JP3874329B2 - 積層型電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ - Google Patents

積層型電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積層型電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関し、さらに詳しくは、光感度が高く、しかも高速電子写真プロセスに対して優れた耐久性を有し安定した画像を得ることのできる積層型電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
カールソンプロセスや、このプロセスの種々の変形プロセスを用いた電子写真方法が、複写機、プリンター等に広く使用されている。
この電子写真方法に用いられる電子写真感光体(以下、単に感光体と言うことがある)としては、安価、大量生産性、無公害性等の利点から、近年、有機系の感光材料が汎用されてきている。
感光体における静電潜像形成のメカニズムは、感光体を帯電した後、光照射することにより、光は電荷発生材料により吸収され、光を吸収した電荷発生材料は電荷担体を発生し、この電荷担体は電荷輸送材料に注入され、帯電によって生じている電界にしたがって電荷輸送層(ないしは感光層)中を移動し、感光体表面の電荷を中和することにより静電潜像を形成するというものである。
【0003】
有機系の感光体には、ポリビニルカルバゾール(PVK)に代表される光導電性樹脂、2,4,7−トリニトロフルオレノン(PVK−TNF)に代表される電荷移動錯体型、フタロシアニン−バインダーに代表される顔料分散型、電荷発生物質と電荷輸送物質とを組み合わせて用いる機能分離型の感光体等が知られており、特に、機能分離型の感光体が注目され、実用化されている。
有機系の感光体材料は、従来から種々のものが開発されているが、これらを実用化できる優れた感光体とするには、感度、受容電位、電位保持性、電位安定性、残留電位、分光特性等の電子写真特性、耐摩耗性等の機械的耐久性、熱、光、放電生成物等に対する化学的安定性等、様々な特性が要求される。
【0004】
とりわけ、電子写真システムの小型化が望まれるに至って、感光体は小径化を余儀なくされ、露光から現像間のプロセス時間が短くなり、感光体の高速応答性が重要となってきた。
高感度特性は、適切な材料の選択がまず必要であるが、これに加えて処方面からの適切な設計も不可欠である。
しかしながら、従来、この高速応答性を要因とする処方設計は充分にはなされておらず、高速応答性の評価手法も満足すべきものが得られていなかった。
また、耐摩耗性を主とする機械的耐久性も強く要望されるようになってきたが、従来の有機系感光体及びこれを用いる電子写真プロセスでは、有機物の耐摩耗性の低さから、充分な耐久性が得られていない現状である。
高速な電子写真用感光体としては、例えば特開平8−6450号、特開平8−62862号公報において、有機電荷輸送材料の移動度を特定の範囲とするものが公知であるが、本発明のように電荷輸送層厚と電荷輸送層移動度との間に一定の関係を有する感光体とすることで、安定な高速電子写真プロセスに対応しうることは見出されていなかった。
さらに、特開平8−272198号公報において、感光層移動度、感光層厚、感光体に対向配置される像担持体移動速度及び感光層電界強度の間に、一定の関係を持たせることで潜像の乱れによる画像流れを防止し、均一な画像形成を可能とするものが開示されているが、画像形成装置の構成上、さらなる高速化には不利なものであり、かつ感光層と像担持体との時間的なタイミングのズレによる画像流れ対策を目的とする等、その課題は本発明と異なるものである。
本発明は、電荷輸送層厚と電荷輸送層移動度との間に一定の関係を有する感光体とすることで、安定な高速電子写真プロセスに対応することが可能となるものであるが、電荷輸送層厚が出力画像の高精細化に特に影響が大きい。例えば、積層型負帯電OPCの場合、露光入射光により電荷発生層で生成した正負のキャリアのうち電子は基体に吸収されるが、ホールは電荷輸送層を移動して感光体表面の電子と再結合して消滅する。この対消滅により、ホールを感光体表面に引き上げる電解は次第に弱くなり、光の当たっていない領域に向けてホールは移動するようになる。これは、キャリアの感光体表面方向への拡散現象と言われていて、露光入射光に忠実な潜像の形成を妨げ解像度の低下という画像劣化を招く要因となる。この拡散現象において電荷輸送層厚はその影響が大きく、その層厚を薄くすることは解像度の維持に対して非常に効果的である。さらに、近年主流となってきたレーザ露光において、その露光は従来のハロゲンランプ等の露光とは異なり、露光に関する入射フォトン流速は、ハロゲンランプの場合に比べ、約107倍大きい。そのため、生成するキャリア密度が極めて大きくなり、電荷輸送層に流れ出た電荷より電荷発生層の電解が弱められて、キャリア移動速度に影響レーザビーム中心近くに生成したキャリアの感光体表面への到達が遅延することにもなる。このようにして生じる空間電荷分布は感光体表面に平行方向のキャリアの拡散を生じやすくし、解像度低下に影響がより大きくなる。なお、移動度の高い電荷輸送材料を用いることがキャリアの感光体表面に平行方向への拡散を抑制することに効果的であることはさらに重要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来にない安定な高速電子写真プロセスを実現可能な積層型電子写真感光体を提供することをその課題とするものである。
すなわち、近年主流となってきたレーザを書き込み光源とするデジタル系高速電子写真プロセスに好適に利用できる電子写真感光体を提供することを課題とし、レーザ露光による極短時間のパルス露光においても十分な光減衰応答を有し、かつ上記の小径ドラム化による電子写真プロセス時間の短縮に対応できる高速応答性を達成せしめることがその目的である。
また、加えて出力画像の高精細化を企図する感光体の薄膜化において、問題となる機械的耐久性に優れた感光体の提供を目的とし、さらに、機械的耐久性に優れた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決しようとする手段】
本発明者らは、上記課題を達成するべく検討を重ねた結果、感光体の保護層にフィラーを含有させ、かつ電荷輸送層厚/電荷輸送移動度を一定値以下とすることにより、高速電子プロセスに対して優れた耐久性を有し、短時間のパルス光による光減衰においても良好な光減衰時間を有する感光体とすることができ、安定な高速電子写真プロセスに対応しうることを見出し、本発明を完成するに到った。また、上記感光体を用いることにより、機械的耐久性にも優れた画像形成装置(電子写真プロセス)が得られることを見出した。すなわち、本発明によれば、導電性基体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層及び保護層を形成してなる積層型電子写真感光体であって、該保護層は、シリカフィラーを含有し、該電荷輸送層は、電荷輸送材料を40重量%以上含有し、膜厚が10〜13μmであり、かつ2.5×10≦電荷輸送電界強度≦5.5×10V/cmにおける電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度1.5×10 V・s/m以下であることを特徴とする積層型電子写真感光体、少なくとも帯電−画像露光、現像、転写及び定着処理を施して行う画像形成方法であって、上記の積層型感光体を用いることを特徴とする画像形成方法、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写及び定着手段を有する画像形成装置であって、上記の積層型電子写真感光体を具備することを特徴とする画像形成装置並びに少なくとも帯電、画像露光、現像、転写及び定着手段を有する画像形成装置用プロセスカートリッジであって、上記の積層型電子感光体を具備することを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジが提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の積層電子写真感光体の概略断面図である。
図2は、本発明の他の積層電子写真感光体の概略断面図である。
電荷発生材料を主成分とする電荷発生層3と、電荷輸送材料を主成分とする電荷輸送層4とが、積層形成されている。
本発明においては、このような電子写真感光体の表層として保護層が形成される。この保護層5については後記する。
【0008】
導電性支持体1は、体積抵抗1010Ωcm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を、蒸着又はスパッタリングにより、フィルム状又は円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板又はそれらを素管化後、切削、超仕上げ、研磨等で表面処理した管等からなるものである。
【0009】
電荷発生層3は、電荷発生材料を主成分とする層である。
電荷発生材料には、無機又は有機材料が用いられ、代表的なものとしては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、フタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料、セレン、セレン−テルル合金、セレン−ヒ素合金、アモルファス・シリコン等が挙げられる。
これら電荷発生材料は、単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
電荷発生層3は、電荷発生材料を適宜バインダー樹脂とともに、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、2−ブタノン、ジクロルエタン等の溶媒を用いて、ボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を塗布することにより形成できる。
塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法等により行う。
適宜用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン、樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミド樹脂等を挙げることができる。
バインダー樹脂の量は、重量基準で電荷発生材料1部に対して0〜2部が適当である。
電荷発生層3は、公知の真空薄膜作製法によっても形成することができる。
電荷発生層3の膜厚は、通常は0.01〜5μm、好ましくは0.1〜2μmである。
【0010】
電荷輸送層4は、電荷輸送材料及びバインダー樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。
電荷輸送材料のうち、低分子電荷輸送材料には、電子輸送材料と正孔輸送材料とがある。
電子輸送材料としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド等の電子受容性物質が挙げられる。
これらの電子輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0011】
正孔輸送材料としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等の電子供与性物質が挙げられる。
これらの正孔輸送材料は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0012】
また、電荷輸送材料として高分子電荷輸送材料を用いる場合、適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥して電荷輸送層を形成してもよい。
高分子電荷輸送材料は、上記低分子電荷輸送材料に電荷輸送性置換基を主鎖又は側鎖に有した材料であればよい。
さらに必要により、高分子電荷輸送材料にバインダー樹脂、低分子電荷輸送材料、可塑剤、レベリング剤、潤滑剤等を適量添加することもできる。
【0013】
電荷輸送材料と共に電荷輸送層4に使用されるバインダー樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0014】
溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、2−ブタノン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、塩化メチレン等が挙げられる。電荷輸送層4の厚さは、10〜13μmの範囲で所望の感光体特性に応じて適宜選択すればよい。所望により電荷輸送層4に添加される可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等、樹脂に汎用の可塑剤を挙げることができ、その使用量は、重量基準でバインダー樹脂に対して0〜30%程度が適当である。所望により電荷輸送層4に添加されるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられ、その使用量は、重量基準でバインダー樹脂に対して0〜1%程度が適当である。
【0015】
本発明においては、感光層に含有される電荷輸送材量の含有量は、電荷輸送層の40重量%以上とするのが好ましい。好ましくは45〜50%である。40重量%未満では、感光体への5μs以下のパルス光露光において高速電子写真プロセスで使用される光量では十分な光減衰時間が達成不可能である。
本発明の感光体における電荷輸送層移動度は、2.5×105〜5.5×105V/cmの範囲の電荷輸送層電界強度の条件下で、3×10-5cm2/V・s以上であることが好ましく、7×10-5cm2/V・s以上であることがより好ましい。この移動度は、各使用条件下でこれを達成するように構成を適宜調整できる。この移動度は、従来公知のTOF法により求めればよく、測定用の試料は別途、同様の組成で半透明アルミニウム電極を有するポリエステルフィルム上に約7.5μmで成膜し、その上に約250Åの金電極を形成し試料とする。移動度の測定は、光源として窒素パルスレーザを用い、アルミニウム電極側から光照射し、過渡光電流波形から移動度を算出する。測定は室温(25℃)で行う。
また、電荷発生層と電荷輸送層からなる積層型感光体に対してゼログラフィックタイムオブフライト法により電荷輸送層の移動度を求めることができる。この場合、感光体を帯電させキセノンフラッシュランプによるパルス光(パルス半値幅5μs)を照射し、そのときの表面電位変化を高速表面電位計(TREK362A)により計測する。光パルス照射直後の表面電位減衰特性から、移動度を算出する。
本発明の感光体における電荷輸送厚/電荷輸送層移動度比は、1.5×103V・s/m以下、好ましくは1.0×103V・s/m以下である。
【0016】
本発明の積層型電子写真感光体には、導電性支持体1と感光層との間に下引き層を形成することができる。
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤を用いて塗布することを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。
また、下引き層には、モアレ防止、残留電位の低減等のために、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物の微粉末を加えてもよい。
この下引き層は、上記の感光層と同様、適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
さらに、下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えば、ゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層を用いることも有用である。
この他に、下引き層には、Al23を陽極酸化したものにより形成したもの、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物、SiO、SnO2、TiO2、ITO、Ce02等の無機物を真空薄膜作製法により形成したものも有効である。
下引き層の膜厚は、0〜5μmが適当である。
【0017】
本発明の積層型電子写真感光体には、表層として、感光層の保護及び耐久性の向上を目的にフィラーを含有する保護層5を感光層の上に形成するものである。この保護層5に使用される材料としては、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、ポリブチレン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエチン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリスルホン樹脂、AS樹脂、AB樹脂、BS樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
保護層5には、耐摩耗性を向上する目的でフィラーが添加される。
このフィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、これら樹脂に酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム等の無機材料を分散したもの等が挙げられる。
保護層5に添加されるフィラーの量は、重量基準で通常は、10〜30%、好ましくは、15〜25%である。
フィラーの量が、10%未満では、摩耗が大きく耐久性に劣り、30%を越えると、露光時における明部電位の上昇が著しくなって、感度低下が無視できなくなるので望ましくない。
また、このほかに、真空薄膜作製法により形成したi−C,a−SiC等の材料も保護層5として用いることができる。
保護層5の形成法としては、通常の塗布法が採用される。
保護層5の厚さは、0.5〜10μm程度が適当である。
【0018】
本発明においては、感光層と保護層との間に別の中間層を形成することも可能である。
中間層には、一般にバインダー樹脂を主成分として用いる。
このバインダー樹脂しては、ポリアミド樹脂、アルコール可溶性ナイロン、水溶性ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を挙げることができる。
中間層の形成法としては、上記の通常の塗布法が採用される。
中間層の厚さは、0.05〜2μm程度が適当である。
【0019】
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、各層に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、低分子電荷輸送物質およびレベリング剤を添加することができる。
各層に添加できる酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3'−ビス(4'−ヒドロキシ−3'−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロール類等のフェノール系化合物、N−フェニル−N'−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N'−ジメチル−N,N'−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミン等のパラフェニレンジアミン類、2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノン等のハイドロキノン類、ジラウリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3'−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3'−チオジプロピオネート等の有機硫黄化合物類、トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィン等の有機燐化合物類が挙げられる。
【0020】
各層に添加できる可塑剤として、例えば、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリクロルエチル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル系可塑剤、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジトリデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ブチルラウリル、フタル酸メチルオレイル、フタル酸オクチルデシル、フマル酸ジブチル、フマル酸ジオクチル等のフタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−n−オクチル、オキシ安息香酸オクチル等の芳香族カルボン酸エステル系可塑剤、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジ−n−ヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−オクチル、アジピン酸−n−オクチル−n−デシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジカプリル、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−n−オクチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−2−エトキシエチル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジイソデシル、テトラヒドロフタル酸ジオクチル、テトラヒドロフタル酸ジ−n−オクチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、オレイン酸ブチル、グリセリンモノオレイン酸エステル、アセチルリシノール酸メチル、ペンタエリスリトールエステル、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、トリアセチン、トリブチリン等の脂肪酸エステル誘導体系可塑剤、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、ブチルフタリルブチルグリコレート、アセチルクエン酸トリブチル等のオキシ酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸デシル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジデシル等のエポキシ可塑剤、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート等の二価アルコールエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、塩素化ジフェニル、塩素化脂肪酸メチル、メトキシ塩素化脂肪酸メチル等の含塩素可塑剤、ポリプロピレンアジペート、ポリプロピレンセバケート、ポリエステル、アセチル化ポリエステル等のポリエステル系可塑剤、p−トルエンスルホンアミド、o−トルエンスルホンアミド、p−トルエンスルホンエチルアミド、o−トルエンスルホンエチルアミド、トルエンスルホン−N−エチルアミド、p−トルエンスルホン−N−シクロヘキシルアミド等のスルホン酸誘導体系可塑剤、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸−n−オクチルデシル等のクエン酸誘導体系可塑剤、その他、ターフェニル、部分水添ターフェニル、ショウノウ、2−ニトロジフェニル、ジノニルナフタリン、アビエチン酸メチル等が挙げられる。
【0021】
また、各層に添加できる滑剤として、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、マイクロワックス、低重合ポリエチレン等の炭化水素系化合物、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルチミン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の脂肪酸系化合物、ステアリルアミド、パルミチルアミド、オレインアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等の脂肪酸アミド系化合物、脂肪酸の低級アルコールエステル、脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル等のエステル系化合物、セチルアルコール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセロール等のアルコール系化合物、ステアリン酸鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の金属石けん、カルナバロウ、カンデリラロウ、蜜ロウ、鯨ロウ、イボタロウ、モンタンロウ等の天然ワックス、その他、シリコーン化合物、フッ素化合物等が挙げられる。
【0022】
各層に添加できる紫外線吸収剤として、例えば、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルサルシレート、2,4ジ−t−ブチルフェニル3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシベンゾエート等のサルシレート系紫外線吸収剤、(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、(2'−ヒドロキシ5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2'−ヒドロキシ5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、(2'−ヒドロキシ3'−ターシャリブチル5'−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、メチル2−カルボメトキシ3(パラメトキシ)アクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル(2,2'チオビス(4−t−オクチル)フェノレート)ノルマルブチルアミン、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、コバルトジシクロヘキシルジチオホスフェート等のクエンチャー(金属錯塩系)紫外線吸収剤、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、8−ベンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕ウンデカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のHALS(ヒンダードアミン)系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0023】
本発明は、このように、導電性基体上に感光層及び保護層を形成し、所望により下引き層、中間層を形成した電子写真感光体であって、該保護層にフィラーを含有させることによって、摩耗に対する耐性を向上させ、耐久性を良好にするものである。なお、本電子写真感光体は、前述したように電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度比が一定の値を示すことを特徴とするもので、30μm以下の薄膜領域でその特性が維持される。かつ、この薄膜領域では、出力画像の高精細化に好適であることが画像形成装置として非常に有利である。しかしながら、薄膜感光体は摩耗に対する余裕度が低いので、フィラーを含有する保護層との構成により高速応答、高精細、高耐久感光体及びそれを用いた画像形成装置が達成される。
【0024】
本発明はさらに、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写及び定着処理を施して行う画像形成方法であって、上記積層型電子写真感光体を用いることを特徴とする画像形成方法及び少なくとも帯電、画像露光、現像、転写及び定着手段を有する画像形成装置であって、上記積層型電子写真感光体を具備することを特徴とするの画像形成装置を提供する。
【0025】
本発明の画像形成方法及び画像形成装置について説明する。
本発明者らは、電子写真プロセスの一層の高耐久性の実現を目的として検討した結果、帯電、画像露光、現像、転写工程を有する画像形成プロセスにおいて、フィラーを含有させた保護層を有する電子写真感光体を用いることによって、感光体磨耗量の低減化が達成し得ることを見出した。
ところで、感光層の膜削れが発生すると、感光体の電気特性(帯電性能や光減衰性能等)が変化し、所定の作像プロセスが行えなくなり、最終アウトプットとなるハードコピーの品質を維持することが困難になる。
この膜削れは電子写真プロセスにおいて、感光体と他の作像ユニットが接触する部位全てにおいて発生するが、最も問題となるユニットは、感光体に残留するトナーを力学的に除去するクリーニングユニット(ブレードorブラシ)である。他のユニットによる摩耗はあるものの、実質寿命に影響するほどではない。
クリーニングユニットで発生する摩耗は、主に二つの形態に分けられる。
一つは、感光体とブレード(ブラシ)に発生する剪断力による摩耗、もう一つは、トナーがブレード(ブラシ)と感光体に挟まれて、砥石のような働きをして摩耗するざらつき摩耗である。
これらに対して、感光体にフィラーを含有する保護層を設け、感光体の構造上の強さを向上することにより、摩耗を小さく抑制することができることが判明した。
【0026】
図面に基づいて、本発明の画像形成方法及び画像形成装置を説明する。
図3は、本発明の画像形成方法及び画像形成装置を示す概略図である。
感光体6は、導電性支持体上に感光層を形成してなっている。
感光体6は、ドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
必要に応じて、転写前チャージャ7、転写チャージャ、分離チャージャ、クリーニング前チャージャ8が配置され、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラをはじめとする公知の手段が用いられる。
帯電部材9により感光体に帯電を施す際、帯電部材9に直流成分に交流成分重畳した電界によって感光体を帯電させることが、帯電ムラを低減させる上に効果的である。
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図4に示されるように転写ベルト10を使用したものが有効である。
また、画像露光部11、除電ランプ12等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般を用いることができる。
そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0027】
光源等は、図3に示される工程の他に、光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程又は前露光等の工程を設けることにより、感光体6に光が照射される。
現像ユニット13により感光体6上に現像されたトナーは、転写紙14に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体6上に残存するトナーもあり、このようなトナーは、ファーブラシ15及びクリーニングブレード16により感光体6から除去される。
クリーニングは、クリーニングブラシのみで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシ等が用いられる。
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。
これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られ、また、正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
この現像手段には、公知の方法が適用され、また、除電手段にも公知の方法が採用される。
17はレジストローラー、18はイレーサ、19は分離爪である。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。
この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。
プロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。
本発明はまた、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写及び定着手段を有する画像形成装置用プロセスカートリッジであって、上記積層型電子写真感光体を具備することを特徴とする画像形成用プロセスカートリッジをも提供するものである。
図4は、画像形成装置用プロセスカートリッジの1例を示す概略図である。
【0028】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これら実施例によって本発明はなから限定されるものではない。まず、感光体としての高速応答性を確認するために、短パルス露光に対する光減衰応答の測定方法について説明する。パルス露光に対する光減衰応答の測定は、たとえば川口電機EPA8200に露光光源として浜松ホトニクスキセノンフラッシュランプモジュールC5604(露光パルス半値幅:3μs)を装着して測定することができる。なお、このとき各試料で光減衰量を調節するためにNDフィルタを使用し光量を変化させる。試料を約−500Vにコロナ帯電させ約−100Vに光減衰するパルス露光を与え、そのときの応答をストレージスコープに取り込むことにより測定を行うことができる。以下の実施例において、上記測定法における光減衰半減時間をパルス露光応答時間として示した。また、電荷輸送層の層厚は、sloan DEKTAKIIAを用い、基準面からの段差として測定する。電荷輸送層電界強度は電子写真プロセスでの帯電電位とこの層膜より算出する。なお、「部」とあるのは重量基準である。
実施例1
アルミニウム基体上に、下記組成の下引き層塗工液、電荷発生層塗工液、電荷輸送層塗工液及び保護層塗工液を、その順に塗布、乾燥し、3.5μmの下引き層、0.15μmの電荷発生層、12μmの電荷輸送層、2μmの保護層からなる電子写真感光体を作製した。
〔下引き層塗工液〕
二酸化チタン粉末 400部
メラミン樹脂 65部
アルキッド樹脂 120部
2−ブタノン 400部
〔電荷発生層塗工液〕
チタニルフタロシアニン 7部
ポリビニルブチラール 5部
2−ブタノン 400部
〔電荷輸送層塗工液〕
ポリカーボネート 10部
下記構造式の電荷輸送物質 8部
【化1】
Figure 0003874329
〔保護層塗工液〕
ポリカーボネート 13部
上記構造式の電荷輸送物質 9部
シリカ 6部
テトラヒドロフラン 700部
シクロヘキサノン 200部
このようにして作製した感光体を、川口電機社製EPA8200を用いて3μsのパルス露光に対する応答を調べたところ、500Vからの帯電半減光減衰時間0.09msを得た。なお、このときの光量は、100Vまで光減衰可能な光量とした。また、この感光体を内製の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることが判明した。さらに、同様の感光体を、直径60mmのアルミ基体上の作製し、この感光体を株式会社リコー製複写機イマジオMF4550の改造機に装着して複写試験を実施した。該複写機の画像露光〜現像工程間に要する時間は、約100msであった。出力画像における解像度は良好であり、解像度7.1本/mmを示し、また本複写速度においても感度不足による明部電位の上昇等による異常画像は認められなかった。なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×10V/cmでの移動度は、1×10−4cm/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=1.2×10 V・s/mであった。
【0029】
実施例2
アルミニウム基体上に、実施例1で用いた電荷発生物質と下記構造式で表される電荷輸送物質との比を重量基準で1:1として、0.2μmの電荷発生層を形成した。
【化2】
Figure 0003874329
その上に上記構造式で表される電荷輸送物質からなる13μmの電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして積層電子写真感光体を作製した。このようにして作製した感光体を、川口電機社製EPA8200を用いて3μsのパルス露光に対する応答を調べたところ、500Vからの帯電半減光減衰時間0.04msを得た。なお、このときの光量は100Vまで光減衰可能な光量とした。また、この感光体を内製の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることが判明した。さらに、同様の感光体を、実施例1と同様にして株式会社リコー製複写機イマジオMF4550の改造機に装着して複写試験を実施した。出力画像における解像度は良好であり、解像度6.3本/mmを示し、また本複写速度においても感度不足による明部電位の上昇等による異常画像は認められなかった。なお、本感光体の電荷輸送層の4.0×10V/cmでの移動度は、5×10−4cm/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=2.5×10 V・s/mであった。
【0030】
実施例3
アルミニウム基体上に、実施例1と同様の電荷発生層0.15μmを形成した。その上に、実施例1で用いた電荷輸送物質と実施例2で用いた電荷輸送物質とのの比を重量基準で1:1として、10μmの電荷輸送を形成した以外は、実施例1と同様にして積層電子写真感光体を作製した。このようにして作製した感光体を、川口電機社製EPA8200を用いて3μsのパルス露光に対する応答を調べたところ、500Vからの帯電半減光減衰時間0.05msを得た。なお、このときの光量は100Vまで光減衰可能な光量とした。また、この感光体を内製の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることが判明した。さらに、同様の感光体を、実施例1と同様にして株式会社リコー製複写機イマジオMF4550の改造機に装着して複写試験を実施した。出力画像における解像度は良好であり、解像度6.3本/mmを示し、また本複写速度においても感度不足による明部電位の上昇等による異常画像は認められなかった。なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×10V/cmでの移動度は、2×10−4cm/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=4.9×10 V・s/mであった。
【0031】
比較例1
アルミニウム基体上に、下記構造式で表される電荷発生物質とポリビニルブチラールとの比を重量基準で3:1として、0.2μmの電荷発生層を形成した。
【化3】
Figure 0003874329
この上に、実施例2で用いた電荷輸送物質とポリカーボネートとの比を重量基準で1:1として、25μmの電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして積層電子写真感光体を作製した。このようにして作製した感光体を、川口電機社製EPA8200を用いて3μsのパルス露光に対する応答を調べたところ、500Vからの帯電半減光減衰時間2.6msを得た。なお、このときの光量は100Vまで光減衰可能な光量とした。また、この感光体を内製の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、応答速度が不足し、この線速に対応不可能であることが判明した。なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×10V/cmでの移動度は、3×10−5cm/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送移動度は8.3×10 V・s/mであった。
【0032】
比較例2
実施例1の電荷輸送層を、実施例1に示す構造式で表される電荷輸送物質とポリカーボネートとの比を重量基準で3:7として、21μmの電荷輸送層を形成した以外は、実施例1と同様にして積層電子写真感光体を作製した。このようにして作製した感光体を、川口電機社製EPA8200を用いて3μsのパルス露光に対する応答を調べたところ、500Vからの帯電半減光減衰時間1.8msを得た。なお、このときの光量は100Vまで光減衰可能な光量とした。また、この感光体を内製の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、応答速度が不足し、この線速に対応不可能であることが判明した。なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×10V/cmでの移動度は、2×10−5cm/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送移動度は10.5×10 V・s/mであった。
【0033】
実施例4
アルミニウム基体上に、実施例1と同様の電荷発生層0.22μmを形成した。この上に、下記構造式で表される高分子電荷輸送物質からなる電荷輸送層13μmを形成した以外は、実施例1と同様にして積層電子写真感光体を作製した。
【化4】
Figure 0003874329
このようにして作製した感光体を、川口電機社製EPA8200を用いて3μsのパルス露光に対する応答を調べたところ、500Vからの帯電半減光減衰時間0.8msを得た。なお、このときの光量は100Vまで光減衰可能な光量とした。また、この感光体を内製の電子写真プロセスシミュレータを用いて200mm/sの線速でその動作特性を調べたところ、安定してこの線速に対応可能であることが判明した。さらに、同様の感光体を、実施例1と同様にして株式会社リコー製複写機イマジオMF4550に装着して複写試験を実施した。出力画像における解像度は良好であり、解像度6.3本/mmを示し、また本複写速度においても感度不足による明部電位の上昇等による異常画像は認められなかった。なお、本感光体の電荷輸送層の4.5×10V/cmでの移動度は、1×10−4cm/V・sであり、電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度=1.3×10 V・s/mであった。
【0034】
実施例5
直径60mmのアルミ基体上に実施例4と同様の各層を形成して電子写真感光体を作製した。
この感光体をリコー社製複写機イマジオMF4550に装着し、40000枚の複写試験を実施した。
複写機の画像露光から現像工程間に要する時間は、約100msであった。
出力画像は、初期及び40000枚後とも良好であり、本複写速度においても感度不足による明部電位の上昇等による異常画像は認められなかった。
また、40000枚複写後の、感光体の摩耗量は、0.8μmであり、保護層耐久性が確認された。
【0035】
比較例3
感光体に保護層が形成されていない以外は、実施例5と同様にして感光体を作製し、同様に40000枚の複写試験を実施した。
初期の出力画像は、実施例5と同様に良好であったが、40000枚後には、地汚れと感光体表面の荒れによると考えられる解像度の低下が認められた。
また、40000枚複写後の、感光体の摩耗量は3.5μmであった。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、光感度が高く、しかも高速電子写真プロセスに対して優れた耐久性を有し安定した画像を得ることのできる電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジが提供され、複写機、プリンター等の設計、製作分野に寄与するところは多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積層電子写真感光体の概略断面図である。
【図2】本発明の他の積層電子写真感光体の概略断面図である。
【図3】本発明の画像形成方法及び画像形成装置を示す概略図である。
【図4】本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジの1例を示す概略図である。
【符号の説明】
1 導電性支持体
2 感光層
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 保護層
6 感光体
7 転写前チャージャ
8 クリーニング前チャージャ
9 帯電部材
10 転写ベルト
11 画像露光部
12 除電ランプ
13 現像ユニット
14 転写紙
15 ファーブラシ
16 クリーニングブレード
17 レジストローラ
18 イレーサ
19 分離爪
101 感光ドラム
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 転写体
106 転写装置
107 クリーニングブレード
108 除電ランプ
109 定着装置

Claims (4)

  1. 導電性基体上に少なくとも電荷発生層、電荷輸送層及び保護層を形成してなる積層型電子写真感光体であって、該保護層は、シリカフィラーを含有し、該電荷輸送層は、電荷輸送材料を40重量%以上含有し、膜厚が10〜13μmであり、かつ2.5×10≦電荷輸送電界強度≦5.5×10V/cmにおける電荷輸送層厚/電荷輸送層移動度が1.5×10 V・s/m以下であることを特徴とする積層型電子写真感光体。
  2. 少なくとも帯電、画像露光、現像、転写及び定着処理を施して行う画像形成方法であって、請求項1に記載の積層型電子写真感光体を用いることを特徴とするの画像形成方法。
  3. 少なくとも帯電、画像露光、現像、転写及び定着手段を有する画像形成装置であって、請求項1に記載の積層型電子写真感光体を具備することを特徴とする画像形成装置。
  4. 少なくとも帯電、画像露光、現像、転写及び定着手段を有する画像形成装置用プロセスカートリッジであって、請求項1に記載の積層型電子写真感光体を具備することを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
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