JP3883097B2 - 電子写真感光体、これを用いた画像形成装置および画像形成装置用プロセスカートリッジ - Google Patents

電子写真感光体、これを用いた画像形成装置および画像形成装置用プロセスカートリッジ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は感光層中にフィラーと高分子電荷輸送物質を含有させた電子写真感光体と、該電子写真感光体を具備した画像形成装置、及び該電子写真感光体を用いた電子写真装置用プロセスカートリッジに関する。本発明の電子写真感光体とそれを用いた画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジは、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に応用される。
【従来の技術】
【0003】
従来、電子写真方式に於いて使用される感光体としては、導電性支持体上にセレンないしセレン合金を主体とする光導電層を設けたもの、酸化亜鉛・硫化カドミウム等の無機系光導電材料をバインダー中に分散させたもの、及び非晶質シリコン系材料を用いたもの等が一般的に知られているが、近年ではコストの低さ、感光体設計の自由度の高さ、低公害性等から有機光導電体を使用した電子写真有機感光体が広く利用されるようになってきた。
【0004】
一方、コンピュータを中心とした情報処理技術の発展は目覚ましく、電子写真複写機、電子写真プリンターなどの画像形成装置は情報処理装置としての重要性が高まってきた。これら画像形成装置の高速化、小型化、高画質化に伴い、それに使用する電子写真感光体(以後、感光体と記す。)には更なる高耐久化が要求されてきた。
【0005】
感光体は、画像形成装置の中で、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの反復過程で種々の機械的、化学的作用を受けて、その機械的特性、静電的特性が劣化する。機械的特性の劣化としては、感光体の摩耗、傷等が挙げられる。静電的特性の劣化としては、帯電過程で発生するオゾン、NOxガスによるバインダー樹脂、電荷輸送物質など感光体構成物質の酸化劣化による帯電性の低下、表面電荷の暗減衰の増大、感度劣化などがある。更に帯電時に発生し、一般にコロナ生成物として知られているものが感光体表面へ堆積することにより、画質低下が発生する。
【0006】
また前述のように高速化、小型化に伴い感光体が小径化され電子写真プロセスで感光体にかかる各種ハザードが増大する。特にクリーニング部ではゴムブレードが使用され十分にクリーニングするためにはゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、そのために感光体の摩耗が促進され、電位変動、感度変動が生じ、それによる異常画像、カラー画像の色バランスがくずれ色再現性に問題が発生するなどの不具合が生じる。
【0007】
このために、特開平1−205171号公報、特開平7−333881号公報、特開平8−15887号公報、特開平8−123053号公報、特開平8−146641号公報などには、感光体の耐摩耗性向上に関して、フィラーを添加する技術が提案されている。しかしこれらの技術は耐摩耗性の向上にはなるものの、長期連続繰り返し使用で明部電位が上昇し、画像濃度低下などの画像劣化が発生する。また、特開平8−179542号公報に提案されている保護層は機械的強度が高く耐摩耗性は向上するものの、画像解像力が低下し、文字の太りが観察され十分でない。
【0008】
特開昭59−223442号公報には保護層のフィラー濃度を表面側で高く、下層側で低くした2層構成で形成され、フィラーは導電性フィラーを使用する技術が開示されている。導電性フィラーを含有する保護層はドット画像露光では電荷の拡散があり、再現性が問題である。特に有機感光体の場合は、この問題が顕著である。また特開昭63−305364号公報には絶縁性の二酸化けい素粉とナイロン・ウレタンの混成膜でフィラー濃度を表面側で高く、下層側で低くした2層構成保護層が開示されているが、この保護層は環境依存性が大きく信頼性が低い。
【0009】
更に、特開平8−101524号公報、USP5677094には高分子鎖中に電荷輸送機能持った構造を有した高分子電荷輸送物質を保護層に用いる技術、更には高分子電荷輸送物資と高硬度のフィラーを含有した層を保護層として感光体表面に設ける技術が開示されている。この高分子電荷輸送物質とフィラーを含有させた保護層を有する感光体は、それまでの感光体に比べて、残留電位の上昇の抑制効果と耐摩耗性の向上はある程度可能である。
【0010】
しかしながら、この従来の高分子電荷輸送物質とフィラーを含有させた保護層を有する感光体は、繰り返し使用時に感光体の局部的な電荷リークに基づく異常画像が発生する欠点を有していた。例えば、感光体の帯電と同じ極性に荷電したトナーで現像した場合(反転現像)は画像地肌部に点状の地肌汚れが発生し(黒ポチ)、感光体の帯電と異なる極性に荷電したトナーで現像した場合(正規現像)は画像部が点状に色抜けした異常画像(白ポチ)が発生する欠点があった。更に、この従来の高分子電荷輸送物質とフィラーを含有させた保護層を有する感光体は、高温高湿度環境下に保存したり、感光体表面が紙、ゴム、手、指などと接触した場合に、膜表面あるいは膜内部に微小なクラックやキズが発生し、画像形成時にキズに対応した異常画像が発生したり、感光層がはがれる欠点を有していた。特に、小径の駆動、支持ローラーで搬送されるベルト状の感光体を用いた画像形成装置においては、ベルト感光体に駆動時や小径ローラー上で大きな張力がかかり、微小クラックが発生しやすく、感光体の寿命を顕著に短くする欠点を有していた。
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来の感光体の欠点を解決し、耐摩耗性を向上させ、繰り返し使用しても電位変動がなく、点状の異常画像が発生しない、且つ高温高湿環境下での保存においても微小クラックの発生がなく、それに基づく異常画像の発生しない、高感度で高寿命な電子写真感光体を提供することである。本発明の他の目的は、前記感光体を用いた高寿命で安定した画像形成可能な画像形成装置を提供することである。本発明のさらに他の目的は、前記感光体を用いた高耐久な画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、耐摩耗性に優れ、且つ感度劣化、残留電位の上昇が少なく、更には微小クラックの発生が少なく、点状の画像欠陥の発生しない感光体の提供を目的として、感光層中に高分子電荷輸送物質とフィラーを含有させた感光体について鋭意検討を行った。その結果、感光層が少なくとも電荷発生物質、トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびフィラーを含有すること、更には、該感光層中のフィラーと該トリアリールアミン構造を持ち且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質が導電性基体側より最も離れた表面側に存在することによって、耐摩耗性が飛躍的に向上し、長時間高温高湿度環境下に保存しても感光層の微小クラックの発生がなく、繰り返し使用時の黒ポチ・白ポチ等の点状異常画像の発生がない、高耐久で高感度な感光体が提供可能であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0013】
従って、本発明によれば、感光層が少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送層からなり、該電荷輸送層がトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびシリカ、アルミナから選ばれる少なくとも1種のフィラーを含有し、かつ、該電荷輸送層の導電性基体側より最も離れた表面側の該フィラー含有率が高いことを特徴とする電子写真感光体が提供される。この感光体においては、感光層中のフィラーは該感光層の導電性基体側より最も離れた表面側でその含率層が高くなっているのが好ましい。
【0014】
本発明の感光体は、感光層が単層からなるものの他、電荷発生層、電荷輸送層の積層であってもよい。そして積層型感光体にあっては、特に電荷輸送層は少なくとも高分子電荷輸送物質(トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメント有している高分子電荷輸送物質であってもそうでなくてもよい)を含有する層と、少なくともトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびフィラーを含有する層とから構成されるか、又は少なくとも低分子電荷輸送物質およびバインダー樹脂を含有する層と、少なくともトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびフィラーを含有する層とから構成されることが好ましい。ここで、およびにおけるフィラーを含有する層は導電性基体側より最も離れた表面側に位置する。
【0015】
また、本発明によれば、少なくとも帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および上記の感光体を具備した画像形成装置が提供される。
【0016】
さらに本発明によれば、上記の感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段から選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在にとりつけられるようにした画像形成装置用プロセスカートリッジが提供される。
【0017】
本発明の感光体、この感光体を有する画像形成装置並びに画像形成装置用プロセスカートリッジの使用によれば、感光体は高耐久で高感度であり、繰り返し使用時の異常画像の発生がなく、長期にわたって良質の画像が得られる。このような効果が何故もたらされるかの理由は現時点ではいまだ明確になってはいないが、本発明者らは以下の如く考えている。
【0018】
有機感光体の感光層はその構成材料を適性な有機溶媒に溶解、又は分散した塗工液を導電性支持体上に塗布し、乾燥して作製する。一般に、高分子電荷輸送物質を含有する塗布液を塗布、乾燥すると、乾燥、冷却過程で高分子電荷輸送物質には種々の構造的ひずみが生じ高分子電荷輸送物質を含有する層中には内部応力が発生する。特に0.01μm〜1μm径の微小フィラーが存在する場合は、フィラーの周りに近接した嵩高い電荷輸送構造を有する高分子鎖はフィラーのない場合に比べて不自然な絡み合いを起こし、歪みが発生しやすく、フィラー近傍での高分子電荷輸送物質には過度のストレスがかかり、感光層には局所的に強いストレスがかかっていると考えられる。この局所的なストレスが存在する箇所は、繰り返し使用で感光体に前記の種々の化学的、機械的なハザードを受け、耐電電荷のリークを引き起こし、点状の異常画像が発生したり、感光体中に微小クラックが発生する要因となると考えられる。
【0019】
これに対して、本発明で用いる高分子電荷輸送物質は、その高分子主鎖又は側鎖中にトリアリールアミン構造のブロックを有するとともに、その高分子主鎖中にソフトセグメントを有することを特徴とする。この場合、ソフトセグメントは、例えば、一般式(4)〜(13)で表わされる高分子電荷輸送物質中の−OWOCO−(ここでWは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記(化16)で表わされる2価基を表わす)と定義される。
【0020】
【化16】
Figure 0003883097
[式中、R101、R102は置換もしくは無置換のアルキル、アリール基またはハロゲン原子を表わし、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(Zは炭素原子数1〜12の脂肪族の2価基を表わす)]
一方、トリアリールアミン構造を有するブロックには、下記一般式で表わされるトリアリールアミンから誘導されるものが包含される。
【0021】
【化17】
Figure 0003883097
(式中、Ar1、Ar2およびAr3は同一又は異なっていてもよいアリール基を表わし、また、アリール基はベンゼン環の他、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等の縮合多環芳香環や、ビフェニル、t−フェニル等の鎖状多環芳香環等が包含される)
前記トリアリールアミン構造のブロックが主鎖に結合する場合の例としては、下記の一般式(8)、(10)、(11)、(13)で表わされたものなどがあげられる。
【0022】
また、前記トリアリールアミン構造が側鎖に結合する場合の例としては、下記の一般式(4)、(5)、(6)、(7)、(9)(12)で表わされたものなどがあげられる。
【0023】
このような高分子電荷輸送物質において―(OWOCO)―の部位は、この高分子電荷輸送物質に可撓性を付与するとともに、膜を形成したときに発生する内部応力を緩和すると考えられる。その為、膜中又は膜表面の微小クラックの発生が押さえられる。特に高分子電荷輸送物質中にフィラーを含有した層においては、このソフトセグメント構造がフィラー粒子に絡まって、嵩高い電荷輸送構造部位が集まって動きの取れない状態になっている高分子電荷輸送物質に適度な空間を与え、回転、振動などによるエネルギ緩和を助けることにより内部応力の緩和が行われ、微小クラックが発生しにくく、且つ自由空間の少ない緻密な膜が形成されたものと考えられる。そして、この緻密な膜が、感光体の局所的な電荷リークの発生を防ぎ、反転現像を用いて画像形成した時、地肌部に黒ポチない良好な画像が形成され、更に画像形成プロセスの繰り替えしによる黒ポチの増加が少ない原因と考えられる。
【発明の実施の形態】
【0024】
以下、本発明の感光体を図面に沿ってさらに詳細に説明する。図1は、本発明の感光体の一例を表わす断面図であり、導電性支持体31上に、少なくとも電荷発生物質とトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質とフィラーを含有する感光層33が設けられている。フィラーは感光層全体に均一に含有しても良いが、本発明で使用するフィラーは電気抵抗が高く、電荷輸送機能を有しないものであり、電荷トラップによる感度低下を考慮すると感光層表面近傍に多く含有させるのがより好ましい。
【0025】
図2は、本発明の感光体の異なる実施形態を示している。即ち、導電性支持体31上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、少なくともトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質とフィラーを含有した電荷輸送層37とが、積層された構成をとっている。電荷輸送層37中のフィラーは図1の場合と同じく、電荷輸送層表面近傍に多く含有させるのがより好ましい。
【0026】
更に図3、図4は電荷輸送層が積層構造を有した感光体の例である。図3は、導電性支持体31上に設けられた感光層が、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、低分子電荷輸送物質およびバインダー樹脂を主成分とする電荷輸送層37−1と、トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびフィラーを含有する電荷輸送層37−2とから構成されている場合である。
【0027】
図4は導電性支持体31上に設けられた感光層が、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35と、高分子電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37−3と、トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびフィラーを含有する電荷輸送層37−2とから構成されている場合である。
【0028】
導電性支持体31としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙などの支持体に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体31として用いることができる。
【0029】
この他、プラスチックシートや紙などの上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体31として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0030】
更に、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体31として良好に用いることができる。
【0031】
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層35と電荷輸送層37で構成される場合から述べる。
【0032】
始めに電荷発生層35について説明する。電荷発生層35は、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0033】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0034】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0035】
電荷発生層35に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0036】
電荷発生層35には、必要に応じて電荷輸送物質を添加してもよい。電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
【0037】
電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0038】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0039】
電荷発生層35を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法、リングコート法などを用いて行なうことができる。
【0040】
以上のようにして設けられる電荷発生層35の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0041】
次に、電荷輸送層37について説明する。電荷輸送層37は、前述の図2のように単層から構成される場合もあるが、図3、図4のように積層構成の場合もある。本発明においては、少なくとも感光体表面近傍にトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質とフィラーを含有することが必須要件である。
【0042】
図2のように単層構成の電荷輸送層37として構成される場合には、電荷輸送層全体にトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質とフィラーを含有しても構わないが、本発明に有効に用いられるフィラーは、電気絶縁性が高く電荷輸送機能を有しないものであるため、電荷輸送層全域にフィラーが存在するよりは、むしろフィラー濃度に傾斜を有するような構成で、感光体表面近傍においてフィラー濃度が高いような構成になっているのが好ましい。
【0043】
このような構成は、例えば、湿式法で電荷輸送層を形成する場合においては、電荷輸送層の電荷発生層に近い部分をフィラー濃度の低い電荷輸送層用塗工液を用いて形成し、引き続きフィラー濃度の高い電荷輸送層用塗工液を連続的(少なくとも先に形成した部分が指触乾燥する前)に塗工することにより、形成されるものである。このように、単層構成の電荷輸送層の場合には、電荷発生層側の構成材料と表面側の構成材料が同一であることが好ましく、本発明においては必然的にトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質とフィラーが用いられる。
【0044】
一方、図3、図4のように電荷輸送層が積層構成からなる場合には、以下のような構成で電荷輸送層が構成される。この構成においては上述の図2の場合と異なり、電荷発生層側に形成される電荷輸送層(図3においては37−1、図4においては37−3として例示されている)と感光体表面側に形成される電荷輸送層(図3、図4においてはともに37−2と例示されている)の材料構成を異なるものにして構わなく、むしろ電荷輸送層の機能分離の考え方からして、積極的に取り入れるべきであり、有効な手段である。
【0045】
本発明の必須要件である、“感光体表面近傍にトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質とフィラーを含有すること”を満足する構成であれば、電荷輸送層をいかなる構成にしても構わない。すなわち1つの方法として、図3に示すように、電荷発生層側の電荷輸送層37−1は、低分子電荷輸送物質とバインダー樹脂を主成分として構成される。これは、既存の材料を水平展開できると共に、コストメリットも大きく、また電荷輸送層設計の自由度の大きさの点でアドバンテージが大きい。更に、既存の構成では耐摩耗性の点でできなかった電荷輸送層中の低分子電荷輸送物質の高濃度化が展開できる。これを行うことにより、今までの感光体では達成し得なかった高移動度に基づく高速応答性が実現できる。
【0046】
また、別の方法である図4の構成においては、電荷発生層側の電荷輸送層37−3は、高分子電荷輸送物質を主成分とする構成からなる。この構成においては、表面側の電荷輸送層を積層する際に、電荷発生層側の電荷輸送層37−3が侵されにくいというメリットを有している。また、高分子電荷輸送物質最大の特徴としての電荷輸送部位の高密度化が実現できる。このように電荷発生層側で高分子電荷輸送物質を用いる場合には、前述のような分子内のソフトセグメントは必ずしも必須ではなく、電荷輸送部位のハイレベルの高濃度化が達成できる。この効果は、上述の低分子電荷輸送物質/バインダー樹脂系の電荷輸送層37−1と同じであるが、上層への低分子電荷輸送物質の溶けだし、あるいは結晶化などの点を考慮すれば、図4の構成の効果が大きいと言える。
【0047】
以下、電荷輸送層37について更に詳細に述べるが、前述のように電荷輸送層は積層構成と単層構成の場合があるので、各々の場合について述べる。先に積層構成の場合について述べる。
【0048】
図3に示される電荷輸送層37−1は、低分子電荷輸送物質がバインダー樹脂と伴に溶解、塗工、乾燥して形成される。バインダー樹脂としてはフィルム形成能の良いポリカーボネート(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプ、ビスフェノールCタイプ、あるいはこれら共重合体)、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステル、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などが用いられる。
【0049】
中でも、下記一般式(2)、(3)で示されるバインダー樹脂(ポリカーボネート)が良好に使用される。
【0050】
【化18】
Figure 0003883097
【0051】
【化19】
Figure 0003883097
[前記式中、R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R6とR7とはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基を表し、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは炭素原子数1〜12の脂肪族の2価基を表す。)または、
【0052】
【化20】
Figure 0003883097
(式中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R8、R9は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表し、R6とR7は、それぞれ同一でも異なってもよい)、p、qは組成(モル分率)を表し、0.1≦p≦1、0≦q≦0.9の数を表し、nは繰り返し単位数を表し5〜5000である]
これらポリカーボネートの好ましい特性は強靱性が高く、フィルム性が良いことが挙げられる。また低分子電荷輸送物質との相溶性良いことが重要な条件であることから前記一般式(2)及び(3)で示されるポリカーボネートは好適である。
【0053】
これらポリカーボネートの具体例としては以下に挙げるが、これらにより本発明が限定されるものでない。
【0054】
【化21】
Figure 0003883097
【0055】
【化22】
Figure 0003883097
【0056】
【化23】
Figure 0003883097
【0057】
【化24】
Figure 0003883097
【0058】
【化25】
Figure 0003883097
【0059】
【化26】
Figure 0003883097
【0060】
【化27】
Figure 0003883097
【0061】
【化28】
Figure 0003883097
【0062】
【化29】
Figure 0003883097
【0063】
【化30】
Figure 0003883097
【0064】
【化31】
Figure 0003883097
【0065】
【化32】
Figure 0003883097
【0066】
【化33】
Figure 0003883097
【0067】
【化34】
Figure 0003883097
【0068】
【化35】
Figure 0003883097
【0069】
【化36】
Figure 0003883097
【0070】
【化37】
Figure 0003883097
【0071】
【化38】
Figure 0003883097
【0072】
【化39】
Figure 0003883097
【0073】
【化40】
Figure 0003883097
【0074】
【化41】
Figure 0003883097
【0075】
【化42】
Figure 0003883097
これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0076】
電荷輸送層37−1に使用される低分子電荷輸送物質は、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065、52−139066号公報に記載)イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特願平1−77839号に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955、55−156954、55−52063、56−81850などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245、58−198043に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号に記載)、ピレン誘導体(特願平2−94812号に記載)などを使用することができる。
【0077】
中でも、下記一般式1で表される低分子輸送物質が良好に用いられる。これら低分子輸送物質は移動度が高く、感光特性にすぐれる。また上記バインダー樹脂との相溶性が良く好ましい。
【0078】
【化43】
Figure 0003883097
(式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基を表す。R2、R3は置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
ここで、R1は水素原子、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子を表すが、その具体例としては以下のものを挙げることができ、同一であっても異なってもよい。アルキル基として好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基はさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有しても良い。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0079】
R2、R3は置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0080】
ここで、R1、R2、R3における置換もしくは無置換のアリール基の具体例としては以下のものを挙げることができ、またR2、R3は同一であっても異なってもよい。
【0081】
芳香族炭化水素基としては、スチリル基、フェニル基、縮合多環基としてナフチル基、ピレニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a、d]シクロヘプテニリデンフェニル基、非縮合多環基としてビフェニリル基、ターフェニリル基などが挙げられる。複素環基としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基などが挙げられる。
【0082】
上述のアリール基は以下に示す基を置環基として有してもよい。
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
(2)アルキル基としては、上記のR1、R2、R3と同様のものが挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR105)としては、R105は(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基としては、アリール基としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有しても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。
(5)置換メルカプト基またはアリールメルカプト基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
(6)アルキル置換アミノ基としては、アルキル基は(2)で定義したアルキル基を表す。具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−プロピルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
(7)アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0083】
以下一般式(1)で表される低分子電荷輸送物質の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものでない。
【0084】
【化44】
Figure 0003883097
【0085】
【化45】
Figure 0003883097
【0086】
【化46】
Figure 0003883097
【0087】
【化47】
Figure 0003883097
【0088】
【化48】
Figure 0003883097
【0089】
【化49】
Figure 0003883097
【0090】
【化50】
Figure 0003883097
【0091】
【化51】
Figure 0003883097
【0092】
【化52】
Figure 0003883097
【0093】
【化53】
Figure 0003883097
【0094】
【化54】
Figure 0003883097
【0095】
【化55】
Figure 0003883097
【0096】
【化56】
Figure 0003883097
【0097】
【化57】
Figure 0003883097
【0098】
【化58】
Figure 0003883097
【0099】
【化59】
Figure 0003883097
これら低分子電荷輸送物質の量はバインダー樹脂100重量部に対し、20〜300重量部が適当であり、好ましくは40〜150重量部である。また、電荷輸送層37−1の膜厚は解像度・応答性の点から、30μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5μm以上が好ましい。
【0100】
電荷輸送層37−1の形成に用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
【0101】
次に図4に示される電荷輸送層37−3について述べる。電荷輸送層37−3は高分子電荷輸送物質を主成分とする層である。この層は、少なくとも高分子電荷輸送物質を溶解、塗工して形成される。ここで用いられる高分子電荷輸送物質としては、先の一般式(4)〜(13)で示されるようなトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有しているもの、特開平5−202135号記載のトリアリールアミン骨格をもつアクリル樹脂、ポリビニルカルバゾールなど公知の高分子電荷輸送物質を用いることができる。また、前記高分子電荷輸送物質を単独で用いることもできるが、必要に応じてバインダー樹脂あるいは低分子電荷輸送物質を添加できる。電荷輸送層の膜厚は上記同様に解像度・応答性の点から、30μm以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5μm以上が好ましい。
【0102】
電荷輸送層37−3の形成に用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
【0103】
次に図3、図4に示される電荷輸送層37−2について述べる。この層は、感光層の最表面層に位置し、少なくともトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質とフィラーが含有されている。ここで用いることのできる高分子電荷輸送物質は、トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質であって、本発明の目的・効果を発現されるものであれば、公知のいかなる材料をも使用することができる。中でも、下記一般式(4)〜(13)で表される高分子電荷輸送物質が良好に使用される。
【0104】
【化60】
Figure 0003883097
【0105】
【化61】
Figure 0003883097
【0106】
【化62】
Figure 0003883097
【0107】
【化63】
Figure 0003883097
【0108】
【化64】
Figure 0003883097
【0109】
【化65】
Figure 0003883097
【0110】
【化66】
Figure 0003883097
【0111】
【化67】
Figure 0003883097
【0112】
【化68】
Figure 0003883097
【0113】
【化69】
Figure 0003883097
[前記式中、R11、R12、R13はそれぞれ水素原子、又は独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R10は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R14、R15は置換もしくは無置換のアリール基、R16は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、Ar11、Ar12、Ar13、Ar18、Ar19、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28、Ar29は同一又は異なるアリレン基、p、qは組成(モル分率)を表し、0.1≦p<1、0<q≦0.9の数を示し、nは繰り返し単位数を表し5〜5000であり、mは1〜5の整数、Y1、Y2、Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。Wは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表される2価基を表す]
【0114】
【化70】
Figure 0003883097
[式中、R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表し、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは炭素原子数脂肪族の2価基を表し)を表す]
以下、これら高分子電荷輸送物質におけるトリアリルアミン構造を有するブロック[A]と、ソフトセグメント[B]との組合わせの具体例の幾つかを以下に示す。この分子電荷輸送物質における[A]のモル分率(P)は0.1≦P<1であり、[B]のモル分率(q)は0<q≦0.9であり、その分子量は1万〜50万である。なお、本発明のトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質は下記具体例に限定されるものではない。
【0115】
【化71】
Figure 0003883097
【0116】
【化72】
Figure 0003883097
【0117】
【化73】
Figure 0003883097
【0118】
【化74】
Figure 0003883097
【0119】
【化75】
Figure 0003883097
【0120】
【化76】
Figure 0003883097
【0121】
【化77】
Figure 0003883097
【0122】
【化78】
Figure 0003883097
【0123】
【化79】
Figure 0003883097
【0124】
【化80】
Figure 0003883097
【0125】
【化81】
Figure 0003883097
【0126】
【化82】
Figure 0003883097
【0127】
【化83】
Figure 0003883097
【0128】
【化84】
Figure 0003883097
【0129】
【化85】
Figure 0003883097
【0130】
【化86】
Figure 0003883097
【0131】
【化87】
Figure 0003883097
【0132】
【化88】
Figure 0003883097
【0133】
【化89】
Figure 0003883097
【0134】
【化90】
Figure 0003883097
【0135】
【化91】
Figure 0003883097
【0136】
【化92】
Figure 0003883097
【0137】
【化93】
Figure 0003883097
【0138】
【化94】
Figure 0003883097
【0139】
【化95】
Figure 0003883097
【0140】
【化96】
Figure 0003883097
【0141】
【化97】
Figure 0003883097
【0142】
【化98】
Figure 0003883097
【0143】
【化99】
Figure 0003883097
【0144】
【化100】
Figure 0003883097
【0145】
【化101】
Figure 0003883097
【0146】
【化102】
Figure 0003883097
【0147】
【化103】
Figure 0003883097
【0148】
【化104】
Figure 0003883097
これらトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子輸送物質は単重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体の形態で重合される。そして、これらトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質はバインダー樹脂としての役割をもつことから被膜形性能を有していることが必要である。そのため、分子量は、GPCによる測定において、ポリスチレン換算分子量Mwとして1万〜50万が適当で、好ましくは5万〜40万である。これらトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子輸送物質は特開平8−269183号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号公報、特開平9−272735号公報、特開平11−29634号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開2000−26590号公報に開示されている。
【0149】
次に、電荷輸送層37−2に用いられるフィラーについて述べる。フィラーには、有機性フィラーと無機性フィラーがある。有機性フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機性フィラー材料としては、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素などの無機材料が挙げられる。これらのフィラーの中で、フィラーの硬度の点から無機フィラーを用いることが耐摩耗性の向上に対し有利である。
【0150】
更に、高画質化に有効なフィラーとしては、電気絶縁性が高いフィラーが好ましく、シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等が特に有効に使用できる。これらフィラー同士あるいは他のフィラーとを2種類以上を混合することも可能である。また、誘電率が5以下のフィラーと誘電率が5以上のフィラーとを2種類以上混合したりして用いることも可能である。
【0151】
更に、これらのフィラーは少なくとも一種の表面処理剤で表面処理させることが可能であり、そうすることがフィラーの分散性の面から好ましい。フィラーの分散性の低下は残留電位の上昇だけでなく、塗膜の透明性の低下や塗膜欠陥の発生、さらには耐摩耗性の低下をも引き起こすため、高耐久化あるいは高画質化を妨げる大きな問題に発展する可能性がある。表面処理剤としては、従来用いられている表面処理剤すべてを使用することができるが、フィラーの絶縁性を維持できる表面処理剤が好ましい。例えば、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、高級脂肪酸等、あるいはこれらとシランカップリング剤との混合処理や、Al2O3、TiO2、ZrO2、シリコーン、ステアリン酸アルミニウム等、あるいはそれらの混合処理がフィラーの分散性で好ましい。シランカップリング剤による処理は、やや抵抗が下がるものの、上記の表面処理剤とシランカップリング剤との混合処理を施すことによりその影響を抑制できる場合がある。表面処理量については、用いるフィラーの平均一次粒径によって異なるが、3〜30wt%が適しており、5〜20wt%がより好ましい。
【0152】
分散溶媒としてはメチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロルメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が使用される。分散手段としてはボールミル、サンドミル、振動ミルなど公知の分散手段が使用可能である。
【0153】
電荷輸送層37−2中のフィラーの含有量は全固形分に対して5〜40重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜30重量%である。フィラー量が5重量%以下であると、耐摩耗性の点で好ましくない。また、40重量%以上であると膜の不透明化による地汚れ、感度低下による画像濃度低下など画像劣化が発生する。また、フィラーの体積平均粒径は0.05〜1.0μm、好ましくは0.05〜0.8μmに粉砕、分散するのが好ましい。粒径が0.05μmより小さいと均一な分散が行ないにくく、粒径が1.0μmより大きいとフィラーが感光体表面に頭出し、クリーニングブレードを傷つけクリーニング不良が発生する場合がある。
【0154】
塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。塗工の際に、塗工液が下層の感光層を溶解してしまう様な場合は、下層と塗工液の接触時間、下層と塗工液中の溶媒との接触量を制御し易い、スプレー塗工法、リングコート法などを用いるのが良い。
【0155】
以上のように、電荷輸送層を積層構成で構成する場合の説明を述べてきたが、この構成は必ずしも2層構成である必要はなく、必要に応じて3層以上の構成としても良い。その場合には、上述と同様に、最も表面側に位置する電荷輸送層に、トリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質とフィラーが含有されることが必要である。
【0156】
尚、電荷輸送層が複数層で形成される場合には、それら複数層の電荷輸送層の膜厚の合計が30μm以下であることが好ましい。これは先述のように、解像度あるいは応答性などの点で有利であるからである。
【0157】
次に図2に示したように電荷輸送層37が単層で構成される場合について述べる。この場合には、前述のように少なくとも電荷輸送層表面近傍においては、トリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質とフィラーを含有することが必須である。従って、電荷輸送層全域に少なくとも前記トリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質及びフィラーを含有させた単一構成の電荷輸送層の構成もあれば、先述のように表面近傍のみに両者を高濃度に存在させる構成(例えば、濃度傾斜を有するような構成)も本発明の範疇である。
【0158】
前者の場合においては、先述のトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質に少なくとも先述のフィラーを分散させた塗工液を電荷発生層上に積層することにより形成できる。この際、必要に応じて低分子電荷輸送物質やバインダー樹脂を併用することも可能である。この場合に使用される低分子電荷輸送物質、バインダー樹脂は前述したものが使用できる。
【0159】
後者においては、少なくともトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質およびフィラーの組成比を変えた塗工液から形成され、例えば、スプレー塗工法などにより高分子電荷輸送物質及びフィラーの液を連続的に塗布し、表面近傍にトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質及びフィラーをより多く存在させる様な方法により形成される。この場合にも先述の電荷輸送層37−1、2、3に記載された材料が使用される。
【0160】
次に図1に示したように感光層が単層構成33の場合について述べる。この場合には、電荷発生物質を結着樹脂中に分散した感光層が使用され、該感光層表面近傍には、トリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質とフィラーを含有することが必須である。従って、電荷発生物質およびトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質およびフィラーを適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。
【0161】
この場合にも、感光層全域に少なくともトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質とフィラーを含有させた単一構成の感光層の構成もあれば、先述のように表面近傍のみに両者を高濃度に存在させる構成(例えば、濃度傾斜を有するような構成)も本発明の範疇である。また、トリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質およびフィラー濃度を変えた2種以上の感光層用塗工液(何れの場合にも電荷発生物質が含有されていることが必須である)を積層した構成の感光層も本発明の感光層の範疇である。
【0162】
単層感光層33には、電荷発生物質、高分子電荷輸送物質、フィラーの他に低分子電荷輸送物質やバインダー樹脂を併用することもできる。バインダー樹脂としては、先に電荷輸送層37−1で挙げたバインダー樹脂のほかに、電荷発生層35で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また帯電劣化防止剤として環状エーテル化合物、ポリエーテル化合物、ジフェノキノン誘導体などを添加してもよく、添加量としては結着樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部が適当であり、好ましくは1〜5重量部である。
【0163】
単層感光層33は、上記の材料をテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。単層感光層23の膜厚は、5〜25μm程度が適当である。
【0164】
本発明に用いられる電子写真感光体には、導電性支持体と感光層との間に(積層タイプの場合は、導電性支持体と電荷発生層との間に)下引き層を設けることができる。下引き層は、接着性を向上する、モワレ防止、電荷ブロッキング、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤でもって塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。
【0165】
このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸等の水溶性樹脂、共重合性ナイロン、メトキシメチル化ナイロン、等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂など挙げられる。また、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。
【0166】
更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾルーゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。この他に、本発明の下引き層には酸化アルミを陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SiO、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。
【0167】
また、本発明においては単層感光層、電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般樹脂に可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当であり、5〜10重量部が好ましい。
【0168】
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は、有機物を含む層ならばいずれに添加してもよいが、電荷輸送物質を含む層に添加すると良好な結果が得られる。本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
【0169】
(モノフェノール系化合物)2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど。
【0170】
(ビスフェノール系化合物)2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0171】
(高分子フェノール系化合物)1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロール類など。
【0172】
(パラフェニレンジアミン類)N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0173】
(ハイドロキノン類)2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0174】
(有機硫黄化合物類)ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0175】
(有機燐化合物類)トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
【0176】
本発明における酸化防止剤の添加量は、電荷輸送物質100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは2〜30重量部である。
【0177】
図5は、本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための概略図であり、下記のような例も本発明の範疇に属するものである。図5において、感光体1は導電性支持体上に少なくとも感光層が設けられ、最表面層に少なくともトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質とフィラーを含有してなる。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。また、帯電チャージャー3、転写前チャージャー7、転写チャージャー10、分離チャージャー11、クリーニング前チャージャー13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラ等が用いられ、公知の手段がすべて使用可能である。
【0178】
転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0179】
また、画像露光部5、除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0180】
光源等は、図5に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0181】
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14およびブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0182】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行うと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0183】
トナーはカラー化が進み、シアン、マゼンタ、イエローからなるか、これらにブラックトナーを加えたものからなる。これらトナーは一般にトナー補給時に流動性が要求されるため、シリカ、酸化チタンなどの流動化剤が添加されるのが好ましい。
【0184】
図6には、本発明による電子写真プロセス、装置の別の例を示す。感光体21は導電性支持体上に少なくとも最表面層に少なくともトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質とフィラーを含有してなる感光層が設けられたベルト状のものである。このベルト状感光体は駆動ローラ22a、22bにより駆動、支持され、帯電器23による帯電、光源24による像露光、現像(図示せず)、帯電器25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、ブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行なわれる。図5においては、感光体21(勿論この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。尚、ベルト感光体と駆動、支持ローラとが一体で、装置への脱着が自在にできるようにユニット化することも可能である。
【0185】
図7には本発明で用いられるプロセスカートリッジの一例を示す。感光体1の周辺には帯電手段として帯電ローラー3、感光体表面に現像材を適量供給する現像ユニット6、画像転写後に感光体表面をクリーニングする手段として、ブレードを備えたクリーニングユニット16が一体に組み込まれている。このプロセスカートリッジに搭載される感光体1は、導電性支持体上に少なくとも感光層が設けられ、最表面層に少なくともトリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有する高分子電荷輸送物質とフィラーを含有してなる。このカートリッジは光書きこみ手段、転写手段、、除電手段、定着手段、記録紙の搬送手段などの画像形成に必要な手段を具備した画像形成装置に着脱自在に取り扱い可能なように形成されている。
【実施例】
【0186】
以下実施例で本発明を説明するが、本発明は本実施例により制限されるものではない。ここでの部、%は重量基準である。
製造例1
〔感光層1用塗工液の調整〕
下記構造の電荷発生物質 22部
【0187】
【化105】
Figure 0003883097
シクロヘキサノン 400部
を15cmボールミルポットに仕込み、φ10mmのジルコニアメディアを用いて48時間ボールミルし、その後シクロヘキサノン500部を加えミルベースを調製した(分散液1)。次いで、下記組成からなる溶液を調製し、この溶液200部と100部の上記分散液1を混合攪拌して感光層1用塗工液を調製した。
テトラヒドロフラン(以下THFという) 660部
具体例化合物I−1(C1400、帝人化成社製) 100部
具体例化合物II−2 70部
ポリエチレングリコール(イオネットMC1400、三洋化成社製) 3部
シリコーンオイル(KF50、信越化学社製) 0.01部
〔感光層2用塗工液の調整〕下記調合液をジルコニアメディアを用いて振動ミル2時間行い、分散液2を調製した。更に、この分散液をテトラヒドロフラン100部で希釈して感光層2用塗工液を得た。
酸化チタン(CR97、石原産業社製) 1.5部
前記分散液1 20部
具体例化合物III−9
(共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw126000)のシクロヘキサノン(以下アノンという):THF(1:1部)5%溶液混合溶媒溶液 80部
具体例化合物II−2 1部
〔感光体の作製〕φ30mmアルミニウムシリンダー上にポリアミド樹脂(CM8000、東レ社製)10部、メタノール220部、n−ブタノール100部からなる溶液を5mm/secで浸漬塗工し、100℃で10分間乾燥して、0.3μmの下引き層を設けた。次いで上記感光層1用塗工液を浸漬塗工し、130℃で30分間乾燥し、膜厚20μmの感光層1を得た。更に、感光層1上に、前記感光層2用塗工液をスプレー法で塗工し、130℃30分間乾燥して5μmの感光層2を設け、電子写真感光体を形成した。
【0188】
(比較例1)前記感光層2を設けない以外は製造例1と同様にして感光体を作製した
【0189】
比較例2)
〔感光層2用塗工液の調整〕振動ミルで2時間の分散を行い、下記組成の感光層2用塗工液(フィラー未含有)を調製した。
具体例化合物III−11(共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw135000)製造例1で調製した分散液1 12.5部
ジクロルメタン 150部
〔感光体の作製〕製造例1と同様に感光層1を設けた上に、前記感光層2用塗工液をリングコート法で塗工し、5μmの感光層2を設けた以外は製造例1と同様にして感光体を作製した。
【0190】
(比較例3)製造例1の感光層2用塗工液の高分子電荷輸送物質を具体例化合物III−9の代わりに下記構造の化合物に変えた以外は製造例1と同様にして感光体を作成した。
【0191】
【化106】
Figure 0003883097
記比較例1〜3で作製した感光体を図7に示したプロセスカートリッジに装着し、リコー社製イマジオMF200複写機で1万枚の耐久試験を行った。この時、図7のローラーチャージャーの帯電極性を正帯電に変更し、現像剤を正極性に帯電したトナー(本発明の耐久試験に使用したトナーは断らないかぎり、ポリエステル樹脂93.45%、銅フタロシアニン5%、シリカ0.7%、酸化チタン0.85%で構成された平均粒径7μmのシアントナーを使用した)とキャリアーからなる2成分現像剤に変更した。露光光源は655nmのレーザー光を用いた。試験結果を表1に示す。なお、帯電電位(暗部電位、VD)は800V、明部電位(VL)は100Vになるように初期設定した。表1中のΔVD、ΔVLは初期と1万枚後の電位の変化量である。また、膜厚は渦電流式膜厚計フィシャー社製フィシャーコープMMSで測定した。
【0192】
【表1】
Figure 0003883097
表1にみられるように、最表面にフィラーを含有しない感光体(比較例1、2)はVD、VLの変動が大きく、摩耗量が大きい。また1万枚後の画像は白スジ、黒スジが発生した。更に、比較例3で分かる如く、ソフトセグメントのない高分子電荷輸送物質を用いた感光体はクラックが発生し易い。
【0193】
実施例1)φ30mmアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層1用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、20μmの電荷輸送層1を形成した。更に、その上に下記組成の電荷輸送層2用塗工液をスプレー法で塗工して、3μmの電荷輸送層2を設け本発明の感光体を作成した。
【0194】
〔下引き層用塗工液〕下記組成をボールミルで24時間分散して調製した。
アルキッド樹脂(ベッコゾール、1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン、G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4部
酸化チタン(CREL、石原産業社製) 40部
メチルエチルケトン 200部
〔電荷発生層用塗工液〕下記組成をボールミルで24時間分散して調製した。
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 2部
ポリビニルブチラール(UCC:XYHL) 0.2部
テトラヒドロフラン 50部
〔電荷輸送層1用塗工液〕下記組成を溶解し調製した。
ポリスチレン(HRM、デンカ社製) 12部
具体例化合物II−2 12部
ジクロルメタン 90部
1%シリコーンオイル(KF50、信越シリコーン社製)
ジクロルメタン溶液 1部
〔電荷輸送層2用塗工液〕下記組成をジルコニアビーズを用い、振動ミルを2時間行い調製した。
具体例化合物III−12(共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw15万) 5部
アルミナ(スミコランダムAA03、住友化学社製) 1.5部
アノン 100部
THF 100部
製造例2実施例1と同様に下引き層、電荷発生層を設けた上に、下記組成の電荷輸送層1用塗工液を浸漬法で塗工し、20μmの電荷輸送層1を設けた。更に下記組成の電荷輸送層2塗工液をスプレー法により塗工して、3μmの電荷輸送層2を設け、本発明の感光体を作成した。
【0195】
〔電荷輸送層1用塗工液〕
アクリル樹脂(BR88、三菱レーヨン社製) 15部
下記構造の低分子電荷輸送物質 15部
【0196】
【化107】
Figure 0003883097
ジクロルメタン 120部
1%シリコーンオイル(KF50、信越シリコーン社製)
ジクロルメタン溶液 1部
〔電荷輸送層2用塗工液〕
具体例化合物III−14(共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw180000) 5部
酸化チタン(CR97、石原産業社製) 1.5部
アノン 100部
THF 100部
(比較例4)実施例1において、電荷輸送層1を23μm厚とし、電荷輸送層2を設けないものとして感光体を作成した。
【0197】
(比較例5)製造例2において、電荷輸送層1を23μm厚とし、電荷輸送層2を設けないものとして感光体を作成した。
【0198】
(比較例6)実施例1同様にして下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1を設けた上に、電荷輸送層2の代わりに、具体例化合物I−3をTHF:アノン(1:1重量)の4%溶液をスプレー法で3μmの層を設け、最上層にフィラーおよび電荷輸送物質を含有しない表面層を設けて感光体を作成した。
【0199】
上記実施例1及び比較例4〜6の感光体を図7に示したプロセスカートリッジに装填し、リコー社製イマジオMF200複写機で5万枚の耐久試験を行った。帯電極性は負帯電で行った。露光光源は780nmのレーザー光を用いた。試験結果を表2に示す。なお、初期暗部電位(VD)を−800V、初期明部電位(VL)を−100Vにした。表中のΔVD、ΔVLは初期電位からの変化量であり、それぞれ以下のように求めた。
ΔVD=|VD(5万枚時)|−|VD(初期)|、
ΔVL=|VL(5万枚時)|−|VL(初期)|
【0200】
【表2】
Figure 0003883097
表2にみられるとおりの結果から、最上層にフィラーを含有する電荷輸送層を設けた感光体は、繰り返し使用においても摩耗量が少なく、暗部電位、明部電位の変化も少なく、また5万枚後画像の画質も良好であった。一方、フィラーを含有する電荷輸送層のない感光体(比較例4、5)は摩耗量が大きく、それによる高画質の維持ができないことがわかる。また比較例6のように、電荷輸送物質を含有しない表面層(樹脂のみから構成された表面層)では残留電位が高く、初期から光減衰が−100Vまで達せず、実機では試験ができなかった。
【0201】
実施例2実施例1と同様に下引き層、電荷発生層を設けた上に下記組成の電荷輸送層1用塗工液を浸漬法で塗工し、20μmの電荷輸送層1を設け、更に下記組成の電荷輸送層2用塗工液をスプレー法で塗工し、3μmの電荷輸送層2を設けて本発明の感光体を作成した。
【0202】
〔電荷輸送層1用塗工液〕
具体例化合物I−1(K1300、帝人化成社製) 15部
具体例化合物II−2 15部
ジクロルメタン 120部
1%シリコーンオイル(KF50、信越シリコーン社製)
ジクロルメタン溶液 5部
〔電荷輸送層2用塗工液〕
具体例化合物III−24(共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw190000) 5部
アルミナ(スミコランダムAA03、住友化学社製) 1.5部
アノン 100部
THF 100部
実施例3〜5実施例2と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1を設けた上に、表3に示した高分子電荷輸送物質およびフィラーを用い、実施例2と同様にフィラーを分散し、スプレー法で3μmの電荷輸送層2を設けて本発明の感光体を作製した。
【0203】
【表3】
Figure 0003883097
(比較例7)実施例2で電荷輸送層2を設けない以外は実施例2と同様にして感光体を作成した。
【0204】
(比較例8)実施例3の電荷輸送層2に含有される高分子電荷輸送物質を具体例化合物III−10の代わりに下記構造の化合物に変えた以外は実施例3と同様にして感光体を作製した。
【0205】
【化108】
Figure 0003883097
(比較例9)実施例5の電荷輸送層2に含有される高分子電荷輸送物質を具体例化合物III−22の代わりに下記構造の化合物に変えた以外は実施例5と同様にして感光体を作製した。
【0206】
【化109】
Figure 0003883097
上記実施例2〜5及び比較例7〜9の感光体を実施例1と同様にして耐久試験を行った。結果を表4に示した。尚、ΔVD、ΔVLは表2の場合と同様にして求めた。
【0207】
【表4】
Figure 0003883097
表4にみられるとおり、実施例2〜5では摩耗量が少なく安定した画像が得られた。一方、フィラー層のない感光体(比較例7)は摩耗量が多く、地汚れが発生した。また、ソフトセグメントのない高分子電荷輸送物質を用いた場合(比較例8、9)は黒ポチが発生し易く感光体寿命が短くなる。
【0208】
実施例6実施例2と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1を設けた上に、下記組成の電荷輸送層2塗工液をリング塗工、乾燥して3μmの電荷輸送層2を設けて本発明の感光体を作製した。
【0209】
〔電荷輸送層2用塗工液〕
具体例化合物III−12(共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw15万) 0.8部
アルミナ(AA03、住友化学社製) 0.3部
ジクロルメタン 30部
実施例7〜12実施例6と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1を設けた。更にその上に、下記表5に記載の材料から構成される3μmの電荷輸送層2を設けて本発明の感光体を作製した。
【0210】
【表5】
Figure 0003883097
(比較例10)実施例6において具体例化合物III−12を0.8部、ジクロルメタン30部の樹脂溶液をリング塗工して電荷輸送層2(フィラー未含有)を設けた以外は同様にして感光体を作製した。
【0211】
(比較例11)実施例6と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1を設けた上に下記組成の電荷輸送層2用塗工液をリング塗工して3μmの電荷輸送層2を設けて感光体を作成した。
【0212】
〔電荷輸送層2用塗工液〕下記組成物を振動ミルで2時間分散し、電荷輸送層2用塗工液を調整した。
ポリメチルフェニルシラン(ポリスチレン換算分子量
Mw160000) 0.8部、
アルミナ(AA03、住友化学社製) 0.3部
THF 20部
(比較例12)実施例6と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1を設けた上に下記組成の電荷輸送層2用塗工液をリング塗工して3μmの電荷輸送層2を設けて感光体を作成した。
【0213】
〔電荷輸送層2用塗工液〕下記組成物を振動ミルで2時間分散し、電荷輸送層2用塗工液を調整した。
【0214】
【化110】
Figure 0003883097
(ポリスチレン換算分子量Mw240000) 0.8部
アルミナ(AA03、住友化学社製) 0.3部
THF 20部
上記実施例6〜12及び比較例10〜12の感光体を実施例1と同様にして耐久試験を行った。結果を表6に示した。尚、ΔVD、ΔVLは表2の場合と同様にして求めた。
【0215】
【表6】
Figure 0003883097
表6にみられるとおり、実施例6〜12で作製した感光体を用いた場合は、5万枚耐久試験でも摩耗量が少なく、鮮明な画像であった。比較例のフィラーが含有しないもの(比較例10)は摩耗量が大きい。また高分子電荷輸送物質であるポリメチルフェニルシランを用いた場合(比較例11)には、電荷輸送層が部分剥離し、接着性、膜質に問題があった。また、ソフトセグメントを有しない高分子電荷輸送物質を用いた場合(比較例12)には、クラックが発生し、異常画像が発生した。
【0216】
実施例13実施例1と同様にして下引き層、電荷発生層を設けた上に下記組成の電荷輸送層1用塗工液を塗布、乾燥して、20μmの電荷輸送層1を設けた。更にその上に下記組成の電荷輸送層2用塗工液をリング塗工、乾燥して、3μmの電荷輸送層2を設け、本発明の感光体を作製した。
【0217】
〔電荷輸送層1用塗工液〕
具体例化合物III−33(Mw120000) 5部
ジクロルメタン 30部
1%シリコーンオイルジクロルメタン溶液 0.1部
〔電荷輸送層2用塗工液〕
具体例化合物III−33(共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw120000) 0.8部
シリカ(KMPX100、信越化学社製) 0.2部
ジクロルメタン 30部
実施例14実施例1と同様にして下引き層、電荷発生層を設けた。その上に、下記表7に記載の材料から構成される20μmの電荷輸送層1および3μmの電荷輸送層2を設け、本発明の感光体を作製した。
【0218】
【表7】
Figure 0003883097
(比較例13)実施例1と同様にして下引き層、電荷発生層を設け、その上に実施例13の電荷輸送層1を設けた。更に、実施例13の電荷輸送層2の代わりに、具体例化合物III−12共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw16万からなる3μmの電荷輸送層2(フィラー未含有)の樹脂層3μmを設けて感光体を作製した。
【0219】
実施例15実施例12と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1を設けた。更にその上に下記組成からなる電荷輸送層2用塗工液をリング塗工で塗工し、3μmの電荷輸送層2を設けて本発明の感光体を作製した。
【0220】
〔電荷輸送層2用塗工液〕
具体例化合物III−33(共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw120000) 0.5部
シリカ(KMPX100、信越化学社製) 0.5部
ジクロルメタン 30部
実施例16実施例12と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1を設けた。更にその上に下記組成からなる電荷輸送層2用塗工液をリング塗工で塗工し、3μmの電荷輸送層2を設けて本発明の感光体を作製した。
【0221】
〔電荷輸送層2用塗工液〕
具体例化合物III−33(共重合比率重量1:1重量、ポリスチレン換算分子量Mw120000) 0.95部
シリカ(KMPX100 信越化学社製) 0.05部
ジクロルメタン 30部
上記実施例13〜16及び比較例13の感光体を実施例1と同様にして耐久試験を行った。結果を表8に示した。尚、ΔVD、ΔVLは表2の場合と同様にして求めた。
【0222】
【表8】
Figure 0003883097
表8にみられるとおり、最上層にフィラーを含有した電荷輸送層2を設けた感光体(実施例13、14)は摩耗量が少なく安定した画質が得られた。しかし高分子電荷輸送物質のみから構成される電荷輸送層2(フィラー未含有)では摩耗量が多く、部分的に黒ポチが発生した。また、電荷輸送層2中のフィラー量が多いと感度劣化、感光体表面が凹凸があり、クリーニング性悪化させた。逆にフィラーが5%以下であるると摩耗量が大きいことが分かる。
【0223】
実施例17)支持体をアルミニウムシリンダーから電鋳法で作製した厚さ30μm、周長180mm、ベルト幅340mmの円筒状ニッケル製ベルトに代えた以外は実施例3と同様の下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1、電荷輸送層2を設けて、エンドレスベルト状感光体を作製した。
【0224】
実施例18)支持体をアルミニウムシリンダーから電鋳法で作成した厚さ30μm、周長180mm、ベルト幅340mmの円筒状ニッケルベルトに代えた以外は実施例5と同様の下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1、電荷輸送層2を設けて、エンドレスベルト状感光体を作製した。
【0225】
(比較例14)支持体をアルミニウムシリンダーから電鋳法で作成した厚さ30μm、周長180mm、ベルト幅340mmの円筒状ニッケルベルトに代えた以外は比較例8と同様の下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1、電荷輸送層2を設けて、エンドレスベルト状感光体を作製した。
【0226】
(比較例15)支持体をアルミニウムシリンダーから電鋳法で作成した厚さ30μm、周長180mm、ベルト幅340mmの円筒状ニッケルベルトに代えた以外は比較例9と同様の下引き層、電荷発生層、電荷輸送層1、電荷輸送層2を設けて、エンドレスベルト状感光体を作製した。
【0227】
実施例17、18、比較例14、15のエンドレスベルト状感光体を図6記載の画像形成装置で画像評価を行った。その際、エンドレスベルト感光体は直径20mmの2本の駆動ローラーで、支持駆動され、2本のローラーと感光体は一体で電子写真装置から着脱できるようユニット化された(以降、感光体マガジンと記す)。書き込光源は635nm発振のレーザーを用い、感光体表面電位は―800V、全面露光時の露光部電位は−100Vに初期設定した。現像は、負帯電トナーとキャリアーからなる2成分現像剤を用いて反転現像を行った。結果を表9に示す。
【0228】
評価項目は以下の如くである。
1)常温常湿(22−25℃、40−60%RH)環境下で50000枚の画像評価、
2)感光体マガジンを常温常湿環境下に1ヶ月放置後、感光体の耐クラック性評価、及び画像評価、
3)感光体マガジンを30℃、85%環境下に2週間放置後、感光体の耐クラック性評価、及び画像評価。
【0229】
【表9】
Figure 0003883097
表9にみられるとおり、本発明のエンドレスベルト状感光体は5万枚の画像形成テスト、保存テストにおいてもクラック発生がなく良好な画像が得られたが、ソフトセグメントを有さない高分子電荷輸送物質を用いた場合は黒ポチが発生し、保存テストでクラックが発生し易く十分な耐久性が発現されない。
【発明の効果】
【0230】
(1)請求項1の発明によれば、感光層が少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送層からなり、該電荷輸送層がトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびシリカ、アルミナから選ばれる少なくとも1種のフィラーを含有し、かつ、該電荷輸送層の導電性基体側より最も離れた表面 側の該フィラー含有率が高いことを特徴とする本発明の電子写真感光体は、フィラーとして電気絶縁性の高い無機フィラー、特に、シリカ、アルミナを用いることにより、高画質が得られる感光体が提供され、従来の感光体に比べて耐摩耗性に優れ、電位変動が少なく黒ポチなどの点状画像欠陥の発生もなく、更には、繰り返し使用時や、常温湿環境のみならず、高温高湿環境下において保存してもクラック発生のないタフな感光体が提供される。
【0231】
(2)請求項2の発明によれば、感光層の導電性基体側より最も離れた表面側のフィラー含有率を高くしたことにより、さらに耐摩耗性の向上した感光体が提供できる
【0232】
(3)請求項3の発明によれば、積層型感光体の電荷輸送層を低分子電荷輸送物質およびバインダー樹脂を含有する層と、トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびフィラーを含有する層とで構成され、感光層の導電性基体側より最も離れた表面側のフィラー含有率が高くなっているため、さらに耐摩耗性の向上した感光体が提供できる。
【0233】
(4)請求項4の発明によれば、請求項3の上記低分子電荷輸送物質として一般式(1)で表わされる化合物を用いたことにより、感光特性にすぐれた感光体が提供できる。
【0234】
(5)請求項5の発明によれば、請求項3のバインダー樹脂としてポリカーボネートを用いたことにより、フィルム性の良好な感光層を有する感光体が提供できる。
【0235】
(6)請求項6の発明によれば、バインダー樹脂を一般式(2)又は(3)で表わされる化合物にすることで、フィルム性のより良好な感光層を有する感光体が提供できる。
【0236】
(7)請求項7の発明によれば、積層型感光体を高分子電荷輸送物質を含有する層と、トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびフィラーを含有する層とで構成し、感光層の導電性基体側より最も離れた表面側のフィラー含有率が高くなっているため、さらに耐摩耗性の向上した感光体が得られる。
【0237】
(8)請求項8の発明によれば、トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質として一般式(4)〜(13)で表わされる化合物のいずれかを用いたことにより、より画像欠陥のない繰り返し特性に優れた感光体が提供される。
【0238】
(9)請求項9の発明によれば、トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質とフィラーを含有する層のフィラー含有量を5〜40重量%にしたことにより、耐摩耗性にすぐれ、地汚れや感度低下による画像劣化を生じさせない感光体が提供される。
【0239】
(10)請求項10の発明によれば、フィラーの体積平均粒径を0.05〜1.0μmとしたことにより、トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質への分散が良好に行われ、すぐれた表面を有する感光体が提供される。
【0240】
(11)請求項11の発明によれば、導電性基体と感光層との間に下引き層を設けたことにより、感光層の塗工性が改善され、残留電位が低減される感光体が提供される。
【0241】
(12)請求項13の発明によれば、上記本発明の感光体を用いて高画質な画像を安定 して供給できる画像形成装置が提供される。
【0242】
(13)請求項14の発明によれば、上記本発明の感光体と帯電手段、現像手段、クリーニング手段より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在である高寿命なプロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【図1】本発明の電子写真感光体の断面図である。
【図2】本発明の他の電子写真感光体の断面図である。
【図3】本発明の他の電子写真感光体の断面図である。
【図4】本発明の他の電子写真感光体の断面図である。
【図5】本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための概略図である。
【図6】本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための他の概略図である。
【図7】本発明で用いられるプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0244】
31 導電性支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
37−1 低分子電荷輸送物質およびバインダー樹脂を主成分とする電荷輸送層
37−2 トリアリールアミン構造を有しかつ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質及びフィラーを含有する電荷輸送層

Claims (14)

  1. 感光層が少なくとも電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送層からなり、該電荷輸送層がトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびシリカ、アルミナから選ばれる少なくとも1種のフィラーを含有し、かつ、該電荷輸送層の導電性基体側より最も離れた表面側の該フィラー含有率が高いことを特徴とする電子写真感光体。
  2. 高分子電荷輸送物質がポリカーボネートであることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 電荷輸送層が、少なくとも低分子電荷輸送物質およびバインダー樹脂を含有する層と、少なくともトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびフィラーを含有する層とから構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
  4. 低分子電荷輸送物質の少なくとも1つは下記一般式(1)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項3記載の電子写真感光体。
    Figure 0003883097
    (R1は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R2、R3は置換もしくは無置換のアリール基を表す)
  5. 少なくとも低分子電荷輸送物質及びバインダー樹脂を含有する層におけるバインダー樹脂の少なくとも1つは、ポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項3記載の電子写真感光体。
  6. ポリカーボネート樹脂の少なくともひとつは下記一般式(2)、(3)で表わされる化合物のいずれかであることを特徴とする請求項5記載の電子写真感光体。
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    [前記式中、R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R4とR5、またR6とR7はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基を表し、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは炭素原子数1〜12の脂肪族の2価基を表す)または、
    Figure 0003883097
    (式中、aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R8、R9は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表し、R8とR9は、それぞれ同一でも異なってもよい)、p、qは組成(モル分率)を表し、0.1≦p≦1、0≦q≦0.9の数を表し、nは繰り返し単位数を表し5〜5000である]
  7. 電荷輸送層が、少なくともトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質を含有する層と、少なくともトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質およびフィラーを含有する層とから構成される請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
  8. トリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質が、下記一般式(4)〜(13)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    Figure 0003883097
    [前記式中、R11、R12、R13はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R10は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R14、R15は置換もしくは無置換のアリール基、R16は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基又は置換もしくは無置換のアリール基、Ar11、Ar12、Ar13、Ar18、Ar19、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28、Ar29は同一又は異なるアリレン基を表し、又、p、qは組成(モル分率)を表し、0.1≦p<1、0<q≦0.9の数を表し、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数であり、Wは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表される2価基を表す]
    Figure 0003883097
    (式中、R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(式中Zは炭素原子数1〜12の脂肪族の2価基)を表す)
  9. 少なくともトリアリールアミン構造を有し且つ主鎖にソフトセグメントを有している高分子電荷輸送物質とフィラーを含有する層における該フィラーの含有量が5〜40重量%であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  10. フィラーの体積平均粒径が0.05〜1.0μmであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  11. 導電性基体と感光層との間に下引き層を設けたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  12. 感光体の形状がベルト状、シート状またはドラム状であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
  13. 少なくとも、帯電手段、画像露光手段、現像手段、転写手段および電子写真感光体を具備してなる画像形成装置において、該電子写真感光体が請求項1乃至12のいずれか一項に記載の感光体であることを特徴とする画像形成装置。
  14. 請求項1乃至12のいずれか一項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段より選ばれる少なくとも一つの手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在であること特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
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