JP3883063B2 - クロック生成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、電子デバイスやマイクロプロセッサが動作クロックとして用いるクロック生成装置に関し、より特定すると、高い周波数の動作クロックが原因で発生する不要輻射ノイズ(EMI:Electro Magnetic Interference)の低減化をクロック周期を変調する(スペクトルを拡散させる)ことにより実現するようにしたクロック生成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、多くの電子デバイスは、マイクロプロセッサやデジタル回路を使用しているが、これらの回路は内部にクロック発生器を持ち、発生するクロックにより回路を動作させる。近年、動作の高速化に伴い、必要な動作クロックの周波数も高くなり、高速のマイクロプロセッサから発生する不要輻射ノイズ(EMI)が問題視されている。こうしたEMIに対し、行政機関による規制の動きもあり、例えば、アメリカのFCC(Federal Communications Commission)では高周波を発する機器に対する規制の一環として、機器から発生するEMIを測定するための試験手順、最大許容放出量を定めている。このようなEMIに対する行政機関の規制を遵守するためにも、従来から様々なEMI対策が行われてきている。例えば、高周波抑止素子の開発、或いはEMIを発生する機器のシールド(周辺を金属で遮蔽)、或いはEMIの放出を抑制可能な回路等が検討されてきた。しかしながら、これらの方法は、特にシールド法による場合には大型回路ボードが必要であるといったことを含め、何れもEMI放出を抑制するために多くの技術上の困難とそれを克服するために多大な労力とコストを要するといった問題がある。
【0003】
そこで、EMIを減少させる他のアプローチとして、クロック信号自身を変化させるという観点からの検討がなされている。クロック信号自身を変化させる方法によるものとして、スペクトル拡散させるようにクロック周波数を変調する方法を用いたものが知られており、例えば下記特許文献1を示すことができる。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−98152号公報
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の特開平9−98152号公報(拡散スペクトル・クロック生成装置)に開示されている方法では、周波数変調プロファイルに従って生成した制御電圧によってVCO(電圧制御式発振器)の発振周波数を制御することを前提とし、制御電圧を生成する過程で、基準クロックに対して分周器を使用するので、位相比較周波数が低下し、雑音などの外乱に影響されやすかった。このため、基準クロックと、基準クロックをベースに生成されるスペクトル拡散クロックの位相を正確に所望の周期プロファイルを持つものとして実現することが困難であった。
また、複数にわたる装置又は回路系から1つのシステムを構成する場合にシステム内の装置又は回路の各部の動作にスペクトル拡散クロックを適用する場合を考えると、一つのシステム内に相互に位相の保証されない複数のクロックが存在することになってしまう。上記特許文献1に示すような動作クロックを用いたシステムにおいて、動作を適正に動作を保つためには、装置間のデータ転送インターフェースを非同期化に対応させることが必要であり、このために、バッファメモリを追加する必要がある。
【0006】
図10は、従来のバッファメモリを組み込んだスペクトル拡散クロックを用いるデータ処理回路の一例を示す回路ブロックである。
図10に示すように、この回路ブロック20は、入力されるデータを基準クロック生成回路22で生成される基準クロックRclkによってフリップフロップ24で取込み、RAM26に記憶する。
RAM26に記憶されたデータはスペクトル拡散変調クロック生成回路23で生成されるスペクトル拡散変調クロックによって読み出され、フリップフロップ25に供給される。フリップフロップ25はスペクトル拡散変調クロックMclkに従ってデータを利用側の回路ブロック21に転送する。
【0007】
このように従来、スペクトル拡散変調クロックで装置を動作させるときは、一時的にデータを保持するバッファメモリ(図10の例におけるRAM26)を用いることにより、個々の動作クロックが非同期となったために生じる誤動作を回避するようにしている。このために、コストが上昇し、このバッファメモリを設けるための回路スペースも必要となっていた。また、バッファメモリを駆動するためのクロック速度等の制約条件により、煩わされて設計をさらに困難にしている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来技術における問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、不要輻射エネルギーのレベルが低減可能なスペクトル拡散変調クロックを生成する装置において、従来技術のVCOを用いて生成したスペクトル拡散変調クロック(上記特許文献1、参照)をシステム内のデバイスや回路の各部の動作クロックとして用いる場合のように、データ転送インターフェースに付加しなければならなかったバッファメモリを不要にして、容易にシステム内のデバイスや回路の各部の動作クロックとして適用することができるようにし、適用したシステムのパフォーマンスの向上を図ることを可能にする前記クロック生成装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、基準クロックを制御入力に従って遅延させる可変遅延回路と、前記可変遅延回路への制御入力をクロック周期毎に可変することによって基準クロックの位相を変更する位相制御手段を有し、前記位相制御手段によって出力クロックのスペクトルの拡散を可能とするクロック生成装置であって、前記位相制御手段は、前記可変遅延回路を要素とするDLL回路を構成するための手段として、可変遅延回路から出力される遅延クロックと基準クロックの位相を比較する比較器と、この比較器からの位相差に応じて可変遅延回路への制御入力を生成する第1のチャージポンプを備えるとともに、前記可変遅延回路への制御入力をスペクトルの拡散を可能とするためにクロック周期毎に設定された位相差に応じて可変する回路を構成するための手段として、可変遅延回路におけるクロックの遅延状態を検出し、この遅延の検出結果として得られる基準クロックに対する位相差がクロック周期を単位とする所定の限界値を越えないように、位相差を遅延制御量として設定する遅延設定回路と、この遅延設定回路の設定に応じて前記可変遅延回路への制御入力を生成する、第1のチャージポンプに比べ容量がより大きい第2のチャージポンプと、第2のチャージポンプと第1のチャージポンプからの制御入力を合成する手段を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載されたクロック生成装置において、前記位相制御手段の遅延設定回路、前記限界値内の上限及び下限の間を漸増・漸減させるようなプロファイルに従って、前記位相差を設定するものであることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のクロック生成装置を添付する図面とともに示す以下の実施形態に基づき説明する。
本発明のクロック生成装置は、生成するクロックのスペクトルを拡散させるための手段として、基準クロックの位相をクロック周期毎に変更可能な設定条件に従って制御する位相変調方式を用い、この制御方式により、生成するクロックの周期を変動させることによりスペクトル拡散を行い、しかも基準クロックと制御結果として生成する変調(スペクトル拡散)クロックとの位相差を所定の範囲に制限することにより、変調(スペクトル拡散)クロックにおいて一定の同期性の保証を可能にする。
図1は、上記のような本発明の構成要件を備えたクロック生成装置の実施形態としてのスペクトル拡散変調クロック生成回路の回路ブロック図である。
図1に示すスペクトル拡散変調クロック生成回路は、基準クロックを入力として動作する遅延同期(DLL)回路10を基本回路とする。なお、実施形態としては、基準クロックを発生するクロック発振器1と遅延同期(DLL)回路10を一体に有する回路構成により実施可能であり、さらに、外付けのクロック発振器1を単体の遅延同期(DLL)回路10に接続する回路構成により実施することも可能である。
DLL回路10は、クロック発振器1からの基準クロックを遅延させる複数の遅延素子からなる可変遅延回路2、クロック発振器1からの基準クロックと可変遅延回路からの出力される遅延クロックとの位相を比較する位相比較器3、位相比較器3からの出力に従い流入電流、流出電流を制御し、可変遅延回路2の制御電圧Vctrlを生成するために働く第1のチャージポンプ4、このチャージポンプ4からの電流が供給されるフィルタ5から構成されており、フィルタ5の出力が遅延制御電圧Vctrlとして可変遅延回路2にフィードバックされるものである。なお、DLL回路10は、上記した各回路要素をIC化し、単体回路の構成にすることが可能であるが、フィルタ5を外付けとした回路構成をとるようにしても良い。
ここに、遅延同期回路10の出力端子13から変調を受けたクロックMclkが、出力クロックとして利用側の回路ブロック(図示せず)に供給される。なお、遅延設定回路11は、設定された遅延量(遅延時間)に対応した遅延制御電圧Vctrlを生成するための電流を調整するために付加した第2のチャージポンプ12を操作する回路である。第2のチャージポンプ12は、第1のチャージポンプ4より容量が大きく、両チャージポンプの電流を共通の端子6を通して可変遅延回路2への制御入力として合成する。
【0011】
図2は、図1に回路要素として用いたチャージポンプの一例を示す回路図である。図2に示すように、チャージポンプは、第1の電流源7、第2の電流源8、第1のスイッチSW1、第2のスイッチSW2、コンデンサ9及び出力端Voutからなる。このチャージポンプは、前段の位相比較器3の出力信号或いは遅延設定回路11により設定された遅延時間を受け、スイッチSW1,SW2いずれかのスイッチをΔtの期間オンすることにより、第1の電流源1から第1のスイッチSW1を介して電流Iをコンデンサ9に流す(このときの充電量ΔQ=IΔt)又は、第2のスイッチSW2を介して第2の電流源2からコンデンサ9の電荷を引き抜く(このときの除電量ΔQ=―I’Δt)ことにより、出力電圧VoutをΔV(=ΔQ/C)変化させる。
このΔVの変化は、遅延同期回路11においてフィルタを経て可変遅延回路2への制御電圧Vctrlとなって、出力クロックパルスの位相(遅延)の制御を行う。
図3は、基準クロックRclkと可変遅延回路2の出力クロックである位相変調クロックMclkとの関係を示すタイムチャートである。同図中の(a)は基準クロックの波形である。DLL回路10では、可変遅延回路2の遅延時間が基準クロックRclkの周期と等しくなるように制御される。その結果、位相変調クロックMclkは基準クロックRclkに比して1周期遅れになって、基準クロックRclkと同位相の時は、図3(b)に示すように1周期遅れた波形で表される。
これに対し、遅延制御電圧VctrlがΔV高くなったとき、図3(c)に示される通り、基準クロックに対し進み位相になる。逆に遅延制御電圧VctrlがΔV低くなった時は、図3(d)に示されるように、遅れた位相になる。
【0012】
ここで、図1を参照してDLL回路10の動作を説明すると、この回路の位相比較器3において、入力される基準クロックRclkと出力クロックMclkとの位相差が検出され、この位相差に応じて第1のチャージポンプ4の充・放電を制御し、その結果としてフィルタ5を介して生成される遅延制御電圧Vctrlが可変遅延回路2に負帰還され、位相差を無くす方向に遅延が調整され、入力クロックと同相に収束するような制御動作を行う。
つまり、可変遅延回路2の出力信号の位相が基準クロックRclkより進んでいると、位相比較器3は第1のチャージポンプ4のスイッチSW2を進みに相当する期間オンさせる信号を生成する。これにより、第1のチャージポンプ4は、電荷ΔQをコンデンサ9から引き抜き、出力電圧である遅延制御電圧VctrlをΔVだけ下げ、可変遅延回路2のクロックパルスの位相を遅らせる動作を行う。
逆に可変遅延回路2の出力信号の位相が基準クロックRclkより遅れていると、位相比較器3は第1のチャージポンプ4のスイッチSW1を遅れに相当する期間オンさせる信号を生成する。これにより、第1のチャージポンプ4は出力電圧である遅延制御電圧VctrlをΔV上げるように制御し、結果として出力クロックMclkの位相を進ませる。このようにして出力クロックMclkの位相をクロック発振器1の位相と同期させる動作を行う。
【0013】
上記のように、DLL回路10の動作そのものは、出力クロックMclkの位相を基準クロックRclkの位相と同期させるフィードバック制御動作を行う。ところで、本発明では、後記で詳述するように、基準クロックRclkを位相変調することにより、出力クロックMclkのスペクトルを拡散させるが、このための手段として、本実施形態では上記したDLL回路10の要素として示した可変遅延回路2を利用し、可変遅延回路2を制御することによりスペクトルを拡散させる機能を実現する。
具体的には、第1のチャージポンプ4より容量の大きな第2のチャージポンプ12を共通の入力端子に接続して、両チャージポンプの電流を可変遅延回路2への制御入力とする。この場合に、第2のチャージポンプ12の出力信号は第1のチャージポンプ4の出力信号に比較して大きく設定されているため、第2のチャージポンプの出力信号を操作し制御入力を変化させることにより、意図的に周期が変化するクロック信号を生成することができる。
こうした方式に従って行う本実施形態のスペクトル拡散変調クロックの生成プロセスについて、以下に詳細に説明する。
【0014】
本発明は、発振器からの基準クロックの周期を位相変調方式により変動させることによりスペクトル拡散を行うが、その際に基準クロックRclkと変調クロックMclkとの位相差を所定の範囲に制限し、変調(スペクトル拡散された)クロックにおいて一定の同期性の保証をする。
基準クロックRclk、変調クロックMclkそれぞれを基準とする2つのシステム間におけるデータの受け渡しの際、この一定の同期性の保証がされない場合は、このシステム間を非同期なインターフェースとみなして、2つのシステム間でデータの受け渡しを正しく行うための手段を付設する必要がある。つまり、互いに非同期なシステムのインターフェースでデータを正しく送受信するためには、上記[従来の技術]で図10を参照して述べたように、バッファメモリなどを使用した、所謂非同期インターフェース回路を設ける必要がある。
一定の同期性を保証するということは、上述の異なるクロックを基準とする2つのシステム間でのインターフェースのタイミング制約を定義することになり、この一定のタイミング制約のもとでデータの受け渡しが可能なシステムのタイミング設計を行うことで、上述の非同期インターフェース回路を不要とすることが可能になる。
例えば、基準クロックRclkと変調クロックMclkとの位相差の限界を例えば基準クロックRclkの1/2周期として、このタイミング制約を定義した場合に、基準クロックRclkに対する変調クロックMclkの位相差がこの限界値を越える(図3(e)に示す状態となる)と、次の周期でのデータを取込む(データの取込みはクロックパルスの立ち上がりのタイミングで行われる)ことになり、誤ったデータになってしまう。
従って、本例では変調クロックパルスのエッジは、図3(f)に示すように、−1/2Trclkと1/2Trclkの間(T)に存在させる、つまり基準クロックと変調クロックとの位相差を常に基準クロックの周期Trclkの1/2以内に抑え、一定の同期性の保証をするようにすれば、スペクトル拡散されたクロックを用いても、上記[従来の技術]で図10を参照して述べたような、データ転送インターフェースに使用しなければならなかったバッファメモリを不要にすることが可能になる。なお、本例では基準クロックRclkと変調クロックMclkとの位相差の限界値として基準クロックRclkの1/2周期としているが、この値は、タイミング制約の設計条件として適宜選択し得る値の一例を示したにすぎない。
【0015】
ここで、発振器からの基準クロックの位相を変調するための手段として用いる可変遅延回路2の仕組みを説明する。可変遅延回路2は、n個(ここでは、8個の例を示す)の遅延素子からなり、遅延制御電圧Vctrlに応じて、各遅延素子は入力されるクロック信号をそれぞれ所定量だけ遅延させ、最終段の素子を通して変調クロックMclkを出力するような構成である。
このような構成を有する可変遅延回路2において、上述のように、基準クロックRclkに対する位相差が限界値(基準クロックRclkの1/2周期)を越えないように、遅延出力(変調)クロックMclkを制御する必要がある。このような制御動作を行うために、本実施形態では、各遅延素子の出力端P1〜P8からは、図4に示すように各素子により遅延されて一定間隔づつずれた遅延クロックp1〜p8(なお、図4において、出力端P5〜P8の波形図は記載を省略している)を生成し、後述する基準クロックRclkに対する位相関係から可変遅延回路2の動作状態を検出するために利用される。
【0016】
次に、遅延制御電圧Vctrlに応じて制御される可変遅延回路2の動作状態を検出する手段について説明する。可変遅延回路2の動作状態は、上述の各遅延素子の出力端に発生する遅延クロックp1〜p8の出力状態から検出することが可能で、各クロックサイクル毎にその時点の可変遅延回路2の遅延クロックp1〜p8の出力状態により、基準クロックに対する変調クロックの位相差を得、得られた位相差により、変調クロックが先に述べた基準クロックの周期Trclkの1/2を越えないように制御する。
よって、この位相差検出手段は、検出結果に従って可変遅延回路2への制御入力を設定する遅延設定回路11に設けられ、各遅延素子の端子P1〜P8から出力される位相の異なる遅延クロックは遅延設定回路11の位相差検出手段へ入力される。
ここで、可変遅延回路2の各遅延素子の出力端P1〜P8の出力状態から基準クロックに対する変調クロックの位相差検出方法を詳細に説明する。
図5は、基準クロックRclkとスペクトル拡散変調クロックMclkの関係を示し、位相差の検出原理を説明するタイムチャートである。
図5中の(1)は、基準クロックRclkとスペクトル拡散変調クロックMclkとの位相が一致している場合を表し、点Aは1周期遅延したスペクトル拡散変調クロックMclkの立ち上がりを表わす。図5中の(1)の下に示されるタイムチャート(1)’は、(1)の動作状態における可変遅延回路2の各遅延素子のクロックパルス出力p1、p2、…p8の立ち上がり時点を示す。なお、ここでは、基準クロックRclkにおける、High/LowのDUTY比は50%としている。また、各遅延素子のクロックパルス出力p1、p2、…p8の立ち上がりに注目しているが、立ち下がりでも良い。
図5中の(2)は、スペクトル拡散変調クロックパルスMclkの立ち上がり時点が基準クロックRclkより遅れたケースで、同じく図5中の(2)’は、(2)の動作状態における可変遅延回路2の各遅延素子のクロックパルス出力p1、p2、…p8の立ち上がり時点を示す。
図5中の(3)はスペクトル拡散変調クロックパルスMclkの立ち上がり時点が最大値1/2Trclkまで遅れたケースを示す。同じく図5中の(3)’は、(3)の動作状態における可変遅延回路2の各遅延素子のクロックパルス出力p1、p2、…p8の立ち上がり時点を示す。
図5中の(4)はスペクトル拡散変調クロックパルスMclkの立ち上がり時点が基準クロックRclkより進んだケースで、同じく図5中の(4)’は、(4)の動作状態における可変遅延回路2の各遅延素子のクロックパルス出力p1、p2、…p8の立ち上がり時点を示す。
図5中の(5)はスペクトル拡散変調クロックパルスMclkの立ち上がり時点が最大値1/2Trclkまで進んだケースを示す。同じく図5中の(5)’は、(5)の動作状態における可変遅延回路2の各遅延素子のクロックパルス出力p1、p2、…p8の立ち上がり時点を示す。
【0017】
遅延設定回路11の位相差検出手段は、ロジック回路又はマイコンにより構成し、図5の(1)’〜(5)’に示す各遅延素子のクロックパルス出力p1、p2、…p8の立ち上がり(立ち下がりでも良い、以下の記述においても同様)時における基準クロックRclkのレベルがHigh/Lowいずれかを判定することにより、可変遅延回路2の動作状態、即ち遅延により生じる基準クロックに対する変調クロックの位相差を検出する。また、遅延設定回路11は、位相差の検出結果によってスペクトル拡散変調クロックを生成する可変遅延回路2への入力制御電圧を生成するための設定を変更する。
位相差検出の実施手順としては、各遅延素子のクロックパルス出力の立ち上がり時点で基準クロックRclkがHighの場合はH信号を、Lowの場合はL信号を生成し、このH,L信号の組み合わせがそのときの可変遅延回路2の動作状態を表す。
前記図5中の(1)の場合、遅延素子出力p1〜p4の立ち上がり時点で基準クロックRclkがHighであるから、H信号が生成され、遅延素子出力p5〜p8の立ち上がり時点で基準クロックがLowであるからL信号を生成する。
次の図5中の(2)の場合、p1〜p3、p7,p8の立ち上がり時点で基準クロックRclkもHighであるから、H信号が生成され、p4〜p6の立ち上がり時点で基準クロックはLowであるからL信号を生成する。同様に図5中の(3)の場合、p1、p2、p6〜p8の立ち上がり時点で基準クロックRclkもHighであるから、H信号が生成され、p3〜p5の立ち上がり時点で基準クロックはLowであるからL信号を生成する。
以上、基準クロックRclkに対し、遅延素子の出力が遅れる場合を説明したが、基準クロックRclkに対し遅延素子の出力が進む場合についても、同様の判定をすると、下記[表1]に示される(4)、(5)のようになる。なお、[表1]は、図5中に(1)〜(5)として示した動作状態における遅延素子出力p1〜p8の判定結果をまとめて表している。
【0018】
【表1】
Figure 0003883063
【0019】
遅延設定回路11は、上記のようにして得た各遅延素子のクロックパルス出力p1、p2、…p8のの立ち上がり時における基準クロックRclkのレベルがHigh/Lowいずれかを判定し、得たH,L信号の組み合わせ([表1]参照)から、可変遅延回路2の動作状態、即ち基準クロックに対する変調クロックの位相差が検出できるので、位相差を周期Trclkの1/2の範囲内に制限するような遅延量(位相)に可変遅延回路2の設定を変更しながら位相変調をかけることが可能になる。
【0020】
次に、上記のようにして位相差を周期Trclkの1/2の範囲内に抑えるという制限を加えながら変調クロックの周期を変動(スペクトルを拡散させる)させる基準クロックの位相変調動作について説明する。
遅延設定回路11は、変調クロックを生成する際に、上記したように、位相差を周期Trclkの1/2の範囲内に制限するので、位相差がこの制限値の上限又は下限に達した(図5及び[表1]の(3),(5)の状態)ことを検出したときに、それぞれこれまでの制御条件の設定を変更する。即ち、位相を遅らせる設定で制限値を越える場合には、位相を進める方向に、又位相を進ませる設定で制限値を越える場合には、位相を遅らせる方向に変更する。ただし、この位相の遅進を変更する場合に、同時に変調クロックのスペクトルを拡散させるために、各サイクル毎の位相変調の結果として変調クロックの周期を変えるような条件で設定を変更する。
先ず、設定の変更に従う基本的な位相制御動作を説明すると、設定の変更は、進み、遅れいずれかの方向で周期をΔt変化させるという設定条件の変更が指示され、実際に可変遅延回路2においては、周期をΔt変化させるために必要な位相差が生じるように、その位相差に見合う制御電圧ΔVを入力することになる。位相の遅進により制御電圧ΔVを下げるように制御する場合とΔV上げるように制御する場合があるが、一例としてΔVを下げ、位相を遅らせる場合を説明する。
遅延設定回路11は、位相を遅らせクロック周期をΔt変化させるために必要な制御電圧ΔVを可変遅延回路2の制御入力として与えるように、Δtに対応する電荷ΔQを第2のチャージポンプ12が取りだすように指示し、遅延制御電圧VctrlをΔV下げるよう制御する。
図6は、この制御による位相変調されたクロックのタイムチャートを示す。図6は、基準クロックRclkの各サイクル毎に一定の遅延制御電圧ΔV下げるよう制御する例を示している。
図6に示すように、この例においては、変調クロックMclkの第1クロックについて、遅延制御電圧VctrlをVref−ΔVとする。なお、Vrefは基準クロックRclkと出力クロックが調相時の遅延制御電圧である。この遅延制御電圧Vctrlにより変調クロックMclkの位相は基準クロックRclkからΔtだけ位相が遅れる。同じく第2クロックについては、遅延設定回路11は遅延制御電圧VctrlをVref−2ΔVとする。この遅延制御電圧Vctrlにより変調クロックの位相は基準クロックから2Δtだけ位相が遅れる。以下同様に、第nクロックについては、基準クロックからnΔtだけ位相が遅れた変調クロックが生成される。従って、この間の変調クロックの周期Tmclkは、基準クロックの周期Trclk+Δtとなり、周期をΔt変化させる。
以上、ΔVを下げて、位相を遅らせて制御する場合について説明したが、ΔVを上げて、位相を進ませて制御する場合も同様に制御される。
【0021】
上記では、基準クロックと変調クロックの位相差が制限値の上限又は下限に達したときに、これまでの制御条件の設定を変更する際に、位相の遅進と同時に、変調クロックの周期の変更行うことを可能にする基本的な位相制御動作(図6参照)について示したが、変調クロックのスペクトルを拡散させるためには、変調クロックの周期にバラツキを与えるような設定条件の変更を行う必要がある。
次に示す実施形態は、上記した基本的な位相制御動作に基づいて、スペクトルを拡散させた変調クロックを生成するための変調動作を伴う好適な実施形態を示す。
本実施形態では、基準クロックと変調クロックの位相差が制限値(基準クロック周期Trclkの1/2)の上限又は下限に達したときに、これまでの制御条件の設定を変更する際に、位相の遅進の変更に加えて、変調クロックの周期の変更を行うが、周期にバラツキを与えてスペクトルを拡散させるような変調プロファイルを用いる。この変調プロファイルは、上記制限値の上限又は下限の間を上記制限値の上限又は下限の間を位相差(基準クロックと変調クロックの位相差)が漸増・漸減するようなプロファイルに従うようにする。
【0022】
図7は、本実施形態によるスペクトル拡散変調クロック生成時の動作特性を示すチャートである。図7の(A)は、クロックサイクルNに対する変調クロックの周期Tmclkを示し、この周期は基準クロックの周期Trclkに対する変化量(Δt)で表され、クロック群n(1),n(2)・・・毎に周期を変動させている。図7の(B)は、同図(A)に対応させたクロックサイクルNに対する基準クロックと変調クロックの位相差φ(N)を示す。図7の(B)に示す位相差φ(N)は1サイクル当たりの位相差で、+φmax(N)は上記制限値(上記実施形態では基準クロック周期Trclkの1/2とした)の上限値、−φmax(N)は下限値を表す。
この動作特性は、図7(B)に示すように、上記制限値の上限値+φmax(N)と下限値−φmax(N)の間で位相差φ(N)が漸増・漸減を交互に繰り返し、上下限値を結ぶ各位相差特性線(図7(A)のクロック群n(1),n(2)・・・に対応)はその間の変調クロック周期Tmclkの設定を一定としているので、直線で示されているが、各クロック群ではそれぞれ異なる値の変調クロック周期Tmclk(図示の例では、Δt,−2Δt,3Δt・・・)を設定し、変調クロックの周期にバラツキを与える。なお、図7の例では、変調クロックの変動周期Nctmの半周期の変調プロファイルを折り返す形で一周期分のプロファイルを形成している。
このように、変調クロックの周期にバラツキを与えて変動させることにより、スペクトル拡散効果を高めることができる。
【0023】
図9は、本実施形態により生成されるスペクトル拡散変調クロックによるEMI低減効果を示す実験結果を表したものである。
図9の(a)は、20MHzから60MHzの変調無しのクロックについて、その電力スペクトラムを解析した結果を示し、同図の(b)は、本実施形態のスペクトル拡散変調クロックの電力スペクトラムの解析結果を示す。図9に示すように、スペクトル拡散変調クロックの場合、変調無しのクロックに比して、中心周波数(40MHz)に現れるピーク値が低減されており、又帯域が広くなっていることがわかる。
【0024】
本発明に係わるスペクトル拡散変調クロック生成回路を適応したデータ処理回路ブロックの概略図を図8に示す。
図8において、スペクトル拡散変調クロック生成回路23を用いるデータ処理回路20は、処理したデータを利用側の回路ブロック21に送る場合、スペクトル拡散変調クロックが一定の同期性を保証され(即ち、基準クロックに対する変調クロックの位相差を例えば基準クロックの1/2周期に制限している)、周期越えを起こすことがないので、データ処理回路20側には基準クロック生成回路22、スペクトル拡散変調クロック生成回路23、基準クロック生成回路22から供給される基準クロックに基づいてデータを取込み、次段フリップフロップ25に転送するフリップフロップ24、データをスペクトル拡散変調クロックで取込み、次段の表示装置に転送するフリップフロップ25を備えるだけでよく、従来例(図10参照)に示したようなバッファメモリを用いることなく正常な動作が可能である。このように、本実施形態のスペクトル拡散変調クロック生成回路によれば、データ転送インターフェースにバッファメモリを不要にしたデータ転送インターフェースを要素として、簡単な構成で高パフォーマンスのデータ処理回路を提供することができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明のクロック生成回路によると、発生した基準クロックの位相をクロック周期毎に変更可能な設定条件に従って制御する位相変調方式を用いて、変調クロックの周期を変動させることによりスペクトル拡散を行い、しかも基準クロックと変調後の拡散クロックとの位相差を所定の範囲に(基準クロック周期を単位として定めた所定の限界値を越えないように)制限することにより、拡散クロックにおいて一定の同期性の保証を可能にしたので、本発明のスペクトル拡散されたクロックをシステム内のデバイスや回路の各部の動作クロックとして用いても、従来技術におけるようにデータ転送インターフェースに付加しなければならなかったバッファメモリを不要にして、容易にシステム内の動作クロックとして適用することができ、適用したシステムのパフォーマンスの向上を図ることが可能になる。
また、基準クロックの位相を制御する回路をDLL回路としたことにより、基準クロックと変調クロックの位相関係を一定に保つことができるので、動作の安定性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係わるスペクトル拡散変調クロック生成回路の回路ブロック図である。
【図2】 図1に回路要素として用いたチャージポンプの一例を示す回路図である。
【図3】 基準クロックRclkと遅延設定回路の出力である位相変調クロックMclkとの関係を示すタイムチャートである。
【図4】 可変遅延回路の遅延素子からの出力p1、p2、…p8を示すタイムチャートである。
【図5】 基準クロックRclkとスペクトル拡散変調クロックMclkの関係を示し、位相差の検出原理を説明するタイムチャートである。
【図6】 可変遅延回路の制御入力をサイクル毎にΔV増やす制御による位相変調されたクロックのタイムチャートを示す。
【図7】 スペクトル拡散変調クロック生成時の動作特性を示すチャートである。
【図8】 本発明のスペクトル拡散変調クロック生成回路を適用したデータ処理回路の一例を示す回路ブロックである。
【図9】 スペクトル拡散変調しないクロックと本発明のスペクトル拡散変調クロックの電力スペクトラムを示す図である。
【図10】 従来のバッファメモリを組み込んだスペクトル拡散クロックを用いるデータ処理回路の一例を示す回路ブロックである。
【符号の説明】
1…基準クロック発振器、 2…可変遅延回路、
3…位相比較器、 4…第1のチャージポンプ、
5…フィルタ、 10…DLL(遅延同期)回路、
11…遅延設定回路、 12…第2のチャージポンプ。

Claims (2)

  1. 基準クロックを制御入力に従って遅延させる可変遅延回路と、前記可変遅延回路への制御入力をクロック周期毎に可変することによって基準クロックの位相を変更する位相制御手段を有し、前記位相制御手段によって出力クロックのスペクトルの拡散を可能とするクロック生成装置であって、
    前記位相制御手段は、前記可変遅延回路を要素とするDLL回路を構成するための手段として、可変遅延回路から出力される遅延クロックと基準クロックの位相を比較する比較器と、この比較器からの位相差に応じて可変遅延回路への制御入力を生成する第1のチャージポンプを備えるとともに、
    前記可変遅延回路への制御入力をスペクトルの拡散を可能とするためにクロック周期毎に設定された位相差に応じて可変する回路を構成するための手段として、可変遅延回路におけるクロックの遅延状態を検出し、この遅延の検出結果として得られる基準クロックに対する位相差がクロック周期を単位とする所定の限界値を越えないように、位相差を遅延制御量として設定する遅延設定回路と、この遅延設定回路の設定に応じて前記可変遅延回路への制御入力を生成する、第1のチャージポンプに比べ容量がより大きい第2のチャージポンプと、第2のチャージポンプと第1のチャージポンプからの制御入力を合成する手段を備えたことを特徴とするクロック生成装置。
  2. 請求項1に記載されたクロック生成装置において、前記位相制御手段の遅延設定回路は、前記限界値内の上限及び下限の間を漸増・漸減させるようなプロファイルに従って、前記位相差を設定するものであることを特徴とするクロック生成装置。
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