JP3868721B2 - 乗物タイヤ用ウェアインジケータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレッドパターンピースと、円周方向のリブと、斜走溝に挟まれたトレッドピースとの何れか少なくとも1つと、トレッドパターンピース間やリブ間やトレッドピース間の溝とをタイヤトレッドに有し、トレッドパターンピースとリブとトレッドピースとの何れか少なくとも1つの路面接触面に、溝の溝深さを示す、細溝で形成されるインジケータを備え、該インジケータがトレッドからタイヤの中心方向に延伸されると共に、該インジケータのトレッド方向の断面形状が数字と文字と記号と図形との何れかの表示形状になっている乗物タイヤ用ウェアインジケータに関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤに形成する溝は、晴天時の走行だけでなく雨天時の走行をするときの乗物のグリップ力に重要な影響を与える。悪条件の路面の走行中、溝が摩耗して溝深さが極端に小さくなることで危険が生じることがないように、タイヤの摩耗と溝深さの減少との度合いをモニタすることが安全運転の見地から重要となる。又、タイヤの所定の溝深さは、自動車の検査に適したものであることが望ましい。
【0003】
タイヤの摩耗度をモニタするため、さまざまな構造のタイヤが開発されている。
【0004】
刊行物WO−97/47483には、トレッドに配置されたウェアインジケータにより、タイヤの摩耗度がモニタでき、取付けた乗物タイヤを交換すべき時機が分かるタイヤ構造が開示されている。ウェアインジケータは、異なる溝深さでトレッドに形成された溝や、溝に連結して異なる深さをもって形成された突起部分で構成されている。又、ウェアインジケータは、タイヤの円周全体に拡がって形成されている。並んだインジケータの溝深さは、最小のものから最大のものまで一定の割合で増加している。タイヤの摩耗が長期に亘って続くとインジケータはその一部が消失してインジケータのパターンが変るので、取付けたタイヤの交換をすべきだと分かる。ウェアインジケータは、溝深さそのものについては何も表示しない。
【0005】
刊行物DE−OS−3627832には、トレッドに溝に連結して形成された階段状の構造の摩耗に基づき、タイヤの摩耗度がモニタできるタイヤ構造が開示されている。マーキングの一例として、階段状構造の段差ごとに、例えば、無限数列の数字を表示する。しかし、段差ごとに表示される数字は溝深さそのものについては何も表示しない。例えば、段差3と段差4とがトレッド上に見えるとき、最も低い数字「4」に基づき、トレッドが4つの段差をともにすべて含むとみなすこともできるが、全体の摩耗度に関する情報を示しているのか、又、どの程度の溝深さが残っているかについては明確ではない。
【0006】
刊行物US−2706509には、ウェアインジケータが溝の側壁のいずれか一方に形成されるタイヤ構造が開示されている。インジケータは、段差の高さが夫々等しくトレッドから溝の底部方向に延びるような階段状に形成されている。このインジケータの残溝の深さは、無傷で残っている段差の数に段差の高さを乗じたものにトレッド上に出現した段差の残存分を加えたものに等しい。しかし、1階分の段差の高さや段差の数は階段の段差上には表示されない。タイヤが汚れたり、土によって溝が目詰まりして、階段上の段差を識別することが困難になることがある。例えば、この刊行物のFigure5で異なった段差に示される数字は、測定値ではなく、単に段差の参照用の数字に過ぎない。トレッドが線17まで延びるとき、9個の表面1から表面9の9個の段差が残る。消失した段差は1個ではないと仮定すると、各段差の高さは溝深さ全体の十分の一に等しいことになる。これ故、溝深さを十等分したもののうち9個はそのまま残り、さらに残り1個は表面が一部摩耗した状態で残ることになる。この結果、摩耗度はゼロと十分の一との間の値になる。
【0007】
刊行物EP−250113 A3には、異なる深さのキャピラリースリットから成り、円周方向の中央線の両側の各一方のトレッド同士で形成するグループに区分けするウェアインジケータが開示されている。このグループ内では、キャピラリースリットの長さは互いに等しい。インジケータの役割はタイヤの不均一な摩耗を示すことである。このため、タイヤのバランスが取れ、円周方向の中央線の両側で均一に摩耗が進むときには、インジケータの各グループで形成するトレッドパターン同士も対称的に変化するように、すなわち、中央線の両側にあり、互いに等しい長さのキャピラリースリットのうち最短のものがトレッドから同時に消失するようにしている。タイヤが不均一に摩耗すると、タイヤの両側のうち、より激しく摩耗する側のトレッドパターンが、反対側のトレッドパターンの変化前に変化し始める。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、溝深さを示すインジケータを備え、該インジケータに基づいてトレッドの溝深さを、知りたいときにいつでも容易に推定できるようなタイヤ構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、トレッドパターンピースと、円周方向のリブと、斜走溝に挟まれたトレッドピースとの何れか少なくとも1つと、トレッドパターンピース間やリブ間やトレッドピース間の溝とをタイヤトレッドに有し、トレッドパターンピースとリブとトレッドピースとの何れか少なくとも1つの路面接触面に、溝の溝深さを示す、細溝で形成されるインジケータを備え、該インジケータがトレッドからタイヤの中心方向に延伸されると共に、該インジケータのトレッド方向の断面形状が数字と文字と記号と図形との何れかの表示形状になっている乗物タイヤ用ウェアインジケータにおいて、各インジケータが、各インジケータの前記表示形状で表現される表示内容に相当する距離の深さまでトレッド内に延伸し、各インジケータのトレッド方向の断面形状がトレッド内に延伸する各インジケータの全長に亘って前記表示形状に形成され、摩耗が各インジケータの底の深さまで達したときに該各インジケータがトレッドから消失すると共に、トレッドに残った最大の溝深さを示すインジケータにより現在の溝の残存深さを読み取れるようにしている。
【0010】
本発明によれば、路面接触部分である、タイヤトレッドパターンピース又はリブの表面部分に、溝形状のインジケータを形成しタイヤの中心方向に延伸させる。溝のトレッド方向の断面には、該インジケータの底に接する、トレッド面の平行面までのトレッドの溝深さを表示する、数字、文字、図形又はこれに類するものが示されている。このため、溝の断面形状に表われる数字、文字、標識、図形又は溝の状態を示すこれらに類するものにより、溝の底に接する平面までの溝深さが表示される。
【0011】
本発明の好ましい態様によれば、インジケータは、少なくとも1つのインジケータグループを形成している。インジケータグループに属する各インジケータの深さは、特に最大の溝深さのインジケータの底から溝の底面までの深さが最小となるように、インジケータの深さが最小のものから最大のものまで所定の割合で増加している。表示されたインジケータグループの断面のダイヤグラムは、例えば、2、4、6、8、10又は2、4、8、12、16のような数値がインジケータ下方の溝深さとして示される。前者の例の場合、溝深さは等間隔で増加し、後者の例の場合、初めの2つの間隔は2でそれ以降は4の間隔で増加している。これらの場合、単位はミリメートルであることが望ましい。残溝の深さが最小許容限度に近い場合、より詳細な情報が表示されるにこしたことはないが、問題となっているタイヤの摩耗度が小さい場合には、同じ程度の確度で摩耗度を示すことは不要である。
【0012】
本発明の好ましい態様によれば、最大の溝深さのインジケータは最大でもトレッドの溝と同じ深さで良いが、残溝の深さがわずかであった場合に警告表示ができるように該インジケータの溝深さがトレッドの溝の深さより少なくとも1−2mm程度短いことが望ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様によれば、インジケータの細溝は、タイヤの成形段階において塊状ゴムが金型の空間全部を満たすように、トレッドに充分な間隔を確保して形成される。インジケータ同士は間隔を充分に取っており、その間隔は各インジケータの断面の寸法のうち最大のものにほぼ等しい。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、トレッドに2つ以上の同じ配列のインジケータグループを形成し、該インジケータグループは、タイヤの円周方向の中央線の両側に広がり、及び/又は、タイヤ全体の円周上にほぼ等間隔で配置される。従って、インジケータグループのうち1つは、どの車輪に該タイヤが取り付けられているか、検査を行う人員がどこに配置されるかにかかわらず、常に露出側に設置される。
【0015】
本発明の好ましい態様によれば、インジケータはアラビア数字、ローマ数字若しくは他の数字又はそれ以外の標識、記号、図形で示される。文字も標識として用いることができる。その結果、溝深さに関して文字で示される情報は、タイヤの状態を示す単語で表現できる。1つの単語を構成する複数の文字は、同じ溝深さで延伸される。タイヤの状態は、例えば、「VERY GOOD CONDITION」なる単語で示され、単語「VERY」に含まれる文字はトレッド内にどれもごく小さな深さで延伸し、単語「GOOD CONDITION」に含まれる文字は最深面方向に深く延伸し、例えば、最深面までの残溝の深さがわずか3mmしか残らないようにする。「VERY」に含まれる文字は比較的早い段階で消失してしまい、その結果タイヤには「GOOD CONDITION」と表示される。
【0016】
この状態のまま、タイヤを比較的長時間の走行に用いることができ、残溝の深さがわずか3mmになって初めて単語「GOOD CONDITION」が消失してしまう。
【0017】
本発明の他の態様によると、インジケータはW又はSの形状でもよい。W文字は、より深く延伸しているS文字に比べ早期に消失する。Sインジケータのみが表示されている場合、当初は(WとSとが表示され)冬季の使用に適していたタイヤが、夏季の条件のみに適したタイヤとなったことを示す。
【0018】
本発明の更に他の態様によれば、インジケータには、丸い顔と2つの点状の目と微笑みの口もととからなる、よく知られた「スマイルマーク」図形を用いても良い。インジケータは、「スマイルマーク」インジケータと「ソーリーマーク」インジケータとから成り、さらに「ノーマルマーク」インジケータを加えても良い。「スマイルマーク」インジケータが表面から消失したときに良好状態が終了するように、「スマイルマーク」のトレッドへの延伸は小さい。この場合、「ソーリーマーク」と「ノーマルマーク」とは表面に残ったままである。警告を示す「ソーリーマーク」のみが表示されている場合は、タイヤの交換時機である。
【0019】
本発明の別の態様によれば、1つ又はそれ以上のトレッドパターンピースの表面に連続した数字を表示したインジケータを設けている。この連続した数字は両端のものからから中央線のものに行くに従って増加し、より大きい溝深さを示す中央線上の数字が最初に表面から消失する数字となる。種々のトレッドパターンピースに、同一の数字からなる数字列又は同一でない数字からなる数字列を配置し、同一でない数字から成る数字列の場合は夫々違った速さで表面から消滅していく。このように連続した数字表示のインジケータが、タイヤの幅方向に隣り合ったトレッドパターンピースに配置されると、溝の摩耗の情報だけでなくこれから起こると予想される不均一な摩耗の情報についても推定することができる。個々の数字は、互いに離れた細溝により形成されることが望ましい。又、パターンピースを横切るようにして延伸する細溝を、数字列同士の間に設けることもできる。
【0020】
本発明の他の態様によれば、残溝の深さを示すインジケータは溝に形成され、該溝は溝に接する側壁間に形成されたピース面上にあり、該ピース面はトレッド面に平行な平面を成している。
【0021】
この態様は、特に冬季仕様タイヤに適しているもので、該タイヤのトレッドパターンには、路面に対するグリップ力を増加させるために多くの細溝が設けられている。冬季仕様タイヤのトレッドパターンピースに溝を多数形成すると、タイヤが不安定になる原因となり、さらに、これが原因でトレッドのトレッドパターンに問題が生じ易い。又、タイヤの金型の製造の難度が上がり成形も常に順調とはいかなくなる。トレッドパターンピース同士間の溝の上記ピース上にインジケータを形成すると、トレッドのトレッドパターンの形成に悪影響を与えることがない。ただし、溝ピース上に形成されたインジケータもタイヤが摩耗してくると上記インジケータと類似してくる。
【0022】
さらに他の態様では、溝に形成されたピースは溝に接した側壁の一方に連結しているが反対側の側壁からは離間していても良い。このようにすることにより、路面に対するグリップ力が向上する。
【0023】
又、別の態様によると、溝上のピースが階段状に形成され、これにより同様に路面に対するグリップ力が向上する。インジケータグループ内のインジケータは個々の段差上に形成される。
【0024】
本発明ではインジケータが摩耗を警告するために用いられるので、連続した数字列の何が、各細溝の最深面までの溝深さを示すか明確にすることが望まれる。軽度に摩耗したトレッドに、数字「5」が最大となる数字列が表れたとき、これは、5mm若しくは適当な長さ単位で5と、溝に残存する若干分の深さとの合計が残溝の深さであることを意味する。
【0025】
他の先行技術に開示された構造と比較したときの本発明の効果は、トレッド上のインジケータによって形成されたパターンを容易にチェックできること及び測定表示のための図形、単語、記号により常時摩耗面の状態を直接表示できることである。
【0026】
実際に、測定表示のための図形やそれに応じて法上許容範囲にあるものであれば、トレッドの残溝の深さを示すと理解できるものである限り、上記に示す単語はどのような言語、文字でも良い。
【0027】
本発明の溝形状のインジケータは夏季仕様タイヤにも冬季仕様タイヤにも使用することができる。夏季仕様タイヤではインジケータは一般的に円周方向のリブに配置され、冬季仕様タイヤではリブ及び/又はトレッドパターンピースの表面又はトレッドパターンピース同士の間の溝にインジケータが配置される。このようなインジケータは他の細溝同士の間又はこれらが結合したものの間に取り付けられると尚良い。インジケータが冬季仕様タイヤの溝の溝ピースに配置された場合、このインジケータ細溝が原因で、路面に対するグリップ力を増加させるための他の細溝をトレッドパターンに余分に設けなくてはならないといった不具合を生じることはない。冬季仕様タイヤのトレッドパターンピースにインジケータを設けると、路面に対するタイヤのグリップ力を高めて向上させる効果があるからである。
【0028】
本発明の成形技術を用いて他の種類のインジケータも提供される。インジケータに相当する金型をタイヤ成形セグメントに用いると、細溝形状のインジケータが該タイヤの完成品に形成される。この生産工程は簡易であり、この溝形状のインジケータの加工工程を導入してもタイヤの生産コストの上昇はわずかである。
【0029】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明のタイヤの種々の実施形態を以下に記述する。
【0030】
図1は、夏季仕様タイヤの一部分1を示した立体図である。トレッドパターンピース同士の間に円周方向に設けられた溝2を図の中央に示し、これと平行に2本の細溝3がトレッドパターンピース上に設けられている。該溝3に向かってタイヤの主溝たる弧状に湾曲した斜走溝4が設けられている。図中20は、溝2の両側に円周方向に設けられたリブを示し、図中21は斜走溝4同士の間のトレッドピースを示す。溝2は、法的に規制された溝深さの値を満たすことを求められる溝のうちの一つで、該溝2の溝深さHがモニタされる。図中のタイヤの一部分1は新品で摩耗が全くない状態である。溝2の底面には「GROOVE DEPTH INDICATOR MM」が読める。溝2に隣り合う平滑なトレッド部に、溝2に平行に並んだ複数のインジケータ5で形成される数字列「2345678」が示されている。「2」から「8」までのインジケータは断面形状が数字になるように、インジケータたる細溝5により形成される。図2は、数字列とその周辺部とを示す上面図である。図3は、該数字列を図2のIII-III線で截断して示した側面図であり、各インジケータ5ごとの溝深さが示されている。図3により、溝深さが最大の数字「2」で表される溝の底と、溝2の深さを示す線2pとの距離が2mmであることが示され、次に数字「3」で表される溝の底と線2pとの距離が3mmであること、さらに、数字「8」で表される溝の底と線2pとの距離が8mmであることが示される。
【0031】
トレッドが走行中に摩耗すると、最初に数字「8」で示される標識が消失し、溝2の残存深さ(残溝の深さ)がもはや8mmでない事を示すが、次の数字「7」が残っているときの残溝の深さは、「7」と「8」との中間に相当する領域に残存する溝深さを加えたもの、すなわち、7mmより大きいものとなる。例えば、短い方から3番目のインジケータ5までがトレッドから消失し、「5」及び「5」以下のインジケータが残っている場合、残溝の深さは5mmより大きく、すなわち、5mm以上6mm未満となる。最後のインジケータのみが残ったときは、残溝の深さが2mmを僅かに上回る程度であることが分かる。数字「2」で示されるインジケータがトレッドから消失したときは、残溝の深さがほぼ限界値となり、古くなったタイヤを交換する時機であることが分かる。図4は、図1のIV-IV線截断面を示したものであり、インジケータ「4」を構成する細溝5が表示されている。該溝の底と溝2の底との高低差は4mmである。この溝が消失したときは、トレッドの残溝の深さは4mmとなる。
【0032】
図5(a)は、図1乃至図4と同様の実施態様を示すが、これらとの相違点は、前記実施態様の場合、数字表示のインジケータ5がタイヤの軸方向を向くのに対して、本実施態様ではタイヤの円周方向を向くことである。トレッドの両端には、小三角形と「TREADWEAR INDICATOR」の頭文字TWI及び「DRIVING SAFETY」の頭文字DSIとが表示され、トレッドの摩耗を表示するインジケータの位置を見つけ易くしている。
【0033】
図5(b)は、金型を作成するためのインジケータの深さ形状を示す。数字「8」では、標識の深さが0.6mmでその下方の溝深さは8mmである。数字「7」は、これらが1.6mmと7mmとになる。また、数字「2」では、6.6mmと2mmとになる。インジケータを形成する金型は上記の寸法であることが求められる。このタイヤの溝深さは8.6mmである。インジケータの縦方向の長さは5.5mmであり、インジケータ同士の間隔は5mmである。本図から分かるように、数字表示用の細溝5は粗い字体で形成されており、間隔が過小になったり字体が過密になったりして塊状ゴムの注入が困難若しくは不可能にならないようにしている。例えば、数字「8」は、両側とも字体を粗くしている。
【0034】
数字「2」のみが残っているとき、残溝の深さは、数字「3」の溝深さと数字「2」の溝深さとの差分の1mmの一部と2mmとの合計になる。この時点でタイヤの交換に適切なタイミングが迫っていることになる。夏季仕様タイヤに関しては、国際的に効力のある規制により、最低1.6mmの溝深さが求められている。数字「2」がトレッドから消失した瞬間には、2mmの溝深さが残っており、タイヤ交換の限度までは0.4mmが残るのみである。
【0035】
図6は、リブ20の「very good condition」なる語が表示する情報を示す。図中の点線により「very」の溝深さがより小さく、「good condition」の溝深さがより大きく、夫々各溝深さが揃っていることを示す。
【0036】
タイヤトレッドの溝2の底部には、こすり取り不能に表示された「Message from tyre」の語が見える。この語は、例えば、溝の表面に刻印し、或いは、ゴム表面に型成形することができる。新品か若しくは摩耗の度合いがごく軽いタイヤでは、「very good condition」が表示され、これより摩耗が進んだタイヤには「good condition」と表示される。タイヤに表示がなくなったときは、タイヤ交換の時機が来たことを示す。
【0037】
図7(a)は、冬季仕様タイヤのトレッドパターンピース30の実施態様を示し、このトレッドパターンピースには、4種類の数字を各列の数字が同一になるように4列に並べて構成したインジケータ列35が形成されている。このような配列からトレッドの摩耗がトレッドの軸方向に不均一に進行することが容易に示される。
【0038】
図7(b)には、冬季仕様タイヤのトレッドパターンピース30の他の実施態様が示され、このトレッドパターンピースには間隔を保って配置された3個のインジケータ5とインジケータ列同士の間の細溝31とから成るインジケータ列35が形成されている。各インジケータ列は同一でない数字で構成され、これらの数字はトレッドパターンピースの中央線上で最大で、両端での値がそれよりも小さくなるように配置されている。インジケータ列のうち2列は互いに同一で、1列がこれらと異なる。
【0039】
図8には、冬季仕様タイヤのトレッドパターンピース30の他の実施態様が示され、このトレッドパターンピースのインジケータ列はS文字とW文字とから構成されている。W文字が表面から消失した後もS文字はまだ表示され、夏季での走行は可能であるが冬季での走行は不適切であることを示す。
【0040】
図9には、冬季仕様タイヤのトレッドパターンピース30の他の実施態様が示され、このトレッドパターンピースにはトレッドに「スマイルマーク」と「ソーリーマーク」とが示されている。トレッドから「スマイルマーク」が消失し始めるとタイヤの溝深さは許容限度に迫り、「ソーリーマーク」が表面から消失するときはタイヤが使用禁止になったことを示す。
【0041】
図10は、冬季仕様タイヤのトレッドパターンピース30の実施態様を示し、このトレッドパターンピースには、階段状の溝ピース40が、溝2の側壁間に円周方向に形成されており、この溝ピースは最上段のものでもトレッドより低くなっている。所望のインジケータとして表示される数字、文字又はそれに類するものは、トレッドパターンピースの溝の形状を考慮せずに、溝ピースに容易に形成することができる。すなわち、トレッドパターンピースに細溝が密集して形成するとタイヤを不安定にしてその走行性能を著しく悪化させるため、そのように形成することはないからである。
【0042】
図10の溝ピースは溝2の側壁の一方のみに連結され、反対側の側壁からは離間している。これによりタイヤのグリップ力が向上する。インジケータ「8」は最上段の溝ピースにあり、インジケータ「6」は2番目の高さに、インジケータ「4」は最下段にある。インジケータ「4」が消失すると残溝の深さは4mm未満になりタイヤ交換の時機が迫っていることになる。
【0043】
図11は上記実施態様を修正したものである。トレッドパターンピース同士の間の溝2に溝ピース50が平面的に形成されており、この溝ピースにインジケータ列が配置されている。このインジケータ列は「3」から「5」の数字を表示し、夫々異なった溝深さがあることを示す。このようなトレッドの製造用金型は比較的簡便で成形も比較的容易に行われるが、冬季には溝2が塞がれてしまい、トレッドの走行性能が同じように良好であるというわけにはいかない。
【0044】
上記から明らかなように、本発明は複数の修正が可能である。上記のものに加え、特許請求の範囲に示した種々のウェアインジケータも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインジケータを備えた夏季仕様タイヤの一部分の概略の立体図。
【図2】図1のタイヤの上面図。
【図3】図2のIII-III線截断側面図。
【図4】図1のIV-IV線截断側面図。
【図5】(a)他の実施形態の上面図。
(b)インジケータにより形成される数字列と、該数字により示される溝深さと、該数字の高さ方向の長さと、金型生産時に用いる該数字同士の間隔の長さとのダイヤグラムの上面図。
【図6】文字情報を有する夏季仕様タイヤの一部分の概略の立体図。
【図7】(a)トレッドに数字表示のインジケータを備え、各インジケータ列が同じ数字で構成される、冬季仕様タイヤのトレッドパターンピースの立体図。
(b)トレッドに数字表示のインジケータを備え、該インジケータがトレッドパターンピースの細溝同士の間に形成される、冬季仕様タイヤのトレッドパターンピースの立体図。
【図8】冬季仕様タイヤのトレッドパターンピースで、該トレッドは数字によるインジケータを備え、該数字はW及びSが列状に配列されたものの立体図。
【図9】冬季仕様タイヤの2種のトレッドパターンピースで、該トレッドが「スマイルマーク」と「ソーリーマーク」とを備えるものの立体図。
【図10】冬季仕様タイヤのトレッドパターンピースと、該パターンピース同士の間の溝で、該溝の側壁間にインジケータ用の階段状の溝ピースが形成されているものとの立体図。
【図11】冬季仕様タイヤの2種のトレッドパターンピースと、該パターンピース同士の間の溝で、該溝の側壁間にインジケータ用の溝ピースが平面的に形成されているものとの立体図。
【符号の説明】
1 タイヤの一部分
2 溝 20 リブ 21 トレッドピース
30 トレッドパターンピース 31 細溝 35 インジケータ列
4 斜走溝 40 溝ピース
5 インジケータ 50 溝ピース
Claims (19)
- トレッドパターンピース(30)と、円周方向のリブ(20)と、斜走溝(4)に挟まれたトレッドピース(21)との何れか少なくとも1つと、トレッドパターンピース間やリブ間やトレッドピース間の溝(2)とをタイヤトレッドに有し、トレッドパターンピース(30)とリブ(20)とトレッドピース(21)との何れか少なくとも1つの路面接触面に、溝(2)の溝深さ(H)を示す、細溝で形成されるインジケータ(5)を備え、該インジケータがトレッドからタイヤの中心方向に延伸されると共に、該インジケータのトレッド方向の断面形状が数字と文字と記号と図形との何れかの表示形状になっている乗物タイヤ用ウェアインジケータにおいて、
各インジケータが、各インジケータの前記表示形状で表現される表示内容に相当する距離の深さまでトレッド内に延伸し、各インジケータのトレッド方向の断面形状がトレッド内に延伸する各インジケータの全長に亘って前記表示形状に形成され、摩耗が各インジケータの底の深さまで達したときに該各インジケータがトレッドから消失すると共に、トレッドに残った最大の溝深さを示すインジケータにより現在の溝(2)の残存深さを読み取れるようにしたことを特徴とする乗物タイヤ用ウェアインジケータ。 - 前記インジケータ(5)は、複数のインジケータから成る少なくとも1つのグループを形成し、該グループに属する各インジケータの深さは、該深さが最小のインジケータから該深さが最大のインジケータまで所定の間隔で増加することを特徴とする請求項1に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 前記グループに属する各インジケータ(5)の深さは、該深さが最小のインジケータから該深さが最大のインジケータまで均一に増加することを特徴とする請求項2に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 前記グループに属する各インジケータ(5)の深さは、より大きな深さのインジケータで増加の度合いが小さくなると共に、より小さな深さのインジケータで増加の度合いが大きくなるように、該深さが最小のインジケータから該深さが最大のインジケータまで不均一に増加することを特徴とする請求項2に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 前記深さが最大のインジケータ(5)は、溝(2)の残存深さが僅かであることを警告するように、最大でも溝(2)と同じ程度の溝深さであり、溝(2)よりも少なくとも1乃至2mm小さい溝深さであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- タイヤの成形を確実に行うため、前記インジケータ(5)同士のトレッド内での間隔はトレッド上の各該インジケータの寸法の最大値にほぼ等しいことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 前記トレッドに、円周上の中央線の両側及び/又はタイヤの円周上にほぼ等間隔に配置された、前記インジケータ(5)から成る互いに同一な2つ以上のグループを備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 溝深さを示す前記インジケータ(5)は、アラビア数字、ローマ数字、若しくは他のいかなる数字、又は、他の標識、記号、図形であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 前記標識や記号は文字であると共に、前記各インジケータグループ(5)は、少なくとも2つのインジケータチェーンで構成され、各インジケータチェーンは夫々同一の深さで並んだ、一単語を構成する複数の文字で形成されることを特徴とする請求項8に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- Wインジケータは冬季走行に適切なより大きな溝深さを示すと共に、Sインジケータは夏季走行に適切なより小さな溝深さを示すように、標識としてWとSとの形状のインジケータを用いることを特徴とする請求項9に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 溝深さ(H)を示す前記インジケータ(5)に、図形グループを用い、最大の溝深さ示す図形には「スマイルマーク」のような良好状態を表すものを、摩耗が進行したタイヤを示す図形には「ノーマルマーク」のような注意状態を表すものを、ほぼ完全に摩耗したタイヤを示す図形には「ソーリーマーク」のような警告状態を表すものを用いることを特徴とする請求項1に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 1つ以上のトレッドパターンピース(30)に、一連の数字列を示すインジケータを備え、最大の溝深さのインジケータが最初にトレッドから消失し、該一連の数字列はトレッドパターンピースの両端から中央線に向かうに従って増加することを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 前記一連の数字列は同一の、又は相違するものであることを特徴とする請求項12に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- トレッドパターンピース(30)と円周方向のリブ(20)と斜走溝間のトレッドピース(21)との何れか少なくとも1つと、トレッドパターンピースやリブやとトレッドピースを分割する溝(2、4)と、グリップ力を向上するためのトレッドパターンピースのリブ又はトレッドピースの表面の細溝(31)とをタイヤトレッドに有し、溝(2)に溝ピース(40)を形成し、該溝ピースの表面はトレッドと平行な平面を成すと共にトレッドより低い位置に形成され、該表面にインジケータ(5)が溝(2)の溝深さ(H)を示すように形成され、該インジケータはトレッドからタイヤの中心に向かって延伸する細溝で形成され、該インジケータ(5)のトレッド方向の断面形状が数字と文字と記号と図形との何れかの表示形状である乗物タイヤ(1)用ウェアインジケータにおいて、
各インジケータが、各インジケータの前記表示形状で表現される表示内容に相当する距離の深さまでトレッド内に延伸し、各インジケータのトレッド方向の断面形状がトレッド内に延伸する各インジケータの全長に亘って前記表示形状に形成され、摩耗が各インジケータの底の深さまで達したときに該各インジケータがトレッドから消失すると共に、トレッドに残った最大の溝深さを示すインジケータにより現在の溝(2)の残存深さを読み取れるようにし、前記溝ピース(40)は、溝(2)に接するタイヤ部分の一方に連結すると共に、溝(2)に接する反対側のタイヤ部分から離間したことを特徴とする乗物タイヤ用ウェアインジケータ。 - 前記インジケータ(5)は、複数のインジケータから成る少なくとも1つのグループを形成し、該グループに属する各インジケータの深さは、該深さが最小のインジケータから該深さが最大のインジケータまで所定の間隔で増加することを特徴とする請求項14に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 前記深さが最大のインジケータは、溝(2)の残存深さが僅かであることを警告するように、最大でも溝(2)と同じ程度の溝深さであり、溝(2)よりも少なくとも1乃至2mm小さい溝深さであることを特徴とする請求項14又は15に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 前記溝(20)に接する両側壁の間に形成された前記ピース(40)は、インジケータ(5)が1つずつ各段差上に配置されるように階段状に形成され、最上段に最大の溝深さ(H)を示すインジケータを配置すると共に最下段に最小の溝深さを示すインジケータを配置することを特徴とする請求項14乃至16の何れか1項に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 溝深さを示す前記インジケータ(5)は、アラビア数字、ローマ数字、若しくは他のいかなる数字、又は、他の標識であることを特徴とする請求項14乃至17の何れか1項に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
- 前記文字は、標識として用いられると共に、前記各インジケータグループは、少なくとも2つのインジケータチェーンで構成され、各インジケータチェーンは夫々同一の深さで並んだ、一単語を構成する複数の文字で形成されることを特徴とする請求項18に記載の乗物タイヤ用ウェアインジケータ。
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