JP3925912B2 - 電子写真感光体、電子写真方式、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ - Google Patents
電子写真感光体、電子写真方式、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は感光層中に無機フィラーを含有させた有機系電子写真感光体とその製造方法およびそれを用いた画像形成装置に関し、より詳しくは、高耐久電子写真感光体とその製造方法およびそれを用いた画像形成装置、及び、その電子写真感光体を用いる画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。本発明の有機系電子写真感光体およびそれを用いた画像形成装置、画像形成装置用プロセスカートリッジは、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に応用される。
【0002】
【従来の技術】
複写機、レーザープリンタなどに応用される電子写真装置で使用される感光体は、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機感光体が主流であった時代から、現在では、低公害性、低コスト化、および設計自由度の高さで無機感光体よりも有利な有機感光体(OPC)が広く利用されるようになっている。
【0003】
この有機感光体は層構成別に分類することができ、例えば、(1)ポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される光導電性樹脂やPVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体を導電性支持体上に設ける均質単層型、(2)フタロシアニンやペリレンなどの顔料を樹脂中に分散させたものを導電性支持体上に設ける分散単層型、(3)導電性支持体上に設ける感光層を、アゾ顔料などの電荷発生物質を含有する電荷発生層(CGL)と、トリフェニルアミンなどの電荷輸送物質を含有する電荷輸送層(CTL)に機能分離した積層型に分類することができる。積層型の場合、電荷発生層の上に電荷輸送層を設ける構造と、これと逆の構造があり、前者が一般的で、後者を特に逆層と呼ぶ場合がある。
特に積層型は高感度化に有利であり、加えて、高感度化や高耐久化に対する設計上の自由度が高いこともあって、現在、有機感光体の多くがこの層構成を採っている。
【0004】
電子写真装置で静電潜像が形成される仕組みを先の積層型有機感光体の場合について説明すると、感光体を帯電した後に書き込み光を照射すると、光を吸収した電荷発生物質は電荷キャリアを発生し、この電荷キャリアが電荷輸送層に注入される。次に、帯電によって生じた電界にしたがって、電荷キャリアは電荷輸送層中を移動し、感光体表面まで到達した電荷キャリアが帯電電荷と中和することにより静電潜像を形成する。
【0005】
電子写真装置による画像出力は、この静電潜像にトナーを接触させることにより感光体表面にトナー画像を形成し、これを紙に転写し、次いで、加熱などでトナーと紙を定着することにより、画像形成を行なっている。また、次工程に備えて、感光体表面上に残留するトナーはクリーニングされ、感光体の残留電荷も除電される。電子写真プロセスの工夫により画像出力の方法が説明と異なるケースもあるが、何れの場合も以上の工程に則した画像形成が行なわれている。
【0006】
常に安定で良質な画像を出力するためには、(1)感光体は安定した帯電性能を発現し、(2)書き込み光によって誘起された電荷キャリアが感光体表面の帯電電位をそつ無く中和し、且つ、(3)所定の間、静電潜像はリークせずに保持し続け、(4)トナーが潜像を忠実に現像し、(5)次いで、紙などの受像媒体に対するトナーの転写性が良好で、且つ(6)画像形成後においては、感光体表面が清潔であることが必要とされる。
【0007】
電子写真装置による画像形成では、帯電から転写後のクリーニングに至る複数のプロセス中に、多くの不安定要因が内在する。以上の工程の一つでも安定性が欠如すると画像品質が確保できなくなる。これは、フルカラー電子写真装置である場合、プロセスの安定性に対する画像品質の影響は一層厳しいものとなる。現時点では装置のデジタル化が機械的変動や材料の変動要因を制御し、安定化させているが、装置の小型化や低コスト化を図る場合、この制御を付加することが困難となる。このため、良質な画像出力を絶えず確保するためには、画像形成を担う装置と、この装置の中核的役割を果たす電子写真感光体の高耐久・高安定化が必須となる。
【0008】
電子写真感光体の耐久性は、特開平8−272126号公報、特開平8−292585号公報に記載の如く、感光体表面の摩耗や創傷などの機械的負荷に対する耐久性と繰り返し使用による残留電位の蓄積や帯電性低下などの静電特性上の耐久性に左右される。また、このような電子写真感光体の耐久性以外にも、例えばクリーニングブレード等の感光体の周囲に配置された各部品の耐久性も画像品質を左右する因子となる。
【0009】
従来、このような因子に対する感光体の高耐久化技術として下記の手段が提案されてきた。
【0010】
(1)感光体表面層の耐摩耗性向上化技術
例えば、特開平10−288846号公報、特開平10−239870号公報には、バインダーとしてポリアリレートを用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
また、特開平10−239871号公報、特開平9−160264号公報には、バインダーとしてポリカーボネート樹脂を用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
更に、特開平10−186688号公報にはターフェニル骨格を有するポリエステル樹脂、特開平10−186687号公報にはトリフェニルメタン骨格を有するポリエステル樹脂、特開平5−40358号公報にはフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂をバインダーとして用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
また、特開平9−12637号公報、特開平9−235442号公報にはスチレン系エラストマーを含有したポリマーブレンドを電荷輸送層のバインダーとして用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
【0011】
しかしながら、上記の手段では、光減衰の感度の制約から感光層中に大量の低分子電荷輸送物質を含有する必要がある。低分子電荷輸送物質は膜の脆化を著しくもたらす材料であり、低分子電荷輸送物質の含有量に比例して感光層の耐刷性は急激に劣化する。このため、低分子電荷輸送物質に起因する感光体表面のキズの発生、および膜削れが激しく、電荷輸送層のバインダー樹脂の種類を特定するのみでは大きな効果を得ることができなかった。
【0012】
これに対し、例えば、特開平7−325409号公報には、低分子電荷輸送物質の代わりに高分子型の電荷輸送物質を用いることが提案されている。かかる技術は感光層中の樹脂成分比を極めて大きくすることが可能になるため、上記の技術と比較して良好な耐摩耗性が得られることが期待される。
しかしながら、単に低分子電荷輸送物質を高分子型の電荷輸送物質に変更するだけでは充分な耐刷性を感光体に付与できないケースが多い。これは、電子写真プロセスにおける感光体の摩耗が、単に機械的な負荷によってのみ引き起こされるものではないことに起因する。また、かかる材料は精製が困難であるケースが少なくなく、不純物の除去が充分に施せない場合、残留電位の蓄積が懸念される。
【0013】
これ以外のものとして、例えば、特開昭46−782号公報、特開昭52−2531号公報には、感光体表面に滑性フィラーを含有させることにより、感光体表面の滑性を向上せしめ、結果、感光体の長寿命化を図ることが提案されている。
また、特開昭54−44526号公報、特開昭60−57346号公報には、像保持部材の絶縁層ないし光導電層中にフィラーを含ませることにより、感光体の機械的強度を向上させることが提案されている。
また、特開平1−205171号公報、特開平7−261417号公報には、積層型電子写真感光体における感光体表面層または電荷輸送層中にフィラーを含有させることにより、感光体表面硬度の強化、または滑性を付与することが提案されている。
また、特開昭61−251860号公報には、電荷輸送媒質100重量部に対し、疎水性酸化チタン微粉末を1重量部から30重量部含有させることにより、感光体の機械的強度を向上させることが提案されている。
【0014】
しかしながら、これらの提案に従って、感光層や電荷輸送層中に単にフィラーを添加した場合、感度劣化や残留電位の蓄積が激しく、感光体としての機能を失ってしまうケースが少なくない。このためかかる手段も実用的な技術とは言えない。
【0015】
フィラーを利用するものとして、例えば特開昭57−30846号公報、特開昭58−121044号公報、特開昭59−223443号公報、特開昭59−223445号公報には、特定範囲の粒径および粒径分布を有する酸化スズや酸化アンチモンなどの金属または金属酸化物を含有する保護層を設けることにより、感光体の機械的強度を向上させることが提案されている。
かかる技術は、感光体表面の機械強度を比較的容易に向上させることが可能であることから、感光体の高耐久化に対して有用な手段であると言うことができる。しかしながら、以上の表面保護層を設けた場合、解像度の低下や、感度劣化など、他の特性が犠牲になるケースが多く、実用的な技術としては不充分と言える。
【0016】
以上、記載した技術は感光体表面層の膜強度を強化するものであるが、これとは別に特開昭46−782号公報、特開昭52−2531号公報等に記載の如く、感光体表面層の滑性を向上させることで感光体の長寿命化を図ることが提案されている。
しかしながら、これらの滑性材料はバインダー樹脂に対する親和性が乏しいものが少なくない。このため、使用間もなく滑性材料の殆どが表面に析出してしまい、感光体表面の滑性が持続できないケースが非常に多い。他方、バインダー樹脂との保持性が高い滑性材料を用いた場合、効果の度合いが弱く、更には、かかる材料を添加することによる膜の脆化が激しく、感光体の耐摩耗性を劣化させてしまうことも少なくない。
【0017】
(2)静電特性上の高耐久化技術
例えば、特開昭57−122444号公報、特開昭61−156052号公報、特開平10−90919号公報に見られるような感光層中へ酸化防止剤を添加することが提案されている。
また、特開平8−272126号公報、特開平8−95278号公報に見られるような感光層中へ可塑剤を添加することが提案されている。
また、先に挙げた特開平8−272126号公報に見られるような電荷輸送層の酸素透過係数を特定値以下とする設計により、静電特性上の高耐久化が提案されている。
また、特開平9−311474号公報、特開平10−20526号公報に見られるような感光層中へ紫外線吸収剤を添加することが提案されている。
【0018】
上記の技術は長期使用による感光層の帯電性劣化の抑制に有効な手段であると言える。しかしながら、以上の安定剤は電荷キャリアのトラップとして作用するものが少なくなく、残留電位の蓄積を助長させるケースが多い。また、バインダー樹脂に対して剛性可塑剤(antiplasticizer)として作用するものが多く、感光層の脆化を伴うものが少なくない。加えて、安定剤の添加は感光層のガラス転移温度の降下を伴うことから、感光体表面に対するトナーの離型性を阻害させてしまうことも懸念される。すなわち、安定剤添加による感光体の高耐久化は、副作用として機械的強度の劣化を伴う場合が多く、従来型の有機感光体に対して以上の手段がトータルとしての高耐久化に寄与するかは疑問視される。安定剤添加による機能発現を、高耐久化に対する「効果」として享受するケースは、高耐摩耗性の感光体やガラス転移温度が充分に高い感光体に限定されると言うことができる。
【0019】
(3)感光体表面のクリーニング性に対する安定性向上化技術
異常画像の発生防止に対して、感光体表面のクリーニング性を確保することは極めて重要である。感光体表面のクリーニングが不十分な場合、残留トナーが不必要に現像されたり、極端なケースでは感光体表面にトナーが堆積する事態となる。
【0020】
これに対して、例えば特開平8−234471号公報、特開平8−314174号公報には感光体最表面層に互い異なる2種以上の金属の複合酸化物粒子を含有させる手段、または、互いに粒径の異なるケイ素原子を含む粒子を含有させることが提案されている。これらの技術のうち、ケイ素原子を含む化合物を感光層に含有させた場合、画像ボケを誘発し易く必ずしも有効な手段とは言えない。
また、2種以上の金属の複合酸化物なる化合物としては、効果が得られる材料の組み合わせを特定することが困難であるが、例えば実施例として開示されるシリカ粒子を含むもの以外の組み合わせを適用した場合、効果を得るためには電子写真感光体の製造と使いこなしについて今一つ工夫が必要となる。
【0021】
以上に記載した如く、感光体の高耐久化について提案されてきた従来の技術は、耐摩耗性、静電特性上の耐久性、あるいは感光体表面の汚染防止に関わる一面を向上しようとするものであり、これらの耐久性を同時に向上させる技術とは言い難い。加えて、一方の耐久性向上化を試みた場合、他方の耐久性が劣化するような、両者の耐久性がトレードオフの関係になるケースが少なくない。従来提案されてきた技術は感光体の特定性能の向上には有用であると言えるものの、直接、感光体の長寿命化(高耐久化)を果たす技術とは言いきれない。実際、感光体、および感光体を含む画像形成ユニット(プロセスカートリッジ)は複写機やプリンター等の電子写真装置の全体からみて、使い捨ての消耗品(交換品)としての性格が強く、これをカートリッジとして頻繁に交換され続けてきたのが現状である。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、クリーニング性が良好で感光体表面の摩耗が少ない電子写真感光体、およびその製造方法を提供することである。また本発明の他の目的は、その感光体を用いたことにより、感光体の交換が長期にわたって必要でなく、かつ高速印刷あるいは感光体の小径化に伴う小型化を実現し、さらに大量印刷によっても高画質画像が安定して得られる画像形成方法、画像形成装置及び該画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った。その概略は次のとおりである。
電子写真装置で生じる感光体の摩耗は主に、以下に記す過程において発生または加速されていると考えることができる。
【0024】
(1)クリーニング過程による摩耗:
電子写真プロセスにおいて、感光体表面に残留するトナーを除去する方法として、クリーニングブラシ方式やクリーニングブレード方式が一般に用いられている。例えば、クリーニングブレード方式の場合、クリーニングブレードの先端部を、回転する感光体表面に所定の押圧力で物理的に食い込ませることによって、残留トナーを感光体表面から除去している。このときのブレードの摺擦により、感光体表面は、摩耗やキズが生じる。この摩耗は機械的な摩耗が支配的であると考えられる。
【0025】
(2)帯電過程による影響:
特開平10−10767号公報に記載の如く、感光体は帯電過程において、感光体内部の僅かな欠陥部位において放電絶縁破壊が生じてしまうことがある。特に感光体が絶縁耐圧の低い有機系電子写真感光体の場合は、この絶縁破壊が著しい。更には、放電により感光体表面層を構成する樹脂等が変性し、耐摩耗性の低下を引き起こす。これにより繰り返し使用した際に表面層の摩耗量が増加し、感光体の寿命を縮めてしまう。また、放電は、表面層膜厚の薄いところにより強くなることから、繰り返し使用において生じた摩耗傷等の部分は、帯電劣化(変性)が生じ易くなり、表面層の凹凸をより大きくしてしまう。結果、凝着摩耗(疲労摩耗)を促進してしまうことが考えられる。
【0026】
(3)現像過程による摩耗:
2成分現像法の場合、電子写真感光体はキャリアによる表面研磨を受け、アブレシブ摩耗を引き起こす。また、トナーに含まれる流動化剤等の添加剤には、シリカ等の硬い材料が多く、これらの添加剤が感光体に対して研磨剤として作用することが十分に考えられる。例えば、本発明者らはキャリアおよびトナーの一部がクリーニングブレード等のクリーニング手段で滞留し、クリーニング手段によって押圧力を受けたこれらの現像剤成分が感光体表面を掘削する現象を確認している。
現像過程に伴う感光体の摩耗は微小な粒子によって連続的に行われていると考えることができ、この状況は、感光体が絶えずヤスリあるいはクレンザーで磨かれている状況に喩えられる。このような現象は、シリカ等の硬い添加剤を多量に含むトナーや、クリーニング手段に滞留し易いトナーを使用する電子写真装置に於いて深刻な問題となる。
また、1成分現像法の場合も含め、現像に用いるトナーは、一度、感光体表面に付着し、次いで、転写またはクリーニング手段によって感光体表面から離れる過程を繰り返す。このときのトナー−感光体間の付着力が無視できず、トナーが感光体表面から離れる際に感光体表面が凝着摩耗を引き起こしてしまうことが考えられる。
【0027】
電子写真感光体の耐摩耗性を向上させるためには、少なくとも上記の(1)〜(3)について対策を講じる必要がある。そこで、本発明者はこれらの摩耗因子に対して感光体の耐久性を向上させることについて検討したところ、従来技術に挙げた数々の手段のなかでも、感光体表層中に無機フィラーを含有させることが有効であることを特定した。現時点では、この原因の詳細は不明であるが、本発明者らは次のように考えている。
【0028】
すなわち、感光体表面層の耐摩耗性が機械強度(例えば、引張強度とひずみの積で表される強度)を向上させるだけでは、一定の静電特性を維持しつつ電子写真装置における感光体の耐摩耗性を向上させるには限度がある。これは、電子写真装置における帯電過程が感光体表面の変質を来す結果、感光体表面の摩耗を加速していることが一因していると考えられる。感光体表面層を有機材料のみで作製した場合、絶縁耐圧を向上させることには限界があり、帯電による感光体表面の変質を抑えられないと考えられる。このため、耐摩耗性にも限度が見られると想定される。これに対して、無機フィラーを感光体表面に含有することは、かかる変質の抑制に寄与していると考えられる。
【0029】
特に、本発明者らは、電子写真装置内での感光体の摩耗速度が帯電の強弱によって、大きく左右される知見を得ている。また、帯電方式の違いによって、感光体が受けるダメージも異なる知見を得ている。これより、電子写真装置内での感光体の摩耗は、帯電による感光体表面の変質(帯電劣化)が、機械的なストレスによってもたらされる膜削れを加速しているものと推測している。
【0030】
これに基づいて無機フィラーの添加効果を解釈すると、無機フィラーの添加により感光体表面に露出する高分子膜の面積が、無機フィラーが専有する面積分、減少することになる。これに伴い、帯電劣化によって生じる高分子膜の変質量が少なくなると考えられる。結果、摩耗速度が抑制されると解釈される。
また、添加した無機フィラーも摩耗や、膜から脱離することが十分に考えられるため、無機フィラー自身の耐摩耗性や、高分子膜との親和性・パッキング性も感光体の耐摩耗性を左右する因子になると考えられる。
【0031】
更に、電子写真装置で生じる感光体の摩耗は、現像過程における摩耗が極めて激しいと言うことができる。感光体表面層が有機材料のみで構成される場合、感光体表面の硬度は現像剤に含まれる材料と比較して桁違いに低くなる。これに対して無機フィラーを感光体表面に含有することは、少なくとも感光体表面のフィラー部分に対しては現像剤に含まれる材料の硬度に匹敵する硬さを示すことから、無機フィラーが現像剤による感光体表面の掘削を抑制していると考えられる。また、トナーと感光体表面の樹脂成分との凝着に対して、無機フィラーがこれをプロテクトする役割を担う結果、凝着摩耗抑止に寄与すると考えられる。
【0032】
以上の考察を基に電子写真感光体の高耐久化手段を検討した結果、感光層に多面体粒子であり、且つ六方稠密格子面に平行な最大粒子径をD、六方稠密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、形状パラメータD/H比が0.5以上、3.0以下のα−アルミナを含有することが有効であることを見出した。
この理由の詳細は定かではないが、以上のα−アルミナの性質として第一に、ダイヤモンドに次ぐモース硬度を有し、感光層の力学的負荷に対する耐性を向上させるのに有利であること、第二に、感光層中への高充填が容易な形状を有していること、第三に、透光性が比較的高く感光層中へ配合することによる感度劣化が小さいこと、第四にケイ素化合物等と比較して吸湿性が低く、環境依存性が小さいことが効果の発現に寄与していると考える。
【0033】
以上のα−アルミナは粒径の大きなものを用いた方が感光層の耐摩耗性が高くなる傾向がある。この関係を示す一例を図26に示す。電子写真感光体の長寿命化を図るためには大粒径のフィラーを用いることが望ましい。大粒径のフィラーを用いることによって所望の耐摩耗性が確保されれば、感光層の薄膜化やフィラーの配合量を減らすことができるため製造コストも低減されるメリットが受けられる。
しかしながら、感光層中に含有するフィラーの粒径を大きくすると、感光体表面の平滑性が劣化してしまう。これに応じて感光体表面のクリーニング性が劣化し、出力画像に地肌汚れやスジ状の異常画像を招くことがある。
【0034】
これに対して、感光層中に配合するフィラーとして、互いに平均粒径の異なる2種以上の上記α−アルミナを配合することで解決できることを見出した。この手法は特に、形状パラメータD/Hが0.5以上、3.0以下のα−アルミナに対して極めて効果が高い。この改善例として、図27と図28にα−アルミナを感光体表面層に含有させた電子写真感光体の表面プロフィールを示す。
【0035】
図27は、形状パラメータD/Hが1.0で平均粒径が0.7μmのα−アルミナを配合させた感光体表面の一例である。また、図28はD/Hが1.2で平均粒径が1μmのα−アルミナとD/Hが1.0で平均粒径が0.3μmのα−アルミナを7対3の割合で配合させた感光体表面の一例である。
このように互いに平均粒径の異なるα−アルミナを混合して使用することで表面平滑性を得ることが容易となる。
【0036】
小粒子と大粒子の混合条件は、一般に小粒子の配合比率が5〜50vol%、とりわけ10〜40vol%とした場合に感光層中に表面平滑性を損なわず且つフィラーの高濃度化に対して有利となるが、この範囲以外でも混合フィラーを含有する効果は得られる。
また、混合による効果を得るためには、混合フィラーの最大粒子成分と最小粒子成分との粒径の比が1.5以上とすると良い。
以上に記載した技術の適用により、耐摩耗性に優れるのみならずクリーニングブレード等の感光体廻りの各部品に対する負荷の小さい電子写真感光体の提供が可能となる。
【0037】
また、以上の技術に加えて電子写真感光体のクリーニング性を確保する手段として感光体表面層のガラス転移温度は機内温度以上とすることが有効である。これはトナーに対する感光体の離型性がガラス転移温度を境に大きく変化することに起因する。具体的には感光体表面層のガラス転移温度を80℃とすることでトナーフィルミングを未然に防止することができる。
この手段は小型装置およびタンデム方式の電子写真装置に使用する電子写真感光体に対して各部品が高密度実装化する性格上、特に有用となる。
また、トナーフィルミングの発生を予防するためには、使用中の感光体温度は低い方が好ましいいため、感光体を加熱するヒータ等の手段は用いないことが好ましい。
【0038】
また、クリーニング性を向上させる電子写真装置上の手段として、電子写真感光体の表面に外添剤を供給する手段を設け、感光体表面の摩擦係数を常に所定の範囲を維持する手段を設けることも有効である。感光体表面の摩擦係数はオイラーベルト法による測定値として、0.2〜0.5を維持することが特に好ましい。これにより、様々な種類のトナーに対して感光体のクリーニング性を確保することができる。
感光体表面に供給する外添剤としては、後述する潤剤のうち、炭化水素系化合物、脂肪酸系化合物、脂肪酸アミド系化合物、エステル系化合物、アルコール系化合物、金属石鹸、天然ワックス、シリコーン化合物、フッ素化合物が有効である。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下図面に沿って本発明で用いられる有機系電子写真感光体を詳細に説明する。
図1は本発明の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21上に感光層24(以下、図1における感光層を混合型感光層と称す。)が設けられている。
図2は本発明の別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と感光層24(以下、図2における感光層を混合型感光層と称す。)の間に下引き層25が設けられている。
【0040】
図3は更に別の本発明の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21上に感光層2A(以下、図3における感光層を混合型感光層と称す。)が設けられている。混合型感光層2Aは表面側ほどフィラー濃度が高い特徴を有する。
図4は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と感光層2A(以下、図4における感光層を混合型感光層と称す。)の間に下引き層25が設けられている。混合型感光層2Aは表面側ほどフィラー濃度が高い特徴を有する。
【0041】
図5は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、フィラーを含まない混合型感光層28とフィラー補強混合型感光層27とからなる混合型感光層24が設けられている。
図6は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と混合型感光層24の間に下引き層25が設けられており、混合型感光層24はフィラーを含まない混合型感光層28とフィラー補強混合型感光層27からなっている。
図7は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21上に電荷発生層22と電荷輸送層23との積層からなる積層型感光層24が設けられている。
図8は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と積層型感光層24の間に下引き層25が設けられている。
【0042】
図9は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21上に電荷発生層22と電荷輸送層2Bとの積層からなる積層型感光層24が設けられている。積層型感光層24のうち、上層の電荷輸送層2Bは表面側ほどフィラー濃度が高い特徴を有する。
図10は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と積層型感光層24の間に下引き層25が設けられている。積層型感光層24のうち、上層の電荷輸送層2Bは表面側ほどフィラー濃度が高い特徴を有する。
図11は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、フィラーを含まない電荷輸送層29とフィラー補強電荷輸送層26とからなる電荷輸送層23が設けられている。
図12は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と電荷発生層22の間に下引き層25が設けられ、電荷発生層22の上にフィラーを含まない電荷輸送層29とフィラー補強電荷輸送層26とからなる電荷輸送層23が設けられている。
【0043】
導電性支持体21としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの酸化物を、蒸着またはスパッタリングによりフィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙などに被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらをDrawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法などの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研磨などで表面処理した管などを使用することができる。
【0044】
本発明における感光層24は、混合型感光層でも、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層させた積層型感光層でも用いることができる。
ここで、本発明における混合型感光層とは電荷発生物質と電荷輸送物質を一緒に分散させた感光層を意味する。積層型感光層とは、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを順に積層させた感光層を意味する。これらの感光層を設けてなる電子写真感光体を本発明では混合型感光体あるいは積層型感光体と呼ぶこととする。
【0045】
はじめに積層型感光体について説明する。
積層型感光体における各層のうち、はじめに、電荷発生層22について説明する。電荷発生層は、積層型感光層の一部を指し、露光によって電荷を発生する機能をもつ。この層には含有される化合物のうち、電荷発生物質を主成分とする。電荷発生層は必要に応じてバインダ−樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0046】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファスセレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコンなどが挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でタ−ミネ−トしたものや、ホウ素原子、リン原子などをド−プしたものが良好に用いられる。
【0047】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾ−ル系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0048】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダ−樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカ−ボネ−ト、ポリアリレート、シリコ−ン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラ−ル、ポリビニルホルマ−ル、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾ−ル、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダ−樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として、高分子電荷輸送物質を用いることができる。更に、必要に応じて低分子電荷輸送物質を添加してもよい。
【0049】
電荷発生層に併用できる電荷輸送物質には電子輸送物質と正孔輸送物質とがあり、これらは更に低分子型の電荷輸送物質と高分子型の電荷輸送物質がある。以下、本発明では高分子型の電荷輸送物質を高分子電荷輸送物質と称する。
【0050】
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0051】
正孔輸送物質としては、以下に表される電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。たとえば、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、イミダゾ−ル誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾ−ル誘導体、トリアゾ−ル誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾ−ル誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0052】
また、以下に表される高分子電荷輸送物質を用いることができる。たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾ−ル環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に例示されるポリシリレン重合体、特開平8−269183号公報、特開平9−151248号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号、特開平9−328539号公報、特開平9−272735号公報、特開平9−241369号公報、特開平11−29634号公報、特開平11−5836号公報、特開平11−71453号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開2000−38442号公報に例示される芳香族ポリカーボネートが挙げられる。これらの高分子電荷輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0053】
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロ−放電分解法、イオンプレ−ティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法などが用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダ−樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどの溶媒を用いてボ−ルミル、アトライタ−、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレ−コ−ト法、リングコート法、ビ−ドコ−ト法などを用いて行なうことができる。
【0054】
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0055】
次に電荷輸送層23について説明する。電荷輸送層は電荷発生層で生成した電荷を注入、輸送し、帯電によって設けられた感光体の表面電荷を中和する機能を担う積層型感光層の一部を指す。電荷輸送層は感光体の最表面層として用いられるケースが殆どであり、電荷輸送性と機械強度について高い性能が要求されることが多い。電荷輸送層の主成分は電荷輸送成分とこれを結着するバインダー成分と言うことができる。本発明において、この電荷輸送層には互いに粒径の異なる2種以上のフィラーからなる混合フィラーを含有し、且つ、混合フィラーの平均粒径が1μm未満であり、且つ、混合フィラーに含まれる個々のフィラーのうち、少なくとも重量百分率の最も大きなフィラーの1種が以下の(a)、(b)及び(c)に記載の条件を満足するα−アルミナを含有する必要がある。
【0056】
(a)多面体粒子であり、且つ、α−アルミナの六方稠密格子面に平行な最大粒子径をD、六方稠密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上、3.0以下である。
(b)フィラーの平均粒径が0.1μm以上1μm以下である。
(c)混合フィラーの個々のフィラーのうち、その平均粒径が最も大きい。
【0057】
後述のフィラー補強電荷輸送層26を設けない場合、少なくともα−アルミナを含む無機フィラーを含有させ、且つ、感光体表面側にこの無機フィラーの含有率を多くする必要がある。
また、後述するフィラー補強電荷輸送層26を設けない場合、電荷輸送層中に含有する混合フィラーは、静電特性と耐摩耗性との耐久性から、電荷輸送層の表面側ほど濃度が高い構成とすることが好ましい。
【0058】
はじめに、フィラー補強電荷輸送層26を設けない場合の電荷輸送層(23、2B)について説明する。
このケースの電荷輸送層には少なくとも上記の条件を満たす混合フィラーとバインダー成分、および電荷輸送成分(低分子型の電荷輸送物質、ないし高分子電荷輸送物質)が含有される。
【0059】
本発明において、バインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの高分子化合物は単独または2種以上の混合物として、また、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。特に、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂は透明性が高く、無機フィラーとの結着性に優れ、且つ、機械強度に優れる材料が多く有用である。
【0060】
本発明において電荷輸送成分として用いることのできる化合物には電子輸送物質と正孔輸送物質とがあり、これらは更に低分子型の電荷輸送物質と高分子型の電荷輸送物質がある。以下、本発明では高分子型の電荷輸送物質を高分子電荷輸送物質と称する。
【0061】
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0062】
正孔輸送物質としては、以下に表される電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。たとえば、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、イミダゾ−ル誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾ−ル誘導体、トリアゾ−ル誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾ−ル誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0063】
また、以下に表される高分子電荷輸送物質を用いることができる。たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾ−ル環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に例示されるポリシリレン重合体、特開平8−269183号公報、特開平9−151248号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号、特開平9−328539号公報、特開平9−272735号公報、特開平9−241369号公報、特開平11−29634号公報、特開平11−5836号公報、特開平11−71453号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開2000−38442号公報に例示される芳香族ポリカーボネートが挙げられる。これらの高分子電荷輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0064】
また、電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましく、具体的にはイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下とすることで、一方の電荷輸送物質が他方の電荷輸送物質の電荷トラップとなることを防止することができる。
特に、高感度化が要求される場合、電荷輸送層の電荷移動度が高く、低電界領域における電荷移動度も十分に高くすることが好ましい。具体的には電荷輸送層の電荷移動度が電界強度4×105V/cmの場合に1.2×10-5cm2/V・sec以上で、且つ電荷移動度に対する電界強度依存性が以下に定義する値として、β≦1.6×10-3を満たすことが好ましい。
【0065】
ここで、電荷移動度の電界強度依存性は次の様にして大小を判断することができる。
すなわち、電界強度(E)を低い値から高い値へ変えた場合の電荷移動度(μ)の変化を、縦軸に電荷移動度(単位:cm2/V・sec)、横軸に電界強度の平方根(単位:V1/2/cm1/2)として片対数グラフにプロットする。次に、プロットを結ぶ近似直線を引く。この具体例を図25に記す。この直線の傾きが大きくなるほど、電荷移動度の電界強度依存性が大きいと解釈される。この大きさを定量的に取り扱う数式として、本発明では以下の数1を用いる。
【数1】
β=logμ/E1/2
数1におけるβが大きい電荷輸送層ほど、電荷移動度の電界強度依存性が高いと解釈される。多くの場合、βが大きい電荷輸送層は低電界領域での電荷移動度が低くなる。このとき、感光体の静電特性面の影響として、残留電位の上昇や帯電電位を下げて感光体を使用する場合、応答性が劣ってしまうケースが挙げられる。
【0066】
高速応答性を満足する電荷輸送成分の成分量として、更に具体的には樹脂成分100重量部に対して70重量部以上含有させることが好ましい。
【0067】
電荷輸送層塗工液を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類等を挙げることができる。これらの溶媒は単独としてまたは混合して用いることができる。
【0068】
本発明に用いられる無機フィラーとしてはα−アルミナの他に、酸化ベリリウム、高温型石英、酸化亜鉛、w−窒化ホウ素等の結晶構造としてα−アルミナと同じ結晶構造を持つ六方稠密構造の物質が用いられる。この他に、酸化チタン(単斜晶系、正方晶系、斜方晶系、三斜晶系)、γ−アルミナ(立方晶系)、η−アルミナ(立方晶系)、δ−アルミナ(斜方晶系)、χ−アルミナ(等軸晶系)、κ−アルミナ(斜方晶系)、θ−アルミナ(単斜晶系)、シリカ(三方晶系、斜方晶系、正方晶系、立方晶系、単斜晶系)、酸化ジルコニウム(単斜晶系、正方晶系)、酸化スズ(正方晶系、立方晶系、斜方晶系、立方晶系)、酸化インジウム(立方晶系)、酸化アンチモン(立方晶系、斜方晶系)、酸化マグネシウム(立方晶系)、c−窒化ホウ素(立方晶系)、酸化カルシウム(立方晶系)、硫酸バリウム(斜方晶系)等もα−アルミナと併用することができる。
但し、本発明の効果を得る為に、α−アルミナ以外のフィラーを併用する場合、その混合比率は使用するフィラー全重量に対して50%未満とすることが望ましい。
【0069】
本発明では、電子写真感光体の高耐久化を図る手段として、無機フィラーにα−アルミナを選択することが極めて重要である。これはα−アルミナがダイアモンドに次いで優れたモース硬度を示すことと、α−アルミナを含有する塗工膜に透光性が備わることに起因する。前者の特性は感光体の耐摩耗性向上化に対して極めて有利に作用する。後者は静電特性のパフォーマンス維持に有利であり、これにより、フィラーの含有量を増加させることや塗工膜の厚膜化が可能となる。その結果、感光体の耐摩耗性向上化に結びつけることができる。
また、α−アルミナは温湿度の環境変動に対しても安定であり、これを用いた感光体は湿度上昇に起因する画像ボケの抑制に対して極めて優れた効果を示す。このため、ドラムヒーター等の画像ボケを防止する手段が不要であり、装置の小型化、低コスト化に極めて有用な材料となる。
【0070】
とりわけ、以下の特徴を有するα−アルミナは、膜中のフィラー充填性に優れるため、フィラーの含有量を高くしても表面平滑な膜形成が可能となる。
【0071】
すなわち、フィラーとして用いるα−アルミナは多面体(8面体以上)粒子であり、且つ、α−アルミナの六方格稠密子面に平行な最大粒子径をD、六方稠密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上3.0以下であるα−アルミナ粒子からなるものが望ましい。
α−アルミナの破砕面は電荷トラップとして作用することが多く、破砕面の面積が大きいα−アルミナを用いることは静電特性上余り好ましくない。また、ここで定義するフィラー粒子の形状パラメータD/H比が大きなα−アルミナは、形状がいびつであり、所定濃度以上のα−アルミナを含有させると、α−アルミナがバインダー樹脂から頭出し、感光体表面の平滑性を損ねてしまうことが多い。D/H比が0.5以上3.0以下ではこのような事態を回避できるケースが多く、表面平滑な膜形成に対して有利となる。
【0072】
このようなα−アルミナを感光層に配合させる場合、その粒径は無制限に大きくすることはできない。しかしながら、本発明に基づき、互いに粒径の異なる2種以上のフィラーからなる混合フィラーを含有し、且つ混合フィラーに含まれる個々のフィラーのうち、少なくとも重量百分率の最も大きなフィラーの1種が以下の(a)、(b)及び(c)に記載の条件を満足するα−アルミナとすることで、含有率の増大と大粒径の上記α−アルミナを感光層中に配合することが可能となる。これは後述するフィラー補強電荷輸送層、混合型感光層、およびフィラー補強感光層についても全く同じことが言える。
【0073】
(a)多面体粒子であり、且つ、α−アルミナの六方稠密格子面に平行な最大粒子径をD、六方稠密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上、3.0以下である。
(b)フィラーの平均粒径が0.1μm以上1μm以下である。
(c)混合フィラーの個々のフィラーのうち、その平均粒径が最も大きい。
【0074】
ここで、上記の(a)を満足するα−アルミナとしては、例えば、原料に遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ粉末を、塩化水素を含有する雰囲気ガス中にて焼成することにより得られるα−アルミナ粉末を挙げることができ、特開平6−191833号公報あるいは特開平6−191836号公報等に記載のα−アルミナの単結晶粒子よりなるアルミナ純度が99.99%以上の高純度であるアルミナ粉末の製法に準じて得られる。
これに対して、例えばバイヤー法によって得られるアルミナ粉末は、微粒子化する粉砕工程によって得られる粒子に破砕面を生じてしまうため、上記の方法によって得られるアルミナと比較して、静電特性上不利に作用することがある。
【0075】
これらのフィラーは塗工液および塗工膜中の分散性向上を目的として、表面処理剤によるフィラー表面の改質が施されてもよい。一般的な表面処理剤としては、シランカップリング剤、シラザン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤、ジルコニウム有機化合物、脂肪酸化合物等が挙げられる。また、無機物による表面処理として、フィラー表面のアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカ処理が知られており、本発明において、これらの表面処理を適用してもよい。このうち脂肪酸化合物とシランカップリング剤は分散性向上のみならず、感光体の残留電位の低減に対しても寄与することが多く有用である。
【0076】
フィラーの表面処理方法はコーティングによる改質、メカノケミカル法を利用した改質、トポケミカル法を利用した改質、カプセル化法を利用した改質、高エネルギー利用の改質、沈殿反応を利用した改質など公知の方法が用いられる。
【0077】
また、感光体の残留電位や露光部電位の一層の低減化を図る目的で、固有抵抗低下剤を無機フィラーと併用することができる。固有抵抗低下剤として、例えば、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル(ソルビタンモノ脂肪酸エステル、脂肪酸ペンタエリスリトール等)、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、カルボン酸誘導体を挙げることができる。これらの化合物は単独でも2種以上の混合物としても用いることができる。固有抵抗低下剤の使用量は無機フィラーに対して、0.5〜15wt%部程度が適当である。使用量が0.5重量部よりも低いと添加による効果が小さく、また、これより多量の添加は添加量に対する効果が小さく実用的とは言えない。
【0078】
無機フィラーの粉砕(塊砕)および分散は、ボールミル、サンドミル、KDミル、3本ロールミル、圧力式ホモジナイザー、超音波分散等により行うことができる。
大粒径の無機フィラーが多数存在すると、この無機フィラーが表面に頭出し、結果、クリーニング手段を傷つけ、クリーニング不良を招いてしまう。このため、上記の方法により無機フィラーの粉砕(塊砕)および分散を行う際、無機フィラーの平均粒径は1μm未満とすることが好ましい。また、無機フィラーを必要以上に粉砕すると、無機フィラーの分散工程において、無機フィラーの再凝集が生じ、結果、平均粒径の極めて大きな粒子が生成するケースが極めて多い。このことから、使用する無機フィラーの平均粒径は0.1μm以上とすることが好ましい。混合フィラーの平均粒径としては、0.3μmから0.6μm程度とすることで、電子写真感光体の高耐久性が享受される。
【0079】
電荷輸送層のフィラー含有率は5〜50wt%が好ましい。5wt%未満であると、十分な耐摩耗性向上効果が得られない。一方、フィラー含有率が50wt%を上回ると、表面平滑な膜形成が困難となるため、これを越さないことが好ましい。
感光層中のフィラーは10wt%以上まで高濃度化させると激しい感度劣化や残留電位上昇を招き、感光体としての機能を失ってしまうケースが多いが、感光層中の無機フィラーの含有率を導電性支持体側よりも表面側で高くすることにより、静電特性上の不具合を解消することが可能となり、同時に十分な高耐久化も可能となる。
【0080】
無機フィラーの含有率を導電性支持体側よりも表面側で高くする場合、電荷輸送層の表面側の無機フィラーを含む部分の膜厚(表面からの深さ)は、1〜15μmであることが好ましい。無機フィラーを含む部分の膜厚を1μm未満にすると、耐久性向上効果が小さくなり有用性がなくなる。他方、この部分の膜厚を2μm以上にすれば、概ね装置の寿命に匹敵する耐久性が得られることが多く、極めて有用な手段となる。但し、必要以上の厚膜化は製造コストが上がるのみで、耐久性向上の寄与も小さくなるため、厚膜化の最大値は概ね15μm程度が適当と判断される。
【0081】
本発明において、このような電荷輸送層中に含有される無機フィラーが、感光体表面側に濃度が高くなる濃度傾斜を有するか、表面側に無機フィラーが局在していることが好ましい。より具体的にはフィラーを含む厚み(N)とフィラーを含まない電荷輸送層の厚み(P)の比(N/P)が0.0125〜0.67の範囲となることが望ましい。電荷輸送層に含まれる無機フィラーが膜厚に対して濃度勾配を持つ場合も、N/Pの比が0.125〜0.67の範囲を満たすことが好ましい。
【0082】
このような無機フィラーを含む部分の厚膜化は、従来技術では激しい感度劣化や残留電位上昇を招くことが多かったが、本発明によれば容易に静電特性上の不具合を回避することが可能となる。
【0083】
上記の特徴を有する電荷輸送層の塗工は、例えば、上利泰幸、島田雅之、古賀智裕、川崎吉包、Polymer Preprints,Japan,46,No.11,2689,1997に記載の溶液拡散法を用い、予め、無機フィラーを含まない電荷輸送層塗工液を塗布し、次いで、感光体を塗工溶媒の沸点より高い温度で加熱した状態にて無機フィラーが含まれる電荷輸送層塗工液を塗布することにより感光体表面層に無機フィラーの含有率が高い電荷輸送層を形成することができる。このような塗工方法は、2回以上に分けて塗工液を塗布しても塗布後形成される電荷輸送層の界面が不明瞭で、且つ、無機フィラーの含有率に濃度傾斜が生じる場合が多い。
【0084】
また、必要により、電荷輸送層中に後述する酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
【0085】
塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。特に、塗工時におけるフィラーの凝集を防止することが容易であるスプレー塗工が好適である。
電荷輸送層の膜厚は、15〜40μm程度が適当であり、好ましくは15〜30μm程度、解像力が要求される場合、25μm以下が適当である。
【0086】
次に、フィラー補強電荷輸送層26を設ける場合の電荷輸送層23について説明する。
この場合の電荷輸送層23はフィラー補強電荷輸送層26とフィラーを含まない電荷輸送層29の2層に機能分離された特徴を持つ。ここで、フィラーを含まない電荷輸送層29は、フィラー補強電荷輸送層26におけるフィラー含有率(フィラー補強電荷輸送層の全重量に対する含有フィラーの重量百分率)よりもフィラー含有率が小さい、若しくは、この層(29)の全重量に対してフィラー含有率が5wt%未満である電荷輸送層として特徴づけられる。
【0087】
フィラーを含まない電荷輸送層は、電荷輸送成分とバインダ−成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成出来る。塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
フィラーを含まない電荷輸送層の膜厚は、15〜40μm程度が適当であり、好ましくは15〜30μm程度、解像力が要求される場合、25μm以下が適当である。
【0088】
また、フィラー補強電荷輸送層の厚み(N)とフィラーを含まない電荷輸送層の厚み(P)の比(N/P)が0.0125〜0.67の範囲となる膜厚であることが望ましい。
フィラーを含まない電荷輸送層の上層にフィラー補強電荷輸送層が積層される場合、この構成におけるフィラーを含まない電荷輸送層の膜厚は、実使用上の膜削れを考慮した電荷輸送層の厚膜化の設計が不要であり、薄膜化も可能となる。
【0089】
フィラーを含まない電荷輸送層の塗工溶媒に用いることのできる溶媒は、例えば、フィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げたケトン類、エーテル類、芳香族類、ハロゲン類およびエステル類等の溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独として、または混合して用いることができる。
【0090】
フィラーを含まない電荷輸送層に用いることのできる樹脂成分は、例えば、前述の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの高分子化合物は単独または2種以上の混合物として、また、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。特に、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート樹脂は透明性が高く有用である。また、フィラーを含まない電荷輸送層はこの上層にフィラー補強電荷輸送層が積層されるため、フィラーを含まない電荷輸送層は従来型の電荷輸送層に対する機械強度の必要性が要求されない。このため、ポリスチレンなど、透明性が高いものの機械強度が多少低い材料で従来技術では適用が難しいとされた材料も、フィラーを含まない電荷輸送層のバインダー成分として有効に利用することができる。
【0091】
電荷輸送成分として用いることのできる材料も前記の低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質および高分子電荷輸送物質が挙げられる。
低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、この使用量は樹脂成分100重量部に対して40〜200重量部、好ましくは50〜100重量部程度が適当である。また、高分子電荷輸送物質を用いる場合、電荷輸送成分100重量部に対して樹脂成分が0〜200重量部、好ましくは80〜150重量部程度の割合で共重合された材料が好ましく用いられる。
【0092】
特に、フィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に含有する電荷輸送物質が異なる場合、各層に含有する電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。具体的には0.15eV以下であることが望ましい。同様に、2種以上の電荷輸送物質を用いる場合、これらのイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下となる材料を選択することが好ましい。またこのケースでは、両層に同一の電荷輸送物質が含有し、且つ、どちらか一層に別の電荷輸送物質が含有されても良いが、異なる電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルの差は0.15eV以下であることが好ましい。
【0093】
特に、高速応答性が要求される場合、電荷輸送層の電荷移動度が高く、低電界領域における電荷移動度も十分に高くすることが好ましい。具体的には電荷輸送層の電荷移動度が電界強度4×105V/cmの場合に1.2×10-5cm2/V・sec以上で、且つ電荷移動度に対する電界強度依存性が先に定義した値として、β≦1.6×10-3を満たすことが好ましい。これを満たす電荷輸送成分の成分量として、樹脂成分100重量部に対して60重量部以上含有させることが好ましい。
【0094】
また、必要により適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することも出来る。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
【0095】
続いて、フィラー補強電荷輸送層26について説明する。
本発明におけるフィラー補強電荷輸送層とは、少なくとも電荷輸送成分とバインダー樹脂成分と無機フィラーが含まれ、電荷輸送性と機械的耐性を併せ持つ感光体の表面側に設けられた電荷輸送層の一部を指す。フィラー補強電荷輸送層は、従来型の電荷輸送層に匹敵する高い電荷移動度を示す特徴を有し、これは表面保護層と区別される。また、フィラー補強電荷輸送層は、積層型感光体における電荷輸送層を2層以上に機能分離した表面層として用いられる。すなわち、この層はフィラーの含まれない電荷輸送層との積層で用いられ、単独で用いられることが無い。このため無機フィラーが添加剤として電荷輸送層中に均一分散された場合の電荷輸送層の単一層と区別される。
【0096】
フィラー補強電荷輸送層の膜厚は1μm以上であることが好まく、より好ましくは2μm以上が好ましい。このフィラー補強電荷輸送層の膜厚を1μm以下にすると、耐久性向上効果が小さく、有用性に欠けてしまう。他方、この層の膜厚を2μm以上にすると、装置の寿命に匹敵する耐久性が得られることが少なくなく、極めて有用な手段となる。
かかる厚膜化は従来技術では激しい感度劣化や残留電位上昇を招くことが多かったが、本発明による電荷輸送層の機能分離化により、容易に静電特性上の不具合を回避することが可能となる。
但し、必要以上の厚膜化は製造コストが上がるのみで、耐久性向上の寄与も小さくなるため、この層の厚膜化の最大値は概ね15μm程度が適当と判断される。
【0097】
以上から、フィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層の膜厚の比率はフィラー補強電荷輸送層の厚み(N)とフィラーを含まない電荷輸送層の厚み(P)とした場合、その比(N/P)が0.0125〜0.67の範囲となる膜厚であることが望ましい。
【0098】
フィラー補強電荷輸送の塗工溶媒に使用できる分散溶媒は、例えば、電荷輸送層の説明に挙げたケトン類、エーテル類、芳香族類、ハロゲン類およびエステル類等の溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独として、または混合して用いることができる。
【0099】
フィラー補強電荷輸送層に用いられるバインダー成分としては、フィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層で用いられる高分子化合物が挙げられる。これらの高分子化合物は単独または2種以上の混合物として、また、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。特に、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート樹脂は透明性が高く、無機フィラーとの結着性に優れ、且つ機械強度に優れる材料が多く有用である。
【0100】
フィラー補強電荷輸送層に用いられる無機フィラーとしてはフィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げた無機フィラーを用いることができる。特に、前述した条件のα−アルミナを含む混合フィラーは、静電特性面の安定性が高く、且つ、感光体表面の平滑性が保持し易く、感光体の耐久性向上のみならず、クリーニングブレード等の感光体廻りの各ユニットに与える負荷が小さくすることが可能であり、本発明においてこれを用いることが極めて重要である。
【0101】
これらのフィラーは塗工液および塗工膜中の分散性向上を目的として、前述と同様、表面処理剤によるフィラー表面の改質が施されてもよい。このうち、脂肪酸化合物とシランカップリング剤は分散性向上のみならず、感光体の静電特性の向上に対しても寄与することが多く有用である。
【0102】
また、感光体の残留電位や露光部電位の一層の低減化を図る目的で、前述と同様にして、固有抵抗低下剤を無機フィラーと併用することができる。固有抵抗低下剤は単独でも2種以上の混合物としても用いることができる。固有抵抗低下剤の使用量は無機フィラー100重量部に対して、0.5〜10重量部程度が適当である。使用量が0.5重量部よりも低いと、添加による効果が小さく実用的とは言えない。
【0103】
フィラーの粉砕(塊砕)および分散は、ボールミル、振動ミル、サンドミル、KDミル、3本ロールミル、圧力式ホモジナイザー、超音波分散等により行うことができる。
大粒径の無機フィラーが多数存在すると、この無機フィラーが表面に頭出し、結果、クリーニング手段を傷つけ、クリーニング不良を招いてしまう。このため、上記の方法により無機フィラーの粉砕(塊砕)および分散を行う際、無機フィラーの平均粒径は1μm未満とすることが好ましい。また、無機フィラーを必要以上に粉砕すると、無機フィラーの分散工程において、無機フィラーの再凝集が生じ、結果、平均粒径の極めて大きな粒子が生成するケースが極めて多い。このことから、無機フィラーの平均粒径は0.1μm以上とすることが好ましい。混合フィラーの平均粒径としては0.3〜0.6μmの範囲で使用することが本発明における効果を享受するうえで好ましい。
【0104】
フィラー補強電荷輸送層に用いられるフィラーの選択条件はフィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げた条件と同じとすることが良い。
フィラー補強電荷輸送層のフィラー含有量は5wt%以上が好ましい。5wt%未満であると、十分な耐摩耗性が得られないケースが極めて多い。また、フィラー含有率の上限は50wt%程度となるケースが多い。感光層中のフィラーを10wt%以上高濃度化させてしまうと、激しい感度劣化や残留電位上昇を招き、感光体としての機能を失ってしまうケースが多いが、電荷輸送層を、フィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に機能分離することにより、以上の静電特性上の不具合を解消することが可能となる。
【0105】
フィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質の種類、およびこれらの使用量はフィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げた材料および使用量と同じ条件で用いることができる。
【0106】
フィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に含有する電荷輸送物質が異なる場合、各層に含有する電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。具体的には0.15eV以下であることが望ましい。同様に、フィラー補強電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を用いる場合、これらのイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下となる材料を選択することが好ましい。
【0107】
また、高速応答性が要求される場合、フィラー補強電荷輸送層の電荷移動度は高くすることが有利で更に、低電界領域における電荷移動度も十分に高くすることが好ましい。具体的な条件としては、先に記載した条件であることが望ましい。
【0108】
また、必要により適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することも出来る。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
【0109】
フィラー補強電荷輸送層の形成方法として、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。特にスプレー塗工法とリングコート法は生産上、品質の安定性を確保し易い方法であり好適である。
【0110】
また、フィラー補強電荷輸送層とこの下の層に当たるフィラーを含まない電荷輸送層との境界面が、フィラーの存在の有無以外に明確な区別ができない連続的な層構造をとるように膜形成を行うことが望ましい。このような層構成をとることで、フィラー補強電荷輸送層の膜剥離を防止することができる。この効果は、ドラム状感光体の小径化に対して特に有用となる。加えて、電気的な界面障壁の形成も防止できる。このため、露光部電位の上昇防止に有利に作用すると考えられる。
なお、このときのフィラー補強電荷輸送層の膜厚は、表面から支持体方向へのフィラー含有深さ(D)として計測される。
【0111】
フィラー含有深さ(D)は、画像品質上、感光体位置に対して余りばらつかないことが好ましい。具体的にはSEMによって撮影した2000倍程度の感光層の断面写真について、5μm間隔に20カ所のフィラー含有深さ(D)を測定したとき、Dの標準偏差がDの平均値の1/5以下に抑えることが望ましい。特に、画質が問われる場合、Dの標準偏差はDの平均値の1/7以下とすることが好ましい。
【0112】
このような層構造をとる製造方法としては、フィラー補強電荷輸送層用塗工液として、以下の条件を満たすことで可能である。
すなわち、(1)塗工溶媒が電荷輸送層に用いる樹脂に対して十分に溶解能をもつもの。
(2)塗工終了1時間後と加熱乾燥後のフィラー補強電荷輸送層の重量比として、
1.2<(塗工終了1時間後/加熱乾燥後)<2.0
の関係をもつ。
(1)、(2)の条件を満たすことで、感光体の高耐久化に有利なフィラー補強電荷輸送層の形成が可能となる。
【0113】
次に、感光層24が混合構成の場合について述べる。
本発明における混合型感光層とは電荷発生物質と電荷輸送物質を一緒に分散させた感光層を意味する。
混合型の感光層は、バインダー樹脂、電荷発生物質、電荷輸送物質および無機フィラーを適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。
また、感光層中の無機フィラーが導電性支持体側より最も離れた表面側に含有率を多くする塗工方法は、前述したものと同様の方法により容易に形成することが可能になる。
【0114】
混合型感光層に用いるバインダー樹脂、電荷発生物質、電荷輸送物質ならびに無機フィラーは、前出の材料を用いることができる。
また、塗工に用いる溶媒も、前出の材料を使用することが出来る。
また、必要によりこの混合型感光層中に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤やレベリング剤を添加することもできる。混合型感光体の膜厚は、10〜50μm程度が適当であり、好ましくは、10〜40μm程度が適当である。感光層中、導電性支持体側より最も離れた表面側に含有されるフィラー含有層の膜厚(表面からの深さ)は前述と同様の理由から、1μm以上であることが好ましく、更に好ましくは2μm以上が好ましい。他方、フィラー含有層の膜厚の上限は、電荷輸送層23の説明と同じ理由から15μm程度が適当である。
【0115】
本発明において、このような混合型感光層中に含有される無機フィラーが、感光体表面側に濃度が高くなる濃度勾配を有するか、表面側に無機フィラーが局在していることが重要であり、より具体的にはフィラーを含む感光層の厚み(L)とフィラーを含まない混合型感光層の厚み(M)の比(L/M)が0.0125〜1の範囲となることが望ましい。混合型感光層中に含まれる無機フィラーが膜厚に対して濃度勾配を持つ場合も、L/Mの比が0.125〜1の範囲を満たすことが好ましい。
【0116】
次にフィラー補強感光層27について説明する。
本発明におけるフィラー補強感光層とは、少なくともバインダー樹脂と無機フィラーと電荷発生物質ないし電荷輸送物質とが含まれ、電荷輸送性ないし電荷発生機能および機械的耐性を併せ持つ感光体表面側の混合型感光層の一部を指す。フィラー補強感光層は、従来の単層型感光層に匹敵する電荷移動度ないし電荷発生効率を示す特徴を有し、これは表面保護層と区別される。また、フィラー補強感光層は、混合型感光体における感光層を2層以上に機能分離した表面層として用いられる。すなわち、この層はフィラーの含まれない感光層との積層で用いられ、単独で用いられることが無い。このため、無機フィラーが添加剤として感光層中に分散された場合の単一の感光層と区別される。
【0117】
フィラー補強感光層は、必要により電荷発生物質を用いる以外は前述のフィラー補強電荷輸送層と全く同様の手段によって形成することができる。
フィラー補強感光層に用いるバインダー樹脂、電荷発生物質、電荷輸送物質ならびに無機フィラーは、前出の材料を用いることができる。また、塗工に用いる溶媒も、前出の材料を使用することが出来る。
塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。特に、塗工時におけるフィラーの凝集を防止することが容易であるスプレー塗工が好適である。
【0118】
フィラー補強感光層の膜厚は1μm以上であることが好まく、より好ましくは2μm以上が好ましい。このフィラー補強感光層の膜厚を1μm以下にすると、耐久性向上効果が小さく、有用性に欠けてしまう。他方、この層の膜厚を2μm以上にすると、装置の寿命に匹敵する耐久性が得られることが少なくなく、極めて有用な手段となる。
【0119】
かかる厚膜化は感度劣化や残留電位上昇を招くことが多かったが、本発明による感光層の機能分離化により、容易に静電特性上の不具合を回避することが可能となる。
但し、必要以上の厚膜化は製造コストが上がるのみで、耐久性向上の寄与も小さくなる。このため、この層の厚膜化の最大値は概ね15μm程度が適当と判断される。
【0120】
以上から、フィラーを含まない感光層とフィラー補強感光層の膜厚の比率はフィラー補強感光層の厚み(L)とフィラーを含まない感光層の厚み(M)とした場合、その比(L/M)が0.0125〜1の範囲となる膜厚であることが望ましい。
【0121】
本発明に用いられる電子写真感光体には、導電性支持体と感光層ないし電荷発生層との間に下引き層25を設けることができる。下引き層は、接着性を向上する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減する、導電性支持体からの電荷注入を防止するなどの目的で設けられる。
【0122】
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤でもって塗布することを考えると、感光層形成のための有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂など三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
【0123】
また、下引き層中には酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどで例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層のごとく適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを使用して、例えばゾル−ゲル法などにより形成した金属酸化物層も有用である。
【0124】
この他に、本発明の下引き層にはアルミナを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)などの有機物や、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、ITO、セリアなどの無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。
下引き層の膜厚は1〜5μmが適当である。
【0125】
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質およびレベリング剤を添加することができる。これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。
【0126】
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば次の(a)〜(d)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0127】
(a)フェノール系酸化防止剤:
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、スチレン化フェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、シクロヘキシルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−i−プロピリデンビスフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリスメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアネート、トリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル]イソシアネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0128】
(b)アミン系酸化防止剤:
フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニレン−N’−i−プロピル−p−フェニレンジアミン、アルドール−α−ナフチルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリンなど。
【0129】
(c)硫黄系酸化防止剤:
チオビス(β−ナフトール)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ドデシルメルカプタン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルチオカルバメート、イソプロピルキサンテート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなど。
【0130】
(d)リン系酸化防止剤:
トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなど。
【0131】
各層に添加できる可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0132】
(a)リン酸エステル系可塑剤:
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
【0133】
(b)フタル酸エステル系可塑剤:
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
【0134】
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤:
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
【0135】
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤:
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
【0136】
(e)脂肪酸エステル系誘導体:
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
【0137】
(f)オキシ酸エステル系可塑剤:
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
【0138】
(g)エポキシ系可塑剤:
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
【0139】
(h)二価アルコールエステル系可塑剤:
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
【0140】
(i)含塩素系可塑剤:
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
【0141】
(j)ポリエステル系可塑剤:
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
【0142】
(k)スルホン酸誘導体:
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
【0143】
(l)クエン酸誘導体:
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
【0144】
(m)その他:
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
【0145】
各層に添加できる滑剤としては、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0146】
(a)炭化水素系化合物:
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
【0147】
(b)脂肪酸系化合物:
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
【0148】
(c)脂肪酸アミド系化合物:
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
【0149】
(d)エステル系化合物:
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
【0150】
(e)アルコール系化合物:
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
【0151】
(f)金属石けん:
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
【0152】
(g)天然ワックス:
カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
【0153】
(h)その他:
シリコーン化合物、フッ素化合物など。
【0154】
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0155】
(a)ベンゾフェノン系:
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンなど。
【0156】
(b)サルシレート系:
フェニルサルシレート、2,4ジ−t−ブチルフェニル3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシベンゾエートなど。
【0157】
(c)ベンゾトリアゾール系:
(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリブチル5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなど。
【0158】
(d)シアノアクリレート系:
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレートなど。
【0159】
(e)クエンチャー(金属錯塩系):
ニッケル(2,2’チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
【0160】
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
【0161】
各層に添加できる低分子電荷輸送物質は、電荷発生層22の説明に記載したものと同じものを用いることができる。
【0162】
次に、図面に沿って本発明で用いられる電子写真装置を説明する。
図13は、本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図13において、感光体11は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と互いに粒径の異なる2種以上のフィラーからなる混合フィラーを含有し、且つ、混合フィラーの平均粒径は1μm未満であり、且つ、混合フィラーに含まれる個々のフィラーのうち、少なくとも重量百分率の最も大きなフィラーの1種が最も平均粒径が大きく、且つ多面体粒子で且つ、D/H比が0.5以上、3.0以下である平均粒径が0.1〜1μmのα−アルミナである電子写真感光体である。
【0163】
帯電手段12は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。帯電手段は、消費電力の低減の観点から、感光体に対し接触もしくは近接配置したものが良好に用いられる。中でも、帯電手段への汚染を防止するため、感光体と帯電手段表面の間に適度な空隙を有する感光体近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0164】
転写手段16には、一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0165】
また、露光手段13、除電手段1A等に用いられる光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0166】
現像手段14により感光体上に現像されたトナー15は、受像媒体18に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段17により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
【0167】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0168】
図14には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体11は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と互いに粒径の異なる2種以上のフィラーからなる混合フィラーを含有し、且つ、混合フィラーの平均粒径は1μm未満であり、且つ、混合フィラーに含まれる個々のフィラーのうち、少なくとも重量百分率の最も大きなフィラーの1種が最も平均粒径が大きく、且つ多面体粒子で且つ、D/H比が0.5以上、3.0以下である平均粒径が0.1〜1μmのα−アルミナである電子写真感光体である。
【0169】
感光体11は駆動手段1Cにより駆動され、帯電手段12による帯電、露光手段13による像露光、現像(図示せず)、転写手段16による転写、クリーニング前露光手段によるクリーニング前露光、クリーニング手段17によるクリーニング、除電手段1Aによる除電が繰返し行なわれる。図14においては、感光体(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0170】
以上の電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図14において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
【0171】
また、以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段等を含んだ1つの装置(部品)である。
【0172】
プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図15に示すものが挙げられる。この場合も、感光体11は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と互いに粒径の異なる2種以上のフィラーからなる混合フィラーを含有し、且つ、混合フィラーの平均粒径は1μm未満であり、且つ、混合フィラーに含まれる個々のフィラーのうち、少なくとも重量百分率の最も大きなフィラーの1種が最も平均粒径が大きく、且つ多面体粒子で且つ、D/H比が0.5以上、3.0以下である平均粒径が0.1〜1μmのα−アルミナである電子写真感光体である。
【0173】
図16には、本発明による電子写真装置の別の例を示す。この電子写真装置では、感光体(11)の周囲に帯電手段(12)、露光手段(13)、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)の各色トナー毎の現像手段(14Bk、14C、14M、14Y)、中間転写体である中間転写ベルト(1F)、クリーニング手段(17)が順に配置されている。ここで、図中に示すBk、C、M、Yの添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて添字を付けたり適宜省略する。
【0174】
感光体11は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と互いに粒径の異なる2種以上のフィラーからなる混合フィラーを含有し、且つ、混合フィラーの平均粒径は1μm未満であり、且つ、混合フィラーに含まれる個々のフィラーのうち、少なくとも重量百分率の最も大きなフィラーの1種が最も平均粒径が大きく、且つ多面体粒子で且つ、D/H比が0.5以上、3.0以下である平均粒径が0.1〜1μmのα−アルミナである電子写真感光体である。
【0175】
各色の現像手段14Bk、14C、14M、14Yは各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像手段のみが駆動される。感光体11上に形成されたトナー像は中間転写ベルト1Fの内側に配置された第1の転写手段(1D)により、中間転写ベルト(1F)上に転写される。第1の転写手段1Dは感光体11に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fを感光体11に当接させる。各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト1F上で重ね合わされたトナー像は第2の転写手段1Eにより、受像媒体18に一括転写された後、定着手段19により定着されて画像が形成される。第2の転写手段1Eも中間転写ベルト1Fに対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fに当接する。
【0176】
転写ドラム方式の電子写真装置では、転写ドラムに静電吸着させた転写材に各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという転写材の制限があるのに対し、図16に示すような中間転写方式の電子写真装置では中間転写体1F上で各色のトナー像を重ね合わせるため、転写材の制限を受けないという特長がある。このような中間転写方式は図16に示す装置に限らず前述の図13、図14、図15および後述する図17(具体例を図18に記す。)に記す電子写真装置に適用することができる。
【0177】
図17には、本発明による電子写真装置の別の例を示す。この電子写真装置は、トナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、各色毎に画像形成部が配設されている。また、各色毎の感光体(11Y、11M、11C、11Bk)が設けられている。
【0178】
この電子写真装置に用いられる感光体11は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と互いに粒径の異なる2種以上のフィラーからなる混合フィラーを含有し、且つ、混合フィラーの平均粒径は1μm未満であり、且つ、混合フィラーに含まれる個々のフィラーのうち、少なくとも重量百分率の最も大きなフィラーの1種が最も平均粒径が大きく、且つ多面体粒子で且つ、D/H比が0.5以上、3.0以下である平均粒径が0.1〜1μmのα−アルミナである電子写真感光体である。
【0179】
各感光体11Y、11M、11C、11Bkの周りには、帯電手段12、露光手段13、現像手段14、クリーニング手段17等が配設されている。また、直線上に配設された各感光体11Y、11M、11C、11Bkの各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト1Gが駆動手段1Cにて掛け渡されている。この搬送転写ベルト1Gを挟んで各感光体1Y、1M、1C、1Bkに対向する転写位置には転写手段16が配設されている。
【0180】
図17の形態のようなタンデム方式の電子写真装置は、各色毎に感光体1Y、1M、1C、1Bkを持ち、各色のトナー像を搬送転写ベルト1Gに保持された受像媒体18に順次転写するため、感光体を一つしか持たないフルカラー画像形成装置に比べ、はるかに高速のフルカラー画像の出力が可能となる。
【0181】
次に、図面に沿って本発明で適用される電子写真感光体の摩擦係数の変動を防止する外添剤供給手段について説明する。
電子写真感光体の摩擦係数の変動を防止する外添剤としては、先に挙げた滑剤が好ましく用いられる。
始めに、ベルトを介して感光体表面に外添剤を供給する方法について説明する。
【0182】
図19は、ベルトを介して感光体表面に外添剤を供給する装置の概略構成図の一例である。感光体11は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と互いに粒径の異なる2種以上のフィラーからなる混合フィラーを含有し、且つ、混合フィラーの平均粒径は1μm未満であり、且つ、混合フィラーに含まれる個々のフィラーのうち、少なくとも重量百分率の最も大きなフィラーの1種が最も平均粒径が大きく、且つ多面体粒子で且つ、D/H比が0.5以上、3.0以下である平均粒径が0.1〜1μmのα−アルミナである電子写真感光体である。
【0183】
図中の外添剤供給手段は、容器や脱脂綿等に保持された外添剤34が搬送ベルト33により感光体11表面に運ばれ、感光体表面に供給される。搬送ベルト33は必要に応じて間欠もしくは連続して駆動されてよい。
また、滑剤がスティック状もしくはシート状などの固形物である場合、クリーニングブレードのように、図中31に示される形状にして、感光体を摺擦させる手段も適用される。
【0184】
図20に外添剤供給手段の変形例を示す。図20では容器内に保持された外添剤34をローラ32を介して感光体11表面に外添剤34を供給する機構である。ローラ32は間欠で感光体表面と接離してもよく、また連れ廻りをしても良い。
【0185】
次にクリーナーを介して感光体表面に外添剤を供給する方法について述べる。
図21はクリーナーを介して感光体表面に外添剤を供給する手段の概略構成図の一例である。
クリーナー37は外添剤を含有させたクリーナーである。35は例えば空気圧シリンダー、36は空気圧ポンプで、例えば、100枚〜5万枚毎に空気圧シリンダー35を作動させて、所定の圧力でクリーナー37を感光体11の表面に押しつける。空気圧シリンダー35に替えてバネやモーター等の任意のクリーナー移動手段を用いることもできる。図22〜図24にクリーナーの変形例を示す。
【0186】
図22のクリーナーでは、心材39の周囲に外添剤を含有させることのできる繊維布、フェルトなどの保持部材38、または外添剤を押し固めることで成型したものをアタッチメント39に取り付けることでクリーナーとする。
図23のクリーナーでは、ローラ32の周囲に外添剤を含有させた保持部材38を巻き付け、クリーナーとする。
図24のクリーナーではローラ32を利用して、外添剤を含有させた保持部材38を送り、感光体表面に外添剤を供給する。
【0187】
クリーナーの形状や種類、材質は外添剤を保持できるものであれば任意である。クリーナーはブレードクリーナー、繊維クリーナー等、公知のものを使用することができる。クリーナーの形状としては、織布状や不織布状、フェルト状、筆状、パッド状、タオル地状、あるいは紙状等の任意のものを用いることができ、材質には、綿、麻、紙、脱脂綿等の植物性繊維、羊や兎、馬等の獣毛、あるいはナイロン、ポリエステル、アクリル等の合成樹脂繊維等を用いることができる。
【0188】
また、感光体表面に外添剤を供給する他の手段としては、電子写真装置において昇華性外添剤を含有する部材を用いる方法も適用できる。
すなわち、装置内の空間を利用し、装置の作動を妨げることなく設置できるものであれば、形態、色などは特定することなく使用できる。
【0189】
本発明の部材の基体となる材料は、昇華性材料を含有する事が可能でかつ、様々な環境下で、ある程度安定であるものならば特定されるものではない。中でも、外添剤の昇華性を考えると、比表面積の大きい物が好ましく用いられる。発泡材料のような多孔質なものも好ましく用いられる。
【0190】
発泡材料としては、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、軟質ウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ユリアフォーム等の発泡プラスチック、硬質フォームラバー、発泡クロロプレンゴム等の発泡ゴム、軽量気泡コンクリートパネル等の発泡コンクリート、発泡アルミニウム等の発泡金属あるいは天然ゴム、SBR、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、EPDM、EVA、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、6−ナイロン、ポリカーボネート、PET、PBT、変性PPO等に発泡材料として、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、パラトルエンスルホニルヒドラジド等を加え、発泡させた様なもの等が挙げられるが、外添剤を含有することが可能でかつ、様々な環境下である程度安定したものならば特定されるものではない。これらを形成させるときに昇華性外添剤を含有させる事で、本発明の部材を形成することができる。
【0191】
また、本発明によれば、複写機内に設置された感光体表面に対して外添剤を表面および/または内部に含有する転写紙で処理する方法も適用できる。
転写紙に外添剤を含有させる方法は大別すると2つの方法が考えられる。1つは、転写紙の抄紙前までに材料中に充填し抄紙する方法。もう一つは、転写紙表面に外添剤を含有する溶工液をコーティングする方法である。
【0192】
前者は通常、繊維に充填剤として、粘土、白土、滑石、アガライト、炭酸石灰、硫酸石灰、硫酸バリウム、チタン白、硫化亜鉛などを添加し、叩解機で加える。この際に、外添剤を同時にあるいは前後に加えるか、あるいはパルプの染色過程(行わないときもある。)の前後、あるいは同時に加え、抄紙機で紙を濾くことで作製される。外添剤の添加時期は好ましくは抄紙直前が最も好ましい。後者は通常は原紙にブラッシュコーター、ロールコーター、エヤーブラッシュコーター、マシンコーター、キャストコーティング等を用いて種々塗工液を塗工し、乾燥工程を経て作製されたものである。
【0193】
次に、本発明に関わる測定方法について述べる。
(1)膜厚測定
渦電流方式膜厚測定器FISCHER SCOPE mms(フィッシャー社製)により、感光体ドラム長手方向1cm間隔に膜厚を測定し、それらの平均値を感光層膜厚とした。
【0194】
(2)感光体表面電位測定
表面電位計(Trek MODEL344、トレック社製)のプローブを取り付けた改造現像ユニットを複写機内現像部に取り付け、感光体中央部の表面電位を測定した。
【0195】
(3)ガラス転移温度測定
フィラー補強電荷輸送層および樹脂材料のガラス転移温度は、DSC6100(セイコー電子工業社製)により大気雰囲気下、昇温速度10℃/minの条件にて開放型Al容器を用いて測定した。
【0196】
(4)表面粗さ測定
JISB−0601に準じ、ドラム状の感光体表面を触針式表面粗さ計Surfcom(東京精密社製)により、十点平均粗さRzと最大高さRmaxを測定した。
【0197】
(5)感光体表面の摩擦係数測定
円筒形の感光体表面の外周1/4部分に、中厚上質紙を紙すき方向が長手方向になるように切断したベルト状測定部材を接触させ、その一方(下端)に荷重(100g)をかけ、もう一方にフォースゲージをつないだ後、このフォースゲージを一定速度で移動させ、ベルトが移動開始した際のフォースゲージの値を読みとり、次の式により算出した。
μs=2/π×1n(F/W)
ただしμS:静止摩擦係数
F:フォースゲージ読み値(g)
W:荷重(100g)
【0198】
(6) フィラーの粒径測定
走査電子顕微鏡T−300(SEM、日本電子社製)を使用して粉末粒子の写真を撮影し、その写真から100個の粒子を選択して画像解析をおこない、その平均値として求めた。
【0199】
(7) フィラーの形状パラメータ(D/H)の測定
走査電子顕微鏡T−300(SEM、日本電子社製)を使用して粉末粒子の写真を撮影し、その写真から10個の粒子を選択して画像解析をおこない、その平均値として求めた。
【0200】
また、本実施例中で例示するフィラーの表面処理は以下の方法にて行った。
100mlナスフラスコにα−アルミナ(スミコランダムAA−07、住友化学工業社製)10g、n−ヘキサン40mlおよび脂肪酸化合物(BYK−P104、ビックケミー社製)を1ml添加した。これらの混合液を69℃にて1時間還流した。この後、混合液をデカンテーションした後、ソックスレー抽出器により固形物の洗浄を行った。洗浄した固形物を12時間、70℃にて真空乾燥した。この処理したフィラーをBYK−P104処理AA−07と称す。同様にして、AA−07の代わりにAA−02、AA−03、AA−04、AA−05、AA−07、およびAA−1について表面処理を行ったものをBYK−P104処理AA−02、BYK−P104処理AA−03、BYK−P104処理AA−04、BYK−P104処理AA−05、BYK−P104処理AA−07、BYK−P104処理AA−1と称す。
【0201】
表面処理の成否と有無の判定は、フィラーの10wt%分散水を調整し、マグネティックスターラーを用いて400rpmの回転速度で5分間攪拌した後に、フィラーが水面を浮遊するものを表面処理品と判断した。
【0202】
後述する実施例および比較例で使用した各フィラーの平均粒径とD/Hをまとめて以下に記す。
【0203】
【表1】
【0204】
【実施例】
続いて、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0205】
実施例1
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、2.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層を形成した。その上に、下記組成の電荷輸送層用塗工液を浸漬塗工法により塗工し、18μmの電荷輸送層を形成して電子写真感光体を得た。尚、電荷輸送層用塗工液は、予め、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散したフィラー分散液を用意した。これとは別に電荷輸送物質と樹脂およびシリコーンオイルの含まれる溶液を調製し、これらを塗工前に混合、攪拌することで電荷輸送層用塗工液とした。
【0206】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0207】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5重量部
【化1】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0208】
〔電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化2】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 1.5重量部
α−アルミナ(AKP−50、
住友化学工業社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0209】
比較例1
実施例1における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化3】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 2.2重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0210】
比較例2
実施例1における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化4】
α−アルミナ(スミコランダムAA−2、
住友化学工業社製) 2.2重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0211】
比較例3
実施例1における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化5】
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.1重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0212】
比較例4
実施例1における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化6】
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.5重量部
酸化マグネシウム(マグネシア500A、
宇部マテリアルズ社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0213】
比較例5
実施例1における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化7】
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.5重量部
酸化チタン(タイペークCR−97、石原産業社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0214】
比較例6
実施例1における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例1と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化8】
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.5重量部
球状シリカ(アドマファインSO−C3、
アドマテックス社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0215】
以上のように作製した実施例1および比較例1〜6の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:IPSiO Color 8000)に搭載し、画像濃度が5%となるテキストとグラフィック画像のパターンを通算2万枚、プリントアウトした。
電子写真装置の帯電手段は装置に変更加えず、感光体に近接配置された帯電ローラを用いた。試験環境は、23℃/55%RHであった。
試験前後における感光体の外観異常の有無と、1枚目および2万枚目プリント画像の品質評価を行った。画像品質の評価は、出力画像に異常が認められない場合を良好とした。
結果を以下の表に記す。
【0216】
【表2】
【0217】
実施例1の電子写真感光体は、比較例1〜5のものと比較して、試験前における感光体表面のざらつき性が異なる。試験前から感光体表面にざらつきが見られる比較例1〜5の電子写真感光体は、試験の結果、クリーニングブレードの損傷を招いており、2万枚プリントの使用に耐えられない感光体であると判断される。
他方、実施例1と比較例6は試験前後において感光体表面は平滑性を有しており、クリーニングブレードへのダメージが小さい感光体であると判断される。
【0218】
実施例1と比較例1〜6に含有されるフィラーについて、それらの形状パラメータD/Hを測定すると、スミコランダムAA−2が1.3、スミコランダムAA−1が1.2、スミコランダムAA−07が1.0、AKP−50が3.2、マグネシア500Aが4.2、タイペークCR−97が3.7、アドマファインSO−C3が1.2であった。
【0219】
実施例1の結果から、感光体表面のざらつきを低減する手段として、D/Hが0.5から3.0の範囲であって、且つ、フィラーの平均粒径が0.1μmから1μmの範囲に含有することが重要である。
比較例6は試験終了時にプリントした2万枚目の出力画像はドット画像の輪郭が不明瞭な画像ボケが観察されており、比較例1〜5と同様、2万枚プリントの使用に耐えられない感光体であると判断される。
これらの結果から、実施例1の電子写真感光体は電子写真装置の長寿命化に有効なものであると判断される。
【0220】
実施例2
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、2.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、18μmの電荷輸送層を形成して電子写真感光体を得た。尚、電荷輸送層用塗工液は、予め、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散したフィラー分散液を用意した。これとは別に電荷輸送物質と樹脂およびシリコーンオイルの含まれる溶液を調製し、これらを塗工前に混合、攪拌することで電荷輸送層用塗工液とした。
【0221】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のトリスアゾ顔料(リコー社製) 3重量部
【化9】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.2重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0222】
〔電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化10】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.3重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 0.9重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0223】
実施例3
実施例2における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化11】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.3重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 0.9重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0224】
実施例4
実施例2における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化12】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.5重量部
α−アルミナ(AKP−30、住友化学工業社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0225】
実施例5
実施例2における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化13】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.5重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0226】
実施例6
実施例2における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化14】
α−アルミナ(スミコランダムAA−04、
住友化学工業社製) 1.5重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0227】
実施例7
実施例2における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化15】
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 1.5重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0228】
比較例7
実施例2における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化16】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 2.2重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0229】
比較例8
実施例2における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例2と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化17】
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 2.2重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0230】
以上のように作製した実施例2〜7、比較例7〜8の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:RIFAX BL110 写太郎2)に搭載し、画像濃度が5%となるテキストとグラフィック画像のパターンを通算3万枚、プリントアウトした。
電子写真装置の帯電手段はスコロトロンチャージャーを用いた。また、装置試験環境は、23℃/55%RHであった。
所定枚数毎に画像出力を一旦停止し、白紙画像を連続10枚プリントアウトした。次ぎに、クリーニングブレードの通過部分に当たる感光体表面を顕微鏡観察して、感光体表面のクリーニングの良否を5段階に分けて判定した。
【0231】
5段階評価は以下の基準で選定した。
5:クリーニング不良無し。感光体表面は光沢がある。画像品質に影響は見られない。
4:僅かながら、クリーニング残トナーが確認される。感光体表面は光沢がある。出力画像の品質に影響は見られない。
3:僅かながら、クリーニング残トナーが確認され感光体表面が僅かにくすんでいる。出力画像の品質に影響は見られない。
2:クリーニング残トナーが確認され感光体表面がくすんでいる。出力画像に多少の汚れが認められる。
1:トナーフィルミングが観察される。白ヌケないしカブリなどの異常画像が出力され、使用に耐えられない。
【0232】
【表3】
【0233】
比較例7〜8の電子写真感光体は1万枚の通紙試験で使用に耐えられない異常画像を発生したのに対して、実施例2〜7の電子写真感光体は、3万枚の通紙試験をおこなっても使用上問題のない画像が得られた。
電荷輸送層に含有するα−アルミナについて、その形状パラメータD/Hは以下の通りであった。すなわち、
スミコランダムAA−02;0.9、スミコランダムAA−03;1.0、スミコランダムAA−04;0.9、スミコランダムAA−05;1.0、スミコランダムAA−07;1.0、スミコランダムAA−1;1.2、AKP―50;3.2、AKP−30;3.4、AKP―20;3.7、AKP−15;3.6。
【0234】
実施例2〜7の電子写真感光体には、D/Hが0.5から3.0の範囲であるα−アルミナが含有されかつ、それらのフィラーは1μm以下である。
これより、電荷輸送層に含有するフィラーは1μm以下で、D/Hが0.5から3.0の範囲であるα−アルミナを使用した方が異常画像を未然に防止する効果があると解釈される。
比較例7〜8の電子写真感光体は未使用時から多少のざらつき感が見られたことから、クリーニング不良と異常画像の発生はかかる条件とは相違することが原因したと思われる。
実施例2〜7のうち、電荷輸送層に含む混合フィラーの平均粒径が0.3〜0.6μmである電子写真感光体は、通紙試験3万枚枚時のクリーニングが良好であり、他の実施例よりも優れていると解釈される。
【0235】
実施例8
φ60mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、2.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、18μmの電荷輸送層を形成して電子写真感光体を得た。尚、電荷輸送層用塗工液は、予め、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散したフィラー分散液を用意した。これとは別に電荷輸送物質と樹脂およびシリコーンオイルの含まれる溶液を調製し、これらを塗工前に混合、攪拌することで電荷輸送層用塗工液とした。
【0236】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0237】
〔電荷発生層用塗工液〕
チタニルフタロシアニン(リコー社製) 3重量部
ポリビニルアセタール(エスレックBM−2、
積水化学工業社製) 1重量部
メチルエチルケトン 100重量部
【0238】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化18】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.0重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、
住友化学工業社製) 1.8重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0239】
実施例9
実施例8における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例8と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化19】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.0重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 1.8重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0240】
実施例10
実施例8における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例8と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、
ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化20】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.0重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−04、
住友化学工業社製) 1.8重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0241】
実施例11
実施例8における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例8と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化21】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.0重量部
α−アルミナ(AKP−30、
住友化学工業社製) 1.8重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0242】
実施例12
実施例8における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例8と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化22】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.0重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 1.8重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0243】
実施例13
実施例8における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例8と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、
ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化23】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.0重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.8重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0244】
比較例9
実施例8における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例8と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化24】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 5.8重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0245】
比較例10
実施例8における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例8と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化25】
α−アルミナ(AKP−15、住友化学工業社製) 4.0重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 1.8重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0246】
以上のように作製した実施例11〜13、比較例9〜10の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio Neo 450)に搭載し、画像濃度が5%となるテキストとグラフィック画像のパターンを通算5万枚、プリントアウトした。電子写真装置の帯電手段は装置に変更を加えず、帯電ローラをそのまま用いた。試験環境は23℃/55%RHであった。試験終了後の感光体の表面粗さと出力画像の地肌汚れの評価を行った。地肌汚れの評価は、段階見本との比較によって5段階に分けて判定した。
【0247】
5段階評価は以下の基準で選定した。
5:地肌汚れが全く観察されず、良好。
4:地肌汚れがごく僅かに観察されるが、良好。
3:地肌汚れが僅かに観察されるが実質的に良好。
2:地肌汚れが観察されるが実質的に問題無し。
1:地肌汚れが観察され、実用上問題となる。
【0248】
【表4】
5万枚通紙試験の終了時に出力した画像の地汚れ度合いは、比較例9〜10が明らかに地肌が汚れていたのに対して実施例8〜13では、注視しないと確認できない程度の地肌汚れであった。
特に、電荷輸送層に含有される混合フィラーが、全て多面体粒子であり、且つ、D/H比が0.5以上、5.0以下であり、粒子の平均粒径が0.1μm以上1μm以下である実施例8、10、および12は試験終了後も電子写真感光体の表面が平滑であり、地肌汚れも一段、良好な結果が得られた。
【0249】
実施例14
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、18μmの電荷輸送層を形成して電子写真感光体を得た。尚、電荷輸送層用塗工液は、予め、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散したフィラー分散液を用意した。塗工液中に固有抵抗低下剤を含有させる場合は、これをフィラー分散液に配合した。これとは別に電荷輸送物質と樹脂およびシリコーンオイルの含まれる溶液を調製し、これらを塗工前に混合、攪拌することで電荷輸送層用塗工液とした。
【0250】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0251】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5重量部
【化26】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0252】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート系樹脂(UポリマーU6000、ユニチカ社製)9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化27】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.5重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.7重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製) 0.1重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0253】
実施例15
実施例14における電荷輸送層の膜厚を20μmとした以外は実施例14と同様にして電子写真感光体を得た。
【0254】
実施例16
実施例14における電荷輸送層の膜厚を22μmとした以外は実施例14と同様にして電子写真感光体を得た。
【0255】
実施例17
実施例14における電荷輸送層の膜厚を24μmとした以外は実施例14と同様にして電子写真感光体を得た。
【0256】
実施例18
実施例14における電荷輸送層の膜厚を26μmとした以外は実施例14と同様にして電子写真感光体を得た。
【0257】
実施例19
実施例14における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例14と同様にして電子写真感光体を得た。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート系樹脂(UポリマーU6000、ユニチカ社製)9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化28】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.5重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0258】
実施例20
実施例19における電荷輸送層の膜厚を20μmとした以外は実施例19と同様にして電子写真感光体を得た。
【0259】
実施例21
実施例19における電荷輸送層の膜厚を22μmとした以外は実施例19と同様にして電子写真感光体を得た。
【0260】
実施例22
実施例19における電荷輸送層の膜厚を24μmとした以外は実施例19と同様にして電子写真感光体を得た。
【0261】
実施例23
実施例19における電荷輸送層の膜厚を26μmとした以外は実施例19と同様にして電子写真感光体を得た。
【0262】
以上のように作製した実施例14〜23の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:IPSiO Color 8000)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。電子写真装置の帯電手段は装置に変更加えず、感光体に近接配置された帯電ローラを用いた。
帯電ローラの印加電圧はAC成分としてピーク間電圧1500Vの2kHzを選択した。また、DC成分は試験開始時の感光体の帯電電位が−700Vとなるようなバイアスを設定し、試験終了に至るまでこの帯電条件で試験を行った。また、現像バイアスは−500Vとした。
試験環境は、23℃/55%RHであった。
【0263】
試験終了時に画像濃度が100%の黒ベタパターンをプリントし、このときにおける感光体表面の露光部電位の程度を評価した。同時に黒ベタパターンのマクベス濃度計(RD−918)による画像濃度を測定した。また、試験終了時に実施例2〜7、比較例7〜8において実施したクリーニング評価を同様にして行った。
測定によって得られた露光部電位は絶対値が低い程優れていると評価した。また、画像濃度は測定値が大きなものほど良好と評価した。
結果を以下の表に記す。
【0264】
【表5】
【0265】
感光体表面層である電荷輸送層の厚膜化が可能になると、感光層の膜削れ余裕度向上による耐久寿命を延ばすことができる。ただし、電荷輸送層の厚膜化は、露光部電位の上昇を招き、結果、出力画像のコントラストを低下させてしまうため、厚膜化には自ずと限度が生ずる。
固有抵抗低下剤が含まれる実施例14〜18は、これが含まれない実施例19〜23と比較して、電荷輸送層の厚膜化に伴う露光部電位の上昇が低い結果が得られた。これより、電荷輸送層の厚膜化が可能になる分、耐久寿命を延ばす効果が得られる。
特に、混合フィラーを含有する電荷輸送層中に固有抵抗低下剤を含有させた場合、クリーニング性が良好となる効果も得られることから耐久寿命を延ばす手段として有用であると判断される。
【0266】
実施例24
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、感光層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、2.5μmの下引き層、16μmの混合型感光層を形成した。
その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方のフィラー補強感光層用塗工液をスプレー塗工し、厚さ2μmのフィラー補強混合型感光層を設けて電子写真感光体を得た。
【0267】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0268】
〔混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質(リコー社製) 13重量部
【化29】
(重量平均分子量10万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.9重量部
【化30】
テトラヒドロフラン 100重量部
シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)の1%テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0269】
〔フィラー補強混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質(リコー社製) 11.5重量部
【化31】
(重量平均分子量10万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.4重量部
【化32】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 0.7重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.3重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0270】
実施例25
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、感光層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、2.5μmの下引き層、18μmの混合型感光層を形成した。
【0271】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0272】
〔混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質(リコー社製) 11.5重量部
【化33】
(重量平均分子量10万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.4重量部
【化34】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 0.7重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−04、
住友化学工業社製) 0.3重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)の1%テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0273】
比較例11
実施例24におけるフィラー補強混合型感光層を以下のものに変更した以外は実施例24と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 3重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質(リコー社製) 11.5重量部
【化35】
(重量平均分子量10万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.4重量部
【化36】
α−アルミナ(スミコランダムAA−2、
住友化学工業社製) 2重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0274】
比較例12
実施例24におけるフィラー補強混合型感光層を以下のものに変更した以外は実施例24と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質(リコー社製) 11.5重量部
【化37】
(重量平均分子量10万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.4重量部
【化38】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、住友化学工業社製) 2重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0275】
以上のように作製した実施例24〜25、比較例11〜12の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio Neo 270)に搭載し、画像濃度が5%となるテキストとグラフィック画像のパターンを通算2万枚、プリントアウトした。
電子写真装置の帯電手段は印加バイアスの正負を変更した以外は装置に変更を加えず、帯電ローラをそのまま用いた。試験環境は25℃/60%RHであった。
【0276】
試験終了後における感光体の外観異常の有無と、黒ベタパターンプリント時の露光部電位測定、および2万枚目プリント画像の品質評価を行った。画像品質の評価は、出力画像に異常が認められない場合を良好とした。
結果を以下の表に記す。
【0277】
【表6】
【0278】
実施例24と比較例11〜12との比較から、感光層に含有するフィラーは粒径の異なる2種類のフィラーを用いることで、クリーニングブレードの損傷を防ぎ、結果、異常画像の発生を抑制できることが理解される。また、フィラーを含まない層とフィラー補強感光層との積層構成とすることで露光部電位を低減化できることが実施例24と実施例25との比較から理解される。
【0279】
実施例26
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、感光層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、18μmの混合型感光層を形成した。
その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方のフィラー補強感光層用塗工液をスプレー塗工し、厚さ2μmのフィラー補強混合型感光層を設けて電子写真感光体を得た。
【0280】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0281】
〔混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質(リコー社製) 13重量部
【化39】
(重量平均分子量11万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.9重量部
【化40】
テトラヒドロフラン 100重量部
シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)の1%テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0282】
〔フィラー補強混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質(リコー社製) 12.6重量部
【化41】
(重量平均分子量11万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.8重量部
【化42】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 0.30重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.20重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0283】
実施例27
実施例26におけるフィラー補強混合型感光層を以下のものに変更した以外は実施例26と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質(リコー社製) 12.3重量部
【化43】
(重量平均分子量11万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.7重量部
【化44】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 0.54重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.36重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0295】
実施例34
φ60mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、感光層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.0μmの下引き層、18μmの混合型感光層を形成した。
その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方のフィラー補強感光層用塗工液をスプレー塗工し、厚さ1μmのフィラー補強混合型感光層を設けて電子写真感光体を得た。
【0296】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0297】
〔混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
ポリエステル(O−PET KR−01、カネボウ社製) 7.5重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 7.5重量部
【化57】
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.9重量部
【化58】
テトラヒドロフラン 100重量部
シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)の1%テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0298】
〔フィラー補強混合型感光層用塗工液〕
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
ポリエステル(O−PET KR−01、カネボウ社製)6.15重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 6.15重量部
【化59】
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.7重量部
【化60】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 0.54重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.26重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製)0.04重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0299】
実施例35
実施例34におけるフィラー補強混合型感光層の膜厚を5μmとした以外は実施例34と同様にして電子写真感光体を得た。
【0300】
実施例36
実施例34におけるフィラー補強混合型感光層の膜厚を10μmとした以外は実施例34と同様にして電子写真感光体を得た。
【0301】
実施例37
実施例34におけるフィラー補強混合型感光層の膜厚を15μmとした以外は実施例34と同様にして電子写真感光体を得た。
【0302】
実施例39
実施例34におけるフィラー補強混合型感光層の膜厚を20μmとした以外は実施例34と同様にして電子写真感光体を得た。
【0303】
比較例15
実施例34におけるフィラー補強混合型感光層を設けなかった以外は実施例34と同様にして電子写真感光体を得た。
【0304】
以上のように作製した実施例34〜38、比較例15の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio Neo 350)に搭載し、3万枚の通紙試験を行った。電子写真装置の帯電手段は感光体に近接配置するような帯電ローラを用いた。感光体と帯電ローラの間隙は50μmとなるようにした。
また、試験環境は、27℃/50%RHであった。
試験終了時に画像濃度が100%の黒ベタパターンをプリントし、このときにおける感光体表面の露光部電位の程度を評価した。同時に画像品質の評価として、異常画像の有無を確認した。
結果を以下の表に記す。
【0305】
【表8】
【0306】
感光体表面層であるフィラー補強感光層の厚膜化が可能になると、感光層の膜削れ余裕度向上による耐久寿命を延ばすことができる。ただし、フィラー補強感光層の厚膜化は露光部電位の上昇を招くことが実施例34〜38の結果から理解される。
フィラー補強感光層を積層することによる耐摩耗性を享受し、かつ、出力画像への影響を及ぼさないフィラー補強感光層の膜厚設定として、1〜15μm程度とすることが好ましいと判断される。
【0307】
実施例39
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、18μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して4μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0308】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0309】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5重量部
【化61】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0310】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート系樹脂(UポリマーP1001、ユニチカ社製)9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化62】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0311】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート系樹脂(UポリマーP1001、ユニチカ社製)9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化63】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.5重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0312】
実施例40
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層を形成して電子写真感光体を得た。
【0313】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0314】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5重量部
【化64】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0315】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート系樹脂(UポリマーP1001、ユニチカ社製)9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化65】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 1.5重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 0.7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0316】
実施例41
実施例39におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を6μmとした以外は実施例39と同様にして電子写真感光体を得た。
【0317】
実施例42
実施例40における電荷輸送層の膜厚を24μmとした以外は実施例40と同様にして電子写真感光体を得た。
【0318】
以上のように作製した実施例39〜42の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:IPSiO Color 8000)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。電子写真装置の帯電手段は装置に変更加えず、感光体に近接配置された帯電ローラを用いた。
帯電ローラの印加電圧はAC成分としてピーク間電圧1500Vの2kHzを選択した。また、DC成分は試験開始時の感光体の帯電電位が−700Vとなるようなバイアスを設定し、試験終了に至るまでこの帯電条件で試験を行った。また、現像バイアスは−500Vとした。
試験環境は、24℃/54%RHであった。
【0319】
試験終了時に画像濃度が100%の黒ベタパターンをプリントし、このときにおける感光体表面の露光部電位の程度を評価した。同時に黒ベタパターンのマクベス濃度計(RD−918)による画像濃度を測定した。同時に、摩耗量を測定した。
測定によって得られた露光部電位は絶対値が低い程優れていると評価した。また、画像濃度は測定値が大きなものほど良好と評価した。
結果を以下の表に記す。
【0320】
【表9】
【0321】
実施例39と実施例40および、実施例41と実施例42との比較から、電荷輸送層をフィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層との積層構成とすることで、飛躍的な露光部電位の低減化が図れることが理解される。また、出力画像の画像濃度も露光部電位に応じた画像濃度が得られている。また、このような構成による耐摩耗性への影響が小さい結果が得られていることから、以上の構成は極めて有用であると判断される。
【0322】
実施例43
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して4μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0323】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0324】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5重量部
【化66】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0325】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化67】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0326】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化68】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 3.1重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.3重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0327】
比較例16
実施例43におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例43と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化69】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1、
住友化学工業社製) 4.4重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0328】
比較例17
実施例43におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例43と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化70】
α−アルミナ(スミコランダムAA−2、
住友化学工業社製) 4.4重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0329】
比較例18
実施例43におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例43と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化71】
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 4.4重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0330】
比較例19
実施例43におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例43と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化72】
酸化マグネシウム(マグネシア500A、
宇部マテリアルズ社製) 3.1重量部
α−アルミナ(AKP−50、
住友化学工業社製) 1.3重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0331】
比較例20
実施例43におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例43と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化73】
酸化チタン(タイペークCR−97、石原産業社製) 3.1重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.3重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0332】
比較例21
実施例43におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例43と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化74】
球状シリカ(アドマファインSO−C3、
アドマテックス社製) 1.5重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0333】
以上のように作製した実施例43および比較例16〜21の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:IPSiO Color 8000)に搭載し、画像濃度が5%となるテキストとグラフィック画像のパターンを通算2万枚、プリントアウトした。
電子写真装置の帯電手段は装置に変更加えず、感光体に近接配置された帯電ローラを用いた。試験環境は、23℃/55%RHであった。
試験前後における感光体の外観異常の有無と、1枚目および2万枚目プリント画像の品質評価を行った。画像品質の評価は、出力画像に異常が認められない場合を良好とした。
結果を以下の表に記す。
【0334】
【表10】
【0335】
実施例43の電子写真感光体は、比較例16〜20のものと比較して、試験前における感光体表面のざらつき性が異なる。試験前から感光体表面にざらつきが見られる比較例16〜20の電子写真感光体は、試験の結果、クリーニングブレードの損傷を招いており、2万枚プリントの使用に耐えられない感光体であると判断される。
他方、実施例43と比較例21は試験前後において感光体表面は平滑性を有しており、クリーニングブレードへのダメージが小さい感光体であると判断される。
しかしながら、比較例21は試験終了時にプリントした2万枚目の出力画像はドット画像の輪郭が不明瞭な画像ボケが観察されており、比較例16〜20と同様、2万枚プリントの使用に耐えられない感光体であると判断される。
これらの結果から、実施例43の電子写真感光体は電子写真装置の長寿命化に有効なものであると判断される。
【0336】
実施例44
φ100mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して4μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0337】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0338】
〔電荷発生層用塗工液〕
チタニルフタロシアニン(リコー社製) 9重量部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 5重量部
メチルエチルケトン 400重量部
【0339】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化75】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0340】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化76】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.3重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 0.9重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0341】
実施例45
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例44と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化77】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07) 1.3重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 0.9重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0342】
実施例46
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例44と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化78】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07) 1.1重量部
α−アルミナ(AKP−30、住友化学工業社製) 1.1重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0343】
実施例47
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例44と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化79】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07) 1.1重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 1.1重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0344】
実施例48
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例44と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化80】
α−アルミナ(スミコランダムAA−05) 1.3重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 0.9重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0345】
実施例49
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例44と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化81】
α−アルミナ(スミコランダムAA−04) 1.3重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 0.9重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0346】
実施例50
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例44と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化82】
α−アルミナ(スミコランダムAA−04) 1.1重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.1重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0347】
実施例51
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例44と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化83】
α−アルミナ(スミコランダムAA−03) 1.1重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.1重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0348】
比較例22
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例44と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化84】
α−アルミナ(スミコランダムAA−1) 2.2重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0349】
比較例23
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例44と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化85】
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 2.2重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0350】
以上のように作製した実施例44〜51、比較例22〜23の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF 6550)に搭載し、画像濃度が5%となるテキストとグラフィック画像のパターンを通算10万枚、プリントアウトした。
電子写真装置の帯電手段は装置に変更を加えず、スコロトロンチャージャーを用いた。また、装置試験環境は、25℃/55%RHであった。
所定枚数毎に実施例2〜9、比較例7〜8において実施したクリーニング評価を行った。
結果を以下に記す。
【0351】
【表11】
【0352】
比較例22〜23の電子写真感光体は5万枚以下の通紙試験で使用に耐えられない異常画像を発生したのに対して、実施例44〜51の電子写真感光体は、10万枚の通紙試験をおこなっても使用上問題のない画像が得られた。
本結果より、電荷輸送層に含有するフィラーは粒径の異なるものを混合して使用した方が異常画像を未然に防止する効果があると解釈される。
比較例22〜23の電子写真感光体は未使用時から多少のざらつき感が見られたことから、クリーニング不良と異常画像の発生はこれに起因するものと思われる。
実施例44〜51のうち、フィラー補強電荷輸送層に含む混合フィラーの平均粒径が0.3〜0.6μmである電子写真感光体は、通紙試験10万枚枚時のクリーニングが良好であり、他の実施例よりも優れていると解釈される。
【0353】
実施例52
φ60mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、2.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して4μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0354】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0355】
〔電荷発生層用塗工液〕
チタニルフタロシアニン 9重量部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 5重量部
メチルエチルケトン 400重量部
【0356】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリスチレン樹脂(デンカスチロールHRM−3、
電気化学工業社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 9重量部
【化86】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0357】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、
ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化87】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.1重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、
住友化学工業社製) 1.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0358】
実施例53
実施例52におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例52と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化88】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.1重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 1.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0359】
実施例54
実施例52におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例52と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) .0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化89】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.1重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−04、
住友化学工業社製) 1.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0360】
実施例55
実施例52におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例52と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化90】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 7.0重量部
α−アルミナ(AKP−30、住友化学工業社製) 1.1重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0361】
実施例56
実施例52におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例52と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化91】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.1重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 1.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0362】
実施例57
実施例52におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例52と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化92】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.1重量部
α−アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 1.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0363】
比較例24
実施例52におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例52と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化93】
α−アルミナ(スミコランダムAA−2、
住友化学工業社製) 5.8重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0364】
比較例25
実施例52におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例52と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 7.0重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.4重量部
【化94】
α−アルミナ(AKP−15、住友化学工業社製) 4.1重量部
α−アルミナ(AKP−20、住友化学工業社製) 1.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0365】
以上のように作製した実施例52〜57、比較例24〜25の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF 350)に搭載し、画像濃度が5%となるテキストとグラフィック画像のパターンを通算5万枚、プリントアウトした。
電子写真装置の帯電手段は装置に変更を加えず、帯電ローラーをそのまま用いた。試験環境は23℃/55%RHであった。
試験終了後の感光体の表面粗さと出力画像の地肌汚れの評価を行った。地肌汚れの評価は、段階見本との比較によって5段階に分けて判定した。
【0366】
5段階評価は以下の基準で選定した。
5: 地肌汚れが全く観察されず、良好。
4: 地肌汚れがごく僅かに観察されるが、良好。
3: 地肌汚れが僅かに観察されるが実質的に良好。
2: 地肌汚れが観察されるが実質的に問題無し。
1: 地肌汚れが観察され、実用上問題となる。
【0367】
【表12】
【0368】
5万枚通紙試験の終了時に出力した画像の地汚れ度合いは、比較例24〜25が明らかに地肌が汚れていたのに対して実施例52〜57では、注視しないと確認できない程度の地肌汚れであった。
特に、フィラー補強電荷輸送層に含有される混合フィラーが、全て(a)実質的に破砕面を有さず、しかも、多面体粒子であり、且つ、α−アルミナの六方稠密格子面に平行な最大粒子径をD、六方稠密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上、5.0以下であり、(b)粒子の平均粒径が0.1μm以上1μm以下である実施例52、54、および56は試験終了後も電子写真感光体の表面が平滑であり、地肌汚れも一段、良好な結果が得られた。
【0369】
実施例58
φ60mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0370】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0371】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のトリスアゾ顔料(リコー社製) 3重量部
【化95】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.2重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0372】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 9重量部
【化96】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0373】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 9重量部
【化97】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 0.5重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 0.1重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.006重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0374】
実施例59
実施例58におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例58と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 8.8重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8.8重量部
【化98】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 0.8重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 0.2重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製)0.01重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0375】
実施例60
実施例58におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例58と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 8.3重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8.3重量部
【化99】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.6重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 0.4重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.02重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0376】
実施例61
実施例58におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例58と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 6.5重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6.5重量部
【化100】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.5重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 1.3重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.06重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0377】
実施例62
実施例58におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例58と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 4.7重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 4.7重量部
【化101】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 7.4重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 1.8重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.1重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0378】
実施例63
実施例58におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例58と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 4.2重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 4.2重量部
【化102】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 8.2重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 2.0重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製) 0.2重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0379】
比較例26
実施例58におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例58と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 4.2重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 4.2重量部
【化103】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 5.1重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.1重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0380】
比較例27
φ60mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、27μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
【0381】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0382】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のトリスアゾ顔料(リコー社製) 3重量部
【化104】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.2重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0383】
〔電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 9重量部
【化105】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0384】
以上のように作成した実施例58〜63および比較例26〜27の電子写真感光体を、一部改造した複写機(リコー社製:PRETER 750)にブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアンの各色の現像ステーションに搭載し、ブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアン各色の画像面積が5%となるテキストとグラフィック画像のパターン画像を複写プリントする通紙試験を通算、10万枚迄行った。複写機の帯電手段は、両端部に厚さ60μm、幅5mmの絶縁テープを貼り付けた帯電ローラを用いた。この帯電ローラにDC電圧として−700V、AC電圧として1.5kV(ピーク間電圧)、周波数2kHzを重畳させた電圧を印加することで感光体を帯電した。また、転写手段は中間転写ベルトを用いた。
更にステアリン酸亜鉛をスティック状に加圧成型した外添材を電子写真感光体表面に接触させた。
試験環境は、平均29℃/65%RHであった。
試験終了後、マゼンタ色の現像ステーションに搭載した電子写真感光体の外観評価、感光層の摩耗量測定および10万枚複写時の画像品質を評価した。
結果を以下に示す。
【0385】
【表13】
【0386】
フィラー補強感光層に含有するフィラーは濃度が高い程、試験終了時の感光層の摩耗量が小さくなる傾向が見られる。このうち、実施例58のケースでは比較例26との結果と比較すると、感光体表面の外観異常の発生防止に対して効果は認められるものの、耐摩耗性に対しては大きな効果は望めないと判断される。すなわち、耐摩耗性向上を目的として、フィラーを感光層中に含有させるためにはフィラー補強感光層の重量に対して5wt%以上含有させることが好ましいと考えられる。
他方、実施例62と実施例63との結果からこのフィラー濃度は50wt%を越えると耐摩耗性の効果が飽和する結果も得られている。
また、比較例27の試験結果から、フィラーを単独で添加した場合、クリーニングブレードの損傷を招いたことから、本評価ではフィラー補強混合型感光層は粒径の異なるフィラーを混合して用いる方が長寿命化に対して有利であると解釈される。
【0387】
実施例64
φ90mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、4.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0388】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0389】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のトリスアゾ顔料(リコー社製) 3重量部
【化106】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.2重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0390】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化107】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0391】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 5.4重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 3.8重量部
【化108】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 8.2重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 1重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.01重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0392】
実施例65
実施例64におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例64と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 5.4重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 3.8重量部
【化109】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 7.4重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 1.8重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.01重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0393】
実施例66
実施例64におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例64と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 5.4重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 3.8重量部
【化110】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 6.4重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 2.8重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.01重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0394】
実施例67
実施例64におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例64と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 5.4重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 3.8重量部
【化111】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 5.5重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 3.7重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.01重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0395】
実施例68
実施例64におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は実施例64と同様にして電子写真感光体を得た。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 5.4重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 3.8重量部
【化112】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 4.6重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−02、
住友化学工業社製) 4.6重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.01重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0396】
比較例28
φ90mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、4.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、25μmの電荷輸送層を形成した。
【0397】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0398】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のトリスアゾ顔料(リコー社製) 3重量部
【化113】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.2重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0399】
〔電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化114】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0400】
以上の様に作製した実施例64〜68および比較例28の電子写真感光体を、一部改造した複写機(リコー製:imagio Color 4000)に搭載し、イエロー、マゼンタ、およびシアン各色の画像面積が5%となるパターン画像を複写プリントする通紙試験を通算8万枚迄行った。複写機の帯電手段は、スコロトロンチャージャーを用いた。試験期間中、都度、感光体帯電電位を測定し、電子写真感光体の帯電電位が−800Vとなるようにした。
試験環境は、平均30℃/65%RHに調湿した。
複写プリントが通算4万枚目と8万枚時に実施例2〜9、比較例7〜8において実施したクリーニング評価を行った。また、試験終了時に感光層の摩耗量を測定した。
結果を以下に記す。
【0401】
【表14】
【0402】
比較例28と実施例64との比較から、フィラー補強電荷輸送層に含有するフィラーを互いに粒径の異なるフィラーを混合して用いることで、クリーニング性が改善されることが理解される。
特に、フィラーの混合比率として、小粒径のフィラー(AA−02;平均粒径0.2μm)と大粒径のフィラー(AA−07;平均粒径0.7μm)の比が2対8と3対7の条件が、クリーニング性が良好である結果が示されている。またフィラー補強感光層にはフィラーが高濃度に含有されていることからフィラー粒径の摩耗量依存性が小さく、フィラーの混合化に対する不具合は特に見いだせない。
【0403】
実施例69
φ92mmのシームレスニッケルベルト上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、4.0μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、24μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して1μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0404】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0405】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 5重量部
【化115】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0406】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化116】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0407】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
A型ポリカーボネート(パンライトLV−2250Y、
帝人化成社製) 5.4重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 3.8重量部
【化117】
α−アルミナ(BYK−P104処理AA−07) 7.4重量部
α−アルミナ(BYK−P104処理AA−02) 1.8重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0408】
実施例70
実施例69におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を5μmとした以外は実施例69と同様にして電子写真感光体を得た。
【0409】
実施例71
実施例69におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を10μmとした以外は実施例69と同様にして電子写真感光体を得た。
【0410】
実施例72
実施例69におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を15μmとした以外は実施例69と同様にして電子写真感光体を得た。
【0411】
実施例73
実施例69におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を20μmとした以外は実施例69と同様にして電子写真感光体を得た。
【0412】
比較例29
実施例69におけるフィラー補強電荷輸送層を設けなかった以外は実施例69と同様にして電子写真感光体を得た。
【0413】
以上のように作製した実施例69〜73、比較例29の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:IPSiO Color5100)に搭載し、画像面積が5%となるパターン画像をプリントする通紙試験を通算3万枚迄行った。電子写真装置の帯電手段はスコロトロンチャージャーを用い、帯電電位が−600Vとなるようにした。
また、試験環境は、30℃/60%RHに調湿した。
試験終了時に点状のドットパターンをプリントし、紙へ転写する前に感光体表面にトナーによって現像されたドットパターンの形状をシステム顕微鏡(オリンパス社製BX−10)を用いて観察し、ドット画像の形状を5段階に評価した。また、試験終了時に異常画像の有無を確認した。結果を以下の表に記す。
【0414】
5段階評価は以下の基準で選定した。
5:ドット画像の輪郭が明瞭でチリなどが確認されない。
4:ドット画像の輪郭が明瞭でごく僅かにチリが確認される。
3:僅かにチリが確認されるが、ドット画像の輪郭は明瞭であり、実質的に良好である。
2:多少、チリが確認されるが、ドット画像が識別でき、実質的に問題が無い。
1:チリが確認され、ドット画像の輪郭も不明瞭である。
【0415】
【表15】
【0416】
感光体表面層であるフィラー補強感光層の厚膜化が可能になると、感光層の膜削れ余裕度向上による耐久寿命を延ばすことができる。ただし、フィラー補強電荷輸送層の厚膜化は潜像が拡散擦る傾向が見られる結果が得られている。
フィラー補強電荷輸送層を積層することによる耐摩耗性を享受し、かつ、出力画像への影響を及ぼさないフィラー補強電荷輸送層の膜厚設定として、1〜15μm程度とすることが好ましいと判断される。
【0417】
実施例74
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、21μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0418】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0419】
〔電荷発生層用塗工液〕
チタニルフタロシアニン(リコー社製) 9重量部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 5重量部
メチルエチルケトン 400重量部
【0420】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 8重量部
【化118】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0421】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート系樹脂(UポリマーU−6000、
ユニチカ社製) 2.5重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【化119】
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、
住友化学工業社製) 1.0重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.5重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.030重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0422】
実施例75
実施例74におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例74と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート系樹脂(UポリマーU−6000、
ユニチカ社) 0.9重量部
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、
帝人化成社製) 1.6重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【化120】
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、
住友化学工業社製) 1.0重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.5重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、
ビックケミー社製) 0.030重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0423】
実施例76
実施例74におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例74と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート系樹脂(UポリマーU−6000、
ユニチカ社製) 1.25重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質 1.25重量部
【化121】
(重量平均分子量11万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【化122】
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、
住友化学工業社製) 1.0重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.5重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製)0.03重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0424】
実施例77
実施例74におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例74と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート系樹脂(UポリマーU−6000、
ユニチカ社製) 1.25重量部
下記構造の高分子電荷輸送物質 1.25重量部
【化123】
(重量平均分子量11万のランダム共重合体。nは共重合体であることを表す。)
下記構造の低分子電荷輸送物質 1.23重量部
【化124】
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、
住友化学工業社製) 1.0重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.5重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製)0.03重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0425】
以上のように作製した実施例74〜77の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF 150)に搭載し、10万枚の通紙試験を行った。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採った。また、ドラムサンプルを固定するユニットにヒーターを取り付け、温度コントローラにより、感光体の表面温度が常に70℃となるように制御した。試験環境は、23℃/55%RHであった。評価方法としては通紙1万枚目と試験終了時の画像評価を行った。また、フィラー補強電荷輸送層のガラス転移温度を測定した。結果を以下の表に記す。
【0426】
【表16】
【0427】
実施例75はフィラー補強電荷輸送層のバインダー樹脂として、実施例74に用いられるポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料と、ガラス転移温度が181℃のビスフェノールZポリカーボネートを混合した材料が用いられている。また、実施例76と77は同じく、ポリアリレート成分を含有する樹脂材料と、ガラス転移温度が170℃の高分子電荷輸送物質との混合材料が用いられている。このうち、実施例77は実施例76と比較して、フィラー補強電荷輸送層の低分子電荷輸送物質の含有量が少ない処方となっている。
実施例75〜77は試験終了後も良質な画像が得られている。これより、フィラー補強電荷輸送層中にポリアリレート成分を含有する樹脂材料とガラス転移温度の高い樹脂材料を併用することにより、高温環境下での使用に耐えられる感光体が作製可能であると理解される。特に高分子電荷輸送物質は低分子電荷輸送物質の含有量を低減化することが可能であり、このケースに対して極めて有用な材料と言える。
【0428】
実施例78
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、21μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0429】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0430】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のトリスアゾ顔料(リコー社製) 3重量部
【化125】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.2重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0431】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 9重量部
【化126】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0432】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 9重量部
【化127】
α−アルミナ(BYK−P104処理AA−05) 0.8重量部
α−アルミナ(BYK−P104処理AA−03) 0.4重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0433】
以上のように作製した電子写真感光体をリコー社製:imagio MF150に同梱されるプロセスカートリッジに装着した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
また、帯電手段は同梱品が帯電ローラ方式であったものを、スコロトロン方式チャージャーに変更した。
この画像形成装置を一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF150)に搭載し、7万枚の通紙試験を行った。評価方法としては試験終了時の画像評価を行った。試験環境は45℃/45%RHであった。
通紙試験終了後画像評価を行った結果、実施例78は極僅かな地汚れが認められたものの、実用上問題の無い画像が得られた。
【0434】
実施例79
φ100mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、21μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いたミリングを施し、混合フィラーを粉砕(塊砕)したものを塗工液とした。この液をスプレーで塗工して5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け電子写真感光体を得た。
【0435】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液(ベッコライト M6401−50、
大日本インキ化学工業社製) 12重量部
メラミン樹脂溶液(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 8重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0436】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料(リコー社製) 3.9重量部
【化128】
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 1.1重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0437】
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 9重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 9重量部
【化129】
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0438】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
Z型ポリカーボネート(パンライトTS−2050、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【化130】
α−アルミナ(スミコランダムAA−07、
住友化学工業社製) 1.3重量部
α−アルミナ(AKP−20、
住友化学工業社製) 0.9重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0439】
以上のように作製した実施例79の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF6550)に搭載し、画像濃度が5%となるテキストとグラフィック画像のパターンを通算10万枚、プリントアウトした。
電子写真装置の帯電手段は装置に変更加えず、スコロトロンチャージャーを用いた。また、像露光用の光源として、655nmのLDを搭載した。更に、ステアリン酸亜鉛をスティック状に加圧成型したものを図19の31に示す形態で感光体表面と接触する外添剤供給手段を設けた。試験環境は、23℃/58%RHであった。
実施例44と全く同様にしてクリーニング評価を行ったところ、試験開始から5万枚目におけるクリーニング評価は最良のランク5の結果を得た。また、10万枚目のクリーニング評価もランク4を維持した。これはステアリン酸亜鉛を感光体表面に供給した効果と判断される。
【0440】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の電子写真感光体は大量プリントを行っても、画像ボケやカブリの発生が見られず常に高品質画像が得られ、加えて感光体を取り巻く他部材へ及ぼす機械的負荷の小さい実用的価値に極めて優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子写真感光体の層構成を示す断面図。
【図2】本発明に係る電子写真感光体の別の層構成を示す断面図。
【図3】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図4】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図5】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図6】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図7】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図8】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図9】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図10】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図11】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図12】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図13】本発明に係る電子写真装置の例を示す模式断面図。
【図14】本発明に係る電子写真装置の別の例を示す模式断面図。
【図15】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図。
【図16】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図。
【図17】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図。
【図18】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図。
【図19】本発明に係る電子写真装置に用いる外添剤塗布手段の例を示す様式断面図。
【図20】本発明に係る電子写真装置に用いる外添剤塗布手段の更に別の例を示す模式断面図。
【図21】本発明に係る電子写真装置に用いる外添剤塗布手段の更に別の例を示す模式断面図。
【図22】本発明に係る電子写真装置に用いる外添剤塗布手段の更に別の例を示す模式断面図。
【図23】本発明に係る電子写真装置に用いる外添剤塗布手段の更に別の例を示す模式断面図。
【図24】本発明に係る電子写真装置に用いる外添剤塗布手段の更に別の例を示す模式断面図。
【図25】電荷輸送層の電荷移動度に対する電界強度依存性を表わす一例図。
【図26】本発明に用いるα−アルミナの粒径と電子写真装置の使用に伴う感光体の摩耗量との関係を表す一例図。
【図27】電子写真感光体の表面形状の一例
【図28】電子写真感光体の表面形状の別の一例
【符号の説明】
(図1〜図12について)
21 導電性支持体
22 電荷発生層
23 電荷輸送層
24 感光層
25 下引き層
26 フィラー補強電荷輸送層
27 フィラー補強感光層
28 フィラーを含まない感光層
29 フィラーを含まない電荷輸送層
2A フィラーが最表面側に含有率が高い感光層
2B フィラーが最表面側に含有率が高い電荷輸送層
(図13〜図18について)
11 電子写真感光体
12 帯電手段
13 露光手段
14 現像手段
15 トナー
16 転写手段
17 クリーニング手段
18 受像媒体
19 定着手段
1A 除電手段
1B クリーニング前露光手段
1C 駆動手段
1D 第1の転写手段
1E 第2の転写手段
1F 中間転写体
1G 受像媒体担持体
(図19〜図24について)
31 ブレード形状の外添剤供給手段
32 ローラ
33 外添剤搬送ベルト
34 外添剤タンク
35 シリンダー
36 空気圧ポンプ
37 クリーナー
38 外添剤保持部材
39 心材
Claims (9)
- 導電性支持体上に直接または下引き層を介して感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と互いに粒径の異なる2種以上のα−アルミナからなる混合フィラーとを含有し、且つ、混合フィラーの平均粒径が1μm未満であり、且つ、混合フィラーに含まれる個々のフィラーのうち、少なくとも重量百分率が最も大きなフィラーの1種が以下の(a)、(b)及び(c)に記載の条件を満足するα−アルミナであることを特徴とする電子写真感光体。
(a)多面体粒子であり、且つ、α−アルミナの六方稠密格子面に平行な最大粒子径をD、六方稠密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上、3.0以下である。
(b)フィラーの平均粒径が0.1μm以上1μm以下である。
(c)混合フィラーの個々のフィラーのうち、その平均粒径が最も大きい。 - 混合フィラーの個々のフィラー全てが、請求項1の(a)、(b)の全ての条件を満たすα−アルミナであることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 感光層に含有される混合フィラーが導電性支持体より最も離れた表面側の含有率が多いことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- フィラー補強感光層またはフィラー補強電荷輸送層のガラス転移温度が80℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子写真感光体。
- 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。
- 少なくとも電子写真感光体を具備してなる画像形成装置用カートリッジにおいて、該電子写真感光体が請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
- 請求項5に記載の画像形成装置または請求項6に記載の画像形成装置用プロセスカートリッジを内包する画像形成装置において、電子写真装置の繰り返し使用における電子写真感光体の表面摩擦係数の変動を抑制する外添剤を電子写真感光体の表面に供給できる機構を具備することを特徴とする画像形成装置。
- 請求項5、請求項7に記載の画像形成装置または請求項6に記載の画像形成装置用プロセスカートリッジを内包する画像形成装置において、感光体を加熱するヒータを備えないことを特徴とする画像形成装置。
- 請求項5、請求項7、請求項8に記載の画像形成装置または請求項6に記載の画像形成装置用プロセスカートリッジを内包する画像形成装置において、複数の現像色に対応した複数の電子写真感光体と、各感光体毎に各々静電潜像を形成する露光手段と、各露光手段により前記各感光体上に形成した各静電潜像を各々の現像色のトナーにより現像する現像手段を備えることを特徴とするタンデム方式のフルカラー画像形成装置。
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