フィルムが、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とすることを特徴とする、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  14. 前記ハードコート層の表面を、#0000番のスチールウールで、500g/cmの荷重をかけながら、速度50mm/secで10往復摩擦させる耐スチールウール試験において、当該ハードコート層表面に傷が付かないことを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
  15. 前記ハードコート層の膜厚が、2〜30μmであることを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のハードコートフィルム。
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