JP4420513B2 - 新規なポリエステル重合体とその製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なポリエステル重合体及びその製造法に関し、さらに詳細には、耐熱性、低吸水性を有し、光学的異方性が小さく、成形性に優れたポリエステル重合体及びその製造法に関する。このポリエステル重合体は、光学材料、電子情報材料、医療器具材料などとして有用である。
【0002】
【従来の技術】
近年、光学材料、電子情報材料、医療器具材料などにプラスチックを用いる研究や開発が精力的に行われている。光学材料や電子情報材料においては、透明性、低吸水性及び耐熱性のほか、光学的異方性の小さいことが要求される。また、医療器具材料では、血液適合性、機械的強度、耐加水分解性等が要求される。
【0003】
光学材料としては、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、非晶性ポリオレフィンなどが使用されている。しかし、ポリメチルメタクリレートは透明性に優れ光学異方性が小さいものの、吸湿性が高いため、反り等の変形を起こしやすく、また耐熱性も十分とは言えない。ポリカーボネートは耐熱性に優れるものの、光学的異方性が大きい。また、非晶性ポリオレフィンは光学的異方性が小さく、耐熱性にも優れるが、成形性、接着性などに問題がある。
【0004】
一方、ポリエステルを光学材料や電子情報材料として応用する試みもなされている。例えば、特開平1−138225号公報には、側鎖に芳香環を有するジオール又はジカルボン酸を用いたポリエステル樹脂が開示されている。特開平2−38428号公報には、ジカルボン酸成分としてジフェニルジカルボン酸を用いたポリエステル共重合体が開示されている。また、特開平11−35665号公報には、2,2−ノルボルナンジメタノール誘導体とテレフタル酸などとからなるポリエステルが開示されている。しかし、これらの樹脂は耐熱性、低吸水性、光学的特性の点で必ずしも十分であるとは言えない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、耐熱性、低吸水性、光学的特性に優れ、しかも成形性に優れた新規なポリエステル重合体及びその製造法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の構造を有するポリエステル樹脂が、耐熱性、低吸水性、光学的特性及び成形性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記式(1)
【化9】
(式中、2つのヒドロキシメチル基はトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を構成する炭素原子に結合している。環を構成する炭素原子はヒドロキシメチル基以外に他の置換基を有しない)
で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類を含むジオール成分と、下記式(2)
【化10】
(式中、2つのカルボキシル基はトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を構成する炭素原子に結合している。環を構成する炭素原子はカルボキシル基以外に他の置換基を有しない)
で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類のみか、前記トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類と脂環式ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分との縮合により得られる、数平均分子量が1,000〜150,000であるポリエステル重合体を提供する。
【0008】
本発明は、また、前記式(1)で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類を含むジオール成分と、前記式(2)で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類のみか、前記トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類と脂環式ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分又はその反応性誘導体とを重縮合させることを特徴とするポリエステル重合体の製造法を提供する。
【0009】
前記ジオール成分として、下記式(1a)〜(1c)
【化11】
(式中、環を構成する炭素原子はヒドロキシメチル基以外に他の置換基を有しない)
で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−、3,9−及び4,8−ジメタノール類から選択された少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類を含むジオール成分を、前記ジカルボン酸成分として、下記式(2a)〜(2c)
【化12】
(式中、環を構成する炭素原子はカルボキシル基以外に他の置換基を有しない)
で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−、3,9−及び4,8−ジカルボン酸類から選択された少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類のみか、前記トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類と脂環式ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分を使用できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のポリエステル重合体を構成するジオール成分には、前記式(1)で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類が含まれている。
【0011】
式中に示される2つのヒドロキシメチル基はトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を構成する何れの炭素原子(橋頭位又は非橋頭位の炭素原子)に結合していてもよい。例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環をノルボルナン環とシクロペンタン環とに分けた場合、2つのヒドロキシメチル基がともにノルボルナン環側の炭素原子に結合していてもよく、2つのヒドロキシメチル基がともにシクロペンタン環側の炭素原子に結合していてもよい。また、一方のヒドロキシメチル基がノルボルナン環側の炭素原子に結合し、他方のヒドロキシメチル基がシクロペンタン環側の炭素原子に結合していてもよい。これらの位置異性体は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、式(1)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類にはエンド体とエキソ体とが存在し得るが、本発明ではこれらの一方又は混合物の何れをも使用できる。
【0012】
式(1)において、環を構成する炭素原子(橋頭位又は非橋頭位の炭素原子)は、前記2つのヒドロキシメチル基に加えて、他の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル基などのアルキル基(例えば、C1-10アルキル基、好ましくはC1-4アルキル基);シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル、ナフチル基などのアリール基;メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ基などのアルコキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基);メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基(例えば、C1-4アルコキシ−カルボニル基);アセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイル基などのアシル基;ヒドロキシル基;カルボキシル基;ニトロ基;置換又は無置換アミノ基;ハロゲン原子;オキソ基などが挙げられる。本発明においては、式(1)において、環を構成する炭素原子はヒドロキシメチル基以外に他の置換基を有しない、トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジメタノール類を使用する。
【0013】
式(1)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類の中でも、前記式(1a)〜(1c)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−ジメタノール類、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,9−ジメタノール類及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジメタノール類が好ましい。なお、式(1a)〜(1c)において、環を構成する炭素原子が有していてもよい置換基は前記と同様である。本発明においては、式(1a)〜(1c)において、環を構成する炭素原子はヒドロキシメチル基以外に他の置換基を有しない、トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジメタノール類を使用する。
【0014】
式(1)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類は公知乃至慣用の方法により得ることができる。
【0015】
本発明では、式(1)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類から1種の化合物のみを選択して使用してもよく、複数の化合物を併用してもよい。また、本発明のポリエステル重合体を構成するジオール成分として、前記式(1)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類とともに、他のジオール成分を併用することもできる。このようなジオール成分としては、一般のポリエステルの原料として使用されるジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、2,2−ノルボルナンジメタノール、3−メチル−2,2−ノルボルナンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、2,6−ノルボルナンジメタノール、パーヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジメタノール、アダマンタンジメタノール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジメタノール、1,3−アダマンタンジオール、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジオールなどの脂環式ジオール;ヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ナフタレンジオール、キシリレンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールS、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物などの芳香族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのエーテルグリコールなどが挙げられる。上記ジオール成分は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0016】
本発明のポリエステル重合体を構成する全ジオール成分中の前記式(1)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタール類の割合は任意に変えることができるが、通常1〜100モル%、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%程度である。
【0017】
本発明のポリエステル重合体を構成するジカルボン酸成分には、前記式(2)で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類が含まれている。
【0018】
式中に示される2つのカルボキシル基はトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を構成する何れの炭素原子(橋頭位又は非橋頭位の炭素原子)に結合していてもよい。例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環をノルボルナン環とシクロペンタン環とに分けた場合、2つのカルボキシル基がともにノルボルナン環側の炭素原子に結合していてもよく、2つのカルボキシル基がともにシクロペンタン環側の炭素原子に結合していてもよい。また、一方のカルボキシル基がノルボルナン環側の炭素原子に結合し、他方のカルボキシル基がシクロペンタン環側の炭素原子に結合していてもよい。これらの位置異性体は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、式(2)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類にはエンド体とエキソ体とが存在し得るが、本発明ではこれらの一方又は混合物の何れをも使用できる。
【0019】
式(2)において、環を構成する炭素原子(橋頭位又は非橋頭位の炭素原子)は、前記2つのカルボキシル基に加えて、他の置換基を有していてもよい。このような置換基としては、前記式(1)で表される化合物においてトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を構成する炭素原子が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。本発明においては、式(2)において、環を構成する炭素原子はカルボキシル基以外に他の置換基を有しない、トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類を使用する。
【0020】
式(2)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類の中でも、前記式(2a)〜(2c)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−ジカルボン酸類、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,9−ジカルボン酸類及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジカルボン酸類が好ましい。なお、式(2a)〜(2c)において、環を構成する炭素原子が有していてもよい置換基は前記と同様である。本発明においては、式(2a)〜(2c)において、環を構成する炭素原子はカルボキシル基以外に他の置換基を有しない、トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類を使用する。
【0021】
式(2)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類は公知乃至慣用の方法又はそれらの方法に準じて製造することができる。例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類を硝酸酸化し、得られた反応混合液から対応する粗トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類を濾取して乾燥した後、アセトンなどの適当な溶媒より再結晶することにより、製品トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類を得ることができる。
【0022】
本発明では、式(2)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類から1種の化合物のみを選択して使用してもよく、複数の化合物を併用してもよい。
【0023】
ポリエステル重合体を構成するジカルボン酸成分として、前記式(2)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類とともに、他のジカルボン酸成分を併用することもできる。このようなジカルボン酸成分としては、ポリエステルの原料として一般に使用されるものであれば特に制限されず、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−4′,4′′−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、2,6−ノルボルナンジカルボン酸、パーピドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン−2,3−ジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、1,3−ジメチル−5,7−アダマンタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも脂環式ジカルボン酸などが好ましい。これらのジカルボン酸成分は1種又は2種以上組み合わせて使用できる。本発明においては、ポリエステル重合体を構成するジカルボン酸成分として、前記式(2)で表されるトリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類のみか、前記トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類と脂環式ジカルボン酸を使用する。
【0024】
本発明のポリエステル重合体を構成する全ジカルボン酸成分中の前記式(2)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類の割合は任意に変えることができるが、通常1〜100モル%、好ましくは5〜100モル%、さらに好ましくは10〜100モル%程度である。
【0025】
本発明のポリエステル重合体は、ジカルボン酸成分として重合性二重結合を有する成分を含まないポリエステル重合体であることが好ましく、特に、重合性二重結合を有しないジカルボン酸成分及びジオール成分からなる飽和ポリエステル(熱可塑性ポリエステル)であるのが好ましい。
【0026】
ポリエステル重合体の数平均分子量は、例えば1,000〜150,000程度、好ましくは3,000〜100,000程度である。
本発明のポリエステル重合体の還元粘度は、成形物としたときの機械特性の点から、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶液(重量比4/6)中、濃度1.2g/dl、温度35℃の条件での測定値として、0.5程度以上であることが好ましい。
【0027】
本発明のポリエステル重合体は、前記式(1)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタール類から選択された少なくとも1種の成分を含むジオール成分と、前記式(2)で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類から選択された少なくとも1種の成分のみか、前記トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類と脂環式ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分又はその反応性誘導体とを重縮合させることにより製造できる。
【0028】
上記ジカルボン酸成分の反応性誘導体としては、例えば、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸ハロゲン化物(ジカルボン酸塩化物等)などを使用できる。ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸無水物、ジカルボン酸ハロゲン化物は、対応するジカルボン酸から慣用の方法により誘導できる。
【0029】
本発明のポリエステル重合体の製造の実施形態としては、一般的なポリエステルの製造法を適用することができる。例えば、遊離のジカルボン酸又はジカルボン酸無水物を原料として使用する場合には、ジオール成分とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物とを反応器に入れて加熱し、反応により生成する水を系外に留去させることによりポリエステル重合体を製造できる。この反応は必ずしも触媒を必要としないが、触媒を用いることにより反応を促進させることができる。触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、チタン、コバルト、マンガンなどの金属の酢酸塩、炭酸塩、水酸化物、アルコキシドなどが挙げられる。反応温度は120〜300℃程度、好ましくは160〜300℃程度である。反応圧力は、通常常圧であるが、水及び過剰のジオール成分の留去を促進させるため減圧下でエステル化反応を行ってもよい。ジオール成分とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物とのモル比は約1であってもよいが、高分子量のポリエステルを得るため、ジオール成分を過剰量用いてもよい。
【0030】
またジカルボン酸エステルを原料として用いる場合には、ジオール成分とジカルボン酸エステルと触媒とを反応器に仕込み、反応で生成するアルコールを系外に留去させることによりポリエステル重合体を製造できる。ジカルボン酸エステルとしては、ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステルなどを使用できるが、反応の容易さ及びコストの点でメチルエステルが特に好ましい。前記触媒としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、鉛、チタン、コバルト、マンガン、スズ、アンチモン、ゲルマニウムなどの金属のカルボン酸塩、炭酸塩、水酸化物、アルコキシド、酸化物などが挙げられる。反応温度は120〜300℃程度、好ましくは160〜300℃程度である。反応圧力は、常圧であってもよいが、アルコールの留去を促進させるため減圧下でエステル化反応を行ってもよい。また、ジオール成分とジカルボン酸エステルとのモル比は約1であってもよいが、高分子量のポリエステルを得るため、ジオール成分を過剰量用いてもよい。
【0031】
ジカルボン酸塩化物などのジカルボン酸ハロゲン化物を原料に用いてポリエステル重合体を得る方法としては、(i)ジオール成分とジカルボン酸ハロゲン化物とを高温無溶媒下で反応させ、生成するハロゲン化水素を留去する方法、(ii)ジオール成分とジカルボン酸ハロゲン化物とを溶媒中低温で反応させ、生成するハロゲン化水素を留去するか又は塩基性物質により中和する方法などが挙げられる。反応温度は0〜280℃程度の範囲から適宜選択できる。
【0032】
前記(ii)の方法において用いる溶媒としては、反応に不活性であれば特に限定されず、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;1,3−ジメチル−2−イミダゾリンなどのイミダゾリン類;ヘキサンメチルホスホルアミドなどが例示できる。また、前記塩基性物質としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどの第3級アミン;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、キノリンなどの塩基性含窒素複素環化合物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属塩などが挙げられる。なお、前記N−メチル−2−ピロリドンなどの溶媒は塩基性物質としても機能する。
重合により生成したポリエステル重合体は、濾過、濃縮、沈殿、晶析、冷却固化などの慣用の方法により単離できる。
【0033】
【発明の効果】
本発明のポリエステル重合体は、かさ高い脂環構造があり、耐熱性、低吸水性、光学的特性及び成形性に優れている。そのため、光ディスク、レンズ、光コネクターなどの各種光学・電子情報材料、輸液キット、カテーテル、シリンジ、真空採血管などの医療器具材料などとして有用である。
【0034】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0035】
実施例1
50mlのフラスコに、乾燥窒素下で、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸クロライド2.61g、及び乾燥したモノクロロベンゼン10mlを仕込み、これに撹拌しながら、室温でトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール1.96gと乾燥ピリジン5mlの混合溶液を5分間で滴下した。滴下終了後、混合溶液を80℃で2時間反応させた。重合終了後、反応混合液を500mlのメタノール中に少量ずつ滴下し、生成したポリマーを沈殿させた。このポリマーを濾過して洗浄した後、真空乾燥して、白色のポリエステル重合体を3.8g得た。得られたポリマーの数平均分子量と分子量分布(Mw/Mn)をGPCで測定した結果、それぞれ8,980と2.51であった。また、このポリマーのTg(ガラス転移温度)及び窒素中5%熱重量減少温度を、DSC(示差走査熱量測定装置)とTG−DTA(熱天秤)で測定した結果、それぞれ95.7℃と393.4℃であった。
なお、原料として用いたトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸クロライドは、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−ジカルボン酸40重量%、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,9−ジカルボン酸14重量%、及びトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−4,8−ジカルボン酸42重量%を含む混合物)と塩化チオニル(SOCl2)とを反応させ、得られた反応混合物を減圧蒸留により精製して得た。
【0036】
実施例2
50mlのフラスコに、乾燥窒素下で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸クロライド1.88gとトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸クロライド0.26g、及び乾燥したモノクロロベンゼン10mlを仕込み、これに撹拌しながら、室温でトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール1.96gと乾燥ピリジン5mlの混合溶液を5分間で滴下した。滴下終了後、混合溶液を80℃で2時間反応させた。重合終了後、反応混合液を500mlのメタノール中に少量ずつ滴下し、生成したポリマーを沈殿させた。このポリマーを濾過して洗浄した後、真空乾燥して、白色のポリエステル重合体を3.1g得た。得られたポリマーの数平均分子量と分子量分布(Mw/Mn)をGPCで測定した結果、それぞれ26,300と2.85であった。また、このポリマーのTg及び窒素中5%熱重量減少温度を、DSCとTG−DTAで測定した結果、それぞれ85.4℃と416.7℃であった。
なお、原料として用いたトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸クロライドは実施例1と同様にして得た。
Claims (5)
- 下記式(1)
で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類を含むジオール成分と、下記式(2)
で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類のみか、前記トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類と脂環式ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分との縮合により得られる、数平均分子量が1,000〜150,000であるポリエステル重合体。 - 下記式(1a)〜(1c)
で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−、3,9−及び4,8−ジメタノール類から選択された少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類を含むジオール成分と、下記式(2a)〜(2c)
で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−、3,9−及び4,8−ジカルボン酸類から選択された少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類のみか、前記トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類と脂環式ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分との縮合により得られる請求項1記載のポリエステル重合体。 - 数平均分子量が3,000〜100,000である請求項1又は2記載のポリエステル重合体。
- 下記式(1)
で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類を含むジオール成分と、下記式(2)
で表される少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類のみか、前記トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類と脂環式ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分又はその反応性誘導体とを重縮合させることにより請求項1〜3の何れかの項に記載のポリエステル重合体を得ることを特徴とするポリエステル重合体の製造法。 - 下記式(1a)〜(1c)
で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−、3,9−及び4,8−ジメタノール類から選択された少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール類を含むジオール成分と、下記式(2a)〜(2c)
で表されるトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3,8−、3,9−及び4,8−ジカルボン酸類から選択された少なくとも1種のトリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジカルボン酸類のみか、前記トリシクロ[5.2.1.0 2,6 ]デカンジカルボン酸類と脂環式ジカルボン酸からなるジカルボン酸成分又はその反応性誘導体とを重縮合させる請求項4記載のポリエステル重合体の製造法。
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