JP3945803B2 - 電子写真感光体、電子写真方法、電子写真装置、及び電子写真装置用プロセスカートリッジ - Google Patents
電子写真感光体、電子写真方法、電子写真装置、及び電子写真装置用プロセスカートリッジ Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高感度・高解像度を有し、かつ高耐久性を有する電子写真感光体に関する。また、それらの感光体を使用した電子写真方法、電子写真装置、電子写真用プロセスカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真方式を用いた情報処理システム機の発展には目覚ましいものがある。特に、情報をデジタル信号に変換して光によって情報記録を行うレーザープリンターやデジタル複写機は、そのプリント品質、信頼性において向上が著しい。さらに、それらは高速化技術との融合によりフルカラー印刷が可能なレーザープリンターあるいはデジタル複写機へと応用されてきている。そのような背景から、要求される感光体の機能としては、高画質化、高耐久化、高感度化が特に重要となってきている。
【0003】
これらの電子写真方式のレーザープリンターやデジタル複写機等に使用される感光体としては、有機系の感光材料を用いたものが、コスト、生産性及び無公害性等の理由から広く応用されている。有機系の電子写真感光体には、ポリビニルカルバゾ−ル(PVK)に代表される光導電性樹脂、PVK−TNF(2,4,7−トリニトロフルオレノン)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダーに代表される顔料分散型、電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体などが知られており、特に機能分離型が現在の主流をなしている。
【0004】
この機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体を帯電した後光照射すると、光は電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質により吸収され電荷を生成する。それによって発生した電荷が電荷発生層及び電荷輸送層の界面で電荷輸送層に注入され、さらに電界によって電荷輸送層中を移動し、感光体の表面電荷を中和することにより静電潜像を形成するものである。機能分離型の感光体においては、主に紫外部に吸収を持つ電荷輸送物質と、主に可視部に吸収を持つ電荷発生物質とを組み合わせて用いるが、量子効率や感度等の特性は電荷発生効率と電荷注入効率によって決められることから、用いる材料及びそれらの組み合わせに大きく依存する。
【0005】
近年では、電子写真装置の高速化に伴って感光体の感度および応答性が、また装置の小型化に伴って感光体の小径化、それに伴う感光体の高耐久化が要求される傾向にある。このような要求に対し、特許第2838891号公報では、感光体における量子効率の電界依存性に着目し、本発明の下記(I)式においてbに相当する値が0.5以下を示すような、量子効率が十分に小さい電界依存性を有する特定の電荷発生層を有し、かつ電荷輸送層の膜厚を25μm〜60μmとすることにより耐久性の向上と高感度化を両立させた感光体が開示されている。
η = a×Eb ……(I)
(ここで、ηは感光体の量子効率、aは定数、Eは電界強度を表す。)
【0006】
一般に、電荷輸送層に用いられる低分子の電荷輸送物質は、単独では製膜性がないため、通常不活性高分子に分散、混合して用いられるが、これらの低分子の電荷輸送物質と不活性高分子からなる電荷輸送層は一般に硬度が低く、カ−ルソンプロセスにおいては繰り返し使用による膜削れが大きいことが課題として挙げられている。感光層の膜削れが進むと、感光体の帯電電位の低下や光感度の劣化、感光体表面のキズなどによる地汚れ、画像濃度低下あるいは画像不良の発生が促進される傾向が強い。従って、電荷輸送層の膜厚を増加させたことは、繰り返し使用による膜削れに対しては高耐久化の面において好ましい。
【0007】
また、前式においてbが0.5以下を示すような電界依存性が小さな電荷発生物質を用いた場合には、電子写真学会誌、vol.31, No.2,149(1992)に記載されているように、電荷輸送層の膜厚が大きいほど感度が高くなることが知られている。従って、特許第2838891号公報では、このような電界依存性が小さな電荷発生物質、すなわち感度の膜厚依存性が大きな電荷発生物質を用い、さらに電荷輸送層の膜厚を25μm以上にまで増加させたことによって高感度化が実現できたことを示している。
【0008】
しかし、上記のような感度の膜厚依存性が大きな電荷発生物質を用いた場合には、当然ながら繰り返し使用による膜削れによって電荷輸送層の膜厚が減少するに従い、感度低下を引き起こすことになる。特許第2838891号公報において、電荷輸送層の膜厚を25μm〜60μmにまで増加させたことは、高耐久化や高感度化だけではなく、膜厚の減少による感度低下に対し多少抑制する効果があったものと考えられるが、膜厚を増加させても削れによって膜厚に変動がある限り、その影響は無視できるものではない。
【0009】
一方、最近の電子写真プロセスにおいては、LDあるいはLED等の光パルスによって感光体上に静電潜像の書き込みが行われる、所謂デジタル方式の電子写真方式が高画質性、高速性あるいはデジタルネットワークの発展性等の面から主流をなしてきているが、前述したとおりこれらの方式を利用したプリンターや複写機、さらにはフルカラープリンターの普及により更なる高画質化、高速化、そして高耐久化の要求度が年々高くなってきている。そのような背景から、よりビーム径が小さく、高出力のLDあるいはLEDに移行する傾向が高くなっており、それらを用いることによって、感光体上により細かなドットの書き込みが可能となることにより画像の著しい高画質化が実現できることになる。
【0010】
しかし、高画質化のためには電荷輸送層の膜厚をより小さくする必要がある。膜厚を増加することは高感度化あるいは高耐久化に対して効果があることは事実であるが、その反面電荷輸送層に注入された電荷が表面に到達し表面電荷を中和するまでの電荷移動の直進性が低下し、画像のにじみを引き起こすため、高画質化に対して致命的な問題となり、またビーム径を小さくしたメリットもなくなってしまう。また、電荷輸送層の膜厚が増加するに従い、その影響が顕著に現れ、画像劣化を引き起こすことになる。さらに、経時における感光層の膜厚変動が大きい場合には、画質の経時安定性にも影響を及ぼすことになり、耐摩耗性を抑制させることは高画質化を実現させる上で重要である。
【0011】
また、LDの高出力化が進むに従い、感光体の感度と同時に高速応答性がより重要になってくる。すなわち、光量がかなり大きくなると、電荷輸送過程が律速となり、生成された電荷を十分に表面まで輸送できなくなるような状態に達すると考えられ、特に電荷輸送層の膜厚の増加に従い、その影響が顕著に現れる。従って、電子写真装置において、更なる高速化あるいは小型化を実現するためには、感光体として感度が高いだけでなく、それに対応できる高速応答性を持たせると同時に、電荷輸送層の膜厚をより小さくするような設計が必要となる。
【0012】
このように、従来の方法では感光体の高感度化に対しては、前式においてbが0.5以下を示すような、量子効率の電界強度依存性の小さい感光体を用いることによって効果が認められたものの、これらの感光体は感度の感光層における膜厚依存性が大きいため繰り返し使用時における膜削れによって、感度の経時変化、またそれに伴う画像濃度や画像品質の経時変化が引き起こされ、画質の安定性を大幅に低下させていた。また、摩耗によって感光層の膜厚が薄くなるに従い電界強度が高くなり、地肌汚れ等の画像欠陥が顕著に発生するし、摩耗を考慮して感光層の膜厚を増加させると電荷の直進性が低下し、解像度を大幅に低下させることになる。さらに、デジタル方式を採用した電子写真装置において、今後高速化あるいは小型化がさらに要求されることにより、感光体の高耐久化、高感度化及び高画質化がより重要視されている。従来は、それらを同時に解決する手段がなく、高感度及び高耐久性を維持しながら高画質化が図られ、感度さらには画像品質の経時安定性の向上が実現された感光体が熱望されていた。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高耐久化、高感度化及び繰り返し使用に対しても高画質画像が安定に得られる感光体を提供することにある。また、それらの感光体を用いることにより、感光体の交換が不要で、高速印刷を可能とし、さらに繰り返し使用においても高画質画像が安定に得られる電子写真方法、電子写真装置、並びに電子写真用プロセスカートリッジを提供することにある。
【0014】
【課題を解決しようとする手段】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、以下の構成要件を満足することにより、高耐久性を有し、繰り返し使用に対して高画質画像を安定に得られる感光体を提供し、また、繰り返し使用においても高画質画像を安定にかつ高速で得られる電子写真方法、電子写真装置、並びに電子写真用プロセスカートリッジを提供することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0015】
▲1▼感光体の高感度化を実現するためには、下記(I)式においてbが0.5以下を示すような量子効率の電界依存性が小さな電荷発生物質を用いることが有効である。これによって、低電界においても裾切れの良い光減衰カーブを有する感光体が得られ、画像の濃度低下やカラーバランス崩れといった不具合点が解消される。さらに、装置の高速化に対しても対応可能である。量子効率の電界依存性に関しては、使用する電荷発生物質の特性に依存するところが大きく、最適な電荷発生物質を選択する必要がある。
η = a×Eb ……(I)
(ここで、ηは感光体の量子効率、aは定数、Eは電界強度を表す。)
【0016】
▲2▼感光体の高耐久化(耐摩耗性の向上)を実現するためには、感光体の最表面層にフィラーを含有させることが効果的である。フィラーを含有させることにより、著しい耐摩耗性の向上が実現できるが、用いるフィラー種によっては十分な耐久性が得られなかったり、静電特性の悪化や異常画像を引き起こすため、フィラーの種類や一次粒径等を最適化させる必要がある。
【0017】
▲3▼感光体の高画質化を実現させるためには、電荷輸送層の膜厚をより小さくすることが効果的である。上記の耐摩耗性の向上の実現により、電荷輸送層は25μm以下の少ない膜厚で満足されることになるため、より小さなドットでもにじみがなく、より忠実な書き込みが可能となり、高画質化に対し大きな優位性を与える。また、これはLD等のビーム径の縮小により高画質化に対してさらなる相乗効果を与える。さらに、最表面層にフィラーを有することにより電荷輸送層の膜厚が繰り返し使用によってもほとんど変動しないため、感度劣化や画像濃度の経時変化も少なく、高画質画像を安定して得ることが可能となる。
【0019】
すなわち、本発明によれば、以下の(1)〜(34)が提供される。
(1)導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層の積層構成を設けてなる電子写真感光体において、該電子写真感光体の最表面層に一種あるいは複数種のフィラー及び分散剤を含有し、該分散剤が少なくとも一つのカルボキシル基を構造中に含有するポリカルボン酸ポリマーであり、該電子写真感光体の量子効率ηと電子写真感光体にかかる電界強度Eとの関係を下記(I)式で表した場合、bが0.5以下であり、かつ該電荷輸送層の膜厚が25μm以下であることを特徴とする電子写真感光体。
η = a×Eb ……(I)
(ここで、ηは感光体の量子効率、aは定数、Eは電界強度を表す。)
【0020】
(2)前記電荷輸送層上に最表面層として保護層を形成したことを特徴とする(1)記載の電子写真感光体。
【0021】
(3)前記電荷輸送層の膜厚が20μm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電子写真感光体。
【0022】
(4)前記電荷発生物質がアゾ顔料もしくはフタロシアニン顔料であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【0023】
(5)前記アゾ顔料が下記(II)式で表されるアゾ顔料であることを特徴とする(4)記載の電子写真感光体。
【0024】
【化3】
(式(II)中、Cp1、Cp2はカップラー残基を表す。R201、R202はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基のいずれかを表し、同一でも異なっていても良い。またCp1,Cp2は下記(III)式で表され、
【0025】
【化4】
式(III)中、R203は、水素原子、アルキル基、アリール基のいずれかを表し、R204、R205、R206、R207、R208はそれぞれ、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、アルキル基、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基、水酸基のいずれかを表し、Zは置換もしくは無置換の芳香族炭素環又は置換もしくは無置換の芳香族複素環を構成するのに必要な原子群を表す。)
【0026】
(6)前記アゾ顔料のCp1とCp2が互いに異なるものであることを特徴とする(5)記載の電子写真感光体。
【0027】
(7)前記フタロシアニン顔料がチタニルフタロシアニンであることを特徴とする(4)記載の電子写真感光体。
【0028】
(8)前記チタニルフタロシアニンが、CuKαの特性X線(波長1.514Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンであることを特徴とする(7)記載の電子写真感光体。
【0029】
(9)前記電子写真感光体の最表面層もしくは保護層に含有されるフィラーが無機材料であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【0030】
(10)前記無機材料が、少なくとも一種の金属酸化物を含んでいることを特徴とする(9)記載の電子写真感光体。
【0031】
(11)前記金属酸化物が、アルミナであることを特徴とする(10)記載の電子写真感光体。
【0032】
(12)前記無機材料の少なくとも一種が、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理を施されていることを特徴とする(9)〜(11)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【0033】
(13)前記表面処理剤が少なくともチタネート系カップリング剤、高級脂肪酸もしくは高級脂肪酸金属塩であることを特徴とする(12)記載の電子写真感光体。
【0034】
(14)前記表面処理が施された無機材料において、表面処理量が2〜30wt%であることを特徴とする(12)又は(13)記載の電子写真感光体。
【0035】
(15)前記無機材料の平均一次粒径が、0.01μm〜0.8μmであることを特徴とする(9)〜(14)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【0040】
(16)前記分散剤の含有量をA、前記分散剤の酸価をB、前記フィラーの含有量をCとしたときに、A、B及びCとの間に、下記の関係式を満たすことを特徴とする(1)〜(15)のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
0.1≦(A×B)/C≦20
【0041】
(17)前記保護層に電荷輸送物質を含有することを特徴とする(2)〜(16)のいずれかに一項記載の電子写真感光体。
【0042】
(18)前記保護層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルIpと、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のそれとの間に下記の関係式が成り立つことを特徴とする(17)記載の電子写真感光体。
保護層に含有される電荷輸送物質のIp
≦電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のIp
【0043】
(19)前記保護層に含有される電荷輸送物質が高分子電荷輸送物質を含んでいることを特徴とする(17)記載の電子写真感光体。
【0044】
(20)前記高分子電荷輸送物質が、少なくともトリアリールアミン構造を主鎖および/又は側鎖に含むポリカーボネートであることを特徴とする(19)記載の電子写真感光体。
【0045】
(21)電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写が繰り返し行われる電子写真方法において、該電子写真感光体が(1)〜(20)のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真方法。
【0046】
(22)電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行い、かつ画像露光の際にはLDあるいはLEDによって感光体上に静電潜像の書き込みが行われる、デジタル方式の電子写真方法において、該電子写真感光体が(1)〜(20)のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真方法。
【0047】
(23)少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備してなる電子写真装置であって、該電子写真感光体が(1)〜(20)のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置。
【0048】
(24)少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備してなる電子写真装置であって、画像露光手段にLDあるいはLEDを使用することによって感光体上に静電潜像の書き込みが行われる、デジタル方式の電子写真装置において、該電子写真感光体が(1)〜(20)のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置。
【0049】
(25)前記電子写真装置において、帯電手段としてローラー状の帯電部材を用いることを特徴とする(23)又は(24)記載の電子写真装置。
【0050】
(26)前記ローラー状の帯電部材を帯電手段として用いた電子写真装置において、該帯電部材と感光体とが画像形成領域において非接触であることを特徴とする(25)記載の電子写真装置。
【0051】
(27)前記ローラー状の帯電部材を帯電手段として用いた電子写真装置において、直流成分に交流成分を重畳し感光体に帯電を与えることを特徴とする(25)又は(26)記載の電子写真装置。
【0052】
(28)前記電子写真装置において、該感光体表面に潤滑性物質を付着させる手段を有することを特徴とする(23)又は(24)記載の電子写真装置。
【0053】
(29)前記電子写真装置において、感光体上の潜像を現像する際に用いられる現像剤に、少なくとも一種の潤滑性物質が含有された現像剤を用いて現像することにより、感光体表面に該潤滑性物質を付着させることを特徴とする(28)記載の電子写真装置。
【0054】
(30)前記電子写真装置において、潤滑性物質を外部より感光体表面に接触させることによって、感光体表面に該潤滑性物質を付着させることを特徴とする(28)記載の電子写真装置。
【0055】
(31)前記電子写真装置において、少なくとも一種の潤滑性物質がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする(28)〜(30)のいずれか一項に記載の電子写真装置。
【0056】
(32)前記電子写真装置において、少なくとも一種の潤滑性物質がフッ素系化合物であることを特徴とする(28)〜(30)のいずれか一項に記載の電子写真装置。
【0057】
(33)少なくとも電子写真感光体を具備してなる電子写真装置用プロセスカートリッジであって、該電子写真感光体が(1)〜(20)のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
【0058】
(34)前記(23)〜(32)のいずれか一項に記載の電子写真装置に用いることを特徴とする(33)記載の電子写真装置用プロセスカートリッジ。
【0059】
以下、本発明に用いられる電子写真感光体を図面に沿って説明する。ただし、単層感光層の場合は参考的に記述する。
図1は、本発明の電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体31上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする単層感光層33が設けられている。この場合、少なくとも単層感光層33の表面にはフィラーが含有されており、単層感光層33の膜厚は少なくとも25μm以下である。
【0060】
図2は、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37とが、積層された構成をとっている。この場合、少なくとも電荷輸送層37の表面にはフィラーが含有されており、電荷輸送層37の膜厚は少なくとも25μm以下である。
【0061】
図3は、導電性支持体31上に、電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする単層感光層33が設けられ、更に単層感光層表面に保護層39が設けられている。この場合、保護層39にはフィラーが含有されており、単層感光層33の膜厚は少なくとも25μm以下である。
【0062】
図4は、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37とが積層された構成をとっており、更に電荷輸送層37上に保護層39が設けられている。この場合、保護層39にはフィラーが含有されており、電荷輸送層37の膜厚は少なくとも25μm以下である。
【0063】
いずれの場合にも、感光体の量子効率の電界強度依存性が前記(I)式を満足するものであることが必要である。
【0064】
導電性支持体31としては、体積抵抗1010 Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化錫、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
【0065】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体31として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化錫、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0066】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
【0067】
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層35と電荷輸送層37で構成される場合から述べる。
【0068】
電荷発生層35は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層35には、公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ用いられる。これら電荷発生物質は単独でも、二種以上混合してもかまわない。
【0069】
前述のように、感光体の量子効率の電界強度依存性は、ほとんどの場合、電荷発生物質により決定されると言っても過言ではない。従って、上記の電荷発生物質の中から、量子効率の電界強度依存性が、前記(I)式を満足するものが選ばれる。特に、前記(II)式で表されるアゾ顔料又はチタニルフタロシアニンを含有することが好ましく、チタニルフタロシアニンとしてはCuKαの特性X線(波長1.514Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンが好ましい。これらの電荷発生物質は、感光体の高感度化に対しては非常に有効かつ有用である。
【0070】
前記(II)式中、R201及びR202としては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基が挙げられる。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素が、アルキル基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。また、前記(III)式中、R203のアルキル基としては、メチル基、エチル基等が、アリール基としては、フェニル基等が挙げられ、R204、R205、R206、R207、R208のハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が、アルキル基としては、メチル基、エチル基等が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が、ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。Cp1とCp2は互いに異なるものであっても、同じであっても良い。
【0071】
電荷発生層35は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体上に塗布し、乾燥することにより形成される。
【0072】
必要に応じて電荷発生層35に用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。
【0073】
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。
【0074】
電荷発生層35は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。
【0075】
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。
【0076】
電荷発生層35の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.1〜2μmである。
【0077】
電荷輸送層37は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により単独あるいは二種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0078】
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
【0079】
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、又は二種以上混合して用いられる。
【0080】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0081】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層の膜厚は解像度や応答性の点から、25μm以下であり、20μm以下がより好ましい。電荷輸送層の膜厚が25μmより厚くなると、電荷発生層から電荷輸送層に注入された電荷が感光体の表面に到達するまでの電荷移動の直進性が急激に低下し、画像ににじみが生じ画像品質を低下させることになる。この影響は電荷輸送層の膜厚が薄い方がより少なく、高画質化に対しては有利である。しかし、電荷輸送層の膜厚を極度に薄くすると感光体の帯電能が低下し、また電界強度の影響を受けやすくなることもあり好ましくない。下限値に関しては、使用するシステムにより異なるが、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。
【0082】
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
【0083】
更に、電荷輸送層が感光体の最表面層になる場合には、少なくとも電荷輸送層の表面部位には、耐摩耗性を向上する目的でフィラー材料を添加する。フィラー材料としては主に有機性フィラーと無機性フィラーとに分類され、有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機材料を用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。無機材料の中でも金属酸化物が好ましく、特に、シリカ、酸化チタン、アルミナは耐摩耗性に対する効果が高く有効に使用できる。その中でもアルミナは、光透過性が高く画像ボケの影響も少ないことから有効であり、α−アルミナが特に有効に使用できる。また、これらのフィラー材料は単独もしくは二種類以上を混合して用いられる。
【0084】
更に、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、2〜30wt%が適しており、5〜20wt%がより好ましい。表面処理量がこの範囲よりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。
【0085】
これらのフィラーが含有されることによって、残留電位上昇の影響が増加する場合がある。この残留電位上昇を抑制するためには、分散剤を添加してフィラーの分散性を向上させることが必要である。さらに、分散剤が10〜400(mgKOH/g)の酸価を有することによって残留電位低減効果が高まることがある。酸価とは、1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数で定義される。これらの分散剤としては、少なくともカルボキシル基を構造中に含有する有機化合物が好ましく、特にポリカルボン酸誘導体がより好ましい。これらの中には、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル酸やメタクリル酸を用いた共重合体、スチレンアクリル共重合体等、カルボン酸を含む有機化合物あるいはその誘導体はすべて使用することが可能である。特に、無機性フィラーをバインダー樹脂中に分散させるためには、上記分散剤の添加は非常に有効である。上記分散剤は、直接親和性がないフィラーとバインダー樹脂との双方に親和性を持たせることが可能となり、フィラー分散性が著しく向上される。
【0086】
分散剤の酸価としては、10〜400mgKOH/gが好ましいが、より好ましくは30〜200mgKOH/gである。酸価が必要以上に高いと抵抗が下がりすぎて画像ボケの影響が大きくなり、酸価が低すぎると添加量を多くする必要が生じる上、残留電位の低減効果が不十分となる。
【0087】
また、これらの分散剤の含有量をA、分散剤の酸価をB、フィラーの含有量をCとしたとき、A、B及びCとの間に、下記の関係式を満たすことによって、それらの効果を十分に発揮させることが可能となるが、必要最小量に設定することが好ましい。
0.1≦(A×B)/C≦20
分散剤の含有量が少なすぎる場合には、フィラーの分散不良を引き起こしたり、残留電位の著しい上昇を引き起こしたりする場合があり、分散剤の含有量が多すぎる場合には画像ボケの影響が増大する場合がある。
【0088】
これらのフィラー材料は、電荷輸送物質や結着樹脂、溶媒等とともに適当な分散機を用いることにより分散できる。また、フィラーの一次粒径の平均は、0.01〜0.8μmであることが電荷輸送層の透過率や耐摩耗性の点から好ましい。
【0089】
また、これらのフィラーを電荷輸送層全体に含有させることも可能であるが、露光部電位が高くなるような場合があるため、電荷輸送層の最表面側が最もフィラー濃度が高く、支持体側が低くなるようにフィラー濃度傾斜を設けたり、電荷輸送層を複数層にして、支持体側から表面側に向かい、フィラー濃度が順次高くしたりするような構成にすることが好ましい。
【0090】
電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂としての機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これらの高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/又は側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、(IV)〜(XIII)式で表される高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。これらを以下に例示し、具体例を示す。
【0091】
【化5】
(IV)式中、R1、R2、R3 はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子を、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基を、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基を表す。o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数を、k、jは組成を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9であり、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、又は下記一般式で表される2価基を表す。
【0092】
【化6】
式中、R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基又はハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは脂肪族の2価基を表す。)又は、
【0093】
【化7】
(式中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。)を表す。ここで、R101とR102はそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0094】
【化8】
(V)式中、R7、R8は置換もしくは無置換のアリール基を、Ar1、Ar2、Ar3は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(IV)式の場合と同じである。
【0095】
【化9】
(VI)式中、R9、R10は置換もしくは無置換のアリール基を、Ar4、Ar5、Ar6は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(IV)式の場合と同じである。
【0096】
【化10】
(VII)式中、R11、R12は置換もしくは無置換のアリール基を、Ar7、Ar8、Ar9は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(IV)式の場合と同じである。
【0097】
【化11】
(VIII)式中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基を、Ar10、Ar11、Ar12は同一又は異なるアリレン基を、X1、X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X、k、jおよびnは、(IV)式の場合と同じである。
【0098】
【化12】
(IX)式中、R15、R16、R17、R18は置換もしくは無置換のアリール基を、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一又は異なるアリレン基を、Y1、Y2、Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X、k、jおよびnは、(IV)式の場合と同じである。
【0099】
【化13】
(X)式中、R19、R20は水素原子又は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(IV)式の場合と同じである。
【0100】
【化14】
(XI)式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基を、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(IV)式の場合と同じである。
【0101】
【化15】
(XII)式中、R22、R23、R24、R25は置換もしくは無置換のアリール基を、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(IV)式の場合と同じである。
【0102】
【化16】
(XIII)式中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基を、Ar29、Ar30、Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、(IV)式の場合と同じである。
【0103】
一般式(IV)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0104】
【化17】
【0105】
【化18】
【0106】
【化19】
【0107】
一般式(V)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0108】
【化20】
【0109】
【化21】
【0110】
【化22】
【0111】
一般式(VI)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0112】
【化23】
【0113】
【化24】
【0114】
一般式(VII)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0115】
【化25】
【0116】
【化26】
【0117】
一般式(VIII)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0118】
【化27】
【0119】
【化28】
【0120】
【化29】
【0121】
一般式(IX)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0122】
【化30】
【0123】
【化31】
【0124】
一般式(X)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0125】
【化32】
【0126】
【化33】
【0127】
一般式(XI)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0128】
【化34】
【0129】
【化35】
【0130】
【化36】
【0131】
【化37】
【0132】
一般式(XII)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0133】
【化38】
【0134】
【化39】
【0135】
一般式(XIII)で表される高分子電荷輸送物質の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0136】
【化40】
【0137】
【化41】
【0138】
【化42】
【0139】
【化43】
【0140】
次に感光層が単層構成33の場合について述べる。単層感光層は、上述した電荷発生物質及び電荷輸送物質、並びに結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
【0141】
結着樹脂としては、先に電荷輸送層37で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層35で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は190重量部以下が好ましく、さらに好ましくは50〜150重量部である。単層感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどで塗工して形成できる。単層感光層の膜厚は、25μm以下であり、5〜25μm程度が適当である。
【0142】
単層感光層が最表面層になるような構成においては、耐摩耗性向上のため、少なくとも感光層表面にフィラーを含有する必要がある。フィラー及び分散剤に関しては先に電荷輸送層で記述したとおりである。この場合にも、電荷輸送層の場合と同様に、感光層全体にフィラー含有することもできるが、フィラー濃度傾斜を設けるか、複数層の感光層の構成とし、フィラー濃度を順次変えた構成にすることは有効な手段である。
【0143】
本発明の感光体においては、導電性支持体31と単層型もしくは積層型感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0144】
これらの下引き層は、前述の単層型もしくは積層型感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0145】
本発明の感光体においては、保護の目的で、保護層39が単層感光層もしくは電荷輸送層の上に設けられることもある。保護層39に使用される材料としてはABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリール樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアリレート、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0146】
また、感光体の保護層が最表面層となるような構成においては、保護層に耐摩耗性を向上する目的でフィラー材料を添加する。フィラー材料としては主に有機性フィラーと無機性フィラーとに分類され、有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、銅、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機材料を用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。無機材料の中でも金属酸化物が好ましく、特に、シリカ、酸化チタン、アルミナは耐摩耗性に対する効果が高く有効に使用できる。その中でもアルミナは、光透過性が高く画像ボケの影響も少ないことから有効であり、α−アルミナが特に有効に使用できる。また、これらのフィラー材料は単独もしくは二種類以上を混合して用いられる。
【0147】
さらに、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性及び画像ボケの点からより好ましい。シランカップリング剤による処理は、画像ボケの影響が強くなるが、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、2〜30wt%が適しており、5〜20wt%がより好ましい。表面処理量がこれよりも少ないとフィラーの分散効果が得られず、また多すぎると残留電位の著しい上昇を引き起こす。
【0148】
これらのフィラーが含有されることによって、残留電位上昇の影響が増加する場合がある。この残留電位上昇を抑制するためには、分散剤を添加してフィラーの分散性を向上させることが必要である。さらに、分散剤が10〜400(mgKOH/g)の酸価を有することによって残留電位低減効果が高まることがある。酸価とは、1g中に含まれる遊離脂肪酸を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数で定義される。これらの分散剤としては、少なくともカルボキシル基を構造中に含有する有機化合物が好ましく、特にポリカルボン酸化合物がより好ましい。これらの中には、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アクリル酸やメタクリル酸を用いた共重合体、スチレンアクリル共重合体等、カルボン酸を含む有機化合物あるいはその誘導体はすべて使用することが可能である。特に、無機性フィラーをバインダー樹脂中に分散させるためには、上記分散剤の添加は非常に有効である。上記分散剤は、直接親和性がないフィラーとバインダー樹脂との双方に親和性を持たせることが可能となり、フィラー分散性が著しく向上される。
【0149】
分散剤の酸価としては、10〜400mgKOH/gが好ましいが、より好ましくは30〜200mgKOH/gである。酸価が必要以上に高いと抵抗が下がりすぎて画像ボケの影響が大きくなり、酸価が低すぎると添加量を多くする必要が生じる上、残留電位の低減効果が不十分となる。
【0150】
また、これらの分散剤の含有量をA、分散剤の酸価をB、フィラーの含有量をCとしたとき、A、B及びCとの間に、下記の関係式を満たすことによって、それらの効果を十分に発揮させることが可能となるが、必要最小量に設定することが好ましい。
0.1≦(A×B)/C≦20
分散剤の含有量が少なすぎる場合には、フィラーの分散不良を引き起こしたり、残留電位の著しい上昇を引き起こしたりする場合があり、分散剤の含有量が多すぎる場合には画像ボケの影響が増大する場合がある。
【0151】
これらのフィラー材料は、電荷輸送物質や結着樹脂、有機溶媒等とともにボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などの従来方法を用いて分散することができる。この中でも汚染の影響が少ないボールミルが最も適している。分散剤を含有させるときは、フィラーと有機溶剤とともに分散前より添加混合させる方がフィラー分散性の点から好ましい。一方、結着樹脂は分散後に添加し混合させる方がフィラー分散性の点から好ましい。用いられる有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン等が挙げられ、二種以上の混合溶媒にすることによってフィラー分散性と塗膜品質の両立が可能となる場合がある。
【0152】
また、保護層に電荷輸送層37で挙げた低分子電荷輸送物質あるいは高分子電荷輸送物質を添加することは、画質向上や残留電位を低減させる上で有効な手段である。電荷輸送物質は結着樹脂と同様に分散後に添加し混合させる方が好ましい。高分子電荷輸送物質としては、トリアリールアミン構造を主鎖及び/または側鎖に含むポリカーボネート等が挙げられる。
【0153】
保護層に電荷輸送物質を添加する場合、保護層に含有される電荷輸送物質のIpが感光層もしくは電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のIpよりも大きいと、電荷発生層で発生した電荷が電荷輸送層さらには保護層へ移動していく上で、保護層への電荷注入性が低下し、それにより残留電位の上昇や感度劣化を引き起こすことになる。従って保護層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルIpと、単層感光層もしくは電荷輸送層に含有される電荷輸送層のIpとの間に下記の関係式が成り立つことが好ましい。
保護層に含有される電荷輸送物質のIp
≦単層感光層もしくは電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のIp
【0154】
フィラーの一次粒径の平均は、保護層等の透過率や耐摩耗性の点から0.01〜0.8μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmがより好ましい。フィラーの一次粒径が小さすぎる場合にはフィラーの凝集性が高くなり、分散性が低下し耐摩耗性が低下する傾向が見られ、大きすぎる場合には異常画像やフィルミングが発生しやすくなる傾向がある。
【0155】
保護層の形成法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の従来方法を用いることができる。この中でも膜中のフィラーの分散性を高める上でスプレー塗工法が最も好ましい。なお、保護層の膜厚は0.5〜10μm程度が適当であり、より好ましくは2〜6μmである。保護層の膜厚は感光層の膜厚と同様に薄い方が高画質化には有利であるが、薄すぎる場合には感光体の寿命を低下させる場合がある。その場合、より耐摩耗性をさらに高める必要があり、それによって異常画像やフィルミングの影響が増加する場合がある。ただ、保護層に含有されるフィラーの抵抗によっては、形成される静電潜像は必ずしも感光体の最表面ではなく、感光層と保護層の界面に形成される場合もある。
【0156】
本発明の感光体においては、単層感光層もしくは電荷輸送層と保護層との間に中間層を設けることも可能である。中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。これら樹脂としては、ポリアミド、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。中間層の形成法としては、前述のごとく一般に用いられる塗布法が採用される。なお、中間層の厚さは0.05〜2μm程度が適当である。
【0157】
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、単層感光層、電荷発生層、電荷輸送層、下引き層、保護層、中間層等の各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質およびレベリング剤を添加することが出来る。これらの化合物の代表的な材料を以下に記す。
【0158】
各層に添加できる酸化防止剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)フェノ−ル系化合物
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾ−ル、ブチル化ヒドロキシアニソ−ル、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノ−ル、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、2,2'−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4'−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノ−ル)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコ−ルエステル、トコフェロ−ル類など。
【0159】
(b)パラフェニレンジアミン類
N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0160】
(c)ハイドロキノン類
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0161】
(d)有機硫黄化合物類
ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネ−ト、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネ−ト、ジテトラデシル−3,3'−チオジプロピオネ−トなど。
【0162】
(e)有機燐化合物類
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0163】
各層に添加できる可塑剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)リン酸エステル系可塑剤
リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニルなど。
【0164】
(b)フタル酸エステル系可塑剤
フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチルなど。
【0165】
(c)芳香族カルボン酸エステル系可塑剤
トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチルなど。
【0166】
(d)脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤
アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチルなど。
【0167】
(e)脂肪酸エステル誘導体
オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリンなど。
【0168】
(f)オキシ酸エステル系可塑剤
アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチルなど。
【0169】
(g)エポキシ可塑剤
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシルなど。
【0170】
(h)二価アルコールエステル系可塑剤
ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラートなど。
【0171】
(i)含塩素可塑剤
塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチルなど。
【0172】
(j)ポリエステル系可塑剤
ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステルなど。
【0173】
(k)スルホン酸誘導体
p-トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミドなど。
【0174】
(l)クエン酸誘導体
クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシルなど。
【0175】
(m)その他
ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチルなど。
【0176】
各層に添加できる滑剤としては、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)炭化水素系化合物
流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレンなど。
【0177】
(b)脂肪酸系化合物
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸など。
【0178】
(c)脂肪酸アミド系化合物
ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなど。
【0179】
(d)エステル系化合物
脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステルなど。
【0180】
(e)アルコール系化合物
セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロールなど。
【0181】
(f)金属石けん
ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなど。
【0182】
(g)天然ワックス
カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウなど。
【0183】
(h)その他
シリコーン化合物、フッ素化合物など。
【0184】
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば下記のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
(a)ベンゾフェノン系
2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノンなど。
【0185】
(b)サルシレート系
フェニルサルシレート、2,4ジ−t−ブチルフェニル3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシベンゾエートなど。
【0186】
(c)ベンゾトリアゾール系
(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2'−ヒドロキシ5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2'−ヒドロキシ5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2'−ヒドロキシ3'−ターシャリブチル5'−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾールなど。
【0187】
(d)シアノアクリレート系
エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレートなど。
【0188】
(e)クエンチャー(金属錯塩系)
ニッケル(2,2'チオビス(4−t-オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェートなど。
【0189】
(f)HALS(ヒンダードアミン)
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなど。
【0190】
次に図面を用いて本発明の電子写真方法並びに電子写真装置を詳しく説明する。
図5は、本発明の電子写真方法及び電子写真装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。
図5において、感光体1は本発明の感光体であり、導電性支持体上に前記(I)式で表される量子効率の電界強度依存性を示す感光層が設けられ、最表面層にフィラーを含有してなる。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電チャージャ3、転写前チャージャ7、転写チャージャ10、分離チャージャ11、クリーニング前チャージャ13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャ)、帯電ローラー、帯電ブラシ、転写ローラー等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
【0191】
帯電部材は、コロナ帯電方式の非接触帯電やローラーあるいはブラシ状の帯電部材による接触帯電が一般的であり、本発明においても有効に使用することができる。特に、帯電ローラーは、コロナ帯電方式の帯電器に比べてオゾンの発生量を大幅に削減することが可能となり、感光体への悪影響を軽減することが可能である。さらに、本発明においては、帯電ローラーを感光体と接触させずに用いることが可能であり有用である。従来、帯電ローラーは感光体と接触させて用いるが、繰り返し使用によって帯電ローラーにシリカやタルク等が付着し、それによる感光体の摩耗の促進や、フィルミングの発生を助長する原因となっていた。帯電ローラーを非接触とすることによって、それらの影響やトナーによる汚染についても軽減される。しかし、帯電ローラーを非接触で使用すると、放電が不均一となり感光体の帯電が不安定になる場合がある。その場合には、直流成分に交流成分を重畳させることによって、それらの影響を抑制することが可能となる。一方、コロナ帯電方式の帯電器として従来用いられているコロトロンやスコロトロン等は、オゾンの影響が大きくなるものの帯電の安定性は高く有効に使用することができる。
【0192】
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャ10と分離チャージャ11を併用したものが効果的である。
【0193】
また、画像露光部5、除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0194】
光源等は、図5に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。但し、除電工程における感光体への露光は、感光体に与える疲労の影響が大きく、特に残留電位の上昇が顕著に発生する場合がある。従って、露光による除電ではなく、帯電工程やクリーニング工程において逆バイアスを印可することによっても除電することが可能な場合もあり、感光体の耐久性の面から好ましい。
【0195】
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14およびブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0196】
クリーニングは、転写後に感光体上に残ったトナー等を除く工程であるが、上記のブレードあるいはブラシ等によって感光体が繰り返し擦られることにより、感光体の摩耗が大幅に促進されたり、傷がついたりすることによって異常画像が発生することがある。また、クリーニング不良によって感光体表面が汚染されたりすると異常画像の発生の原因となるだけでなく、感光体の寿命を大幅に低減させることにつながる。特に、耐摩耗性の向上のためにフィラーを含有させた層を感光体表面に有する場合には、感光体表面に付着した汚染物質が除去されにくく、フィルミングや画像劣化の影響が増大するため、その影響はより一層大きくなる。従って、感光体のクリーニング性を高めることは感光体の高耐久化あるいは高画質化に対し非常に有効である。
【0197】
感光体のクリーニング性を高める手段としては、感光体表面の摩擦係数を低減させる方法が知られている。感光体表面の摩擦係数を低減させる方法としては、各種の潤滑性物質を感光体表面に含有させる方法と、外部より感光体表面に潤滑性物質を供給させる方法とに二分される。前者はエンジン廻りのレイアウトの自由度が高いため小径感光体には有利であるが、繰り返し使用によって摩擦係数は顕著に増加するため、その持続性に課題が残されている。一方、後者は潤滑性物質を供給する部品を備える必要があるため、小径感光体には不向きであるが、持続性に優れていることから感光体の高耐久化に対しては有効な手段である。その中で、潤滑性物質を現像剤に含有させることによって現像時に感光体に付着させる方法は、エンジン廻りのレイアウトにも制約を受けずに、感光体表面の摩擦係数低減効果の持続性も高いため、感光体の高耐久化に対して非常に有効な手段である。感光体表面の摩擦係数を低減することは、クリーニング性が高まるだけでなく、耐摩耗性の向上や転写効率の向上、さらにはフィルミングによる画像劣化の抑制等、高画質化に対し多くの利点を有している。
【0198】
これらの潤滑性物質としては、シリコーンオイル、フッ素オイル等の潤滑性液体、PTFE 、PFA、PVDF 等の各種フッ素含有樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコングリース、フッ素グリース、パラフィンワックス、脂肪酸エステル類、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑性液体や固体、粉体等が挙げられるが、現像剤に混合させる場合には粉末状の物質が好ましく、特にステアリン酸亜鉛は悪影響が少なく極めて有効に使用することができる。但し、感光体の摩擦係数が低すぎると現像に不具合が生じる場合がある。ステアリン酸亜鉛粉末をトナーに含有させる場合には、それらのバランスやトナーに与える影響を考慮する必要があり、トナーに対して0.01〜0.5wt%が好ましく、0.1〜0.3wt%がより好ましい。
【0199】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0200】
かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0201】
図6には、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体21は導電性支持体上に前記(I)式で表される量子効率の電界強度依存性を示す感光層を有し、さらに最表面層にフィラーを含有しており、駆動ローラー22a、22bにより駆動され、帯電チャージャ23による帯電、光源24による像露光、現像(図示せず)、転写チャージャ25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、ブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行なわれる。図6においては、感光体21に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0202】
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図6において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
【0203】
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行うこともできる。
【0204】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図7に示すものが挙げられる。感光体16は本発明の感光体であり、導電性支持体上に、前記(I)式で表される量子効率の電界強度依存性を示す感光層を有し、かつ最表層にフィラーを含有してなる。
【0205】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明が実施例により制約を受けるものではない。ただし、実施例1〜20は請求の範囲の減縮にともない参考的実施例とする。なお、部はすべて重量部である。
【0206】
実施例1
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布、乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層からなる電子写真感光体を形成した。◎下引き層塗工液
二酸化チタン粉末 400部
メラミン樹脂 65部
アルキッド樹脂 120部
2−ブタノン 400部
【0207】
◎電荷発生層塗工液
下記構造のビスアゾ顔料 12部
【化44】
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0208】
◎電荷輸送層塗工液1
A型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質(Ip:5.4eV) 7部
【化45】
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
【0209】
◎電荷輸送層塗工液2
A型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【化46】
シリカ微粒子(平均一次粒径:0.1μm、
「KMPX−100」信越化学製) 3部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
電荷輸送層は、上記電荷輸送層塗工液1を20μm相当量スプレー方法により形成し、該塗膜が指触乾燥する以前に続けて、電荷輸送層塗工液2を3μm相当量スプレー方法により形成し、フィラー濃度傾斜を有する電荷輸送層を形成した。
【0210】
実施例2
実施例1における電荷輸送層塗工液1および2を以下の組成のものに変更した以外は、実施例1と同様に感光体を作製した。
◎電荷輸送層塗工液1
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Ip:5.4eV) 15部
【化47】
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
【0211】
◎電荷輸送層塗工液2
下記構造式の高分子電荷輸送物質 15部
【化48】
シリカ微粒子(平均一次粒径:0.1μm、
「KMPX−100」信越化学製) 3部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
【0212】
実施例3
実施例1における下引き層、電荷発生層を同様に設け、その上に実施例1の電荷輸送層塗工液1を用い20μmの電荷輸送層を形成し加熱乾燥を行った。更に、下記組成の保護層塗工液を用い、電荷輸送層上に3μmの保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した。
◎保護層塗工液
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 5部
【化49】
アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業製) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
【0213】
実施例4
実施例3における保護層塗工液を以下の組成に変更した以外は、実施例3と同様に感光体を作製した。
◎保護層塗工液
Z型ポリカーボネート 8部
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Ip:5.4eV) 7部
【化50】
アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業製) 2部
塩化メチレン 80部
【0214】
実施例5
実施例1において、電荷発生層塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例1と同様に感光体を作製した。
◎電荷発生層塗工液
下記構造のビスアゾ顔料 12部
【化51】
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0215】
実施例6
実施例3において、電荷発生層塗工液を以下のものに変更した以外は、実施例3と同様に感光体を作製した。
◎電荷発生層塗工液
下記構造のビスアゾ顔料 12部
【化52】
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0216】
比較例1
実施例3において、電荷輸送層塗工液1を用い28μmの電荷輸送層を形成した以外はすべて実施例3と同様にして感光体を作製した。
【0217】
比較例2
実施例3において、電荷輸送層塗工液1を用い36μmの電荷輸送層を形成した以外はすべて実施例3と同様にして感光体を作製した。
【0218】
比較例3
実施例1において、電荷輸送層塗工液1のみを用いて、23μmの電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様に感光体を作製した。
【0219】
比較例4
実施例1において、電荷発生層塗工液を以下の組成のものに変更した以外は、実施例1と同様に感光体を作製した。
◎電荷発生層塗工液
下記構造のビスアゾ顔料 12部
【化53】
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0220】
以上のように作製した実施例1〜6および比較例1〜4の感光体は、特開昭60−100167号公報に開示されている測定装置を用いて、量子効率を測定した。
【0221】
まず、−6.0kVの帯電電圧で感光体の表面電位が−800Vになるまで帯電し、分光器を介したタングステン光(660nm)を照射して、その光減衰カーブを求めた。続いて、感光体の静電容量を求め、特許第2838891号公報記載の方法にて、感光体量子効率を求め、電界強度に対してプロットし、その依存性(傾き)bを求めた。
【0222】
また、以上のように作製した感光体を図5に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を660nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、初期画像の評価を行った。但し、画像ランクは下記のとおりに分類した。これらの結果を表1に示した。
◎:画像品質上まったく問題ないレベル
○:画像品質は若干低下したが、目視観察では問題ないレベル
△:目視観察でも画像品質の低下がわかるレベル
×:画像品質上重大な問題があるレベル
【0223】
以上の結果は、表1に併せて示す。
【0224】
【表1】
【0225】
表1の結果より、電荷発生物質として特定のアゾ顔料を用いて、本発明の構成とすることにより、いずれも良好な画像を得ることができたが、傾きbが0.5以上を示す感光体や感光層もしくは電荷輸送層の膜厚が25μmよりも厚い感光体では、感度劣化あるいは画像にじみの発生により、画像濃度や解像度が低下し、画質劣化を引き起こしたことが確認された。
【0226】
実施例7
アルミニウムシリンダー上に下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、および電荷輸送層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、21μmの電荷輸送層からなる電子写真感光体を形成した。◎下引き層塗工液
二酸化チタン粉末 400部
メラミン樹脂 65部
アルキッド樹脂 120部
2−ブタノン 400部
【0227】
◎電荷発生層塗工液
図8のX線回析パターンを有するチタニルフタロシアニン 8部
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 400部
【0228】
◎電荷輸送層塗工液1
C型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質(Ip:5.4eV) 7部
【化54】
塩化メチレン 80部
【0229】
◎電荷輸送層塗工液2
C型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【化55】
アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業製) 2部
塩化メチレン 80部
電荷輸送層は、上記電荷輸送層塗工液1を18μm相当量スプレー方法により形成し、該塗膜が指触乾燥する以前に続けて、電荷輸送層塗工液2を3μm相当量スプレー方法により形成し、フィラー濃度傾斜を有する電荷輸送層を形成した。
【0230】
実施例8
実施例7における電荷輸送層塗工液2に含有される電荷輸送物質を下記の電荷輸送物質(Ip:5.5eV)に変更した以外はすべて実施例7と同様にして電子写真感光体を作製した。
【化56】
【0231】
実施例9
実施例7における電荷輸送層塗工液1および2を以下の組成のものに変更した以外は、実施例7と同様に感光体を作製した。
◎電荷輸送層塗工液1
下記構造式の高分子電荷輸送物質(Ip:5.4eV) 15部
【化57】
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
【0232】
◎電荷輸送層塗工液2
下記構造式の高分子電荷輸送物質 15部
【化58】
アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業製) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
【0233】
実施例10
実施例7における下引き層、電荷発生層を同様に設け、その上に下記組成の電荷輸送層塗工液を用い、20μmの電荷輸送層を形成し加熱乾燥を行った。更に、下記組成の保護層塗工液を用い、電荷輸送層上に3μmの保護層を形成し、本発明の電子写真感光体を作製した。
◎電荷輸送層塗工液
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【化59】
塩化メチレン 80部
【0234】
◎保護層塗工液
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【化60】
アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業製) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
【0235】
実施例11
実施例10における保護層塗工液に含有される電荷輸送物質を下記の電荷輸送物質(Ip:5.5eV)に変更した以外はすべて実施例10と同様にして電子写真感光体を作製した。
【化61】
【0236】
実施例12
実施例10における保護層塗工液を以下の組成に変更した以外は、実施例10と同様に感光体を作製した。
◎保護層塗工液
Z型ポリカーボネート 8部
下記構造式の高分子電荷輸送物質 7部
【化62】
アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業製) 2部
塩化メチレン 80部
【0237】
比較例5
実施例10において、実施例7の電荷輸送層塗工液1を用い27μmの電荷輸送層を形成した以外はすべて実施例10と同様にして感光体を作製した。
【0238】
比較例6
実施例12において、実施例7の電荷輸送層塗工液1を用い35μmの電荷輸送層を形成した以外はすべて実施例12と同様にして感光体を作製した。
【0239】
比較例7
実施例7において、電荷輸送層塗工液1のみを用いて、21μmの電荷輸送層を形成した以外は、実施例7と同様に感光体を作製した。
【0240】
比較例8
実施例7において、電荷発生層塗工液を以下の組成のものに変更した以外は、実施例7と同様に感光体を作製した。
◎電荷発生層塗工液
下記構造のトリスアゾ顔料 12部
【化63】
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0241】
以上のように作製した実施例7〜12および比較例5〜8の感光体について、特開昭60−100167号公報に開示されている測定装置を用いて、量子効率を測定した。
【0242】
まず、−6.0kVの帯電電圧で感光体の表面電位が−800Vになるまで帯電し、分光器を介したタングステン光(780nm)を照射して、その光減衰カーブを求めた。続いて、感光体の静電容量を求め、特許第2838891号公報記載の方法にて、感光体量子効率を求め、電界強度に対してプロットし、その依存性(傾き)bを求めた。
【0243】
また、以上のように作製した感光体を図7に示す電子写真プロセス用カートリッジ(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、初期画像の評価を行った。但し、画像ランクは下記のとおりに分類した。これらの結果を表2に示した。
◎:画像品質上まったく問題ないレベル
○:画像品質は若干低下したが、目視観察では問題ないレベル
△:目視観察でも画像品質の低下がわかるレベル
×:画像品質上重大な問題があるレベル
【0244】
以上の結果は、表2に併せて示す。
【0245】
【表2】
【0246】
表2の結果より、電荷発生物質として特定のチタニルフタロシアニン顔料を用いて、本発明の構成とすることにより、いずれも良好な画像を得ることができたが、傾きbが0.5以上を示す感光体や感光層もしくは電荷輸送層の膜厚が25μmよりも厚い感光体では、感度劣化あるいは画像にじみの発生により、画像濃度や解像度が低下し、画質劣化を引き起こしたことが確認された。
【0247】
実施例13
電鋳Niベルト上に下記組成の下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、電荷輸送層塗工液、および保護層塗工液を、順次塗布・乾燥し、3μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、19μmの電荷輸送層、2μmの保護層からなる電子写真感光体を形成した。
◎下引き層塗工液
二酸化チタン粉末 100部
アルコール可溶性ナイロン 30部
メタノール 400部
ブタノール 200部
【0248】
◎電荷発生層塗工液
下記構造のビスアゾ顔料 12部
【化64】
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0249】
◎電荷輸送層塗工液
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【化65】
テトラヒドロフラン 100部
【0250】
◎保護層塗工液
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【化66】
酸化チタン微粒子(平均一次粒径:0.3μm、「CR97」石原産業製)2部
テトラヒドロフラン 100部
【0251】
実施例14
実施例13において、保護層塗工液に含まれる酸化チタン微粒子を下記の有機系フィラーに変更した以外はすべて実施例13と同様にして感光体を作製した。
エポスターS(日本触媒製) 2部
【0252】
実施例15
実施例13において、保護層塗工液に含まれる酸化チタン微粒子を平均一次粒径が0.1μmの酸化錫に変更した以外はすべて実施例13と同様にして感光体を作製した。
【0253】
実施例16
実施例13において、保護層塗工液に含まれる酸化チタン微粒子を平均一次粒径が0.9μmのアルミナ微粒子に変更した以外はすべて実施例13と同様にして感光体を作製した。
【0254】
実施例17
実施例13において、保護層塗工液に含まれる酸化チタン2部に対して、平均一次粒径が0.3μmのアルミナ微粒子と平均一次粒径が0.1μmのシリカ微粒子を1部ずつ含有させることに変更した以外は、すべて実施例13と同様にして感光体を作製した。
【0255】
実施例18
実施例13において、保護層塗工液に含まれる電荷輸送物質を除去した以外はすべて実施例13と同様にして感光体を作製した。
【0256】
比較例9
実施例13における電荷発生層塗工液を以下の組成に変更した以外は実施例13と同様に感光体を作製した。
◎電荷発生層塗工液
下記構造のビスアゾ顔料 12部
【化67】
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 200部
シクロヘキサノン 400部
【0257】
以上のように作製した実施例13〜18および比較例9の感光体について、静電複写紙試験装置(川口電気:EPA8100)を用いて、量子効率を測定した。
【0258】
まず、−6.0kVの帯電電圧で感光体の表面電位が−800Vになるまで帯電し、分光器を介したタングステン光(660nm)を照射して、その光減衰カーブを求めた。続いて、感光体の静電容量を求め、特許第2838891号公報記載の方法にて、感光体量子効率を求め、電界強度に対してプロットし、その依存性(傾き)bを求めた。
【0259】
また、以上のように作製した感光体を図6に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を 660nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、初期画像の評価を行った。但し、画像ランクは下記のとおりに分類した。これらの結果は、表3に示した。
◎:画像品質上まったく問題ないレベル
○:画像品質は若干低下したが、目視観察では問題ないレベル
△:目視観察でも画像品質の低下がわかるレベル
×:画像品質上重大な問題があるレベル
【0260】
【表3】
【0261】
表3の結果より、本発明の構成による感光体は、すべて問題ない画質が得られているが、無機性フィラーを選択したり、無機性フィラーの中でも比較的高抵抗を示すフィラーを用いることによって、より画質が向上する傾向が確認された。また、フィラーの平均一次粒径が非常に大きい場合には若干画質レベルが低下することが確認された。
【0262】
実施例19
実施例6において、保護層塗工液を下記組成の塗工液に変更し、電荷輸送層上に約5μmの保護層を形成した以外はすべて実施例6と同様にして、電子写真感光体を作製した。
◎保護層塗工液
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【化68】
アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
【0263】
実施例20
実施例19において、保護層塗工液を下記組成の塗工液に変更した以外はすべて実施例19と同様にして、電子写真感光体を作製した。
◎保護層塗工液
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【化69】
チタネートカップリング処理アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業製、表面処理量5wt%) 2部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
【0264】
実施例21
実施例19において、保護層塗工液を下記組成の塗工液に変更した以外はすべて実施例19と同様にして、電子写真感光体を作製した。
◎保護層塗工液
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 7部
【化70】
アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業製) 2部
不飽和ポリカルボン酸ポリマー湿潤分散剤
(酸価180mgKOH/g、「BYK−P104」BYKケミー製)0.04部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
分散剤の含有量をA、酸価をB、フィラーの含有量をCとしたとき、(A×B)/C=3.6であった。
【0265】
実施例22
実施例21において、電荷輸送層の膜厚を16μmとした以外はすべて実施例21と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0266】
実施例23
実施例21において、電荷輸送層の膜厚を24μmとした以外はすべて実施例21と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0267】
実施例24
実施例10において、保護層塗工液を下記組成の塗工液に変更し、電荷輸送層上に約5μmの保護層を形成した以外はすべて実施例10と同様にして、電子写真感光体を作製した。
◎保護層塗工液
Z型ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【化71】
アルミナ微粒子(平均一次粒径:0.3μm、
「AA−03」住友化学工業製) 2部
不飽和ポリカルボン酸ポリマー湿潤分散剤
(酸価180mgKOH/g、「BYK−P104」BYKケミー製)0.06部
テトラヒドロフラン 400部
シクロヘキサノン 150部
分散剤の含有量をA、酸価をB、フィラーの含有量をCとしたとき、(A×B)/C=5.4であった。
【0268】
実施例25
実施例24において、電荷輸送層の膜厚を16μmとした以外はすべて実施例24と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0269】
実施例26
実施例24において、電荷輸送層の膜厚を24μmとした以外はすべて実施例24と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0270】
比較例10
実施例21において、電荷輸送層の膜厚を30μmとした以外はすべて実施例21と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0271】
比較例11
実施例24において、電荷輸送層の膜厚を30μmとした以外はすべて実施例24と同様にして電子写真感光体を作製した。
【0272】
以上のように作製した感光体を図5に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を 660nm(実施例22、23、24及び比較例11の場合のみ780nm)の半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、初期画像の評価を行った。但し、画像ランクは下記のとおりに分類した。これらの結果は、表4に示した。
◎:画像品質上まったく問題ないレベル
○:画像品質は若干低下したが、目視観察では問題ないレベル
△:目視観察でも画像品質の低下がわかるレベル
×:画像品質上重大な問題があるレベル
【0273】
【表4】
【0274】
保護層の膜厚を増加させると、残留電位の影響により画像濃度が低下する傾向が見られた。しかし、ポリカルボン酸化合物を分散剤として含有させると残留電位を低減させることが可能となり、保護層の膜厚が厚い場合でも良好な画像を得ることが可能となった。しかし、感光層もしくは電荷輸送層の膜厚を25μmより厚くすると解像度が低下する傾向が見られた。
【0275】
次に実施例1〜26および比較例1〜11の感光体を図5に示す電子写真プロセス(ただし、クリーニング前露光は無し)のレーザープリンタ改造機に装着し、画像露光光源を 660nmもしくは780nmの半導体レーザー(ポリゴン・ミラーによる画像書き込み)として、帯電には帯電ローラーを使用し、連続して3万枚の印刷を行い、3万枚印刷後における画像評価を行った。また、初期及び3万枚印刷後における膜厚差より摩耗量を算出した。但し、画像ランクは下記のとおりに分類した。これらの結果を表5に示した。
◎:画像品質上まったく問題ないレベル
○:画像品質は若干低下したが、目視観察では問題ないレベル
△:目視観察でも画像品質の低下がわかるレベル
×:画像品質上重大な問題があるレベル
【0276】
【表5】
【0277】
繰り返し使用によって明部電位が上昇する傾向があり、全体的に若干画像濃度が低下する傾向が見られたが、ポリカルボン酸化合物を分散剤として含有させることによって、繰り返し使用後においても良好な画像を得ることが可能となった。また、感光層もしくは電荷輸送層の膜厚が厚くなるに従い、繰り返し使用後における画像劣化の影響が増加する傾向にあり、特に25μmより厚い膜厚を有する場合に顕著に見られた。本発明の構成を採用することによって、繰り返し使用後においても高感度を維持し、画質劣化を大幅に軽減できる感光体を得ることが可能となった。
【0278】
実施例27
実施例26の電子写真感光体を、電子写真プロセス用カートリッジ(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を780nmの半導体レーザーを用いたデジタル複写機の改造機にて連続して計10万枚の印刷を行い、初期及び10万枚印刷後の画像、摩耗量について評価を行った。帯電には帯電ローラーを使用した。結果を表6に示す。
【0279】
実施例28
実施例26の電子写真感光体を、電子写真プロセス用カートリッジ(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を780nmの半導体レーザーを用いたデジタル複写機の改造機にて連続して計10万枚の印刷を行い、初期及び10万枚印刷後の画像所見、摩耗量について評価を行った。用いた帯電ローラーには非画像領域に厚さ50μmのテフロン(登録商標)テープを巻き付け、感光体の画像領域には帯電ローラーと直接接触しない形状とした。結果を表6に示す。
【0280】
実施例29
実施例26の電子写真感光体を、電子写真プロセス用カートリッジ(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を780nmの半導体レーザーを用いたデジタル複写機の改造機にて連続して計10万枚の印刷を行い、初期及び10万枚印刷後の画像、摩耗量について評価を行った。用いた帯電ローラーには非画像領域に、厚さ50μmのテフロン(登録商標)テープを巻き付け、感光体の画像領域には帯電ローラーと直接接触しない形状とし、さらに帯電ローラーにAC(2kHz、1.8kVpp)+DC(−750V)を印加した。結果を表6に示す。
【0281】
実施例30
実施例26の電子写真感光体を、電子写真プロセス用カートリッジ(ただし、クリーニング前露光は無し)に装着し、画像露光光源を780nmの半導体レーザーを用いたデジタル複写機の改造機にて連続して計10万枚の印刷を行い、その際初期及び10万枚印刷後の画像、摩耗量について評価を行った。用いた帯電ローラーには非画像形成領域表面に、厚さ50μmのテフロン(登録商標)テープを巻き付け、感光体の画像領域に直接接触しない形状とし、帯電ローラーにAC(2kHz,1.8kVpp)+DC(−750V)を印加した。また、ステアリン酸亜鉛をトナー100重量部に対して0.1重量部添加して使用した。結果を表6に示す。
【0282】
【表6】
【0283】
表6の結果より、10万枚の印刷を行うと、地肌汚れが目立つようになったが、帯電ローラーを感光体と接触させないことによって、地肌汚れを軽減させることが可能となった。しかし、帯電の安定性が低下したことによって若干画像濃度にムラが確認された。そこで、帯電ローラーにACを重畳させることによって、それらの影響を抑制することが可能となった。一方、AC重畳することによって感光体の摩耗量が増加することが確認されたが、トナーに潤滑性物質としてステアリン酸亜鉛を適量添加することによって、耐摩耗性が向上し良好な画像を長期に渡って得ることが可能となった。
【0284】
【発明の効果】
本発明によれば、前記(I)式におけるbが0.5以下であるような量子効率の電界依存性が小さな電荷発生物質を使用することにより高感度化が、感光層の最表面層にフィラーを含有させることにより高耐久化が実現され、またそれによって感光層の膜削れが大幅に減少したことにより、繰り返し使用時の感度変動、さらには画像濃度変動が軽減された。さらに、感光層の膜削れが減少したことによって感光層の膜厚を25μm以下の薄い膜厚に設定できることにより、高画質化が実現された感光体が提供される。また、その感光体を使用したことにより、高速印刷が可能で、感光体の交換が不要であり、かつ繰り返し使用においても高画質化された画像が長期に渡って安定に得られる電子写真方法、電子写真装置、並びに電子写真用プロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の一例を表わす断面図である。
【図2】本発明の電子写真感光体の別の例を表わす断面図である。
【図3】本発明の電子写真感光体の別の例を表わす断面図である。
【図4】本発明の電子写真感光体の別の例を表わす断面図である。
【図5】本発明の電子写真方法及び電子写真装置の一例の概略図である。
【図6】本発明による電子写真方法の別の例を示す概略図である。
【図7】本発明のプロセスカートリッジの一般的な例を示す概略図である。
【図8】実施例7の電荷発生層に用いたチタニルフタロシアニンのX線回析パターンである。
【符号の説明】
31 導電性支持体
33 単層感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 保護層
Claims (34)
- 導電性支持体上に少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送物質を含有する電荷輸送層の積層構成を設けてなる電子写真感光体において、該電子写真感光体の最表面層に一種あるいは複数種のフィラー及び分散剤を含有し、該分散剤が少なくとも一つのカルボキシル基を構造中に含有するポリカルボン酸ポリマーであり、該電子写真感光体の量子効率ηと電子写真感光体にかかる電界強度Eとの関係を下記(I)式で表した場合、bが0.5以下であり、かつ該電荷輸送層の膜厚が25μm以下であることを特徴とする電子写真感光体。
η = a×Eb ……(I)
(ここで、ηは感光体の量子効率、aは定数、Eは電界強度を表す。) - 前記電荷輸送層上に最表面層として保護層を形成したことを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
- 前記電荷輸送層の膜厚が20μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
- 前記電荷発生物質がアゾ顔料もしくはフタロシアニン顔料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記アゾ顔料が下記(II)式で表されるアゾ顔料であることを特徴とする請求項4記載の電子写真感光体。
- 前記アゾ顔料のCp1とCp2が互いに異なるものであることを特徴とする請求項5記載の電子写真感光体。
- 前記フタロシアニン顔料がチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項4記載の電子写真感光体。
- 前記チタニルフタロシアニンが、CuKαの特性X線(波長1.514Å)に対するブラッグ角2θの回折ピーク(±0.2゜)として、少なくとも27.2゜に最大回折ピークを有するチタニルフタロシアニンであることを特徴とする請求項7記載の電子写真感光体。
- 前記電子写真感光体の最表面層もしくは保護層に含有されるフィラーが無機材料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記無機材料が、少なくとも一種の金属酸化物を含んでいることを特徴とする請求項9記載の電子写真感光体。
- 前記金属酸化物が、アルミナであることを特徴とする請求項10記載の電子写真感光体。
- 前記無機材料の少なくとも一種が、少なくとも一種の表面処理剤で表面処理を施されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記表面処理剤が少なくともチタネート系カップリング剤、高級脂肪酸もしくは高級脂肪酸金属塩であることを特徴とする請求項12記載の電子写真感光体。
- 前記表面処理が施された無機材料において、表面処理量が2〜30wt%であることを特徴とする請求項12又は13記載の電子写真感光体。
- 前記無機材料の平均一次粒径が、0.01μm〜0.8μmであることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記分散剤の含有量をA、前記分散剤の酸価をB、前記フィラーの含有量をCとしたときに、A、B及びCとの間に、下記の関係式を満たすことを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
0.1≦(A×B)/C≦20 - 前記保護層に電荷輸送物質を含有することを特徴とする請求項2〜16のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
- 前記保護層に含有される電荷輸送物質のイオン化ポテンシャルIpと、電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のそれとの間に下記の関係式が成り立つことを特徴とする請求項17記載の電子写真感光体。
保護層に含有される電荷輸送物質のIp
≦電荷輸送層に含有される電荷輸送物質のIp - 前記保護層に含有される電荷輸送物質が高分子電荷輸送物質を含んでいることを特徴とする請求項17記載の電子写真感光体。
- 前記高分子電荷輸送物質が、少なくともトリアリールアミン構造を主鎖および/又は側鎖に含むポリカーボネートであることを特徴とする請求項19記載の電子写真感光体。
- 電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写が繰り返し行われる電子写真方法において、該電子写真感光体が請求項1〜20のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真方法。
- 電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行い、かつ画像露光の際にはLDあるいはLEDによって感光体上に静電潜像の書き込みが行われる、デジタル方式の電子写真方法において、該電子写真感光体が請求項1〜20のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真方法。
- 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備してなる電子写真装置であって、該電子写真感光体が請求項1〜20のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置。
- 少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備してなる電子写真装置であって、画像露光手段にLDあるいはLEDを使用することによって感光体上に静電潜像の書き込みが行われる、デジタル方式の電子写真装置において、該電子写真感光体が請求項1〜20のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置。
- 前記電子写真装置において、帯電手段としてローラー状の帯電部材を用いることを特徴とする請求項23又は24記載の電子写真装置。
- 前記ローラー状の帯電部材を帯電手段として用いた電子写真装置において、該帯電部材と感光体とが画像形成領域において非接触であることを特徴とする請求項25記載の電子写真装置。
- 前記ローラー状の帯電部材を帯電手段として用いた電子写真装置において、直流成分に交流成分を重畳し感光体に帯電を与えることを特徴とする請求項25又は26記載の電子写真装置。
- 前記電子写真装置において、該感光体表面に潤滑性物質を付着させる手段を有することを特徴とする請求項23又は24記載の電子写真装置。
- 前記電子写真装置において、感光体上の潜像を現像する際に用いられる現像剤に、少なくとも一種の潤滑性物質が含有された現像剤を用いて現像することにより、感光体表面に該潤滑性物質を付着させることを特徴とする請求項28記載の電子写真装置。
- 前記電子写真装置において、潤滑性物質を外部より感光体表面に接触させることによって、感光体表面に該潤滑性物質を付着させることを特徴とする請求項28記載の電子写真装置。
- 前記電子写真装置において、少なくとも一種の潤滑性物質がステアリン酸亜鉛であることを特徴とする請求項28〜30のいずれか一項に記載の電子写真装置。
- 前記電子写真装置において、少なくとも一種の潤滑性物質がフッ素系化合物であることを特徴とする請求項28〜30のいずれか一項に記載の電子写真装置。
- 少なくとも電子写真感光体を具備してなる電子写真装置用プロセスカートリッジであって、該電子写真感光体が請求項1〜20のいずれか一項に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
- 請求項23〜32のいずれか一項に記載の電子写真装置に用いることを特徴とする請求項33記載の電子写真装置用プロセスカートリッジ。
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