JP3857496B2 - 座金付きナット、座金付きボルト及び取り付け治具 - Google Patents

座金付きナット、座金付きボルト及び取り付け治具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築分野等において木材間を締結するための金具に関する。
【0002】
【従来の技術】
建築分野において複数の木材(柱、梁など)を締結するために各種の金具が用いられているが、ボルト・ナットはその一つである。例えば、建築物の布基礎と土台とを結合するために、アンカーボルトとナットが用いられている。アンカーボルトは、生コンクリートを布基礎に打設した後、コンクリートが固まらないうちに先端部分を突出させて埋め込むことによって布基礎に固定される。布基礎から突出させたアンカーボルトの上端部は、土台内部に形成したアンカーボルト挿通孔を通り、先端部に設けたねじ部に座金を挿通した後ナットを螺合してボルトを締結する。これによって土台は布基礎に固定される。
建築物の施工において、土台上面にアンカーボルトを突出させず、土台上面とアンカーボルトの先端とを面一とする工法が知られている。この工法によれば、土台上面に他の建設部材を直接載せる2×4工法や、軸組工法における床パネル形成等の際おいて、ボルト先端が邪魔にならず作業効率の点で優れるといった利点がある。
【0003】
従来、土台上面とアンカーボルトの先端とを面一に形成する場合、ナットの上面がアンカーボルト先端と同様に土台表面と面一となるように、土台のアンカーボルト挿通孔の上端部の周囲に、ナットが嵌め込まれて収納される凹部をあらかじめ穿設する、いわゆる座掘りが行われている。
事前の座掘り作業は、熟練と時間を要する仕事であるし、また、必要以上に掘ってしまうと土台の強度を損ねてしまう恐れがある。このような問題を解決するために、座金とナットを組み合わせると共に、座金の裏面側に座掘り用の刃を形成した座付きナットが提案されている。これは、締め付けに伴う座金の回転で、座金自らが木材を彫り進み、事前に座掘りをしておかなくとも座金が土台に埋まり込むものである。
【0004】
図12は従来の座金付きナットを説明するための正面図、及び断面図である。座金付きナット100は、座金部101及びナット部102を備える。座金部101は、平らに形成された上面104と外周から内周に向かって肉厚とし杯状に形成された下面103を有する。座金部101及びナット部102には、その軸中心にアンカーボルトを通す挿通孔108が貫通して形成され、内面にねじ部109が形成されている。
座金部101において、挿通孔108の上面103側の端部には工具を係合させるための六角形状凹部105(工具掛け部)が穿たれ、また、下面103には切刃102を備えている。
アンカーボルトを締結するには、アンカーボルトを挿通孔108内に通し、六角形状凹部105内に六角レンチを挿入し、座金付きナット100の全体を回転させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の座金付きナット100では、中央部分に工具掛けとなる六角形状凹部105を1個設けるだけなので深く大きくならざるを得ず、このため座金部の断面形状が下方ヘ膨出した椀状あるいは杯状となる。すなわち、座金部101の厚さが大きいのでその分だけ座掘りの量も多く、このような座金付きナットは、座掘りに要する時間が長くなっている。木造軸組住宅では多数のボルト・ナット締め個所があり、その多くに座掘りが必要である。そのため、個々の個所における座掘りに要する時間の多寡はトータルでは無視できない程度になる。
【0006】
また、アンカーボルトを布基礎に埋め込む際に、アンカーボルト上端が土台の上面よりも低くなることが後続の板張り工程を支障なく進める上で必要であり、アンカーボルトを座金部101の六角形状凹部105においてレンチを挿入する長さの分だけ土台の上面から低く埋め込む必要がある。このアンカーボルトの上端位置が所定位置よりも高く設置された場合には、座金部101の六角形状凹部105において、アンカーボルトの上端とレンチ先端がぶつかり、六角形状凹部105からレンチが外れ、座金付きナット100の締め付けが困難となる。したがって、アンカーボルトの施工ミスなどにより、アンカーボルトの上端部の位置が設定よりも高いと、土台表面と座金部101の上面を面一に形成することができなくなる。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決し、事前に座掘りを要することなく、また、多少アンカーボルトの上端部位置が上方に位置していても支障なくアンカーボルトの締結を行うことができる座金付きナットを提供することを目的とする。また、これと関連し技術的思想の主要部が一致する座付きボルトの提供及びこれらの座付きナットや座付きボルトをねじ込むための工具に必要な取り付け冶具の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来の座付きナットや座付きボルトにおける杯状に肉厚な座金部を、肉厚がほとんど同じである平板状とすることによって、必要な座掘りの深さ軽減し、座掘りに要する時間を短縮する。
また、座金部の少なくとも上面に設ける取り付け冶具と工具掛け部は座金部の周縁部に分散して設ける。これは座金部が平板状となったために配置することができない従来の六角状凹部に変わる工具掛け部である。
【0009】
本発明の座金付きナットは座金部とナット部を備える。座金部は、平面状の上面と下面とを備える平板円形形状で、上面と下面で挟まれる軸方向の厚さは径方向において外周側及び内周側で等しい厚さとし、取り付け冶具との工具掛け部を少なくとも上面に備える。工具掛け部は、座金付きナットを回転するために電動工具ヘ取り付ける取り付け冶具と係合する部分である。
座金部から六角状凹部の工具掛け部をなくし、座金部を平板円形形状としたので、座掘りを要する体積が従来の杯状、椀状をした座金部の場合と比較して減少し、座掘りに要する時間が短縮される。
【0010】
本発明の座金付きナットは、座金部に座掘り用の切削機構を備える。切削機構の第1の態様は、座金部の下面に設けた複数の切刃であって、座金部が回転すると被取り付け材を円形に切削し、同時に自らが被取り付け材に埋入する。
なお、この際に座掘りの周縁では木材の毛羽立ち、かえり、まくれ等のバリが発生し、座付きナットを取り付けた後も目立って見苦しいことがあるが、これを解決するために座金部の外周縁に座金部の外周端の輪郭、すなわち、座掘りの周縁を切削する鑿部を設けたり、取り付け治具に切刃を設けておき、座堀りの当初に、いわば、罫書きのようにして、座掘りの周縁を環状に切削しておくことがある。
座掘りの当初、座金部の回動に伴って、被取り付け材(木材)の切削くずが飛び散るが、座金部の周縁が被取り付け材の表面に到達すると切削くずはもはや外部に排出されず、座金部によって被取り付け材との間で圧迫される。そして、切削くずを圧迫しながらも、ボルトとの螺合によってなおも被取り付け材への沈み込みを続けた座付きナットは、やがて、回転に必要とするトルクが電動工具にとって過大になり、自動的に回転が停止する。これによって、座金部による過剰な切削が防止されると共に被取り付け材との間で圧迫された切削くずが緩み防止のクッションとなり、振動などで座付きナットが緩んでしまうのを防止する。
【0011】
座金部の切刃は、座金部の下面の厚さが周方向に沿って連続的に変化する斜面、あるいは、座金部の平面状の下面に下方に突出させた刃部によって形成することができる。前記の連続的に傾斜する斜面は直線的に傾斜した平らな斜面あるいは湾曲して連続する曲面である。座金部の下面に設ける切刃の個数は任意とすることができる。円滑な切削を行うには複数の切刃を等角度間隔で配置することが望ましいが、切刃自体の形成を容易とする点を考慮すると、3枚刃あるいは5枚刃が適当である。
【0012】
また、本発明の座金部が備える工具掛け部は電動工具の取り付け治具と係合する構成であり、座金部の上面部分に形成する窪み、あるいは座金部の外周端において上面と下面とを連通する切り欠きや孔である。切り欠きや孔の上面と下面の開口部は取り付け治具が備える係合部を挿通し突出させることができる大きさとすることがある。取り付け冶具の係合部先端を切刃(鑿)に形成したときは、この切刃を下面の開口部から突出させる構成とする。電動工具は座金部の窪み、切り欠き、孔に取り付け治具の係合部をはめ込むことによって回転力を座金付きナットに伝える。
【0013】
本発明の座金付きナットは、取り付け治具によって回動させてボルトとの締結を行うことができる。この取り付け治具は、一端に駆動源である電動工具と係合する第1の係合部を備え、他端に座金の上面に形成された凹部と係合する突出した第2の係合部を備え、電動工具の回転力を座金つきナットに伝達する。取り付け治具は、電動工具の先端に取り付けるソケットの形態になることが多い。
本発明の座金付きナットは、座金部の少なくとも上面の周縁部に分散させて設けた工具掛け部に取り付け治具を係合させることによって回動されるので、従来の座付きナットのように座金部の中央に深く大きな六角状凹部がなく、座金部を平板状に、かつ、厚さを薄くすることができる。
【0014】
以上、座付きナットに関して説明したが、座金部に関する技術的思想はそのまま座付きボルトに適用することができる。座付きボルトは、座金部とボルト部からなり、座金部は周縁部に分散させた工具掛け部など、前記の座金付きナットの場合と同じ構成を備え、同じ作用効果を発揮する。ボルト部は通常の頭付きボルトのネジ部に相当する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の座金付きナット、取り付け治具及び座付きボルトを図を用いて説明する。
はじめに、本発明の座金付きナットの第1の形態について、図1の座金付きナット10の斜視図、図2の座金付きナット10の平面図及び断面図、図3の取り付け治具の斜視図、図4の取り付け状態を説明するための斜視図を用いて説明する。なお、図1(b)は図1(a)の座金付きナット10の上下を反転させた状態を示し、ナット部は一部省略している。また、図2(b)は座金付きナット10の断面図であり、図2(a)は座金付きナット10を上方(矢印Aの方向)から見た平面図であり、図2(c)は座金つきナット10を下方(矢印Bの方向)から見た平面図である。
図1,2において、第1の形態の座金付きナット10は座金部11とナット部17とを備え、ナット部17は座金部11の下面13の径方向の中心位置から下方に向かって設けられる。
【0016】
座金部11は、平面状の上面14と下面13とを備える平板円形の形状であり、上面14と下面13で挟まれる軸方向の厚さは径方向において外周側及び内周側で等しい厚さである。上面14の周縁部には、電動工具の取り付け冶具と係合する工具掛け部15(凹部)が分散して設けられる。
工具掛け部15は、上面14に形成した窪みとすることも、あるいは上面14から下面13に貫通する孔とすることもでき、取り付け冶具が備える突出部の位置に対応して形成される。したがって、上面14は突出部がなく平面状に形成される。
【0017】
下面13には、図示しない被取り付け材を切削して座金付きナット10の環状の座金部11を埋入する空隙を形成するための複数の切刃12a,12b,12cを備える。座金付きナット10において、切刃12a,12b,12cは、座金部11の下面13の厚さが周方向に沿って連続的に変化する斜面(この場合は曲面による斜面)により形成する。また、切刃12a,12b,12cの刃部は、座金の回動方向と反対側に湾曲した曲線を形成している。該曲線の形状は、切削くずの外周方向への排出と、内周方向への圧迫とを行うよう形成される。図示する切刃の曲線の形状は、刃部の外周端の端部を結ぶ円弧の一部で形成している。
ナット部17は、座金部11の径方向の中心位置から下方に延びる円筒体であり、内部には軸方向にボルトを挿通するための孔18が形成され、該孔18の内面には図示しないボルトと螺合するねじ19が切られている。このボルト挿通用孔18は、座金部11を貫いて形成され、軸方向に貫通している。
なお、図1から図3では、それぞれ3個ずつ切刃12及び凹部15を配置する構成を示しているが、任意の個数を設けることができる。
【0018】
座金付きナット10の取り付けは、図3に示す取り付け治具90aによって行う。取り付け治具90aは、図示しない電動工具ヘ取り付けるための挿入孔92と、座金付きナット10と係合するための突出部91とを備えるソケットにより構成することができ、電動工具の回転力を座金付きナット10に伝えることによって、座金付きナット10とボルト(図示していない)との締結を行う。
座金付きナット10の寸法は限定されず、アンカーボルトの太さ等に応じて適宜定めることができる。座金付きナット10の寸法は第1の寸法例としては、例えば、座金部11の外径D1を45mm、ナット部17の内径D2を12mm、外径D3を16mm、ネジ部の高さ及びネジ山の高さを0.5mm及び1.5mm、工具掛け部15の外径D4を3.5mmとし、座金付きナット10の軸方向長さL1を37mm、座金部11の厚さL2を4.5mm、ナット部17の長さL3を32.5mm、座金部11の最も薄い部分の厚さL4を2.5mm、切刃12の高さL5を2mmとすることができる。また、切刃12の曲線の半径を60mmとし、工具掛け部15の中心と座金の中心との距離を15mmとする。
【0019】
また、座金付きナット10は第2の寸法例として、座金の座金部の外径D1を57mm、ナット部17の内径D2を16mm、外径D3を21.4mm、ネジ部の高さ及びネジ山の高さを1.2mm及び1.5mm、座金付きナット10の軸方向長さL1を37mm、座金部11の厚さL2を6mm、ナット部17の長さL3を31mmとすることができる。また、切刃12の曲線の半径を60mmあるいは86mmとし、工具掛け部15の中心と座金の中心との距離を15mmとする。
【0020】
次に、図4を用いて、座金付きナット10の取り付け状態を説明する。布基礎1にあらかじめアンカーボルト4を埋設しておき、布基礎1上に土台2を載置する。土台2には、アンカーボルト用の貫通孔3を形成しておく。該貫通孔3の径は、座金付きナット10のナット部17を挿入することができる程度の大きさとする。座金付きナット10のナット部17を土台2の上面の貫通孔3の開口部から挿入し、アンカーボルト4のねじ部5と螺合させる。ナット部17の螺合には、取り付け治具90aを取り付けた電動工具を用いることができる。
座金付きナット10の上面14の工具掛け部15に取り付け治具90aの突出部91を挿入して回動させ、ナット部17をアンカーボルト4のねじ部5に螺合させると、下面13に設けた切刃12が土台2の貫通孔3の上端部を切削し、座金部11を埋入する空隙を形成する。さらに、座金付きナット10を回動させると、座金部11の下面13は切削した切り屑を土台2との間で圧迫し、ネジ止めする。この座金の取り付けでは、あらかじめ土台に座掘りを行う必要がない。
【0021】
座金付きナット10の上面14が土台2の表面に達すると、座金付きナット10は土台2内に埋設され、座金部やナット部は土台2の表面から突出しない。 座金付きナット10の回動は、取り付け治具90aの突出部91と座金付きナット10の工具掛け部15との係合によって行うため、アンカーボルト4が所定位置よりも上方にある場合であっても、アンカーボルト4は座金付きナット10の取り付けに支障をきたさない。
【0022】
次に、本発明の座金付きナット20の第2の形態について、図5の座金付きナット20の斜視図、図6の座金付きナット20の平面図及び断面図、図7の取り付け治具の斜視図を用いて説明する。なお、図5(b)は図5(a)の座金付きナット20の上下を反転させた状態を示しており、ナット部の一部は省略している。また、図6(b)は座金付きナット20の断面図であり、図6(a)は座金付きナット20を上方(矢印Aの方向)から見た平面図であり、図6(c)は座金付きナット20を下方(矢印Bの方向)から見た平面図である。
【0023】
本発明の座金付きナット20の第2の形態は第1の形態とほぼ同様の構成とし、取り付け治具と係合する工具掛け部25を、座金部の外周端において上面と下面とを連通する切り欠きにより形成するものである。
そこで、以下では、第1の形態と共通する構成については説明を省略し、主に取り付け治具と係合する部分の構成について説明する。
【0024】
図5,6において、第2の形態の座金付きナット20は座金部21とナット部27とを備え、それぞれ第1の形態と同様の構成とする。第2の形態の座金付きナット20は、工具掛け部(凹部)15に代えて工具掛け部25(切り欠き部25a,25b,25c)を備える。切り欠き部25a,25b,25cは、座金部20の外周端において上面24と下面23とを連通して形成される。
座金付きナット20の取り付けは、図7に示す取り付け治具90bによって行う。取り付け治具90bは、図示しない電動工具を取り付けるための挿入孔92と、座金付きナット20と係合するための突出部93とを備えるソケットにより構成することができ、電動工具の回転力を座金付きナット20に伝えることによって、座金付きナット20とボルト(図示していない)との締結を行う。
【0025】
取り付け治具90bの突出部93は、取り付け治具90bと座金付きナット20との係合を行う他に、土台等の被取り付け材(図示していない)に座金付きナット20の外周端の輪郭を切削する。輪郭を切削するために、突出部93は先端部分に鑿部を備える。取り付け治具90bの突出部93を座金付きナット20の工具掛け部25に位置合わせした後に挿入することによって、突出部93は座金付きナット20の工具掛け部25と係合すると共に、その先端部を工具掛け部25から取り付け材側に突出させる。
【0026】
座金付きナット20のナット部27を土台2の上面の貫通孔3の開口部から挿入し、アンカーボルト4のねじ部5と螺合させる。座金付きナット20の上面24の工具掛け部25に取り付け治具90bの突出部93を挿入し、鑿部を取り付け材側の土台2に当接させて回動させ、ナット部27をアンカーボルト4のねじ部5に螺合させる。鑿部は土台2の表面のかえりやまくれ等の原因となる凹凸部分を切断してバリを解消すると共に、下面23に設けた切刃22が土台2の貫通孔3の上端部を切削し、座金部21を埋入する空隙を形成する。さらに、座金付きナット20を回動させると、座金部21の下面23は切削した切り屑を土台2との間で圧迫し、ネジ止めする。第2の形態においても、座金付きナット20の上面24が土台2の表面に達すると、座金付きナット20は土台2内に埋設され、土台の表面には、座金部21やナット部27は突出しない。
【0027】
なお、図5から図7では、3個の切り欠きによる工具掛け部25を配置する構成を示しているが、任意の個数を設けることができる。また、切り欠き寸法の第1の例では、幅L6を4mm、奥行きL7を2.5mmとし、第2の寸法例では、幅L6を5mm、奥行きL7を3.2mmとすることができる。
【0028】
次に、本発明の座金付きナットの第3,4の形態について、図8の座金付きナット30の斜視図、図9の座金付きナット40の平面図及び断面図を用いて説明する。なお、図8(a),(b)は第3の形態を示し、図8(c),(d)は第4の形態を示し、図8(b),(d)の座金つきナット30、40は上下を反転させた状態を示しており、ナット部37,47の一部は省略している。また、図9(b)は座金付きナット40の断面図であり、図9(a)は座金付きナット40を上方(矢印Aの方向)から見た平面図であり、図9(c)は座金付きナット40を下方(矢印Bの方向)から見た平面図である。
本発明の座金つきナットの第3,4の形態は、第1の形態及び第2の形態とほぼ同様の構成とし、切刃を異なる形状とするものである。そこで、以下では、第1,2の形態と共通する構成については説明を省略し、主に切刃の構成について説明する。
【0029】
図8において、第3,4の形態の座金30,40は座金部31,41とナット部37,47とを備え、それぞれ切刃32,42の形状を除いて第1の形態及び第2の形態と同様の構成とする。
第3,4の形態の座金30,40は、断面を略三角形とする切刃32a,32b,32c、及び42a,42b,42cを備える。各切刃32,42は、座金の回動方向と反対側に湾曲した曲線を形成し、該曲線の形状は、切削くずの外周方向への排出と、内周方向への圧迫とを行うよう形成される。図9に図示する切刃の曲線の形状は、刃部の外周端の端部を結ぶ円弧の一部で形成している。
【0030】
図9において、切刃42の高さL8は前記した第1の寸法例では1.5mmとし、第2の寸法例では1.9mmとすることができる。
なお、図8,9では、それぞれ3個ずつ切刃32,42を配置する構成を示しているが、任意の個数を設けることができる。
【0031】
次に、本発明の座金付きナットの第5,6の形態について、図10の座金付きナット50、60の斜視図を用いて説明する。なお、図10(a),(b)は第5の形態を示し、図10(c),(d)は第6の形態を示し、図10(b),(d)の座金付きナット50,60は上下を反転させた状態を示しており、ナット部の一部は省略している。
本発明の座金付きナットの第5,6の形態は、第1,2の形態及び第3,4の形態とほぼ同様の構成とし、座金の外周端に鑿部56,66を備えるものである。なお、図10では第3,4の形態に鑿部56,66を設けた構成を示している。以下では、第1,2,3,4の形態と共通する構成については説明を省略し、主に鑿部の構成について説明する。
【0032】
図10において、第5,6の形態の座金50,60は座金部51,61とナット部57,57とを備え、それぞれ鑿部56,66を除いて第1,2(第3,4)の形態と同様の構成を備える。
鑿部56,66は、座金の外周端において下方に向う刃部を備え、前記した第2の形態において取り付け治具90bに設けた鑿部93と同様の作用を行って、土台2の表面のかえりやまくれとなる部分をあらかじめ切断して座金部34,44が座掘りを行う際のバリを解消する。
【0033】
次に、本発明の座金の第7の形態について、図11の座金付きナット70の斜視図を用いて説明する。本発明の座金の第7の形態は、第1〜第4の形態とほぼ同様の構成とし、切刃を取り付け治具90cに取り付ける構成とするものである。以下では、第1〜第4の形態と共通する構成については説明を省略し、切刃の構成について説明する。
図11において、第7の形態の座金付きナット70は座金部71とナット部77とを備え、切刃を除いて第3,4の形態と同様の構成を備える。切刃94は取り付け治具90c側に備え、座金部71には取り付け治具90cの切刃94に対応する位置に、該切刃94を通す工具掛け部75(開口部75a,75b,75c)が形成される。
【0034】
取り付け治具90cを座金部71に当接させて、開口部である工具掛け部75内に切刃94を通すことによって、取り付け治具90cと座金付きナット70とを係合すると共に、開口部から切刃94を土台側に突出させる。
取り付け治具90cを回動させ、ナット部77をアンカーボルト4のねじ部5に螺合させると、下面73から突出した切刃94が土台2の貫通孔3の上端部を切削し、座金部71を埋入する空隙を形成する。さらに、座金付きナット70を回動させると、座金部71の下面73は切削した切り屑を土台2との間で圧迫し、ネジ止めする。座金付きナット70とアンカーボルト4とを締結した後、取り付け治具90cを後退させることによって、取り付け治具90cの切刃94を工具掛け部75から抜き取ることができる。
【0035】
図13,14は、座付きボルト110に関する(第8の実施形態)。座付きボルト110は、座金部111とボルト部112とからなり、一体に成形されている。座金部111は、前記の座金付きナット20(第2の実施形態)における座金部21と同様の構造を備え、平面状の上面と下面とを備える平板円形の形状であり、上面と下面で挟まれる軸方向の厚さは径方向において外周側及び内周側で等しい。そして、座金部111の周縁部に工具掛け部113としての切り欠きを等間隔に備えている。
【0036】
座金部111の下面は切刃114に構成されている。この切刃114は刃縁が直線で放射状に配置されており(図13)、座金部11の下面13の厚さが周方向に沿って連続的に変化する斜面(この場合は平面による斜面)により形成されている。
ボルトであることにより使用の形態は多少異なるが、被取り付け材に貫通させて設けたボルト挿通孔にボルト部112を差込み、反対側に準備したナットを螺合させ後、座金部111を取り付け冶具を介して電動工具で回動すると、ボルト部112の先端部がナットと螺合を進めると同時に座掘りが行われる。座掘りの当初、切削くずが外部に排出されるが、座金部111の外周縁が被取り付け材の表面に達すると、以後、切削くずは内部で圧迫されクッションとなる。そして、座金部111の全体が自ら掘った座掘りに埋まるころ、座金部111を回動するためのトルクが電動工具の許容限度に達して回転がとまる。
【0037】
このように、座金を用いたと同じ効果を発揮するボルトでありながら、座金のためにあらかじめ座掘りを施しておく必要がなく、ボルトに関しても現場での作業能率が向上する。
この実施形態では、座金部111における切刃114の刃縁が直線であり、また、連続する斜面が平面であることにより製作が容易である。
なお、第2の実施形態における座金部の形態を持つものについて、ボルトの場合を説明したが、座金付きボルトに関して座金部の態様は他の実施形態のものを採用することも可能である。
【0038】
【発明の効果】
請求項1に記載の構成によれば、座掘りを要することなくアンカーボルトの締結を行うことができ、また、アンカーボルトの先端が所定位置より上方に設置された場合においても、ナットの締め付けが可能である。
請求項2に記載の構成によれば、座掘りを要することなく座付きボルトを利用することができ、現場での作業能率が向上する。
請求項3〜5に記載の構成によれば、座金の回動と同時に被取り付け材側に座金を埋入する空隙を形成することができ、また、切刃による切削で生じた切削くずを圧迫して座金を回動させることによって、過剰な切削を防止すると共に、クッション性を有したネジ止めの効果を奏することができる。
【0039】
請求項6、7に記載の構成によれば、切り欠きまたは開口部とした工具掛け部に取り付け治具側の突出部分をはめ込み、あるいは挿入させることによって係合し、取り付け治具を介して駆動源の回転力を座金に伝えることができ、座金部の中央に大きく深い六角状凹部を設ける必要が無いので、座金部の厚さを小さくすることができる。
請求項8、10に記載の構成によれば、鑿部によって座金の外周端の輪郭を切削し、この切り込みによって、被取り付け材を切削する際に生じるかえりやまくれ等のバリを解消することができ、座付きナットあるいは座付きボルトによる締結個所の外観がよくなる。
請求項9に記載の構成によれば、従来のような六角レンチが不要であり、座金を平板状とし厚さを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の座金の第1の形態を説明するための斜視図である。
【図2】本発明の座金の第1の形態を説明するための平面図及び断面図である。
【図3】本発明の取り付け治具の第1の形態を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の座金の第1の形態の取り付け状態を説明するための斜視図である。
【図5】本発明の座金の第2の形態を説明するための斜視図である。
【図6】本発明の座金の第2の形態を説明するための平面図及び断面図である。
【図7】本発明の取り付け治具の第2の形態を説明するための斜視図である。
【図8】本発明の座金の第3,4の形態を説明するための斜視図である。
【図9】本発明の座金の第3,4の形態を説明するための平面図及び断面図である。
【図10】本発明の座金の第5,6の形態を説明するための斜視図である。
【図11】本発明の座金の第7の形態を説明するための斜視図である。
【図12】従来のナット一体型埋め込み座金を説明するための正面図、及び断面図である。
【図13】座金付きボルト(第8の実施形態)の平面図(a)と正面図(b)である。
【図14】座金付きボルト(第8の実施形態)の斜視図である。
【符号の説明】
1 布基礎
2 土台
3 孔
4 アンカーボルト
5 ねじ
10,20,30,40,50,60,70 座金付きナット
11,21,31,41,71,101,111 座金部
12,22,32,42,72,94,102,114 切刃
13,23,33,43,73,103 下面
14,24,34,44,74,104 上面
15,35 工具掛け部(凹部)
17,27,37,47,77,107 ナット部
18,28,38,48,78,108 ボルト挿通孔
19,29,39,49,79,109 ねじ
25,45,113 工具掛け部(切り欠き)
56,66,93 鑿部
75 工具掛け部(開口部)
90,90a,90b,90c 取り付け治具
91 突出部
92 挿入孔
100 座金付ナット
101 座金部
105 六角形状凹部
110 座金付きボルト
112 ボルト部

Claims (2)

  1. 座金部とナット部を備え、座金部は平面状の上面と下面とを備える平板円形形状で、下面に被取り付け材を切削して座金の環状部分を埋入する空隙を形成する複数の切刃を備え、上面と下面で挟まれる軸方向の厚さは径方向において外周側及び内周側で等しい厚さとし、取り付け治具との工具掛け部を座金部の周縁部に分散して備えており、ナット部は前記座金部の下面の径方向の中央部分から下方に向かって軸方向に延び、軸方向に座金部を貫通すると共に内部にねじ溝が切られたボルト挿通用の孔を有していることを特徴とした座金付きナット。
  2. 座金部とボルト部を備え、座金部は平面状の上面と下面とを備える平板円形形状で、下面に被取り付け材を切削して座金の環状部分を埋入する空隙を形成する複数の切刃を備え、上面と下面で挟まれる軸方向の厚さは径方向において外周側及び内周側で等しい厚さとし、取り付け治具との工具掛け部を座金部の周縁部に分散して備えており、ボルト部は前記座金部の下面の径方向の中央部分から下方に向かって軸方向に延びていることを特徴とした座金付きボルト。
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