JP3942141B2 - 電子写真感光体、その製造方法、その電子写真感光体を有する電子写真装置および電子写真装置用プロセスカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真感光体の表面層中にフィラーを含有させた電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、それを用いた画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジに関し、より詳しくは長寿命、高耐久電子写真感光体に関する。
本発明の電子写真感光体およびそれを用いた電子写真プロセスは、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ、ダイレクトデジタル製版機等に応用される。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真複写機、電子写真プリンターなど高速化、小型化、高画質化に伴い感光体の高耐久化が要求されている。感光体は電子写真プロセスにおいて、帯電、露光、現像、転写、クリーニングの反復過程で機械的、化学的作用を受け劣化する。機械的劣化は感光体の摩耗、傷、化学的劣化は発生するオゾンによるバインダー樹脂、電荷移動材の酸化劣化、及び堆積物などによる画質低下が発生する。
【0003】
また前記したように高速化、小型化に伴い感光体が小径化され電子写真プロセスでの使用条件は厳しくなり、特にクリーニング部ではゴムブレードが使用され、十分にクリーニングするためにはゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、そのために感光体の摩耗が促進され、電位変動、感度変動が生じ、それによる異常画像、カラー画像の色バランスがくずれ色再現性に問題が発生するなどの不具合が生じる。
【0004】
このために感光体の最表面にフィラーを添加する技術が発案されている。表面層にフィラーを添加する方法としては、バインダー樹脂を溶剤に溶解してその溶液にフィラーを分散させる方法、あるいはバインダー樹脂と電荷移動物質を溶剤に溶解してその溶液にフィラーを分散させる方法で塗工液を作成し、この塗工液を浸漬塗工法、リング塗工法、スプレー塗工法、ロール塗工法等の塗工法を用いて電荷輸送層上に塗布、乾燥して形成するのが一般的である。このように形成されたフィラーを含む表面層は均一な膜厚や均一なフィラー濃度が要求され、複写機、プリンター等に搭載した場合に不均一な膜ではハーフトーン画像に膜厚ムラに対応する濃淡ムラが発生するという問題が発生する。また、膜中のフィラー粒子径が2μm以上のものが増えると、塗膜がざらつき光の透過率が減少するため、十分な感度が得られなくなり、画像の階調性が低下、地汚れ等の問題が発生する。
【0005】
もっともこのような塗膜の不均一性やフィラー粒子の凝集等の問題は、塗工液中のフィラー分散状態の不良が原因であり、塗工液中のフィラーの分散性を向上させることにより解決することができる。
【0006】
そこで、例えば電荷発生層用塗工液において、特開平4−304463号、特開平6−167818号、特開平7−013367号では、電荷発生機能を有する有機顔料の分散性向上と塗膜欠陥防止を目的として塗工液水分を1%以下に抑えることが提案されている。
【0007】
特許2532795号、特開平7−181696号、特開平10−115940号、特開平10−171137号では、電荷発生顔料であるチタニアルフタロシアニンの結晶型を維持することを目的として電荷発生層用塗工液中の水分量を規定している。
【0008】
また特開平10−104865号、特開平10−232504号では、表面層を加水分解により架橋させ硬化形成するために水分が必要であり、その量を規定することで硬化時に塗膜欠陥を発生させないことを目的として、表面層用塗工液中の水分量を規定している。
【0009】
上記のように、従来の技術においては、電子写真感光体製造で所期する塗膜を形成するために塗工液の水分量を調整することが行われているが、それにもかかわらず、所望の成膜がなされていないのが実情である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高耐久電子写真感光体の製造方法、その製造方法を用いた高耐久電子写真感光体、およびその電子写真感光体を用いた電子写真方法、電子写真装置、電子写真装置用プロセスカートリッジを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、フィラーを含有する表面層用塗工液に含有される水分が塗工液の均質性、安定性に大きく影響していることに着目し、その結果、フィラーを含有する表面層用塗工液中の水分量を2.0重量%以下にすることで、塗工液中でのフィラーの分散性が向上し、膜厚ムラや膜のざらつき、フィラー濃度の偏りのない均一な塗膜が得られるため、画像ムラや画像欠陥のない高耐久な感光体を得ることができることを確かめた。本発明はこれに基づいてなされたものである。
【0012】
したがって、本発明によれば、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を積層した感光層と、ポリカーボネート、電荷輸送物質および酸化チタン、アルミナ、シリカの中から選ばれるフィラーを含有する表面層との積層で構成される電子写真感光体の製造方法であって、前記電荷輸送物質は上記一般式(1)で表される化合物であり、酸化チタン、アルミナ、シリカの中から選ばれるフィラーをポリカーボネートと前記電荷輸送物質の溶解溶液中に分散させた塗工液の水分含有量が2.0重量%以下である塗工液を用いて表面層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、上記の方法により製造された電子写真感光体、この感光体を用いた電子写真方法、電子写真装置、並びに、電子写真感光体用プロセスカートリッジが提供される。
【0014】
なお、上記の表面層用塗工液の水分を調製する方法としては、水分吸収剤の使用、水分分離槽値の使用、水分を調製した塗工液の添加、水分を調製した溶剤の添加、水分を調製した気体の吹き込み、水分を調製した塗工液暴露雰囲気の使用などが挙げられる。含有されている水分を調べる方法としては、例えばカールフィッシャー法等が挙げられる。表面層用塗工液の水分は、塗工液の均質性、安定性、得られる感光体の外観、画像品質等を考慮して2重量%以下が好ましいが、さらに好適には1重量%である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下本発明をさらに詳細に説明する。
上記のように、本発明の電子写真感光体の製造方法においては、少なくともバインダー樹脂とフィラー、あるいはバインダー樹脂とフィラーと電荷輸送物質を含有する表面層用塗工液中の水分量を2.0重量%以下にして、これを感光層上に塗工するというものである。
【0016】
本発明に用いられるフィラーとしてはメラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子等の有機顔料、酸化チタン、シリカ、酸化錫、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、窒化ケイ素、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の無機顔料が挙げられるが、特に良好なものとしてシリカ、アルミナ、酸化チタンが挙げられる。
【0017】
上記フィラーは表面を疎水化処理したものも良好に用いられ、一般に疎水化処理としてシランカップリング剤で処理したもの、あるいはフッ素系シランカップリング剤で処理したもの、高級脂肪酸で処理したもの、また無機物での処理としてはフィラー表面をアルミナ、ジルコニア、酸化スズ、シリカ処理したものが知られている。
【0018】
バインダー樹脂としてはアクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、エポキシ樹脂等が好ましく用いられ、特に好ましいバインダー樹脂としては下記一般式(2)及び(3)で示されるポリカーボネートである。
【0019】
【化17】
【化18】
[式中、R4、R5、R6、R7はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基、又は置換もしくは無置換のアリール基を表し、R4とR5、またR6とR7はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基を表し、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(Zは脂肪族の2価基を表す)または、
【化19】
(aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R8、R9は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す。R8とR9は、それぞれ同一でも異なってもよい。)p、qは組成(モル分率)を表し、0.1≦p≦1、0≦q≦0.9、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。]
【0020】
これらポリカーボネートは強靱性が高く、フィルム性が良いことが挙げられ、またこのフィラー層(表面層)は電荷輸送機能をもたせるため電荷輸送物質との相溶性が良いことが重要な条件であることから、一般式(2)及び(3)で示されるポリカーボネートが好適に用いられる。
【0021】
これらポリカーボネートの具体例を以下に挙げるが、これらにより本発明が限定されるものでない。
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【0022】
これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0023】
フィラーを含む表面層には電荷輸送機能を付与するために電荷輸送物質を添加するのが好ましい。添加する電荷輸送物質としてはオキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0024】
特に一般式1で示される電荷輸送物質は移動度が速く、上記バインダー樹脂との相溶性が良く好ましい。
【化42】
(R1は水素原子、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアルキル基又はアリール基を表す、R2、R3は置換もしくは無置換のアリール基を表す。)
【0025】
ここで、R1は水素原子、それぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子を表すが、その具体例としては以下のものを挙げることができ、同一であっても異なってもよい。
【0026】
アルキル基として好ましくは、C1〜C12とりわけC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基はさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基、又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を含有しても良い。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、2−エトキシエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
【0027】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0028】
R1、R2、R3は置換もしくは無置換のアリール基を表すが、その具体例としては以下のものを挙げることができ、同一であっても異なってもよい。
【0029】
芳香族炭化水素基としては、スチリル基、フェニル基、縮合多環基としてナフチル基、ピレニル基、2−フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a、d]シクロヘプテニリデンフェニル基、非縮合多環基としてビフェニリル基、ターフェニリル基などが挙げられる。
【0030】
複素環基としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基などが挙げられる。
【0031】
上述のアリール基は以下に示す基を置環基として有してもよい。
【0032】
(1)ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基。
【0033】
(2)アルキル基としては、上記のR1、R2、R3と同様のものが挙げられる。
【0034】
(3)アルコキシ基(−OR105)としては、R105は(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
【0035】
(4)アリールオキシ基としては、アリール基としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有しても良い。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、6−メチル−2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
(5)置換メルカプト基またはアリールメルカプト基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
【0037】
(6)アルキル置換アミノ基としては、アルキル基は(2)で定義したアルキル基を表す。具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−プロピルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
【0038】
(7)アシル基としては、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、マロニル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0039】
以下に一般式(1)で表される電荷輸送物質の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものでない。
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
【化49】
【化50】
【化51】
【化52】
【化53】
【化54】
【化55】
【化56】
【化57】
【化58】
【0040】
フィラーを含む電荷輸送物質を含まない表面層中のバインダー樹脂(R)及びフィラー(F)の含有重量比率はR:F=50〜95:5〜50が適当であり、好ましくは60〜80:20〜40である。また、フィラー及び電荷輸送物質を含む表面層中の電荷輸送物質(D)、バインダー樹脂(R)及びフィラー(F)の含有量比率(%)はD:R:F=10〜40:35〜55:5〜40が適当であり、好ましくは20〜35:40〜50:15〜30である。
【0041】
電荷輸送物質が10重量%以下になると電荷輸送性の低下に起因すると考えられる明部電位上昇、40重量%以上であると膜強度低下が発生する。バインダー樹脂は電荷輸送物質及びフィラーを固定させる為に用いられ、35重量%以下であると表面層の脆化が発生し、55重量%以上であると電荷輸送物質量及びフィラー量とのバランスの点で電気特性、膜強度で好ましくない。フィラー量は5重量%以下であると、耐摩耗性の点で好ましくなく、40重量%以上であると膜の不透明化による地汚れなど画像劣化が発生する。
電荷輸送物質を含まない表面層の場合、上述のように明部電位の上昇が発生しやすくなるが、電荷輸送物質を含む表面層よりも表面層の膜厚を薄くすることで明部電位の上昇を抑えることができる。フィラー量は、電荷輸送物質を含む表面層と同様に5%以下では耐摩耗性の点で好ましくなく、逆にフィラー量を増やすと上述のように膜の不透明化が発生するものの、電荷輸送物質を含む表面層よりも膜厚を薄くするため、40重量%よりも多くのフィラーを含有させることができるが、電気特性、膜強度の点でバインダー樹脂量とのバランスを考慮すると、フィラー量は50重量%以下が適当である。
【0042】
表面層用塗工液の分散溶媒としては、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンのケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブなどのエーテル類、トルエン、キシレンなどの芳香族類、クロロベンゼン、ジクロルメタンなどのハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が使用され、ボールミル、サンドミル、振動ミルなどを用いて分散、粉砕する。
【0043】
フィラーの分散状態は体積平均粒径が0.05〜1.5μm、好ましくは0.2〜1.0μmに粉砕、分散するのが好ましい。体積平均粒径が0.05μmよりも小さいと、耐摩耗性が低下するという欠点があるし、体積平均粒径が1.5μmよりも大きいと書き込み光の散乱による解像度低下が発生したり、表面に突出してクリーニングブレードを傷つけクリーニング不良が発生してしまう。
【0044】
表面層の膜厚は0.5〜10μmで好ましくは1〜6μmである。表面層用塗工液の塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
【0045】
電荷輸送物質とバインダー樹脂から構成される電荷輸送層上に本発明のフィラーを含む表面層を設ける場合、電荷輸送層に用いられたバインダー樹脂と表面層に用いられるバインダー樹脂の構造は同じでも異なっていても構わない。
【0046】
続いて、本発明に用いられる電子写真感光体を図面に沿って説明する。
図1は、本発明に使用する電子写真感光体を表す断面図であり、導電性支持体30上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする単層の感光層31が設けられ、その上に本発明のフィラーを含む表面層32が設けられる。
【0047】
図2は、本発明に使用する電子写真感光体の別の構成例を表す断面図であり、導電性支持体30上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層33と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層34とが積層され、さらにその上に本発明のフィラーを含む表面層32が設けられる。この感光体においては、電荷発生層33と電荷輸送層との位置が逆になっていてもよい。
【0048】
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの酸化物を、蒸着またはスパッタリングによりフィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙等に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらをD.I.,I.I.,押出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研磨などで表面処理した管などを使用することが出来る。
【0049】
本発明における感光層は、上記のように単層型でも積層型でもよいが、ここでは説明の都合上、まず積層型について述べる。
【0050】
はじめに、電荷発生層について説明する。電荷発生層は、電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0051】
無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0052】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0053】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが用いられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。更に、必要に応じて電荷輸送物質を添加してもよい。
【0054】
電荷輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。たとえば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの電荷輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0055】
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが主として挙げられる。
【0056】
前者の真空薄膜作製法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
【0057】
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより形成できる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート法などを用いて行なうことができる。
【0058】
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0059】
次に、電荷輸送層について説明する。
電荷輸送層は、電荷輸送物質とバインダー樹脂とを伴に溶解、塗工し電荷輸送層として使用できる。
【0060】
電荷輸送層に使用できるバインダー樹脂としては、フィルム性の良いポリカーボネート(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプ、ビスフェノールCタイプ、あるいはこれら共重合体)、ポリアリレート、ポリスルフォン、ポリエステル、メタクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダーは、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0061】
電荷輸送層に使用される電荷輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体(特開昭52−139065号、52−139066号公報に記載)イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体(特願平1−77839号公報に記載)、ベンジジン誘導体(特公昭58−32372号公報に記載)、α−フェニルスチルベン誘導体(特開昭57−73075号公報に記載)、ヒドラゾン誘導体(特開昭55−154955号、55−156954号、55−52063号、56−81850号などの公報に記載)、トリフェニルメタン誘導体(特公昭51−10983号公報に記載)、アントラセン誘導体(特開昭51−94829号公報に記載)、スチリル誘導体(特開昭56−29245号、58−198043号などの公報に記載)、カルバゾール誘導体(特開昭58−58552号公報に記載)、ピレン誘導体(特願平2−94812号に記載)などを使用することができる。
【0062】
また、電荷輸送層には電荷輸送物質としての機能とバインダー樹脂の機能を持った高分子電荷輸送物質も良好に使用される。これら高分子電荷輸送物質から構成される電荷輸送層は耐摩耗性に優れたものである。高分子電荷輸送物質としては、公知の材料が使用できるが、特に、トリアリールアミン構造を主鎖および/または側鎖に含むポリカーボネートが良好に用いられる。中でも、下記一般式(4)〜(13)で表される高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。
【0063】
【化59】
[式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立して置換もしくは無置換のアルキル基又はハロゲン原子、R4は水素原子又は置換もしくは無置換のアルキル基、R5、R6は置換もしくは無置換のアリール基、o、p、qはそれぞれ独立して0〜4の整数、k、jは組成(モル分率)を表し、0.1≦k≦1、0≦j≦0.9の数を表し、nは繰り返し単位数を表し5〜5000の整数である。Xは脂肪族の2価基、環状脂肪族の2価基、または下記一般式で表される2価基を表す。
【化60】
(式中、R101、R102は各々独立して置換もしくは無置換のアルキル基、アリール基またはハロゲン原子を表す。l、mは0〜4の整数、Yは単結合、炭素原子数1〜12の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−CO−O−Z−O−CO−(Zは脂肪族の2価基を表す)または、
【化61】
(aは1〜20の整数、bは1〜2000の整数、R103、R104は置換または無置換のアルキル基又はアリール基を表す)を表す。ここで、R101とR102、R103とR104は、それぞれ同一でも異なってもよい。]
【0064】
【化62】
(式中、R7、R8は置換もしくは無置換のアリール基、Ar1、Ar2、Ar3は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(4)の場合と同じである。)
【0065】
【化63】
(式中、R9、R10は置換もしくは無置換のアリール基、Ar4、Ar5、Ar6は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(4)の場合と同じである。)
【0066】
【化64】
(式中、R11、R12は置換もしくは無置換のアリール基、Ar7、Ar8、Ar9は同一又は異なるアリレン基を表し、pは1〜5の整数を表す。X、k、jおよびnは、一般式(4)の場合と同じである。)
【0067】
【化65】
(式中、R13、R14は置換もしくは無置換のアリール基、Ar10、Ar11、Ar12は同一又は異なるアリレン基、X1、X2は置換もしくは無置換のエチレン基、又は置換もしくは無置換のビニレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(4)の場合と同じである。)
【0068】
【化66】
(式中、R15、R16、R17、R18は置換もしくは無置換のアリール基、Ar13、Ar14、Ar15、Ar16は同一又は異なるアリレン基、Y1、Y2、Y3は単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表し同一であっても異なってもよい。X、k、jおよびnは、一般式(4)の場合と同じである。)
【0069】
【化67】
(式中、R19、R20は水素原子、置換もしくは無置換のアリール基を表し、R19とR20は環を形成していてもよい。Ar17、Ar18、Ar19は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(4)の場合と同じである。)
【0070】
【化68】
(式中、R21は置換もしくは無置換のアリール基、Ar20、Ar21、Ar22、Ar23は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(4)の場合と同じである。)
【0071】
【化69】
(式中、R22、R23、R24、R25は置換もしくは無置換のアリール基、Ar24、Ar25、Ar26、Ar27、Ar28は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(4)の場合と同じである。)
【0072】
【化70】
(式中、R26、R27は置換もしくは無置換のアリール基、Ar29、Ar30、Ar31は同一又は異なるアリレン基を表す。X、k、jおよびnは、一般式(4)の場合と同じである。)
【0073】
以下、これらトリアリールアミン構造を主鎖及び/又は側鎖に含むポリカーボネートの具体例の幾つかを以下に示すが、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
【化87】
【化88】
【化89】
【化90】
【化91】
【化92】
【化93】
【化94】
【化95】
【化96】
【化97】
【化98】
【化99】
【化100】
【化101】
【化102】
【化103】
【化104】
【0074】
これら主鎖及び/又は側鎖にトリアリールアミン構造を有している高分子輸送物質は単重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体の形態で重合される。そして、これら高分子電荷輸送物質はバインダー樹脂としての役割をもつことから被膜形成能を有していることが必要である。そのため、分子量は、GPCによる測定において、ポリスチレン換算分子量Mwとして1万〜50万が適当で、好ましくは5万〜40万である。これら高分子輸送物質は特開平8−269183号公報、特開平9−71642号公報、特開平9−104746号公報、特開平9−272735号公報、特開平11−29634号公報、特開平9−235367号公報、特開平9−87376号公報、特開平9−110976号公報、特開平9−268226号公報、特開平9−221544号公報、特開平9−227669号公報、特開平9−157378号公報、特開平9−302084号公報、特開平9−302085号公報、特開2000−26590号公報に開示されている。
【0075】
電荷輸送層の膜厚は、5〜100μm程度が適当であり、好ましくは、10〜40μm程度が適当である。
【0076】
また、本発明においては電荷輸送層中に可塑剤やレベリング剤を添加してもよい。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般に樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0077】
次に、感光層が単層構成の場合について述べる。
キャスティング法等で単層感光層を設ける場合、多くは電荷発生物質と電荷輸送物質ならびにバインダー樹脂よりなる機能分離型のものが挙げられる。即ち、電荷発生物質ならびに電荷輸送物質には、前出の材料を用いることができる。
【0078】
また、必要により可塑剤やレベリング剤を添加することもできる。更に、必要に応じて用いることの出来るバインダー樹脂としては、先に電荷輸送層で挙げたバインダー樹脂をそのまま用いる他に、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。
【0079】
単層感光体の膜厚は、5〜100μm程度が適当であり、好ましくは、10〜40μm程度が適当である。
【0080】
本発明に用いられる電子写真感光体には、導電性支持体と感光層(積層タイプの場合には、電荷発生層)との間に下引き層を設けることができる。この下引き層の膜厚は0〜8μmが適当である。下引き層は、接着性を向上する、モワレなどを防止する、上層の塗工性を改良する、残留電位を低減するなどの目的で設けられる。
【0081】
下引き層は一般に樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤でもって塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の三次元網目構造を形成する硬化型樹脂などが挙げられる。
【0082】
またこの下引き層には、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの微粉末を加えてもよい。
【0083】
これらの下引き層は、前述の感光層のごとく適当な溶媒、塗工法を用いて形成することができる。
【0084】
更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用して、例えばゾル−ゲル法等により形成した金属酸化物層も有用である。
【0085】
この他に、本発明の下引き層にはAl2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物や、SiO、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作製法にて設けたものも良好に使用できる。
【0086】
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤は、有機物を含む層ならばいずれに添加してもよいが、電荷輸送物質を含む層に添加すると良好な結果が得られる。
【0087】
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
【0088】
(モノフェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなど。
【0089】
(ビスフェノール系化合物)
2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
【0090】
(高分子フェノール系化合物)
1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコールエステル、トコフェロール類など。
【0091】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0092】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0093】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネ−ト、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0094】
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0095】
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
【0096】
本発明における酸化防止剤の添加量は、電荷輸送物質100重量部に対して0.1〜100重量部、好ましくは2〜30重量部である。
【0097】
次に図面を用いて本発明の電子写真方法ならびに電子写真装置を詳しく説明する。
【0098】
図3は、本発明の電子写真プロセスおよび電子写真装置を説明するための概略図であり、下記するような変形例も本発明の範疇に属するものである。
【0099】
図3において、感光体1は導電性支持体上に、少なくとも感光層とフィラーを含有する表面層が設けられてなる。感光体1はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。帯電チャージャ3、転写前チャージャ7、転写チャージャ10、分離チャージャ11、クリーニング前チャージャ13には、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラを始めとする公知の手段が用いられる。転写手段には、一般に上記の帯電器が使用できるが、図に示されるように転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0100】
また、画像露光部5、除電ランプ2等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0101】
かかる光源等は、図3に示される工程の他に光照射を併用した転写工程、除電工程、クリーニング工程、あるいは前露光などの工程を設けることにより、感光体に光が照射される。
【0102】
さて、現像ユニット6により感光体1上に現像されたトナーは、転写紙9に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、感光体1上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーは、ファーブラシ14およびブレード15により、感光体より除去される。クリーニングは、クリーニングブラシだけで行なわれることもあり、クリーニングブラシにはファーブラシ、マグファーブラシを始めとする公知のものが用いられる。
【0103】
電子写真感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像手段には、公知の方法が適用されるし、また、除電手段にも公知の方法が用いられる。
【0104】
図4は、本発明による電子写真プロセスの別の例を示す。感光体21は導電性支持体上に、少なくとも感光層とフィラーを含有する表面層とが設けられてなる。駆動ローラ22a、22bにより駆動され、帯電器23による帯電、光源24による像露光、現像(図示せず)、帯電器25を用いる転写、光源26によるクリーニング前露光、ブラシ27によるクリーニング、光源28による除電が繰返し行なわれる。図4においては、感光体21(この場合は支持体が透光性である)に支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行なわれる。
【0105】
以上の図示した電子写真プロセスは、本発明における実施形態を例示するものであって、もちろん他の実施形態も可能である。例えば、図4において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。
【0106】
一方、光照射工程は、像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、およびその他公知の光照射工程を設けて、感光体に光照射を行なうこともできる。
【0107】
以上に示すような画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。ここでのプロセスカートリッジとは、感光体を内蔵し、他に帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段を含んだ1つの装置(部品)である。プロセスカートリッジの形状等は多く挙げられるが、一般的な例として、図5に示すものが挙げられる。
【0108】
【実施例】
次に、実施例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なおここでの部は重量基準である。
【0109】
(参考例1)
φ30mmアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.2μmの電荷発生層、25μmの電荷輸送層を形成した。一方、ジルコニアビーズを入れたボールミルを用い、8時間粉砕して下記の有機フィラーを分散した表面層用塗工液1−Aを作成した。これとは別に、イオン交換水を0.5〜1.5重量%加えて同様にボールミルを用い、8時間粉砕して下記の有機フィラーを分散した表面層用塗工液1−Bを作成した。これらの塗工液1−A、塗工液1−Bをそれぞれ前記の電荷輸送層上にスプレーで塗布し、乾燥して約3.0μmの表面層を設けて、電子写真感光体を得た。塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表1に記載する。
【0110】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂(ベッコゾール 1307−60−EL、
大日本インキ化学工業社製) 6部
メラミン樹脂(スーパーベッカミン G−821−60、
大日本インキ化学工業社製) 4部
酸化チタン(CREL、石原産業社製) 40部
メチルエチルケトン 200部
【0111】
〔電荷発生層用塗工液〕
オキソチタニウムフタロシアニン顔料 2部
ポリビニルブチラール(UCC社製、XYHL) 0.2部
テトラヒドロフラン 50部
【0112】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、帝人化成社製 Mv5万) 10部
ジクロルメタン 100部
1%シリコーンオイル(KF50、信越シリコーン社製)
ジクロルメタン溶液 1部
下記構造式で表される電荷輸送物質 12部
【化105】
(具体例化合物 II−2)
【0113】
〔フィラー含有表面層用塗工液 1〕
球形メラミン(エポスターS、日本触媒社製) 2部
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、帝人化成社製 Mv5万) 5部
テトラヒドロフラン 120部
シクロヘキサノン 80部
【0114】
(参考例2)
参考例1と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた上に、下記の有機顔料を分散した水分未添加の塗工液2−Aと、0.5〜1.5重量%相当のイオン交換水を添加して分散した塗工液2−Bとを用いて、それぞれ表面層を参考例1と同様の方法で設けて、電子写真感光体を得た。参考例1と同様に、塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表1に記載する。
【0115】
〔フィラー含有表面層用塗工液 2〕
球形メラミン(エポスターS 日本触媒社製) 2部
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、帝人化成社製 Mv5万) 5部
テトラヒドロフラン 120部
シクロヘキサノン 80部
下記構造式で表される電荷輸送物質 3部
【化106】
(具体例化合物 II−1)
【0116】
(参考例3)
参考例1と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた上に、下記の有機顔料を分散した水分未添加の塗工液3−Aと、0.5〜1.5重量%相当のイオン交換水を添加して分散した塗工液3−Bとを用いて、それぞれ表面層を参考例1と同様の方法で設け、電子写真感光体を得た。参考例1と同様に、塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表1に記載する。
【0117】
〔フィラー含有表面層用塗工液 3〕
球形メラミン(エポスターS、日本触媒社製) 2部
テトラヒドロフラン 120部
シクロヘキサノン 80部
下記構造式の高分子電荷輸送物質 8部
【化107】
【0118】
(参考例4)
参考例1と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた上に、下記の無機顔料を分散した水分未添加の塗工液4−Aと、0.5〜1.5重量%相当のイオン交換水を添加して分散した塗工液4−Bとを用いて、それぞれ表面層を参考例1と同様の方法で設け、電子写真感光体を得た。参考例1と同様に、塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表1に記載する。
【0119】
〔フィラー含有表面層用塗工液 4〕
酸化亜鉛(Sazex4000、堺化学社製) 2部
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、帝人化成社製 Mv5万) 5部
テトラヒドロフラン 120部
シクロヘキサノン 80部
具体例化合物II−1の電荷輸送物質 3部
【0120】
(実施例1〜3)
参考例1と同様に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた上に、下記の酸化チタン、アルミナ、シリカを分散した水分未添加の塗工液5−A、6−Aおよび7−Aと、0.5〜1.5重量%相当のイオン交換水を添加して分散した塗工液5−B、6−Bおよび7−Bを用いて、それぞれ表面層を参考例1と同様の方法で設け本発明の電子写真感光体を得た。参考例1と同様に、塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表1に記載する。
【0121】
〔フィラー含有表面層用塗工液 5〕
酸化チタン(CR−EL、石原産業社製) 2部
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、帝人化成社製 Mv5万) 5部
テトラヒドロフラン 120部
シクロヘキサノン 80部
具体例化合物II−1の電荷輸送物質 3部
【0122】
〔フィラー含有表面層用塗工液 6〕
アルミナ(AKP−50、住友化学工業社製) 2部
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、帝人化成社製 Mv5万) 5部
テトラヒドロフラン 120部
シクロヘキサノン 80部
具体例化合物II−1の電荷輸送物質 3部
【0123】
〔フィラー含有表面層用塗工液 7〕
シリカ(KMPX−100、信越化学工業社製) 2部
ポリカーボネート樹脂(Zポリカ、帝人化成社製 Mv5万) 5部
テトラヒドロフラン 120部
シクロヘキサノン 80部
具体例化合物II−1の電荷輸送物質 3部
【0124】
【表1】
塗工液の水分量は三菱化学製CA−06を用いて計測。
体積平均粒径は堀場製作所製CAPA500で計測。
【0125】
(比較例1)
参考例1と同様にして下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた。この上に、参考例1の表面層用塗工液1の組成にイオン交換水を4重量%加えてボールミルを用い、8時間粉砕して調整した有機フィラーが分散されたフィラー含有表面層用塗工液1−Cを塗布し、参考例1と同様の方法で電子写真感光体を作成した。塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表2に記載する。
【0126】
(比較例2)
参考例2と同様にして下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた。この上に、参考例2の表面層用塗工液1の組成にイオン交換水を4重量%加えてボールミルを用い、8時間粉砕して調整した電荷輸送物質と有機フィラーが分散されたフィラー含有表面層用塗工液2−Cを塗布し、参考例2と同様の方法で電子写真感光体を作成した。塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表2に記載する。
【0127】
(比較例3)
参考例3と同様にして下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた。この上に、参考例3の表面層用塗工液3の組成にイオン交換水を4重量%加えてボールミルを用い、8時間粉砕して調整した高分子電荷輸送物質と有機フィラーが分散されたフィラー含有表面層用塗工液3−Cを塗布し、参考例3と同様の方法で電子写真感光体を作成した。塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表2に記載する。
【0128】
(比較例4)
参考例4と同様にして下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた。この上に、参考例4の表面層用塗工液4の組成にイオン交換水を4重量%加えて同様にボールミルを用い、8時間粉砕して調整した電荷輸送物質と有機フィラーが分散されたフィラー含有表面層用塗工液4−Cを塗布し、参考例4と同様の方法で電子写真感光体を作成した。塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表2に記載する。
【0129】
(比較例5)
実施例1と同様にして下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設けた。この上に、実施例1の表面層塗工液5、6及び7にイオン交換水を4重量%加えて同様にボールミルを用い、8時間粉砕して調整した電荷輸送物質と酸化チタン、アルミナ、シリカとを分散したフィラー含有表面層用塗工液5−C、6−C、7−Cを塗布し、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作成した。塗工液の水分量と分散フィラーの体積平均粒径を表2に記載する。
【0130】
【表2】
塗工液の水分量は三菱化学製CA−06を用いて計測した。
体積平均粒径は堀場製作所製CAPA500で計測した。
【0131】
(比較例6)
参考例1と同様にして下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を設け、フィラー含有表面層を積層しない電子写真感光体Dを作成した。
【0132】
参考例1〜4、実施例1のサンプルBと、比較例1〜5のサンプルCと、比較例6のサンプルDを(株)リコー製複写機イマジオMF200に装着し、暗部電位800V、明部電位100Vに設定し1万枚複写の試験を行った。画像と摩耗量(膜厚)を表3に示す。膜厚は渦電流式膜厚計フィシャー社製フィシャーコープMMSで測定した。
【0133】
【表3】
【0134】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、分散安定性に優れたフィラー含有表面層用塗工液を作成できる。これを用いることにより高耐久で繰り返し使用に対し安定な高画質画像を作像できる感光体が提供される。また、繰り返し使用においても安定な高画質画像を高速で作像可能な電子写真方法、電子写真装置、ならびに電子写真用プロセスカートリッジが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子写真感光体の断面図である。
【図2】本発明の他の電子写真感光体の断面図である。
【図3】本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための概略図である。
【図4】本発明の電子写真プロセス及び電子写真装置を説明するための他の概略図である。
【図5】本発明で用いられるプロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
30 導電性気体
31 感光層
32 表面層
33 電荷発生層
34 電荷輸送層
Claims (10)
- 導電性支持体上に少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を積層した感光層と、ポリカーボネート、電荷輸送物質および酸化チタン、アルミナ、シリカの中から選ばれるフィラーを含有する表面層との積層で構成される電子写真感光体の製造方法であって、前記電荷輸送物質は下記一般式(1)で表される化合物であり、酸化チタン、アルミナ、シリカの中から選ばれるフィラーをポリカーボネートと前記電荷輸送物質の溶解溶液中に分散させた塗工液の水分含有量が2.0重量%以下である塗工液を用いて表面層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
- 前記表面層用塗工液におけるポリカーボネート(R)及び酸化チタン、アルミナ、シリカの中から選ばれるフィラー(F)の含有固形分重量比率(%)がR:F=50〜95:5〜50であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記ポリカーボネートの少なくとも1つは下記一般式(2)、(3)で表わされる化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記表面層用塗工液における電荷輸送物質(D)、ポリカーボネート(R)及び酸化チタン、アルミナ、シリカの中から選ばれるフィラー(F)の含有固形分重量比率(%)がD:R:F=10〜40:35〜55:5〜40であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
- 前記酸化チタン、アルミナ、シリカの中から選ばれるフィラーの体積平均粒径が0.05〜1.5μmであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法によって、形成されたことを特徴とする電子写真感光体。
- 感光体の形状がベルト状、シート状またはドラム状であることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体。
- 電子写真感光体に、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行う電子写真方法において、該電子写真感光体が請求項6又は7に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真方法。
- 少なくとも、電子写真感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段および転写手段を具備してなる電子写真装置であって、該電子写真感光体が請求項6又は7に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置。
- 少なくとも電子写真感光体を具備してなる電子写真装置用プロセスカートリッジであって、該電子写真感光体が請求項6又は7に記載の電子写真感光体であることを特徴とする電子写真装置用プロセスカートリッジ。
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