JP3770534B2 - 電子写真感光体とその製造方法及びその電子写真感光体を用いた画像形成装置 - Google Patents

電子写真感光体とその製造方法及びその電子写真感光体を用いた画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感光層中の無機フィラーの含有率を導電性支持体側よりも表面側で高く設定すると共に、感光体表面層の水蒸気透過度を特定した電子写真感光体とその製造方法及びその電子写真感光体を用いた画像形成装置に関する。
本発明の電子写真感光体及びそれを用いた電子写真装置は、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に応用される。
【0002】
【従来の技術】
複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機などに応用される電子写真感光体を用いた電子写真方法とは、少なくとも電子写真感光体に帯電、画像露光、現像のプロセスを経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び電子写真感光体表面のクリーニングというプロセスを包含する方法である。
この電子写真方法において、電子写真感光体に要求される基本的な特性としては次のようなものが挙げられる。
1、暗所で適当な電位に帯電できること
2、暗所に於いて電荷の散逸が少ないこと
3、光照射によって速やかに電荷を散逸できること
更に、近年はこれらの特性に加えて、次のような特性が非常に強く要求されている。
4、低コストであること
5、低公害性であること
6、長期に亘り異常画像を生じることなく安定した画像が得られること
【0003】
従来、電子写真方式に於いて使用される感光体としては、導電性支持体上にセレン又はセレン合金を主体とする光導電層を設けたもの、酸化亜鉛・硫化カドミウムなどの無機系光導電材料をバインダー中に分散させたもの、アモルファスシリコン系材料を用いたものなどが一般的に知られているが、近年ではコストの低さ、感光体設計の自由度の高さ、低公害性などから有機系電子写真感光体が広く利用されるようになってきている。
有機系電子写真感光体には、ポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダーに代表される顔料分散型、電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られており、特に機能分離型の感光体が多用されている。
【0004】
この機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体を帯電した後光照射すると、光は透明な電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収され、光を吸収した電荷発生物質は電荷担体を発生し、この電荷担体は電荷輸送層に注入され、帯電によって生じている電界に従って電荷輸送層中を移動し、感光体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成するというものである。
機能分離型感光体においては、主に紫外部に吸収を持つ電荷輸送物質と、主に可視部に吸収を持つ電荷発生物質とを組み合わせて用いることが知られており、かつ有用であるが、かかる有機系電子写真感光体においても特に耐久性については必ずしも満足できるものではなくなりつつある。
【0005】
近年、電子写真プロセスはオフィスユースだけでなく、パーソナルユースにおいても幅広く用いられ始めており、プロセスの小型化やメンテナンスフリー化、トナーのリサイクル利用等の目的で、種々の新しい構成の現像工程が行われている。そして電子写真感光体が使用されるプロセスは大きく変化し、これに伴い、電子写真感光体の高耐久化に対する期待が一層高まっている。
このように、電子写真感光体が使用されるプロセスは大きく変化しつつあり、これに相応する電子写真感光体の高耐久化が期待されている。
以上の要請に対し、電子写真感光体の高耐久化を図るためには、大量印刷による画像欠陥や画像濃度低下の発生を防止する技術が必須となる。かかる異常画像の出力は、主に、感光体表面上の創傷や感光層の膜削れに起因することが周知の事実となっている。従って、このような異常画像の出力を防止するためには、第一に優れた耐摩耗性を電子写真感光体に付与する必要がある。
【0006】
従来、感光体の耐摩耗性を向上させる手段として、例えば次の(1)〜(5)の提案がされてきた。
(1)電荷輸送層の膜強度向上化による手段
例えば、特開平10−288846号公報、特開平10−239870号公報には、バインダーとしてポリアリレートを用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
また、特開平10−239871号公報、特開平9−160264号公報には、バインダーとしてポリカーボネートを用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
更に、特開平10−186688号公報にはターフェニル骨格を有するポリエステル、特開平10−186687号公報にはトリフェニルメタン骨格を有するポリエステル、特開平5−40358号公報にはフルオレン骨格を有するポリエステルをバインダーとして用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
また、特開平9−12637号公報、特開平9−235442号公報にはスチレン系エラストマーを含有したポリマーブレンドを電荷輸送層のバインダーとして用いることによる感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
しかしながら、上記の手段では、光減衰の感度の制約から感光層中に大量の低分子電荷輸送物質を含有する必要がある。低分子電荷輸送物質は膜の脆化を著しくもたらす材料であり、低分子電荷輸送物質の含有量に比例して感光層の耐刷性は急激に劣化する。このため、低分子電荷輸送物質に起因する感光体表面のキズの発生及び膜削れが激しく、電荷輸送層のバインダー樹脂の種類を特定するのみでは大きな効果を得ることができなかった。
【0007】
(2)高分子電荷輸送物質を含有することによる手段
例えば、特開平7−325409号公報には、低分子電荷輸送物質の代わりに高分子電荷輸送物質を用いる手段が提案されている。この手段は感光層中の樹脂成分比を極めて大きくすることが可能であるため、上記(1)の手段と比較して、良好な耐摩耗性が得られるように思われるが、実際には、単に低分子電荷輸送物質を高分子電荷輸送物質に変更するだけでは十分な耐刷性を感光体に付与できないケースが多い。これは、電子写真プロセスにおける感光体の摩耗が、単に機械的な負荷によってのみ引き起こされるものでは無いことに起因すると考えられる。また、かかる材料は精製が困難であるケースが少なくなく、不純物の除去が十分に施せない場合、残留電位の蓄積が懸念される。
【0008】
(3)電荷輸送層の摩擦係数低減化による手段
例えば、特開平10−246978号公報、特開平10−20534号公報には電荷輸送層中にシロキサン成分を含有することによる感光体の摩擦係数低減化が提案されている。また、特開平5−265241号公報、特開平8−328286号公報には電荷輸送層中にフッ素樹脂粒子を含有させることによる感光体の摩擦係数低減化が提案されている。
これらの提案は、感光体表面の摩擦係数を低減させることにより、感光体表面に印加される当接圧を低下せしめ、結果的に感光体の耐刷性を向上させる手段であると考えられるが、これらの滑性材料はバインダー樹脂に対する親和性が乏しいものが少なくないため、使用開始後間もなく滑性材料の殆どが表面に析出してしまい、感光体表面の滑性を持続できないケースが非常に多い。
他方、バインダー樹脂による保持性が高い滑性材料を用いた場合には、効果の度合いが弱く、更には、このような材料を添加することによる膜の脆化が激しく、むしろ、この手段は、感光体の耐摩耗性を劣化させてしまうことの方が多い技術と言える。
【0009】
(4)表面保護層を設けることによる手段
例えば、特開昭57−30846号公報、特開昭58−121044号公報、特開昭59−223443号公報、特開昭59−223445号公報には、特定範囲の粒径及び粒径分布を有する酸化スズや酸化アンチモンなどの金属又は金属酸化物を含有する保護層を設けることにより、感光体の機械的強度を向上させる手段が提案されている。
かかる手段は、感光体表面の機械強度を比較的容易に向上させることが可能であることから、感光体の高耐久化に対して有用な手段であると言える。
しかしながら、従来提案されてきた表面保護層を設けた場合、解像度の低下や感度劣化など、他の特性が犠牲になるケースが多く、実用的な手段とは言い難い。
【0010】
(5)電荷輸送層の改質による手段
例えば、特開昭46−782号公報、特開昭52−2531号公報には、感光体表面に滑性フィラーを含有させることにより、感光体表面の潤滑性を向上せしめ、結果的に感光体の長寿命化を図ることが提案されている。
また、特開昭54−44526号公報、特開昭60−57346号公報には、像保持部材の絶縁層又は光導電層中にフィラーを含ませることにより、感光体の機械的強度を向上させる手段が提案されている。
また、特開平1−205171号公報、特開平7−261417号公報には、積層型電子写真感光体における感光体表面層又は電荷輸送層中にフィラーを含有させることにより、感光体表面の硬度を高くするか、又は滑性を付与することが提案されている。
また、特開昭61−251860号公報には、電荷輸送媒質100重量部に対し、疎水性酸化チタン微粉末を1〜30重量部含有させることにより、感光体の機械的強度を向上させる手段が提案されている。
しかしながら、これらの手段に従って、感光層や電荷輸送層中に単にフィラーを添加した場合には、感度劣化や残留電位の蓄積が激しく、感光体としての機能を失ってしまうケースが少なくないため、かかる手段も実用的な手段とは言えない。
【0011】
次に、耐摩耗性以外の因子によって、画像安定性を改善する手段として次の(6)、(7)の提案がされている。
(6)酸化防止剤添加による手段
例えば、特開昭57−122444号公報、特開昭61−156052号公報に見られるような感光層中へ酸化防止剤を添加する提案がなされている。
(7)可塑剤添加による手段
例えば、特開平8−272126号公報、特開平8−95278号公報に見られるような感光層中へ可塑剤を添加する提案がなされている。
上記、(6)、(7)の手段は長期使用による感光層の帯電性劣化の抑制に有効な手段であると言えるが、上記化合物を低分子電荷輸送物質とバインダー樹脂からなる低分子分散型電荷輸送層に適用する場合、既にバインダー樹脂には低分子電荷輸送物質が高濃度に分散されているため、これら化合物の添加量は極めて制限されたものとなり、添加による大きな効果は期待できない。
また、かかる低分子分散型電荷輸送層はガラス転移点が低い場合が多く、上記化合物を添加するとガラス転移点が機内温度迄低下するものが少なく無いため、感光層の変形やトナーの融着などを誘発させてしまい、必ずしも有用な手段とは言えない。
【0012】
電子写真感光体の寿命は、特開平8−272126号公報、特開平8−292585号公報に記載のように、感光体表面の摩耗・傷などの機械的な耐久性と、静電特性面の耐久性に左右されるから、仮に耐摩耗性に優れた感光体であっても、疲労の蓄積や環境変動に対する静電特性上の耐久性が低ければ、感光体寿命は静電特性の耐久性により制限されてしまうことになる。
従って、感光体の長寿命化を図るためには、一方の耐久性を向上させても不十分であり、両者のバランスのとれた耐久性を感光体に付与する必要がある。
従来提案されてきた技術は、機械的な耐久性と静電特性上の耐久性の何れか一方を向上させようとするものであり、両者を同時に向上できる技術とは言い難い。
加えて、一方の耐久性向上化を試みた場合、他方の耐久性が劣化するような、両者の耐久性がトレードオフの関係になるケースも少なくない。
このように、従来提案されてきた技術は感光体の特定性能の向上には有用であると言えるものの、直接、感光体の長寿命化を果たす技術とは言い切れない。実際、電子写真感光体は電子写真プロセスの要素のうち、消耗品としての性格が強く、高耐久な部品と言えるものは未だ得られていないのが現状である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高耐久性で大量印刷を行っても異常画像の発生が見られず、常に高品質・高精細な画像が得られる極めて実用的価値の高い電子写真感光体とその製造方法及びその電子写真感光体を用いた画像形成装置の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
感光体の耐久性(寿命)を決める因子は、感光体の感度、残留電位、帯電性などに影響する静電特性上の耐久性と、感光体表面の摩耗・傷などの機械的な耐久性に大別することができる。
本発明者らは、これらの耐久性を高い次元で両立させる為に、始めに感光体の耐摩耗性向上化技術について、摩耗因子とその対策を検討し、次いで耐摩耗性向上化技術と両立可能な静電特性面の耐久性向上化技術について検討した。
その結果、感光層中の無機フィラーの含有率を導電性支持体側よりも表面側で高く設定すると共に、感光体表面層の水蒸気透過度を特定することにより、上記課題が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、上記課題は、次の1)〜20)の発明によって解決される。
1) 導電性支持体上に直接又は下引き層を介して、少なくとも電荷発生物質及び電荷輸送物質を一緒に分散させた混合型感光層を設けた電子写真感光体において、該混合型感光層が、α−アルミナを含まない混合型感光層、α−アルミナをフィラーとして含むフィラー補強混合型感光層(以下、フィラー補強混合型感光層という)の順に分離して積層されており、且つ、該混合型感光層の水蒸気透過度が50g・m−2・24h−1以下であることを特徴とする電子写真感光体。
2) 混合型感光層の膜厚が5〜50μmであることを特徴とする1)記載の電子写真感光体。
3) フィラー補強混合型感光層中に含まれるα−アルミナの含有率が該感光層の全重量の5〜50wt%であることを特徴とする1)又は2)記載の電子写真感光体。
4) フィラー補強混合型感光層の膜厚が0.5〜10μmであることを特徴とする3)記載の電子写真感光体。
5) 導電性支持体上に直接又は下引き層を介して、少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを順に積層させた積層型感光層を設けた電子写真感光体において、該電荷輸送層がα−アルミナを含まない電荷輸送層と、α−アルミナをフィラーとして含むフィラー補強電荷輸送層(以下、フィラー補強電荷輸送層という)の順に分離して積層されており、且つ、該電荷輸送層の水蒸気透過度が50g・m −2 ・24h −1 以下であることを特徴とする電子写真感光体。
6) 電荷輸送層の膜厚が5〜50μmであることを特徴とする5)記載の電子写真感光体。
7) α−アルミナを含まない電荷輸送層に含有される電荷輸送物質と、フィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質とのイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下であることを特徴とする5)又は6)記載の電子写真感光体。
8) α−アルミナを含まない電荷輸送層又はフィラー補強電荷輸送層が2種以上の電荷輸送物質を含有し、該2種以上の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下であることを特徴とする5)〜7)の何れかに記載の電子写真感光体。
9) α−アルミナを含まない電荷輸送層、フィラー補強電荷輸送層、α−アルミナを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層が積層された電荷輸送層の何れか1つの層の電荷移動度が、電界強度4×10 V/cmの場合に1.2×10 −5 cm /V・sec以上で、且つ下記式〔1〕に示す電荷移動度に対する電界強度依存性βが1.6×10 −3 以下であることを特徴とする5)〜8)の何れかに記載の電子写真感光体。
【数2】
Figure 0003770534
〔式中、logは常用対数、μは電荷移動度(単位:cm /V・sec)、Eは電界強度(単位:V/cm)を表す。〕
10) フィラー補強電荷輸送層中に含まれるα−アルミナの含有率が該電荷輸送層の全重量の5〜50wt%であることを特徴とする5)〜9)の何れかに記載の電子写真感光体。
11) フィラー補強電荷輸送層の膜厚が0.5〜10μmであることを特徴とする5)〜10)の何れかに記載の電子写真感光体。
12) α−アルミナの平均粒径が0.1μm以上0.7μm未満であることを特徴とする1)〜11)の電子写真感光体。
13) α−アルミナが実質的に破砕面を有さず、且つ、多面体粒子であり、且つ、α−アルミナの六方最密格子面に平行な最大粒子径をD、六方最密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5〜5.0であることを特徴とする12)記載の電子写 真感光体。
14) α−アルミナが、その累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれDa、Dbとしたときに、Db/Daの値が5以下の粒度分布を示すものであることを特徴とする12)又は13)記載の電子写真感光体。
15) α−アルミナを含まない混合型感光層塗工液又はα−アルミナを含まない電荷輸送層塗工液を予め塗布し、次いでフィラー補強混合型感光層塗工液又はフィラー補強電荷輸送層塗工液を塗布することによって、1)〜14)の何れかに記載の電子写真感光体を作製することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
16) 1)〜14)の何れかに記載の電子写真感光体を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
17) 1)〜14)の何れかに記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成装置。
18) 帯電手段として帯電ローラを用いることを特徴とする17)記載の画像形成装置。
19) 帯電ローラが感光体と非接触のものであることを特徴とする18)記載の画像形成装置。
20) 電子写真感光体に対してDC電圧にAC電圧を重畳した電圧を印加することにより電子写真感光体を帯電させる手段を有することを特徴とする18)又は19)記載の画像形成装置。
【0016】
以下、上記本発明について詳細に説明する。
まず、本発明における「混合型感光層」とは、電荷発生物質及び電荷輸送物質を一緒に分散させた感光層を意味し、「積層型感光層」とは、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とをこの順に積層させた感光層を意味するが、詳しくは後述する。
さて、従来の電子写真プロセスで生じる感光体の摩耗は、主に次の(イ)〜(ハ)の過程において発生又は加速されていると考えることができる。
(イ)クリーニング過程による摩耗
電子写真プロセスにおいて、感光体表面に残留するトナーを除去する方法として、一般にクリーニングブラシ方式やクリーニングブレード方式が用いられているが、例えばクリーニングブレード方式の場合、回転する感光体表面にクリーニングブレード先端部を所定の押圧力で物理的に食い込ませることによって、残留トナーを感光体表面から除去しており、このときのブレードの摺擦により感光体表面には摩耗やキズが生じる。この摩耗は機械的な摩耗が支配的であると考えられる。
【0017】
(ロ)帯電過程による影響
特開平10−10767号公報に記載の如く、感光体は、帯電過程において、感光体内部の僅かな欠陥部位において放電絶縁破壊を生じてしまうことがある。特に感光体が絶縁耐圧の低い有機系電子写真感光体の場合には、この絶縁破壊が著しい。
また、放電により感光体表面層を構成する樹脂等が変性して耐摩耗性の低下を引き起こし、これにより繰り返し使用した際に表面層の摩耗量が増加して感光体の寿命を縮めてしまう。
更に放電は、表面層膜厚の薄い部分ほど強くなることから、繰り返し使用において生じた摩耗傷等の部分は帯電劣化(変性)が生じ易くなり、表面層の凹凸をより大きくしてしまうため、凝着摩耗(疲労摩耗)を促進してしまうことが考えられる。
【0018】
(ハ)現像過程による摩耗
2成分現像法の場合、電子写真感光体はキャリアによる表面研磨を受け、アブレシブ摩耗を引き起こす。また、トナーに含まれる流動化剤等の添加剤には、シリカ等の硬い材料が多く、これらの添加剤が感光体に対して研磨剤として作用することが十分に考えられる。現像過程における感光体の摩耗は微小な粒子によって連続的に行われていると考えることができ、この状況は、感光体が絶えずヤスリ或いはクレンザーで磨かれている状況に喩えられる。
また、1成分現像法の場合も含めて、現像に用いるトナーは、一度感光体表面に付着し、次いで転写又はクリーニング手段によって感光体表面から離れる過程を繰り返す。このときのトナーと感光体間の付着力が無視できず、トナーが感光体表面から離れる際に感光体表面に対して凝着摩耗を引き起こしてしまうことが考えられる。
逆に、トナーと感光体間の付着力が極めて強い場合、感光体表面上にトナーが堆積し、その結果フィルミングを生じてしまうため、摩耗とは別の原因によって感光体寿命を縮めてしまう。
【0019】
電子写真感光体の耐摩耗性を向上させるためには、少なくとも上記の(イ)〜(ハ)について対策を講じる必要がある。
そこで、本発明者らはこれらの摩耗因子に対する耐久性向上化について検討したところ、従来技術に挙げた数々の手段の中でも、感光体表層中に無機フィラーを含有させる手段が有効であることを突き止めた。現時点では、その理由の詳細は不明であるが、感光体表面層について、例えば、引張強度と歪みの積で表される機械強度を向上させるだけでは一定の静電特性を維持しつつ電子写真プロセスにおける感光体の耐摩耗性を向上させることには限度があること、また、感光体表面層を有機材料のみで作製した場合、絶縁耐圧を向上させることにも限界があること、更には、電子写真プロセスで生じる感光体の摩耗は、現像過程における摩耗が極めて激しく、これは、感光体表面層の硬度が現像剤に含まれる材料と比較して桁違いに低いことに起因すると考えられること等から、無機フィラーの添加がこれらの問題点の解決に役立っているのではないかと推測される。
【0020】
本発明者らは、電子写真装置内での感光体の摩耗速度が、帯電の強弱によって大きく左右されるという知見を得ている。この知見から、電子写真装置内での感光体の摩耗については、帯電による感光体表面の変質(帯電劣化)が、機械的なストレスによってもたらされる膜削れを加速しているものと推測している。
これに基づいて無機フィラーの添加効果を解釈すると、フィラーの添加により、感光体表面に露出する高分子膜の面積は、フィラーが専有する面積分だけ低下することになり、これに伴い、帯電劣化によって生じる高分子膜の変質量が少なくなると考えられる。そしてその結果、摩耗速度が抑制されると解される。
また、添加したフィラーについても、摩耗や膜からの脱離が十分に考えられるため、フィラー自身の耐摩耗性や、高分子膜との親和性・パッキング性も感光体の耐摩耗性を左右する因子になると考えられる。
【0021】
本発明において、この構成を特徴とする感光体のなかでも、耐摩耗性向上化に有利な設計として以下の知見を見出した。
(1)感光体表面層に含有させるフィラーのうち、α―アルミナが耐摩耗性向上に有利である。
(2)感光体の耐摩耗性は、フィラーの含有量が多いものほど優れた耐久性を示し、フィラーが含有される層の全重量に対して5wt%以上のフィラーが含有される場合、実際に使用する際の耐久性向上が効果として享受される。
(3)フィラーを結着するバインダー樹脂の分子量は4.0×10以上(重量平均分子量)の場合、耐摩耗性向上に有効に寄与する。
(4)フィラーが含有される保護層は膜厚を厚くするほど、感光体の高耐久化に有利である。
【0022】
従来、保護層に含有するフィラーとして極めて多種多彩な材料が提案されてきたが、このうち、フィラーが容易に削れるものは耐久性を向上させる効果が小さい。また、フィラーに透光性が無いと、電子写真装置における書き込み光を保護層が遮蔽してしまうため、保護層の厚膜化が困難となるケースがある。
これに対して本発明では、耐摩耗性と透光性を兼ね備えたフィラーとしてα−アルミナを有効に利用する。
また、保護層の耐摩耗性はフィラー量が多いほど耐摩耗性が優れることから、保護層の膜厚とフィラー含有量の調整により、感光体の摩耗速度を所望の速度に調節することができ、これにより、例えば、画像ボケの発生を摩耗速度のコントロールによって防止することが可能となる。
また、フィラーを結着するバインダー樹脂は重量平均分子量が4.0×10以上の場合、フィラーを膜中に固定することが可能であり、フィラーの物性に応じた耐久性が発現される。
以上の知見を適用することにより、極めて高い耐摩耗性を感光体に付与することが可能となる。
【0023】
次に、本発明における有機感光体の静電特性の高性能化手段について説明する。
感光体の表面にフィラーを含有させることにより感光体の耐摩耗性を向上させようとする手段は、従来、種々の試みがなされてきた。しかしながら、これらの試みは露光部電位上昇による出力画像のコントラスト低下を伴い十分な効果を得ることが困難であった。
本発明者らはかかる感光体の静電特性の高性能化について検討し、以下の知見を得るに至った。
(1)感光層にフィラーを含有させた電子写真感光体において、フィラーを含有させた層に電荷輸送物質ないし電荷発生物質を高濃度に含有させることにより、露光部電位の上昇を抑制することが可能となる。
(2)フィラーは感光層に均一に添加するよりも、感光体表面に保護層を設け、この保護層にのみフィラーを含有させた方が露光部電位を低くできるケースが多い。
【0024】
(3)感光体の表面層にフィラーを含有させた電子写真感光体において、フィラーを含有しない感光層ないし電荷輸送層の上に、電荷輸送材料ないし電荷発生材料とフィラーを含有させた感光層又は電荷輸送層を設ける(感光層又は電荷輸送層の機能分離化を施す)ことにより、露光部電位の上昇を抑えつつ、フィラーが含有される層の厚膜化とフィラー含有率の増加が可能になる。
(4)感光体の表面層にフィラーを含有させた電子写真感光体において、フィラーを含有することによる露光部電位上昇の度合いは、含有するフィラーの種類によって大きく異なる。フィラーの中でも、結晶構造が六方最密構造型のフィラーを用いた場合に、露光部電位の上昇を抑えられるケースが多い。
(5)フィラーが含有される層に、電気抵抗を低下させる添加剤(以下、固有抵抗低下剤と称す)を含有させることにより露光部電位の上昇を抑えることができる。
(6)フィラーを疎水化処理することにより露光部電位を低下させることが可能となる。
【0025】
(7)2種以上の電荷輸送物質を組み合わせて使用することにより、露光部電位を低下させることが可能となるケースがある。また、静電特性に加えて耐ガス性、機械強度の向上、クラック防止など2つ以上の要求特性を同時に解決できるケースがある。
(8)フィラーを含有する層又はフィラーを含有しない電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これら電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下である材料を選択することにより、露光部電位の上昇を抑制することが可能となる。イオン化ポテンシャル差が0.15eVを超えると、露光部電位が高くなるケースが多い。
(9)フィラーを含有する層及び電荷輸送層に含有される電荷輸送物質が各層で異なる場合、電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下である材料を選択することにより、露光部電位を低下させることが可能となる。イオン化ポテンシャル差が0.15eVを超えると、露光部電位が高くなるケースが多い。
【0026】
表面保護層に電荷輸送物質や電荷発生物質を大量添加して、表面保護層を光導電性を示す機能層へと転化し、これにより露光部電位を低下させることが可能となる。加えて、表面保護層に固有抵抗低下剤を添加して電荷キャリアの脱トラップを促す設計をしたり、フィラーの表面を改質してトラップ形成を阻止する設計をしたりすれば、静電特性の高性能化が可能となる。
表面保護層に含有させる電荷輸送物質は高い電荷移動度を示す材料が望ましく、特に低電界領域でも高移動度を示す材料が望ましい。
また、電荷輸送層と表面保護層に含有される電荷輸送物質が異なる場合、イオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。イオン化ポテンシャル差が大きいと露光部電位の上昇をもたらすケースが多いが、これは、電荷輸送層と表面保護層に含有される電荷輸送物質が相互に相手の層へ拡散し、他層から混入する電荷輸送物質が電荷トラップとして作用してしまうことが原因と考えられる。
同じ理由により、表面保護層又は電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。
以上の本発明における技術の適用により、機械的な耐久性と静電特性に極めて優れた電子写真感光体の提供が可能となる。
【0027】
上記知見に基づく無機フィラーを含有する層構成の電子写真感光体とすることにより、感光層の膜削れが殆ど生じない場合でも、電荷輸送層が酸化性ガスに曝されること等によって、地汚れ等の異常画像や解像度の劣化を生じてしまうことがある。例えば、帯電手段にオゾン発生量の比較的多い帯電器を用いた電子写真装置ではこの影響が無視できないものとなる。また、石油ストーブや揮発性の洗浄剤を用いる環境下では、電子写真装置を繰り返し使用した場合に、NOx等の酸化性物質が感光層を汚染し、結果的に帯電性の劣化を招くことがある。従って感光体の高耐久化を図るためには、これらの対策も必要となる。
本発明者らは、電子写真感光体の高耐久化を目的として、上記の耐摩耗性向上化技術と併用できる酸化性物質に対する耐久性向上化技術について検討した結果、次の(1)(2)の知見を得るに至った。
(1)上記知見に基づく無機フィラーを含有する層構成の電子写真感光体において、繰り返し使用による静電特性の劣化は、感光体表面層の水蒸気透過度が大きいものほど顕著である。
(2)上記知見に基づく無機フィラーを含有する層構成の電子写真感光体において、感光体表面層の水蒸気透過度が大きいものほど、反応性ガス曝露による帯電性や感度の劣化が著しい。
上記知見に係る現象は、感光体の帯電性が、帯電手段から発生するオゾンやNOxなどの反応性ガスに強く影響され、これらの物質が感光体表面層中に浸透して帯電性劣化を促進させることによるものと思われる。また、感度劣化は感光体表面層を透過した反応性ガスが例えば電荷発生層等の下層に対して作用することにより加速されると考えられる。
【0028】
以上の知見から、感光体表面層の水蒸気透過度を特定値以下とすることにより、静電特性面の耐久性向上化が可能になると推測される。
かかる知見は、例えば特開平8−272126号公報に開示された電子写真感光体表面層の酸素ガス透過係数を特定した技術や、特開平5−53357号公報に開示された電子写真感光体表面保護層の窒素ガス透過係数を特定した技術からも支持される知見と言えなくもないが、これらの公報に記載の技術は、感光体表面(保護)層のガス透過性を単位膜厚当たりの透過度(即ち、透過率)により特定したものであり、透過度そのものを特定した本発明とでは物理的な意味が大きく異なる。その違いは、特に、感光層を機能分離型構造とした場合や、表面(保護)層膜厚が薄膜の場合に効果の差として顕著に現れる。
即ち、ガス透過率が低い感光体表面(保護)層は、表面層中へのガスの侵入度合いが低く、表面層そのものの劣化を抑制する効果を持つが、かかる表面層を薄膜化した場合にはガスがこの層を透過し、例えば表面層の下層に当たる電荷発生層又は表面保護層の下層に当たる電荷輸送層又は混合型感光層の下層にまで到達してしまう確率が高くなり、その結果、下層劣化による感光体の低寿命化が促進されてしまうことになる。
【0029】
近年、電子写真プロセスは高解像性が要求されるようになり、これに対応するために表面層を薄膜化する傾向にある。このような要請に対応し、且つ、充分な高耐久性を付与するためには、感光体表面層のガス透過率の特定のみでは不十分であり、ガス透過度の特定が重要になることから、本発明者らは、水蒸気透過度を特定するべく検討を行い、次の(3)の知見を得た。
(3)低分子化合物の含有量が多い感光体表面層ほど、該表面層の水蒸気透過度が低い。
かかる知見から、感光体表面層中の低分子化合物は、例えば、電荷発生能や電荷輸送能等に加え、該表面層のガスバリアー性を高める機能も担っていると考えられるので、低分子化合物を該表面層中へ添加することにより水蒸気透過度を低減できることが推察される。
【0030】
そこで、本発明者らは、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤及び低分子電荷輸送物質などの低分子化合物を添加した感光層と水蒸気透過度の関係について調査した結果、次の(4)の知見を得た。
(4)上記知見に基づく無機フィラーを含有する層構成の電子写真感光体において、感光体表面層の水蒸気透過度は、酸化防止剤や可塑剤などの低分子量の有機化合物を少量添加することにより著しく低減される。
上記知見から、更に本発明者らは次の(5)の知見を得るに至った。
(5)上記知見に基づく無機フィラーを含有する層構成の電子写真感光体において、感光体表面層の水蒸気透過度は、低分子化合物に限らずガスバリアー性の高い樹脂を添加することによっても低減できる。また、高分子化合物の分子骨格中にガスバリアー性の高い樹脂成分を共重合させることによっても同様の効果が得られる。
【0031】
また、本発明者らは感光体表面層の水蒸気透過度を低減する別の手段として次の(6)の知見を得た。
(6)感光体表面層の水蒸気透過度は膜厚に比例して低下する。ガスバリアー性の低い材料を用いる場合においても、ある範囲内において、感光体表面層を厚膜化することにより水蒸気透過度を低くすることが出来る。
更に本発明者らは感光体表面層の水蒸気透過度と地汚れの大きさの関係について検討し、感光体表面層の水蒸気透過度が50g・m−2・24h−1以下であれば地汚れは発生しないが、該水蒸気透過度が50g・m−2・24h−1を超えると地汚れの度合いが水蒸気透過度の大きさに比例して大きくなることを見出した。
【0032】
本発明の感光体層構成は、大量印刷による表面層膜厚の減少が極めて少ない為、該表面層の水蒸気透過度の変化も極めて小さい。これにより、本発明の電子写真感光体は、大量印刷に対しても特性変動が小さく、均一な画像を安定して得ることが可能となる。
また、本発明の電子写真感光体は、ガスバリアー性の高い感光体表面層を設けており、且つ耐摩耗性に優れることから、感光層全体の膜厚を薄膜化することが可能となるため、解像度の高い画像を安定して得ることも可能となる。
感光体表面層のガスバリアー性の制御は、表面層の一部又は全体に酸化防止剤などの低分子化合物を添加すること、ガスバリアー性の高い樹脂(成分)をブレンド又は共重合すること、感光体表面層を厚膜化すること等により行うことができる。
特に、本発明における、フィラー補強混合型感光層又はフィラー補強電荷輸送層を設けて感光体表面層を機能分離した層構成の感光体は、これらの層の下側に設けられるフィラーを含まない混合型感光層又は電荷輸送層について、上層に機能層が設けられているため機械強度や離型性などの強い制約を受けず、極めて自由度の高い設計をすることが可能となるので、非常に有用であると言える。
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明の有機系電子写真感光体について詳細に説明する。
図4は本発明の別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、フィラーを含まない混合型感光層27′とフィラー補強混合型感光層27とからなる混合型感光層24が設けられている。
図5は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と混合型感光層24の間に下引き層25が設けられており、混合型感光層24はフィラーを含まない混合型感光層27′とフィラー補強混合型感光層27からなっている。
図6は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、電荷発生層22の上に、無機フィラーを含まない電荷輸送層26′とフィラー補強電荷輸送層26とからなる電荷輸送層23が設けられている。
図7は本発明の更に別の層構成を有する電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21と電荷発生層22の間に下引き層25が設けられ、電荷発生層22の上に無機フィラーを含まない電荷輸送層26′とフィラー補強電荷輸送層26とからなる電荷輸送層23が設けられている。
【0034】
導電性支持体21としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状又は円筒状のプラスチック、紙などに被覆したもの、或いはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板、及び、それらを、Drawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法等の工法により素管化後、切削、超仕上げ、研磨などにより表面処理した管などを使用することが出来る。
【0035】
本発明における感光層24は、前述した、電荷発生物質及び電荷輸送物質を一緒に分散させた「混合型感光層」と、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とをこの順に積層させた「積層型感光層」の何れでもよいが、まず始めに積層型感光体について説明する。
積層型感光体における各層のうち、まず電荷発生層22について説明すると、電荷発生層は電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料の何れも用いることが出来る。
無機系材料としては、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコンなどが挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子又はハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子などをドープしたものが好ましく用いられる。
【0036】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることが出来、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系又は多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。
これらの電荷発生物質は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
【0037】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。
これらのバインダー樹脂は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。また、電荷発生層のバインダー樹脂として、高分子電荷輸送物質を用いることが出来る。更に、必要に応じて低分子電荷輸送物質を添加してもよい。
電荷発生層に併用できる電荷輸送物質には電子輸送物質と正孔輸送物質とがあり、これらは更に低分子型の電荷輸送物質と高分子型の電荷輸送物質がある。
以下、本発明では高分子型の電荷輸送物質を高分子電荷輸送物質と称する。
【0038】
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。
これらの電子輸送物質は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
【0039】
正孔輸送物質としては、電子供与性物質が好ましく用いられる。
その例としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。
これらの正孔輸送物質は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
【0040】
高分子電荷輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に例示されるポリシリレン重合体、特開平8−269183号公報、特開平9−151248号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号公報、特開平9−328539号公報、特開平9−272735号公報、特開平9−241369号公報、特開平11−29634号公報、特開平11−5836号公報、特開平11−71453号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開2000−38442号公報に例示される芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。
これらの高分子電荷輸送物質は、単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
【0041】
電荷発生層を形成する方法としては、大きく分けて真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法がある。
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法などがあり、上述した無機系材料や有機系材料からなる層が良好に形成できる。
また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系又は有機系電荷発生物質を、必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどの溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈して塗布すればよい。塗布は、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法などにより行なうことが出来る。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0042】
次に、電荷輸送層23について説明すると、電荷輸送層が感光体の表面層になる場合、地汚れの発生防止などの点から少なくとも水蒸気透過度を50g・m−2・24h−1以下とする必要がある。
ィラー補強電荷輸送層26塗工液は無機フィラーをバインダー樹脂、低分子型の電荷輸送物質、又は高分子電荷輸送物質と共に粉砕(塊砕)及び分散することにより調製する。
電荷輸送層は、電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物又は共重合体を適当な溶剤に溶解又は分散し、これを塗布、乾燥することにより形成する。
塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
電荷輸送層の膜厚は、5〜50μm程度が適当であり、好ましくは5〜35μm程度、解像力が要求される場合には5〜28μm程度が適当である。
【0043】
本発明において、バインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの高分子化合物は、単独又は2種以上の混合物として、或いはそれらの原料モノマー2種以上からなる共重合体として、更には、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。
【0044】
特に、電荷輸送層の水蒸気透過度の低減を目的として電気的に不活性な高分子化合物を用いる場合には、例えばポリエステル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体等がガスバリアー性の高いものが多いので有効である。
本発明において、電気的に不活性な高分子化合物とは、トリアリールアミン構造のような光導電性を示す化学構造を含まない高分子化合物を指す。
また、電気的に不活性な構造を有する繰り返し単位は、トリアリールアミン構造のような光導電性を示さない化学構造をもつ単量体から形成されるものであり、その代表的なものとしては、次の一般式(A)に示す単量体化合物を挙げることができる。
【化1】
HO−X−OH (A)
【0045】
上記一般式(A)のジオール化合物の具体例としては次のものが挙げられる。環状脂肪族ジオールとして、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどの脂肪族ジオールや1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールなど。
芳香環を有するジオールとして、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3′−ジメチル−4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルオキシド、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)キサンテン、エチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、ジエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、トリエチレングリコール−ビス(4−ヒドロキシベンゾエート)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−テトラメチルジシロキサン、フェノール変性シリコーンオイルなど。
【0046】
これらの樹脂を添加剤としてバインダー樹脂と併用する場合、光減衰感度の制約から、その添加量は50wt%以下とすることが好ましい。
同様の理由により、高分子電荷輸送物質とガスバリアー性の高い繰り返し単位を与えるモノマーを共重合させる場合、その共重合成分の割合は電荷輸送物質全体の60wt%以下であることが好ましい。
また、2種類以上の高分子化合物の組み合わせからなる電荷輸送層の水蒸気透過度は、個々の樹脂における水蒸気透過度の平均値に近い値を示す場合が多いため、電荷輸送層の水蒸気透過度を低減化する目的で使用する高分子化合物の水蒸気透過度は、全体の水蒸気透過度をあまり高くしないような、その高分子膜単独の水蒸気透過度が140g・m−2・24h−1(膜厚は電荷輸送層の膜厚と同じ)未満の材料を選択すると、極めて多種類の材料と組み合わせて使用することが可能となる。
ここで、140g・m−2・24h−1の水蒸気透過度は、電子写真感光体のバインダー樹脂として一般に用いられているビスフェノールAポリカーボネートの水蒸気透過度である。
【0047】
電荷輸送物質に用いることのできる材料としては、上述の低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質が挙げられる。
低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、その使用量は樹脂成分100重量部に対して40〜200重量部、好ましくは60〜100重量部程度が適当である。また、高分子電荷輸送物質を用いる場合、電荷輸送成分100重量部に対して樹脂成分が0〜500重量部、好ましくは0〜150重量部程度の割合で共重合された材料が好ましく用いられる。
また、電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましく、具体的にはイオン化ポテンシャル差を0.15eV以下とすることにより、一方の電荷輸送物質が他方の電荷輸送物質の電荷トラップとなることを防止することができる。
特に、高感度化が要求される場合、電荷輸送層の電荷移動度が高く、低電界領域における電荷移動度も十分に高くすることが好ましい。具体的には無機フィラーを含まない電荷輸送層、フィラー補強電荷輸送層、フィラー補強電荷輸送層と無機フィラーを含まない電荷輸送層が積層された電荷輸送層の何れか1つの層の電荷移動度が、電界強度4×10V/cmの場合に1.2×10−5cm/V・sec以上で、且つ電荷移動度に対する電界強度依存性が以下に定義する値として、β≦1.6×10−3を満たすことが好ましい。
【0048】
ここで、電荷移動度の電界強度依存性は次のようにして大小を判断することができる。
即ち、電界強度を低い値から高い値へ変えた場合の電荷移動度の変化を、縦軸に電荷移動度(単位:cm/V・sec)、横軸に電界強度の平方根(単位:V1/2/cm1/2)として片対数グラフにプロットする。次に、プロットを結ぶ近似直線を引く。この具体例を図9に記す。この直線の傾きが大きくなるほど、電荷移動度の電界強度依存性が大きいと解釈される。この大きさを定量的に取り扱う数式として、本発明では次の式〔1〕を用いる。
【数3】
Figure 0003770534
上記式〔1〕におけるβが大きい電荷輸送層ほど、電荷移動度の電界強度依存性が高いと解釈される。多くの場合、βが大きい電荷輸送層は低電界領域での電荷移動度が低くなる。このときの感光体の静電特性面への影響として、残留電位の上昇や帯電電位を下げて感光体を使用する場合に、応答性が劣ってしまうケースが挙げられる。
高感度化を満足させるには、電荷輸送成分の配合量を、樹脂成分100重量部に対して70重量部以上とすることが好ましい。
【0049】
本発明に用いられる無機フィラーとしては酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
その中でも、六方最密構造である無機フィラーは、静電特性面の安定性が高く、耐久性向上効果が大きい材料が多い。
特に、電子写真感光体の高耐久化を図る手段として、無機フィラーにα−アルミナを選択することが極めて有利となる。これはα−アルミナがダイヤモンドに次いで優れたモース硬度を示すこと及び透光性を有することに起因する。前者の特性は感光体の耐摩耗性向上化に対して極めて有利に作用する。後者は静電特性のパフォーマンス維持に有利であり、これにより、フィラーの含有量を増加させることが可能となる。その結果、感光体の耐摩耗性向上化に結び付けることができる。
【0050】
とりわけ、以下の特徴を有するα−アルミナは、膜中のフィラー充填性に優れるため、フィラーの含有量を高くしても表面平滑な膜形成が可能となる。
即ち、フィラーとして用いるα−アルミナは、実質的に破砕面を有さず、且つ、多面体粒子であり、且つ、α−アルミナの六方最密格子面に平行な最大粒子径をD、六方最密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上5.0以下であるα−アルミナ粒子からなるものが望ましい。更に、この条件を満たすα−アルミナについて、粒子の平均粒径が0.1μm以上0.7μm未満であり、且つ、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれDa、DbとしたときにDb/Daの値が5以下の粒度分布を示すα−アルミナが感光体の高耐久化に対して特に有用である。ここで、DaとDbは例えば、図8に示す粒径として例示することが出来る。
α−アルミナの破砕面は電荷トラップとして作用することが多く、破砕面の面積が大きいα−アルミナを用いることは静電特性上余り好ましくない。
また、ここで定義するD/H比が大きなα−アルミナは、形状がいびつであり、所定濃度以上のα−アルミナを含有させると、α−アルミナがバインダー樹脂から頭出し、感光体表面の平滑性を損ねてしまうことが多い。D/H比が0.5以上5.0以下ではこのような事態を回避できるケースが多く、表面平滑な膜形成に対して有利となる。
また、α−アルミナの粒度分布はシャープであることが好ましい。具体的には、セディグラフX線透過式粒度分布測定を行ったときの粒度分布が、先に定義したDb/Daの値として5以下とすることにより、α−アルミナの粒径を均質化でき、感光体の表面平滑化が容易となる。
【0051】
これらのフィラーは、塗工液及び塗工膜中の分散性向上を目的として、表面処理剤によるフィラー表面の改質が施されてもよい。
一般的な表面処理剤としては、シランカップリング剤、シラザン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤、ジルコニウム有機化合物、脂肪酸化合物等が挙げられる。
また、無機物による表面処理として、アルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカ処理が知られており、本発明において、これらの表面処理を適用してもよい。
このうち脂肪酸化合物とシランカップリング剤は、分散性向上のみならず感光体の静電特性の向上に対しても寄与することが多いので有用である。
フィラーの表面処理方法としては、コーティングによる改質、メカノケミカル法を利用した改質、トポケミカル法を利用した改質、カプセル化法を利用した改質、高エネルギー利用の改質、沈殿反応を利用した改質など公知の方法が用いられる。
【0052】
また、感光体の残留電位や露光部電位の一層の低減化を図る目的で、固有抵抗低下剤を電荷輸送層中に含有させることができる。
固有抵抗低下剤としては、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル(ソルビタンモノ脂肪酸エステル、脂肪酸ペンタエリスリトール等)、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、カルボン酸誘導体などを挙げることができる。
これらの化合物は単独でも2種以上の混合物としても用いることができる。
固有抵抗低下剤の使用量は、フィラー100重量部に対して0.5〜10重量部程度が適当である。使用量が0.5重量部よりも少ないと、添加による効果が小さく実用的とは言えない。
無機フィラーの粉砕(塊砕)及び分散は、ボールミル、振動ミル、サンドミル、KDミル、3本ロールミル、圧力式ホモジナイザー、超音波分散などにより行うことができる。
大粒径の無機フィラーが多数存在すると、該無機フィラーが表面に頭を出し、結果的にクリーニングブレードを傷付けてクリーニング不良を招いてしまうので、上記の方法により、無機フィラーの平均粒径を0.05〜3.0μm、好ましくは0.1〜0.7μmに粉砕(塊砕)し、分散することが好ましい。
【0053】
電荷輸送層のフィラー含有率は5〜50wt(重量)%が好ましい。5wt%未満であると、十分な耐摩耗性向上効果が得られない。一方、フィラー含有率が50wt%を上回ると表面平滑な膜形成が困難となるため、これを越さないことが好ましい。
【0054】
電荷輸送層の塗工は、フィラーを含まない感光層塗工液を塗布、乾燥することにより容易に行うことができる。
また、必要に応じて、電荷輸送層中に適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物及びレベリング剤を添加することも出来る。更に、これらの化合物は単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
低分子化合物の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.1〜150重量部、好ましくは、0.1〜30重量部、レベリング剤の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
【0055】
次に、フィラー補強電荷輸送層26を設ける場合の無機フィラーを含まない電荷輸送層26′について説明する。
本発明における無機フィラーを含まない電荷輸送層26′は積層型感光体における電荷輸送層23を2層に以上に機能分離したもののうち、後述するフィラー補強電荷輸送層26の下層に当たる部分の電荷輸送層を表す。この無機フィラーを含まない電荷輸送層26′は静電特性上悪影響を及ぼさない範囲で無機フィラーが含まれていてもよいが、その含有量は5wt%未満とすることが好ましい。無機フィラーを含まない電荷輸送層は、前記フィラー補強電荷輸送層26を設けない場合の電荷輸送層23と同様のバインダー成分を用い、同様の方法で塗布、乾燥することにより形成できる。
無機フィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層26を合わせた電荷輸送層の膜厚は、前記フィラー補強電荷輸送層26を設けない場合の電荷輸送層23と同様5〜50μm程度が適当であり、好ましくは5〜35μm程度、解像力が要求される場合には5〜28μm程度が適当である。
電荷輸送物質として用いることのできる材料も前述の低分子型の電子輸送物質及び正孔輸送物質並びに高分子電荷輸送物質が挙げられる。
また、必要に応じて、適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物及びレベリング剤を添加することも出来る。これらの化合物は単独で用いても2種以上の混合物として用いてもよい。
低分子化合物の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.1〜150重量部、好ましくは、0.1〜100重量部、レベリング剤の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
【0056】
次に、フィラー補強電荷輸送層26について説明する。
本発明におけるフィラー補強電荷輸送層とは、少なくとも電荷輸送成分とバインダー樹脂成分と無機フィラーが含まれ、電荷輸送性と機械的耐性を併せ持つ機能層を指す。フィラー補強電荷輸送層は、従来型の電荷輸送層に匹敵する高い電荷移動度を示す特徴を有し、表面保護層とは区別される。
また、フィラー補強電荷輸送層は、電荷輸送層を2層以上に機能分離した積層型感光体における表面層として用いられる。即ち、この層は無機フィラーを含まない電荷輸送層26′との積層で用いられ、単独で用いられる事はないので、無機フィラーが添加剤として電荷輸送層中に分散された場合の電荷輸送層の単一層とは区別される。
フィラー補強電荷輸送層に用いられる無機フィラーとしては先の電荷輸送層の説明で挙げた無機フィラーを用いることができる。特に、結晶構造が六方最密構造である無機フィラーに優れた耐久性を示すものが多く、とりわけ、α−アルミナが有用である。
【0057】
また、先の電荷輸送層と同様、これらの無機フィラーは塗工液及び塗工膜中の分散性向上を目的として、表面処理剤による表面の改質が施されてもよい。
フィラー補強電荷輸送層塗工液は、無機フィラーをバインダー樹脂、低分子型の電荷輸送物質又は高分子電荷輸送物質と共に粉砕(塊砕)及び分散を行って調製する。
フィラー補強電荷輸送層用塗工液を調製する際に使用できるバインダー樹脂、低分子型の電荷輸送物質又は高分子電荷輸送物質及びこれらの使用量は、先の電荷輸送層の説明で挙げた材料及び使用量と全く同様である。
特に、本発明において、フィラー補強電荷輸送層中に電荷輸送物質を含有することが極めて重要であり、これにより感度劣化及び残留電位の蓄積を防止することが可能になる。
【0058】
フィラー補強電荷輸送層塗工液を調製する際に使用できる分散溶媒は、例えば、先の電荷輸送層の説明で挙げたケトン類、エーテル類、芳香族化合物類、ハロゲン化合物類、エステル類等である。
無機フィラーの粉砕(塊砕)及び分散は、ボールミル、振動ミル、サンドミル、KDミル、3本ロールミル、圧力式ホモジナイザー、超音波分散等により行うことができる。
フィラー補強電荷輸送層に用いられる無機フィラーの平均粒径及び粒径分布は先の電荷輸送層の説明で挙げた条件と全く同様とすることが好ましい。
フィラー補強電荷輸送層に用いられるバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、エポキシ樹脂等が挙げられ、これらの樹脂は単独でも2種以上混合して用いてもよい。
【0059】
フィラー補強電荷輸送層の無機フィラーの含有量は5〜50wt%が好ましく、より好ましくは10wt%以上である。5wt%未満であると十分な耐摩耗性が得られない。一方、フィラー含有率が50wt%を上回ると、表面平滑な膜形成が困難となるため、これを超えないことが好ましい。
従来提案されてきた手段では、感光層中の無機フィラーを5wt%以上まで高濃度化させてしまうと激しい感度劣化や残留電位上昇を招き、感光体としての機能を失ってしまうケースが多かったが、フィラー補強電荷輸送層を設けることにより、静電特性上の不具合を解消することが可能となる。
フィラー補強電荷輸送層の塗工方法は、電荷輸送層23の説明で挙げた方法が用いられる。
フィラー補強電荷輸送層の膜厚は0.5〜10μmであることが好ましく、より好ましくは2μm以上である。この膜厚を0.5μm未満にすると耐久性向上効果が小さくなり有用性がなくなる。他方、この層の膜厚を2μm以上にすれば、概ねプロセスの寿命に匹敵する耐久性が得られるので極めて有用である。但し、必要以上の厚膜化は製造コストが上がるのみで、厚膜化の最大値は概ね10μm程度が適当と判断される。
このようなフィラー補強電荷輸送層の厚膜化は、従来技術では激しい感度劣化や残留電位上昇を招くことが多かったが、本発明によれば電荷輸送層の機能分離化により、容易に静電特性上の不具合を回避することが可能となる。
【0060】
フィラー補強電荷輸送層は電荷輸送層と全く同様の手段によって形成することが可能であるが、特にスプレー塗工法とリングコート法は、生産上、品質の安定性を確保し易い方法であり、好適である。
また、フィラー補強電荷輸送層とその下の層に当たる電荷輸送層との境界面が、フィラーの存在の有無以外に明確な区別ができない連続的な層構造となるように膜形成を行うことが望ましい。このような層構成をとることにより、フィラー補強電荷輸送層の膜剥離を防止することができ、加えて、電気的な界面障壁の形成も防止できる。
尚、このときのフィラー補強電荷輸送層の膜厚は、表面から支持体方向へのフィラー含有層の深さ(TF)として計測される。
フィラー含有層の深さ(TF)は、画像品質上、感光体位置に対して余りばらつかないことが好ましい。具体的にはSEMによって撮影した2000倍程度の感光層の断面写真について、5μm間隔に20カ所のフィラー含有層の深さ(TF)を測定した際、TFの標準偏差を1/5以下に抑えることが望ましく、特に画質が問われる場合には、1/7以下とすることが好ましい。
このような層構造は、フィラー補強電荷輸送層用塗工液として、次のa、bの条件を満たすものを用いることにより作製可能である。
a.塗工溶媒が電荷輸送層に用いる樹脂に対して十分な溶解能を持つもの。
b.フィラー補強電荷輸送層塗工終了後1時間放置時の塗工前後の増加質量
(X)と加熱乾燥後に測定した塗工前後の増加質量(Y)の比(X/Y)
が1.2<(X/Y)<2.0の関係を持つもの。
上記a、bの条件を満たすことにより、感光体の高耐久化に有利なフィラー補強電荷輸送層の形成が可能となる。
【0061】
次に、感光層24が混合型の場合について説明する。
混合型感光層は、後述のフィラー補強混合型感光層27を設ける場合も設けない場合も、水蒸気透過度を50g・m−2・24h−1以下とする必要がある。
混合型感光層は、感光層材料を適当な溶剤に溶解又は分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。塗工方法は先の電荷輸送層23の説明で挙げた方法が用いられる。
また、混合型感光層中の無機フィラーの含有率が導電性支持体側よりも表面側で高くなるようにする塗工方法は、先の電荷輸送層における方法と同様である。
混合型感光層に用いるバインダー樹脂、電荷発生物質、電荷輸送物質及び無機フィラーは、前述の材料を用いることができる。
また、必要により酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤やレベリング剤を添加することもでき、これらの化合物は単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
【0062】
低分子化合物の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは、0.1〜30重量部、レベリング剤の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
混合型感光層の膜厚は、5〜50μm程度が適当であり、好ましくは、10〜35μm程度、解像力が要求される場合には10〜28μm程度が適当である。
混合型感光層中、導電性支持体から最も離れた表面側の無機フィラー含有部分の膜厚(表面からの深さ)は前述したのと同様の理由から、0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは2〜10μmである。
【0063】
次に、フィラー補強混合型感光層27を設ける場合の無機フィラーを含まない混合型感光層27′について説明する。
本発明における無機フィラーを含まない混合型感光層27′は、感光層24が混合型感光層の場合において、この混合型感光層を2層以上に機能分離したもののうち、後述するフィラー補強混合型感光層27の下層に当たる部分の混合型感光層を表す。この無機フィラーを含まない混合型感光層26′は静電特性上悪影響を及ぼさない範囲で無機フィラーが含まれていてもよいが、その含有量は5wt%未満とすることが好ましい。
無機フィラーを含まない混合型感光層は、感光層材料を適当な溶剤に溶解又は分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。塗工方法は先の電荷輸送層23の説明で挙げた方法が用いられる。
無機フィラーを含まない混合型感光層に用いるバインダー樹脂、電荷発生物質、電荷輸送物質は、前述の材料を用いることができる。
また、必要により酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤やレベリング剤を添加することもでき、これらの化合物は単独でも2種以上の混合物として用いてもよい。
低分子化合物の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.1〜200重量部、好ましくは、0.1〜150重量部、レベリング剤の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
無機フィラーを含まない混合型感光層の膜厚は、5〜50μm程度が適当であり、好ましくは、10〜35μm程度、解像力が要求される場合には10〜28μm程度が適当である。
【0064】
次にフィラー補強混合型感光層27について説明する。
本発明におけるフィラー補強混合型感光層とは、少なくともバインダー樹脂成分と無機フィラーと電荷発生物質及び電荷輸送物質を含み、電荷輸送性、電荷発生機能及び機械的耐性を併せ持つ機能層を指し、従来型の感光層に匹敵する電荷移動度及び電荷発生効率を示す特徴を有するもので、表面保護層とは区別される。
また、フィラー補強混合型感光層は、混合型感光層を2層以上に機能分離した表面層として用いられる。即ち、この層は無機フィラーを含まない混合型感光層との積層で用いられ、単独で用いられる事は無いため、無機フィラーが添加剤として混合型感光層中に分散された場合の単一の混合型感光層とは区別される。
フィラー補強混合型感光層は、必要により電荷発生物質を用いる点以外は前述のフィラー補強電荷輸送層と全く同様の手段によって形成することができる。
なお、電荷発生物質を使用する場合は、電荷発生層で挙げた前述の材料を用いることができる。
フィラー補強混合型感光層の膜厚は0.5〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは2〜10μmである。
【0065】
本発明に用いられる電子写真感光体には、導電性支持体と混合型感光層又は電荷発生層との間に下引き層25を設けることが出来る。下引き層は、接着性の向上、モワレの防止、上層の塗工性の改良、残留電位の低減、導電性支持体からの電荷注入の防止などの目的で設けられる。
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に溶剤を用いて感光層を塗布することを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましく、このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂など三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
【0066】
また、下引き層には、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物、或いは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。
これらの下引き層は、前述の感光層と同様、適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することが出来る。
更に下引き層としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを使用して、例えばゾル−ゲル法などにより形成した金属酸化物層も有用である。
この他に、アルミナを陽極酸化により設けたもの、ポリパラキシリレン(パリレン)などの有機物、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、ITO、セリアなどの無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも下引き層として良好に使用できる。
下引き層の膜厚は0.1〜5μmが適当である。
【0067】
また、本発明においては、感光体表面層のガスバリアー性向上、及び耐環境性改善のため、各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質及びレベリング剤を添加することが出来る。
これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば次の(a)〜(d)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0068】
(a)フェノール系酸化防止剤
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、スチレン化フェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、シクロヘキシルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2′−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−i−プロピリデンビスフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4′−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリスメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアネート、トリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル]イソシアネート、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
【0069】
(b)アミン系酸化防止剤
フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニレン−N′−i−プロピル−p−フェニレンジアミン、アルドール−α−ナフチルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリン
(c)硫黄系酸化防止剤
チオビス(β−ナフトール)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ドデシルメルカプタン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルチオカルバメート、イソプロピルキサンテート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート
(d)リン系酸化防止剤
トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト
【0070】
各層に添加できる可塑剤として、例えば次の(a)〜(m)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
【0071】
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
【0072】
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
【0073】
(k)スルホン酸誘導体
p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
【0074】
各層に添加できる滑剤としては、例えば次の(a)〜(h)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
【0075】
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
(f)金属石けん
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
(g)天然ワックス
カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物など。
【0076】
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば次の(a)〜(f)のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなど。
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなど。
(c)ベンゾトリアゾール系
(2′−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなど。
【0077】
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシ)アクリレートなど。
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル〔2,2′−チオビス(4−t−オクチル)フェノレート〕ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
各層に添加できる低分子電荷輸送物質は、電荷発生層22の説明に記載したものと同じものを用いることが出来る。
【0078】
次に、図面に沿って本発明で用いられる電子写真装置を説明する。
図1は、本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
図1において、感光体11は、導電性支持体上に直接又は下引き層を介して混合型又は積層型感光層を設けた電子写真感光体において、該感光層が少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と無機フィラーを含有し、該感光層中の無機フィラーの含有率が導電性支持体側よりも表面側で高く設定されており、且つこの感光体表面層の水蒸気透過度が50g・m−2・24h−1以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
帯電手段12は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。帯電手段は、消費電力低減の観点から、感光体に対し接触又は近接配置したものが良好に用いられる。中でも、帯電手段への汚染を防止するため、感光体と帯電手段表面の間に適度な空隙を有し感光体近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。
但し、近接配置された帯電機構は、接触配置したものと比較してオゾンやNOxの発生量が数倍高くなるケースが多いことが指摘される。このため、近接配置された帯電機構の使用に際しては、酸化性ガス曝露による感光体の劣化防止について対策が必要である。しかしながら、本発明の電子写真感光体は、そのガス透過度が低いため、これらのガスによる特性への影響は小さく、近接配置による効果を有効に利用するこができる。
これと同じく、コロトロン、スコロトロン方式の帯電手段もオゾン発生量が接触配置の帯電手段と比較して多く、従来の感光体では、これによる特性への影響を無視できなかったが、本発明の感光体ではこれらの影響を無視出来るケースが極めて多く、これも、本発明の感光体のガス透過度が極めて低いことに起因すると考えられる。
【0079】
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
転写手段16には、一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
また、露光手段13、除電手段1A等に用いられる光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
現像手段14により感光体上に現像されたトナー15は、受像媒体18に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段17により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0080】
図2には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。
感光体11は、導電性支持体上に直接又は下引き層を介して混合型又は積層型感光層を設けた電子写真感光体において、該感光層が少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と無機フィラーを含有し、該感光層中の無機フィラーの含有率が導電性支持体側よりも表面側で高く設定されており、且つこの感光体表面層の水蒸気透過度が50g・m−2・24h−1以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
駆動手段1Cにより駆動され、帯電手段12による帯電、露光手段13による像露光、現像(図示せず)、転写手段16による転写、クリーニング前露光手段によるクリーニング前露光、クリーニング手段17によるクリーニング、除電手段1Aによる除電が繰返し行なわれる。
図2においては、感光体(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0081】
以上の電子写真プロセスは本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。
例えば、図2において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、及びその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
【0082】
以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。
プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。
プロセスカートリッジの形状等は多数挙げられるが、一般的な例として、図3に示すものが挙げられる。この場合も、感光体11は、導電性支持体上に直接又は下引き層を介して混合型又は積層型感光層を設けた電子写真感光体であって、該感光層が少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質と無機フィラーを含有し、該感光層中の無機フィラーの含有率が導電性支持体側よりも表面側で高く設定されており、且つこの感光体表面層の水蒸気透過度が50g・m−2・24h−1以下であることを特徴とする電子写真感光体である。
【0083】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、実施例及び比較例の電子写真感光体に関する水蒸気透過度、膜厚測定、イオン化ポテンシャル測定、電荷移動度測定の方法は次のとおりである。
(1)水蒸気透過度測定
表面平滑なAl板上に後述する処方により作製した感光体表面層の塗工液を塗布し、水蒸気透過度測定用の感光体表面層を作製した。水蒸気透過度測定用の感光体表面層の膜厚は感光体作成時の該表面層膜厚と同じ膜厚になるように作成した。この表面層をAl板より剥離し、水蒸気透過度測定装置L80−4000(LYSSY社製)により水蒸気透過度を測定した。
測定は、測定温度40±0.5℃で、「プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法(機械測定法)JIS K7129」による感湿センサー法により行った。
(2)膜厚測定
渦電流方式膜厚測定器FISCHER SCOPE mms(Fischer社製)により、感光体ドラム長手方向1cm間隔に膜厚を測定し、それらの平均値を感光層膜厚とした。
(3)イオン化ポテンシャル測定
表面平滑なAl(アルミニウム)板上に後述する処方により作製した電荷輸送層の塗工液を塗布し、イオン化ポテンシャル測定用のサンプルを作製した。イオン化ポテンシャルの測定は、大気雰囲気型紫外線光電子分析装置AC−1(理研計器社製)により行った。
(4)電荷移動度測定
アルミ蒸着されたPETフィルム上に後述する処方により作製した電荷輸送層の塗工液を塗布し、10μmの塗工膜を設けた。塗工膜の上に厚さ200Åの金電極を蒸着し、電荷移動度測定用の試料セルを作製した。
電荷移動度の測定は、測定環境25℃、50%RHの状態で、タイムオブフライト測定に基づき、次のようにして行った。
予め金電極側に正の電圧を印加し、窒素ガスレーザー光を金電極側から試料に照射した。その際、アルミニウム電極とアース間に入れた挿入抵抗に光電流が流れることによって生じる電位の時間変化をデジタルメモリで記録した。
デジタルメモリに出力された波形について前後から接線を引き、この交点からトランジットタイムtを求めた。波形が分散型になる場合を想定し、出力波形について両対数プロットをとり、この接線の交点からトランジットタイムtを求めた。
電荷移動度μの算出は、膜厚をL、印加電圧をVとして次の式〔2〕から決定した。
【数4】
μ=L/(V・t) 〔2〕
【0084】
実施例1
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、膜厚3.5μmの下引き層、膜厚0.2μmの電荷発生層、膜厚30μmの無機フィラーを含まない電荷輸送層を形成した。
その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方の無機フィラー補強電荷輸送層用塗工液をスプレー塗工し、膜厚1.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設けて本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂溶液 10部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
・メラミン樹脂溶液 7部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
・酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40部
・メチルエチルケトン 200部
〔電荷発生層用塗工液〕
・下記構造のビスアゾ顔料 2.5部
【化2】
Figure 0003770534
・ポリビニルブチラール(UCC:XYHL) 0.25部
・シクロヘキサノン 200部
・メチルエチルケトン 80部
〔無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)12部
・下記構造の低分子電荷輸送物質 10部
【化3】
Figure 0003770534
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
〔無機フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 4部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 3部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 0.7部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0085】
比較例1
実施例1におけるフィラー補強電荷輸送層を設けない点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【0086】
比較例2
実施例1におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を次の表面保護層用塗工液に変更した点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
〔表面保護層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 7部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 0.7部
・シクロヘキサノン 86部
・テトラヒドロフラン 300部
【0087】
比較例3
実施例1におけるフィラー補強電荷輸送層を設けず、かつ、実施例1における無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を次の無機フィラーを含むものに変更した点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)11部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 10部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2部
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
【0088】
比較例4
実施例1における無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液、及びフィラー補強電荷輸送層用塗工液で用いたポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)を、C1400(帝人化成社製Aポリカ)に変えた点以外は実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【0089】
以上のようにして作製した実施例1及び比較例1〜4の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。環境条件は25℃/50%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジは帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、及び試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。
また、前述の方法により、感光体最表面層の水蒸気透過度を測定した。
結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
Figure 0003770534
【0091】
表1の結果から明らかなように、感光層中に無機フィラーであるα−アルミナを含有し、更にこの無機フィラーの含有率を導電性支持体側よりも表面側で高くした実施例1の感光体は、5万枚通紙試験後においても、出力画像のコントラストが明瞭で、且つカブリも認められず、耐久性に優れた感光体であると言うことができる。
他方、従来技術に基づいて作製した比較例2(感光体表面層として表面保護層を設けたもの)は、試験後の出力画像に画像流れが見られたことから、実施例1と比較して耐久性に劣ると判断される。
同様に、比較例3(電荷輸送層中に均一に無機フィラーが含有されたもの)の評価では、初期画像評価の時点から画像濃度の低下が見られており、実用性に乏しい手段であると判断される。
この結果から、本発明において、無機フィラーの含有率を導電性支持体側よりも表面側で高くする手段が極めて重要であると判断される。
また、実施例1と比較例4の比較から、本発明の層構成と同様の特徴を有する感光体においても、感光体表面層のガスバリアー性が不十分なものは耐久性向上効果が小さい事が分かる。
比較例4の感光体表面層単独膜の水蒸気透過度として、51.0が得られており、本発明において、感光体表面層の水蒸気透過度が50.0以下とすることが重要であると判断される。
【0092】
実施例2
実施例1における無機フィラーを含まない電荷輸送層の膜厚を26.5μmに変えた点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【0093】
実施例3
実施例1における無機フィラーを含まない電荷輸送層の膜厚を22.0μmに変えた点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【0094】
以上のようにして作製した実施例2、3及び先の実施例1の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー製:imagio MF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。環境条件は23℃/67%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては、5万枚の通紙試験終了時に150μm幅と200μm幅の細線画像を出力し、このときの実施例1〜3の解像度と地汚れの評価を行った。
また、前述の方法により、電荷輸送層の水蒸気透過度を測定した。
結果を表2に示す。
なお、実施例1の電荷輸送層膜厚(31.5μm)は、無機フィラーを含まない電荷輸送層と無機フィラー補強電荷輸送層の膜厚の合計であり、実施例2、3の電荷輸送層膜厚(23.5μm、28.0μm)も同様である。
【0095】
【表2】
Figure 0003770534
表2の結果から明らかなように、電荷輸送層の膜厚が28μm以下の実施例2及び3では、5万枚の通紙試験終了後でも、地汚れのない極めて解像力に優れた鮮明な細線画像が得られることが分かる。
【0096】
実施例4
実施例1におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を次のものに変更した点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社) 4部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 3部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0097】
実施例5
実施例1におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を次のものに変更した点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 4部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 3部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 3部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0098】
以上のようにして作製した実施例4〜5、及び実施例1の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行った。環境条件は、25℃/50%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジは帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、及び試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。また、前述の方法により、電荷輸送層の水蒸気透過度を測定した。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
Figure 0003770534
【0100】
表3の結果から明らかなように、10万枚もの通紙試験を行った後においても、実施例4においては、出力画像のコントラストが明瞭で、カブリも認められないことから、極めて耐久性に優れた感光体であると言える。
更に、実施例5においては、10万枚通紙試験後の出力画像が良好であったことに加え、感光体表面の摩耗が少なく、極めて耐久性に優れた感光体であると言える。
実施例1、実施例4、実施例5の順に、無機フィラー補強電荷輸送層中のα−アルミナの含有量が多く、本発明において無機フィラーの含有量を増加させることにより、更なる高耐久化を実現できることが理解される。
このような効果は、本発明における層構成の場合において得られるものであり、単に感光層中の無機フィラー含有量を増加させるだけでは、露光部電位の激しい上昇を招くのみで、感光体の高耐久化には直接結び付かない。
また、例示した実施例の電荷輸送層は何れもガスバリアー性が高く、これにより感光体表面層の耐摩耗性が感光体の寿命を延ばす直接の因子に成り得ることが理解される。
【0101】
実施例6
実施例1におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を2μmとした点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【0102】
以上のようにして作製した実施例1及び実施例6の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行った。環境条件は、25℃/50%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジは帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、及び試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。また、前述の方法により、電荷輸送層の水蒸気透過度を測定した。結果を表4に示す。
【0103】
【表4】
Figure 0003770534
【0104】
表4の結果から明らかなように、10万枚もの通紙試験を行った後においても、実施例6においては、高品質な出力画像が得られ、カブリも認められず、実施例6は極めて耐久性に優れた感光体であると言うことができる。これは、本発明における無機フィラー補強電荷輸送層の耐摩耗性が、従来感光体のそれと比較して格段に優れていることに起因する。
【0105】
実施例7
実施例1における無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液、及び無機フィラー補強電荷輸送層用塗工液を次のものに変更した点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
〔無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(C1400、帝人化成社製、Aポリカ) 8部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 10部
・フェノール系酸化防止剤 4部
(Sumilizer BP76、住友化学工業社製)
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(C1400、帝人化成社製、Aポリカ) 4部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 3部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 0.7部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0106】
実施例8
実施例7における酸化防止剤を可塑剤:セバシン酸ジオクチル(東京化成工業製)に変えた点以外は実施例7と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【0107】
実施例9
実施例7における酸化防止剤を滑剤:ステアリン酸ブチル(東京化成工業製)に変えた点以外は実施例7と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【0108】
実施例10
実施例7における酸化防止剤を紫外線吸収剤:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(三共製:サノールLS−765)に変えた点以外は実施例7と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【0109】
実施例11
実施例7における酸化防止剤を下記構造の低分子電荷輸送物質に変えた点以外は実施例3と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【化4】
Figure 0003770534
【0110】
実施例12
実施例7における酸化防止剤を下記構造の電気的に不活性な高分子化合物(重量平均分子量、11万)に変えた点以外は実施例7と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【化5】
Figure 0003770534
【0111】
以上のようにして作製した実施例7〜12及び前述の比較例4の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。環境条件は、25℃/50%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジは帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、及び試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。また、前述の方法により、感光体表面層の水蒸気透過度を測定した。結果を表5に示す。
【0112】
【表5】
Figure 0003770534
【0113】
表5の結果から明らかなように、比較例4に例示される水蒸気透過度が50.0g・m−2・24h−1を超えている電荷輸送層も、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質などの低分子化合物を併用することにより、電荷輸送層の水蒸気透過度を50.0g・m−2・24h−1以下にすることが可能であることが分かる。
また、実施例12のように、実施例7で用いた酸化防止剤の代わりに、水蒸気透過度の低い高分子化合物(厚さ30μmの該高分子化合物単独膜の水蒸気透過度は32g・m−2・24h−1のもの)を併用しても、ガス透過性を低減化させる効果を奏することが分かる。
一方、比較例4において、電荷輸送層のバインダー樹脂として用いられているC1400の単独膜(膜厚:30μm)の水蒸気透過度は140.0g・m−2・24h−1であり、これよりも水蒸気透過度の低い樹脂成分を混合して用いることにより、電荷輸送層の水蒸気透過度を低減できることも分かる。
実施例7〜12では、前記各種低分子化合物の添加により極めて優れた耐摩耗性を示し、地汚れや異常画像の発生が見られない安定した高品質画像が得られる。
従来技術では、低分子化合物を多量に添加すると膜質が著しく脆化してしまうため、これらの添加剤は極僅かしか併用することができなかった。しかしながら、本発明によれば、上層に耐摩耗性を担う機能層(部位)が設けられているため、極めて多量の添加剤を併用することが可能となる。
実施例7〜12より、本発明は感光体設計上、極めて自由度の高い手段であると判断される。
【114】
実施例13
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、無機フィラーを含まない混合型感光層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、膜厚3.5μmの下引き層、膜厚30μmの混合型感光層を形成した。
その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方のフィラー補強混合型感光層用塗工液をスプレー塗工し、膜厚1.5μmのフィラー補強混合型感光層を設けて本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂溶液 10部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
・メラミン樹脂溶液 7部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
・酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40部
・メチルエチルケトン 200部
〔無機フィラーを含まない混合型感光層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)10部
・無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 6部
・次の(C)の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 4部
【化6】
Figure 0003770534
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
〔フィラー補強混合型感光層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 9部
・無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 5.4部
・前記(C)の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.6部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0115】
比較例5
実施例13におけるフィラー補強混合型感光層を設けない点以外は、実施例13と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
【0116】
比較例6
実施例1におけるフィラー補強混合型感光層用塗工液を以下の表面保護層用塗工液に変更した点以外は、実施例1と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
〔表面保護層用塗工液〕
・ポリカーボネート 18.2部
(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)
・α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0117】
比較例7
実施例13におけるフィラー補強混合型感光層を設けず、かつ、実施例13における無機フィラーを含まない混合型感光層用塗工液を次のものに変更した点以外は、実施例13と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
〔混合型感光層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)10部
・無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 5.4部
・前記(C)の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.6部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2部
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
【0118】
以上のようにして作製した実施例13及び比較例5〜7の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。環境条件は25℃/50%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、及び試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。また、前述の方法により、感光体最表面層の水蒸気透過度を測定した。
結果を表6に示す。
【0119】
【表6】
Figure 0003770534
【0120】
表6の結果から明らかなように、混合型感光層中にα−アルミナを含有し、更に、このフィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多く含有する実施例13の感光体は、5万枚通紙試験後においても、出力画像のコントラストが明瞭で、かつ、カブリも認められず、耐久性に優れた感光体であると言うことができる。
他方、従来技術に基づいて作製した比較例6(感光体表面層として表面保護層を設けたもの)は、試験後の出力画像に画像流れが見られたことから、実施例13と比較して耐久性に劣ると判断される。同様に、比較例7(混合型感光層中に均一にフィラーが含有されたもの)の評価では、初期画像評価の時点から画像濃度の低下が見られ、実用性に乏しい手段であると判断される。
この結果から、本発明において、フィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多くする手段が極めて重要であると判断される。
【0121】
実施例14
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、30μmの無機フィラーを含まない電荷輸送層を形成した。
その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方の無機フィラー補強電荷輸送層用塗工液をスプレー塗工し、厚さ1.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設けて本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂溶液 10部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
・メラミン樹脂溶液 7部
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業社製)
・酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40部
・メチルエチルケトン 200部
〔電荷発生層用塗工液〕
・次の構造のビスアゾ顔料 2.5部
【化7】
Figure 0003770534
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25部
・シクロヘキサノン 200部
・メチルエチルケトン 80部
〔無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)12部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 10部
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート 3.7部
(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 2.8部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−04、住友化学工業社製) 2.5部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0122】
実施例15
実施例14におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した点以外は、実施例14と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート 3.7部
(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 2.8部
・α−アルミナ(AKP−30、住友化学工業社製) 2.5部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0123】
実施例16
実施例14におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した点以外は、実施例14と全く同様にして電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート 3.7部
(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 2.8部
・α−アルミナ(AA−07、住友化学工業社製) 2.5部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0124】
以上のようにして作製した実施例14〜16の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し15万枚の通紙試験を行った。環境条件は、25℃/50%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジは帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては、試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。
また、前述の方法により、感光体表面層の水蒸気透過度を測定した。
表7に、α−アルミナの平均粒径、D/H、Db/Da、及び、試験終了時の画像評価結果を示す。
【0125】
【表7】
Figure 0003770534
【0126】
表7の結果から明らかなように、実施例14〜16の感光体では、15万枚もの通紙試験を経ても、画像コントラストが高くシャープな画像が得られた。
従って、実施例14〜16の感光体は高耐久な感光体であると判断される。
これらの感光体のうち、実施例14の感光体は表面が平滑であるのに対して、実施例15と16の感光体表面は、多少、ざらつき感を呈していたが、これは、実施例15で用いたα−アルミナが、実施例14のα−アルミナと比較してフィラーの充填性に劣ること、実施例16のα−アルミナの平均粒径が実施例14よりも大きく、フィラーの一部が表面へ頭出していることが原因と考えられる。
即ち、このような感光体表面の平滑性は、出力画像に対して多少影響を及ぼすことが、表7に示す結果から理解できる。
【0127】
実施例17
実施例1におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した点以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート 3.5部
(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 2.45部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−04、住友化学工業社製) 1.5部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0128】
実施例18
実施例17におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質を下記構造のものに変更した点以外は、実施例17と同様にして電子写真感光体を作製した。
【化8】
Figure 0003770534
【0129】
実施例19
実施例17におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質を下記構造のものに変更した点以外は、実施例17と同様にして電子写真感光体を作製した。
【化9】
Figure 0003770534
【0130】
以上のようにして作製した実施例17〜19の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し5万枚の通紙試験を行った。環境条件は、27℃/62%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジは帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては、試験終了時の画像評価及び露光部電位の測定を行った。
また、前述の方法により、感光体表面層の水蒸気透過度を測定した。
更に、フィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルを測定した。
結果を表8に示す。
【0131】
【表8】
Figure 0003770534
【0132】
電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルは5.48eVと測定され、フィラー補強電荷輸送層中に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルとの差は、実施例17が0.03eV、実施例18が0.17eV、実施例19が0.08eVと算出された。
表8の結果から明らかなように、イオン化ポテンシャル差が大きい実施例18では、試験終了時の露光部電位が高めであり、差が小さい実施例17と実施例19では極めて低い露光部電位が計測された。
これらの結果から、フィラー補強電荷輸送層中に含有する電荷輸送物質としてイオン化ポテンシャル差の小さい材料を選択することにより、感光体に優れた静電特性を付与できることが理解される。
【0133】
実施例20
実施例17における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した点以外は、実施例17と同様にして電子写真感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
・下記構造の高分子電荷輸送物質(量平均分子量:10.2万) 12部
【化10】
Figure 0003770534
(式中、nは化合物が重合体であることを表す。)
・下記構造の低分子電荷輸送物質 3部
【化11】
Figure 0003770534
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
【0134】
実施例21
実施例17における電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質2.45部を、下記構造の物質3部に変更した点以外は実施例17と同様にして電子写真感光体を作製した。
【化12】
Figure 0003770534
【0135】
実施例22
実施例17における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した点以外は、実施例17と同様にして電子写真感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
・下記構造の高分子電荷輸送物質(量平均分子量:10.2万) 15部
【化13】
Figure 0003770534
(式中、nは化合物が重合体であることを表す。)
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
【0136】
以上のようにして作製した実施例20〜22の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し5万枚の通紙試験を行った。尚、電子写真装置の帯電手段は帯電ローラの方式を採った。環境条件は26℃/53%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジは帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては試験終了時の画像評価及び露光部電位の測定を行った。
また、前述の方法により、感光体表面層の水蒸気透過度を測定した。加えて、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルを測定した。
結果を表9に示す。
【0137】
【表9】
Figure 0003770534
【0138】
表9の結果から明らかなように、電荷輸送層に含有される2種の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.08eVの実施例20では、電荷輸送物質が単独の実施例22よりも試験後の露光部電位が低い結果となった。
一方、実施例21は2種の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.17eVあり、実施例22よりも露光部電位が高い結果となった。
これらの結果から、2種以上の電荷輸送物質を電荷輸送層に用いる場合、それらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が有利であることが理解される。
【0139】
実施例23
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、無機フィラーを含まない電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、膜厚3.5μmの下引き層、膜厚0.2μmの電荷発生層、膜厚22μmの無機フィラーを含まない電荷輸送層を形成した。
フィラー補強電荷輸送層の塗工液は、下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用い24時間ボールミルで分散して調製した。
尚、電荷輸送物質と樹脂材料はボールミル分散開始時に添加した。
この液を、無機フィラーを含まない電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、膜厚2.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設けて本発明の電子写真感光体を得た。〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂溶液 10部
(ベッコゾール 1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
・メラミン樹脂溶液 7部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業社製)
・酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40部
・メチルエチルケトン 200部
〔電荷発生層用塗工液〕
・下記構造のビスアゾ顔料 2.5部
【化14】
Figure 0003770534
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25部
・シクロヘキサノン 200部
・メチルエチルケトン 80部
〔無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)10部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 7部
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート 3.5部
(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製)
・下記構造の低分子電荷輸送物質 2.45部
【化15】
Figure 0003770534
・α−アルミナ(スミコランダムAA−05、住友化学工業社製) 1.5部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0140】
実施例24
実施例23における電荷輸送層用塗工液の低分子電荷輸送物質7部を下記構造の低分子電荷輸送物質9部に変更した点以外は、実施例23と同様にして電子写真感光体を作製した。
【化16】
Figure 0003770534
【0141】
実施例25
実施例23における無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した点以外は、実施例23と同様にして電子写真感光体を作製した。
〔無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
・下記構造の高分子電荷輸送物質(重量平均分子量:10.2万) 15部
【化17】
Figure 0003770534
(式中、nは化合物が重合体であることを表す。)
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
【0142】
実施例26
実施例23における無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液の低分子電荷輸送物質を下記構造の低分子電荷輸送物質に変更した点以外は、実施例23と同様にして電子写真感光体を作製した。
【化18】
Figure 0003770534
【0143】
以上のようにして作製した実施例23〜26の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し5万枚の通紙試験を行った。環境条件は、27℃/60%RHであった。
尚、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジは帯電手段、現像手段、クリーニング手段、及び感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。
評価方法としては試験終了時の解像度評価を行った。
また、前述の方法により、感光体表面層の水蒸気透過度を測定した。加えて、それぞれの無機フィラーを含まない電荷輸送層の電荷移動度μ(電界強度4×10V/cm)、及び、電荷移動度の電界強度依存性の大きさβ(=logμ/E1/2)を測定した。
結果を表10に示す。
【0144】
【表10】
Figure 0003770534
【0145】
表10の結果から明らかなように、実施例23〜25は、実施例26と比較して無機フィラーを含まない電荷輸送層の電荷移動度が極めて高い感光体であることを示す測定結果が得られた。これに対応して、画像品質における解像度も向上することを示す結果が得られた。
これらの高速応答性に優れた感光体は電子写真装置におけるプロセススピードの向上や、感光体ドラムの小径化に役立つことが容易に類推される。
更に電荷移動度の電界強度依存性が小さい感光体は、残留電位の低減化に寄与するだけでなく、感光体の帯電電位を低く設定しても応答性に対する影響が小さいという利点を持つ。従って、装置の省電力化に対応できる感光体であると期待される。
【0146】
実施例27
φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、膜厚3.5μmの下引き層、膜厚0.2μmの電荷発生層、膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
フィラー補強電荷輸送層の塗工液は下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用い24時間ボールミル分散して調製した。
この液を無機フィラーを含まない電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、4.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
・アルキッド樹脂溶液 10部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業社製)
・メラミン樹脂溶液 7部
(スーパーベッカミンG−821−60、大日本インキ化学工業社製)
・酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40部
・メチルエチルケトン 200部
〔電荷発生層用塗工液〕
・下記構造のビスアゾ顔料 2.5部
【化19】
Figure 0003770534
・ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25部
・シクロヘキサノン 200部
・メチルエチルケトン 80部
〔無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量4万、帝人化成社製)10部
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 7部
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・ポリカーボネート 3.5部
(Zポリカ、粘度平均分子量4万、帝人化成社製)
・前記(B)の低分子電荷輸送物質 2.45部
・α−アルミナ(スミコランダムAA−05、住友化学工業社製) 1.5部
・固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製) 0.030部
・シクロヘキサノン 80部
・テトラヒドロフラン 280部
【0147】
比較例8
実施例27における無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液及びフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した点以外は、実施例27と同様にして電子写真感光体を作製した。
〔無機フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
・下記構造の高分子電荷輸送物質(重量平均分子量:10.2万) 15部
【化20】
Figure 0003770534
(式中、nは化合物が重合体であることを表す。)
・テトラヒドロフラン 100部
・シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)の
1%テトラヒドロフラン溶液 1部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
・下記構造の高分子電荷輸送物質(重量平均分子量:10.2万)5.95部
【化21】
Figure 0003770534
(式中、nは化合物が重合体であることを表す。)
・α−アルミナ(スミコランダムAA−05、住友化学工業社製) 1.5部
・固有抵抗低下剤(BYK−P104、ビックケミー社製) 0.030部
・テトラヒドロフラン 280部
・シクロヘキサノン 80部
【0148】
以上のようにして作製した実施例27及び比較例8の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行った。環境条件は23℃/67%RHであった。
尚、電子写真装置の帯電手段はスコロトロン方式チャージャーを用いた。
評価方法としては試験終了時の画像評価を行った。また、前述の方法により、感光体表面層の水蒸気透過度を測定した。
結果を表11に示す。
【0149】
【表11】
Figure 0003770534
【0150】
表11から明らかなように、実施例27では、試験終了時の画像に僅かな地汚れが認められたものの、実用上問題のない品質の画像が得られたのに対し、比較例8では出力画像にカブリが見られた。
この結果から、オゾン発生量の多いスコロトロン方式のチャージャーを用いても、本発明の感光体ではその影響が小さいと判断される。また、比較例8の感光体では、画像評価においてカブリが観察される評価結果となったが、これは比較例8の高い水蒸気透過度に起因するものであると推測される。
【0151】
実施例28
実施例27で使用した電子写真装置の帯電手段をスコロトロンチャージャーから帯電ローラに変更し、帯電ローラが感光体に接触するように配置した。
この装置に実施例27で作製した感光体を搭載し、DC電圧:−1500Vの帯電条件で、実施例27と同様にして評価を行った。
その結果、初期及び5万枚目の画像は何れも良好であったが、5万枚後の画像には帯電ローラ汚れ(トナーフィルミング)に起因するごく僅かな異常画像(地汚れ)が認められた。しかしながら、連続プリント時のオゾン臭は実施例27の場合に比べて格段に少なかった。
【0152】
実施例29
実施例28で使用した帯電ローラの両端部に、厚さ50μm、幅5mmの絶縁テープを張り付け、帯電ローラ表面と感光体表面との間に空間的なギャップ(50μm)を有するように配置した。
その他の条件は実施例28と全く同様にして評価を行った。
その結果、実施例28で認められた帯電ローラ汚れは全く認められず、初期及び5万枚目の画像は何れも良好であった。しかしながら、5万枚後にハーフトーン画像を出力した際、ごく僅かではあるが、帯電ムラに基づく画像ムラが認められた。
【0153】
実施例30
実施例29の評価において、帯電条件を以下のように変更した点以外は実施例29と同様にして評価を行った。
<帯電条件>
・DC電圧:−850V
・AC電圧:1.7kV(ピーク間電圧)、周波数:2kHz
その結果、初期及び5万枚後の画像は良好であり、実施例29で認められた帯電ローラ汚れ、実施例29で認められたハーフトーン画像ムラは、全く認められなかった。
【0154】
実施例1〜30及び比較例2〜8の感光体の断面について2000倍のSEM写真を撮った。感光体表面に対して平行方向に5μm間隔に感光体表面からのフィラー膜厚の深さ(TF)を20点読み取り、その平均値と標準偏差を算出した。
尚、実施例1〜30及び比較例2〜8の作製において、フィラー補強電荷輸送層塗工終了後1時間放置時における塗工前後の増加質量(X)と加熱乾燥後における塗工前後の増加質量(Y)の比(X/Y)が次の条件を満足する条件下でフィラー補強電荷輸送層の塗工を行った。
【数5】
1.2<(X/Y)<2.0
結果を表12に示す。
【0155】
【表12】
Figure 0003770534
【0156】
表12の結果に示されるように、実施例及び比較例で製造した感光体は何れもフィラー層の膜厚のばらつきが小さく、且つ、フィラー補強電荷輸送層とその下の層に当たる電荷輸送層との境界面がフィラーの存在の有無以外に明確な区別ができない連続的な層構造を示し、塗膜品質上何れも良好であった。
【0157】
【発明の効果】
本発明によれば、高耐久性で大量印刷を行っても異常画像の発生が見られず、常に高品質・高精細な画像が得られる極めて実用的価値の高い電子写真感光体とその製造方法及びその電子写真感光体を用いた画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る電子写真装置の例を示す模式断面図。
【図2】 本発明に係る電子写真装置の別の例を示す模式断面図。
【図3】 本発明に係る電子写真装置の更に別の例を示す模式断面図。
【図4】 本発明に係る電子写真感光体の別の層構成を示す断面図。
【図5】 本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図6】 本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図7】 本発明に係る電子写真感光体の更に別の層構成を示す断面図。
【図8】 フィラーの粒度分布測定と、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれDa、Dbとした代表図。
【図9】 電荷輸送層の電荷移動度に対する電界強度依存性を判断するための一例を示す参考図。
【符号の説明】
図1〜3について
11 電子写真感光体
12 帯電手段
13 露光手段
14 現像手段
15 トナー
16 転写手段
17 クリーニング手段
18 受像媒体
19 定着手段
1A 除電手段
1B クリーニング前露光手段
1C 駆動手段
図4〜について
21 導電性支持体
22 電荷発生層
23 電荷輸送層
24 感光層
25 下引き層
26 フィラー補強電荷輸送層
26′ 無機フィラーを含まない電荷輸送層
27 フィラー補強混合型感光層
27′ フィラーを含まない混合型感光層

Claims (20)

  1. 導電性支持体上に直接又は下引き層を介して、少なくとも電荷発生物質及び電荷輸送物質を一緒に分散させた混合型感光層を設けた電子写真感光体において、該混合型感光層が、α−アルミナを含まない混合型感光層、α−アルミナをフィラーとして含むフィラー補強混合型感光層(以下、フィラー補強混合型感光層という)の順に分離して積層されており、且つ、該混合型感光層の水蒸気透過度が50g・m−2・24h−1以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 混合型感光層の膜厚が5〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  3. フィラー補強混合型感光層中に含まれるα−アルミナの含有率が該感光層の全重量の5〜50wt%であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真感光体。
  4. フィラー補強混合型感光層の膜厚が0.5〜10μmであることを特徴とする請求項3記載の電子写真感光体。
  5. 導電性支持体上に直接又は下引き層を介して、少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを順に積層させた積層型感光層を設けた電子写真感光体において、該電荷輸送層がα−アルミナを含まない電荷輸送層と、α−アルミナをフィラーとして含むフィラー補強電荷輸送層(以下、フィラー補強電荷輸送層という)の順に分離して積層されており、且つ、該電荷輸送層の水蒸気透過度が50g・m −2 ・24h −1 以下であることを特徴とする電子写真感光体。
  6. 電荷輸送層の膜厚が5〜50μmであることを特徴とする請求項5記載の電子写真感光体。
  7. α−アルミナを含まない電荷輸送層に含有される電荷輸送物質と、フィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質とのイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下であることを特徴とする請求項5又は6記載の電子写真感光体。
  8. α−アルミナを含まない電荷輸送層又はフィラー補強電荷輸送層が2種以上の電荷輸送物質を含有し、該2種以上の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下であることを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の電子写真感光体。
  9. α−アルミナを含まない電荷輸送層、フィラー補強電荷輸送層、α−アルミナを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層が積層された電荷輸送層の何れか1つの層の電荷移動度が、電界強度4×10 V/cmの場合に1.2×10 −5 cm /V・sec以上で、且つ下記式〔1〕に示す電荷移動度に対する電界強度依存性βが1.6×10 −3 以下であることを特徴とする請求項5〜8の何れかに記載の電子写真感光体。
    Figure 0003770534
    〔式中、logは常用対数、μは電荷移動度(単位:cm /V・sec)、Eは電界強度(単位:V/cm)を表す。〕
  10. フィラー補強電荷輸送層中に含まれるα−アルミナの含有率が該電荷輸送層の全重量の5〜50wt%であることを特徴とする請求項5〜9の何れかに記載の電子写真感光体。
  11. フィラー補強電荷輸送層の膜厚が0.5〜10μmであることを特徴とする請求項5〜10の何れかに記載の電子写真感光体。
  12. α−アルミナの平均粒径が0.1μm以上0.7μm未満であることを特徴とする請求項1〜11の電子写真感光体。
  13. α−アルミナが実質的に破砕面を有さず、且つ、多面体粒子であり 、且つ、α−アルミナの六方最密格子面に平行な最大粒子径をD、六方最密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5〜5.0であることを特徴とする請求項12記載の電子写真感光体。
  14. α−アルミナが、その累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれDa、Dbとしたときに、Db/Daの値が5以下の粒度分布を示すものであることを特徴とする請求項12又は13記載の電子写真感光体。
  15. α−アルミナを含まない混合型感光層塗工液又はα−アルミナを含まない電荷輸送層塗工液を予め塗布し、次いでフィラー補強混合型感光層塗工液又はフィラー補強電荷輸送層塗工液を塗布することによって、請求項1〜14の何れかに記載の電子写真感光体を作製することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
  16. 請求項1〜14の何れかに記載の電子写真感光体を用いることを特徴とするプロセスカートリッジ。
  17. 請求項1〜14の何れかに記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成装置。
  18. 帯電手段として帯電ローラを用いることを特徴とする請求項17記載の画像形成装置。
  19. 帯電ローラが感光体と非接触のものであることを特徴とする請求項18記載の画像形成装置。
  20. 電子写真感光体に対してDC電圧にAC電圧を重畳した電圧を印加することにより電子写真感光体を帯電させる手段を有することを特徴とする請求項18又は19記載の画像形成装置。
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