JP3781639B2 - 電子写真感光体とその製造方法及び画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体とその製造方法及び画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高耐久電子写真感光体とその製造方法およびそれを用いた画像形成装置に関し、より詳しくは、導電性支持体上に直接または下引き層を介して感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とフィラーを含有し、且つ感光層中に少なくともポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料を含有することを特徴とする電子写真感光体とその製造方法およびそれを用いた画像形成装置に関する。
本発明の電子写真感光体およびそれを用いた電子写真装置は、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に応用される。
【0002】
【従来の技術】
複写機、レーザープリンタなどに応用される電子写真装置で使用される感光体は、セレン、酸化亜鉛、硫化カドミウム等の無機感光体が主流であった時代から、現在では、低公害性、低コスト化、および設計自由度の高さで無機感光体よりも有利な有機感光体(OPC)が広く利用されるようになっている。
この有機感光体は層構成別に分類することができ、例えば、(1)ポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される光導電性樹脂やPVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体を導電性支持体上に設ける均質単層型、(2)フタロシアニンやペリレンなどの顔料を樹脂中に分散させたものを導電性支持体上に設ける分散単層型、(3)導電性支持体上に設ける感光層を、アゾ顔料などの電荷発生物質を含有する電荷発生層(CGL)と、トリフェニルアミンなどの電荷輸送物質を含有する電荷輸送層(CTL)に機能分離した積層型に分類することができる。積層型の場合、電荷発生層の上に電荷輸送層を設ける構造と、これと逆の構造があり、前者が一般的で、後者を特に逆層と呼ぶ場合がある。
特に積層型は高感度化に有利であり、加えて、高感度化や高耐久化に対する設計上の自由度が高いこともあって、現在、有機感光体の多くがこの層構成を採っている。
【0003】
電子写真装置で静電潜像が形成される仕組みを先の積層型有機感光体の場合について説明すると、感光体を帯電した後に書き込み光を照射すると、光を吸収した電荷発生物質は電荷キャリアを発生し、この電荷キャリアが電荷輸送層に注入される。次に、帯電によって生じた電界にしたがって、電荷キャリアは電荷輸送層中を移動し、感光体表面まで到達した電荷キャリアが帯電電荷と中和することにより静電潜像を形成する。
電子写真装置による画像出力は、この静電潜像にトナーを接触させることにより感光体表面にトナー画像を形成し、これを紙に転写し、次いで、加熱などでトナーと紙を定着することにより、画像形成を行なっている。また、次工程に備えて、感光体表面上に残留するトナーはクリーニングされ、感光体の残留電荷も除電される。電子写真プロセスの工夫により画像出力の方法が説明と異なるケースもあるが、何れの場合も以上の工程に則した画像形成が行なわれている。
【0004】
近年、電子写真装置は画像形成装置の中でも高速記録性に優れていることから、オフィスユースだけでなくパーソナルユースにおいても幅広く用いられはじめている。これに伴い、装置の小型化やメンテナンスフリー化、とりわけ、低コスト化に対する具体化が市場から強く要求されている。また、情報技術(IT)の著しい発達により、電子写真装置もこれに応じた進化が要求されている。すなわち、装置のデジタル化、カラー化、写真印刷並の高画質化、一層の高速化が喫緊の課題となっている。
【0005】
電子写真装置による画像形成では、帯電から除電に至る複数のプロセス中に、多くの不安定要因が内在し、一つでも安定性が欠如すると画像品質が確保できなくなる。このことは装置のカラー化を推進させた場合、プロセスの安定性に対する画像品質の影響は一層厳しいものとなる。現時点では装置のデジタル化が機械的変動や材料の変動要因を制御し、安定化させているが、装置の小型化や低コスト化を図る場合、この制御を付加することが困難となる。このため、上記課題を解決するには感光体の高耐久化が必須となる。
【0006】
電子写真感光体の耐久性は、特開平8−272126号公報、特開平8−292585号公報に記載の如く、感光体表面の摩耗や創傷などの機械的負荷に対する耐久性と繰り返し使用による残留電位の蓄積や帯電性低下などの静電特性上の耐久性に左右される。また、これらの耐久性以外に、感光体表面上の汚染による画像ボケの発生や感光体表面上のトナーのフィルミングなども感光体寿命を左右する因子となる。
【0007】
従来、このような因子に対する感光体の高耐久化技術として下記の手段が提案されてきた。
(1)感光体表面層の耐摩耗性向上化技術
例えば、特開平10−288846号公報、特開平10−239870号公報には、バインダーとしてポリアリレートを用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
また、特開平10−239871号公報、特開平9−160264号公報には、バインダーとしてポリカーボネート樹脂を用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
更に、特開平10−186688号公報にはターフェニル骨格を有するポリエステル樹脂、特開平10−186687号公報にはトリフェニルメタン骨格を有するポリエステル樹脂、特開平5−40358号公報にはフルオレン骨格を有するポリエステル樹脂をバインダーとして用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
また、特開平9−12637号公報、特開平9−235442号公報にはスチレン系エラストマーを含有したポリマーブレンドを電荷輸送層のバインダーとして用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
しかしながら、上記の手段では、光減衰の感度の制約から感光層中に大量の低分子電荷輸送物質を含有する必要がある。低分子電荷輸送物質は膜の脆化を著しくもたらす材料であり、低分子電荷輸送物質の含有量に比例して感光層の耐刷性は急激に劣化する。このため、低分子電荷輸送物質に起因する感光体表面のキズの発生、および膜削れが激しく、電荷輸送層のバインダー樹脂の種類を特定するのみでは大きな効果を得ることができなかった。
【0008】
これに対し、例えば、特開平7−325409号公報には、低分子電荷輸送物質の代わりに高分子型の電荷輸送物質を用いることが提案されている。かかる技術は感光層中の樹脂成分比を極めて大きくすることが可能になるため、上記の技術と比較して良好な耐摩耗性が得られることが期待される。
しかしながら、単に低分子電荷輸送物質を高分子型の電荷輸送物質に変更するだけでは充分な耐刷性を感光体に付与できないケースが多い。これは、電子写真プロセスにおける感光体の摩耗が、単に機械的な負荷によってのみ引き起こされるものではないことに起因する。また、かかる材料は精製が困難であるケースが少なくなく、不純物の除去が充分に施せない場合、残留電位の蓄積が懸念される。
【0009】
これ以外のものとして、例えば、特開昭46−782号公報、特開昭52−2531号公報には、感光体表面に滑性フィラーを含有させることにより、感光体表面の滑性を向上せしめ、結果、感光体の長寿命化を図ることが提案されている。
また、特開昭54−44526号公報、特開昭60−57346号公報には、像保持部材の絶縁層ないし光導電層中にフィラーを含ませることにより、感光体の機械的強度を向上させることが提案されている。
また、特開平1−205171号公報、特開平7−261417号公報には、積層型電子写真感光体における感光体表面層または電荷輸送層中にフィラーを含有させることにより、感光体表面硬度の強化、または滑性を付与することが提案されている。
また、特開昭61−251860号公報には、電荷輸送媒質100重量部に対し、疎水性酸化チタン微粉末を1重量部から30重量部含有させることにより、感光体の機械的強度を向上させることが提案されている。
しかしながら、これらの技術に従って、感光層や電荷輸送層中に単にフィラーを添加した場合、感度劣化や残留電位の蓄積が激しく、感光体としての機能を失ってしまうケースが少なくない。このためかかる手段も実用的な技術とは言えない。
【0010】
フィラーを利用するものとして、例えば特開昭57−30846号公報、特開昭58−121044号公報、特開昭59−223443号公報、特開昭59−223445号公報には、特定範囲の粒径および粒径分布を有する酸化スズや酸化アンチモンなどの金属または金属酸化物を含有する保護層を設けることにより、感光体の機械的強度を向上させることが提案されている。
かかる技術は、感光体表面の機械強度を比較的容易に向上させることが可能であることから、感光体の高耐久化に対して有用な手段であると言うことができる。しかしながら、従来提案されてきた表面保護層を設けた場合、解像度の低下や、感度劣化など、他の特性が犠牲になるケースが多く、実用的な技術としては不充分と言える。
【0011】
以上、記載した技術は感光体表面層の膜強度を強化するものであるが、これとは別に特開昭46−782号公報、特開昭52−2531号公報等に記載の如く、感光体表面層の滑性を向上させることで感光体の長寿命化を図ることが提案されている。
しかしながら、これらの滑性材料はバインダー樹脂に対する親和性が乏しいものが少なくない。このため、使用間もなく滑性材料の殆どが表面に析出してしまい、感光体表面の滑性が持続できないケースが非常に多い。他方、バインダー樹脂との保持性が高い滑性材料を用いた場合、効果の度合いが弱く、更には、かかる材料を添加することによる膜の脆化が激しく、感光体の耐摩耗性を劣化させてしまう方が多い技術と言える。
【0012】
(2)静電特性上の高耐久化技術
例えば、特開昭57−122444号公報、特開昭61−156052号公報、特開平10−90919号公報に見られるような感光層中へ酸化防止剤を添加することが提案されている。
また、特開平8−272126号公報、特開平8−95278号公報に見られるような感光層中へ可塑剤を添加することが提案されている。
また、先に挙げた特開平8−272126号公報に見られるような電荷輸送層の酸素透過係数を特定値以下とする設計により、静電特性上の高耐久化が提案されている。
また、特開平9−311474号公報、特開平10−20526号公報に見られるような感光層中へ紫外線吸収剤を添加することが提案されている。
【0013】
上記の技術は長期使用による感光層の帯電性劣化の抑制に有効な手段であると言える。しかしながら、以上の安定剤は電荷キャリアのトラップとして作用するものが少なくなく、残留電位の蓄積を助長させるケースが多い。また、バインダー樹脂に対して剛性可塑剤(antiplasticizer)として作用するものが多く、感光層の脆化を伴うものが少なくない。加えて、安定剤の添加は感光層のガラス転移温度の降下を伴うことから、感光体表面に対するトナーの離型性を阻害させてしまうことも懸念される。すなわち、安定剤添加による感光体の高耐久化は、副作用として機械的強度の劣化を伴う場合が多く、従来型の有機感光体に対して以上の手段がトータルとしての高耐久化に寄与するかは疑問視される。安定剤添加による機能発現を、高耐久化に対する「効果」として享受するケースは、高耐摩耗性の感光体やガラス転移温度が充分に高い感光体に限定されると言うことができる。
【0014】
(3)異常画像発生の抑制化技術
例えば、特開平11−311876号公報、特開2000−131855号公報に見られるような感光体表面層に用いるバインダーを高分子量体と低分子量体との混合樹脂を用いることが提案されている。
これはバインダーの内、低分子量成分を削ることで感光体表面に付着した低抵抗物質を共に除去しようとする設計思想で、効果が認められるものの感光体の高耐久化には限度があると容易に推測される。
また、特開平5−119488号公報、特開平8−95278号公報、特開2000−214618号公報に見られるような感光体表面層、または、感光層中に酸化防止剤や可塑剤を添加することも異常画像発生の抑制化技術として提案されている。また、類似の技術として特開平10−301303号公報、特開平2000−10323号公報に見られるような感光層中へヒンダードアミン、ヒンダードフェノール化合物を添加することも提案されている。
【0015】
これらの技術は一部効果が認められるものの、残留電位の蓄積性に不利に作用するケースや膜の脆化を促進するケースが少なくなく、これらの副作用を押さえ込める感光体性能が別に要求される。
また、特開平11−249333号公報には電子写真感光体に用いる電荷輸送物質をイオン化ポテンシャルが特定値範囲の電荷輸送物質に限定することで画像ボケやトナーのフィルミング発生を抑制することが提案されている。
ディビット エス ウエイスによる文献資料(ジャーナルオブイメージサイエンス,34巻,132〜135頁(1990年))によれば、コロナ帯電によりCTL膜の電荷輸送物質がニトロ化される知見が示されている。これより、電荷輸送物質を酸化性雰囲気に対してできるだけ不活性なものを選択することで、結果として異常画像を抑制できると考えられる。しかしながら、電荷輸送物質の反応性は分子内の電荷の偏りやラジカルの安定性、更には分子構造によっても左右されることから、電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルの序列が、直接、画像品質の安定化に結びつくことは希である。上記の技術では、更に現像剤とクリーニング手段を特定しており、これらの複合効果により異常画像の発生を抑制したものと解釈されるが、高耐久化に限度があることと汎用性が広い技術とは言えない側面を有している。
【0016】
この他に、感光体表面の汚染を予防することで課題を解決しようとするものが提案されている。例えば、特開平7−295278号公報、特開平8−184976号公報に見られるような感光体表面の滑性を向上させるものが提案されている。また、これに類似した技術として、例えば特開平6−75386号公報に見られるような感光層にシリコーン系樹脂やフッ素系樹脂を含有させることが提案されている。しかしながら、これらの技術の中には添加した潤滑剤が酸化されやすいものもあり、残留電位の蓄積性に対して不利となるケースが少なくない。また、これらの技術は装置に工夫を加えないと滑性が持続できないケースも多く、プロセスに対して適用範囲の狭い技術と言える。また、多くの場合、滑性成分はバインダー成分との親和性が低く、滑性成分が膜の脆化を促進してしまうことがあり、異常画像発生の抑制と感光体の高耐久化を両立するものとしては不充分であると判断される。
【0017】
このように、従来技術では感光体の設計のみで異常画像発生の抑制と高耐久化を両立することは困難であり、これらの技術について更にプロセス上の工夫を組み込んで具体化が図られている。
例えば、特開平11−202525号公報に見られるような感光体の帯電方式を注入帯電方式とするものやヒーターを設けるものが提案され、特開平11−19087号公報では感光体表面に潤滑剤を供給する手段を設けることによる上記の両立化が提案されている。これらの技術は装置の小型化や低コスト化に対して不利なものであり、昨今の市場ニーズに応える技術とは言い難い。
【0018】
以上に記載した如く、感光体の高耐久化について提案されてきた従来の技術は、耐摩耗性、静電特性上の耐久性、あるいは感光体表面の汚染防止に関わる一面を向上しようとするものであり、これらの耐久性を同時に向上させる技術とは言い難い。加えて、一方の耐久性向上化を試みた場合、他方の耐久性が劣化するような、両者の耐久性がトレードオフの関係になるケースが少なくない。従来提案されてきた技術は感光体の特定性能の向上には有用であると言えるものの、直接、感光体の長寿命化(高耐久化)を果たす技術とは言いきれない。実際、電子写真感光体は電子写真装置のうち、使い捨ての消耗品としての性格が強く、長寿命な部品と言えるものは未だ得られていないのが現状である。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、電子写真装置の小型化、メンテナンスフリー化、低コスト化、高性能化を支える高耐摩耗性で異常画像の発生が極めて少ない電子写真感光体の提供と該感光体の製造方法および該感光体を用いる電子写真装置の提供を目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に対し鋭意検討を重ねた結果、感光層にフィラーと少なくともポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料を含有することにより、上記課題が達成できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
すなわち、本発明によれば、導電性支持体上に直接または下引き層を介して感光層を有する電子写真感光体において、該感光層が少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とフィラーを含有し、且つ感光層中に少なくともポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料が含有されることを特徴とする電子写真感光体を提供することにより、前記課題を解決することができた。
【0022】
感光体の耐久性は画像品質によって判断されるが、画像品質の劣化は従来技術に取り上げた感光層の膜削れ、反応性ガス曝露や大量印刷による感光層の低抵抗化ないし化学変化、および感光体表面の汚染が影響し、これにより画像コントラストの低下や地汚れ、異常画像の発生を伴う。
本発明者らは、画像品質の劣化を極限まで防止するべく、感光体の耐摩耗性、静電特性上の高性能化、および感光体表面の汚染物質に対する耐性を高い次元で両立させるために、はじめに、感光体の耐摩耗性向上化技術について、摩耗因子とその対策を検討し、次いで、耐摩耗性向上化技術と両立可能な静電特性面の性能向上化技術について検討し、更に異常画像発生の伴わない材料を探求することにより本発明を完成するに至った。
【0023】
本発明における有機感光体の耐摩耗性向上化手段について説明する。
電子写真プロセスで生じる感光体の摩耗は、主に以下に記す過程において発生または加速されていると考えることができる。すなわち、
(1)クリーニング過程による摩耗
電子写真プロセスにおいて、感光体表面に残留するトナーを除去する方法として、クリーニングブラシ方式やクリーニングブレード方式が一般に用いられている。例えば、クリーニングブレード方式の場合、クリーニングブレードの先端部を回転する感光体表面に所定の押圧力で物理的に食い込ませることによって、残留トナーを感光体表面から除去している。このときのブレードの摺擦により、感光体表面は摩耗やキズが生じる。この摩耗は機械的な摩耗が支配的であると考えられる。
【0024】
(2)帯電過程による影響
特開平10−10767号公報に記載の如く、感光体は帯電過程において、感光体内部の僅かな欠陥部位において放電絶縁破壊が生じてしまうことがある。特に感光体が絶縁耐圧の低い有機感光体の場合はこの絶縁破壊が著しい。更には、放電により感光体表面層を構成する樹脂が変性し、耐摩耗性の低下を引き起こす。これにより繰り返し使用した際に表面層の摩耗量が増加し、感光体の寿命を縮めてしまう。また、放電は表面層膜厚の薄い部分ほど強くなることから、繰り返し使用において生じた摩耗傷の部分は、帯電劣化(変性)が生じ易くなり、表面層の凹凸をより大きくしてしまう。結果、凝着摩耗(疲労摩耗)を促進してしまうことが考えられる。
【0025】
(3)現像過程による摩耗
2成分現像法の場合、電子写真感光体はキャリアによる表面研磨を受け、アブレッシブ摩耗を引き起こす。また、トナーに含まれる流動化剤等の添加剤には、シリカ等の硬い材料が多く、これらの添加剤が感光体に対して研磨剤として作用することが充分に考えられる。現像過程に伴う感光体の摩耗は微小な粒子によって連続的に行なわれていると考えることができ、この状況は、感光体が絶えずヤスリあるいはクレンザーで磨かれている状況に喩えられる。
また、1成分現像法の場合も含め、現像に用いるトナーは、一度、感光体表面に付着し、次いで、転写またはクリーニング手段によって感光体表面から離れる過程を繰り返す。このときのトナー−感光体間の付着力が無視できず、トナーが感光体表面から離れる際に感光体表面に対して凝着摩耗を引き起こしてしまうことがある。
逆に、トナー感光体間の付着力が極めて強い場合、感光体表面上のトナーが堆積し、結果、フィルミングを生じてしまう。この場合、摩耗とは別の原因によって感光体寿命を縮めてしまう。
【0026】
電子写真感光体の耐摩耗性を向上させるためには、少なくとも上記の(1)〜(3)について対策を講じる必要がある。
そこで、本発明者はこれらの摩耗因子に対する耐久性向上化について検討したところ、従来技術に挙げた数々の手段のなかでも、感光体の表面にフィラーを含有させることが有効であることを見い出した。現時点では、この原因の詳細は不明であるが、感光体表面層について、例えば、引張強度とひずみの積で表わされる機械強度を向上させるだけでは、一定の静電特性を維持しつつ電子写真プロセスにおける感光体の耐摩耗性を向上させることには限度があること、また、感光体表面層を有機材料のみで作製した場合、絶縁耐圧を向上させることにも限界があること、更には、電子写真プロセスで生じる感光体の摩耗は、現像過程における摩耗が極めて激しいと言うことができる。これは感光体表面層の硬度が現像剤に含まれる材料と比較して桁違いに低いことに起因すると考えられる。
これから、感光体の表面にフィラーを含有させることで、このような硬い微粒子と耐性の劣る感光体表面のバインダー樹脂との接触頻度(または面積)が少なくなり、このため膜削れを起こす頻度も抑制されることや、帯電に伴う感光体表面の変質もフィラーによって遮蔽されることが耐摩耗性向上に結びついていると考えることができる。
本発明において、この構成を特徴とする感光体のなかでも、耐摩耗性向上化に有利な設計として以下の知見を見い出した。
【0027】
(1)感光体表面層に含有させるフィラーのうち、シリカ、α−アルミナが耐摩耗性向上に有利である(請求項)。
(2)感光体の耐摩耗性はフィラーの含有量が多いものほど優れた耐久性を示し、フィラーが含有される層の全重量に対して10wt%以上のフィラーが含有される場合、実使用上の耐久性向上が効果として享受される(請求項)。
(3)フィラーを結着するバインダー樹脂の分子量は4.0×10以上(重量平均分子量)の場合、耐摩耗性向上に有効に寄与する。
(4)フィラーが含有される保護層は膜厚を厚くするほど、感光体の高耐久化に有利である。
【0028】
従来、保護層に含有するフィラー種は極めて多種多彩な材料が提案されてきたが、このうち、フィラーが容易に削れるものは耐久性を向上させる効果が小さい。また、フィラーに透光性がないと、電子写真装置における書き込み光を保護層が遮蔽してしまうため、保護層の厚膜化が困難となるケースがある。これに対して、シリカおよびα−アルミナは耐摩耗性と透光性を兼ね備えたフィラーとして、本発明では有効に利用することができる。
また、保護層の耐摩耗性はフィラー量が多いほど耐摩耗性が優れることから、保護層の膜厚とフィラー含有量の調整により、感光体の耐摩耗性を所望の耐久性に調節することができる。また、フィラーを結着するバインダー樹脂は重量平均分子量が4.0×104以上の場合、フィラーを膜中に固定することが可能であり、フィラーの物性に応じた耐久性が発現される。
以上の知見を適用することにより、極めて高い耐摩耗性を感光体に付与することが可能となる。
【0029】
次に、本発明における有機感光体の静電特性の高性能化手段について説明する。
感光体の表面にフィラーを含有することで感光体の耐摩耗性を向上させようとする手段は、従来、種々の試みがされてきた。しかしながら、これらの試みは露光部電位上昇による出力画像のコントラスト低下を伴い充分な効果を得ることが困難であった。これは従来技術ではフィラーが電荷トラップとして作用してしまい、フィラー含有量の増加や保護層膜厚の厚膜化が不可能であることに起因する。
【0030】
本発明者はかかる感光体の静電特性の高性能化について検討し、以下の知見を得るに至った。
(1)感光層にフィラーを含有した電子写真感光体において、フィラーが含有される層に電荷輸送物質ないし電荷発生物質を高濃度に含有させることにより、露光部電位の上昇を抑制することが可能となる。
(2)フィラーは感光層に均一に添加するよりも、感光体表面に保護層を設け、この保護層にのみフィラーを含有した方が露光部電位を低くできるケースが多い。
(3)感光体の表面層にフィラーを含有した電子写真感光体において、フィラーを含まない感光層または電荷輸送層の上に、電荷輸送材料ないし電荷発生材料とフィラーが含有される感光層または電荷輸送層を設ける(感光層または電荷輸送層の機能分離化を施す)ことにより、露光部電位の上昇を抑えつつ、フィラーが含有される層の厚膜化とフィラー含有率の増加が可能になる。
なお、感光層を機能分離したときのフィラーを含まない感光層をフィラー非補強感光層と称し、感光層の一部を表わす名称として本発明において使用する。電荷輸送層についても同様にフィラーを含まない電荷輸送層を本発明ではフィラー非補強電荷輸送層と称し、電荷輸送層の一部を表わす名称として使用する。
(4)感光体の表面層にフィラーを含有した電子写真感光体において、フィラーを含有することによる露光部電位上昇の度合いは、含有するフィラーの種類によって大きく異なる。フィラーのなかでも、シリカないしα−アルミナを用いた場合に、露光部電位の上昇を抑えられる(請求項)。
(5)フィラーが含有される層に、この電気抵抗を低下させる添加剤(以下、固有抵抗低下剤と称す。)を含有させることにより露光部電位の上昇を抑えることができる。
(6)フィラーを疎水化処理することで露光部電位を低下させることが可能となる。
(7)2種以上の電荷輸送物質を組み合わせて使用することにより、露光部電位を低下させることが可能となるケースがある。また、静電特性に加えて耐ガス性、機械強度の向上、クラック防止など2つ以上の要求特性を同時に解決できるケースがある。
(8)フィラー非補強電荷輸送層またはフィラー補強電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は0.15eV以下を満たす材料を選択することで、露光部電位の上昇を抑制することが可能となる。これと逆の場合、露光部電位が高くなるケースが多い。
(9)フィラー非補強電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質が各層で異なる場合、電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下を満たす材料選択により、露光部電位を低下させることが可能となる。これと逆の場合、露光部電位が高くなるケースが多い。
【0031】
表面保護層に電荷輸送物質や電荷発生物質を大量添加することで、表面保護層を高い機械強度を併せ持つ電荷輸送層へと転化し、これにより露光部電位を低下させることが可能となる。この層を従来型の表面保護層と解釈することは不自然であり、従来型の電荷輸送層を2層に機能分離したと解釈する方が自然である。このため、本発明ではこの層をフィラー補強電荷輸送層と称し、この下層に当たる電荷輸送層をフィラー非補強電荷輸送層と称する。
このフィラー補強電荷輸送層に固有抵抗低下剤を添加することで電荷キャリアの脱トラップを促す設計や、フィラーの表面を改質することでトラップ形成を阻止する設計により、静電特性の高性能化が可能となる。
フィラー補強電荷輸送層に含有する電荷輸送物質は高い電荷移動度を示す材料が望ましく、特に低電界領域でも高移動度を示す材料が望ましい。また、フィラー非補強電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に含有する電荷輸送物質が異なる場合、イオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。
イオン化ポテンシャル差が大きい場合、露光部電位の上昇をもたらすケースが多い。これは、フィラー非補強電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質が相互に相手の層へ拡散し、他層から混入する電荷輸送物質が電荷トラップとして作用してしまうことが原因として考えられる。同じ理由により、フィラー補強電荷輸送層またはフィラー非補強電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。
以上の本発明における技術の適用により、機械的な耐久性と静電特性に極めて優れた電子写真感光体の提供が可能となる。
【0032】
最後に、本発明における異常画像発生の抑制化手段について説明する。
機械的耐久性および静電特性の向上により、表面層の削れ量が減少する場合、異常画像の発生が重大な問題点としてクローズアップされる。異常画像の発生は、例えば、高温高湿下で吸湿した紙を使用した場合、酸化劣化した樹脂及び表面付着物が感光体表面から充分除去しきれなくなることで感光体表面抵抗の低下を引き起こし、結果、出力画像が流れたようになる。この他にも、石油暖房機から発生するNOxガスに曝されることによっても異常画像が発生するケースや帯電器から発生する低抵抗物質が感光体表面を汚染することによっても異常画像が発生する。耐摩耗性の劣る感光体では感光体表面の膜削れにより感光体表面がリフレッシュされ、このため異常画像の発生が伴わなかったと考えられる。このことから、本来、高耐久であるはずの感光体が異常画像の発生により、最も低寿命な感光体となってしまうことが極めて多い。
また、これとは別に感光体表面にトナーがフィルミングすることによっても異常画像の発生を来すケースがある。現行の電子写真装置では、電子写真感光体が動作時におおよそ50℃程度まで上昇することが多い。電子写真装置の小型化と高速化を図る場合、感光体はこれよりも高い温度で使用されることが予測される。このとき、電子写真感光体のトナーに対する離型性が低下し、使用間もなくトナーフィルミングを招いてしまう。結果、機械的強度、静電特性の安定性に優れた感光体を用意しても使用できない事態となる。
【0033】
本発明者は上記手段による高耐摩耗性感光体の異常画像防止について鋭意検討した結果、感光層にポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料を含有することで、かかる問題点を解決することを見い出し、本発明を完成するに至った。
有機感光体の製造は、一般に樹脂を有機溶剤に溶解させて支持体に塗布、乾燥して製造している。このためポリエチレンテレフタレートを単に感光層に含有させた場合、ポリエチレンテレフタレートが有機溶剤に極めて難溶であるため、感光体表面を粒だたせてしまう問題を招いてしまう。このため、感光層中にポリエチレンテレフタレートを含有させる場合、この問題を解決する必要がある。また、塗膜品質を度外視しても市販のポリエチレンテレフタレートにはガラス繊維やマイカ等感光体の静電特性を著しく劣化させてしまうフィラーが配合されたものが極めて多い。このため、ポリエチレンテレフタレートを感光層に適用しようとする試みは従来、発想し難い手段であった。
本発明者はこの樹脂材料が異常画像発生の防止に極めて有用であることを発見し、この樹脂材料を感光層の材料に適用する方法について、以下の知見を見い出すに至った。
(1)ポリエチレンテレフタレート成分は含有量が少ないと効果が小さく、樹脂材料中10wt%以上含有されていることが望ましい。また、ポリエチレンテレフタレート成分の含有率が高くなると、有機感光体の製造で用いられる有機溶剤に難溶となるため、その含有率は樹脂材料全体の30wt%以下であることが好ましい(請求項)。
(2)ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料の相手材としてはポリスチレン、ポリエステル、ポリアリレート、およびポリカーボネート等の電子写真感光体に用いられる透明樹脂を選択することで、特性上問題のない電子写真感光体を製造することが可能である(請求項)。
これ以外の樹脂を用いた場合、樹脂の帯電性に問題を抱えるケースや、フィラーの分散能が劣り、部分的粗大凝集体により電荷のリークを招いてしまうものがあり、実用性に欠ける。
(3)ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料はポリマーアロイの形態で使用すると、均質な膜を形成するのに有利である。
(4)ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料は表面保護層以外にも例えば電荷輸送層のバインダー樹脂としても問題なく使用することができる。
現在、広く利用されているビスフェノールZポリカーボネートの代替材料としての使用が可能であり、この場合、感光体の低コスト化に寄与できる。
(5)樹脂材料中にポリエチレンテレフタレート成分を含有することにより、樹脂膜のガスバリアー性を高めることが可能である。
(6)ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料をガラス転移温度以上で加熱乾燥することで、下地に対して極めて接着強度の高い膜形成ができる。
(7)高温環境下での使用に対して、感光体表面層のガラス転移温度を80℃以上とする設計により、感光体表面のトナーフィルミングを回避できるケースが極めて多い。これは感光層に含有させるポリエチレンテレフタレート成分を調節することや高いガラス転移温度を有する樹脂との併用、または、高いガラス転移温度を有する電荷輸送物質を選択することで可能となる。これにより異常画像の発生を防止するのみならず、トナーの設計自由度を広げる等の効果を享受することができる。
(8)ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を溶剤に溶解してスプレー塗布する場合、樹脂材料は溶融混練してペレット化した材料を使用することにより表面平滑な膜を形成することが可能である。
【0034】
異常画像は表面層の変質が直接原因となることや汚染物質の付着サイトとなることにより発生すると考えられる。感光体表面層が受ける化学的な負荷としては例えば、帯電による表面層の変質や酸化性ガス曝露による表面層の変質を考えることができる。前者の場合、例えばビスフェノールAポリカーボネートについて、コロナ帯電により分子骨格中のカルボキシル基の部位が切断されることが一般に知られている。後者の場合、電荷輸送物質がニトロ化される報告例があり、このような化学変化の進行度合いは少なからずバインダー樹脂の性質(例えば、酸塩基性の程度や誘電率)が影響すると考えられる。ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を使用することにより、以上の効果が発現される機構は現時点では不明であるが、これらの効果はポリエチレンテレフタレートの高い耐薬品性やガスバリアー性、絶縁破壊強さなどの物性が機能したものと考えられる。
【0035】
以上記載した本発明における手段により、有機感光体について極めて高い耐摩耗性を付与することが可能であり、この性能を維持する静電特性の高性能化が達成される。更に、本発明により、従来より解決が困難であった異常画像の発生を回避することが可能となり、これにより高耐摩耗性で異常画像の発生が極めて少ない電子写真感光体の提供が実現される。
【0036】
以下、本発明に用いられるポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料について説明する。
ポリエチレンテレフタレート成分は芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとグリコールとを主たる出発原料として得られるポリエステルであり、繰り返し構造単位の80%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上がエチレンテレフタレート単位を有するポリエステルを指す。
ジカルボン酸成分は、テレフタル酸以外に、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニール−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその誘導体などが挙げられる。一方、グリコール成分は、エチレングリコール以外に、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコールなどが挙げられる。
【0037】
このポリエチレンテレフタレート成分は、公知の製造方法によって製造することができる。すなわち、テレフタル酸とエチレングリコールないし第三成分を直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下に重縮合を行なう直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールないし、第三成分を反応させてメチルアルコールを留去し、エステル交換させた後、減圧下に重縮合を行なうエステル交換法により製造される。更に、アセトアルデヒド含量を低下させるために固相重合を行なってもよい。
【0038】
本発明ではポリエチレンテレフタレート成分を感光層中に含有するため、このポリエチレンテレフタレート成分は、例えばポリカーボネート等の感光層のバインダー樹脂(以下、相手材と称す。)に対してポリマーブレンド、ポリマーアロイないし共重合化して用いられる。特に、ポリマーアロイは、塗工膜の均質化に有利であり、本発明において有用な手段となる。ポリエチレンテレフタレート成分の相手材となるバインダ−樹脂は、例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられるが、特にポリスチレン、ポリエステル、ポリアリレート、およびポリカーボネートが感光体の性能面から有効に用いられる。
【0039】
なお、本発明で用いる相手材には予め、各種の配合剤を施していても差支えない。例えば安定剤、離型剤、発泡剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、接着剤、接着助剤、難燃剤、難燃助剤等が例示され、特に限定されるものではない。
【0040】
本発明のポリエチレンテレフタレート成分を相手材と均一に混合する方法として、公知の種々の方法を用いることができる。例えばダブルコーンブレンダー、リボンブレンダー等による方法が適用できる。また、このような方法で混合した両樹脂を一軸押出機、二軸押出機、ベント式押出機等により溶融混練をすることで造粒することができる。
【0041】
以下、図面に沿って本発明で用いられる有機系電子写真感光体を詳細に説明する。
図4は本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)上に感光層(24)が設けられている。感光層(24)は表面側ほど、フィラー濃度が高い特徴を有する。
図5は他の構成の電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)と感光層(24)の間に下引き層(25)が設けられている。感光層(24)は表面側ほど、フィラー濃度が高い特徴を有する。
図6は別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、感光層(24)がフィラー非補強感光層(28)とフィラー補強感光層(27)に機能分離されている。フィラー非補強感光層は感光層にフィラーが含有されていない感光層を表す。一方、フィラー補強感光層は感光層にフィラーが含有される感光層を表す。フィラー補強感光層(27)は感光体の最表面に設けられている。
図7は更に別の構成の電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)と感光層(24)の間に下引き層(25)が設けられており、感光層(24)がフィラー非補強感光層(28)とフィラー補強感光層(27)に機能分離されている。フィラー補強感光層(27)は感光体の最表面に設けられている。
図8は更に別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)上に電荷発生層(22)と電荷輸送層(23)との積層からなる感光層(24)が設けられている。電荷輸送層(23)は表面側ほど、フィラー濃度が高い特徴を有する。
図9は更に別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)と感光層(24)の間に下引き層(25)が設けられている。感光層(24)のうち、電荷輸送層(23)は表面側ほど、フィラー濃度が高い特徴を有する。
図10は更に別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、電荷輸送層(23)がフィラー非補強電荷輸送層(29)とフィラー補強電荷輸送層(26)に機能分離されている。フィラー補強電荷輸送層(26)は感光体の最表面に設けられている。
図11は更に別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、導電性支持体(21)と電荷発生層(22)の間に下引き層(25)が設けられ、電荷輸送層(23)がフィラー非補強電荷輸送層(29)とフィラー補強電荷輸送層(26)に機能分離されている。フィラー補強電荷輸送層(26)は感光体の最表面に設けられている。
【0042】
導電性支持体(21)としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの酸化物を、蒸着またはスパッタリングによりフィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙などに被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらをDrawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法などの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研磨などで表面処理した管などを使用することができる。
【0043】
本発明における感光層(24)は電荷発生物質を電荷輸送層に分散させた単層型でも、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層させた積層型を用いることができる。
はじめに積層型感光体について説明する。
積層型感光体における各層のうち、はじめに、図8〜11に対応する電荷発生層(22)について説明する。電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダ−樹脂を用いることもある。
【0044】
電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファスセレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコンなどが挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子などをドープしたものが良好に用いられる。
【0045】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系染料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0046】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として、高分子電荷輸送物質を用いることができる。更に、必要に応じて低分子電荷輸送物質を添加してもよい。
【0047】
電荷発生層に併用できる電荷輸送物質には電子輸送物質と正孔輸送物質とがあり、これらは更に低分子型の電荷輸送物質と高分子型の電荷輸送物質がある。以下、本発明では高分子型の電荷輸送物質を特に高分子電荷輸送物質と称する。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0048】
正孔輸送物質としては、以下に表される電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0049】
また、以下に表わされる高分子電荷輸送物質を用いることができる。たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に記載されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に記載されるポリシリレン重合体、特開平8−269183号公報、特開平9−151248号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号、特開平9−328539号公報、特開平9−272735号公報、特開平9−241369号公報、特開平11−29634号公報、特開平11−5836号公報、特開平11−71453号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開2000−38442号公報等に記載される芳香族ポリカーボネートが挙げられる。これらの高分子電荷輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0050】
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法などが用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどの溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート法、ビードコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0051】
次に、図8〜11に示す電荷輸送層(23)について説明する。
はじめに、フィラー補強電荷輸送層(26)を設けない図8と図9の場合について説明する。
電荷輸送層が感光体の最表面層になる場合、少なくともフィラーとポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を電荷輸送層に含有させる必要がある。
電荷輸送層は、フィラーと電荷輸送物質と少なくともポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。特に、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料のガラス転移温度よりも高い温度で加熱乾燥すると、下地に対して極めて接着強度の高い膜形成が可能となる。
【0052】
塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。電荷輸送層の膜厚は、15〜40μm程度が適当であり、好ましくは15〜35μm程度、解像力が要求される場合、27μm以下が適当である。
【0053】
電荷輸送層の表面から深さ方向に向けて存在するフィラーの厚みを「フィラー層」と定義すると、このフィラー層の膜厚は0.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上であることが好ましい。このフィラー層の膜厚を0.5μm未満にすると、耐久性向上効果が小さく、有用性に欠けてしまう。他方、この層の膜厚を2μm以上にすると、装置の寿命に匹敵する耐久性が得られることが少なくなく、極めて有用な手段となる。
上記の特徴を有する電荷輸送層の塗工は、フィラー含まれない感光層塗工液を予め塗布し、必要な場合には乾燥し、次いでフィラー含感光層塗工液を塗布、乾燥することにより容易に形成することが可能になる。
【0054】
この具体例として、例えば、上利泰幸、島田雅之、古賀智裕、川崎吉包、ポリマープレプリンツ,ジャパン,46巻,No.11,2689頁(1997年)に記載の溶液拡散法を用い、予め、フィラーの含まない電荷輸送層塗工液を塗布し、次いで、感光体を塗工溶媒の沸点より高い温度で加熱した状態にてフィラーが含まれる電荷輸送層塗工液を塗布することにより感光体表面側にフィラーの含有率が高い電荷輸送層を形成することができる。このような塗工方法では、フィラーの含有率に濃度傾斜が生じる場合が多い。そこで、本構成の電荷輸送層は後述のフィラーが含まれない電荷輸送層を塗布し、乾燥工程を経た後、常温でフィラー補強電荷輸送層を設ける場合と区別される。
【0055】
本発明では、バインダー成分として、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を用いることがとりわけ重要となる。これは単独または2種以上の混合物として用いることができる。
これに併用できるバインダー成分としては、例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの樹脂材料は単独または2種以上の混合物として、また、これらの単量体について、2種以上の共重合体として、更には、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。
これらの材料のうち、ガラス転移温度が170℃以上の材料を選択することにより、多くの場合、電荷輸送層のガラス転移温度を上げることが可能で、トナーに対する離型性が有利になる。
【0056】
また、電荷輸送層の水蒸気透過度を低減させることを目的として、高分子化合物を用いる場合、例えばポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル、エチレン/酢酸ビニル等はガス透過度の低いものが多く、有効に用いることができる。
これらの樹脂を添加剤としてバインダー樹脂と併用する場合、光減衰感度の制約から、その添加量は50wt%以下とすることが好ましい。同様の理由により、電荷輸送物質とガス透過度の低い繰り返し単位を共重合させる場合、その共重合成分の割合は共重合体全体の60wt%以下であることが好ましい。
【0057】
また、2種類以上の高分子化合物の組み合わせからなる電荷輸送層のガス透過度は個々の樹脂におけるガス透過度の平均値に近い値を示す場合が多い。このため、電荷輸送層のガス透過度を低減化する目的で使用する高分子化合物のガス透過度は、その高分子膜の水蒸気透過度として、140g・m-2・24h-1(膜厚は電荷輸送層の膜厚と同じ)未満の材料を選択すると、極めて多種類の材料と組み合わせて使用することが可能となる。
【0058】
電荷輸送物質として用いることのできる材料は、上述の低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質および高分子電荷輸送物質が挙げられる。
低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、この使用量は樹脂成分100重量部に対して40〜200重量部、好ましくは50〜100重量部程度が適当である。また、高分子電荷輸送物質を用いる場合、電荷輸送成分100重量部に対して樹脂成分が0〜200重量部、好ましくは0〜150重量部程度の割合で共重合された材料が好ましく用いられる。
【0059】
また、電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましく、具体的にはイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下とすることで、一方の電荷輸送物質が他方の電荷輸送物質の電荷トラップとなることを防止することができる。
特に、高感度化が要求される場合、電荷輸送層の電荷移動度が高く、低電界領域における電荷移動度も充分に高くすることが好ましい。具体的には電荷輸送層の電荷移動度が電界強度4×105V/cmの場合に1.2×10-5cm2/V・sec以上で、且つ電荷移動度に対する電界強度依存性が以下に定義する値として、β≦1.6×10-3を満たすことが好ましい。
【0060】
ここで、電荷移動度の電界強度依存性は次のようにして大小を判断することができる。
すなわち、電界強度を低い値から高い値へ変えた場合の電荷移動度の変化を、縦軸に電荷移動度(単位:cm2/V・sec)、横軸に電界強度の平方根(単位:V1/2/cm1/2)として片対数グラフにプロットする。次に、プロットを結ぶ近似直線を引く。この具体例を図12に記す。この直線の傾きが大きくなるほど、電荷移動度の電界強度依存性が大きいと解釈される。この大きさを定量的に取り扱う数式として、本発明では以下の式(1)を用いる(請求項21)。
【0061】
【数3】
β=logμ/E1/2 (1)
前式中、logは常用対数、μは電荷移動度(単位:cm2/V・sec)、Eは電界強度(単位:V/cm)を表わす。
前式(1)におけるβが大きい電荷輸送層ほど、電荷移動度の電界強度依存性が大きいと解釈される。多くの場合、βが大きい電荷輸送層は低電界領域での電荷移動度が低くなる。このときの感光体の静電特性面の影響として、残留電位の上昇や帯電電位を下げて感光体を使用する場合、応答性が劣ってしまうケースが挙げられる。
【0062】
高感度化を満足する電荷輸送成分の成分量として、更に具体的には樹脂成分100重量部に対して60重量部以上含有させることが好ましい。
また、電荷輸送層のガラス転移温度を高める場合、電荷輸送層の低分子量成分の低減化が図れる高分子電荷輸送物質を選択することが極めて有効な手段となる。特にガラス転移温度が80℃以上の高分子電荷輸送物質を用いることにより電荷輸送層のガラス転移温度を高くすることが可能であり、有用である(請求項26)。
【0063】
本発明に用いられるフィラーとしては酸化チタン、シリカ、シリコーンゴム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。特に、シリカとα−アルミナは、静電特性面の安定性が高く、耐久性向上効果が大きい。特に、電子写真感光体の高耐久化を図る手段として、無機フィラーにα−アルミナを選択することが極めて有利となる。これはα−アルミナがダイアモンドに次いで優れたモース硬度を示すことと、透光性を有することに起因する。前者の特性は感光体の耐摩耗性向上化に対して極めて有利に作用する。後者は静電特性のパフォーマンス維持に有利であり、これにより、フィラーの含有量を増加させることが可能となる。結果、感光体の耐摩耗性向上化に結びつけることができる。
【0064】
とりわけ、以下の特徴を有するα−アルミナは、膜中のフィラー充填性に優れるため、フィラーの含有量を高くしても表面平滑な膜形成が可能となる。
すなわち、フィラーとして用いるα−アルミナは、実質的に破砕面を有さず、且つ、多面体粒子であり、且つ、α−アルミナの六方格子面に平行な最大粒子径をD、六方格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上5.0以下であるα−アルミナ粒子からなるものが望ましい。
【0065】
更に、この条件を満たすα−アルミナについて、粒子の平均粒径が0.1μm以上0.7μm未満であり、且つ、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれDa、DbとしたときにDb/Daの値が5以下の粒度分布を示すα−アルミナが感光体の高耐久化に対して特に有用である。ここで、DaとDbは例えば、図13に示す粒径として例示することができる。
【0066】
α−アルミナの破砕面は電荷トラップとして作用することが多く、破砕面の面積が大きいα−アルミナを用いることは静電特性上余り好ましくない。
また、ここで定義するD/H比が大きなα−アルミナは、形状がいびつであり、所定濃度以上のα−アルミナを含有させると、α−アルミナがバインダー樹脂から頭出し、感光体表面の平滑性を損ねてしまうことが多い。D/H比が0.5以上5.0以下ではこのような事態を回避できるケースが多く、表面平滑な膜形成に対して有利となる。
【0067】
また、α−アルミナの粒度分布はシャープであることが好ましい。具体的には、セディグラフX線透過式粒度分布測定を行なったときの粒度分布が、先に定義したDb/Daの値として5以下とすることにより、α−アルミナの粒径を均質化でき、感光体の表面平滑化が容易となる。
【0068】
電荷輸送層のフィラー含有率は、先に説明した電荷輸送層の表面側に含有されるフィラー層について、5wt%以上が好ましく、より好ましくは10wt%以上が好ましい。5wt%以下であると、充分な耐摩耗性向上が得られない。フィラー含有率の上限は35wt%程度となるケースが多い。従来、提案されてきた手段では、感光層中のフィラーを5wt%以上に高濃度化させてしまうと、激しい感度劣化や残留電位上昇を招き、感光体としての機能を失ってしまうケースが多かったが、本発明に基づき、感光層中のフィラーを導電性支持体側より最も離れた表面側に含有率を多くすることにより、静電特性上の不具合を解消することが可能となり、同時に充分な高耐久化が実現できる。
【0069】
これらのフィラーは塗工液および塗工膜中の分散性向上を目的として、表面処理剤によるフィラー表面の改質が施されてもよい。一般的な表面処理剤としては、シランカップリング剤、シラザン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤、ジルコニウム有機化合物、脂肪酸化合物等が挙げられる。また、無機物による表面処理として、フィラー表面のアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカ処理が知られており、本発明において、これらの表面処理を適用してもよい。このうち脂肪酸化合物とシランカップリング剤は分散性向上のみならず、感光体の静電特性の向上に対しても寄与することが多く有用である。
フィラーの表面処理方法はコーティングによる改質、メカノケミカル法を利用した改質、トポケミカル法を利用した改質、カプセル化法を利用した改質、高エネルギー利用の改質、沈殿反応を利用した改質など公知の方法が用いられる。
【0070】
また、感光体の残留電位や露光部電位の一層の低減化を図る目的で、固有抵抗低下剤を電荷輸送層中に含有することができる。また、固有抵抗低下剤はフィラーの表面処理剤として使用してもよい。
固有抵抗低下剤として、例えば、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル(ソルビタンモノ脂肪酸エステル、脂肪酸ペンタエリスリトール等)、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、カルボン酸誘導体を挙げることができる。これらの化合物は単独でも2種以上の混合物としても用いることができる。固有抵抗低下剤の使用量はフィラー100重量部に対して、0.5〜10重量部程度が適当である。使用量が0.5重量部よりも低いと、添加による効果が小さく実用的とは言えない。これらの化合物を感光層に添加すると異常画像の発生防止に対して不利に作用するケースがある。
しかしながら、本発明においては感光層にポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を用いることによりかかる不具合を招くことが無く、固有抵抗低下剤を有効利用することが可能となる。
【0071】
電荷輸送層塗工液を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類等を挙げることができる。
特に、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料の溶解性を向上させる溶媒として、テトラヒドロフラン、ハロゲン化炭化水素、フェノール、N−メチルピロリドン、ピリジン、ジメチルホルムアミドを溶剤に用いても良い。
【0072】
また、必要により、電荷輸送層中に適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
【0073】
次に、フィラー補強電荷輸送層(26)を設ける場合の図10と図11に示す電荷輸送層(23)について説明する。
電荷輸送層(23)は表面側のフィラーを含有する電荷輸送層と、フィラーが含まれない電荷輸送層の2層に機能分離される特徴をもつ。前者をフィラー補強電荷輸送層(26)と称し、後者をフィラー非補強電荷輸送層(29)と称す。
始めにフィラー非補強電荷輸送層(29)について説明する。
フィラー非補強電荷輸送層(29)は、電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
【0074】
フィラー非補強電荷輸送層(29)の膜厚は、15〜40μm程度が適当であり、好ましくは15〜30μm程度、解像力が要求される場合、25μm以下が適当である。
フィラー非補強電荷輸送層に用いることのできる溶媒は、例えば、フィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げたケトン類、エーテル類、芳香族類、ハロゲン類およびエステル類等の溶媒が挙げられる。この電荷輸送層にポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を含有させる場合、樹脂の溶解性を向上させる溶媒として、テトラヒドロフラン、ハロゲン化炭化水素、フェノール、N−メチルピロリドン、ピリジン、ジメチルホルムアミドを溶剤に用いても良い(請求項15)。
フィラー非補強電荷輸送層(29)に用いることのできる樹脂成分は、例えば、前述の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの高分子化合物は単独または2種以上の混合物として、また、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。
電荷輸送物質として用いることのできる材料も前記の低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質および高分子電荷輸送物質が挙げられる。
低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、この使用量は樹脂成分100重量部に対して40〜200重量部、好ましくは50〜100重量部程度が適当である。また、高分子電荷輸送物質を用いる場合、電荷輸送成分100重量部に対して樹脂成分が0〜200重量部、好ましくは0〜150重量部程度の割合で共重合された材料が好ましく用いられる。
【0075】
特に、フィラー非補強電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に含有する電荷輸送物質が異なる場合、各層に含有する電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。具体的には0.15eV以下であることが望ましい。同様に、2種以上の電荷輸送物質を用いる場合、これらのイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下となる材料を選択することが好ましい。
特に、高感度化が要求される場合、電荷輸送層の電荷移動度が高く、低電界領域における電荷移動度も充分に高くすることが好ましい。具体的にはフィラー非補強電荷輸送層の電荷移動度が電界強度4×10V/cmの場合に1.2×10−5cm/V・sec以上で、且つ電荷移動度に対する電界強度依存性が先に定義した値として、β≦1.6×10−3を満たすことが好ましい。これを満たす電荷輸送成分の成分量として、樹脂成分100重量部に対して60重量部以上含有させることが好ましい。
【0076】
また、必要により適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
【0077】
次に、図10と図11に示すフィラー補強電荷輸送層(26)について説明する。
本発明におけるフィラー補強電荷輸送層とは、少なくともフィラーと電荷輸送物質とポリエチレンテレフタレート成分が含有される樹脂材料が含まれる。フィラー補強電荷輸送層は、従来型の電荷輸送層に匹敵する高い電荷移動度を示す特徴を有し、これは表面保護層と区別される。また、フィラー補強電荷輸送層は、積層型感光体における電荷輸送層を2層以上に機能分離した表面層として用いられる。すなわち、この層はフィラーの含まれない電荷輸送層との積層で用いられ、単独で用いられる事が無い。このため、フィラーが添加剤として電荷輸送層中に分散された場合の電荷輸送層の単一層と区別される。
【0078】
フィラー補強電荷輸送層は、フィラーと少なくともポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。特に、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料のガラス転移温度よりも高い温度で加熱乾燥すると、下地に対して極めて接着強度の高い膜形成が可能となる。
フィラー補強電荷輸送層の膜厚は0.5μm以上であることが好まく、より好ましくは2μm以上が好ましい。このフィラー補強電荷輸送層の膜厚を0.5μm以下にすると、耐久性向上効果が小さく、有用性に欠けてしまう。他方、この層の膜厚を2μm以上にすると、装置の寿命に匹敵する耐久性が得られることが少なくなく、極めて有用な手段となる。かかる厚膜化は、従来技術では激しい感度劣化や残留電位上昇を招くことが多かったが、本発明による電荷輸送層の機能分離化により、容易に静電特性上の不具合を回避することが可能となる。
【0079】
フィラー補強電荷輸送層塗工液を調製する際、使用できる分散溶媒は、例えば、電荷輸送層の説明に挙げたケトン類、エーテル類、芳香族類、ハロゲン類およびエステル類等の溶媒が挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料の溶解性を向上させる溶媒として、テトラヒドロフラン、ハロゲン化炭化水素、フェノール、N−メチルピロリドン、ピリジン、ジメチルホルムアミドを溶剤に用いても良い(請求項15)。
フィラー補強電荷輸送層塗工液の塗工方法としては、先に挙げた浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
【0080】
本発明ではバインダー成分として、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を用いることがとりわけ重要となる。これは単独または2種以上の混合物として用いることができる。これに併用できるバインダー成分としては、フィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層で用いられる高分子化合物が挙げられる。このうち、ガラス転移温度が170℃以上の材料を選択することにより、多くの場合、電荷輸送層のガラス転移温度を上げることが可能で、トナーに対する離型性が有利になる。
【0081】
フィラー補強電荷輸送層に用いられるフィラーとしてはフィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げたフィラーを用いることができる。特に、シリカとα−アルミナは、静電特性面の安定性が高く、耐久性向上効果が大きい。
これらのフィラーは塗工液および塗工膜中の分散性向上を目的として、前述と同様、表面処理剤によるフィラー表面の改質が施されてもよい。このうち、脂肪酸化合物とシランカップリング剤は分散性向上のみならず、感光体の静電特性の向上に対しても寄与することが多く有用である。
【0082】
フィラーの粉砕(塊砕)および分散は、ボールミル、振動ミル、サンドミル、KDミル、3本ロールミル、圧力式ホモジナイザー、超音波分散等により行なうことができる。
フィラー補強電荷輸送層に用いられるフィラーの平均粒径および粒径分布は電荷輸送層の説明に挙げた条件と全く同様にして用いられることが好ましい。
【0083】
フィラー補強電荷輸送層のフィラー含有量は5wt%以上が好ましく、より好ましくは10wt%以上が好ましい。5wt%以下であると、充分な耐摩耗性が得られない。フィラー含有率の上限は35wt%程度となるケースが多い。従来、提案されてきた手段では、感光層中のフィラーを5wt%以上高濃度化させてしまうと、激しい感度劣化や残留電位上昇を招き、感光体としての機能を失ってしまうケースが多かったが、フィラー補強電荷輸送層を設けることにより、静電特性上の不具合を解消することが可能となる。
【0084】
フィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質の種類、およびこれらの使用量はフィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げた材料および使用量を同様にして用いることができる。但し、フィラー非補強電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に含有する電荷輸送物質が異なる場合、各層に含有する電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。具体的には0.15eV以下であることが望ましい。
また、高感度化が要求される場合、フィラー補強電荷輸送層の電荷移動度は大きくすることが有利で更に、低電界領域における電荷移動度も充分に高くすることが好ましい。これを満たす条件としては、フィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層(23)に記載した条件を踏襲することで可能となる。
また、必要により適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
【0085】
次に、図4と図5に示す感光層(24)が単層構成の場合について述べる。
単層型の感光層は、後述のフィラー補強感光層(27)を設ける場合も設けない場合も、少なくともポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を用いる必要がある。この感光層は、前出の溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。塗工方法は電荷輸送層(23)の説明に記載した方法が用いられる。
また、感光層中のフィラーが導電性支持体側より最も離れた表面側に含有率を多くする塗工方法は、前述した方法と同様の方法により、容易に形成することが可能になる。
単層型の感光層に用いるバインダー樹脂、電荷発生物質、電荷輸送物質ならびにフィラーは、前述の材料を用いることができる。
【0086】
また、必要により固有抵抗低下剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤やレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。固有抵抗低下剤の使用量はフィラー100重量部に対して0.5〜10重量部、低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
特に、後述するフィラー補強感光層を設ける場合、この下層に当たるフィラーが含まれない感光層には、より多くの低分子化合物を併用することが可能になる。この場合の低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜100重量部程度併用することができる。感光層の膜厚は、10〜50μm程度が適当であり、好ましくは、10〜40μm程度、解像力が要求される場合、10〜27μm程度が適当である。感光層中、導電性支持体側より最も離れた表面からの深さ方向に向けて存在するフィラーの厚みを「フィラー層」と定義すると、このフィラー層の膜厚は、0.5μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上であることが好ましい(請求項10)。
【0087】
次に図6と図7に示すフィラー補強感光層(27)について説明する。
本発明におけるフィラー補強感光層とは、少なくともバインダー樹脂成分とフィラーと電荷発生物質ないし電荷輸送物質が含まれ、電荷輸送性ないし電荷発生機能および機械的耐性を併せ持つ感光層を指す。特に、本発明において、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を含めることが重要である。フィラー補強感光層は、従来型の感光層に匹敵する電荷移動度ないし電荷発生効率を示す特徴を有し、これは表面保護層と区別される。また、フィラー補強感光層は、単層型感光体における感光層を2層以上に機能分離した表面層として用いられる。すなわち、この層はフィラーの含まれないフィラー非補強感光層との積層で用いられ、単独で用いられる事がない。このため、フィラーが添加剤として感光層中に分散された場合の単一の感光層と区別される。
フィラー補強感光層は、必要により電荷発生物質を用いる以外は前述のフィラー補強電荷輸送層と全く同様の手段によって形成することができる。尚、電荷発生物質を使用する場合、電荷発生層で挙げた前出の材料を用いることができる。また、図6、図7に示すフィラー非補強感光層(28)はフィラー補強感光層(27)に対してフィラーを含有しない他はフィラー補強感光層(27)と同じ特徴を示す。フィラー非補強感光層(28)は必要により電荷発生物質を用いる以外は前述のフィラー非補強電荷輸送層と全く同様の手段によって形成することができる。尚、電荷発生物質を使用する場合、電荷発生層で挙げた前出の材料を用いることができる。
【0088】
本発明に用いられる電子写真感光体には、導電性支持体と感光層ないし電荷発生層との間に下引き層(25)を設けることができる。下引き層は、接着性を向上する、モワレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減する、導電性支持体からの電荷注入を防止するなどの目的で設けられる。
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤を用いて塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂など三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどで例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層のごとく適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
【0089】
更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを使用して、例えばゾル−ゲル法などにより形成した金属酸化物層も有用である。
この他に、本発明の下引き層にはアルミナを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)などの有機物や、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、ITO、セリアなどの無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0090】
また、本発明においては、感光体表面層のガス透過度の低減および、耐環境性の改善のため、各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質およびレベリング剤を添加することができる。これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0091】
(a)フェノール系酸化防止剤
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、スチレン化フェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、シクロヘキシルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−i−プロピリデンビスフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリスメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアネート、トリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル]イソシアネート、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
【0092】
(b)アミン系酸化防止剤
フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニレン−N’−i−プロピル−p−フェニレンジアミン、アルドール−α−ナフチルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリン
【0093】
(c)硫黄系酸化防止剤
チオビス(β−ナフトール)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ドデシルメルカプタン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルチオカルバメート、イソプロピルキサンテート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート
【0094】
(d)リン系酸化防止剤
トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト
【0095】
各層に添加できる可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
【0096】
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
【0097】
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
【0098】
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
【0099】
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
【0100】
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
【0101】
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
【0102】
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
【0103】
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
【0104】
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
【0105】
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
【0106】
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
【0107】
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
【0108】
各層に添加できる滑剤としては、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
【0109】
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
【0110】
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
【0111】
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
【0112】
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
【0113】
(f)金属石けん
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
【0114】
(g)天然ワックス
カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
【0115】
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物など。
【0116】
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンなど。
【0117】
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4ジ−t−ブチルフェニル3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシベンゾエートなど。
【0118】
(c)ベンゾトリアゾール系
(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2’−ヒドロキシ3’−ターシャリブチル5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール
【0119】
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレートなど。
【0120】
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2’チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
【0121】
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
【0122】
各層に添加できる低分子電荷輸送物質は、電荷発生層(22)の説明に記載したものと同じものを用いることができる。
【0123】
次に、図面に沿って本発明で用いられる電子写真装置を説明する。
図1は、本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、感光体(11)は導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とフィラーを含有し、且つ感光層中に少なくともポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料を含有する感光層が設けられてなる。感光体(11)はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
帯電手段(12)、は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。帯電手段は、オゾン発生の低減や消費電力の低減の観点から、感光体に対し接触もしくは近接配置したものが良好に用いられる。中でも、帯電手段への汚染を防止するため、感光体と帯電手段表面の間に適度な空隙を有する感光体近傍に近接配置された帯電機構が有効に使用される。転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0124】
また、露光手段(13)、除電手段(1A)等に用いられる光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
現像手段(14)により感光体上に現像されたトナー(15)は、受像媒体(18)に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段(17)により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
【0125】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0126】
図2には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体(11)は導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とフィラーを含有し、且つ感光層中に少なくともポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料を含有する感光層が設けられてなる。駆動手段(1C)により駆動され、帯電手段(12)による帯電、露光手段(13)による像露光、現像(図示せず)、転写手段(16)による転写、クリーニング前露光手段によるクリーニング前露光、クリーニング手段(17)によるクリーニング、除電手段1Aによる除電が繰返し行なわれる。図2においては、感光体(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0127】
以上の電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図2において支持体側よりクリーニング前露光を行なっているが、これは感光層側から行なってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行なってもよい。一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
【0128】
以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図3に示すものが挙げられる。この場合も、本発明における感光体(11)は導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とフィラーを含有し、且つ感光層中に少なくともポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料を含有する感光層が設けられてなる。
【0129】
以下、本発明で使用する測定方法について述べる。
(1)膜厚測定
渦電流方式膜厚測定器FISCHER SCOPE mms(フィッシャー社製)により、感光体ドラム長手方向1cm間隔に膜厚を測定し、それらの平均値を感光層膜厚とした。
【0130】
(2)感光体表面電位測定
表面電位計(Trek MODEL344、トレック社製)のプローブを取り付けた改造現像ユニットを複写機内現像部に取り付け、感光体中央部の表面電位を測定した。
【0131】
(3)電荷移動度測定
アルミ蒸着されたPETフィルム上に後述する処方により作製した電荷輸送層の塗工液を塗布し、10μmの塗工膜を作製設けた。塗工膜の上に厚さ200Åの金電極を蒸着し、電荷移動度測定用の試料セルを作製した。
電荷移動度の測定はタイムオブフライト測定に基づいて行なった。タイムオブフライト測定は、次のようにして行なった。予め金電極側に正の電圧を印加し、窒素ガスレーザー光を金電極側から試料に照射した。その際、アルミニウム電極とアース間に入れた挿入抵抗を光電流が流れることによって生じる電位の時間変化をデジタルメモリで記録した。デジタルメモリに出力された波形について前後から接線を引き、この交点からトランジットタイムtが求められる。波形が分散型になる場合を想定し、出力波形について両対数プロットをとり、この接線の交点からトランジットタイムtを求めた。電荷移動度μの算出は、膜厚をL、印加電圧をVとして下式(2)から決定した。
【0132】
【数4】
μ=L2/(V・t) (2)
なお、測定環境は25℃50%RHの状態で行なった。
【0133】
(4)イオン化ポテンシャル測定
表面平滑なAl板上に後述する処方により作製した電荷輸送層の塗工液を塗布し、イオン化ポテンシャル測定用のサンプルを作製した。イオン化ポテンシャルは大気雰囲気型紫外線光電子分析装置AC−1(理研計器社製)により測定した。
【0134】
(5)ガラス転移温度測定
フィラー補強電荷輸送層および樹脂材料のガラス転移温度は、示差走査熱量計DSC6100(セイコー電子工業社製)により大気雰囲気下、昇温速度10℃/minの条件にて開放型Al容器を用いて測定した。
【0135】
(6)表面粗さ測定
JISB−0601に準じ、ドラム状の感光体表面を触針式表面粗さ計Surfcom(東京精密社製)により、十点平均粗さRzと最大高さRmaxを測定した。
【0136】
(7)水蒸気透過度測定
表面平滑なAl板上に後述する処方により作製した感光体表面層(電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層の積層)の塗工液を塗布し、水蒸気透過度測定用の感光体表面層を作製した。水蒸気透過度測定用の感光体表面層の膜厚は感光体作成時の電荷輸送層およびフィラー補強電荷輸送層と同じ膜厚になるように作成した。この表面層をAl板より剥離し、水蒸気透過度測定装置L80−4000(リッシー社製)により水蒸気透過度を測定した。
【0137】
(8)重量累積粒度分布の測定
セディグラフ5000−ET(島津−マイクロメリテックス社製)を使用してフィラーの粒度分布を測定した。
【0138】
(9)D/H比の測定
走査電子顕微鏡T−300(SEM、日本電子社製)を使用して粉末粒子の写真を撮影し、その写真から5個ないし10個の粒子を選択して画像解析を行ない、その平均値として求めた。
【0139】
ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料は以下の方法で調製した。
(調製例)
ポリエチレンテレフタレート(バイロペットEMC−307、東洋紡社製)30重量部とポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ社)70重量部を特開平9−314634号公報に準じて二軸押出機を用いてペレット化した〔簡単のため、これをPAR/PET(30)と称す〕。
同様にしてポリエチレンテレフタレート成分が樹脂材料全体の40wt%、20wt%、10wt%、5wt%となる材料を調製した。これらを順にPAR/PET(40)、PAR/PET(20)、PAR/PET(10)、PAR/PET(5)と称す。以上の樹脂の重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定から4.2×104から4.5×104の範囲であった。これらの樹脂は溶剤に溶解し樹脂単独膜を形成しても光学観察からは透明均質であり、示差走査熱量(DSC)測定を行なっても単一のガラス転移温度を示し、且つポリエチレンテレフタレート成分量に応じた低下現象が観察されることから、本発明において、これをポリマーアロイの状態とした。
【0140】
【実施例】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、本実施例中で例示するフィラーの表面処理は以下の方法にて行なった。
【0141】
処理例1
100mlナスフラスコにα−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)10g、n−ヘキサン40mlおよびアルミニウム系表面処理剤(プレンアクトAL−M、味の素ファインテクノ社製)を1ml添加した。これらの混合液を69℃にて1時間還流した。この後、混合液をデカンテーションした後、ソックスレー抽出器により固形物の洗浄を行なった。洗浄した固形物を12時間、70℃にて真空乾燥した。この処理したフィラーをAL−M処理AA−03と称す。
【0142】
処理例2
処理例1で使用したアルミニウム系表面処理剤(プレンアクトAL−M、味の素ファインテクノ社製)をチタネート系カップリング剤(プレンアクトKR−TTS、味の素ファインテクノ社製)に変えた以外は処理例1と同様にして表面処理を行なった。処理したフィラーをKR−TTS処理AA−03と称す。
【0143】
処理例3
処理例1で使用したアルミニウム系表面処理剤(プレンアクトAL−M、味の素ファインテクノ社製)をシランカップリング剤(SZ6072、東レシリコーン社製)に変えた以外は処理例1と同様にして表面処理を行なった。処理したフィラーをSZ6072処理AA−03と称す。
【0144】
処理例4
処理例1で使用したアルミニウム系表面処理剤(プレンアクトAL−M、味の素ファインテクノ社製)を脂肪酸化合物(BYK−P104、ビックケミー社製)に変えた以外は処理例1と同様にして表面処理を行なった。処理したフィラーをBYK−P104処理AA−03と称す。
【0145】
実施例1
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層を形成し、本発明の電子写真感光体を得た。
【0146】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液 10重量部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂溶液 7重量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
チタニルフタロシアニン(リコー社製) 3重量部
ポリビニルアセタール 1重量部
(エスレックBM−2、積水化学工業社製)
メチルエチルケトン 100重量部
【0147】
〔電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 9重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 8重量部
【0148】
【化1】
Figure 0003781639
α−アルミナ 2.2重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製) 0.05重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0149】
比較例1
実施例1における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 9重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 8重量部
【0150】
【化2】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0151】
以上のように作製した実施例1および比較例1の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採った。試験環境は、40℃/10%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、試験開始時と試験終了時の画像評価を行なった。結果を以下の表1に記す。
【0152】
【表1】
Figure 0003781639
【0153】
表1の結果から明らかなように、電荷輸送層にフィラーが含有される実施例1の感光体は、5万枚通紙試験後においても、画像ボケやカブリが認められず、耐久性に優れた感光体であると判断される。他方、フィラーが含有されない比較例1は摩耗が激しく、更に、5万枚試験後の画像についてはカブリが見られた。
実施例1と比較例1の試験結果を比較すると、電荷輸送層にフィラーが含まれる実施例1は比較例1よりも高耐久な感光体であると判断される。
【0154】
実施例2
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、フィラー非補強電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmのフィラー非補強電荷輸送層を形成した。フィラー補強電荷輸送層の塗工液は下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いて24時間のボールミル分散を施して調製した。尚、電荷輸送物質と樹脂材料はボールミル分散終了後に添加した。この液を電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、1.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
【0155】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド溶液 10重量部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン溶液 7重量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0156】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料 2.5重量部
【0157】
【化3】
Figure 0003781639
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 10重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 7重量部
【0158】
【化4】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(5) 4重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 3重量部
【0159】
【化5】
Figure 0003781639
酸化チタン(CR−97、石原産業社製) 0.8重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0160】
実施例3
実施例2におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液に含有するポリアリレート樹脂をPAR/PET(5)に変えた以外は実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
【0161】
実施例4
実施例2におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液に含有するポリアリレート樹脂をPAR/PET(30)に変えた以外は実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
【0162】
実施例5
実施例2におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液に含有するポリアリレート樹脂をポリカーボネート樹脂(パンライトLV−2250Y、帝人化成社製)に変えた以外は実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
【0163】
比較例2
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層を設けなかった以外は、実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
【0164】
比較例3
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液のPAR/PET(5)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
【0165】
以上のように作製した実施例2〜5および比較例2、3の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、帯電ローラにDC電圧として−1500Vを印加した。試験環境は、39℃/10%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、試験開始時と試験終了時の画像評価を行なった。結果を以下の表2に記す。
【0166】
【表2】
Figure 0003781639
【0167】
表2の結果から明らかなように、感光層中にフィラーを含有し、更に、このフィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多く含有する実施例2〜5の感光体は、5万枚通紙試験後においても、出力画像のコントラストが明瞭でかつ、画像ボケやカブリも認められず、耐久性に優れた感光体であると判断される。また、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料をフィラー非補強電荷輸送層のバインダー樹脂として使用しても不具合が伴わないことが確認される。
【0168】
実施例6
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 2重量部
ポリスチレン樹脂 2重量部
(デンカスチロールHRM−3、電気化学工業社製)
下記構造式の低分子電荷輸送物質 3重量部
【0169】
【化6】
Figure 0003781639
酸化チタン(CR−97、石原産業社製) 0.8重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0170】
実施例7
実施例6におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるポリスチレン樹脂をポリエステル樹脂(O−PET KR−01、カネボウ社製)に変えた以外は実施例6と同様に電子写真感光体を作製した。
【0171】
実施例8
実施例6におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるポリスチレン樹脂をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例6と同様に電子写真感光体を作製した。
【0172】
実施例9
実施例6におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるポリスチレン樹脂をポリカーボネート樹脂(パンライトLV−2250Y、帝人化成社製)に変えた以外は実施例6と同様に電子写真感光体を作製した。
【0173】
比較例4
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(5)をポリスチレン樹脂(デンカスチロールHRM−3、電気化学工業社製)に変えた以外は実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
【0174】
比較例5
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(5)をポリエステル樹脂(O−PET KR−01、カネボウ社製)に変えた以外は実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
【0175】
比較例6
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(5)をポリカーボネート樹脂(パンライトLV−2250Y、帝人化成社製)に変えた以外は実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
【0176】
以上のように作製した実施例6〜9と先に挙げた比較例3、および比較例4〜6の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において2万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、帯電ローラにDC電圧として−1500Vを印加した。試験環境は、39℃/10%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、試験開始時と試験終了時の画像評価を行なった。結果を以下の表3に記す。
【0177】
【表3】
Figure 0003781639
【0178】
表3の結果から明らかなように、フィラー補強電荷輸送層中にポリエチレンテレフタレート成分が含有される実施例6〜9は2万枚試験後の画像が良好であるのに対して、比較例3〜6ではいずれも画像ボケが観察された。これより、異常画像発生の抑制にポリエチレンテレフタレート成分が機能していることが理解される。また、実施例6〜9のフィラー補強電荷輸送にはそれぞれポリスチレン、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネートがバインダー樹脂の一部として使用されており、本発明においてこれらの樹脂が使用可能であることが確認される。
【0179】
実施例10
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 4重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 3重量部
【0180】
【化7】
Figure 0003781639
疎水化シリカパウダー 0.8重量部
(KMP−X100、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0181】
実施例11
実施例10におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を4.5μmに変えた以外は実施例10と同様に電子写真感光体を作製した。
【0182】
実施例12
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を4.5μmに変えた以外は実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
【0183】
比較例7
実施例11におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例11と同様に電子写真感光体を作製した。
【0184】
比較例8
実施例12におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例12と同様に電子写真感光体を作製した。
【0185】
以上のように作製した実施例10〜12、比較例7、8および先に記載した実施例2の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、41℃/10%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、試験開始時と試験終了時の画像評価を行なった。結果を以下の表4に記す。
【0186】
【表4】
Figure 0003781639
【0187】
表4の結果から明らかなように、フィラー補強電荷輸送の膜厚は実施例2と10が1.5μm、実施例11と12が4.5μmの膜厚差がある。フィラーにシリカを用いた実施例10と11はフィラー補強電荷輸送層を厚膜化しても出力画像に影響がないのに対して、フィラーに酸化チタンを使用する場合、厚膜化により出力画像のコントラストが低下する結果が得られている。これより、感光層に含有するフィラー材料としてシリカを選択することにより、フィラー補強電荷輸送層を厚膜化することが可能であることが理解される。また、この層の厚膜化により、摩耗速度を抑制できることも理解される。
また、実施例11、12では比較例7、8と比較して、試験終了後の画像出力に対して画像ボケの発生が防止されており、ポリエチレンテレフタレート成分が画像ボケの発生防止に寄与していることが理解される。
【0188】
実施例13
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 4重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 3重量部
【0189】
【化8】
Figure 0003781639
α−アルミナ 0.8重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0190】
実施例14
実施例13におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるα−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)を酸化チタン(CR−97、石原産業社製)に変えた以外は実施例13と同様に電子写真感光体を作製した。
【0191】
比較例9
実施例13におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例13と同様に電子写真感光体を作製した。
【0192】
比較例10
実施例14におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例14と同様に電子写真感光体を作製した。
【0193】
以上のように作製した実施例13、14および、比較例9、10の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagioMF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、41℃/10%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、試験開始時と試験終了時の画像評価を行なった。結果を以下の表5に記す。
【0194】
【表5】
Figure 0003781639
【0195】
表5の結果から明らかなように、実施例13と実施例14との比較から、フィラー補強電荷輸送層に含有されたフィラーの種類によって、感光体の摩耗量が異なることが理解される。実施例13と比較例9ではフィラー補強電荷輸送層にα−アルミナが含有されており、実施例14と比較例10では酸化チタンが含有されている。実施例13と比較例9は実施例14と比較例10よりも摩耗量が少ないことから、α−アルミナは耐摩耗性の向上化に有利なフィラーであると判断される。
また、実施例13と比較例9および実施例14と比較例10との比較から、試験終了後の画像出力について、実施例13と14では画像ボケの発生が抑制されている。これは、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料を用いた効果によるものと判断される。
【0196】
実施例15
実施例2におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例2と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.7重量部
【0197】
【化9】
Figure 0003781639
疎水化シリカパウダー 1.6重量部
(KMP−X100、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0198】
実施例16
実施例15におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有される疎水化シリカパウダーをα−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)に変えた以外は実施例15と同様に電子写真感光体を作製した。
【0199】
以上のように作製した実施例15、16および先に記載した実施例10、13の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、40℃/11%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、および画像評価を行なった。フィラー補強電荷輸送層に含有されるフィラー種とその含有率、および試験結果を以下の表6に記す。
【0200】
【表6】
Figure 0003781639
【0201】
表6の結果から明らかなように、実施例15と実施例10および実施例16と実施例13との比較から、フィラー補強電荷輸送に含有されるフィラーの含有量を多くすることにより、感光体の耐摩耗性が向上することがわかる。5万枚試験後の画像は画像ボケやカブリなどの異常画像は観察されず、感光体の高耐久化が図られていると判断される。
【0202】
実施例17
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、フィラー非補強電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmのフィラー非補強電荷輸送層を形成した。フィラー補強電荷輸送層の塗工液は下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いて24時間のボールミル分散を施して調製した。尚、電荷輸送物質、固有抵抗低下剤および樹脂材料はボールミル分散終了後に添加した。この液を電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、4.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
【0203】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液 10重量部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂溶液 7重量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式のビスアゾ顔料 2.5重量部
【0204】
【化10】
Figure 0003781639
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂 10重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製)
下記構造式の低分子電荷輸送物質 7重量部
【0205】
【化11】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.7重量部
【0206】
【化12】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.6重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.032重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0207】
実施例18
実施例17におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例17と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.7重量部
【0208】
【化13】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.6重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.0128重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0209】
実施例19
実施例17におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例17と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.7重量部
【0210】
【化14】
Figure 0003781639
α−アルミナ(AA−03、住友化学工業社製) 1.6重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0211】
比較例11
実施例17におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例17と同様に電子写真感光体を作製した。
【0212】
以上のように作製した実施例17〜19および比較例11の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、39℃/10%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては試験終了時の画像評価と感光体の露光部電位を測定した。フィラー補強電荷輸送層に含有する固有抵抗低下剤のフィラーに対する含有量と試験結果を以下の表7に記す。
【0213】
【表7】
Figure 0003781639
【0214】
表7の結果から明らかなように、5万枚通紙試験後に測定した露光部電位が実施例19、18、17の順に高い。実施例19の高い露光部電位はフィラー補強電荷輸送層の厚膜化とフィラーの多量添加が影響したと判断される。これにより出力画像の画像濃度も低くなったものと解釈される。一方、実施例17は露光部電位が比較的低い値が保たれており、出力画像も初期画像に勝るとも劣らない品質が維持されている。実施例17は実施例18に対して固有抵抗低下剤が含有されており、これが静電特性上の高性能化に寄与したことが理解される。実施例18にも固有抵抗低下剤が含有されているが、実施例17と比較して含有量が少量であるため添加による効果が小さいと解釈される。実施例17における固有抵抗低下剤の含有量はフィラーに対して0.4wt%であり、添加による効果を獲得するためにはこれよりも多量添加する必要があると判断される。
また、比較例11では、5万枚試験終了時の画像評価において画像ボケが観察されている。比較例11は実施例17と比較して、フィラー補強電荷輸送層にポリエチレンテレフタレート成分が含まれていないことのみが相違点として挙げられる。これから、実施例17、18、および19は画像ボケ発生の回避に際して、この成分の存在が大きく寄与していると判断される。
【0215】
実施例20
フィラー補強電荷輸送層用塗工液の調製に際し、固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製)をボールミル分散開始時に添加した以外は実施例17と同様に電子写真感光体を作製した。
【0216】
比較例12
実施例20におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例20と同様に電子写真感光体を作製した。
【0217】
以上のように作製した実施例20、比較例12および、先に記載した実施例17の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、39℃/10%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては試験終了時の画像評価と感光体の露光部電位を測定した。結果を以下の表8に記す。
【0218】
【表8】
Figure 0003781639
【0219】
表8の結果から明らかなように、実施例20と実施例17は試験終了後の画像評価において何れも初期画像に匹敵する画像品質が得られた。実施例20は露光部電位が実施例17よりも更に低減化される結果が得られている。
フィラー補強電荷輸送層用塗工液の調製において、ボールミル終了後のミルベースを遠心分離してフィラー成分のみを取り出し、水に対する溶解性を評価したところフィラーは水面を浮遊し、疎水化されていることが確かめられた。実施例20のフィラー補強電荷輸送層を溶解し、フィラー成分を分取して、同様の評価を行なったところ、この場合もフィラーが水面を浮遊する現象が観察された。これから、固有抵抗低下剤によるフィラーの表面処理が露光部電位の低減化に寄与していることが理解される。
また、比較例12では、5万枚試験終了時の画像評価において画像ボケが観察されている。比較例12は実施例20と比較して、フィラー補強電荷輸送層にポリエチレンテレフタレート成分が含まれていないことのみが相違点として挙げられる。これから、実施例20は画像ボケ発生の防止に際して、この成分の存在が大きく寄与していることが理解される。
【0220】
実施例21
実施例17におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更し、フィラー補強電荷輸送層の膜厚を3.0μmとした以外は実施例17と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.7重量部
【0221】
【化15】
Figure 0003781639
AL−M処理AA−03 1.6重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0222】
実施例22
実施例21におけるフィラー補強電荷輸送層に含有されるAL−M処理AA−03をKR−TTS処理AA−03に変えた以外は実施例21と同様に電子写真感光体を作製した。
【0223】
実施例23
実施例21におけるフィラー補強電荷輸送層に含有されるAL−M処理AA−03をSZ6072処理AA−03に変えた以外は実施例21と同様に電子写真感光体を作製した。
【0224】
実施例24
実施例21におけるフィラー補強電荷輸送層に含有されるAL−M処理AA−03をBYK−P104処理AA−03に変えた以外は実施例21と同様に電子写真感光体を作製した。
【0225】
実施例25
実施例21におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるAL−M処理AA−03をα−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)に変えた以外は実施例21と同様に電子写真感光体を作製した。
【0226】
比較例13
実施例21におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例21と同様に電子写真感光体を作製した。
【0227】
比較例14
実施例22におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例22と同様に電子写真感光体を作製した。
【0228】
比較例15
実施例23におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例23と同様に電子写真感光体を作製した。
【0229】
比較例16
実施例24におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例24と同様に電子写真感光体を作製した。
【0230】
比較例17
実施例25におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例25と同様に電子写真感光体を作製した。
【0231】
以上のように作製した実施例21〜25、比較例13〜17の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、39℃/10%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が4ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては試験終了時の画像評価と感光体の露光部電位を測定した。以下にフィラー補強電荷輸送層に含有されるフィラーの表面改質剤の種類および試験結果を以下の表9に記す。
【0232】
【表9】
Figure 0003781639
【0233】
表9の結果から明らかなように、実施例21〜24はフィラー補強電荷輸送層に含有されるフィラーが表面改質剤で表面処理されており、表面処理がされていない実施例25と比較して露光部電位が低いことが確認される。このうち、シランカップリング剤と脂肪酸化合物で表面処理された実施例23と実施例24はとりわけ露光部電位が低く、これらの表面処理により静電特性上の高性能化が図られていることが理解される。
また、比較例13〜17では、5万枚試験終了時の画像評価において画像ボケが観察されている。比較例13〜17は実施例21〜25と比較して、フィラー補強電荷輸送層にポリエチレンテレフタレート成分が含まれていないことのみが相違点として挙げられる。これから、実施例21〜25は画像ボケ発生の回避に際して、この成分の存在が大きく寄与していることが理解される。
【0234】
実施例26
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、フィラー非補強電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmのフィラー非補強電荷輸送層を形成した。フィラー補強電荷輸送層の塗工液は下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いて24時間のボールミル分散を施して調製した。尚、固有抵抗低下剤はボールミル分散開始時にフィラーの分散液に添加した。また、電荷輸送物質と樹脂材料はボールミル分散終了後に添加した。この液を電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、4.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
【0235】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液 10重量部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂溶液 7重量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式のビスアゾ顔料 2.5重量部
【0236】
【化16】
Figure 0003781639
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂 10重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製)
下記構造の低分子電荷輸送物質 7重量部
【0237】
【化17】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0238】
【化18】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0239】
実施例27
実施例26におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂 10重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製)
下記構造式の低分子電荷輸送物質 9重量部
【0240】
【化19】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0241】
実施例28
実施例26におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
下記構造式の高分子電荷輸送物質 15重量部
【0242】
【化20】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0243】
実施例29
実施例26におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂 10重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製)
下記構造式の低分子電荷輸送物質 7重量部
【0244】
【化21】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0245】
比較例18
実施例26におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例26と同様に電子写真感光体を作製した。
【0246】
比較例19
実施例27におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例27と同様に電子写真感光体を作製した。
【0247】
比較例20
実施例28におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例28と同様に電子写真感光体を作製した。
【0248】
比較例21
実施例29におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例29と同様に電子写真感光体を作製した。
【0249】
以上のように作製した実施例26〜29および比較例18〜21の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagioMF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、27℃/60%RHであった。評価方法としては試験終了時の解像度評価を行なった。また、それぞれのフィラー非補強電荷輸送層の電荷移動度μ(電界強度4×105V/cm)および電荷移動度の電界強度依存性の大きさβ(=logμ/E1/2)を測定した。結果を以下の表10に記す。
【0250】
【表10】
Figure 0003781639
【0251】
表10の結果から明らかなように、実施例26〜28は実施例29と比較してフィラー非補強電荷輸送層の電荷移動度が極めて高い感光体である測定結果が得られている。これに応じて、画像品質について解像度も向上される結果が得られている。これらの高速応答性に優れる感光体は電子写真装置におけるプロセススピードの向上や、感光体ドラムの小径化に役立つことが容易に類推される。さらに電荷移動度の電界強度依存性が小さい感光体は、残留電位の低減化に寄与するだけでなく、感光体の帯電電位を低く設定しても、応答性の影響が小さいという利点を持つ。これは装置の省電力化に対応できる感光体であると期待される。
また、フィラー補強電荷輸送層にポリエチレンテレフタレート成分が含有されない比較例18〜21は画像ボケが発生し、充分な解像度が得られていない。これに対して実施例26〜29は画像ボケの発生が抑制されており、画像ボケの発生防止に、この成分が寄与していることが理解される。
【0252】
実施例30
実施例26におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例26と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0253】
【化22】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0254】
比較例22
実施例30におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例30と同様に電子写真感光体を作製した。
【0255】
以上のように作製した実施例30、比較例22および先に記載した実施例26電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、41℃/9%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては試験終了時の解像度評価と感光体の露光部電位を測定した。結果を以下の表11に記す。
【0256】
【表11】
Figure 0003781639
【0257】
実施例30のフィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質は実施例26のフィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質よりも電荷移動度の高い物質が含有されている。この効果として、解像度評価では実施例30の方が実施例26よりも1ランク上の解像度を示し、試験後の露光部電位も低くできる効果が確認される。
実施例30の感光体は装置のプロセススピードの高速化や感光体ドラムの小径化に対応できる感光体であると判断される。
一方、比較例21は試験終了後の露光部電位が極めて低いという高性能な一面を呈しているものの、画像ボケが発生しており、実使用に耐えられない感光体であると判断される。実施例30に対して、比較例22のフィラー補強電荷輸送層にはポリエチレンテレフタレート成分が含有されておらず、これにより画像ボケが回避できなかったものと判断される。
【0258】
実施例31
実施例28におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例28と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
下記構造式の高分子電荷輸送物質 12重量部
【0259】
【化23】
Figure 0003781639
下記構造式の低分子電荷輸送物質 3重量部
【0260】
【化24】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0261】
実施例32
実施例31におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質を以下のものに変更した以外は実施例31と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式の低分子電荷輸送物質 3重量部
【0262】
【化25】
Figure 0003781639
【0263】
比較例23
実施例31におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例31と同様に電子写真感光体を作製した。
【0264】
比較例24
実施例32におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例32と同様に電子写真感光体を作製した。
【0265】
以上のように作製した実施例31、32と比較例23、24および先に記載した実施例28の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、39℃/8%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が4ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては試験終了時の画像評価および露光部電位の測定を行なった。
また、フィラー非補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルを測定した。結果を以下の表12に記す。
【0266】
【表12】
Figure 0003781639
【0267】
表12の結果から明らかなように、フィラー非補強電荷輸送層に含有される2種の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.8eVの実施例31は電荷輸送物質が単独である実施例28よりも試験後の露光部電位が低い結果が得られている。一方、実施例32は2種の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が1.7eVあり、これは実施例28よりも露光部電位が高い結果が得られた。2種以上の電荷輸送物質をフィラー非補強電荷輸送層に用いる場合、それらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が有利であることが理解される。
また、比較例23、24は試験終了後の露光部電位が極めて低いという高性能な一面を呈しているものの、画像ボケが発生しており、実使用に耐えられない感光体であると判断される。実施例31、32に対して、比較例23、24のフィラー補強電荷輸送層にはポリエチレンテレフタレート成分が含有されておらず、これにより画像ボケが回避できなかったものと判断される。
【0268】
実施例33
実施例28におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例28と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0269】
【化26】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0270】
実施例34
実施例33におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質を以下のものに変更した以外は、実施例33と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0271】
【化27】
Figure 0003781639
【0272】
比較例25
実施例33におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例33と同様に電子写真感光体を作製した。
【0273】
比較例26
実施例34におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例34と同様に電子写真感光体を作製した。
【0274】
以上のように作製した実施例33、34と比較例25、26および先に記載した実施例28の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、41℃/9%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が5ppmの環境下で試験を行なった。評価方法としては試験終了時の画像評価および露光部電位の測定を行なった。
また、フィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルを測定した。結果を以下の表13に記す。
【0275】
【表13】
Figure 0003781639
【0276】
表13の結果から明らかなように、フィラー非補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルは5.48eVと測定され、フィラー補強電荷輸送層中に含有される電荷輸送物質との差は実施例33が0.03eV、実施例34が0.17eV、実施例28が0.08eVと算出される。
イオン化ポテンシャル差の大きい実施例34は試験終了時の露光部電位が高めであり、その差が小さい実施例33と実施例28は極めて低い露光部電位が計測されている。
これから、フィラー補強電荷輸送層中に含有する電荷輸送物質としてイオン化ポテンシャル差の小さい材料を選択することにより優れた静電特性を感光体に付与することが可能であることが理解される。
また、比較例25、26は試験終了後の画像出力に際し、画像ボケが発生しており、実使用に耐えられない感光体であると判断される。実施例33、34に対して、比較例25、26のフィラー補強電荷輸送層はポリエチレンテレフタレート成分が含有されておらず、これにより画像ボケが回避できなかったものと判断される。
【0277】
実施例35
実施例30におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例30と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(10) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0278】
【化28】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0279】
実施例36
実施例35におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(10)をPAR/PET(5)に変えた以外は実施例35と同様に電子写真感光体を作製した。
【0280】
比較例27
実施例35におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液のPAR/PET(10)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例35と同様に電子写真感光体を作製した。
【0281】
以上のように作製した実施例35、36と比較例27および先に記載した実施例30の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。また、ドラムサンプルを固定するユニットにヒーターを取り付け、温度コントローラにより、感光体の表面温度が常に70℃となるように制御した。試験環境は、23℃/55%RHであった。評価方法としては通紙1万枚目と試験終了時の画像評価を行なった。
また、フィラー補強電荷輸送層のガラス転移温度を測定した。結果を以下の表14に記す。
【0282】
【表14】
Figure 0003781639
【0283】
表14の結果から明らかなように、実施例30、35、36の順に、フィラー補強電荷輸送層の樹脂材料に含有されるポリエチレンテレフタレート成分量が30%、10%、5%の順に少量になっている。実施例36は通紙1万枚目では良好な画像を出力しているものの、通紙試験10万枚目の画像出力では僅かに画像ボケが観察されている。一方、実施例35では試験終了時の画像評価まで異常画像の発生が伴わない良好な画像が出力されていた。これより、極めて大量の画像を出力する際、異常画像の発生を抑制するためにはポリエチレンテレフタレート成分の成分量が一定量以上必要になると解釈される。実施例35と実施例36の比較から大量印刷による異常画像の発生を防止するためにはポリエチレンテレフタレート成分が10wt%以上含有された樹脂材料を使用することが望ましいと判断される。
また、ポリエチレンテレフタレート成分が多いフィラー補強電荷輸送層ほど、そのガラス転移温度が低い結果が得られている。実施例30と実施例35との比較から、高温の状態で印刷を繰り返すと、ガラス転移温度の低いフィラー補強電荷輸送層ほどトナーの離型性に対して不利であると判断される。現行の電子写真装置では、電子写真感光体が動作時におおよそ50℃程度まで上昇することが多い。電子写真装置の小型化と高速化を図る場合、感光体はこれよりも高い温度で使用されることが予測される。この場合、ガラス転移温度の低いフィラー補強電荷輸送層は実使用上不利であると判断される。実施例30と実施例35との比較から、ポリエチレンテレフタレート成分の含有量を調節することでこのガラス転移温度をコントロールすることが可能であり、トナーの離型性に対して不利にならない設計が可能であると判断される。
また、比較例27は通紙試験1万枚目の画像出力に際し、画像ボケが発生しており、実使用に耐えられない感光体であると判断される。実施例30に対して、比較例27のフィラー補強電荷輸送層はポリエチレンテレフタレート成分が含有されておらず、これにより画像ボケが回避できなかったものと判断される。
【0284】
実施例37
実施例30におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例30と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 0.9重量部
ポリカーボネート樹脂 1.6重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製)
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0285】
【化29】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0286】
実施例38
実施例30におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例30と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 1.25重量部
下記構造式の高分子電荷輸送物質 1.25重量部
【0287】
【化30】
Figure 0003781639
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0288】
【化31】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0289】
実施例39
実施例30におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例30と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 1.25重量部
下記構造式の高分子電荷輸送物質 1.25重量部
【0290】
【化32】
Figure 0003781639
下記構造式の低分子電荷輸送物質 1.23重量部
【0291】
【化33】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0292】
以上のように作製した実施例37〜39および先に記載した実施例30の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。また、ドラムサンプルを固定するユニットにヒーターを取り付け、温度コントローラにより、感光体の表面温度が常に70℃となるように制御した。試験環境は、23℃/55%RHであった。評価方法としては通紙1万枚目と試験終了時の画像評価を行なった。
また、フィラー補強電荷輸送層のガラス転移温度を測定した。結果を以下の表15に記す。
【0293】
【表15】
Figure 0003781639
【0294】
表15の結果から明らかなように、実施例37はフィラー補強電荷輸送層のバインダー樹脂として、実施例30に用いられるポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料と、ガラス転移温度が181℃のビスフェノールZポリカーボネートを混合した材料が用いられている。また、実施例38と39は同じく、ポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料と、ガラス転移温度が170℃の高分子電荷輸送物質との混合材料が用いられている。このうち、実施例39は実施例38と比較して、フィラー補強電荷輸送層の低分子電荷輸送物質の含有量が少ない処方となっている。
実施例37〜39は試験終了後も良質な画像が得られている。これより、フィラー補強電荷輸送層中にポリエチレンテレフタレート成分を含有する樹脂材料とガラス転移温度の高い樹脂材料を併用することにより、高温環境下での使用に耐えられる感光体が作製可能であると理解される。特に高分子電荷輸送物質は低分子電荷輸送物質の含有量を低減化することが可能であり、このケースに対して極めて有用な材料と言える。更に、このようなポリマーブレンドまたはポリマーアロイによる処方は画像ボケの抑制とトナーフィルミングの防止など二つ以上の要求特性を同時に解決できる処方として、設計自由度の高い方法であると判断される。
実施例30および実施例37〜39はフィラー補強電荷輸送層中にポリエチレンテレフタレート成分が含有されているため、大量印刷後においても画像ボケの発生が抑制される効果が確認されており、感光体の高耐久化に有利な処方であると判断される。
【0295】
実施例40
実施例30におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例30と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(40) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0296】
【化34】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
シクロヘキサノン 80重量部
フェノール 140重量部
テトラクロロエタン 140重量部
【0297】
実施例41
実施例30におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例30と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(40) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0298】
【化35】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0299】
以上のように作製した実施例40、41の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採り、試験開始時において、感光体の暗部電位が−850Vとなるように帯電ローラにDC電圧を印加した。試験環境は、24℃/59%RHであった。評価方法としては試験終了時の画像評価を行なった。
また、試験開始時に感光体の表面粗さ(十点平均粗さRzおよび最大高さRmax)を測定した。結果を以下の表16に記す。
【0300】
【表16】
Figure 0003781639
【0301】
表16の結果から明らかなように、実施例40、41はフィラー補強電荷輸送層に含有される樹脂材料中にポリエチレンテレフタレート成分が40wt%混合されている。これをアノンとテトラヒドロフランの混合溶媒で溶解すると、溶液中に微少粒子が観察された。これを直接塗工した実施例40は、感光体表面が多少くすんだ感じの膜質を呈していた。一方、上記の樹脂をテトラヒドロフランの代わりにフェノールとテトラクロロロエタンの混合溶媒に変えた場合、フィラー補強電荷輸送層の塗工膜は透明平滑な膜質を呈していた。これらの差は樹脂の溶媒に対する溶解性の違いに起因するものであると考えられる。
実施例40は大量印刷後も感光体の汚染が少なく、画像ボケも画像欠陥も発生しない極めて良質な画像が得られており、高耐久な感光体であると判断される。
【0302】
実施例42
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、フィラー非補強電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、25μmのフィラー非補強電荷輸送層を形成した。フィラー補強電荷輸送層の塗工液は下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いて24時間のボールミル分散を施して調製した。尚、固有抵抗低下剤はボールミル分散開始時にフィラーの分散液に添加した。また、電荷輸送物質と樹脂材料はボールミル分散終了後に添加した。この液を電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、4.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液 10重量部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂溶液 7重量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式のビスアゾ顔料 2.5重量部
【0303】
【化36】
Figure 0003781639
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂 10重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製)
下記構造式の低分子電荷輸送物質 7重量部
【0304】
【化37】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0305】
【化38】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0306】
実施例43
実施例42におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例42と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 10重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 7重量部
【0307】
【化39】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0308】
実施例44
実施例42におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例42と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート樹脂 8重量部
(UポリマーU−100、ユニチカ社製)
下記構造式の低分子電荷輸送物質 5.6重量部
【0309】
【化40】
Figure 0003781639
オレイン酸ブチル(東京化成工業社製) 3.4重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0310】
実施例45
実施例44におけるフィラー非補強電荷輸送層用塗工液に含有されるオレイン酸ブチルを下記構造式のポリカーボネートに変えた以外は実施例44と同様に電子写真感光体を作製した。
【0311】
【化41】
Figure 0003781639
【0312】
比較例28
実施例43におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例43と同様に電子写真感光体を作製した。
【0313】
比較例29
実施例44におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例44と同様に電子写真感光体を作製した
【0314】
比較例30
実施例45におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有されるPAR/PET(30)をポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製)に変えた以外は実施例45と同様に電子写真感光体を作製した
【0315】
以上のように作製した実施例42〜45および比較例28〜30の電子写真感光体を実装用にした後、NOガス濃度50ppm、NO2ガス濃度15ppmの雰囲気下で4日間、ガス曝露試験に供した。この後、これらの感光体を一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、画像評価を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段はスコロトロン方式チャージャーを用いグリッド電圧を−850Vに設定し、試験開始時において感光体の暗部電位が−850VとなるようにチャージワイヤにDC電圧を印加した。また、フィラー非補強電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層を合わせた電荷輸送層の水蒸気透過度を測定した。試験結果を以下の表17に記す。
【0316】
【表17】
Figure 0003781639
【0317】
表17の結果から明らかなように、酸化性ガス曝露後の実施例42〜45および比較例28〜30の出力画像について、実施例42は良好であるのに対し、実施例43では僅かな地汚れが観察された。実施例42と43では感光体表面層の水蒸気透過度が大きく異なり、これが画像品質の優劣を左右したものと考えられる。
一方、実施例44および45は実施例43のフィラー非補強電荷輸送層に可塑剤および水蒸気透過度の低い樹脂を添加したものであり、これにより、感光体表面層の水蒸気透過度を低減化されていることが理解される。更に実施例44および実施例45は酸化性ガス曝露後の画像出力について良好な画像が得られている。
酸化性ガス濃度が非常に高い条件下においても感光体表面層の水蒸気透過度が高い感光体はガス曝露の影響を受けずに良好な画像が得られることが理解される。
他方、比較例28〜30の画像評価では画像ボケが観察されており、実施例43〜45との比較から、画像ボケを抑制する手段として、フィラー補強電荷輸送層にポリエチレンテレフタレート成分を含有させることが有効であると判断できる。
【0318】
実施例46
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、フィラー非補強電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、25μmのフィラー非補強電荷輸送層を形成した。フィラー補強電荷輸送層の塗工液は下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いて24時間のボールミル分散を施して調製した。尚、固有抵抗低下剤はボールミル分散開始時にフィラーの分散液に添加した。また、電荷輸送物質と樹脂材料はボールミル分散終了後に添加した。この液を電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、4.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液 10重量部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂溶液 7重量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式のビスアゾ顔料 2.5重量部
【0319】
【化42】
Figure 0003781639
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラー非補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリアリレート樹脂(UポリマーU−100、ユニチカ社製) 10重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 7重量部
【0320】
【化43】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.5重量部
下記構造式の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
【0321】
【化44】
Figure 0003781639
α−アルミナ 1.5重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
固有抵抗低下剤 0.030重量部
(BYK−P104、ビックケミー社製)
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0322】
以上のように作製した実施例46の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行なった。尚、電子写真装置の帯電手段はスコロトロン方式チャージャーを用いた。評価方法としては試験終了時の画像評価を行なった。
結果、試験終了時の画像は僅かな地汚れが認められたものの、実用上問題の感じられない品質の画像が得られた。
【0323】
実施例47
実施例46で使用した電子写真装置の帯電手段をスコロトロンチャージャーから帯電ローラに変更し、帯電ローラが感光体に接触するように配置した。この装置に実施例46で作製した感光体を搭載し、下記の帯電条件で、実施例46と同様の評価を行なった。
帯電条件:
DC電圧:−1500V
初期及び5万枚目の画像はいずれも良好であったが、5万枚後の画像には帯電ローラ汚れ(トナーフィルミング)に基づく、ごく僅かな異常画像(地汚れ)が認められた。しかしながら、連続プリント時のオゾン臭は実施例45の場合に比べて、格段に少なかった。
【0324】
実施例48
実施例47で使用した帯電ローラの両端部に厚さ50μm、幅5mmの絶縁テープを張り付け、帯電ローラ表面と感光体表面との間に空間的なギャップ(50μm)を有するように配置した。その他の条件は実施例47と全く同様に評価を行なった。
その結果、実施例47で認められた帯電ローラ汚れは、全く認められず、初期及び3万枚目の画像はいずれも良好であった。しかしながら、5万枚後にハーフトーン画像を出力した際、ごく僅かではあるが、帯電ムラに基づく画像ムラが認められた。
【0325】
実施例49
実施例48において、帯電条件を以下のように変更した以外は実施例48と同様の評価を行なった。
帯電条件:
DC電圧:−850V
AC電圧:1.7kV(ピーク間電圧)、周波数:2kHz
初期及び5万枚後の画像は良好であった。実施例46で認められた帯電ローラー汚れ、実施例48で認められたハーフトーン画像ムラは、全く認められなかった。
【0326】
実施例50
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、28μmの電荷輸送層を形成した。その上に下記の無機フィラー塗工液をジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーで2時間粉砕(塊砕)して塗工液とした。この液をスプレーで塗工して1.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
【0327】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液 10重量部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂溶液 7重量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0328】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造のビスアゾ顔料 1.5重量部
【0329】
【化45】
Figure 0003781639
τ型無金属フタロシアニン(リコー社製) 1重量部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
【0330】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂 12重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量:5万、帝人化成社製)
下記構造の低分子電荷輸送物質 10重量部
【0331】
【化46】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0332】
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.7重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 2.8重量部
【0333】
【化47】
Figure 0003781639
α−アルミナ 2.5重量部
(スミコランダムAA−04、住友化学工業社製)
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0334】
実施例51
実施例50におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例50と全く同様に作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.7重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 2.8重量部
【0335】
【化48】
Figure 0003781639
α−アルミナ(AKP−30、住友化学工業社製) 2.5重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0336】
実施例52
実施例50におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例50と全く同様に作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
PAR/PET(30) 3.7重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 2.8重量部
【0337】
【化49】
Figure 0003781639
α−アルミナ(AA−07、住友化学工業社製) 2.5重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0338】
以上のように作製した実施例50〜52の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造したレーザープリンタ(リコー社製:イプシオNX710)に搭載し、15万枚の通紙試験を行なった。試験環境は、25℃/50%RHであった。評価方法としては、試験開始時と試験終了時の画像評価を行なった。
以下に、α−アルミナの平均粒径、D/H、Db/Da、および試験終了時の画像評価結果を示す。
【0339】
【表18】
Figure 0003781639
【0340】
実施例50〜52の感光体は、15万枚もの通紙試験を経ても、画像コントラストが高く、シャープな画像が得られていた。これより、実施例50〜52の感光体は高耐久な感光体であると判断される。
これらの感光体のうち、実施例50の感光体は表面が平滑であるのに対して、実施例51と実施例52の感光体表面は、多少、ざらつき感を呈していた。これは、実施例51で用いたα−アルミナが実施例50と比較してフィラーの充填性に劣ることや、実施例52のα−アルミナの平均粒径が実施例50よりも大きく、フィラーの一部が表面へ頭出していることが原因として考えられる。
このような感光体表面の平滑性は、出力画像に対して、多少、影響を及ぼす結果が得られていることが、表18に示す結果から理解することができる。
【0341】
実施例53
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、感光層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、30μmの感光層を形成した。
その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方のフィラー補強感光層用塗工液をスプレー塗工し、厚さ1.5μmのフィラー補強感光層を設けて本発明の電子写真感光体を得た。
【0342】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂溶液 10重量部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
メラミン樹脂溶液 7重量部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
【0343】
〔フィラー非補強感光層用塗工液〕
ポリカーボネート 10重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 6重量部
【0344】
【化50】
Figure 0003781639
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 4重量部
【0345】
【化51】
Figure 0003781639
テトラヒドロフラン 100重量部
シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
1%テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0346】
〔フィラー補強感光層用塗工液〕
PAR/PET(30) 9重量部
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 5.4重量部
【0347】
【化52】
Figure 0003781639
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.6重量部
【0348】
【化53】
Figure 0003781639
α−アルミナ 2重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0349】
比較例31
実施例53におけるフィラー補強感光層を設けない点以外は、実施例53と全く同様にして電子写真感光体を作成した。
【0350】
比較例32
実施例53におけるフィラー補強感光層用塗工液を以下の表面保護層用塗工液に変更した以外は、実施例53と全く同様に作製した。
〔表面保護層用塗工液〕
ポリカーボネート 18.2部
(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)
α−アルミナ 2重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
【0351】
比較例33
実施例53におけるフィラー補強感光層を設けず、かつ、実施例53における感光層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例53と全く同様に作製した。
〔感光層用塗工液〕
ポリカーボネート 10重量部
(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質 5.4重量部
【0352】
【化54】
Figure 0003781639
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.6重量部
【0353】
【化55】
Figure 0003781639
α−アルミナ 2重量部
(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製)
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、信越化学工業社製)
テトラヒドロフラン溶液 1重量部
【0354】
以上のようにして作製した実施例53及び比較例31〜33の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio、MF2200)に搭載し、石油ストーブを灯火した環境下において5万枚の通紙試験を行なった。試験環境は、40℃/10%RHであった。また、ガステック社製のガス濃度検知管を用いたNO2濃度が4ppmの環境下で試験を行なった。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
【0355】
評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、及び試験開始時と試験終了時の画像評価を行なった。また、前述の方法により、感光体最表面層の水蒸気透過度を測定した。
結果を表19に示す。
【0356】
【表19】
Figure 0003781639
【0357】
表19の結果から明らかなように、感光層中にα−アルミナを含有し、更に、このフィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多く含有する実施例53の感光体は、5万枚通紙試験後においても、出力画像のコントラストが明瞭でかつ、カブリも認められず、耐久性に優れた感光体であるということができる。
他方、従来技術に基づいて作製した比較例32(感光体表面層として表面保護層を設けたもの)は、試験後の出力画像に画像ボケが見られたことから、実施例53と比較して耐久性に劣ると判断される。同様に、比較例33(感光層中に均一にフィラーが含有されたもの)の評価では、初期画像評価の時点から画像濃度の低下が見られており、実用性に乏しい手段であると判断される。この結果から、本発明において、フィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多くする手段が極めて重要であると判断される。
【0358】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明により、大量印刷を行なっても、異常画像の発生が見られない、常に高品質画像が得られる実用的価値に極めて優れた電子写真感光体とその製造方法およびそれを用いた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子写真装置の1例を示す模式断面図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の別の例を示す模式断面図である。
【図3】本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図である。
【図4】本発明に係る電子写真感光体の層構成を示す断面図である。
【図5】本発明に係る電子写真感光体の別の層構成を示す断面図である。
【図6】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図である。
【図8】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図である。
【図9】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図である。
【図10】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図である。
【図11】本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図である。
【図12】電荷輸送層の電荷移動度に対する電界強度依存性を表す参考図である。
【図13】フィラーの粒度分布と、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれDa、Dbとした図である。
【符号の説明】
11 電子写真感光体
12 帯電手段
13 露光手段
14 現像手段
15 トナー
16 転写手段
17 クリーニング手段
18 受像媒体
19 定着手段
1A 除電手段
1B クリーニング前露光手段
1C 駆動手段
21 導電性支持体
22 電荷発生層
23 電荷輸送層
24 感光層
25 下引き層
26 フィラー補強電荷輸送層
27 フィラー補強感光層
28 フィラー非補強感光層
29 フィラー非補強電荷輸送層

Claims (17)

  1. 導電性支持体上に直接または下引き層を介して感光層を有する電子写真感光体において、該感光層は、少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と少なくとも電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を順次設けた積層構造を有してなり、最表面側の層である電荷輸送層が少なくとも電荷輸送物質、フィラーおよびポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料を含有し、しかも該感光層中においては該最表面側の層のみにフィラーを含有していることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 導電性支持体上に直接または下引き層を介して感光層を有する電子写真感光体において、該感光層は、少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と少なくとも電荷輸送物質を含有する二層の電荷輸送層を順次設けた積層構造を有してなり、最表面側の層の電荷輸送層が少なくとも電荷輸送物質、フィラーおよびポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料を含有し、しかも該感光層中においては該最表面側の層のみにフィラーを含有していることを特徴とする電子写真感光体。
  3. 導電性支持体上に直接または下引き層を介して感光層を有する電子写真感光体において、該感光層は、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質を含有する二層の感光層からなり、最表面側の層の感光層が少なくとも電荷輸送物質、フィラーおよびポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料を含有し、しかも該感光層中においては該最表面側の層のみにフィラーを含有していることを特徴とする電子写真感光体。
  4. 感光層膜厚が27μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の電子写真感光体。
  5. ポリエチレンテレフタレート成分が樹脂材料中10wt%以上30wt%以下の割合で含有されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体。
  6. ポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料が、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアリレート、およびポリカーボネートよりなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂成分とポリエチレンテレフタレート成分との樹脂組成物であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体。
  7. 前記樹脂成分組成物がポリマーアロイであることを特徴とする請求項に記載の電子写真感光体。
  8. 前記感光層の最表面側の層に、前記フィラーとしてシリカおよび/またはα−アルミナが少なくとも1種以上含有されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体。
  9. 前記感光層の最表面側の層に含まれるフィラーの含有率が、該感光層の最表面側の層の全重量に対して10wt%以上であることを特徴とする請求項乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体。
  10. 前記感光層の最表面側の層の膜厚が2μm以上であることを特徴とする請求項乃至のいずれか1に記載の電子写真感光体。
  11. 前記感光層の最表面側の層に含まれるフィラーが表面処理剤で疎水化処理されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の電子写真感光体。
  12. 前記感光層の最表面側の層に含まれるフィラーが脂肪酸化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の電子写真感光体。
  13. 前記感光層の最表面側の層に含まれるフィラーがシランカップリング剤で表面処理されていることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載の電子写真感光体。
  14. フィラーが含まれない塗工液を予め塗布することで感光層の最表面側の層以外の層を形成し、次いでフィラーが含まれる塗工液を塗布し、感光層の最表面側の層を形成することによって、請求項1乃至13のいずれか1に記載の電子写真感光体を製造することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  15. ポリエチレンテレフタレート成分を含む樹脂材料と少なくともテトラヒドロフラン、ハロゲン化炭化水素、フェノール、N−メチルピロリドン、ピリジン、ジメチルホルムアミドのいずれか1種以上を含有する塗工液を塗布することによって、請求項1乃至13のいずれか1に記載の電子写真感光体を製造することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  16. 請求項1乃至13のいずれか1に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  17. 請求項1乃至13のいずれか1に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成装置。
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