複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機などに応用されている電子写真感光体を用いた電子写真方法とは、少なくとも電子写真感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び電子写真感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる方法である。
電子写真感光体が、この電子写真方法において要求される基本的な特性としては
1)暗所で適当な電位に帯電できること
2)暗所に於いて電荷の散逸が少ないこと
3)光照射によって速やかに電荷を散逸できること
などが挙げられる。近年はこれらの特性に加えて、
4)低コストであること
5)低公害性であること
6)長期にわたり異常画像の生じない安定した画像が得られること
が非常に強く要求されている。
従来、電子写真方式に於いて使用される感光体としては導電性支持体上にセレンないしセレン合金を主体とする光導電層を設けたもの、酸化亜鉛、硫化カドミウムなどの無機系光導電材料をバインダー中に分散させたもの、及び非晶質シリコン系材料を用いたものなどが一般的に知られているが、近年ではコストの低さ、感光体設計の自由度の高さ、低公害性などから有機系電子写真感光体が広く利用されるようになってきている。
有機系電子写真感光体には、ポリビニルカルバゾ−ル(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダーに代表される顔料分散型、電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られており、特に機能分離型の感光体が注目されている。
この機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体を帯電した後光照射すると、光は透明な電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収され、光を吸収した電荷発生物質は電荷担体を発生し、この電荷担体は電荷輸送層に注入され、帯電によって生じている電界にしたがって電荷輸送層中を移動し、感光体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。機能分離型感光体においては、主に紫外部に吸収を持つ電荷輸送物質と、主に可視部に吸収を持つ電荷発生物質とを組み合わせて用いることが知られており、かつ有用である。しかしながら、かかる有機系電子写真感光体においても特に耐久性においては必ずしも満足できるものではなくなりつつある。
近年、電子写真装置は画像形成装置の中でも高速記録性に優れていることから、オフィスユースだけでなくパーソナルユースにおいても幅広く用いられ始めている。これに伴い、装置の小型化やマシントラブルの抑制化に対する具体化が市場から強く要求されている。また、情報技術の著しい発達により、電子写真装置もこれに応じた進化が要求されている。具体的には、ランニングコストの低減、印刷速度の一層の高速化、モノクロプリントからカラープリントを可能とする装置のカラー化が要求されている。カラー化では風景や人物画像等が自然な風合いで印刷することを可能とする高画質化に対する期待も強い。
この様な要求に対して、例えば、帯電器はスコロトロンチャージャーから帯電ローラを用いるケースが多い。これにより、低消費電力、帯電時のオゾン発生量の低減が得られる。更に、画質の安定性を確保するため、帯電器にAC成分を重畳する方式も多用されている。
また、画像品質の向上を目的として、モノクロ装置、カラー装置共に現像剤は小粒径化が進められている。印刷インキの染・顔料の粒径がサブミクロンであることを見ると、電子写真装置に使われている現行の現像剤は非常に大きな粒子であって、今後、更なる小粒径化の課題が残されている。
また、プロセスの小型化、高速化対応では、感光体は高線速で使用されることになる。
このような市場の要求に応える装置の対応は何れも電子写真感光体に対して、ハザードの大きな対応となる。このような装置の対応を可能として、市場の要求に応えるためには電子写真感光体の高耐久化が最重要課題となる。
有機系電子写真感光体において、大量印刷を行っても常に安定した出力画像を得るためには、大量印刷による画像欠陥ないし画像濃度低下、更には、解像度低下の発生を防止する技術が必須となる。かかる異常画像の出力は主として、感光体表面上の創傷や感光層の膜削れに起因することは周知の事実である。したがって、大量印刷を行っても異常画像の出力を防止するためには、優れた機械強度と耐摩耗性を有機系電子写真感光体に付与する必要がある。同時に、静電特性上のパフォーマンスを確保する必要がある。
これまでに、感光体表層の耐摩耗性を向上する手段として、以下に記す提案がされている。
(1)電荷輸送層の膜強度向上化による手段:例えば、電荷輸送層のバインダーとしてポリアリレートを用いること(例えば、特許文献1、2参照)により、また、電荷輸送層のバインダーとしてポリカーボネート樹脂を用いること(例えば、特許文献3、4参照)により、また、ターフェニル骨格を有するポリエステル樹脂(例えば、特許文献5参照)、トリフェニルメタン骨格を有するポリエステル樹脂(例えば、特許文献6参照)、フルオレン骨格を有するポリエステル樹脂(例えば、特許文献7参照)を電荷輸送層のバインダーとして用いることにより、更に、スチレン系エラストマーを含有したポリマーブレンドを電荷輸送層のバインダーとして用いること(例えば、特許文献8、9参照)により、それぞれ感光体の耐摩耗性向上化が提案されている。
しかしながら、上記の手段では、光減衰の感度の制約から感光層中に大量の低分子電荷輸送物質を含有する必要がある。低分子電荷輸送物質は膜の脆化を著しくもたらす材料であり、低分子電荷輸送物質の含有量に比例して感光層の耐刷性は急激に劣化する。このため、低分子電荷輸送物質に起因する感光体表面のキズの発生、および膜削れが激しく、電荷輸送層のバインダー樹脂の種類を特定するのみでは大きな効果を得ることができなかった。
(2)高分子電荷輸送物質を含有することによる手段:例えば、低分子電荷輸送物質の代わりに高分子電荷輸送物質を用いる手段が提案されている(例えば、特許文献10参照)。かかる手段は感光層中の樹脂成分比を極めて大きくすることが可能であるため、上記(1)の手段と比較して、良好な耐摩耗性を示すことが期待される。
しかしながら、単に低分子電荷輸送物質を高分子電荷輸送物質に変更するだけでは十分な耐刷性を感光体に付与できないケースが多い。これは、電子写真装置における感光体の摩耗が機械的な負荷に起因するのみならず、帯電過程における電気的な劣化や帯電器から発生するオゾン等の酸化性物質が感光体表面の変質を来すことで、摩耗速度を加速してしまうことが原因と考えられる。例えば、帯電の均一化に有利とされるAC重畳帯電では、設定する周波数回、感光体表面は帯電電荷で叩かれることが想定される。電子写真装置における感光体の耐摩耗性を向上させるためにはこのような負荷に耐えうる感光体表面の工夫が必要となる。また、高分子電荷輸送物質は精製が困難であるケースが少なくなく、不純物の除去が不十分な場合、残留電位の蓄積が懸念される。
(3)電荷輸送層の摩擦係数低減化による手段:例えば、電荷輸送層中にシロキサン成分を含有すること(例えば、特許文献11、12参照)により、また、電荷輸送層中にフッ素樹脂粒子を含有すること(例えば、特許文献13、14参照)により、それぞれ感光体の摩擦係数の低減化が提案されている。これらの提案は感光体表面の摩擦係数を低減させることにより、感光体表面に印加される当接圧を低下せしめ、この結果、感光体の耐刷性を向上させる手段であると考えられる。
しかしながら、これらの滑性材料は電荷輸送層中のバインダー樹脂との親和性に乏しいものが少なくない。このため、使用し始めてから間もなく滑性材料の殆どが表面に析出し、感光体表面の低摩擦係数化が持続されないケースが非常に多い。他方、バインダー樹脂中への保持性が高い滑性材料を用いた場合、感光体表面の摩擦係数低減化の度合いが弱く、更には、この様な材料を添加することによる電荷輸送層の脆化が激しく、むしろ、かかる手段は感光体の耐摩耗性を劣化させてしまうことが多いと言える。
(4)表面保護層を設けることによる手段:例えば、特定範囲の粒径および粒径分布を有する酸化スズや酸化アンチモンなどの金属または金属酸化物を含有する保護層を設けることにより、感光体の機械的強度を向上させる手段が提案されている(例えば、特許文献15、16、17及び18参照)。かかる手段は、感光体表面の機械強度を比較的容易に向上させることが可能であることから、感光体の高耐久化に対して有用な手段であると言うことができる。
しかしながら、表面保護層を設けた場合、解像度の低下を来すことが多い。帯電器から発生するイオン性物質を感光体表面に付着させた状態で使用した場合、感光体表面に対して横方向への電荷のリークを招いてしまい、結果、解像度の低下を招くと考えられる。摩耗が全く生じない感光体は、感光体の繰り返しないし長期間の使用によって生じた感光体表面の汚染が摩耗ゼロの性質によって除去できず、表面抵抗の低下が回避できなくなる。このような異常な事態は表面保護層を設ける感光体によく見られる現象である。このことから、感光体の耐摩耗性は高い方が好ましいが、極端に高いことは実用的でないと判断される。
表面保護層を用いる感光体において、摩耗速度をコントロールすることは容易とは言えない。加えて、表面保護層を設けると残留電位の上昇を招くことから、その膜厚は極めて薄い膜厚での使用に限定される。また、装置の小型化に対応した小径の感光体ドラムに対して感光体に保護層を設けようとした場合、ドラム形状の曲率が高く保護層のみが剥離してしまう事態を招くこともある。この様に、表面保護層を設ける手段は、設計上、制約が多く適当な手段とは言えない。
(5)電荷輸送層の改質による手段:例えば、感光体表面に滑性フィラーを含有させることにより、感光体表面の潤滑性を向上せしめ、その結果、感光体の長寿命化を図ることが提案されている(例えば、特許文献19、20参照)。また、像保持部材の絶縁層ないし光導電層中にフィラーを含ませることにより、感光体の機械的強度を向上させる手段が提案されている(例えば、特許文献21、22参照)。また、積層型電子写真感光体における感光体表面層または電荷輸送層中にフィラーを含有させることにより、感光体表面の硬度の強化、または滑性を付与することが提案されている(例えば、特許文献23、24参照)。更に、電荷輸送媒質100重量部に対し、疎水性酸化チタン微粉末を1重量部から30重量部含有することにより、感光体の機械的強度を向上させる手段が提案されている(例えば、特許文献25参照)。
しかしながら、これらの手段に従って感光層や電荷輸送層中に単にフィラーを添加した場合、感度劣化や残留電位の蓄積が激しく、感光体としての機能を失ってしまうケースが少なくない。フィラーを感光層中に分散させた感光体の多くは、フィラーが分散される感光層の膜厚増加に対して急激な残留電位の上昇を招いてしまう。このため、以上の技術に加えて残留電位を低減する何らかの対策を講じる必要がある。
機械的耐久性および静電特性の向上により、表面層の削れ量が減少する場合、異常画像の発生が重大な問題点としてクローズアップされる。異常画像の発生は、例えば、高温高湿下で吸湿した紙を使用した場合、酸化劣化した樹脂及び表面付着物が感光体表面から十分除去しきれなくなることで感光体表面抵抗の低下を引き起こし、結果、出力画像が流れたようになる。
かかる問題に対し、従来、次に記す技術が提案されてきた。例えば、感光体表面層に用いるバインダーを高分子量体と低分子量体との混合樹脂を用いることが提案されている(例えば、特許文献26、27参照)。
これはバインダーの内、低分子量成分を削ることで感光体表面に付着した低抵抗物質を共に除去しようとする設計思想で、効果が認められるものの感光体の高耐久化には限度があると容易に推測される。
また、感光体表面層、または、感光層中に酸化防止剤や可塑剤を添加する手段も異常画像発生の抑制化技術として提案されている(例えば、特許文献28、29及び30参照)。また、類似の手段として感光層中へヒンダードアミン、ヒンダードフェノール化合物を添加する手段も提案されている(例えば、特許文献31、32参照)。
これらの手段は一部効果が認められるものの、残留電位の蓄積性に不利に作用するケースや膜の脆化を促進するケースが少なくなく、これらの副作用を押さえ込める感光体性能が別に要求される。
また、電子写真感光体に用いる電荷輸送物質をイオン化ポテンシャルが特定値範囲の電荷輸送物質に限定することで画像ボケやトナーのフィルミング発生を抑制する手段が提案されている(例えば、特許文献33参照)。この他に、感光体表面の汚染を予防することで課題を解決しようとする手段が提案されている。例えば、感光体表面の滑性を向上させる手段が提案されている(例えば、特許文献34、35参照)。また、これに類似した技術として、例えば、感光層にシリコーン系樹脂やフッ素系樹脂を含有させる手段が提案されている(例えば、特許文献36参照)。
しかしながら、これらの手段の中には添加した潤滑剤が酸化されやすいものもあり、残留電位の蓄積性に対して不利となるケースが少なくない。また、これらの手段は装置の工夫を加えないと滑性が持続できないケースも多く、プロセスに対して適用範囲の狭い技術と言える。また、多くの場合、滑性成分はバインダー成分との親和性が低く、滑性成分が膜の脆化を促進してしまうことがあり、異常画像発生の抑制と感光体の高耐久化を両立する手段としては不十分であると判断される。
このように、従来技術では感光体の設計のみで異常画像発生の抑制と高耐久化を両立することは困難であり、これらの技術について更にプロセス上の工夫を組み込んだ具体化が図られている。
例えば、感光体の帯電方式を注入帯電方式とする手段やヒーターを設ける手段が提案され(例えば、特許文献37参照)、感光体表面に潤滑剤を供給する手段を設けることによる上記の両立化が提案されている(例えば、特許文献38参照)。これらの手段は装置の小型化や低コスト化に対して不利な手段であり、昨今の市場ニーズに応える技術とは言い難い。
以上に記載した如く、感光体の高耐久化について提案されてきた従来の技術は、耐摩耗性、あるいは感光体表面の汚染防止に関わる一面を向上しようとするものであり、これらの耐久性を同時に向上させる技術とは言い難い。加えて、一方の耐久性向上化を試みた場合、他方の耐久性が劣化するような、両者の耐久性がトレードオフの関係になるケースが少なくない。従来提案されてきた技術は感光体の特定性能の向上には有用であると言えるものの、直接、感光体の長寿命化(高耐久化)を果たす技術とは言いきれない。実際、電子写真感光体は電子写真装置のうち、使い捨ての消耗品としての性格が強く、長寿命な部品と言えるものは未だ得られていないのが現状である。
特開平10−288846号公報
特開平10−239870号公報
特開平10−239871号公報
特開平9−160264号公報
特開平10−186688号公報
特開平10−186687号公報
特開平5−040358号公報
特開平9−12637号公報
特開平9−235442号公報
特開平7−325409号公報
特開平10−246978号公報
特開平10−20534号公報
特開平5−265241号公報
特開平8−328286号公報
特開昭57−30846号公報
特開昭58−121044号公報
特開昭59−223443号公報
特開昭59−223445号公報
特開昭46−782号公報
特開昭52−2531号公報
特開昭54−44526号公報
特開昭60−57346号公報
特開平1−205171号公報
特開平7−261417号公報
特開昭61−251860号公報
特開平11−311876号公報
特開2000−131855号公報
特開平5−119488号公報
特開平8−95278号公報
特開2000−214618号公報
特開平10−301303号公報
特開平2000−10323号公報
特開平11−249333号公報
特開平7−295278号公報
特開平8−184976号公報
特開平6−75386号公報公報
特開平11−202525号公報
特開平11−19087号公報
以下図面に沿って本発明で用いられる有機系電子写真感光体を詳細に説明する。図6は本発明の電子写真感光体の一例を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21上に感光層24が設けられている。感光層24は感光体表面側ほど、フィラー濃度が高く、その濃度分布は傾斜性をもつ特徴を有する。図7は図6に示した電子写真感光体において、導電性支持体21と感光層24の間に下引き層25が設けられたものである。
図8は別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、感光層24は2層に機能分離された構成を有する。フィラーを含まない感光層28の上にフィラー補強感光層27が設けられている。感光層24は感光体表面側にフィラーが局在する特徴をもつ。図9は図8に示した電子写真感光体において、導電性支持体21と感光層24の間に下引き層25が設けられたものである。
図10は更に別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、導電性支持体21上に電荷発生層22と電荷輸送層23との積層からなる感光層24が設けられている。感光層24(図10では、電荷輸送層23)は感光体表面側ほど、フィラー濃度が高く、その濃度分布は傾斜性をもつ特徴を有する。図11は図10に示した電子写真感光体において、導電性支持体21と感光層24の間に下引き層25が設けられたものである。
図12は更に別の構成の電子写真感光体を模式的に示す断面図であり、電荷輸送層23が2層に機能分離された構成を有する。フィラーを含まない電荷輸送層29の上にフィラー補強電荷輸送層26が設けられている。電荷輸送層23は感光体表面側にフィラーが局在する特徴をもつ。図13は図12に示した電子写真感光体において、導電性支持体21と感光層24の間に下引き層25が設けられたものである。
導電性支持体21としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの酸化物を、蒸着またはスパッタリングによりフィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙などに被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらをDrawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法などの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研磨などで表面処理した管などを使用することができる。
本発明における感光層24は、混合型感光層でも、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層させた積層型感光層でも用いることができる。ここで、本発明における混合型感光層とは電荷発生物質と電荷輸送物質を一緒に分散させた感光層を意味する。積層型感光層とは、電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを順に積層させた感光層を意味する。これらの感光層を設けてなる電子写真感光体を本発明では混合型感光体あるいは積層型感光体と呼ぶこととする。
はじめに積層型感光体について説明する。
積層型感光体における各層のうち、はじめに、電荷発生層22について説明する。電荷発生層は、積層型感光層の一部を指し、露光によって電荷を発生する機能をもつ。この層には含有される化合物のうち、電荷発生物質を主成分とする。電荷発生層は必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
無機系材料には、結晶セレン、アモルファスセレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファスシリコンなどが挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子などをドープしたものが良好に用いられる。
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾ−ル骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として、高分子電荷輸送物質を用いることができる。更に、必要に応じて低分子電荷輸送物質を添加してもよい。
電荷発生層に併用できる電荷輸送物質には電子輸送物質と正孔輸送物質とがあり、これらは更に低分子型の電荷輸送物質と高分子型の電荷輸送物質がある。以下、本発明では高分子型の電荷輸送物質を高分子電荷輸送物質と称する。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表される電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。たとえば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
また、以下に表される高分子電荷輸送物質を用いることができる。たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に例示されるポリシリレン重合体、特開平8−269183号公報、特開平9−151248号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号、特開平9−328539号公報、特開平9−272735号公報、特開平9−241369号公報、特開平11−29634号公報、特開平11−5836号公報、特開平11−71453号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開2000−38442号公報に例示される芳香族ポリカーボネートが挙げられる。これらの高分子電荷輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法などが用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。また、キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどの溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート法、リングコート法、ビードコート法などを用いて行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
次に電荷輸送層23について説明する。電荷輸送層は電荷発生層で生成した電荷を注入、輸送し、帯電によって設けられた感光体の表面電荷を中和する機能を担う積層型感光層の一部を指す。電荷輸送層は感光体の最表面層として用いられるケースが殆どであり、電荷輸送性と機械強度について高い性能が要求されることが多い。電荷輸送層の主成分は電荷輸送成分とこれを結着するバインダー成分と言うことができる。本発明において、この電荷輸送層は後述のフィラー補強電荷輸送層26を設けない場合、少なくともα−アルミナを含む無機フィラーを含有させ、且つ、感光体表面側にこの無機フィラーの含有率を多くする必要がある。
はじめに、フィラー補強電荷輸送層26を設けない場合の電荷輸送層23について説明する。
このケースの電荷輸送層には少なくともα−アルミナを含む無機フィラーとバインダー成分、および電荷輸送成分(低分子型の電荷輸送物質、ないし高分子電荷輸送物質)が含有される。
本発明において、バインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの高分子化合物は単独または2種以上の混合物として、また、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。特に、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート樹脂は透明性が高く、無機フィラーとの結着性に優れ、且つ、機械強度に優れる材料が多く有用である。
本発明において電荷輸送成分として用いることのできる化合物には電子輸送物質と正孔輸送物質とがあり、これらは更に低分子型の電荷輸送物質と高分子型の電荷輸送物質がある。以下、本発明では高分子型の電荷輸送物質を高分子電荷輸送物質と称する。
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
正孔輸送物質としては、以下に表される電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。たとえば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
また、以下に表される高分子電荷輸送物質を用いることができる。たとえば、ポリ−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール環を有する重合体、特開昭57−78402号公報等に例示されるヒドラゾン構造を有する重合体、特開昭63−285552号公報等に例示されるポリシリレン重合体、特開平8−269183号公報、特開平9−151248号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号、特開平9−328539号公報、特開平9−272735号公報、特開平9−241369号公報、特開平11−29634号公報、特開平11−5836号公報、特開平11−71453号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開2000−38442号公報に例示される芳香族ポリカーボネートが挙げられる。これらの高分子電荷輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
また、電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を含有させる場合、これらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましく、具体的にはイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下とすることで、一方の電荷輸送物質が他方の電荷輸送物質の電荷トラップとなることを防止することができる。特に、高感度化が要求される場合、電荷輸送層の電荷移動度が高く、低電界領域における電荷移動度も十分に高くすることが好ましい。具体的には電荷輸送層の電荷移動度が電界強度4×105V/cmの場合に1.2×10-5cm2/V・sec以上で、且つ電荷移動度に対する電界強度依存性が以下に定義する値として、β≦1.6×10-3を満たすことが好ましい。
ここで、電荷移動度の電界強度依存性は次の様にして大小を判断することができる。すなわち、電界強度を低い値から高い値へ変えた場合の電荷移動度の変化を、縦軸に電荷移動度(単位:cm2/V・sec)、横軸に電界強度の平方根(単位:V1/2/cm1/2)として片対数グラフにプロットする。次に、プロットを結ぶ近似直線を引く。この具体例を図15に記す。この直線の傾きが大きくなるほど、電荷移動度の電界強度依存性が大きいと解釈される。この大きさを定量的に取り扱う数式として、本発明では下記の数3を用いる。
(数3) β=logμ/E1/2
数3におけるβが大きい電荷輸送層ほど、電荷移動度の電界強度依存性が高いと解釈される。多くの場合、βが大きい電荷輸送層は低電界領域での電荷移動度が低くなる。このときの感光体の静電特性面の影響として、残留電位の上昇や帯電電位を下げて感光体を使用する場合、応答性が劣ってしまうケースが挙げられる。
高速応答性を満足する電荷輸送成分の成分量として、更に具体的には樹脂成分100重量部に対して70重量部以上含有させることが好ましい。
電荷輸送層塗工液を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類等を挙げることができる。これらの溶媒は単独としてまたは混合して用いることができる。
本発明に用いられる無機フィラーとしてはα−アルミナの他に、酸化ベリリウム、高温型石英、酸化亜鉛、w−窒化ホウ素等の結晶構造としてα−アルミナと同じ結晶構造を持つ六方稠密構造の物質が用いられる。この他に、酸化チタン(単斜晶系、正方晶系、斜方晶系、三斜晶系)、γ−アルミナ(立方晶系)、η−アルミナ(立方晶系)、δ−アルミナ(斜方晶系)、χ−アルミナ(等軸晶系)、κ−アルミナ(斜方晶系)、θ−アルミナ(単斜晶系)、シリカ(三方晶系、斜方晶系、正方晶系、立方晶系、単斜晶系)、酸化ジルコニウム(単斜晶系、正方晶系)、酸化スズ(正方晶系、立方晶系、斜方晶系、立方晶系)、酸化インジウム(立方晶系)、酸化アンチモン(立方晶系、斜方晶系)、酸化マグネシウム(立方晶系)、c−窒化ホウ素(立方晶系)、酸化カルシウム(立方晶系)、硫酸バリウム(斜方晶系)等もα−アルミナと併用することができる。但し、本発明の効果を得る為に、α−アルミナ以外のフィラーを併用する場合、その混合比率は使用するフィラー全重量に対して50%未満とすることが望ましい。
本発明では、電子写真感光体の高耐久化を図る手段として、無機フィラーにα−アルミナを選択することが極めて重要である。これはα−アルミナがダイアモンドに次いで優れたモース硬度を示すことと、α−アルミナを含有する塗工膜に透光性が備わることに起因する。前者の特性は感光体の耐摩耗性向上化に対して極めて有利に作用する。後者は静電特性のパフォーマンス維持に有利であり、これにより、フィラーの含有量を増加させることや塗工膜の厚膜化が可能となる。その結果、感光体の耐摩耗性向上化に結びつけることができる。
また、α−アルミナは温湿度の環境変動に対しても安定であり、これを用いた感光体は湿度上昇に起因する画像ボケの抑制に対して極めて優れた効果を示す。このため、ドラムヒーター等の画像ボケを防止する手段が不要であり、装置の小型化、低コスト化に極めて有用な材料となる。
とりわけ、以下の特徴を有するα−アルミナは、膜中のフィラー充填性に優れるため、フィラーの含有量を高くしても表面平滑な膜形成が可能となる。すなわち、フィラーとして用いるα−アルミナは、実質的に破砕面を有さず、且つ、多面体(8面体以上)粒子であり、且つ、α−アルミナの六方稠密格子面に平行な最大粒子径をD、六方稠密格子面に垂直な粒子径をHとした場合に、D/H比が0.5以上5.0以下であるα−アルミナ粒子からなるものが望ましい。更に、この条件を満たすα−アルミナについて、粒子の平均粒径が0.1μm以上0.7μm未満であり、且つ、累積粒度分布の微粒側からの累積10%、累積90%の粒径をそれぞれDa、DbとしたときにDb/Daの値が5以下の粒度分布を示すα−アルミナが感光体の高耐久化に対して特に有用である。ここで、DaとDbは例えば図14に示す粒径として例示することができる。
α−アルミナの破砕面は電荷トラップとして作用することが多く、破砕面の面積が大きいα−アルミナを用いることは静電特性上余り好ましくない。また、ここで定義するD/H比が大きなα−アルミナは、形状がいびつであり、所定濃度以上のα−アルミナを含有させると、α−アルミナがバインダー樹脂から頭出し、感光体表面の平滑性を損ねてしまうことが多い。D/H比が0.5以上5.0以下ではこのような事態を回避できるケースが多く、表面平滑な膜形成に対して有利となる。
さらに、α−アルミナの粒度分布はシャープであることが好ましい。具体的には、セディグラフX線透過式粒度分布測定をおこなったときの粒度分布が、先に定義したDb/Daの値として5以下とすることにより、α−アルミナの粒径を均質化でき、感光体の表面平滑化が容易となる。
以上の条件を満足するα−アルミナとしては、例えば、原料に遷移アルミナまたは熱処理により遷移アルミナとなるアルミナ粉末を、塩化水素を含有する雰囲気ガス中にて焼成することにより得られるα−アルミナ粉末を挙げることができ、特開平6−191833号公報あるいは特開平6−191836号公報等に記載のα−アルミナの単結晶粒子よりなるアルミナ純度が99.99%以上の高純度であるアルミナ粉末の製法に準じて得られる。これに対して、例えばバイヤー法によって得られるアルミナ粉末は、微粒子化する粉砕工程によって、得られる粒子に破砕面を生じてしまうため、上記の方法によって得られるアルミナと比較して、静電特性上不利に作用することがある。
これらのフィラーは塗工液および塗工膜中の分散性向上を目的として、表面処理剤によるフィラー表面の改質が施されてもよい。一般的な表面処理剤としては、シランカップリング剤、シラザン、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネートカップリング剤、ジルコニウム有機化合物、脂肪酸化合物等が挙げられる。また、無機物による表面処理として、フィラー表面のアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカ処理が知られており、本発明において、これらの表面処理を適用してもよい。このうち脂肪酸化合物とシランカップリング剤は分散性向上のみならず、感光体の残留電位の低減に対しても寄与することが多く有用である。
フィラーの表面処理方法はコーティングによる改質、メカノケミカル法を利用した改質、トポケミカル法を利用した改質、カプセル化法を利用した改質、高エネルギー利用の改質、沈殿反応を利用した改質など公知の方法が用いられる。
また、感光体の残留電位や露光部電位の一層の低減化を図る目的で、固有抵抗低下剤を無機フィラーと併用することができる。固有抵抗低下剤として、例えば、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル(ソルビタンモノ脂肪酸エステル、脂肪酸ペンタエリスリトール等)、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、カルボン酸誘導体を挙げることができる。これらの化合物は単独でも2種以上の混合物としても用いることができる。固有抵抗低下剤の使用量は無機フィラー100重量部に対して、0.5〜10重量部程度が適当である。使用量が0.5重量部よりも低いと、添加による効果が小さく実用的とは言えない。
無機フィラーの粉砕(塊砕)および分散は、ボールミル、サンドミル、KDミル、3本ロールミル、圧力式ホモジナイザー、超音波分散等により行うことができる。大粒径の無機フィラーが多数存在すると、この無機フィラーが表面に頭出し、結果、クリーニング手段を傷つけ、クリーニング不良を招いてしまう。このため、上記の方法により無機フィラーの粉砕(塊砕)および分散を行う際、無機フィラーの平均粒径は0.7μm未満とすることが好ましい。また、無機フィラーを必要以上に粉砕すると、無機フィラーの分散工程において、無機フィラーの再凝集が生じ、結果、平均粒径の極めて大きな粒子が生成するケースが極めて多い。このことから、無機フィラーの平均粒径は0.1μm以上とすることが好ましい。
電荷輸送層のフィラー含有率は10〜50wt(重量)%が好ましい。10wt%未満であると、十分な耐摩耗性向上効果が得られない。一方、フィラー含有率が50wt%を上回ると、表面平滑な膜形成が困難となるため、これを越さないことが好ましい。従来提案されてきた手段では、感光層中の無機フィラーを10wt%以上まで高濃度化させると激しい感度劣化や残留電位上昇を招き、感光体としての機能を失ってしまうケースが多かったが、本発明のように感光層中の無機フィラーの含有率を導電性支持体側よりも表面側で高くすることにより、静電特性上の不具合を解消することが可能となり、同時に十分な高耐久化が可能となる。
電荷輸送層の表面側の無機フィラーを含む部分の膜厚(表面からの深さ)は、0.5〜10μmであることが好ましい。無機フィラーを含む部分の膜厚を0.5μm未満にすると、耐久性向上効果が小さくなり有用性がなくなる。他方、この部分の膜厚を2μm以上にすれば、概ねプロセスの寿命に匹敵する耐久性が得られることが多く、極めて有用な手段となる。但し、必要以上の厚膜化は製造コストが上がるのみで、耐久性向上の寄与も小さくなるため、厚膜化の最大値は概ね10μm程度が適当と判断される。
本発明において、このような電荷輸送層中に含有される無機フィラーが、感光体表面側に濃度が高くなる濃度傾斜を有するか、表面側に無機フィラーが局在していることが重要であり、より具体的にはフィラーを含む厚み(N)とフィラーを含まない電荷輸送層の厚み(P)の比(N/P)が0.0125〜0.67の範囲となることが望ましい。電荷輸送層に含まれる無機フィラーが膜厚に対して濃度勾配を持つ場合も、N/Pの比が0.125〜0.67の範囲を満たすことが好ましい。
このような無機フィラーを含む部分の厚膜化は、従来技術では激しい感度劣化や残留電位上昇を招くことが多かったが、本発明によれば容易に静電特性上の不具合を回避することが可能となる。
上記の特徴を有する電荷輸送層の塗工は、例えば、上利泰幸、島田雅之、古賀智裕、川崎吉包、Polymer Preprints,Japan,46,No.11,2689,1997に記載の溶液拡散法を用い、予め、無機フィラーを含まない電荷輸送層塗工液を塗布し、次いで、感光体を塗工溶媒の沸点より高い温度で加熱した状態にて無機フィラーが含まれる電荷輸送層塗工液を塗布することにより感光体表面層に無機フィラーの含有率が高い電荷輸送層を形成することができる。このような塗工方法は、2回以上に分けて塗工液を塗布しても塗布後形成される電荷輸送層の界面が不明瞭で、且つ、無機フィラーの含有率に濃度傾斜が生じる場合が多い。
また、必要により、電荷輸送層中に後述する酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、高分子化合物100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。特に、塗工時におけるフィラーの凝集を防止することが容易であるスプレー塗工が好適である。電荷輸送層の膜厚は、15〜40μm程度が適当であり、好ましくは15〜30μm程度、解像力が要求される場合、25μm以下が適当である。
次に、フィラー補強電荷輸送層26を設ける場合の電荷輸送層23について説明する。この場合の電荷輸送層23はフィラー補強電荷輸送層26とフィラーを含まない電荷輸送層29の2層に機能分離された特徴を持つ。ここで、フィラーを含まない電荷輸送層29は、フィラー補強電荷輸送層26におけるフィラー含有率(フィラー補強電荷輸送層の全重量に対する含有フィラーの重量百分率)よりもフィラー含有率が小さい、若しくは、この層(29)の全重量に対してフィラー含有率が10%未満である電荷輸送層として特徴づけられる。
フィラーを含まない電荷輸送層は、電荷輸送成分とバインダ−成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成出来る。塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。フィラーを含まない電荷輸送層の膜厚は、15〜40μm程度が適当であり、好ましくは15〜30μm程度、解像力が要求される場合、25μm以下が適当である。
また、フィラー補強電荷輸送層の厚み(N)とフィラーを含まない電荷輸送層の厚み(P)の比(N/P)が0.0125〜0.67の範囲となる膜厚であることが望ましい。フィラーを含まない電荷輸送層の上層にフィラー補強電荷輸送層が積層されているため、この構成におけるフィラーを含まない電荷輸送層の膜厚は、実使用上の膜削れを考慮した電荷輸送層の厚膜化の設計が不要であり、薄膜化も可能となる。
フィラーを含まない電荷輸送層の塗工溶媒に用いることのできる溶媒は、例えば、フィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げたケトン類、エーテル類、芳香族類、ハロゲン類およびエステル類等の溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独として、または混合して用いることができる。
フィラーを含まない電荷輸送層に用いることのできる樹脂成分は、例えば、前述の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの高分子化合物は単独または2種以上の混合物として、また、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。特に、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂は透明性が高く有用である。また、フィラーを含まない電荷輸送層はこの上層にフィラー補強電荷輸送層が積層されるため、フィラーを含まない電荷輸送層は従来型の電荷輸送層に対する機械強度の必要性が要求されない。このため、ポリスチレンなど、透明性が高いものの機械強度が多少、低い材料で従来技術では適用が難しいとされた材料も、フィラーを含まない電荷輸送層のバインダー成分として有効に利用することができる。
電荷輸送成分として用いることのできる材料も前記の低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質および高分子電荷輸送物質が挙げられる。低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、この使用量は樹脂成分100重量部に対して40〜200重量部、好ましくは50〜100重量部程度が適当である。また、高分子電荷輸送物質を用いる場合、電荷輸送成分100重量部に対して樹脂成分が0〜200重量部、好ましくは80〜150重量部程度の割合で共重合された材料が好ましく用いられる。
特に、フィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に含有する電荷輸送物質が異なる場合、各層に含有する電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。具体的には0.15eV以下であることが望ましい。同様に、2種以上の電荷輸送物質を用いる場合、これらのイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下となる材料を選択することが好ましい。またこのケースでは、両層に同一の電荷輸送物質が含有し、且つ、どちらか一層に別の電荷輸送物質が含有されても良いが、異なる電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルの差は0.15eV以下であることが好ましい。
特に、高速応答性が要求される場合、電荷輸送層の電荷移動度が高く、低電界領域における電荷移動度も十分に高くすることが好ましい。具体的には電荷輸送層の電荷移動度が電界強度4×105V/cmの場合に1.2×10-5cm2/V・sec以上で、且つ電荷移動度に対する電界強度依存性が先に定義した値として、β≦1.6×10-3を満たすことが好ましい。これを満たす電荷輸送成分の成分量として、樹脂成分100重量部に対して60重量部以上含有させることが好ましい。
また、必要により適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することも出来る。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
続いて、フィラー補強電荷輸送層26について説明する。
本発明におけるフィラー補強電荷輸送層とは、少なくとも電荷輸送成分とバインダー樹脂成分と無機フィラーが含まれ、電荷輸送性と機械的耐性を併せ持つ感光体の表面側に設けられた電荷輸送層の一部を指す。フィラー補強電荷輸送層は、従来型の電荷輸送層に匹敵する高い電荷移動度を示す特徴を有し、これは表面保護層と区別される。また、フィラー補強電荷輸送層は、積層型感光体における電荷輸送層を2層以上に機能分離した表面層として用いられる。すなわち、この層はフィラーの含まれない電荷輸送層との積層で用いられ、単独で用いられることが無い。このため無機フィラーが添加剤として電荷輸送層中に均一分散された場合の電荷輸送層の単一層と区別される。
フィラー補強電荷輸送層の膜厚は0.5μm以上であることが好まく、より好ましくは2μm以上が好ましい。このフィラー補強電荷輸送層の膜厚を0.5μm以下にすると、耐久性向上効果が小さく、有用性に欠けてしまう。他方、この層の膜厚を2μm以上にすると、装置の寿命に匹敵する耐久性が得られることが少なくなく、極めて有用な手段となる。
かかる厚膜化は、従来技術では激しい感度劣化や残留電位上昇を招くことが多かったが、本発明による電荷輸送層の機能分離化により、容易に静電特性上の不具合を回避することが可能となる。但し、必要以上の厚膜化は製造コストが上がるのみで、耐久性向上の寄与も小さくなるため、この層の厚膜化の最大値は概ね10μm程度が適当と判断される。
以上から、フィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層の膜厚の比率はフィラー補強電荷輸送層の厚み(N)とフィラーを含まない電荷輸送層の厚み(P)とした場合、その比(N/P)が0.0125〜0.67の範囲となる膜厚であることが望ましい。
フィラー補強電荷輸送の塗工溶媒に使用できる分散溶媒は、例えば、電荷輸送層の説明に挙げたケトン類、エーテル類、芳香族類、ハロゲン類およびエステル類等の溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独として、または混合して用いることができる。
フィラー補強電荷輸送層に用いられるバインダー成分としては、フィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層で用いられる高分子化合物が挙げられる。これらの高分子化合物は単独または2種以上の混合物として、また、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。特に、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂は透明性が高く、無機フィラーとの結着性に優れ、且つ機械強度に優れる材料が多く有用である。
フィラー補強電荷輸送層に用いられる無機フィラーとしてはフィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げた無機フィラーを用いることができる。特に、前述したα−アルミナは、静電特性面の安定性が高く、耐久性向上効果が大きく本発明においてこれを用いることが重要である。
これらのフィラーは塗工液および塗工膜中の分散性向上を目的として、前述と同様、表面処理剤によるフィラー表面の改質が施されてもよい。このうち、脂肪酸化合物とシランカップリング剤は分散性向上のみならず、感光体の静電特性の向上に対しても寄与することが多く有用である。
また、感光体の残留電位や露光部電位の一層の低減化を図る目的で、前述と同様にして、固有抵抗低下剤を無機フィラーと併用することができる。固有抵抗低下剤は単独でも2種以上の混合物としても用いることができる。固有抵抗低下剤の使用量は無機フィラー100重量部に対して、0.5〜10重量部程度が適当である。使用量が0.5重量部よりも低いと、添加による効果が小さく実用的とは言えない。
フィラーの粉砕(塊砕)および分散は、ボールミル、振動ミル、サンドミル、KDミル、3本ロールミル、圧力式ホモジナイザー、超音波分散等により行うことができる。大粒径の無機フィラーが多数存在すると、この無機フィラーが表面に頭出し、結果、クリーニング手段を傷つけ、クリーニング不良を招いてしまう。このため、上記の方法により無機フィラーの粉砕(塊砕)および分散を行う際、無機フィラーの平均粒径は0.7μm未満とすることが好ましい。また、無機フィラーを必要以上に粉砕すると、無機フィラーの分散工程において、無機フィラーの再凝集が生じ、結果、平均粒径の極めて大きな粒子が生成するケースが極めて多い。このことから、無機フィラーの平均粒径は0.1μm以上とすることが好ましい。
フィラー補強電荷輸送層に用いられるフィラーの平均粒径および粒径分布はフィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げた条件と同じとすることが好ましい。
フィラー補強電荷輸送層のフィラー含有量は10wt%以上が好ましい。10wt%以下であると、十分な耐摩耗性が得られないケースが極めて多い。フィラー含有率の上限は50wt%程度となるケースが多い。従来、提案されてきた手段では、感光層中のフィラーを10wt%以上高濃度化させてしまうと、激しい感度劣化や残留電位上昇を招き、感光体としての機能を失ってしまうケースが多かったが、電荷輸送層を、フィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に機能分離することにより、以上の静電特性上の不具合を解消することが可能となる。
フィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質の種類、およびこれらの使用量はフィラー補強電荷輸送層を設けない場合の電荷輸送層の説明に挙げた材料および使用量と同じ条件で用いることができる。
フィラーを含まない電荷輸送層とフィラー補強電荷輸送層に含有する電荷輸送物質が異なる場合、各層に含有する電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差は小さい方が好ましい。具体的には0.15eV以下であることが望ましい。同様に、フィラー補強電荷輸送層に2種以上の電荷輸送物質を用いる場合、これらのイオン化ポテンシャル差が0.15eV以下となる材料を選択することが好ましい。
また、高速応答性が要求される場合、フィラー補強電荷輸送層の電荷移動度は高くすることが有利で更に、低電界領域における電荷移動度も十分に高くすることが好ましい。具体的な条件としては、先に記載した条件であることが望ましい。
また、必要により適当な酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤などの低分子化合物およびレベリング剤を添加することも出来る。これらの化合物は単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。低分子化合物の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは、0.1〜20重量部、レベリング剤の使用量は、樹脂成分100重量部に対して0.001〜5重量部程度が適当である。
フィラー補強電荷輸送層の形成方法として、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。特にスプレー塗工法とリングコート法は生産上、品質の安定性を確保し易い方法であり、好適である。
また、フィラー補強電荷輸送層とこの下の層に当たるフィラーを含まない電荷輸送層との境界面が、フィラーの存在の有無以外に明確な区別ができない連続的な層構造をとるように膜形成を行うことが望ましい。このような層構成をとることで、フィラー補強電荷輸送層の膜剥離を防止することができる。この効果は、ドラム状感光体の小径化に対して特に有用となる。加えて、電気的な界面障壁の形成も防止できる。このため、露光部電位の上昇防止に有利に作用すると考えられる。なお、このときのフィラー補強電荷輸送層の膜厚は、表面から支持体方向へのフィラー含有深さ(D)として計測される。
フィラー含有深さ(D)は、画像品質上、感光体位置に対して余りばらつかないことが好ましい。具体的にはSEMによって撮影した2000倍程度の感光層の断面写真について、5μm間隔に20カ所のフィラー含有深さ(D)を測定したとき、Dの標準偏差がDの平均値の1/5以下に抑えることが望ましい。特に、画質が問われる場合、Dの標準偏差はDの平均値の1/7以下とすることが好ましい。
このような層構造をとる製造方法としては、フィラー補強電荷輸送層用塗工液として、以下の条件を満たすことで可能である。
すなわち、(1)塗工溶媒が電荷輸送層に用いる樹脂に対して十分に溶解能をもつもの。
(2)塗工終了1時間後と加熱乾燥後のフィラー補強電荷輸送層の重量比として、
1.2<(塗工終了1時間後/加熱乾燥後)<2.0
の関係をもつ。(1)、(2)の条件を満たすことで、感光体の高耐久化に有利なフィラー補強電荷輸送層の形成が可能となる。
次に、感光層24が混合構成の場合について述べる。本発明における混合型感光層とは電荷発生物質と電荷輸送物質を一緒に分散させた感光層を意味する。
混合型の感光層は、バインダー樹脂、電荷発生物質、電荷輸送物質および無機フィラーを適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。
また、感光層中の無機フィラーが導電性支持体側より最も離れた表面側に含有率を多くする塗工方法は、前述したものと同様の方法により容易に形成することが可能になる。
混合型の感光層に用いるバインダー樹脂、電荷発生物質、電荷輸送物質ならびに無機フィラーは、前出の材料を用いることができる。また、塗工に用いる溶媒も、前出の材料を使用することが出来る。
また、必要により、この混合型の感光層中に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤やレベリング剤を添加することもできる。混合型感光体の膜厚は、10〜50μm程度が適当であり、好ましくは、10〜40μm程度が適当である。感光層中、導電性支持体側より最も離れた表面側に含有されるフィラー含有層の膜厚(表面からの深さ)は前述と同様の理由から、0.5μm以上であることが好ましく、更に好ましくは2μm以上が好ましい。他方、フィラー含有層の膜厚の上限は、電荷輸送層23の説明と同じ理由から10μm程度が適当である。
本発明において、このような混合型感光層中に含有される無機フィラーが、感光体表面側に濃度が高くなる濃度勾配を有するか、表面側に無機フィラーが局在していることが重要であり、より具体的にはフィラーを含む感光層の厚み(L)とフィラーを含まない混合型感光層の厚み(M)の比(L/M)が0.0125〜1の範囲となることが望ましい。混合型感光層中に含まれる無機フィラーが膜厚に対して濃度勾配を持つ場合も、L/Mの比が0.125〜1の範囲を満たすことが好ましい。
次にフィラー補強感光層27について説明する。本発明におけるフィラー補強感光層とは、少なくともバインダー樹脂と無機フィラーと電荷発生物質ないし電荷輸送物質とが含まれ、電荷輸送性ないし電荷発生機能および機械的耐性を併せ持つ感光体表面側の混合型感光層の一部を指す。フィラー補強感光層は、従来の単層型感光層に匹敵する電荷移動度ないし電荷発生効率を示す特徴を有し、これは表面保護層と区別される。また、フィラー補強感光層は、混合型感光体における感光層を2層以上に機能分離した表面層として用いられる。すなわち、この層はフィラーの含まれない感光層との積層で用いられ、単独で用いられることが無い。このため、無機フィラーが添加剤として感光層中に分散された場合の単一の感光層と区別される。
フィラー補強感光層は、必要により電荷発生物質を用いる以外は前述のフィラー補強電荷輸送層と全く同様の手段によって形成することができる。フィラー補強感光層に用いるバインダー樹脂、電荷発生物質、電荷輸送物質ならびに無機フィラーは、前出の材料を用いることができる。また、塗工に用いる溶媒も、前出の材料を使用することが出来る。塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。特に、塗工時におけるフィラーの凝集を防止することが容易であるスプレー塗工が好適である。
フィラー補強感光層の膜厚は0.5μm以上であることが好まく、より好ましくは2μm以上が好ましい。このフィラー補強感光層の膜厚を0.5μm以下にすると、耐久性向上効果が小さく、有用性に欠けてしまう。他方、この層の膜厚を2μm以上にすると、装置の寿命に匹敵する耐久性が得られることが少なくなく、極めて有用な手段となる。
かかる厚膜化は、従来技術では激しい感度劣化や残留電位上昇を招くことが多かったが、本発明による感光層の機能分離化により、容易に静電特性上の不具合を回避することが可能となる。但し、必要以上の厚膜化は製造コストが上がるのみで、耐久性向上の寄与も小さくなるため、この層の厚膜化の最大値は概ね10μm程度が適当と判断される。以上から、フィラーを含まない感光層とフィラー補強感光層の膜厚の比率はフィラー補強感光層の厚み(L)とフィラーを含まない感光層の厚み(M)とした場合、その比(L/M)が0.0125〜1の範囲となる膜厚であることが望ましい。
本発明に用いられる電子写真感光体には、導電性支持体と感光層ないし電荷発生層との間に下引き層25を設けることができる。下引き層は、接着性を向上する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減する、導電性支持体からの電荷注入を防止するなどの目的で設けられる。
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤でもって塗布することを考えると、感光層形成のための有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウムなどの水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロンなどのアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂など三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
また、下引き層中には酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどで例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層のごとく適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤などを使用して、例えばゾル−ゲル法などにより形成した金属酸化物層も有用である。
この他に、本発明の下引き層にはアルミナを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)などの有機物や、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、ITO、セリアなどの無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。
下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質およびレベリング剤を添加することができる。これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)フェノール系酸化防止剤:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、スチレン化フェノール、4−ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、シクロヘキシルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2'−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−i−プロピリデンビスフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4'−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリスメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアネート、トリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル]イソシアネート、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
(b)アミン系酸化防止剤:フェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N'−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N'−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニレン−N'−i−プロピル−p−フェニレンジアミン、アルドール−α−ナフチルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジハイドロキノリンなど。
(c)硫黄系酸化防止剤:チオビス(β−ナフトール)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、ドデシルメルカプタン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルチオカルバメート、イソプロピルキサンテート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなど。
(d)リン系酸化防止剤:トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジトリデシルホスファイト)、ジステアリル−ペンタエリスリトールジホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなど。
各層に添加できる可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤:リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
(b)フタル酸エステル系可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤:トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤:アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
(e)脂肪酸エステル系誘導体:オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
(f)オキシ酸エステル系可塑剤:アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
(g)エポキシ系可塑剤:エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
(h)二価アルコールエステル系可塑剤:ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
(i)含塩素系可塑剤:塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
(j)ポリエステル系可塑剤:ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
(k)スルホン酸誘導体:p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
(l)クエン酸誘導体:クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
(m)その他:ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
各層に添加できる滑剤としては、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物:流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
(b)脂肪酸系化合物:ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
(c)脂肪酸アミド系化合物:ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
(d)エステル系化合物:脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
(e)アルコール系化合物:セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
(f)金属石けん:ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
(g)天然ワックス:カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
(h)その他:シリコーン化合物、フッ素化合物など。
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系:2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンなど。
(b)サルシレート系:フェニルサルシレート、2,4ジ−t−ブチルフェニル3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシベンゾエートなど。
(c)ベンゾトリアゾール系:(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2'−ヒドロキシ5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2'−ヒドロキシ−3'−ターシャリブチル5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなど。
(d)シアノアクリレート系:エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレートなど。
(e)クエンチャー(金属錯塩系):ニッケル(2,2'チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
各層に添加できる低分子電荷輸送物質は、電荷発生層22の説明に記載したものと同じものを用いることができる。
次に、図面に沿って本発明で用いられる電子写真装置を説明する。図1は、本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための概略図であり、後述するような変形例も本発明の範疇に属するものである。図1において、感光体11は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とα−アルミナを含む無機フィラーとを含有し、該無機フィラーの含有率が導電性支持体側よりも表面側で高い感光層が設けられている。感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
帯電手段12は、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。帯電手段は、消費電力の低減の観点から、感光体に対し接触もしくは近接配置したものが良好に用いられる。中でも、帯電手段への汚染を防止するため、感光体と帯電手段表面の間に適度な空隙を有する感光体近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。転写手段16には、一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
また、露光手段13、除電手段1A等に用いられる光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
現像手段14により感光体上に現像されたトナー15は、受像媒体18に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、クリーニング手段17により、感光体より除去される。クリーニング手段は、ゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
図2には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体11は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とα−アルミナを含む無機フィラーとを含有し、該無機フィラーの含有率が導電性支持体側よりも表面側で高い感光層が設けられている。駆動手段1Cにより駆動され、帯電手段12による帯電、露光手段13による像露光、現像(図示せず)、転写手段16による転写、クリーニング前露光手段によるクリーニング前露光、クリーニング手段17によるクリーニング、除電手段1Aによる除電が繰返し行なわれる。図2においては、感光体(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
以上の電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図2において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
また、以上に示すような画像形成手段は、複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図3に示すものが挙げられる。この場合も、感光体11は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とα−アルミナを含む無機フィラーとを含有し、該無機フィラーの含有率が導電性支持体側よりも表面側で高い感光層が設けられている。
図4には、本発明による電子写真装置の別の例を示す。この電子写真装置では、感光体(11)の周囲に帯電手段(12)、露光手段(13)、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、およびイエロー(Y)の各色トナー毎の現像手段(14Bk,14C,14M,14Y)、中間転写体である中間転写ベルト(1F)、クリーニング手段(17)が順に配置されている。ここで、図中に示すBk、C、M、Yの添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて添字を付けたり適宜省略する。
感光体11は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とα−アルミナを含む無機フィラーを含有し、該無機フィラーの含有率が導電性支持体側よりも表面側で高い感光層が設けられている。
各色の現像手段14Bk,14C,14M,14Yは各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像手段のみが駆動される。
感光体11上に形成されたトナー像は中間転写ベルト1Fの内側に配置された第1の転写手段(1D)により、中間転写ベルト(1F)上に転写される。第1の転写手段1Dは感光体11に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fを感光体11に当接させる。
各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト1F上で重ね合わされたトナー像は第2の転写手段1Eにより、受像媒体18に一括転写された後、定着手段19により定着されて画像が形成される。第2の転写手段1Eも中間転写ベルト1Fに対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fに当接する。
転写ドラム方式の電子写真装置では、転写ドラムに静電吸着させた転写材に各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという転写材の制限があるのに対し、図4に示すような中間転写方式の電子写真装置では中間転写体1F上で各色のトナー像を重ね合わせるため、転写材の制限を受けないという特長がある。このような中間転写方式は図4に示す装置に限らず前述の図1、図2、図3および後述する図5に記す電子写真装置に適用することができる。
図5には、本発明による電子写真装置の別の例を示す。この電子写真装置は、トナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、各色毎に画像形成部が配設されている。また、各色毎の感光体(11Y,11M,11C,11Bk)が設けられている。
この電子写真装置に用いられる感光体は、導電性支持体上に、少なくとも電荷発生物質と電荷輸送物質とα−アルミナを含む無機フィラーを含有し、該無機フィラーの含有率が導電性支持体側よりも表面側で高い感光層が設けられている。各感光体11Y,11M,11C,11Bkの周りには、帯電手段12、露光手段13、現像手段14、クリーニング手段17等が配設されている。また、直線上に配設された各感光体11Y,11M,11C,11Bkの各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト1Gが駆動手段1Cにて掛け渡されている。この搬送転写ベルト1Gを挟んで各感光体11Y,11M,11C,11Bkに対向する転写位置には転写手段16が配設されている。本構成におけるタンデム方式の電子写真装置において、図4に示した中間転写ベルトを適用しても良い。
図5の形態のようなタンデム方式の電子写真装置は、各色毎に感光体11Y,11M,11C,11Bkを持ち、各色のトナー像を搬送転写ベルト1Gに保持された受像媒体18に順次転写するため、感光体を一つしか持たないフルカラー画像形成装置に比べ、はるかに高速のフルカラー画像の出力が可能となる。
次に、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
始めに、本発明に関わる評価方法について述べる。
(膜厚測定)渦電流方式膜厚測定器FISCHER SCOPE mms(Fischer社製)により、感光体ドラム長手方向1cm間隔に膜厚を測定し、それらの平均値を感光層膜厚とした。
(イオン化ポテンシャル測定)表面平滑なAl板上に後述する処方において、電荷輸送物質と樹脂との混合比率が同一となるような電荷輸送層の塗工液を作製したのち、これを塗布・乾燥し、イオン化ポテンシャル測定用のサンプルを作製した。また、2種以上の電荷輸送物質がフィラー補強電荷輸送層、フィラーを含まない電荷輸送層または電荷輸送層の単一層に含有される場合は、用いられる樹脂と電荷輸送物質との混合比率が樹脂4重量部に対して電荷輸送物質が3重量部の割合となるサンプルを作製した。イオン化ポテンシャルは大気雰囲気型紫外線光電子分析装置AC−1(理研計器社製)により測定した。
(電荷移動度測定)アルミ蒸着されたPETフィルム上に後述する処方により作製した電荷輸送層の塗工液を塗布し、10μmの塗工膜を設けた。塗工膜の上に厚さ200Åの金電極を蒸着し、電荷移動度測定用の試料セルを作製した。電荷移動度の測定はタイムオブフライト測定に基づいて行った。タイムオブフライト測定は、次のようにして行った。予め金電極側に正の電圧を印加し、窒素ガスレーザー光を金電極側から試料に照射した。その際、アルミニウム電極とアース間に入れた挿入抵抗を光電流が流れることによって生じる電位の時間変化をデジタルメモリで記録した。デジタルメモリに出力された波形について前後から接線を引き、この交点からトランジットタイムtが求められる。波形が分散型になる場合を想定し、出力波形について両対数プロットをとり、この接線の交点からトランジットタイムtを求めた。電荷移動度μの算出は、膜厚をL、印加電圧をVとして数4から決定した。
(数4) μ=L2/(V・t)
なお、測定環境は25℃50%RHの状態で行った。
(重量累積粒度分布の測定)セディグラフ5000−ET(島津−マイクロメリテックス社製)を使用してフィラーの粒度分布を測定した。
(D/H比の測定)走査電子顕微鏡T−300(SEM、日本電子社製)を使用して粉末粒子の写真を撮影し、その写真から5個ないし10個の粒子を選択して画像解析をおこない、その平均値として求めた。
(参考例1)φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、28μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記組成のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーで2時間粉砕(塊砕)して塗工液とした。この液をスプレーで塗工して1.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4重量部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 2重量部
ポリビニルブチラール(UCC:XYHL) 0.2重量部
テトラヒドロフラン 50重量部
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、
帝人化成社製) 12重量部
下記構造(化1)の低分子電荷輸送物質 10重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、
帝人化成社製) 4重量部
下記構造(化2)の低分子電荷輸送物質 3重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、
住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
(比較例1)
参考例1におけるフィラー補強電荷輸送層を設けなかった以外は、
参考例1と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
(比較例2)参考例1におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下の表面保護層用塗工液に変更した以外は、参考例1と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
〔表面保護層塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 7重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 86重量部
テトラヒドロフラ 300重量部
(比較例3)参考例1におけるフィラー補強電荷輸送層を設けず、かつ、参考例1における電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、参考例1と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 11重量部
下記構造(化3)の低分子電荷輸送物質 10重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
(比較例4)
参考例1におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例1と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 4重量部
下記構造(化4)の低分子電荷輸送物質 3重量部
酸化マグネシウム(マグネシア500A、宇部マテリアルズ社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
以上のように作製した
参考例1および比較例1〜4の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。試験環境は、25℃/50%RHであった。評価方法としては試験終了時の感光層の摩耗量測定、試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。結果を表1に記す。
表1の結果から明らかなように、感光層中に結晶構造が六方稠密格子であるα−アルミナを含有し、更に、このフィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多く含有する
参考例1の感光体は、5万枚通紙試験後においても、出力画像のコントラストが明瞭でかつ、カブリも認められず、耐久性に優れた感光体であると言うことができる。
他方、従来技術に基づいて作製した比較例2(感光体表面層として表面保護層を設けたもの)は、試験後の出力画像に画像流れが見られたことから、参考例1と比較して耐久性に劣ると判断される。同様に、比較例3(電荷輸送層中に均一にフィラーが含有されたもの)の評価では、初期画像評価の時点から画像濃度の低下が見られており、実用性に乏しい手段であると判断される。この結果から、本発明において、フィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多くする手段が極めて重要であると考えられる。
また、参考例1と比較例4の比較から、本発明の層構成と同様の特徴を有する感光体においても、感光層に含有するフィラーの種類によっては耐久性向上効果が小さいケースがあることが分かる。比較例4に含まれる無機フィラーはマグネシアのみであり、本発明において、少なくともα−アルミナが含まれることが重要であると判断される。
(参考例2)参考例1におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、参考例1と全く同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 4重量部
下記構造(化5)の低分子電荷輸送物質 3重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
(
参考例3)
参考例1におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例1と全く同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 4重量部
下記構造(化6)の低分子電荷輸送物質 3重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 3重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
以上のように作製した
参考例1、
参考例2および
参考例3の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行った。試験環境は、25℃/50%RHであった。評価方法としては、試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。結果を表2に記す。
表2の結果から明らかなように、10万枚もの通紙試験を行った後においても、
参考例2においては、出力画像のコントラストが明瞭でかつカブリも認められないことから、極めて耐久性に優れた感光体であると言うことができる。更に、
参考例3においては、10万枚通紙試験後の出力画像が良好であったことに加え、感光体表面の摩耗が極めて少なく、極めて耐久性に優れた感光体であると言える。
また、参考例1、参考例2、参考例3の順にフィラー補強電荷輸送層に含まれるα−アルミナの含有量が多く、本発明においてフィラーの含有量を増加させることによって更なる高耐久化が実現できることが理解される。
(参考例4)参考例1におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を2μmとした以外は、参考例1と全く同様にして本発明の電子写真感光体を作製した。
以上のように作製した参考例1および参考例4の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行った。試験環境は、25℃/50%RHであった。評価方法としては試験終了時の感光層の摩耗量測定、試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。結果を表3に記す。
表3の結果から明らかなように、10万枚もの通紙試験を行った後においても、
参考例4においては、出力画像のコントラストが明瞭でかつカブリも認められないことから、極めて耐久性に優れた感光体であると言うことができる。これは、本発明におけるフィラー補強電荷輸送層の耐摩耗性が、従来感光体のそれと比較して格段に優れていることに起因する。
(参考例5)参考例3におけるフィラー補強電荷輸送層の膜厚を2μmとした以外は、参考例1と全く同様に作製した。
以上のように作製した参考例3および参考例5の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、15万枚の通紙試験を行った。試験環境は、25℃/50%RHであった。評価方法としては試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。結果を表4に記す。
表4の結果から明らかなように、15万枚もの通紙試験を行った後においても、
参考例5においては、出力画像のコントラストが明瞭でかつカブリも認められず、更に、従来感光体とは比較できない程の耐摩耗性を示しており、極めて耐久性に優れた感光体であると言うことができる。
(参考例6)φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、28μmの電荷輸送層を形成した。その上に下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をジルコニアビーズを用いてペイントシェーカーで2時間粉砕(塊砕)して塗工液とした。この液をスプレーで塗工して1.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4重量部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造(化7)のビスアゾ顔料 2.5重量部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 12重量部
下記構造(化8)の低分子電荷輸送物質 10重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 3.7重量部
下記構造(化9)の低分子電荷輸送物質 2.8重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−04、住友化学工業社製) 2.5重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
(
参考例7)
参考例6におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例6と全く同様に作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 3.7重量部
下記構造(化10)の低分子電荷輸送物質 2.8重量部
α−アルミナ(AKP−30、住友化学工業社製) 2.5重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
(
参考例8)
参考例6におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例6と全く同様に作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 3.7重量部
下記構造(化11)の低分子電荷輸送物質 2.8重量部
α−アルミナ(AA−07、住友化学工業社製) 2.5重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
以上のように作製した
参考例6、
参考例7、および
参考例8の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、15万枚の通紙試験を行った。試験環境は、25℃/50%RHであった。評価方法としては試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。結果を表5に記す。
表5に、α−アルミナの平均粒径、D/H、Db/Da、および試験終了時の画像評価結果を示す。
参考例6、
参考例7及び
参考例8の感光体は15万枚もの通紙試験を経ても、画像コントラストが高く、シャープな画像が得られていた。これより、
参考例6、
参考例7及び
参考例8の感光体は高耐久な感光体であると判断される。また、これらの感光体のうち、
参考例6の感光体は表面が平滑であるのに対して、
参考例7と
参考例8の感光体表面は、多少、ざらつき感を呈していた。これは、
参考例7で用いたα−アルミナが
参考例6と比較してフィラーの充填性に劣ることや、
参考例8のα−アルミナの平均粒径が
参考例6よりも大きく、フィラーの一部が表面へ頭出していることが原因として考えられる。このような感光体表面の平滑性は、出力画像に対して、多少、影響を及ぼす結果が得られていることが、表5に示す結果から理解することができる。
(実施例9)φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、感光層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、30μmの感光層を形成した。その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方のフィラー補強感光層用塗工液をスプレー塗工し、厚さ1.5μmのフィラー補強感光層を設けて本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4重量部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔フィラーを含まない感光層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 10重量部
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造(化12)の低分子電荷輸送物質 6重量部
下記構造(化13)の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 4重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
シリコーンオイル(KF50−100CS信越化学工業社製)
の1%テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強感光層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 9重量部
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造(化14)の低分子電荷輸送物質 5.4重量部
下記構造(化15)の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.6重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
(比較例5)実施例9におけるフィラー補強感光層を設けない点以外は、実施例9と全く同様にして電子写真感光体を作成した。
(比較例6)実施例9におけるフィラー補強感光層用塗工液を以下の表面保護層用塗工液に変更した以外は、実施例9と全く同様に作製した。
〔表面保護層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 18.2重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
(比較例7)実施例9におけるフィラー補強感光層を設けず、かつ、実施例9における感光層用塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例9と全く同様に作製した。
〔感光層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 10重量部
無金属フタロシアニン(リコー社製) 0.2重量部
下記構造(化16)の低分子電荷輸送物質 5.4重量部
下記構造の低分子電荷輸送物質(リコー社製) 3.6重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
以上のようにして作製した実施例9及び比較例5〜7の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。環境条件は25℃/50%RHであった。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。評価方法としては、試験終了時の感光層の摩耗量測定、及び試験開始時と試験終了時の画像評価を行った。また、前述の方法により、感光体最表面層の水蒸気透過度を測定した。結果を表6に示す。
表6の結果から明らかなように、感光層中にα−アルミナを含有し、更に、このフィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多く含有する実施例9の感光体は、5万枚通紙試験後においても、出力画像のコントラストが明瞭でかつ、カブリも認められず、耐久性に優れた感光体であると言うことができる。
他方、従来技術に基づいて作製した比較例6(感光体表面層として表面保護層を設けたもの)は、試験後の出力画像に画像流れが見られたことから、実施例9と比較して耐久性に劣ると判断される。同様に、比較例7(感光層中に均一にフィラーが含有されたもの)の評価では、初期画像評価の時点から画像濃度の低下が見られており、実用性に乏しい手段であると判断される。この結果から、本発明において、フィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多くする手段が極めて重要であると判断される。
(参考例10)φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、30μmの電荷輸送層を形成した。その上に下記の無機フィラー塗工液をアルミナボールを用いて24時間のボールミル分散を施して塗工液とした。この液をスプレーで塗工し、1.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業製) 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業製) 4重量部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造(化18)のビスアゾ顔料 2.5重量部
ポリビニルブチラール(UCC:XYHL) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 12重量部
下記構造(化19)の低分子電荷輸送物質 10重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 3.5重量部
下記構造(化20)の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−04、住友化学工業社製) 1.5重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
(
参考例11)
参考例10におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質を以下のものに変更した以外は、
参考例10と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造(化21)の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
(
参考例12)
参考例10におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質を以下のものに変更した以外は、
参考例10と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造(化22)の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
以上のように作製した
参考例10〜12の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。試験環境は、27℃/62%RHであった。評価方法としては試験終了時の画像評価および露光部電位の測定を行った。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。また、フィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルを測定した。結果を表7に記す。
電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルは5.48eVと測定され、フィラー補強電荷輸送層中に含有される電荷輸送物質との差は
参考例10が0.03eV、
参考例11が0.17eV、
参考例12が0.08eVと算出される。イオン化ポテンシャル差の大きい
参考例11は試験終了時の露光部電位が高めであり、その差が小さい
参考例10と
参考例12は極めて低い露光部電位が計測されている。これから、フィラー補強電荷輸送層中に含有する電荷輸送物質としてイオン化ポテンシャル差の小さい材料を選択することにより優れた静電特性を感光体に付与することが可能であることが理解される。
(参考例13)参考例10におけるフィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、参考例10と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
下記構造(化23)の高分子電荷輸送物質 12重量部
(重量平均分子量: 9.8×10
4)
下記構造(化24)の低分子電荷輸送物質 3重量部
テトラヒドロフラン 180重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
(
参考例14)
参考例13におけるフィラーを含まない電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質を以下のものに変更した以外は
参考例13と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造(化25)の低分子電荷輸送物質 3重量部
(
参考例15)
参考例10におけるフィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例10と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
下記構造(化26)の高分子電荷輸送物質 15重量部
(重量平均分子量: 9.8×10
4)
テトラヒドロフラン 180重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
以上のように作製した
参考例13〜15の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。試験環境は、26℃/53%RHであった。評価方法としては試験終了時の画像評価および露光部電位の測定を行った。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。また、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルを測定した。結果を表8に記す。
電荷輸送層に含有される2種の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.8eVの
参考例13は電荷輸送物質が単独である
参考例15よりも試験後の露光部電位が低い結果が得られている。一方、
参考例14は2種の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.17eVあり、これは
参考例15よりも露光部電位が高い結果が得られた。2種以上の電荷輸送物質を、フィラーを含まない電荷輸送層に用いる場合、それらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が有利であることが理解される。
(参考例16)φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmの電荷輸送層を形成した。フィラー補強電荷輸送層の塗工液は下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いて24時間のボールミル分散を施して調製した。なお、電荷輸送物質と樹脂材料はボールミル分散開始時に添加した。この液を電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、2.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業製) 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業製) 4重量部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造(化27)のビスアゾ顔料 2.5重量部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 10重量部
下記構造(化28)の低分子電荷輸送物質 7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、
帝人化成社製) 3.5重量部
下記構造(化29)の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、住友化学工業社製) 1.5重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
(
参考例17)
参考例16におけるフィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例16と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造(化30)の低分子電荷輸送物質 9重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
(
参考例18)
参考例16におけるフィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例16と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
下記構造(化31)の高分子電荷輸送物質 15重量部
(重量平均分子量:9.8×10
4)
テトラヒドロフラン 180重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
(
参考例19)
参考例16におけるフィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例16と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、
帝人化成社製) 10重量部
下記構造(化32)の低分子電荷輸送物質 7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
以上のように作製した
参考例16〜19の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した複写機(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、5万枚の通紙試験を行った。試験環境は、27℃/60%RHであった。評価方法としては試験終了時の解像度評価を行った。なお、複写機に搭載されるプロセスカートリッジは同梱のものをそのまま使用した。このプロセスカートリッジには帯電手段、現像手段、クリーニング手段、および感光体が一体化されたもので、帯電手段として接触型の帯電ローラが装備されている。また、それぞれの電荷輸送層の電荷移動度μ(電界強度4×10
5V/cm)および電荷移動度の電界強度依存性の大きさβ(=logμ/E
1/2)を測定した。結果を表9に記す。
参考例16〜18は
参考例19と比較して電荷輸送層の電荷移動度が極めて高い感光体である測定結果が得られている。これに応じて、画像品質について解像度も向上される結果が得られている。これらの高い電荷移動度を示す電荷輸送層を設けた感光体は、電子写真装置におけるプロセススピードの向上や、感光体ドラムの小径化に役立つことが容易に類推される。さらに電荷移動度の電界強度依存性が小さい感光体は、残留電位の低減化に寄与するだけでなく、感光体の帯電電位を低く設定しても、応答性に対する影響が小さいという利点を持つ。これは装置の小電力化に対応できる感光体であると期待される。
(参考例20)φ30mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。フィラー補強電荷輸送層の塗工液は下記のフィラー補強電荷輸送層用塗工液をアルミナボールを用いて24時間のボールミル分散を施して調製した。この液を電荷輸送層の上にスプレーで塗工し、4.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4重量部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造(化33)のビスアゾ顔料 2.5重量部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量4万、帝人化成社製) 10重量部
下記構造(化34)の低分子電荷輸送物質 7重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量4万、帝人化成社製) 3.5重量部
下記構造(化35)の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、住友化学工業社製) 1.5重量部
固有抵抗低下剤(BYK−P105、ビックケミー社製) 0.015重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
以上のように作製した
参考例20の電子写真感光体を実装用にした後、一部改造した電子写真装置(リコー社製:imagio MF2200)に搭載し、10万枚の通紙試験を行った。評価方法としては試験終了時の画像評価を行った。なお、電子写真装置の帯電手段はスコロトロン方式チャージャーを用いた。環境条件は23℃/67%RHであった。通紙試験終了後画像評価を行った結果、
参考例20は極僅かな地汚れが認められたものの、実用上問題の無い画像が得られた。
(参考例21)参考例20で使用した電子写真装置の帯電手段をスコロトロンチャージャーから帯電ローラに変更し、帯電ローラが感光体に接触するように配置した。この装置に参考例20で作製した感光体を搭載し、下記の帯電条件で、参考例27と同様の評価を行った。
帯電条件:
DC電圧:−1500V
その結果、初期及び5万枚目の画像はいずれも良好であったが、5万枚後の画像には帯電ローラ汚れ(トナーフィルミング)に基づく、ごく僅かな異常画像(地汚れ)が認められた。しかしながら、連続プリント時のオゾン臭は参考例20の場合に比べて、格段に少なかった。
(参考例22)参考例21で使用した帯電ローラの両端部に厚さ50μm、幅5mmの絶縁テープを張り付け、帯電ローラ表面と感光体表面との間に空間的なギャップ(50μm)を有するように配置した。その他の条件は参考例21と全く同様に評価を行った。その結果、参考例21で認められた帯電ローラ汚れは、全く認められず、初期及び3万枚目の画像はいずれも良好であった。しかしながら、5万枚後にハーフトーン画像を出力した際、ごく僅かではあるが、帯電ムラに基づく画像ムラが認められた。
(参考例23)参考例22の評価において、帯電条件を以下のように変更した以外は参考例22と同様の評価を行った。
帯電条件:
DC電圧:−850V
AC電圧:1.7kV(ピーク間電圧)、周波数:2kHz
その結果、初期及び5万枚後の画像は良好であった。参考例29で認められた帯電ローラ汚れ、参考例22で認められたハーフトーン画像ムラは、全く認められなかった。
参考例1〜8及び10〜23、実施例9および比較例1〜7の感光体のうち、フィラー補強電荷輸送層を設けた感光体についてその断面のSEM写真を2000倍の条件で撮影した。この写真を用いて、感光体表面に対して平行方向に5μm間隔に感光体表面からのフィラー含有深さ(D)を20点読みとり、その平均値と標準偏差を算出した。なお、参考例1〜8及び10〜23、実施例9および比較例2、4の作製において、フィラー補強電荷輸送層塗工終了1時間放置時のフィラー補強電荷輸送層の塗布による増加質量(X)と加熱乾燥終了1時間放置時のフィラー補強電荷輸送層の塗布による増加質量(Y)の比(X/Y)が次の条件を満足する条件下でフィラー補強電荷輸送層の塗工を行った。
1.2<(X/Y)<2.0
塗工終了時および加熱乾燥終了時の放置条件は、遮光条件のもと、23℃35%RHの温湿度下で静置した。また加熱乾燥条件は一律、150℃の加熱温度で30分間としている。結果を表10に示す。
表10の結果に示される様に、実施例
、参考例および比較例で製造した内径30mmの小径ドラム型の感光体は何れも、フィラー層の膜厚のばらつきが小さく、且つ、フィラー補強電荷輸送層とこの下の層に当たる電荷輸送層との境界面がフィラーの存在有無以外に明確な区別ができない連続的な層構造を示し、塗膜品質上何れも良好で、評価試験ではフィラー補強電荷輸送層の膜剥離は発生しなかった。
(参考例24)直径90mmのアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方のフィラー補強感光層用塗工液をスプレー塗工し、厚さ4.0μmのフィラー補強電荷輸送層を設けて本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4重量部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造(化36)のトリスアゾ顔料 2.5重量部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量4万、帝人化成社製) 10重量部
下記構造(化37)の低分子電荷輸送物質 10重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量4万、
帝人化成社製) 4重量部
下記構造(化38)の低分子電荷輸送物質 3重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
(比較例8)
参考例24におけるフィラー補強電荷輸送層を設けなかった以外は、
参考例24と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
(比較例9)参考例24におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下の表面保護層用塗工液に変更した以外は、参考例24と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
〔表面保護層塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 7重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 86重量部
テトラヒドロフラン 300重量部
(比較例10)参考例24におけるフィラー補強電荷輸送層を設けず、かつ、参考例24におけるフィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、参考例24と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 11重量部
下記構造(化39)の低分子電荷輸送物質 10重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−03、住友化学工業社製) 2重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS、
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
(比較例11)
参考例24におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例24と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 4重量部
下記構造(化40)の低分子電荷輸送物質 3重量部
θ−アルミナ(AKP-G008、住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
以上の様に作製した
参考例24および比較例8〜11の電子写真感光体を、一部改造した複写機(リコー製:imagio Color 4000)に搭載し、イエロー、マゼンタ、およびシアン各色の画像面積が5%となるパターン画像を印刷する通紙試験を通算5万枚迄行った。15万枚の通紙試験を行った。複写機の帯電手段は、
参考例22に記載の両端部に厚さ50μm、幅5mmの絶縁テープを貼り付けた帯電ローラを用いた。この帯電ローラにDC電圧として、−700V、AC電圧として1.5kV(ピーク間電圧)、周波数2kHzを重畳させた電圧を印加することで、感光体を帯電した。試験環境は、平均30℃/65%RHに調湿した。評価方法としては、感光層の摩耗量測定、試験終了時の画像解像度測定、異常画像発生具合の評価、および感光体の外観を評価した。結果を表11に示す。
表11の結果から明らかなように、感光層中にα−アルミナを含有し、更に、このフィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多く含有する
参考例24の感光体は、フルカラー電子写真装置による5万枚通紙試験後においても、出力画像のコントラストが明瞭でかつ、カブリも認められず、耐久性に優れた感光体であると言うことができる。
他方、従来技術に基づいて作製した比較例8の場合、感光層の膜削れが激しく、メダカ状の異常画像、および激しい地汚れが観察された。フルカラー電子写真装置において、感光体に起因する地汚れの発生は複数のトナーによって発生(現像)されるため、出力画像の品質はモノクロ電子写真装置の場合と比べて劣化の激しさを増してしまう。これに対して、本発明の参考例24は、かかる不具合の発生が防止されている。フルカラー電子写真装置において、本発明の感光体が極めて有効に用いられることが理解される。比較例9(感光体表面層として表面保護層を設けたもの)は、試験後の出力画像に画像流れが見られたことから、参考例24と比較して耐久性に劣ると判断される。同様に、比較例10(電荷輸送層中に均一にフィラーが含有されたもの)の評価では、画像濃度の低下が見られており、実用性に乏しい手段であると判断される。この結果から本発明において、フィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多くする手段が極めて重要であると考えられる。
また、参考例24と比較例11の比較から、本発明の層構成と同様の特徴を有する感光体においても、感光層に含有するフィラーの種類によっては耐久性向上効果が小さいケースがあることが分かる。比較例11に含まれるフィラーはθ−アルミナのみであり、本発明において、少なくともα−アルミナが含まれることが重要である。α−アルミナを含有するフィラー補強電荷輸送層はθ−アルミナを含有するフィラー補強電荷輸送層よりも書き込み光の波長における光の透過率が高い。このため、書き込み光を電荷発生層まで十分に透過させることが可能であり、この結果として、露光部電位の低減、および画像濃度低減の防止に寄与すると考えられる。また、フィラー自身の硬度は、α−アルミナの方がθ−アルミナよりも高い。これがフィラー補強電荷輸送層の耐摩耗性に影響し、比較例11よりも参考例24の方が耐摩耗性に優れる結果が得られたと解釈される。また、α−アルミナはθ−アルミナよりも吸湿性が小さい結果、湿度の高い条件下で画像を出力しても、画像流れを伴わない高品質な画像が出力できると考えられる。
(参考例25)直径60mmのアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、22μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に、アルミナボールを用いて24時間ボールミル分散した下記処方のフィラー補強感光層用塗工液をスプレー塗工し、厚さ4.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設けて本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4重量部
酸化チタン(CR−EL 石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造(化41)のトリスアゾ顔料 2.5重量部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC社製) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量4万、帝人化成社製) 10重量部
下記構造(化42)の低分子電荷輸送物質 10重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量4万、帝人化成社製) 4重量部
下記構造(化43)の低分子電荷輸送物質 3重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−04、住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
(比較例12)
参考例25におけるフィラー補強電荷輸送層を設けなかった以外は、
参考例25と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
(比較例13)参考例25におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下の表面保護層用塗工液に変更した以外は、参考例25と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
〔表面保護層塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 7重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−04、住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 86重量部
テトラヒドロフラン 300重量部
(比較例14)参考例25におけるフィラー補強電荷輸送層を設けず、かつ、参考例25におけるフィラーを含まない電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、参考例25と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、
帝人化成社製) 11重量部
下記構造(化44)の低分子電荷輸送物質 10重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−04、住友化学工業社製) 2重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
(比較例15)
参考例25におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例25と全く同様にして比較の電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 4重量部
下記構造(化45)の低分子電荷輸送物質 3重量部
γ−アルミナ(AKP-G015、住友化学工業社製) 0.7重量部
シクロヘキサノン 80重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
以上のように作成した
参考例25および比較例12〜15の電子写真感光体を、一部改造した複写機(リコー製:PRETER 750)にブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアンの各色の現像ステーションに搭載し、ブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアン各色の画像面積が5%となるパターン画像を印刷する通紙試験を通算、20万枚迄行った。複写機の帯電手段は、
参考例22に記載の両端部に厚さ50μm、幅5mmの絶縁テープを貼り付けた帯電ローラを用いた。この帯電ローラにDC電圧として、−700V、AC電圧として1.5kV(ピーク間電圧)、周波数2kHzを重畳させた電圧を印加することで、感光体を帯電した。この帯電ローラにDC電圧として、−750V、AC電圧として1.5kV(ピーク間電圧)、周波数2kHzを重畳させた電圧を印加することで、感光体を帯電した。試験環境は、平均30℃/65%RHに調湿した。評価方法としては、マゼンタ色の現像ステーションに搭載した感光層の摩耗量測定と外観の評価、試験終了時の画像解像度測定、異常画像発生具合を評価した。結果を表12に示す。
表12に記す試験結果は、タンデム方式の電子写真装置を用いた試験結果である。表11に記す試験結果と同様、感光層中にα−アルミナを含有し、更に、このフィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多く含有する
参考例25の感光体は、20万枚通紙試験後においても、出力画像のコントラストが明瞭でかつ、カブリも認められず、耐久性に優れた感光体であると言うことができる。これに対して、従来技術に基づいて作製した比較例12の場合、感光層の膜削れが激しく、メダカ状の異常画像、および激しい地汚れが観察された。フルカラー電子写真装置において、感光体に起因する地汚れの発生は各色の現像部によって発生(現像)されるため、出力画像の品質はモノクロ電子写真装置の場合と比べて劣化の激しさを増してしまう。これに対して、本発明の
参考例24はかかる不具合の発生が防止されている。タンデム方式のフルカラー電子写真装置において、本発明の感光体が極めて有効に用いられることが理解される。
比較例13(感光体表面層として表面保護層を設けたもの)は、試験後の出力画像に画像流れが見られたことから、参考例25と比較して耐久性に劣ると判断される。同様に、比較例14(電荷輸送層中に均一にフィラーが含有されたもの)の評価では、画像濃度の低下が見られており、実用性に乏しい手段であると判断される。この結果から本発明において、フィラーの含有率が導電性支持体側より最も離れた表面側に多くする手段が極めて重要であると考えられる。
また、参考例25と比較例15の比較から、本発明の層構成と同様の特徴を有する感光体においても、感光層に含有するフィラーの種類によっては耐久性向上効果が小さいケースがあることが分かる。比較例15に含まれるフィラーはγ−アルミナのみであり、本発明において、少なくともα−アルミナが含まれることが重要である。α−アルミナを含有するフィラー補強電荷輸送層はγ−アルミナを含有するフィラー補強電荷輸送層よりも書き込み光の波長における光の透過率が高い。このため、書き込み光を電荷発生層まで十分に透過させることが可能であり、この結果として、露光部電位の低減、および画像濃度低減の防止に寄与すると考えられる。また、フィラー自身の硬度は、α−アルミナの方がγ−アルミナよりも高い。これがフィラー補強電荷輸送層の耐摩耗性に影響し、比較例15よりも参考例25の方が耐摩耗性に優れる結果が得られたと解釈される。また、α−アルミナはγ−アルミナよりも吸湿性が小さい結果、湿度の高い条件下で画像を出力しても、画像流れを伴わない高品質な画像が出力できると考えられる。
(参考例26)直径60mmアルミニウムドラム上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、23μmのフィラーを含まない電荷輸送層を形成した。その上に下記の無機フィラー塗工液をアルミナボールを用いて24時間のボールミル分散を施して塗工液とした。この液をスプレーで塗工し、4.5μmのフィラー補強電荷輸送層を設け本発明の電子写真感光体を得た。
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6重量部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4重量部
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 40重量部
メチルエチルケトン 200重量部
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造(化46)のビスアゾ顔料 2.5重量部
ポリビニルブチラール(UCC:XYHL) 0.25重量部
シクロヘキサノン 200重量部
メチルエチルケトン 80重量部
〔フィラーを含まない電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、粘度平均分子量;5万、帝人化成社製) 12重量部
下記構造(化47)の低分子電荷輸送物質 10重量部
テトラヒドロフラン 100重量部
1%シリコーンオイル(KF50−100CS
信越化学工業社製)テトラヒドロフラン溶液 1重量部
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート(Zポリカ、粘度平均分子量5万、帝人化成社製) 3.5重量部
下記構造(化48)の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、住友化学工業社製) 1.5重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
(
参考例27)
参考例26におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質を以下のものに変更した以外は、
参考例26と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造(化49)の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
(
参考例28)
参考例26におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液に含有される低分子電荷輸送物質を以下のものに変更した以外は、
参考例25と同様に電子写真感光体を作製した。
下記構造(化50)の低分子電荷輸送物質 2.45重量部
以上のように作成した
参考例26〜28の電子写真感光体を、一部改造した複写機(リコー製:PRETER 750)にブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアンの各色の現像ステーションに搭載し、ブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアン各色の画像面積が5%となるパターン画像を印刷する通紙試験を通算、20万枚迄行った。複写機の帯電手段は、
参考例22に記載の両端部に厚さ50μm、幅5mmの絶縁テープを貼り付けた帯電ローラを用いた。この帯電ローラにDC電圧として、−750V、AC電圧として1.5kV(ピーク間電圧)、周波数2kHzを重畳させた電圧を印加することで、感光体を帯電した。また、露光手段に655nmのLDユニットを搭載した。環境条件は、24℃/50%RHであった。評価方法としては、マゼンタ色の現像ステーションに搭載した感光体における試験開始時と終了時の露光部電位の大小を評価した。また、フィラーを含まない電荷輸送物質とフィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルを測定した。結果を表13に記す。
フィラーを含まない電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルは5.48eVと測定され、フィラー補強電荷輸送層中に含有される電荷輸送物質との差は
参考例26が0.03eV、
参考例27が0.17eV、
参考例28が0.08eVと算出される。イオン化ポテンシャル差の大きい
参考例26は試験終了時の露光部電位が高めであり、その差が小さい
参考例26と
参考例28は極めて低い露光部電位が計測されている。これから、フィラー補強電荷輸送層中に含有する電荷輸送物質としてイオン化ポテンシャル差の小さい材料を選択することにより優れた静電特性を感光体に付与することが可能であることが理解される。
(参考例29)参考例26におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、参考例26と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
下記構造(化51)の高分子電荷輸送物質 3.5重量部
(重量平均分子量:9.8×10
4)
下記構造(化52)の高分子電荷輸送物質 2.45重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、住友化学工業社製) 1.5重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
(
参考例30)
参考例26におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例26と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
下記構造(化53)の高分子電荷輸送物質 3.5重量部
(重量平均分子量:9.8×10
4)
下記構造(化54)の高分子電荷輸送物質 2.45重量部
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、住友化学工業社製) 1.5重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
(
参考例31)
参考例26におけるフィラー補強電荷輸送層用塗工液を以下のものに変更した以外は、
参考例26と同様に電子写真感光体を作製した。
〔フィラー補強電荷輸送層用塗工液〕
下記構造(化55)の高分子電荷輸送物質 5.95重量部
(重量平均分子量:9.8×10
4)
α−アルミナ(スミコランダムAA−05、住友化学工業社製) 1.5重量部
テトラヒドロフラン 280重量部
シクロヘキサノン 80重量部
以上のように作成した
参考例29〜31の電子写真感光体を、一部改造した複写機(リコー製:PRETER 750)にブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアンの各色の現像ステーションに搭載し、ブラック、イエロー、マゼンタ、およびシアン各色の画像面積が5%となるパターン画像を印刷する通紙試験を通算、20万枚迄行った複写機の帯電手段は、
参考例22に記載の両端部に厚さ50μm、幅5mmの絶縁テープを貼り付けた帯電ローラを用いた。この帯電ローラにDC電圧として、−750V、AC電圧として1.5kV(ピーク間電圧)、周波数2kHzを重畳させた電圧を印加することで、感光体を帯電した。また、露光手段に655nmのLDユニットを搭載した。環境条件は、24℃/50%RHであった。評価方法としては、試験開始時と終了時の露光部電位の大小を評価した。また、フィラー補強電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルを測定した。結果を表14に記す。
フィラー補強電荷輸送層に含有される2種の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.8eVの
参考例29は電荷輸送物質が単独である
参考例31よりも試験後の露光部電位が低い結果が得られている。一方、
参考例30は2種の電荷輸送物質のイオン化ポテンシャル差が0.17eVあり、これは
参考例30よりも露光部電位が高い結果が得られた。2種以上の電荷輸送物質をフィラー補強電荷輸送層に用いる場合、それらのイオン化ポテンシャル差は小さい方が有利であることが理解される。