JP3856834B2 - 無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法 Download PDFInfo
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Description
技術分野
本発明は、耐熱性、剛性及び耐衝撃性に優れ、例えば自動車、家電部品、建築資材、工業資材等の分野に好適に用いられる樹脂組成物に関するものである。
背景技術
様々な分野において、高い機械的強度を有する樹脂組成物が必要とされている。そこで、樹脂に無機質フィラーを充填材として分散させることにより、剛性、耐熱、耐衝撃性を改善することが行われている。特に、高分子材料にフィラーをナノレベルで分散させることにより機械的特性並びに耐熱性を向上させる試みが多くなされている。
例えば、層状粘土鉱物の層間に、高分子材料の元のモノマーをインターカレーション(挿入)させ、その後、そのモノマーを重合させた際のエネルギーを利用して、層状粘土鉱物をナノレベルに分散する方法が提案されている(例えば、特開平2−102261号公報、特開平2−5856号公報等)。また、予め層状粘土鉱物を有機カチオンで膨潤しておき、さらに有機溶媒で無限膨潤させて層状粘土鉱物がカードハウス状になったところで、これをポリマー融液と接触させて層状粘土鉱物をナノレベルで分散させる方法が試みられている(特開平7−70357号公報)。
しかしながら、上記のうち前者の重合による方法では、フィラーが効率よく分散されるものの、重合のための設備が必要で、生産コストが高くなり、経済的とは言えない。またその反応も現在の処、ポリアミド、芳香族ポリエステル等で採用されている縮重合系、あるいは熱硬化の様な反応性モノマーを層間に入れてこれを重合させるようなラジカル重合、あるいはカチオン重合等に限られている。
また層間に挿入されるモノマーは安定して層間内に存在しているものでなければならないため、常圧では気体であるものは好ましくなく、液状モノマーに限られている。
したがって、オングストロームレベルのフィラーを分散した樹脂組成物を得るには限られた樹脂材料でかつ低濃度のフィラーしか得られない欠点があった。
その結果、例えば、ポリオレフィンで使われるアニオン系配位重合を利用することができない。すなわち、層状粘土鉱物の層間に、アミノ酸のような活性水素が多量に存在すると、それが、チタン/有機アルミニウムアニオン配位触媒には触媒毒として作用してしまうからである。
また、この重合による方法において、層間にポリアミドのモノマーを挿入した場合、層状鉱物にアミノ基が反応するため、重合後のポリアミドは末端基がカルボン酸となる。そのため、末端基の反応性が封止され、染色性、接着性の低下が著しい。また、他樹脂とのポリマーアロイ化を行う場合、相溶化剤を加えたとしても界面の接着性が悪く、また、その結果として分散相は脱混合しやすく、その機能が発揮しにくいという問題がある。その改善策として、多価アミンの添加を後から行うことにより、ポリアミドの末端基と反応させる方法が提案されている(特開昭63−230766号公報)。
しかし、希薄溶液中で反応を行うことができないことから均一な反応を得ることは困難であり、また分子間架橋を招き易く、流動性、成形性の低下を生じ易いなどの不都合がある。同様に、ポリエステルの場合には、層状粘土鉱物にモノマーの2価アルコールが配位し、高分子化する際に末端にカルボン酸が多くなってしまう。したがって、ポリカーボネート、ABS、PBT等とポリマーアロイ化する場合、相溶化剤を多めに添加しても、界面の接着性が悪く、またその結果として脱結合し易く、その性能が発揮しにくいという問題がある。
また、後者の有機溶媒を用いる方法は、該公報中にも示されているように、層状粘土鉱物に多量の溶媒を使用せざるを得ない。さらに、ポリマーによっては有機溶媒との溶解度がきわめて悪く、無限膨潤化した層状鉱物をポリマー中に固溶することができないものがある。このようなものは、樹脂が溶融していても該溶媒との親和性が極めて低い。その結果、有機カチオン処理して予め調製した無限膨潤層状鉱物が上記融液状態ポリマーとの接触させても分散、親和しにくく完全な分散には至らない。
また層状鉱物に有機カチオンを接触して得られた層間化合物を有機溶媒によって無限膨潤化した状態であっても、溶融樹脂との接触工程において押出機中の熱によって有機溶媒が一部揮発するため、無限膨潤状態から膨潤状態へと元に戻る傾向が見られる。そのため、実際のところは、層間距離が縮まる過程での融液ポリマーとの接触になってしまい、完全な分散を得ることが困難である。
ここで、樹脂に非晶性樹脂を用い、この樹脂と親和性の高い有機溶媒と組合せた場合であれば、前述の製造法も不完全ながら分散は出来るものの、樹脂に結晶材料を用いた場合では良好な分散を得ることは極めて困難である。そのため、押出機の装置を工夫して、押出機のスクリュー長さ(L)とスクリュー径(D)の比(L/D)で45以上のものを採用して接触時間を長くすることにより、またはバンバリーミキサーの様なバッチ式の混練り装置を用いることにより対処しているが、溶媒の除去の困難さから押出しによる生産量の低下が著しく、経済性の面から劣っている。
発明の開示
本発明は、樹脂組成物中に直接、無機質フィラーをナノレベルで微細に分散させて、剛性、耐熱性、耐衝撃性に優れた無機質フィラー含有樹脂組成物を製造するための方法を提供することを目的としている。
本発明は、層面内荷電当たり相当面積が40〜150Å2/chargeである層状鉱物に、立体障害構造を有する有機カチオンを接触させ、その後、溶解度パラメーターが9.5[cal/cm3]1/2以上である熱可塑性樹脂と接触させて、層状鉱物を該樹脂中に分子レベルで分散させることを特徴とする無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
また本発明は、樹脂中に分散した層状鉱物が下記(a)及び(b)の性状を有するものである無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法をも提供する。
(a)厚み:9〜80Å
(b)アスペクト比300以上のものが少なくとも30重量%
また本発明は、層状鉱物の底面間距離d(001)が7〜13Åである無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法をも提供する。
また本発明は、有機カチオンがアザビシクロ環化合物の塩またはその誘導体である無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法をも提供する。
また本発明は、有機カチオンとして、鎖状アミン化合物のトリまたはテトラアルキルアンモニウム塩を併用する無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法をも提供する。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明を詳説する。
本発明の無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法は、層状鉱物に特定の有機カチオンを接触させて層内に有機カチオンを挿入して、層間距離を広げて膨潤化し、これと特定の熱可塑性樹脂と混練をし、溶融ポリマーと接触分散を行うものである。
本発明の方法は、従来の方法と比較して以下のような利点がある。
第1に、本発明の無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法においては、重合法において必要な、末端基が封止される対策が不要である。
更に、今まではポリマーに直接層状鉱物を分散させるためには、有機溶媒を必要としていたが、本発明の方法では、溶媒を必要としないために、有機溶媒を作用させるためのプロセスが不要となる。
本発明の無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法では、まず層状鉱物に、立体障害構造を有する有機カチオンを添加して層間化合物を生成する。
本発明で用いる層状鉱物は、粘土鉱物を主とするもので、例えば膨潤性粘土化合物、燐酸ジルコニウム等が挙げられる。
また、本発明における層状鉱物の例としては、以下の示性式を満たすものが用いられる。
Mn+ (x+y+z)/n{(Me1 +Me2 +2Me3 +3)z-3 (6-x)+(OH2-zOz)(Si4-yAly)O10}(x+y+z)
(x+y+z);シリケートの層荷電
Mは層間の交換性金属イオンであってアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンからなる群から選ばれる少なくとも1個のカチオンである。例えば、Li、Na、K、Be、Mg、Ca等が挙げられる。
Me1 +、Me2 +2、Me3 +3は、それぞれ単独あるいはMe1とMe2、Me3の複数の組み合わせからなるもので、スメクタイトあるいはマイカ構造内に形成される八面体に入るカチオンであって、Me1はLi、Na、K、Me2はMg、Fe、Mn、Ni、Zn、またMe3はAl、Fe、Mn、Crの中からなる。
層状鉱物としては、バーミキュライト、膨潤性マイカ、スメクタイト鉱物等が挙げられる。
また、モンモリオナイトやバーミキュライト等は以下の示性式で表される。
Nax(A2-XMgX)(Si4O10)(OH)2
具体的には、例えばクニミネ工業(株)製の合成品は、一般に示性式
Na0.83Mg3[Si3.575Al0.415)O10](OH)2
で表される。
またフッ素系膨潤性マイカの例としては、トピー工業のテトラシリシックマイカが挙げられ、その示性式は、
NaMg2.5(Si4O10)F2
となる。
ナトリウムテニオライトの例としては、示性式で
NaMg2Li(Si4O10)F2
等が挙げられる。
本発明においては、上記層状鉱物は、その層面内荷電当たり相当面積(以下「Ae」という)が、40〜150Å2/Chargeの範囲である必要があり、好ましくは、40〜80Å2/Charge、より好ましくは、40〜60Å2/Chargeである。
Aeが150Å2/Chargeを越えると、有機カチオンが密なる配座環境の実現が難しく、層同士の隣接する荷電で引き合うファンデルワールスカの影響を無視できなくなり、多量の有機カチオンが存在しないと分散が悪く機械的強度に劣る。一方Aeが40Å2/Chargeを下回ると、前述の示性式の結晶は存在しない。
なお、層状鉱物のAeは、カラム浸透法(「粘土ハンドブック」第二版、日本粘土学会編、第576〜577頁、技報堂出版)でカチオン交換容量(CEC)を測定し、さらに透過型電子顕微鏡を用いて電子線回折による構造解析、及び粉末X線解析のリーベルト法による構造解析の結果から格子定数を決定し、これらの結果に基づいて次式のように単位格子当たりにある層間イオンの電荷の逆数として算出される。
Ae=d(100)×d(010)/2(x+y+z)
また本発明で用いられる層状鉱物は、有機カチオンと接触する前の底面間距離d(001)がX線回折で7〜13Åであるものが好ましく、スメクタイト構造を有するものが挙げられ、例えばバーミキュライト、モンモリオナイト、バイデライト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、サポナイト、鉄サポナイトの他、膨潤性マイカとしてテトラシリシックマイカ、テニオライト等が挙げられる。
従来、一般に、上記範囲のAeの層状鉱物に有機カチオンを作用させると、有機カチオン量が少ない場合は、層間内では、(X+Y+Z)の荷電量が高いほど、有機カチオン量が少なくても層間距離が開くことが、G.Lagaly and A.Weiss“Determination of the Layer Charge in Mica-type”International Clay Conference,Page 61〜80,1969に記載されている。
そして有機カチオン量が少ない場合には、その層間内での分子配座は層に平行に一分子連続して配座することになるが、有機カチオンの量が増すと、層間内に柱状にある角度を有して2配座するようになる。更に有機カチオンの添加量が増えると、添加された有機カチオンが層状鉱物に対してある角度をもって配座するときに、2層あるいは単層で有機カチオンが配座している層間を押し広げることになる。
このように、層状鉱物としてマイカのごとく荷電量の大きな層状鉱物を用いた場合でも、層間距離を開けるためには、有機カチオン、例えば直鎖の脂肪族系アルキルアンモニウム塩が、一定量以上必要である。すなわち有機カチオンの添加量を増加させて、層間距離を大きく開く工程が不可欠であった。ところが有機カチオンの添加量を増加させると、ポリマー中に添加した有機カチオンが多く残存し、耐熱変形温度の低下を招き、満足した性能を発現できないという問題があった。
また、前記したごとく、有機カチオンを層状鉱物に接触させて調製した層間化合物の層間距離を広げて融液ポリマーに分散するためには、有機溶媒で無限膨潤化することが必要であった。
上記のような従来法での欠点を改良する為に、本発明の製造方法では、有機溶媒を用いないで、層状鉱物をポリマー融液と直接接触分散させるが、ここで層状鉱物の層が開き易いような環境を得るために、本発明の方法においては、上述のごとく層面内荷電当たり相当面積が特定の範囲の層状鉱物を使用することに加えて、層間距離を広げるために、層状鉱物に立体障害構造を有する有機カチオンを選定することにより、有機カチオンが少量でも有効に層間距離を広げるものである。
有機カチオンが立体障害構造を有するとは、有機カチオンの構造が幾何学的にある方向からのみ層状鉱物と配位するような機能を有しているという意味である。特に有機カチオンが、層状鉱物の層に対して、層の底面間に垂直に配座するものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩の正電荷化合物であって、ケージ状の分子構造を有するものが好ましく用いられる。その他に層間内に柱状に配座するものとして、両端にアミノ基が存在する脂肪族アンモニウム塩あるいは末端に水酸基を有するアミノアルコール誘導体が挙げられる。
本発明者らは、このように層間距離を広げる際に、立体的に配座しかつその量が少量で有効に作用する有機カチオンとして、ケージ状の構造を持つ、アザビシクロ化合物の塩及びまたはその誘導体を用いることにより、あるいはこのアザビシクロ化合物の塩またはその誘導体と、鎖状アミン化合物のトリまたはテトラアルキルアンモニウム塩とを併用することにより、少量でも、効果的に層間を広げることができることに成功した。
本発明において、有機カチオンとして好ましく用いられるアザビシクロ化合物としては、アザビシクロ[2,2,2]オクタン、アザビシクロ[2,1,2]ヘプタン、アザビシクロ[3,2,1]オクタン、アザビシクロ[3,2,2]ノナン、アザビシクロ[3,3,2]デカン、アザビシクロ[3,3,1]ノナン等が挙げられるが、特に経済性の点から、あるいは合成経路が短く合成が容易である点から、アザビシクロ[2,2,2]オクタンが好ましい。
特にアザビシクロ化合物を有機カチオンとして単独で用いるには、4−アルキルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩、あるいは4−アルキルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩が好ましく、4の位置のアルキル基としては、炭素数が4〜30の範囲の脂肪族であることが好ましい。
具体的には、例えば4−ドコシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−アイサコシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−オクタデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−テトラデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−ヘキサデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−ドデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−デシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−オクチルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−ヘキシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−ブチルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩等が挙げられる。
または、上記有機カチオンとしては、アルキルベンゼンであってそのアルキル基が、上記のものと同じ炭素数4〜30の脂肪族を有するものも好ましく用いることができる。例えば、4−[p−ドコシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−アイサコシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−オクタデシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−ヘキサデシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−テトラデシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−ドデシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−デシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−オクチルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−ヘキシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−ブチルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩等がある。又同様に上記の中で4−[m−アルキルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩も含まれる。
また塩酸塩の代わりにハロゲン化アルキル化合物、例えばメチルブロミドを作用させて生成する4−アルキルベンゼンアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムブロミドでもよい。
上記の他に4−アルキルアザビシクロ塩酸塩あるいは代わりにアルキルハライドで4級化した4−アルキルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−アルキルアンモニウムハライドでもよい。
例えば4−ドコシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−[アイサコシル]アザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−オクタデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−ヘキサデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−テトラデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−ドデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−デシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−オクチルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−ヘキシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−ブチルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
また先に説明したようなアザビシクロ環化合物では窒素原子から一番遠い位置にアルキル基、アルコキシ基、p−アルキルフェノキシ基、アルキルベンゼン基等の置換基を有していてもよい。
両末端にアミノ基が存在する脂肪族アンモニウム塩の例としては次の示性式で示される化合物が挙げられる。
(式中、nは4以上、R1〜R6はすべてH、あるいはR1〜R3がアルキル基を有するものであってもよい。Xはハロゲン原子である。)
末端に水酸基を有するアミノアルコール誘導体の例としては、
HO−(CH2)n−+NH3X-
などの示性式で表されるもので、nは2以上であり、Rは炭素数1〜25のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。
さらにアザビシクロ環化合物と併用する場合の直鎖脂肪族テトラアルキルアンモニウムハライドとしては少なくとも1つ以上のアルキル基が炭素数で4以上30以下の構造を持つことが必要である。
例えばブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルアンモニウムクロライド、オクタデシルアンモニウムクロライド、アイコシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。また直鎖に拘らずイソアルキル、ターシャリーアルキル基、並びに一番長いアルキル基が2及びまたは3置換であってもよい。
前記有機カチオンとして、アザビシクロ環化合物を単独で使用する時は、0.1〜150meq/100gの範囲で使用することが好ましく、5〜80meq/100gの範囲がより好ましいが、最適の範囲としては15〜50meq/100gがよい。
また従来からよく用いられる直鎖脂肪族アルキルアンモニウムハライドとケージ状アルキルアンモニウムハライドを併用する場合、その使用総和量は0.5〜80meq/100gの範囲が好ましいが、ケージ状アルキルアンモニウムハライドの添加量を0.1〜40meq/100gにすることが出来るので、経済的である。
本発明の樹脂組成物のベースとなる熱可塑性樹脂としては、結晶性でも非晶性であってもよい。
用いる熱可塑性樹脂の溶解度パラメーターは9.5[cal/cm3]1/2以上であることが必要であり、好ましくは11.5[cal/cm3]1/2以上、より好ましくは12.5[cal/cm3]1/2以上である。溶解度パラメーターを高くすることにより、有機カチオンを接触させて膨潤した層間化合物にポリマーが化学的に親和し、層間化合物の底面間距離を広げる場を大きくする役割を有し、フィラーとしての層間化合物を一層ずつ分散する環境を作り出すことができる。
溶解度パラメーター(SP値)は、凝集エネルギー密度、すなわち1分子の単位体積当たりの蒸発エネルギーを1/2乗したもので、単位体積当たりの極性の大きさを示す数値である。高分子の場合には揮発しないため、一般に次式に示すSmallの式を用いて計算される。
SP値=dΣFi/M
ここで、M:ポリマーの単位分子量
d:密度
Fi:原子団、基に固有の定数
Smallの方法については、P.A.Small,J.Appl.Cham.,3,71(1953)あるいは「ポリマーブレンド」p.127-129(1981年、株式会社シーエムシー発行)に詳細な記載がある。
熱可塑性樹脂としては、例えば結晶性樹脂として、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド(PA)6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、脂肪族ポリアミドイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミド6、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル(PPS)、ポリオキシメチレン(POM)等を用いることができる。また非晶性樹脂としては、例えばアクリロニトリルスチレン(AS)共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)共重合体、ポリ塩化ビニル(硬質PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメタメチルアクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリジメチルフェニレンオキシド(PPO)等を用いることができる。また上記樹脂同士を組み合わせたポリマーアロイ、例えば、PC/PBT、PC/PA、PC/ABS、PC/PET、PPO/PBT、PPO/PA、PPO/PPS、PBT/ABS、PBT/PET、PA/ABS、PPS/PA等も用いることができる。
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物は、層状鉱物が樹脂中に分子レベルで分散している必要がある。
本発明でいう分子レベルの分散とは、層状鉱物の層が剥離して層の厚さとしては主として80Å以下であり、かつ樹脂中に均一に分散している状態をいう。
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂中に分散した層状鉱物が下記(a)及び(b)の性状を有するものが好ましい。
(a)厚み:9〜80Å
(b)アスペクト比300以上のものが少なくとも30重量%
層状鉱物の厚みは、1層分が約9Åであり、80Åは7層分に相当する。
アスペクト比は縦横比のことで、本発明においてはその比が300以上のものが占める割合が全体の30重量%以上であるのが好ましい。
また、層状鉱物として後記するテトラシリシックマイカ(CM−1)に、有機カチオンとして後記するキヌクリジン塩酸塩(QC)を40meq/100gの置換量でインターカレーションした層間化合物をX線回折で測定した結果は、d(001)は14.4Å、第2層d(002)は7.17Å、第3層d(003)は4.80Å、第4層d(004)は3.59Å、第5層d(005)は2.88Å、第6層d(006)は2.55Åであり第6層まで配座状態が観測される。ところが、従来用いられてきた直鎖脂肪族テトラアルキルアンモニウム塩では第2層以降の配座状態は観測されない。このように、本発明の層間化合物のX線回折が規則性を持って観測されるのは、有機カチオンが層状鉱物の面に対して垂直配座しているためと推測される。
実施例
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
なお、曲げ弾性率はASTM D790に準拠した。熱変形温度(HDT)はASTM D648に準拠し66psi又は246psiの条件で測定した。アイゾット衝撃強度はASTM D256に準拠し温度23℃で測定した。アスペクト比は、ミクロトームを用いて試験片から射出成形の流れ方向に沿って超薄切片を切り取り透過型電子顕微鏡を用いて測定した。
分散は上記透過型電子顕微鏡で分散した層状鉱物の厚さを測定し、次の4段階で評価した。
◎ ……厚さ 9〜30Å未満
○ ……厚さ30〜50Å未満
△ ……厚さ50〜80Å未満
× ……厚さ80Å以上
層状鉱物として以下のものを用いた。
CM−1:テトラシリシックマイカ(Ae=49、CEC=98)
CM−2:テトラシリシックマイカ(Ae=60、CEC=84)
CM−3:バーミキュライト(Ae=80、CEC=94)
CM−4:スメクタイト(Ae=120、CEC=100)
CM−5:スメクタイト(Ae=250、CEC=110)
CM−6:スメクタイト(Ae=170、CEC=105)
有機カチオンとして次のものを用いた。
4DQC:4−ドデシルキヌクリジン塩酸塩
QC:キヌクリジン塩酸塩
nREA:n−ラウリル−N−ジエタノールアンモニウム塩
TMTA:N,N,N−トリメチル−N’,N’,N’−トリメチルテトラメチレンジアンモニウム塩
DHDAC:ジヘキサドデシルジメチルアンモニウム塩酸塩
nRTA:n−ラウリル−N−トリメチルアンモニウム塩
また熱可塑性樹脂として下記表1に示す11種類を用いた。
[実施例1]
表2に示す層状鉱物(CM−1)100gをビーカーに秤量し、蒸留水に浸漬して、懸濁攪はんした。これに4DQC水溶液を60℃で接触させ、有機カチオンを20ミリグラム当量/100gで置換した。
この懸濁液を洗浄、遠心分離して凍結乾燥後粉砕して層間化合物とした。
インターカレーション確認のためCM−1の底面間距離を理学(株)製X線回析装置を用いてd(001)を測定すると有機カチオンを挿入する前は9.6Åあり、インターカレーション後は38Åであった。また層間へのアルキルアンモニウム塩の量を確認するため熱天秤装置を用いて、熟重量測定を行うと、その層間に挿入された有機カチオン量は層状鉱物のおおよそ5.94%であった。次にこの層状鉱物を無機充填材換算で5重量%となるようにPA6とヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、スクリュー径が30ミリでそのスクリュー長さ(L)、スクリュー径(D)の比L/D=30のサイズの2軸同方向押出機を用いて混練りを280℃で行った。得られた樹脂組成物を射出成形機にて成形し、樹脂組成物成形品を得た。
[実施例2−4]
表2に示すように、層状鉱物として、CM−2(タルクをフッソ処理して得られる膨潤性マイカ、実施例2)、CM−3(実施例3)、CM−4(実施例4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物成形品を得た。
[実施例5−9]
表2に示すように、ポリマーとして、PA66(実施例5)、AS(実施例6)、ABS(実施例7)、PET(実施例8)、あるいはビオノーレ(実施例9)を用いた以外は実施例1と同じようにして樹脂組成物成形品を得た。
[実施例10−15]
表2に示すように、有機カチオンとしてQCとDHDACを用い、これらを逐次添加してインターカレーションを行ない、X線回折でd(001)の値が38の層間化合物を得た。この層間化合物と、PA6(実施例10、実施例15)、AS(実施例11)、PET(実施例12)、PVC(実施例13)、あるいはPMMA(実施例14)とをタンブラーブレンドし、2軸方向押出機で混練を行った。得られた樹脂組成物を射出成形機にて成形し、樹脂組成物成形品を得た。
[実施例16]
実施例1において、有機カチオンをnREAとし、イオン置換量を18meq/100gとした層間化合物を調製し、PA6に混練を行った。その他は実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
[実施例17]
実施例1において、有機カチオンをTMTAとし、イオン置換量を40meq/100gとした層間化合物を調製し、PA6に混練を行った。その他は実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
[実施例18−20]
表2に示すように、ポリマーとして、POM(実施例18)、PBT(実施例19)、PPO(実施例20)を用いた以外は実施例1と同じようにして成形品を得た。
上記実施例1−17で得られた樹脂組成物成形品について、曲げ弾性率、熱変形温度(HDT)、アイゾット衝撃強度、アスペクト比、及び分散状態を観察した結果を表3に示す。
実施例1−4で得られた樹脂組成物成形品は、いずれも層状鉱物の分散状態が良好であり、表1に示したPA6に比べて、剛性、耐熱性、耐衝撃性に優れている。
実施例5−9の結果より、溶解度パラメーターが9.5[cal/cm3]1/2以上の熱可塑性樹脂と、層面内荷電当たり相当面積が40〜150Å2/chargeである層状鉱物を用いることにより、有機溶媒を用いることなく層状鉱物を分子レベルで分散することが出来る。
実施例10−15の結果より、少量のキヌクリジンと直鎖脂肪族テトラアルキルアンモニウム塩を併用添加することにより、有機カチオンが少量で耐熱性が良くかつナノ分散性が向上することが明らかである。
実施例16で得られた樹脂組成物成形品のX線回折による層間距離d(001)を測定すると、有機カチオン挿入後の層間距離は18Åであり、ジエタノールが層間に柱状に配座し、ラウリル基が層間に平行に配座していると推測される。
実施例17で得られた樹脂組成物成形品のX線回折による層間距離d(001)を測定すると、有機カチオン挿入後の層間距離は16Åであり、層間内にほぼ柱状に配座していると推測される。
[比較例1]
表4に示すように、層状鉱物として、層面内荷電当たり相当面積が高いCM−5を用いた他は、実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を作製した。
この成形品について、曲げ弾性率、熱変形温度(HDT)、アイゾット衝撃強度、アスペクト比、及び分散状態を観察した結果を表5に示す。
[比較例2]
比較例1と同様にして得られた層間化合物に対して、10重量%の割合でトルエンを加えて無限膨潤化を行い、これを混練する際に押出機の側面からプランジャーポンプにて注入分散を行った。得られた樹脂組成物を射出成形機にて成形し、樹脂組成物成形品を得た。
[比較例3]
表4に示すように、有機カチオンとして、DHDACを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
[比較例4,5]
表4に示すように、有機カチオンをDHDAC、イオン置換量を50meq/100g(比較例4)、有機カチオンをDHDAC、イオン置換量を98meq/100g(比較例5)としてイオン交換を行った以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
[比較例6]
表4に示すように、有機カチオンとして、QCを用い、イオン置換量が0.05meq/100gになるようにテトラシリシックマイカにインターカレーションして脱水乾燥を行った後、所定量が層間に挿入されているか熱天秤にて確認を行った。次にDHDACを水に溶かして、先と同じようにしてインターカレーションを行った。熱天秤からキヌクリジン塩酸塩分の量を差し引くとDHDACのイオン置換量は95meq/100gであった。その他は実施例1と同じようにして混練り押し出しを行い、樹脂組成物成形品を得た。
[比較例7−8]
表4に示すように、溶解度パラメーターが9.5[cal/cm3]1/2未満のポリマーとして、PP(比較例7)、PS(比較例8)を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物成形品を作製した。
[比較例9]
表4に示すように、層状鉱物として、CM−6を用いた以外は実施例4と同じようにして樹脂組成物成形品を得た。
[比較例10]
表4に示すように、有機溶媒としてキシレンを加えて、10重量%の無限膨潤スラリーとした以外は比較例9と同じようにしてブレンドを行い、これを混練時押出機の側面より定量的に注入し、分散混練りを行って樹脂組成物を得、これを用いて樹脂組成物成形品を作製した。
[比較例11]
表4に示すように、有機カチオン量を増やし、ポリマーとしてPPを用い、かつ溶媒としてキシレンを用いて層間化合物を無限膨潤化させた10重量%溶液を押出機の側面からプランジャーポンプにて定量的に注入して層状鉱物が5重量%になるようにした。それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を作製した。
[比較例12]
有機カチオンをnRTAとし、イオン置換量を20meq/100gとして他は実施例16と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
上記比較例2−12で得られた樹脂組成物成形品について、曲げ弾性率、熱変形温度(HDT)、アイゾット衝撃強度、アスペクト比、及び分散状態を観察した結果を併せて表5に示す。
比較例1で得られた樹脂組成物の分散状況を、透過型電子顕微鏡で観察を行ったところ層状鉱物の厚みは最少で600Åであった。また曲げ弾性率29,000kg/cm2であったが、耐熱性は246psiの条件で78℃であり、著しく耐熱性が低い。また透過型電子顕微鏡で層の厚さを観測すると,層の最少厚みが200層相当分であるものが大半で、有機カチオンによって自己崩壊の度合が低く、分散性が悪い。
比較例2で得られた樹脂組成物は、その曲げ弾性率は30000kg/cm2であったが、透過電子顕微鏡の観察から層状鉱物の厚みは最小で400Åで、その分散は改善されているものの、耐熱性、剛性とも実施例1で得られた樹脂組成物のレベルには達しなかった。
比較例3で得られた樹脂組成物の分散性は悪く、透過型電子顕微鏡で観察したところ層間化合物の分散している最少の層の厚さは2000Åで分散不良であった。また機械的性質も不十分であった。
比較例4の樹脂組成物では、分散性が改善されていたが、有機カチオン量が多いために耐熱性の低下が著しい。
比較例5の樹脂組成物の耐熱性は、246psiの条件で、60℃であり、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度とも低い性能を示した。透過型電子顕微鏡で樹脂組成物内の分散状態を観察すると、層状鉱物は最少厚みが2000Åであり、分散も不良である。
比較例6の樹脂組成物の曲げ弾性率は35600kg/cm2であり、耐熱性はHDTの246psiの条件においても著しく低かった。このことから、層面内荷電当たり相当面積が小さい層状鉱物を用いても、立体障害構造を有する有機カチオン量を所定量以上入れないと分散はしにくい。また比較例6の条件では、従来公知の有機カチオン量が多かったため、得られた樹脂組成物の耐熱性が悪くなったと考えられる。
比較例7および比較例8の樹脂組成物においては、機械的物性が悪く、また透過型電子顕微鏡で分散層状鉱物の最小厚みを観察すると2500Åで分散性はきわめて悪い。
比較例9の樹脂組成物においては剛性、耐熱性とも劣る。このように層面内荷電当たり相当面積が大きい層状鉱物を用いると、PA6を用いても十分に分散しない。
比較例10の樹脂組成物では、比較例9で得られた樹脂組成物に比べて分散度が若干改善されていた。したがって層面内荷電当たり相当面積が大きい層状鉱物の場合では、有機溶媒の助けが無いと分散は困難である。また、比較例9および比較例10で得られた樹脂組成物成形品は、共に耐熱性が低かったが、これは、合成スメクタイトの結晶サイズが小さいためであると考えられる。
比較例11の樹脂組成物においては、フィラーは全くナノレベル分散しなかった。これはポリマーの溶解度パラメーターが低いため、融液ポリマーが膨潤した層間化合物に配位せず、その後のせん断によって層間での剥離が進行しないためと思われる。
比較例12で得られた樹脂組成物成形品のX線回折による層間距離d(001)を測定すると、有機カチオン挿入後の層間距離は20Åであり、分散性は悪かった。
以上の結果より、上記実施例で得られた樹脂組成物は、上記比較例および表1に示した樹脂に比べて、機械的特性に優れ、熱変形温度が高いことが明白である。また上記比較例で得られた樹脂組成物はすべて無機質フィラーの分散状態が悪かった。
産業上の利用可能性
本発明の無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法によれば、従来の重合法において必要であった。末端基の封止が必要でなく、かつ有機溶媒が不要なので、プロセスを簡略化でき、生産コストを下げることができる。また従来の重合法、あるいは有機溶媒法に比べて、多くの種類の樹脂を用いることができ、汎用性が高い。
また、ポリマーアロイ化の際に、樹脂界面の密着強度が低下することがないので、分散用の脱混合が起こらず、相が安定し、分散混合の範囲が広い。
また層状鉱物に垂直に配座をする構造を有する有機カチオンを選定することにより有機カチオンが少量でも有効に層間距離が開くので、製造された樹脂組成物における耐熱性の低下が起こらない。
したがって、本発明によれば、樹脂組成物中に直接、無機質フィラーを分子レベルで微細に分散させることができ、剛性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、例えば自動車、家電部品、建築資材、工業資材等の分野に好適に用いられる無機質フィラー含有樹脂組成物を製造することができる。
本発明は、耐熱性、剛性及び耐衝撃性に優れ、例えば自動車、家電部品、建築資材、工業資材等の分野に好適に用いられる樹脂組成物に関するものである。
背景技術
様々な分野において、高い機械的強度を有する樹脂組成物が必要とされている。そこで、樹脂に無機質フィラーを充填材として分散させることにより、剛性、耐熱、耐衝撃性を改善することが行われている。特に、高分子材料にフィラーをナノレベルで分散させることにより機械的特性並びに耐熱性を向上させる試みが多くなされている。
例えば、層状粘土鉱物の層間に、高分子材料の元のモノマーをインターカレーション(挿入)させ、その後、そのモノマーを重合させた際のエネルギーを利用して、層状粘土鉱物をナノレベルに分散する方法が提案されている(例えば、特開平2−102261号公報、特開平2−5856号公報等)。また、予め層状粘土鉱物を有機カチオンで膨潤しておき、さらに有機溶媒で無限膨潤させて層状粘土鉱物がカードハウス状になったところで、これをポリマー融液と接触させて層状粘土鉱物をナノレベルで分散させる方法が試みられている(特開平7−70357号公報)。
しかしながら、上記のうち前者の重合による方法では、フィラーが効率よく分散されるものの、重合のための設備が必要で、生産コストが高くなり、経済的とは言えない。またその反応も現在の処、ポリアミド、芳香族ポリエステル等で採用されている縮重合系、あるいは熱硬化の様な反応性モノマーを層間に入れてこれを重合させるようなラジカル重合、あるいはカチオン重合等に限られている。
また層間に挿入されるモノマーは安定して層間内に存在しているものでなければならないため、常圧では気体であるものは好ましくなく、液状モノマーに限られている。
したがって、オングストロームレベルのフィラーを分散した樹脂組成物を得るには限られた樹脂材料でかつ低濃度のフィラーしか得られない欠点があった。
その結果、例えば、ポリオレフィンで使われるアニオン系配位重合を利用することができない。すなわち、層状粘土鉱物の層間に、アミノ酸のような活性水素が多量に存在すると、それが、チタン/有機アルミニウムアニオン配位触媒には触媒毒として作用してしまうからである。
また、この重合による方法において、層間にポリアミドのモノマーを挿入した場合、層状鉱物にアミノ基が反応するため、重合後のポリアミドは末端基がカルボン酸となる。そのため、末端基の反応性が封止され、染色性、接着性の低下が著しい。また、他樹脂とのポリマーアロイ化を行う場合、相溶化剤を加えたとしても界面の接着性が悪く、また、その結果として分散相は脱混合しやすく、その機能が発揮しにくいという問題がある。その改善策として、多価アミンの添加を後から行うことにより、ポリアミドの末端基と反応させる方法が提案されている(特開昭63−230766号公報)。
しかし、希薄溶液中で反応を行うことができないことから均一な反応を得ることは困難であり、また分子間架橋を招き易く、流動性、成形性の低下を生じ易いなどの不都合がある。同様に、ポリエステルの場合には、層状粘土鉱物にモノマーの2価アルコールが配位し、高分子化する際に末端にカルボン酸が多くなってしまう。したがって、ポリカーボネート、ABS、PBT等とポリマーアロイ化する場合、相溶化剤を多めに添加しても、界面の接着性が悪く、またその結果として脱結合し易く、その性能が発揮しにくいという問題がある。
また、後者の有機溶媒を用いる方法は、該公報中にも示されているように、層状粘土鉱物に多量の溶媒を使用せざるを得ない。さらに、ポリマーによっては有機溶媒との溶解度がきわめて悪く、無限膨潤化した層状鉱物をポリマー中に固溶することができないものがある。このようなものは、樹脂が溶融していても該溶媒との親和性が極めて低い。その結果、有機カチオン処理して予め調製した無限膨潤層状鉱物が上記融液状態ポリマーとの接触させても分散、親和しにくく完全な分散には至らない。
また層状鉱物に有機カチオンを接触して得られた層間化合物を有機溶媒によって無限膨潤化した状態であっても、溶融樹脂との接触工程において押出機中の熱によって有機溶媒が一部揮発するため、無限膨潤状態から膨潤状態へと元に戻る傾向が見られる。そのため、実際のところは、層間距離が縮まる過程での融液ポリマーとの接触になってしまい、完全な分散を得ることが困難である。
ここで、樹脂に非晶性樹脂を用い、この樹脂と親和性の高い有機溶媒と組合せた場合であれば、前述の製造法も不完全ながら分散は出来るものの、樹脂に結晶材料を用いた場合では良好な分散を得ることは極めて困難である。そのため、押出機の装置を工夫して、押出機のスクリュー長さ(L)とスクリュー径(D)の比(L/D)で45以上のものを採用して接触時間を長くすることにより、またはバンバリーミキサーの様なバッチ式の混練り装置を用いることにより対処しているが、溶媒の除去の困難さから押出しによる生産量の低下が著しく、経済性の面から劣っている。
発明の開示
本発明は、樹脂組成物中に直接、無機質フィラーをナノレベルで微細に分散させて、剛性、耐熱性、耐衝撃性に優れた無機質フィラー含有樹脂組成物を製造するための方法を提供することを目的としている。
本発明は、層面内荷電当たり相当面積が40〜150Å2/chargeである層状鉱物に、立体障害構造を有する有機カチオンを接触させ、その後、溶解度パラメーターが9.5[cal/cm3]1/2以上である熱可塑性樹脂と接触させて、層状鉱物を該樹脂中に分子レベルで分散させることを特徴とする無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
また本発明は、樹脂中に分散した層状鉱物が下記(a)及び(b)の性状を有するものである無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法をも提供する。
(a)厚み:9〜80Å
(b)アスペクト比300以上のものが少なくとも30重量%
また本発明は、層状鉱物の底面間距離d(001)が7〜13Åである無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法をも提供する。
また本発明は、有機カチオンがアザビシクロ環化合物の塩またはその誘導体である無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法をも提供する。
また本発明は、有機カチオンとして、鎖状アミン化合物のトリまたはテトラアルキルアンモニウム塩を併用する無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法をも提供する。
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明を詳説する。
本発明の無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法は、層状鉱物に特定の有機カチオンを接触させて層内に有機カチオンを挿入して、層間距離を広げて膨潤化し、これと特定の熱可塑性樹脂と混練をし、溶融ポリマーと接触分散を行うものである。
本発明の方法は、従来の方法と比較して以下のような利点がある。
第1に、本発明の無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法においては、重合法において必要な、末端基が封止される対策が不要である。
更に、今まではポリマーに直接層状鉱物を分散させるためには、有機溶媒を必要としていたが、本発明の方法では、溶媒を必要としないために、有機溶媒を作用させるためのプロセスが不要となる。
本発明の無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法では、まず層状鉱物に、立体障害構造を有する有機カチオンを添加して層間化合物を生成する。
本発明で用いる層状鉱物は、粘土鉱物を主とするもので、例えば膨潤性粘土化合物、燐酸ジルコニウム等が挙げられる。
また、本発明における層状鉱物の例としては、以下の示性式を満たすものが用いられる。
Mn+ (x+y+z)/n{(Me1 +Me2 +2Me3 +3)z-3 (6-x)+(OH2-zOz)(Si4-yAly)O10}(x+y+z)
(x+y+z);シリケートの層荷電
Mは層間の交換性金属イオンであってアルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンからなる群から選ばれる少なくとも1個のカチオンである。例えば、Li、Na、K、Be、Mg、Ca等が挙げられる。
Me1 +、Me2 +2、Me3 +3は、それぞれ単独あるいはMe1とMe2、Me3の複数の組み合わせからなるもので、スメクタイトあるいはマイカ構造内に形成される八面体に入るカチオンであって、Me1はLi、Na、K、Me2はMg、Fe、Mn、Ni、Zn、またMe3はAl、Fe、Mn、Crの中からなる。
層状鉱物としては、バーミキュライト、膨潤性マイカ、スメクタイト鉱物等が挙げられる。
また、モンモリオナイトやバーミキュライト等は以下の示性式で表される。
Nax(A2-XMgX)(Si4O10)(OH)2
具体的には、例えばクニミネ工業(株)製の合成品は、一般に示性式
Na0.83Mg3[Si3.575Al0.415)O10](OH)2
で表される。
またフッ素系膨潤性マイカの例としては、トピー工業のテトラシリシックマイカが挙げられ、その示性式は、
NaMg2.5(Si4O10)F2
となる。
ナトリウムテニオライトの例としては、示性式で
NaMg2Li(Si4O10)F2
等が挙げられる。
本発明においては、上記層状鉱物は、その層面内荷電当たり相当面積(以下「Ae」という)が、40〜150Å2/Chargeの範囲である必要があり、好ましくは、40〜80Å2/Charge、より好ましくは、40〜60Å2/Chargeである。
Aeが150Å2/Chargeを越えると、有機カチオンが密なる配座環境の実現が難しく、層同士の隣接する荷電で引き合うファンデルワールスカの影響を無視できなくなり、多量の有機カチオンが存在しないと分散が悪く機械的強度に劣る。一方Aeが40Å2/Chargeを下回ると、前述の示性式の結晶は存在しない。
なお、層状鉱物のAeは、カラム浸透法(「粘土ハンドブック」第二版、日本粘土学会編、第576〜577頁、技報堂出版)でカチオン交換容量(CEC)を測定し、さらに透過型電子顕微鏡を用いて電子線回折による構造解析、及び粉末X線解析のリーベルト法による構造解析の結果から格子定数を決定し、これらの結果に基づいて次式のように単位格子当たりにある層間イオンの電荷の逆数として算出される。
Ae=d(100)×d(010)/2(x+y+z)
また本発明で用いられる層状鉱物は、有機カチオンと接触する前の底面間距離d(001)がX線回折で7〜13Åであるものが好ましく、スメクタイト構造を有するものが挙げられ、例えばバーミキュライト、モンモリオナイト、バイデライト、ノントロナイト、ボルコンスコアイト、サポナイト、鉄サポナイトの他、膨潤性マイカとしてテトラシリシックマイカ、テニオライト等が挙げられる。
従来、一般に、上記範囲のAeの層状鉱物に有機カチオンを作用させると、有機カチオン量が少ない場合は、層間内では、(X+Y+Z)の荷電量が高いほど、有機カチオン量が少なくても層間距離が開くことが、G.Lagaly and A.Weiss“Determination of the Layer Charge in Mica-type”International Clay Conference,Page 61〜80,1969に記載されている。
そして有機カチオン量が少ない場合には、その層間内での分子配座は層に平行に一分子連続して配座することになるが、有機カチオンの量が増すと、層間内に柱状にある角度を有して2配座するようになる。更に有機カチオンの添加量が増えると、添加された有機カチオンが層状鉱物に対してある角度をもって配座するときに、2層あるいは単層で有機カチオンが配座している層間を押し広げることになる。
このように、層状鉱物としてマイカのごとく荷電量の大きな層状鉱物を用いた場合でも、層間距離を開けるためには、有機カチオン、例えば直鎖の脂肪族系アルキルアンモニウム塩が、一定量以上必要である。すなわち有機カチオンの添加量を増加させて、層間距離を大きく開く工程が不可欠であった。ところが有機カチオンの添加量を増加させると、ポリマー中に添加した有機カチオンが多く残存し、耐熱変形温度の低下を招き、満足した性能を発現できないという問題があった。
また、前記したごとく、有機カチオンを層状鉱物に接触させて調製した層間化合物の層間距離を広げて融液ポリマーに分散するためには、有機溶媒で無限膨潤化することが必要であった。
上記のような従来法での欠点を改良する為に、本発明の製造方法では、有機溶媒を用いないで、層状鉱物をポリマー融液と直接接触分散させるが、ここで層状鉱物の層が開き易いような環境を得るために、本発明の方法においては、上述のごとく層面内荷電当たり相当面積が特定の範囲の層状鉱物を使用することに加えて、層間距離を広げるために、層状鉱物に立体障害構造を有する有機カチオンを選定することにより、有機カチオンが少量でも有効に層間距離を広げるものである。
有機カチオンが立体障害構造を有するとは、有機カチオンの構造が幾何学的にある方向からのみ層状鉱物と配位するような機能を有しているという意味である。特に有機カチオンが、層状鉱物の層に対して、層の底面間に垂直に配座するものが好ましい。例えば4級アンモニウム塩の正電荷化合物であって、ケージ状の分子構造を有するものが好ましく用いられる。その他に層間内に柱状に配座するものとして、両端にアミノ基が存在する脂肪族アンモニウム塩あるいは末端に水酸基を有するアミノアルコール誘導体が挙げられる。
本発明者らは、このように層間距離を広げる際に、立体的に配座しかつその量が少量で有効に作用する有機カチオンとして、ケージ状の構造を持つ、アザビシクロ化合物の塩及びまたはその誘導体を用いることにより、あるいはこのアザビシクロ化合物の塩またはその誘導体と、鎖状アミン化合物のトリまたはテトラアルキルアンモニウム塩とを併用することにより、少量でも、効果的に層間を広げることができることに成功した。
本発明において、有機カチオンとして好ましく用いられるアザビシクロ化合物としては、アザビシクロ[2,2,2]オクタン、アザビシクロ[2,1,2]ヘプタン、アザビシクロ[3,2,1]オクタン、アザビシクロ[3,2,2]ノナン、アザビシクロ[3,3,2]デカン、アザビシクロ[3,3,1]ノナン等が挙げられるが、特に経済性の点から、あるいは合成経路が短く合成が容易である点から、アザビシクロ[2,2,2]オクタンが好ましい。
特にアザビシクロ化合物を有機カチオンとして単独で用いるには、4−アルキルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩、あるいは4−アルキルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩が好ましく、4の位置のアルキル基としては、炭素数が4〜30の範囲の脂肪族であることが好ましい。
具体的には、例えば4−ドコシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−アイサコシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−オクタデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−テトラデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−ヘキサデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−ドデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−デシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−オクチルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−ヘキシルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−ブチルアザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩等が挙げられる。
または、上記有機カチオンとしては、アルキルベンゼンであってそのアルキル基が、上記のものと同じ炭素数4〜30の脂肪族を有するものも好ましく用いることができる。例えば、4−[p−ドコシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−アイサコシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−オクタデシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−ヘキサデシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−テトラデシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−ドデシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−デシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−オクチルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−ヘキシルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩、4−[p−ブチルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩等がある。又同様に上記の中で4−[m−アルキルベンゼン]アザビシクロ[2,2,2]オクタンアンモニウム塩酸塩も含まれる。
また塩酸塩の代わりにハロゲン化アルキル化合物、例えばメチルブロミドを作用させて生成する4−アルキルベンゼンアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムブロミドでもよい。
上記の他に4−アルキルアザビシクロ塩酸塩あるいは代わりにアルキルハライドで4級化した4−アルキルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−アルキルアンモニウムハライドでもよい。
例えば4−ドコシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−[アイサコシル]アザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−オクタデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−ヘキサデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−テトラデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−ドデシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−デシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−オクチルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−ヘキシルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド、4−ブチルアザビシクロ[2,2,2]オクタン−N−メチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
また先に説明したようなアザビシクロ環化合物では窒素原子から一番遠い位置にアルキル基、アルコキシ基、p−アルキルフェノキシ基、アルキルベンゼン基等の置換基を有していてもよい。
両末端にアミノ基が存在する脂肪族アンモニウム塩の例としては次の示性式で示される化合物が挙げられる。
(式中、nは4以上、R1〜R6はすべてH、あるいはR1〜R3がアルキル基を有するものであってもよい。Xはハロゲン原子である。)
末端に水酸基を有するアミノアルコール誘導体の例としては、
HO−(CH2)n−+NH3X-
などの示性式で表されるもので、nは2以上であり、Rは炭素数1〜25のアルキル基であり、Xはハロゲン原子である。
さらにアザビシクロ環化合物と併用する場合の直鎖脂肪族テトラアルキルアンモニウムハライドとしては少なくとも1つ以上のアルキル基が炭素数で4以上30以下の構造を持つことが必要である。
例えばブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、デシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルアンモニウムクロライド、オクタデシルアンモニウムクロライド、アイコシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。また直鎖に拘らずイソアルキル、ターシャリーアルキル基、並びに一番長いアルキル基が2及びまたは3置換であってもよい。
前記有機カチオンとして、アザビシクロ環化合物を単独で使用する時は、0.1〜150meq/100gの範囲で使用することが好ましく、5〜80meq/100gの範囲がより好ましいが、最適の範囲としては15〜50meq/100gがよい。
また従来からよく用いられる直鎖脂肪族アルキルアンモニウムハライドとケージ状アルキルアンモニウムハライドを併用する場合、その使用総和量は0.5〜80meq/100gの範囲が好ましいが、ケージ状アルキルアンモニウムハライドの添加量を0.1〜40meq/100gにすることが出来るので、経済的である。
本発明の樹脂組成物のベースとなる熱可塑性樹脂としては、結晶性でも非晶性であってもよい。
用いる熱可塑性樹脂の溶解度パラメーターは9.5[cal/cm3]1/2以上であることが必要であり、好ましくは11.5[cal/cm3]1/2以上、より好ましくは12.5[cal/cm3]1/2以上である。溶解度パラメーターを高くすることにより、有機カチオンを接触させて膨潤した層間化合物にポリマーが化学的に親和し、層間化合物の底面間距離を広げる場を大きくする役割を有し、フィラーとしての層間化合物を一層ずつ分散する環境を作り出すことができる。
溶解度パラメーター(SP値)は、凝集エネルギー密度、すなわち1分子の単位体積当たりの蒸発エネルギーを1/2乗したもので、単位体積当たりの極性の大きさを示す数値である。高分子の場合には揮発しないため、一般に次式に示すSmallの式を用いて計算される。
SP値=dΣFi/M
ここで、M:ポリマーの単位分子量
d:密度
Fi:原子団、基に固有の定数
Smallの方法については、P.A.Small,J.Appl.Cham.,3,71(1953)あるいは「ポリマーブレンド」p.127-129(1981年、株式会社シーエムシー発行)に詳細な記載がある。
熱可塑性樹脂としては、例えば結晶性樹脂として、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド(PA)6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、脂肪族ポリアミドイミド、芳香族ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミド6、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル(PPS)、ポリオキシメチレン(POM)等を用いることができる。また非晶性樹脂としては、例えばアクリロニトリルスチレン(AS)共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)共重合体、ポリ塩化ビニル(硬質PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメタメチルアクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリジメチルフェニレンオキシド(PPO)等を用いることができる。また上記樹脂同士を組み合わせたポリマーアロイ、例えば、PC/PBT、PC/PA、PC/ABS、PC/PET、PPO/PBT、PPO/PA、PPO/PPS、PBT/ABS、PBT/PET、PA/ABS、PPS/PA等も用いることができる。
本発明の製造方法により得られる樹脂組成物は、層状鉱物が樹脂中に分子レベルで分散している必要がある。
本発明でいう分子レベルの分散とは、層状鉱物の層が剥離して層の厚さとしては主として80Å以下であり、かつ樹脂中に均一に分散している状態をいう。
また、本発明の樹脂組成物は、樹脂中に分散した層状鉱物が下記(a)及び(b)の性状を有するものが好ましい。
(a)厚み:9〜80Å
(b)アスペクト比300以上のものが少なくとも30重量%
層状鉱物の厚みは、1層分が約9Åであり、80Åは7層分に相当する。
アスペクト比は縦横比のことで、本発明においてはその比が300以上のものが占める割合が全体の30重量%以上であるのが好ましい。
また、層状鉱物として後記するテトラシリシックマイカ(CM−1)に、有機カチオンとして後記するキヌクリジン塩酸塩(QC)を40meq/100gの置換量でインターカレーションした層間化合物をX線回折で測定した結果は、d(001)は14.4Å、第2層d(002)は7.17Å、第3層d(003)は4.80Å、第4層d(004)は3.59Å、第5層d(005)は2.88Å、第6層d(006)は2.55Åであり第6層まで配座状態が観測される。ところが、従来用いられてきた直鎖脂肪族テトラアルキルアンモニウム塩では第2層以降の配座状態は観測されない。このように、本発明の層間化合物のX線回折が規則性を持って観測されるのは、有機カチオンが層状鉱物の面に対して垂直配座しているためと推測される。
実施例
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。
なお、曲げ弾性率はASTM D790に準拠した。熱変形温度(HDT)はASTM D648に準拠し66psi又は246psiの条件で測定した。アイゾット衝撃強度はASTM D256に準拠し温度23℃で測定した。アスペクト比は、ミクロトームを用いて試験片から射出成形の流れ方向に沿って超薄切片を切り取り透過型電子顕微鏡を用いて測定した。
分散は上記透過型電子顕微鏡で分散した層状鉱物の厚さを測定し、次の4段階で評価した。
◎ ……厚さ 9〜30Å未満
○ ……厚さ30〜50Å未満
△ ……厚さ50〜80Å未満
× ……厚さ80Å以上
層状鉱物として以下のものを用いた。
CM−1:テトラシリシックマイカ(Ae=49、CEC=98)
CM−2:テトラシリシックマイカ(Ae=60、CEC=84)
CM−3:バーミキュライト(Ae=80、CEC=94)
CM−4:スメクタイト(Ae=120、CEC=100)
CM−5:スメクタイト(Ae=250、CEC=110)
CM−6:スメクタイト(Ae=170、CEC=105)
有機カチオンとして次のものを用いた。
4DQC:4−ドデシルキヌクリジン塩酸塩
QC:キヌクリジン塩酸塩
nREA:n−ラウリル−N−ジエタノールアンモニウム塩
TMTA:N,N,N−トリメチル−N’,N’,N’−トリメチルテトラメチレンジアンモニウム塩
DHDAC:ジヘキサドデシルジメチルアンモニウム塩酸塩
nRTA:n−ラウリル−N−トリメチルアンモニウム塩
また熱可塑性樹脂として下記表1に示す11種類を用いた。
[実施例1]
表2に示す層状鉱物(CM−1)100gをビーカーに秤量し、蒸留水に浸漬して、懸濁攪はんした。これに4DQC水溶液を60℃で接触させ、有機カチオンを20ミリグラム当量/100gで置換した。
この懸濁液を洗浄、遠心分離して凍結乾燥後粉砕して層間化合物とした。
インターカレーション確認のためCM−1の底面間距離を理学(株)製X線回析装置を用いてd(001)を測定すると有機カチオンを挿入する前は9.6Åあり、インターカレーション後は38Åであった。また層間へのアルキルアンモニウム塩の量を確認するため熱天秤装置を用いて、熟重量測定を行うと、その層間に挿入された有機カチオン量は層状鉱物のおおよそ5.94%であった。次にこの層状鉱物を無機充填材換算で5重量%となるようにPA6とヘンシェルミキサーでドライブレンドした後、スクリュー径が30ミリでそのスクリュー長さ(L)、スクリュー径(D)の比L/D=30のサイズの2軸同方向押出機を用いて混練りを280℃で行った。得られた樹脂組成物を射出成形機にて成形し、樹脂組成物成形品を得た。
[実施例2−4]
表2に示すように、層状鉱物として、CM−2(タルクをフッソ処理して得られる膨潤性マイカ、実施例2)、CM−3(実施例3)、CM−4(実施例4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物成形品を得た。
[実施例5−9]
表2に示すように、ポリマーとして、PA66(実施例5)、AS(実施例6)、ABS(実施例7)、PET(実施例8)、あるいはビオノーレ(実施例9)を用いた以外は実施例1と同じようにして樹脂組成物成形品を得た。
[実施例10−15]
表2に示すように、有機カチオンとしてQCとDHDACを用い、これらを逐次添加してインターカレーションを行ない、X線回折でd(001)の値が38の層間化合物を得た。この層間化合物と、PA6(実施例10、実施例15)、AS(実施例11)、PET(実施例12)、PVC(実施例13)、あるいはPMMA(実施例14)とをタンブラーブレンドし、2軸方向押出機で混練を行った。得られた樹脂組成物を射出成形機にて成形し、樹脂組成物成形品を得た。
[実施例16]
実施例1において、有機カチオンをnREAとし、イオン置換量を18meq/100gとした層間化合物を調製し、PA6に混練を行った。その他は実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
[実施例17]
実施例1において、有機カチオンをTMTAとし、イオン置換量を40meq/100gとした層間化合物を調製し、PA6に混練を行った。その他は実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
[実施例18−20]
表2に示すように、ポリマーとして、POM(実施例18)、PBT(実施例19)、PPO(実施例20)を用いた以外は実施例1と同じようにして成形品を得た。
上記実施例1−17で得られた樹脂組成物成形品について、曲げ弾性率、熱変形温度(HDT)、アイゾット衝撃強度、アスペクト比、及び分散状態を観察した結果を表3に示す。
実施例1−4で得られた樹脂組成物成形品は、いずれも層状鉱物の分散状態が良好であり、表1に示したPA6に比べて、剛性、耐熱性、耐衝撃性に優れている。
実施例5−9の結果より、溶解度パラメーターが9.5[cal/cm3]1/2以上の熱可塑性樹脂と、層面内荷電当たり相当面積が40〜150Å2/chargeである層状鉱物を用いることにより、有機溶媒を用いることなく層状鉱物を分子レベルで分散することが出来る。
実施例10−15の結果より、少量のキヌクリジンと直鎖脂肪族テトラアルキルアンモニウム塩を併用添加することにより、有機カチオンが少量で耐熱性が良くかつナノ分散性が向上することが明らかである。
実施例16で得られた樹脂組成物成形品のX線回折による層間距離d(001)を測定すると、有機カチオン挿入後の層間距離は18Åであり、ジエタノールが層間に柱状に配座し、ラウリル基が層間に平行に配座していると推測される。
実施例17で得られた樹脂組成物成形品のX線回折による層間距離d(001)を測定すると、有機カチオン挿入後の層間距離は16Åであり、層間内にほぼ柱状に配座していると推測される。
[比較例1]
表4に示すように、層状鉱物として、層面内荷電当たり相当面積が高いCM−5を用いた他は、実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を作製した。
この成形品について、曲げ弾性率、熱変形温度(HDT)、アイゾット衝撃強度、アスペクト比、及び分散状態を観察した結果を表5に示す。
[比較例2]
比較例1と同様にして得られた層間化合物に対して、10重量%の割合でトルエンを加えて無限膨潤化を行い、これを混練する際に押出機の側面からプランジャーポンプにて注入分散を行った。得られた樹脂組成物を射出成形機にて成形し、樹脂組成物成形品を得た。
[比較例3]
表4に示すように、有機カチオンとして、DHDACを用いた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
[比較例4,5]
表4に示すように、有機カチオンをDHDAC、イオン置換量を50meq/100g(比較例4)、有機カチオンをDHDAC、イオン置換量を98meq/100g(比較例5)としてイオン交換を行った以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
[比較例6]
表4に示すように、有機カチオンとして、QCを用い、イオン置換量が0.05meq/100gになるようにテトラシリシックマイカにインターカレーションして脱水乾燥を行った後、所定量が層間に挿入されているか熱天秤にて確認を行った。次にDHDACを水に溶かして、先と同じようにしてインターカレーションを行った。熱天秤からキヌクリジン塩酸塩分の量を差し引くとDHDACのイオン置換量は95meq/100gであった。その他は実施例1と同じようにして混練り押し出しを行い、樹脂組成物成形品を得た。
[比較例7−8]
表4に示すように、溶解度パラメーターが9.5[cal/cm3]1/2未満のポリマーとして、PP(比較例7)、PS(比較例8)を用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物成形品を作製した。
[比較例9]
表4に示すように、層状鉱物として、CM−6を用いた以外は実施例4と同じようにして樹脂組成物成形品を得た。
[比較例10]
表4に示すように、有機溶媒としてキシレンを加えて、10重量%の無限膨潤スラリーとした以外は比較例9と同じようにしてブレンドを行い、これを混練時押出機の側面より定量的に注入し、分散混練りを行って樹脂組成物を得、これを用いて樹脂組成物成形品を作製した。
[比較例11]
表4に示すように、有機カチオン量を増やし、ポリマーとしてPPを用い、かつ溶媒としてキシレンを用いて層間化合物を無限膨潤化させた10重量%溶液を押出機の側面からプランジャーポンプにて定量的に注入して層状鉱物が5重量%になるようにした。それ以外は実施例1と同様にして樹脂組成物成形品を作製した。
[比較例12]
有機カチオンをnRTAとし、イオン置換量を20meq/100gとして他は実施例16と同様にして樹脂組成物成形品を得た。
上記比較例2−12で得られた樹脂組成物成形品について、曲げ弾性率、熱変形温度(HDT)、アイゾット衝撃強度、アスペクト比、及び分散状態を観察した結果を併せて表5に示す。
比較例1で得られた樹脂組成物の分散状況を、透過型電子顕微鏡で観察を行ったところ層状鉱物の厚みは最少で600Åであった。また曲げ弾性率29,000kg/cm2であったが、耐熱性は246psiの条件で78℃であり、著しく耐熱性が低い。また透過型電子顕微鏡で層の厚さを観測すると,層の最少厚みが200層相当分であるものが大半で、有機カチオンによって自己崩壊の度合が低く、分散性が悪い。
比較例2で得られた樹脂組成物は、その曲げ弾性率は30000kg/cm2であったが、透過電子顕微鏡の観察から層状鉱物の厚みは最小で400Åで、その分散は改善されているものの、耐熱性、剛性とも実施例1で得られた樹脂組成物のレベルには達しなかった。
比較例3で得られた樹脂組成物の分散性は悪く、透過型電子顕微鏡で観察したところ層間化合物の分散している最少の層の厚さは2000Åで分散不良であった。また機械的性質も不十分であった。
比較例4の樹脂組成物では、分散性が改善されていたが、有機カチオン量が多いために耐熱性の低下が著しい。
比較例5の樹脂組成物の耐熱性は、246psiの条件で、60℃であり、曲げ弾性率、アイゾット衝撃強度とも低い性能を示した。透過型電子顕微鏡で樹脂組成物内の分散状態を観察すると、層状鉱物は最少厚みが2000Åであり、分散も不良である。
比較例6の樹脂組成物の曲げ弾性率は35600kg/cm2であり、耐熱性はHDTの246psiの条件においても著しく低かった。このことから、層面内荷電当たり相当面積が小さい層状鉱物を用いても、立体障害構造を有する有機カチオン量を所定量以上入れないと分散はしにくい。また比較例6の条件では、従来公知の有機カチオン量が多かったため、得られた樹脂組成物の耐熱性が悪くなったと考えられる。
比較例7および比較例8の樹脂組成物においては、機械的物性が悪く、また透過型電子顕微鏡で分散層状鉱物の最小厚みを観察すると2500Åで分散性はきわめて悪い。
比較例9の樹脂組成物においては剛性、耐熱性とも劣る。このように層面内荷電当たり相当面積が大きい層状鉱物を用いると、PA6を用いても十分に分散しない。
比較例10の樹脂組成物では、比較例9で得られた樹脂組成物に比べて分散度が若干改善されていた。したがって層面内荷電当たり相当面積が大きい層状鉱物の場合では、有機溶媒の助けが無いと分散は困難である。また、比較例9および比較例10で得られた樹脂組成物成形品は、共に耐熱性が低かったが、これは、合成スメクタイトの結晶サイズが小さいためであると考えられる。
比較例11の樹脂組成物においては、フィラーは全くナノレベル分散しなかった。これはポリマーの溶解度パラメーターが低いため、融液ポリマーが膨潤した層間化合物に配位せず、その後のせん断によって層間での剥離が進行しないためと思われる。
比較例12で得られた樹脂組成物成形品のX線回折による層間距離d(001)を測定すると、有機カチオン挿入後の層間距離は20Åであり、分散性は悪かった。
以上の結果より、上記実施例で得られた樹脂組成物は、上記比較例および表1に示した樹脂に比べて、機械的特性に優れ、熱変形温度が高いことが明白である。また上記比較例で得られた樹脂組成物はすべて無機質フィラーの分散状態が悪かった。
産業上の利用可能性
本発明の無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法によれば、従来の重合法において必要であった。末端基の封止が必要でなく、かつ有機溶媒が不要なので、プロセスを簡略化でき、生産コストを下げることができる。また従来の重合法、あるいは有機溶媒法に比べて、多くの種類の樹脂を用いることができ、汎用性が高い。
また、ポリマーアロイ化の際に、樹脂界面の密着強度が低下することがないので、分散用の脱混合が起こらず、相が安定し、分散混合の範囲が広い。
また層状鉱物に垂直に配座をする構造を有する有機カチオンを選定することにより有機カチオンが少量でも有効に層間距離が開くので、製造された樹脂組成物における耐熱性の低下が起こらない。
したがって、本発明によれば、樹脂組成物中に直接、無機質フィラーを分子レベルで微細に分散させることができ、剛性、耐熱性、耐衝撃性に優れ、例えば自動車、家電部品、建築資材、工業資材等の分野に好適に用いられる無機質フィラー含有樹脂組成物を製造することができる。
Claims (2)
- 層面内荷電当たり相当面積が40〜150Å2/chargeであり、底面間距離d(001)が7〜13Åであり、かつ厚みが9〜80Åであり、アスペクト比が300以上のものが少なくとも30重量%含まれる層状鉱物に、アザビシクロ環化合物の塩を接触させ、その後、溶解度パラメーターが9.5[cal/cm3]1/2以上でありかつ無溶媒下で溶融状態である熱可塑性樹脂と接触させて、層状鉱物を該樹脂中に分子レベルで分散させることを特徴とする無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法。
- アザビシクロ環化合物の塩に対して、鎖状アミン化合物のトリまたはテトラアルキルアンモニウム塩を併用することを特徴とする請求の範囲第1項記載の無機質フィラー含有樹脂組成物の製造方法。
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