JP3862538B2 - 新規なポリエステル重合体とその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリエステル重合体及びその製造法に関し、さらに詳細には、耐熱性、低吸水性を有し、光学的異方性が小さく、成形性に優れたポリエステル重合体及びその製造法に関する。このポリエステル重合体は、光学材料、電子情報材料、医療器具材料などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、光学材料、電子情報材料、医療器具材料などにプラスチックを用いる研究や開発が精力的に行われている。光学材料や電子情報材料においては、透明性、低吸水性及び耐熱性のほか、光学的異方性の小さいことが要求される。また、医療器具材料では、血液適合性、機械的強度、耐加水分解性等が要求される。
【0003】
光学材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、非晶性ポリオレフィンなどが使用されている。しかし、ポリメチルメタクリレートは透明性に優れ光学異方性が小さいものの、吸湿性が高いため、反り等の変形を起こしやすく、また耐熱性も十分とは言えない。ポリカーボネートは耐熱性に優れるものの、光学的異方性が大きい。また、非晶性ポリオレフィンは光学的異方性が小さく、耐熱性にも優れるが、成形性、接着性などに問題がある。
【0004】
一方、ポリエステルを光学材料や電子情報材料として応用する試みもなされている。例えば、特開平1−138225号公報には、側鎖に芳香環を有するジオール又はジカルボン酸を用いたポリエステル樹脂が開示されている。特開平2−38428号公報には、ジカルボン酸成分としてジフェニルジカルボン酸を用いたポリエステル共重合体が開示されている。また、特開平11−35665号公報には、2,2−ノルボルナンジメタノール誘導体とテレフタル酸などとからなるポリエステルが開示されている。しかし、これらの樹脂は耐熱性、低吸水性、光学的特性の点で必ずしも十分であるとは言えない。
【0005】
また、アダマンタン骨格を有するポリエステルも知られている。例えば、特公昭46−34628号公報には、アダマンタンジオールを含むジオール成分と不飽和カルボン酸の無水物を含むジカルボン酸無水物成分とを反応させる線状ポリエステルの製法が開示されている。しかし、この方法により得られる樹脂は硬化させることによって加水分解安定性と溶媒安定性とを付与できるものの、耐熱性や透明性が不十分である。特開昭50−21090号公報には、ジヒドロキシアダマンタン類と芳香族ジカルボン酸類などとを縮重合させてポリエステル重合体を得る方法が開示されている。しかし、前記ポリエステル重合体は成形性に優れるものの、低吸水性、光学的特性の点で必ずしも十分とは言えない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐熱性、低吸水性、光学的特性に優れ、しかも成形性に優れた新規なポリエステル重合体及びその製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリエステル樹脂が、耐熱性、低吸水性、光学的特性及び成形性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(i)ジオール成分と(ii)ジカルボン酸成分との縮合により得られるポリエステル重合体であって、ジオール成分(i)が脂環式ジオール類であり、且つジカルボン酸成分( ii )が脂環式ジカルボン酸類であるとともに、前記脂環式ジオール類が下記式(1)
【化17】
(式中、nは0又は正の整数である。環を構成する炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を全脂環式ジオール類中10〜100モル%の割合で含む脂環式ジオール類であるか、又は前記脂環式ジカルボン酸類が下記式(2)
【化18】
(式中、mは0又は正の整数である。環を構成する炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を全脂環式ジカルボン酸類中10〜100モル%の割合で含む脂環式ジカルボン酸類であるポリエステル重合体を提供する。
【0009】
前記ポリエステル重合体には、ジオール成分(i)が脂環式ジオール類であり、且つジカルボン酸成分( ii )が脂環式ジカルボン酸類であるとともに、前記脂環式ジオール類が前記式(1)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を含む脂環式ジオール類であり、且つ前記脂環式ジカルボン酸類が前記式(2)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を含む脂環式ジカルボン酸類であるポリエステル重合体も含まれる。
【0010】
本発明は、また、ジオール成分(i)と、ジカルボン酸成分(ii)又はその反応性誘導体とを重縮合させてポリエステル重合体を製造する方法であって、ジオール成分(i)として脂環式ジオール類を用い、且つジカルボン酸成分( ii )として脂環式ジカルボン酸類を用いるとともに、前記脂環式ジオール類として前記式(1)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を全脂環式ジオール類中10〜100モル%の割合で含む脂環式ジオール類を用いるか、又は前記脂環式ジカルボン酸類として前記式(2)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を全脂環式ジカルボン酸類中10〜100モル%の割合で含む脂環式ジカルボン酸類を用いることを特徴とするポリエステル重合体の製造法を提供する。
【0011】
この製造方法の一つの態様では、脂環式ジオール類として、前記式(1)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を含む脂環式ジオール類を用い、且つ脂環式ジカルボン酸類として前記式(2)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を含む脂環式ジカルボン酸類を用いることができる。
【0012】
前記脂環式ジオール類として下記式(1a)
【化19】
(式中、環を構成する炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を含む脂環式ジオール類を、前記脂環式ジカルボン酸類として下記式(2a)
【化20】
(式中、環を構成する炭素原子は置換基を有していてもよい)
で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を含む脂環式ジカルボン酸類を使用できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
[(i)ジオール成分]
本発明のポリエステル重合体を構成するジオール成分(i)として、前記式(1)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類(アダマンタンジオール類)を含むジオール成分を用いることができる。
【0014】
前記式(1)において、nは0又は正の整数である。nとしては、例えば、10以下の正の整数又は0、好ましくは5以下の正の整数又は0である。特にnは0又は1が最適である。
【0015】
なお、アダマンタン骨格に結合している官能基は、ヒドロキシアルキル基又はヒドロキシル基である。該官能基は、アダマンタン骨格の橋頭位に結合していることが好ましい。
【0016】
前記式(1)において、環を構成する炭素原子(橋頭位又は非橋頭位の炭素原子、特に橋頭位の炭素原子)が有していてもよい置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル基などのアルキル基(例えば、C1-10アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基);シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル、ナフチル基などのアリール基;メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ基などのアルコキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基);メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基(例えば、C1-4アルコキシ−カルボニル基);アセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイル基などのアシル基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;ニトロ基;置換又は無置換アミノ基;ハロゲン原子;オキソ基などが挙げられる。
【0017】
前記式(1)で表されるアダマンタンジオール類のなかでも、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール(1,3−アダマンタンジオール)、5,7−ジメチル−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール(1,3−ジヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタン)などの前記式(1a)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類(置換基を有していてもよい1,3−アダマンタンジオール類)が好ましく、特に、5,7−ジメチル−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオールが最適である。
【0018】
前記式(1)で表されるアダマンタンジオール類において、nが正の整数であるアダマンタンジオール類としては、例えば、1,3−アダマンタンジメタノール(1,3−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン)、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジメタノール(1,3−ジメチル−5,7−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン)などが挙げられる。
【0019】
式(1)で表されるアダマンタンジオール類は、例えば、アダマンタン環の橋頭位に2つのヒドロキシル基を有するアダマンタンジオール類の場合、対応するアダマンタン類(少なくとも2つの橋頭位の炭素原子に水素原子が結合しているアダマンタン化合物)を酸化してアダマンタン環の橋頭位に2つのヒドロキシル基を導入することにより製造できる。
【0020】
また、例えば、前記式(1)において、nが1であるアダマンタンジオール類(1,3−アダマンタンジメタノールなど)の場合、対応するアダマンタン類(少なくとも2つの橋頭位の炭素原子にカルボキシル基が結合しているアダマンタン化合物)を還元して、該アダマンタン環に導入されたカルボキシル基をヒドロキシル基に還元することにより製造できる。なお、この少なくとも2つの橋頭位の炭素原子にカルボキシル基が結合しているアダマンタン化合物は、対応するアダマンタン類(少なくとも2つの橋頭位の炭素原子に水素原子が結合しているアダマンタン化合物)をカルボキシル化することにより、アダマンタン環の橋頭位に2つのカルボキシル基を導入して得ることができる。
【0021】
アダマンタン類の酸化によりアダマンタンジオール類を調製する酸化方法としては公知乃至慣用の酸化方法を使用できるが、反応収率及び操作性などの点から、N−ヒドロキシイミド系化合物を触媒として分子状酸素により酸化する方法が好ましい(特開平9−327626号公報参照)。
【0022】
より具体的には、前記アダマンタン類をN−ヒドロキシフタルイミド等のN−ヒドロキシイミド系触媒と、必要に応じてコバルト化合物(例えば、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトナト等)などの金属系助触媒の存在下、酸素と接触させることにより、アダマンタン環の橋頭位に2つのヒドロキシル基を導入できる。この方法において、N−ヒドロキシイミド系触媒の使用量は、アダマンタン類1モルに対して、例えば0.000001〜1モル、好ましくは0.00001〜0.5モル程度である。また、金属系助触媒の使用量は、アダマンタン類1モルに対して、例えば0.0001〜0.7モル、好ましくは0.001〜0.5モル程度である。酸素としては、純粋な酸素を用いてもよく、また不活性ガスで希釈した酸素や空気を用いてもよい。酸素はアダマンタン類に対して過剰量用いる場合が多い。反応は、例えば、酢酸などの有機酸、アセトニトリルなどのニトリル類、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などの溶媒中、常圧又は加圧下、0〜200℃程度、好ましくは30〜150℃程度の温度で行うことができる。生成したアダマンタンジオール類は、濃縮、濾過、抽出、晶析、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の慣用の分離精製手段を用いて分離精製できる。
【0023】
本発明では、式(1)で表されるアダマンタンジオール類から1種の化合物のみを選択して使用してもよく、複数の化合物を併用してもよい。また、本発明のポリエステル重合体を構成するジオール成分(i)として、前記式(1)で表されるアダマンタンジオール類とともに、又は式(1)で表されるアダマンタンジオール類の代わりに、他の脂環式ジオール類を使用することができる。このような脂環式ジオール類としては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジオール、1,1´−ビシクロヘキシル−4,4´−ジオール、4,4´−イソプロピリデンシクロヘキサノール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジオール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジオール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジオール、ビシクロ[4.4.0]デカン−1,6−ジオール、ビシクロ[4.4.0]デカン−2,7−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,2−ジメタノール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジメタノール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジメタノール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジメタノールなどが挙げられる。これらの中でも、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが好ましい。上記ジオール成分は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0024】
本発明のポリエステル重合体を構成する全ジオール成分中の前記式(1)で表されるアダマンタンジオール類の割合は任意に変えることができるが、通常1〜100モル%、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%程度である。ジカルボン酸成分(ii)として式(2)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を含むジカルボン酸成分を用いる場合には、ジオール成分(i)中に式(1)で表されるダマンタンジオール類は含まれていなくてもよい。
【0025】
[(ii)ジカルボン酸成分]
また、本発明のポリエステル重合体を構成するジカルボン酸成分(ii)として、前記式(2)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類(アダマンタンジカルボン酸類)を含むジカルボン酸成分を用いることができる。
【0026】
前記式(2)において、mは0又は正の整数である。mとしては、例えば、10以下の正の整数又は0、好ましくは5以下の正の整数又は0である。特にmは0又は1が最適である。
【0027】
なお、アダマンタン骨格に結合している官能基は、カルボキシアルキル基又はカルボキシル基である。該官能基は、アダマンタン骨格の橋頭位に結合していることが好ましい。
【0028】
前記式(2)において、環を構成する炭素原子(橋頭位又は非橋頭位の炭素原子、特に橋頭位の炭素原子)が有していてもよい置換基としては、前記式(1)で表される化合物において、アダマンタン環を構成する炭素原子が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0029】
前記式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類のなかでも、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸(1,3−アダマンタンジカルボン酸)、5,7−ジメチル−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸(1,3−ジカルボキシ−5,7−ジメチルアダマンタン)などの前記式(2a)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類(置換基を有していてもよい1,3−アダマンタンジカルボン酸類)が好ましく、特に、5,7−ジメチル−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸が最適である。
【0030】
前記式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類において、mが正の整数であるアダマンタンジカルボン酸類としては、例えば、1,3−ビス(カルボキシメチル)アダマンタン、1,3−ジメチル−5,7−ビス(カルボキシメチル)アダマンタンなどが挙げられる。
【0031】
式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類は、例えば、アダマンタン環の橋頭位に2つのカルボキシル基を有するアダマンタンジカルボン酸類の場合、対応するアダマンタン類(少なくとも2つの橋頭位の炭素原子に水素原子が結合しているアダマンタン化合物)をカルボキシル化してアダマンタン環の橋頭位に2つのカルボキシル基を導入することにより製造できる。また、少なくとも2つの橋頭位の炭素原子にヒドロキシメチル基が結合しているアダマンタン化合物を酸化することによっても製造できる。
【0032】
さらにまた、例えば、前記式(2)において、mが1であるアダマンタンジカルボン酸類(1,3−ビス(カルボキシメチル)アダマンタンなど)の場合、少なくとも2つの橋頭位の炭素原子にヒドロキシエチル基が結合しているアダマンタン化合物を酸化することにより製造できる。
【0033】
アダマンタン類の酸化によりアダマンタンジカルボン酸類を調製する酸化方法としては公知乃至慣用の酸化方法を使用できるが、反応収率及び操作性などの点から、N−ヒドロキシイミド系化合物を触媒として分子状酸素により、必要に応じて一酸化炭素を用いて酸化する方法が好ましい(特開平9−327626号公報参照)。
【0034】
また、アダマンタン類のカルボキシル化方法としては、公知乃至慣用のカルボキシル化方法を使用することができるが、N−ヒドロキシイミド系化合物を触媒として、酸素とともに一酸化炭素を用いてカルボキシル化反応を行うカルボキシル化方法を好適に採用することができる(特開平11−239730公報参照)。該公報記載のカルボキシル化方法を用いると、効率よくカルボキシル基をアダマンタン環に導入して、アダマンタンジカルボン酸類を得ることができる。
【0035】
より具体的には、前記アダマンタン類をN−ヒドロキシフタルイミド等のN−ヒドロキシイミド系触媒と、必要に応じてコバルト化合物(例えば、酢酸コバルト、コバルトアセチルアセトナト等)などの金属系助触媒の存在下、酸素及び一酸化炭素と接触させることにより、アダマンタン環の橋頭位に2つのカルボキシル基を導入できる。このカルボキシル化方法において、N−ヒドロキシイミド系触媒の使用量は、アダマンタン類1モルに対して、例えば0.000001〜1モル、好ましくは0.00001〜0.5モル程度である。また、金属系助触媒の使用量は、アダマンタン類1モルに対して、例えば0.0001〜0.7モル、好ましくは0.001〜0.5モル程度である。酸素や一酸化炭素としては、純粋な酸素や一酸化炭素を用いてもよく、また不活性ガスで希釈した酸素や一酸化炭素を用いてもよい。なお、酸素源は空気であってもよい。酸素や一酸化炭素の使用量又はこれらの割合は特に制限されず、基質に対して過剰に用いることができる。酸素に対して一酸化炭素を多く用いる方が有利である。反応は、例えば、酢酸などの有機酸、アセトニトリルなどのニトリル類、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などの溶媒中、常圧又は加圧下、0〜200℃程度、好ましくは30〜150℃程度の温度で行うことができる。生成したアダマンタンジカルボン酸は、濃縮、濾過、抽出、晶析、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の慣用の分離精製手段を用いて分離精製できる。
【0036】
本発明では、式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類から1種の化合物のみを選択して使用してもよく、複数の化合物を併用してもよい。また、本発明のポリエステル重合体を構成するジカルボン酸成分(ii)として、前記式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類とともに、又は式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類の代わりに、他の脂環式ジカルボン酸類を使用することができる。このような脂環式ジカルボン酸類としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のシクロヘキサンジカルボン酸類や、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,6−ジカルボン酸、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジカルボン酸などが挙げられる。上記のジカルボン酸成分は1種又は2種以上組み合わせて使用できる。なお、シクロヘキサンジカルボン酸類には、cis体とtrans体とが存在しうるが、これらの異性体のうち一方のみを用いてもよく、混合物を用いてもよい。cis体とtrans体との比率は、前者/後者(モル比)=0/100〜100/0の範囲から選択することができる。
【0037】
本発明のポリエステル重合体を構成する全ジカルボン酸成分中の前記式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類の割合は任意に変えることができるが、通常1〜100モル%、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%程度である。ジオール成分(i)として式(1)で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を含むジオール成分を用いる場合には、ジカルボン酸成分(ii)中に式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類が含まれていなくてもよい。
【0038】
本発明のポリエステル重合体は、ジカルボン酸成分として重合性二重結合を有する成分を含まないポリエステル重合体であることが好ましく、特に、重合性二重結合を有しないジカルボン酸成分及びジオール成分からなる飽和ポリエステル(熱可塑性ポリエステル)であるのが好ましい。
【0039】
ポリエステル重合体の数平均分子量は、例えば1,000〜150,000程度、好ましくは3,000〜100,000程度である。
【0040】
また、本発明のポリエステル重合体の還元粘度は、成形物としたときの機械特性の点から、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶液(重量比4/6)中、濃度1.2g/dl、温度35℃の条件での測定値として、0.5程度以上であることが好ましい。
【0041】
本発明のポリエステル重合体は、前記式(1)で表されるアダマンタンジオール類を含むジオール成分と、ジカルボン酸成分(式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類を含んでいてもよい)又はその反応性誘導体とを重縮合させるか、又はジオール成分(式(1)で表されるアダマンタンジオール類を含んでいてもよい)と、前記式(2)で表されるアダマンタンジカルボン酸類を含むジカルボン酸成分又はその反応性誘導体とを重縮合させることにより製造できる。
【0042】
上記ジカルボン酸成分の反応性誘導体としては、例えば、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸ハロゲン化物(ジカルボン酸塩化物等)などを使用できる。ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸ハロゲン化物は、対応するジカルボン酸から慣用の方法により誘導できる。
【0043】
本発明のポリエステル重合体の製造の実施形態としては、一般的なポリエステルの製造法を適用することができる。例えば、遊離のジカルボン酸又はジカルボン酸無水物を原料として使用する場合には、ジオール成分とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物とを反応器に入れて加熱し、反応により生成する水を系外に留去させることによりポリエステル重合体を製造できる。この反応は、必ずしも触媒を必要としないが、触媒を用いることにより反応を促進させることができる。触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、チタン、コバルト、マンガンなどの金属の酢酸塩、炭酸塩、水酸化物、アルコキシドなどが挙げられる。反応温度は120〜300℃程度、好ましくは160〜300℃程度である。反応圧力は、通常常圧であるが、水及び過剰のジオール成分の留去を促進させるため減圧下でエステル化反応を行ってもよい。ジオール成分とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物とのモル比は約1であってもよいが、高分子量のポリエステルを得るため、ジオール成分を過剰量用いてもよい。
【0044】
また、ジカルボン酸エステルを原料として用いる場合には、ジオール成分とジカルボン酸エステルと触媒とを反応器に仕込み、反応で生成するアルコールを系外に留去させることによりポリエステル重合体を製造できる。ジカルボン酸エステルとしては、ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルなどを使用できるが、反応の容易さ及びコストの点でメチルエステルが特に好ましい。前記触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、鉛、チタン、コバルト、マンガン、スズ、アンチモン、ゲルマニウムなどの金属のカルボン酸塩、炭酸塩、水酸化物、アルコキシド、酸化物などが挙げられる。反応温度は120〜300℃程度、好ましくは160〜300℃程度である。反応圧力は、常圧であってもよいが、アルコールの留去を促進させるため減圧下でエステル化反応を行ってもよい。また、ジオール成分とジカルボン酸エステルとのモル比は約1であってもよいが、高分子量のポリエステルを得るため、ジオール成分を過剰量用いてもよい。
【0045】
ジカルボン酸塩化物などのジカルボン酸ハロゲン化物を原料に用いてポリエステル重合体を得る方法としては、(A)ジオール成分とジカルボン酸ハロゲン化物とを高温無溶媒下で反応させ、生成するハロゲン化水素を留去する方法、(B)ジオール成分とジカルボン酸ハロゲン化物とを溶媒中低温で反応させ、生成するハロゲン化水素を留去するか又は塩基性物質により中和する方法などが挙げられる。反応温度は0〜280℃程度の範囲から適宜選択できる。
【0046】
前記(B)の方法において用いる溶媒としては、反応に不活性であれば特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;1,3−ジメチル−2−イミダゾリンなどのイミダゾリン類;ヘキサメチルホスホルアミドなどが例示できる。また、前記塩基性物質としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの第3級アミン;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリンなどの塩基性含窒素複素環化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。なお、前記N−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒は塩基性物質としても機能する。
【0047】
重合により生成したポリエステル重合体は、濾過、濃縮、沈殿、晶析、冷却固化などの慣用の方法により単離できる。
【0048】
なお、本発明では、1,3−アダマンタンジオールや1,3−ジヒドロキシ−5,7−ジメチルアダマンタンなどの置換基を有していてもよい1,3−アダマンタンジオール類と、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸や1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの置換基を有していてもよいシクロヘキサンジカルボン酸類との縮合により得られるポリエステル重合体が除かれる場合がある。
【0049】
【発明の効果】
本発明のポリエステル重合体は、かさ高い脂環構造を有しており、耐熱性、低吸水性、光学的特性及び成形性に優れている。そのため、光ディスク、レンズ、光コネクターなどの各種光学・電子情報材料、輸液キット、カテーテル、シリンジ、真空採血管などの医療器具材料などとして有用である。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0051】
実施例1
50mlのフラスコに、乾燥窒素下で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロライド:2.09g[1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と塩化チオニルとの反応で合成し、蒸留により精製した]、および乾燥したモノクロロベンゼン:10mLを仕込み、これに攪拌しながら、室温でトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール:1.68gと、乾燥したピリジン:5mLの混合溶液を5分間で滴下した。滴下終了後、混合溶液を80℃で2時間反応させた。重合終了後、反応混合液を500mlのメタノール中に少量ずつ滴下し、生成したポリマーを濾過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して、白色のポリエステル重合体を得た。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)をGPC装置で測定した結果、それぞれ16,000と2.5であった。また、このポリマーのTg(ガラス転移温度)、窒素中Td5(5%熱重量減少温度)をそれぞれDSC(示差走査熱量測定装置)、TG−DTA(熱天秤)で測定した結果、それぞれ105℃、385℃であった。
【0052】
実施例2
アダマンタンジオール類として5,7−ジメチル−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール:1.96gを用いたこと以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、17,000、2.5であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、170℃、430℃であった。
【0053】
参考例1
ジカルボン酸成分としてアジピン酸クロライド:1.83gを用い、アダマンタンジオール類として5,7−ジメチル−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール:1.96gを用いたこと以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、10,000、2.5であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、44℃、410℃であった。
【0054】
実施例3
ジカルボン酸成分としてビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジカルボン酸クロライド:2.21gを用い、アダマンタンジオール類として5,7−ジメチル−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール:1.96gを用いたこと以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、6,000、2.2であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、172℃、420℃であった。
【0055】
実施例4
ジカルボン酸成分としてトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジカルボン酸クロライド:2.61gを用い、アダマンタンジオール類として5,7−ジメチル−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール:1.96gを用いたこと以外は実施例1と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、5,000、2.2であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、135℃、360℃であった。
【0056】
実施例5
50mlのフラスコに、乾燥窒素下で、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸クロライド:2.61g[トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸と塩化チオニルとの反応で合成し、蒸留により精製した]、および乾燥したモノクロロベンゼン:10mLを仕込み、これに攪拌しながら、室温で1,4−シクロヘキサンジメタノール:1.44gと、乾燥したピリジン:5mLの混合溶液を5分間で滴下した。滴下終了後、混合溶液を80℃で2時間反応させた。重合終了後、反応混合液を500mlのメタノール中に少量ずつ滴下し、生成したポリマーを濾過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して、白色のポリエステル重合体を得た。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)をGPC装置で測定した結果、それぞれ29,000と2.5であった。また、このポリマーのTg(ガラス転移温度)、窒素中Td5(5%熱重量減少温度)をそれぞれDSC(示差走査熱量測定装置)、TG−DTA(熱天秤)で測定した結果、それぞれ74℃、410℃であった。
【0057】
実施例6
ジオール成分として1,4−シクロヘキサンジオール:1.16gを用いたこと以外は実施例6と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、5,000、2.3であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、49℃、340℃であった。
【0058】
実施例7
ジオール成分として1,2−シクロヘキサンジオール:1.16gを用いたこと以外は実施例6と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、5,000、2.2であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、114℃、350℃であった。
【0059】
実施例8
ジオール成分としてビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,5−ジメタノール:1.56gを用いたこと以外は実施例6と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、20,000、2.6であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、91℃、420℃であった。
【0060】
実施例9
ジオール成分としてトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジメタノール:1.96gを用いたこと以外は実施例6と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、5,000、2.4であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、88℃、390℃であった。
【0061】
実施例10
200mlのフラスコに、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸:4.49gと、1,4−シクロヘキサンジメタノール:3.46gとを仕込み、乾燥窒素気流下で、チタン酸テトライソプロピル:0.011gを加えた。これを徐々に200℃まで加熱し、約1時間攪拌した。その後、系を真空にし、攪拌しながら徐々に280℃まで昇温して8時間重合反応を行った。重合終了後、クロロホルム:100mlを加えて溶解させ、反応混合液を1500mlのメタノール中に少量ずつ滴下し、生成したポリマーを濾過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/MnをGPC装置で測定した結果、それぞれ49,000と2.5であった。また、このポリマーのTg、Td5はそれぞれ77℃、410℃であった。
【0062】
実施例11
冷却器と攪拌機を取り付けた三つ口フラスコに、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸:4.49gと、1,4−シクロヘキサンジメタノール:3.46gとを仕込み、乾燥窒素気流下で、1−クロロ−3−ヒドロキシ−1,1,3,3−テトラ−n−ブチルジスタノキサン:0.021gを加えた。これを200℃まで加熱し、約1時間攪拌して均一状態とした。さらに、デカリン:30mlを加えて2相状態となるようにし、デカリンの還流下、60時間攪拌して重縮合反応を行った。反応終了後、デカリンを流出させて除去し、続いてクロロホルム:100mlを加えて溶解させ、反応混合液を1500mlのメタノール中に少量ずつ滴下し、生成したポリマーを濾過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して、白色のポリエステル重合体を得た。メタノールを加え12時間攪拌した。得られた白色粉末状ポリマーを濾別後、60℃にて減圧乾燥することにより、ポリエステルを得た。得られたポリマーのMnとMw/MnをGPC装置で測定した結果、それぞれ14,000と2.3であった。また、このポリマーのTg、Td5はそれぞれ73℃、410℃であった。
【0063】
実施例12
ジオール成分としてビシクロ[5.2.1]デカン−2,6−ジオール:1.70gを用いたこと以外は実施例6と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、12,000、2.6であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、130℃、400℃であった。
【0064】
実施例13
ジカルボン酸成分として5,7−ジメチルトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸:5.05gを用いたこと以外は実施例11と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、26,000、2.5であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、77℃、410℃であった。
【0065】
実施例14
ジオール成分としてビシクロ[4.4.0]デカン−1,6−ジオール:4.09gを用いたこと、およびジカルボン酸成分として5,7−ジメチルトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸:5.05gを用いたこと以外は実施例11と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、5,000、2.6であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、162℃、380℃であった。
【0066】
実施例15
50mlのフラスコに、乾燥窒素下で、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸クロライド:2.61g[トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸と塩化チオニルとの反応で合成し、蒸留により精製した]、および乾燥したモノクロロベンゼン:10mLを仕込み、これに攪拌しながら、室温でトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール:1.68gと、乾燥したピリジン:5mLの混合溶液を5分間で滴下した。滴下終了後、混合溶液を80℃で2時間反応させた。重合終了後、反応混合液を500mlのメタノール中に少量ずつ滴下し、生成したポリマーを濾過し、メタノールで洗浄した後、真空乾燥して、白色のポリエステル重合体を得た。得られたポリマーの数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)をGPC装置で測定した結果、それぞれ12,000と2.5であった。また、このポリマーのTg(ガラス転移温度)、窒素中Td5(5%熱重量減少温度)をそれぞれDSC(示差走査熱量測定装置)、TG−DTA(熱天秤)で測定した結果、それぞれ131℃、400℃であった。
【0067】
実施例16
アダマンタンジオール類として5,7−ジメチル−トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール:1.96gを用いたこと以外は実施例16と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、9,000、2.3であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、188℃、405℃であった。
【0068】
実施例17
ジカルボン酸成分として5,7−ジメチルトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸クロライド:2.89g[5,7−ジメチルトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジカルボン酸と塩化チオニルとの反応で合成し、蒸留により精製した]を用いたこと、およびジオール成分として5,7−ジメチルトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1,3−ジオール:1.96gを用いたこと以外は実施例16と同様に反応を行い、ポリエステル重合体を得た。得られたポリマーのMnとMw/Mnは、それぞれ、6,000、2.3であった。また、該ポリマーのTgとTd5は、それぞれ、200℃、415℃であった。
Claims (14)
- (i)ジオール成分と(ii)ジカルボン酸成分との縮合により得られるポリエステル重合体であって、ジオール成分(i)が脂環式ジオール類であり、且つジカルボン酸成分( ii )が脂環式ジカルボン酸類であるとともに、前記脂環式ジオール類が下記式(1)
で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を全脂環式ジオール類中10〜100モル%の割合で含む脂環式ジオール類であるか、又は前記脂環式ジカルボン酸類が下記式(2)
で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を全脂環式ジカルボン酸類中10〜100モル%の割合で含む脂環式ジカルボン酸類であるポリエステル重合体。 - 脂環式ジオール類が、式(1)において、nが0又は1で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を含む脂環式ジオール類であるか、又は脂環式ジカルボン酸類が、式(2)において、mが0又は1で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を含む脂環式ジカルボン酸類である請求項1記載のポリエステル重合体。
- 脂環式ジオール類が、式(1)において、nが0又は1で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を含む脂環式ジオール類であり、且つ脂環式ジカルボン酸類が、式(2)において、mが0又は1で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を含む脂環式ジカルボン酸類である請求項1記載のポリエステル重合体。
- 脂環式ジオール類が、式(1)において、nが0で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を含む脂環式ジオール類であるか、又は脂環式ジカルボン酸類が、式(2)において、mが0で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を含む脂環式ジカルボン酸類である請求項1記載のポリエステル重合体。
- 脂環式ジオール類が、式(1)において、nが0で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を含む脂環式ジオール類であり、且つ脂環式ジカルボン酸類が、式(2)において、mが0で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を含む脂環式ジカルボン酸類である請求項1記載のポリエステル重合体。
- 数平均分子量が1,000〜150,000である請求項1〜8の何れかの項に記載のポリエステル重合体。
- 数平均分子量が3,000〜100,000である請求項1〜8の何れかの項に記載のポリエステル重合体。
- ジオール成分(i)と、ジカルボン酸成分(ii)又はその反応性誘導体とを重縮合させてポリエステル重合体を製造する方法であって、ジオール成分(i)として脂環式ジオール類を用い、且つジカルボン酸成分( ii )として脂環式ジカルボン酸類を用いるとともに、前記脂環式ジオール類として下記式(1)
で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジオール類を全脂環式ジオール類中10〜100モル%の割合で含む脂環式ジオール類を用いるか、又は前記脂環式ジカルボン酸類として下記式(2)
で表されるトリシクロ[3.3.1.13,7]デカンジカルボン酸類を全脂環式ジカルボン酸類中10〜100モル%の割合で含む脂環式ジカルボン酸類を用いることを特徴とするポリエステル重合体の製造法。
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