JP3864522B2 - 自動車の車体構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ワンボックス車やトラックのように、キャビンより前のクラッシャブルゾーンが小さい四輪自動車の車体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車に外力が加わったときに、車体が部分的に変形することによって運動エネルギーを吸収し、乗員の負担を緩和する部分として自動車の前部にクラッシャブルゾーンを設けている。
図12に示す自動車51は、エンジン52が乗員室53よりも前にあり、バンパー51a、エンジン52及びエンジンルーム54等の構成部品でクラッシャブルゾーン55を形成している。このような自動車51は、前方から外力が加わったときに、エンジンルーム54等のクラッシャブルゾーンを緩衝材とし、それらが塑性変形することにより運動エネルギーを吸収し、乗員室53の変形を及びにくくしている。
図13に示すワンボックス車56は、エンジン57が乗員室58のフロントシート59の下部にあるため、車体の前部に配設したフロントバンパー56aや車両の構成部品で、クラッシャブルゾーン60を形成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように、エンジンがフロントシートの下部にあるワンボックス車は、フロントバンパーから乗員室までの距離が短く、クラッシャブルゾーンの長さが大きく取れず、また、エンジンが乗員室の前部に設けてある自動車のようにエンジンルームをクラッシャブルゾーンに配置できないため、外力による運動エネルギーの吸収量が少ない。
さらに、この吸収量の不足分は、乗員室を変形することによって充当させる。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ワンボックス車のように、エンジンがフロントシートの下部、またはその後部にある車両のクラッシャブルゾーンの運動エネルギーの吸収量を大きくし、なおかつ、その運動エネルギーを吸収させる部位をコントロールする自動車の車体構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、車体の前後方向に延在する一対のメインフレームを備え、前記メインフレームは、前端部からフロントシートの下部にわたりほぼ水平方向に延びるフロントフレーム部と、前記フロントフレーム部よりも一段高くかつほぼ水平方向に延びるリヤフレーム部と、それらの間にあって車体の後方側を高くする勾配を形成したセンタフレーム部とを含み、エンジンがフロントシートの下部またはそれよりも車体の後部にある形式の自動車であって、車体の前部に車体の塑性変形によって運動エネルギーを吸収する前部クラッシャブルゾーンを設けた自動車の車体構造において、
前記リヤフレーム部のフロントシートより後方の下面側の部位に、該部位をその前後の部位よりも塑性変形させやすくした中央クラッシャブルゾーンを設ける一方、前記フロントフレーム部の内部には補強ビームを設け、前記センタフレーム部の断面を、前記フロントフレーム部および前記リヤフレーム部の断面よりも大きくするとともに、前記フロントフレーム部の後端部には前記センタフレーム部の内部に挿入された延長部を設け、該延長部を介してフロントフレーム部とセンタフレーム部とが接合されており、
前記リヤフレーム上面の前端部近くには拡大部を設け、該拡大部を含む前記リヤフレーム部の上面にリヤフロアパネルが配設され、前記センタフレーム部から前記フロントフレーム部にかけての上面にはフロントフロアパネルが配設され、前記リヤフロアパネルの前端部に形成された立上がり面と、前記フロントフロアパネルとの接合部には、補強板が設けられているものとした。また、上記構成において、前記エンジンマウントの取付部を中央クラッシャブルゾーンの後部に設けた。さらに、上記前部クラッシャブルゾーンと中央クラッシャブルゾーン間に、上記一対のメインフレームの間隔を車体の後方側に広くする傾斜部を設け、該傾斜部に対応するメインフレームの部位の剛性を大きくするとともに、前記フロントフレーム部の後端部と前記リヤフレーム部の前記中央クラッシャブルゾーンの後部におけるそれぞれのフレーム間に、前記傾斜部を補強するクロスメンバを配設した。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による自動車の車体構造について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る自動車の車体構造を採用している自動車1を示す。自動車1の車体2の下部には、その前後方向に延在する左右一対のメインフレーム3を設けている。メインフレーム3は、前端部からフロントシート4の下部にわたって、ほぼ水平方向に延びるフロントフレーム部6を設け、後部にフロントフレーム部6よりも一段高く、かつほぼ水平方向に車体の後輪5の後ろまで延びるリヤフレーム部8を設けている。そして、それらのフレーム部6,8の間に車体の後方側を高くする勾配を形成させたセンターフレーム部7を設けている。
【0007】
左右のメインフレーム3の間隔は、図3に示すように、フロントフレーム部6とリヤフレーム部8がほぼ平行であり、センタフレーム部7にメインフレーム3の間隔を車体の後方側に広くする傾斜を設けている。
図2に示すように、メインフレーム3は、上記勾配部であるセンタフレーム部7の断面dを、フロントフレーム部6、リヤフレーム部8の断面e,fよりも大きくすることで、センターフレーム部7に剛性をもたせている。そして、メインフレーム3の傾斜(間隔)が変化するフロントフレーム部6の後端部及びリヤフレーム部8の前端部(曲がり点)に、車体の幅方向に延びるクロスメンバ9,10を固着させている。
図4は、フロントフレーム部6の断面図である。図に示すように、フロントフレーム部6はコ字形フレーム6aと、その両端部に設けたフランジにフレームカバー6bが固定され、その内部には車体の前後方向に延在する補強ビーム11が固定されている。
【0008】
フロントフレーム部6の先端部は図5に示すように、フレームカバー6cが開口を閉塞し、これに設けたフランジ部6dがコ字形フレーム6aの内壁に固着されている。フランジ部6dのフランジ幅は溶接に必要な部分の幅は大きく、他の部分は小さく形成されている。
図6に示すように、フロントフレーム部6の後端部はセンタフレーム部7と接合され、通常の車両のフロントフレーム部の後端部と異なり、長さLだけセンタフレーム部7の内部に挿入させた延長部6eを設け、それらの接合部を大きくしている。
【0009】
図7に示すように、リヤフレーム部8の前側には、その側部を車体の内方側に凹ませたビード8aを設けている。ビード8aの後部には、左右のメインフレーム3にわたってクロスメンバ14が固定され、エンジン部12の後部がリヤ側エンジンマウント15を介在して、リヤフレーム部8に取付けられている。エンジン部12の前部は、フロント側エンジンマウント16を介在して、フロントフレーム部6に取付けられている。なお、マウントブラケットのマウント方式は、フロント側エンジンマウント16が主に上下方向、リヤ側エンジンマウント15は上下が前後方向の荷重を受けるようにする。
【0010】
図8は、メインフレーム3の上にフロントフロアパネル17とリヤフロアパネル18が配設されている状態を示す。フロントフロアパネル17は、メインフレーム3のセンタフレーム部7の上面に沿ってフロントフレーム部6側に配設され、リヤフロアパネル18は、その前端部に上方への立上がり面18aが形成され、センターフレーム部7のほぼ後端部からリヤフレーム部8に沿って、水平方向にかつ後方側に延在させている。センタフレーム部7の面上に対応するフロントフロアパネル17の部位と、リヤフロアパネル18の立上がり面18aの合わせ目には、補強板19が溶接で固定されている。なお、20はフロントシート4の下部に配設されたエンジン部12等の点検用開口である。
【0011】
図9に示すように、リヤフレーム部8の上部に設けているフランジの幅を大きくした拡大部8bにおいて、チドリ足状にリヤフロアパネル18をスポット溶接し、リヤフレーム部8とリヤフロアパネル18の接合を強化している。
図10に示すように、車体2の各フロントピラー2aの前側には、ステアリングホイール21部の変形を防止するためのリンフォースメント22を設け、キャビンの変形を小さくしている。
【0012】
次に、本発明の実施の形態による自動車の車体構造の作用について説明する。本発明は、車体のフロント座席より後部に、塑性変形により運動エネルギーを吸収する中央クラッシャブルゾーンを設けている。このクラッシャブルゾーンは種々の形態が考えられるが、本実施の形態ではメインフレーム3のリヤフレーム部8にビード8aを設け、該ビード8aを配設することにより、外力が加わったときにその部分を塑性変形させやすくしている。また、ビード8a部をより塑性変形させやすくするため、フロントフレーム部6とリヤフレーム部8を湾曲させないで、直線形状にしている。
【0013】
一方、ビード8a部以外の部位の変形を抑えるため、側面視において勾配、かつ平面視において傾斜しているセンターフレーム部7の断面を大きくして強度を持たせるとともに、メインフレーム3(図3参照)の平面視において傾斜している曲がり点にクロスメンバ9,10を設けている。また、フロントフレーム部6とセンターフレーム部7との接合は、フロントフレーム部6に延長部6eを設け、それらの接合強度を大きくしている。したがって、ビード8a部で塑性変形できるようにコントロールすることができる。
また、本実施の形態では、ビード8aの後部にエンジン部12の取付部を設けているので、減速時におけるエンジン部12の重量がビード8aにかかりやすく、その部位の塑性変形をよりさせやすくしている。
【0014】
こうして、車体の前方向から外力を受けた場合、従来技術で説明した前部クラッシャブルゾーン部の塑性変形とともに、ビード8aを設けている部位が塑性変形することにより、外力による運動エネルギーが吸収される。
一方、メインフレーム3の変形により起因する乗員室の変形は、それを生じさせないように、フロントフレーム部6に補強ビーム11を設けている。そして、フロントフロアパネル17及びリヤフロアパネル18の接合部には補強板19を設け、リヤフレーム部8には拡大部8bを設け、リヤフロアパネル18との溶接を強化してキャビンの変形を抑制している。乗員室の前部は、フロントフレーム部6に補強ビーム11を追加することにより、変形を抑えている。
図11は、本実施の形態における自動車1に前方からの外力が加わったときの減速度の変化を表しており、車体の減速度を縦軸に、時間を横軸に表している。線図における実線cの曲線に示すように、本実施の形態では緩やかな減速度で外部からの運動エネルギーを吸収することができる。
【0015】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく本発明の技術的思想に基いて種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、中央クラッシャブルゾーンにビード8aを設け、そのメインフレームの前後の部位よりも塑性変形させやすくしたが、塑性変形をさせる方法は、その部位のメインフレームの板厚を多少薄くするなど、他の方法であってもよい。
【0016】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、前部クラッシャブルゾーンの他に、車体の前後方向に延在する一対のメインフレームの、フロントシートより後部の任意の部位に、該部位をその前後の部位よりも塑性変形させやすくした中央クラッシャブルゾーンを設け、前記メインフレームは、前端部からフロントシートの下部にわたりほぼ水平方向に延びるフロントフレーム部と、前記フロントフレーム部よりも一段高くかつほぼ水平方向に延びるリヤフレーム部と、それらの間にあって車体の後方側を高くする勾配を形成したセンタフレーム部とを備え、かつ、前記センタフレーム部の断面を前記フロントフレーム部および前記リヤフレーム部の断面よりも大きくするとともに、前記フロントフレーム部の後端部には前記センタフレーム部の内部に挿入された延長部を設け、該延長部を介してフロントフレーム部とセンタフレーム部とが接合されているので、自動車に外部からの力が加わったときに、中央クラッシャブルゾーンが変形することにより、その外力による運動エネルギーを吸収することができる。特に、上記勾配を形成すると共に断面を大きくしたセンタフレーム部の構成、および延長部により二重構造とした前記接合部分の構成により、メインフレームの当該部位の剛性が向上し、その後方の中央クラッシャブルゾーンが塑性変形するようコントロールできる。
上記エンジンマウントの取付部を上記中央クラッシャブルゾーンの後部に設けることにより、中央クラッシャブルゾーンの変形がしやすくなる。
また、前部クラッシャブルゾーンと中央クラッシャブルゾーン間に、上記一対のメインフレームの間隔を後方側に広くする傾斜部を設け、該傾斜部の剛性を大きくするとともに、該傾斜部を補強するクロスメンバを車体の横方向に配設したことにより、さらに中央クラッシャブルゾーンの変形が生じやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による自動車の車体構造のメインフレームの全体を示す概略側面図である。
【図2】図1のメインフレームの前側を示す概略側面図である。
【図3】本発明の実施の形態による自動車の車体構造のメインフレームとクロスメンバの全体を示す概略平面図である。
【図4】図3におけるX−X線方向の断面図である。
【図5】図1のメインフレーム先端部の拡大斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態による自動車の車体構造のフロントフレーム部とセンターフレーム部の接合部の概略側面図である。
【図7】本発明の実施の形態による自動車の車体構造のメインフレームとエンジン部の取付状態を示す概略側面図である。
【図8】本発明の実施の形態による自動車の車体構造のフロントフロアパネルとリヤフロアパネルの接合部の斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態による自動車の車体構造のメインフレームとリヤフロアパネルの接合状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態による自動車の車体構造の自動車のフロントピラー部を示す概略側面図である。
【図11】本発明の実施の形態による自動車の車体構造を採用した自動車の経過時間に対応した車体の減速度を示す線図である。
【図12】従来におけるエンジンが乗員室の前にある自動車のクラッシャブルゾーンを示す側面図である。
【図13】従来におけるエンジンが乗員室のフロントシートの下部にある自動車のクラッシャブルゾーンを示す側面図である。
【符号の説明】
1 自動車
2 車体
3 メインフレーム
4 フロントシート
5 後輪
6 フロントフレーム部
7 センタフレーム部
8 リアフレーム部
9,10,14 クロスメンバ
11 補強ビーム
12 エンジン部
17 フロントフロアパネル
19 補強板
Claims (3)
- 車体の前後方向に延在する一対のメインフレームを備え、前記メインフレームは、前端部からフロントシートの下部にわたりほぼ水平方向に延びるフロントフレーム部と、前記フロントフレーム部よりも一段高くかつほぼ水平方向に延びるリヤフレーム部と、それらの間にあって車体の後方側を高くする勾配を形成したセンタフレーム部とを含み、エンジンがフロントシートの下部またはそれよりも車体の後部にある形式の自動車であって、車体の前部に車体の塑性変形によって運動エネルギーを吸収する前部クラッシャブルゾーンを設けた自動車の車体構造において、
前記リヤフレーム部のフロントシートより後方の下面側の部位に、該部位をその前後の部位よりも塑性変形させやすくした中央クラッシャブルゾーンを設ける一方、前記フロントフレーム部の内部には補強ビームを設け、
前記センタフレーム部の断面を、前記フロントフレーム部および前記リヤフレーム部の断面よりも大きくするとともに、前記フロントフレーム部の後端部には前記センタフレーム部の内部に挿入された延長部を設け、該延長部を介してフロントフレーム部とセンタフレーム部とが接合されており、
前記リヤフレーム上面には拡大部を設け、該拡大部を含む前記リヤフレーム部の上面にリヤフロアパネルが配設され、前記センタフレーム部から前記フロントフレーム部にかけての上面にはフロントフロアパネルが配設され、前記リヤフロアパネルの前端部に形成された立上がり面と、前記フロントフロアパネルとの接合部には、補強板が設けられていることを特徴とする自動車の車体構造。 - エンジンマウントの取付部を中央クラッシャブルゾーンの後部に設けてなる請求項1に記載の自動車の車体構造。
- 上記前部クラッシャブルゾーンと中央クラッシャブルゾーン間に、上記一対のメインフレームの間隔を車体の後方側に広くする傾斜部を設け、該傾斜部に対応するメインフレームの部位の剛性を大きくするとともに、前記フロントフレーム部の後端部と前記リヤフレーム部の前記中央クラッシャブルゾーンの後部におけるそれぞれのフレーム間に、前記傾斜部を補強するクロスメンバを配設してなる請求項1または2に記載の自動車の車体構造。
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