JP3852354B2 - 電子写真用トナー並びにそれを用いた電子写真用現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法 - Google Patents

電子写真用トナー並びにそれを用いた電子写真用現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラッシュ定着を行う電子写真法、静電記録法、磁気記録法等に好適に用いられる電子写真用トナー並びにそれを用いた電子写真用現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真方式における画像形成では、(1)感光体の帯電、(2)感光体の露光(潜像の形成)、(3)前記潜像のトナーによる現像、(4)トナーの転写材への転写及び(5)トナーの転写材への定着、等のプロセスが行われる。前記転写材に転写されたトナーの定着方法としては、加圧、加熱、あるいはこれらの併用によって前記トナーを溶融させた後、固化定着させる方法、光エネルギーを照射してトナーを溶融させた後、固化定着させる方法、等が挙げられるが、近時、これらの中でも、微細で高精細な画像を形成し得る点で、加圧や加熱による弊害のないオーブン定着、光を利用した光定着、などが注目を集めている。
【0003】
即ち、これらの定着法においては、トナーの定着に際し、該トナーを加圧する必要がないため、定着ローラ等の場合に生ずるオフセット等の問題がなく、定着工程における画像解像度(再現性)の劣化が少ないという利点がある。また、熱源等により加熱する必要がないことから、電源を投入してから熱源(定着ローラなど)が所望の温度にまでプリヒートされるまで印字ができない等の問題が無く、電源投入直後から印字が可能であるという利点もある。更に、高温熱源を必要としないことから、装置内の温度上昇を適切に回避できる等の利点もあり、特に、光定着は、システムダウンにより定着器内において記録紙詰まりが生じた場合等であっても、熱源からの熱によって記録紙が発火してしまうこともない等の利点もある。
【0004】
一般にカラートナーは光吸収効率が低く、黒トナーに比べ定着性が低下するため、赤外線吸収剤をトナーに添加することで定着性向上を図る技術が、例えば、特開昭60−63545号、特開昭60−63546号、特開昭60−57858号、特開昭60−57857号、特開昭58−102248号、特開昭58−102247号、特開昭60−131544号、特開昭60−133460号、特開昭61−132959号、WO99/13382、特開2000−147824号、特開平7−191492号、特開2000−155439号、特開平6−348056号、特開平10−39535号、特開2000−35689号、特開平11−38666号、特開平11−125930号、特開平11−125928号、特開平11−125929号、及び特開平11−65167号の各公報において多数提案されている。
【0005】
しかし、これらの場合、トナーにおいて定着性と耐ボイド性とを両立することができないという問題があった。ここで、ボイドとは、フラッシュ定着を行う際に発生する特有の画像欠陥であり、印字部が抜ける現象である。このボイドは、フラッシュ定着の際、トナー最表面温度温度が500℃程度まで熱せられるため、トナーが溶融しトナー中の混入空気が一挙に膨張しトナーが吹き飛ばされたり、トナーの表面張力によって溶融時にトナーが凝集する等により発生する。前記ボイドの発生を防止するためには、溶融時のトナー粘度が高いことが望まれるものの、定着性を向上させるためには、トナー粘度が低いトナーが望まれることから、定着性及び耐ボイド性を高次に両立することは困難であった。
【0006】
ところで、トナー中にワックス類を含有させる技術は、ヒートロール定着方式による画像形成等において一般的に用いられており、例えば、特開昭52−3304号公報、特開昭52−3305号公報、及び特開昭57−52574号公報において開示されている。これらの技術においては、前記ワックス類は、ヒートロール用トナーの耐オフセット性向上のために用いられている。また、例えば、特公昭52−3305号公報、特開昭58−215659号公報、特開昭62−100775号公報、特開平4−124676号公報、特開平4−299357号公報、4−362953号公報、特開平5−197192号公報、及び、特開平8−3210244号公報等においては、低温領域から高温領域にかけて、よりワックス添加の効果を発揮させる目的で2種類以上のワックスを含有するトナーが開示されている。
しかしながら、これらの技術をフラッシュトナーにそのまま適用しても十分な効果が得られず、フラシュ定着システムにおいて、定着性及び耐ボイド性を高次に両立したトナーを得ることはできなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、定着性及び耐ボイド性を高次に両立し、高品質な画像を形成可能な電子写真用トナー並びに電子写真用現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
<1> 結着樹脂及びワックス成分を含有してなり、
前記ワックス成分が、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて60〜90℃の温度領域に吸熱ピークを有し、GPC法に基づく分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)が500以下の成分を実質的に含有しない第一のワックスと、
示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて100〜150℃の温度領域に吸熱ピークを有し、GPC法に基づく分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が5超20以下である第二のワックス、及び、
示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて150〜170℃の温度領域に吸熱ピークを有し、GPC法に基づく分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.1以上である第三のワックスの少なくともいずれかと、
を含有することを特徴とする電子写真用トナーである。
【0009】
【発明の実施の形態】
(電子写真用トナー)
前記電子写真用トナーは、結着樹脂及びワックス成分を含有してなり、更に必要に応じて適宜選択した着色剤、赤外線吸収剤、帯電制御剤、その他の成分を含有してなる。
【0010】
−結着樹脂−
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリエステルが好適に挙げられる。
【0011】
前記ポリエステルとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、原料としてソフトセグメントを用いずに形成されたものが好ましく、前記ソフトセグメントの含有量がモノマーユニットで2モル%未満であるポリエステルが特に好ましい。
前記ソフトセグメントを前記ポリエステルの原料として用いると、該ポリエステル合成時の反応速度が遅くなるため、未反応又は低分子のオリゴマーが生成し易く、フラッシュ定着時に臭気が発生することがある。なお、前記ポリエステルの合成時における原料配合の目安としては、原料の全モノマー中の該ソフトセグメント含有量が、2モル%以下であるのが好ましく、0モル%に近いことがより好ましい。
【0012】
前記ソフトセグメントとは、炭素数5〜30のアルキル基又はアルケニル基を意味する。該ソフトセグメントで置換された脂肪族ジカルボン酸類としては、例えば、n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、及び、n−オクチルコハク酸、等が挙げられる。また、該ソフトセグメントで置換された脂肪族ジオール類としては、例えば、n−ドデセニルエチレングリコールやn−ドデセニルトリエチレングリコール、等が挙げられる。
【0013】
前記ポリエステルとしては、市販品を用いてもよいが、酸成分とアルコール成分とを原料に用いて適宜合成することができる。
【0014】
前記酸成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、及び、これらの無水物、等が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸等が好ましい。
【0015】
また、前記酸成分のほかに、前記ポリエステルに架橋を形成することを目的として三価以上のカルボン酸成分を用いてもよい。
前記三価以上のカルボン酸成分としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5ーベンゼントリカルボン酸、その他のポリカルボン酸、これらの無水物、等が挙げられる。
【0016】
前記アルコール成分としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、三価以上のアルコール成分も好適に挙げられる。
前記三価以上のアルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、その他の三価以上のアルコール、等が挙げられる。
【0017】
本発明においては、前記アルコール成分中、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上用いるのが好ましく、90モル%以上用いるのがより好ましく、95モル%以上用いるのが特に好ましい。
前記アルコール成分中における前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の使用量が80モル%未満であると、相対的に臭いの発生原因となるモノマー使用量が多くなることがある。
【0018】
前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、下記一般式(1)で表される化合物が好適に挙げられる。
【0019】
一般式(1)
【化3】
Figure 0003852354
【0020】
ただし、前記一般式(1)において、Rは、エチレン基又はプロピレン基を表す。x及びyは、各々1以上の整数を表す。
【0021】
前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の具体例としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、等が好適に挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が好ましい。
【0022】
前記電子写真用トナーを画像形成プロセスにおいて光定着させる場合には、前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の中でも、前記一般式(1)において、x及びyが1でかつRがエチレン基である化合物が、前記ポリエステルの原料としての前記アルコール成分中に60モル%以上含まれるのが好ましく、80モル%以上含まれるのがより好ましい。前記一般式(1)においてx及びyが1でかつRがエチレン基である化合物は、前記ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の中でも最も反応性が高いので、これを前記ポリエステルの合成の原料として用いれば、得られたポリエステル中に残存するモノマー、2量体、3量体等の含有量を低減できる点で有利である。
【0023】
なお、得られたポリエステル中に残存するモノマー、2量体、3量体等を低減する方法としては、これらの反応促進剤を増量したり、得られたポリエステルをアルコール洗浄等する方法などが好適に挙げられる。
前記アルコール洗浄に用いるアルコールとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エタノール、メタノール、イソルロピルアルコール等が高分子量のポリエステルを溶解させることなくモノマーや2量体等を容易に溶解可能である点で好ましい。該アルコールを用いて得られたポリエステルを洗浄すると、大幅に残存モノマーや2量体等を低減させることができる。
【0024】
前記ポリエステルの合成の際には、合成反応を促進させるため、通常使用されているエステル化触媒、例えば、酸化亜鉛、酸化第一錫、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジラウレート、等を使用することができる。
【0025】
また、前記結着樹脂としては、前記ポリエステル以外に、更に、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−メタクリル共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂、等を併用してもよい。
【0026】
前記結着樹脂のガラス転移点(Tg)としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、50〜70℃程度が好ましい。
【0027】
−ワックス成分−
前記ワックス成分としては、第一のワックスと、第二のワックス及び第三のワックスの少なくともいずれかとを含有し、更に必要に応じて適宜選択したその他のワックスを含有する。
【0028】
前記第一のワックスは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて60〜90℃の温度領域に吸熱ピークを有し、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)が500以下の成分を実質的に含有しないワックスである。
【0029】
前記ワックス成分に、前記第一のワックスが含有されていると、光定着されて形成された画像の定着強度が向上する。また、該第一のワックスは、重量平均分子量(Mw)が500以下の成分を実質的に含有しないため、光定着の際、ワックスの一部が昇華して臭気が発生したり、臭気を抑制するための脱煙フィルタの寿命が短くなる等の問題がない。
【0030】
ここで、前記「重量平均分子量(Mw)が500以下の成分を実質的に含有しない」とは、重量平均分子量(Mw)が500以下の成分の前記ワックス成分における含有量が1質量%以下であることを意味する。該重量平均分子量(Mw)が500以下の成分の前記ワックス成分における含有量としては、0.8質量%以下であるのが好ましく、0.6質量%以下であるのがより好ましい。
【0031】
前記第一のワックスにおける前記吸熱ピークの温度領域としては、画像の定着強度の点で、65〜85℃が好ましく、70〜80℃がより好ましい。
前記第一のワックスにおける前記分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))としては、画像の定着強度の点で、1.3以下が好ましく、1.1以下がより好ましい。
【0032】
前記DSC曲線の昇温時の吸熱ピークは、例えば、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計を用い、示差熱分析法によって以下のように測定することができる。即ち、示差熱分析測定装置(DSC測定装置;DSC−7(バーキンエルマー社製))を用い、ASTM D3418−82の測定方法に準じ、吸熱ピークのある温度を測定することができる。なお、測定試料は5〜20mg(好ましくは10mg)を精密に秤量し、これをアルミパン中に入れ、リフアレンスとして空のアルミパンを用い、1回昇温・降温させて前履歴を取った後、温度速度10℃/minで昇温させた時に測定されるDSC曲線を用いる。
【0033】
また、前記分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、例えば、以下のようにして測定することができる。即ち、前記分子量分布は、測定装置としてGPC−150C(ウォーターズ社製)を用い、カラムとしてGMH−HT30cm2連(東ソ−社製)を用い、135℃で、o−ジクロロベンゼン(0.1質量%アイオノール添加)溶媒を用い、流速1.0ml/minで、試料として0.15質量%の試料を0.4ml注入して測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量較正曲線を用いて試料の分子量算出を行うことができる。更にMark−Houwink粘度式から導き出される換算式からポリエチレン換算することにより算出する。
【0034】
前記第二のワックスは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて100〜150℃の温度領域に吸熱ピークを有し、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が5超20以下であるワックスである。
前記第三のワックスは、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて150〜170℃の温度領域に吸熱ピークを有し、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.1以上であるワックスである。
【0035】
前記ワックス成分に、前記第二のワックス及び前記第三のワックスの少なくともいずれかが含有されていると、光定着で定着させる画像形成により形成される画像の耐ボイド性が向上する。
前記第二のワックスは、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が5超20以下であるため、溶解等によりボイドが発生することも無く好ましい。前記第二のワックスの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))としては、耐ボイド性の点で、5.5超19.5以下が好ましく、6.0超19.0以下がより好ましい。
前記第三のワックスとしては、分子量分布については特に制限はなく、分子量分布は広い程好ましい。
【0036】
前記ワックス成分の具体例としては、例えば、エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリプロピレンやポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、脱酸カルナバワックス、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、不飽和脂肪酸、飽和アルコール、多価アルコール、脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸アミド、芳香族系ビスアミド、脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの)、脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類、ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物、植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物、などが挙げられる。
【0037】
前記不飽和脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、及び、バリナリン酸等が挙げられる。前記飽和アルコールとしては、例えば、ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、及び、更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール等が挙げられる。
前記脂肪酸アミドとしては、例えば、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、及び、ラウリン酸アミド等が挙げられる。
前記飽和脂肪酸ビスアミドとしては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、及び、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。
前記不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、及び、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。
前記芳香族系ビスビスアミドとしては、例えば、m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等が挙げられる。
前記脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及び、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
これらのワックス成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記ワックス成分としては、定着性及び耐ボイド性を高次に両立可能な点で、前記第一のワックス、前記第二のワックス、及び前記第三のワックスの総てを含有するのが好ましく、また、該第一のワックスが、下記一般式で表されるエステルワックスから選択され、前記第二のワックスが、ポリエチレンワックスから選択され、前記第三のワックスが、ポリプロピレンワックス及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物ワックスから選択されるのが特に好ましい。
【化4】
C−[CH−O−CO−(CH)n−CH
前記一般式においては、nは3以上が好ましく、9以上がより好ましく、14以上が特に好ましい。
【0039】
前記第一のワックスが、前記一般式で表されるエステルワックスから選択され、前記第二のワックスがポリエチレンワックスから選択され、前記第三のワックスが、ポリプロピレンワックス及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物ワックスから選択される場合、前記エステルワックスの前記電子写真用トナーにおける含有量としては、0.1〜5質量%が好ましく、前記ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物ワックスの前記電子写真用トナーにおける含有量としては、各々0.1〜1質量%が好ましい。
【0040】
前記エステルワックスの含有量が、0.1質量%未満であると定着性を向上できないことがある一方、5質量%を超えるとボイドが発生し易いことがある。また、前記ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物の含有量が、各々0.1質量%未満であると耐ボイド性が十分でないことがある一方、1質量%を超えるとブロッキング性が悪化することがある。
前記エステルワックスと、前記ポリエチレンワックスと、前記ポリプロピレンワックス及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物ワックスの少なくともいずれかとを3種併用すると、定着性及び耐ボイド性を高次に両立可能であり、高品質な画像が形成される点で有利である。
【0041】
−着色剤−
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のものの中から適宜選択することができ、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、シアン着色剤、ブラック着色剤等が挙げられ、具体的には、カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコオイルブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン6Cレーキ、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、マラカイトグリーン、マラカイトグリーンヘキサレート、オイルブラック、アゾオイルブラック、ローズベンガル、ナフトール、カーミン、キナクリドン、モノアゾ系染顔料、ジスアゾ系染顔料、トリスアゾ系染顔料、などが挙げられる。
【0042】
前記イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物等が挙げられ、具体的には、C.I.ピグメントイエロー12,13,14,15,17,62,74,83,93,94,95,109,110,111,128,129,147,168,180,185等が好適に挙げられる。
【0043】
前記マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾール化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が挙げられ、具体的には、C.I.ピグメントレッド2,3,5,6,7,23,48:2,48:3,48:4,57:1,81:1,122,144,146,166,169,177,184,185,202,206,220,221,254等が好適に挙げられる。
【0044】
前記シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられ、具体的には、C.I.ピグメントブルー1,7,15,15:1,15:2,15:3,15:4,60,62,66等が好適に挙げられる。
【0045】
これらの着色剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、固溶体の状態で用いてもよい。
【0046】
前記着色剤の前記電子写真用カラートナーにおける含有量としては、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0047】
−赤外線吸収剤−
前記赤外線吸収剤としては、750〜1200nmの近赤外領域に少なくとも1つ以上の強い光吸収ピークを有する材料であればよく、無機系赤外線吸収剤、有機系赤外線吸収剤のいずれであってもよい。
前記無機系赤外線吸収剤としては、例えば、酸化イッテルビウム、燐酸イッテルビウム等のランタノイド化合物、インジウムチンオキサイド、酸化錫、などが挙げられる。
前記有機系赤外線吸収剤としては、例えば、アミニウム化合物、ジイモニウム化合物、ナフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ポリメチン系化合物、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記赤外線吸収剤の前記電子写真用トナーにおける含有量としては、0.1〜1.5質量%が好ましく、0.3〜1質量%がより好ましい。
前記含有量が、0.1質量%未満であると前記電子写真用トナーを定着できないことがある一方、1.5質量%を超えると形成される画像の色が濁ってしまうことがある。
【0049】
−帯電制御剤−
前記帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、カリックスアレーン、ニグロシン系染料、四級アンモニウム塩、アミノ基含有のポリマー、含金属アゾ染料、サリチル酸の錯化合物、フェノール化合物、アゾクロム系化合物、アゾ亜鉛系化合物、トリフェニルメタン誘導体、ナフトーヤ酸亜鉛錯体、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、流動性向上剤、クリーニング活剤、磁性材料、定着助剤、金属石鹸、界面活性剤などが挙げられる。
【0051】
前記流動性向上剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、白色粒子等の無機微粒子が挙げられる。
前記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粉末、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化硅素、窒化硅素、などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、シリカ微粉末が好ましく、シリカ微粉末、チタン化合物、樹脂微粉及びアルミナ等の併用も好ましい。
前記流動性向上剤の前記電子写真用トナーにおける含有量としては、0.01〜5質量%が好ましく、0.01〜2.0質量%がより好ましい。
【0052】
前記クリーニング活剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、ステアリン酸亜鉛等に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の微粒子粉末、などが挙げられる。
【0053】
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト、などが挙げられる。特に、本発明の電子写真用トナーをカラートナーとする場合には、色調の点で、白色の磁性粉を用いるのが好ましい。
【0054】
前記界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0055】
本発明の電子写真用トナーにおいては、重量平均分子量(Mw)が500以下の成分の含有量としては、4質量%以下であるのが好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
前記含有量が、4質量%以下であると、結着樹脂自体の低分子量成分量が抑えられ、定着時の臭気発生が効果的に抑制される。
【0056】
なお、前記重量平均分子量(Mw)が500以下の成分の含有量は、以下のようにして測定することができる。即ち、前記電子写真用トナーを、テトラヒドロフランに溶解させ、0.2μmメンブランフィルタによって濾過する。その後、GPC装置(HLC−8120GPC(東ソー(株)製))を用い、示唆屈折によりテトラヒドロフランに溶解した前記電子写真用トナー成分の分子量分布を測定し、検量線から各分子量成分の比率を求めることにより、分子量500以下の含有重量比を調べることができる。この測定の際、カラムとしてTSKgel SuperHM−M(東ソー)(500〜106)を2本連結したものを用い、充填剤として、スチレン・ジビニルベンゼンゲル主成分の充填剤を用い、ガードカラムとしてTSKguardcolumn SuperH−H(東ソー)を用い、流速0.6ml/min、試料濃度0.1w.t.%テトラヒドロフランの条件で、検量線として、標準ポリスチレン(370−289000)による3次式較正曲線を用いて行った。
【0057】
前記電子写真用トナーの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができるが、例えば、前記結着樹脂、前記ワックス成分、前記着色剤(顔料等)、前記赤外線吸収剤、前記帯電制御剤、前記磁性体等を、ボールミル、ヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて混合した後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダ等の熱混練装置を用いて溶融、捏和、及び練肉し、樹脂類を互いに相溶させた後、金属化合物、顔料、染料、及び、磁性体等を分散又は溶解させて、冷却固化し、その後、ジェットミル等の粉砕装置を用いて粉砕し、所望の粒径に分級することにより製造する機械的粉砕法等が挙げられる。この方法において、2種以上のワックス成分を含有させるためには、予めワックス同士をワックス溶融温度以上で攪拌しながら溶融混合し、冷却固化後、粉砕を行ってから添加する方法等が好ましが、トナー材料として、他の材料とトナー混練時に共混練してもよい。また、必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合装置により充分混合してもよい。
【0058】
本発明の電子写真用トナーは、電子写真方式の画像形成プロセスに用いられる電子写真用現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に好適であり、以下の本発明の電子写真用現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に特に好適である。
【0059】
(電子写真用現像剤)
本発明の電子写真用現像剤は、本発明の電子写真用トナーを少なくとも含有してなり、適宜選択したその他の成分を含有してなる。
前記電子写真用現像剤は、前記電子写真用トナーからなる一成分現像剤であってもよいし、前記電子写真用トナーとキャリアとを含む二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上等の点で前記二成分現像剤が好ましい。
【0060】
本発明の電子写真用現像剤は、単色の態様、2色乃至3色の態様、4色フルカラーの態様のいずれであってもよい。
【0061】
−キャリア−
前記キャリアとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、該芯材を被覆する樹脂層とを有するものが好ましい。
【0062】
前記芯材の材料としては、例えば、50〜90emu/gのマンガン−ストロンチウム(Mn−Sr)系材料、マンガン−マグネシウム(Mn−Mg)系材料などが好ましく、画像濃度の確保の点では、鉄粉(100emu/g以上)、マグネタイト(75〜120emu/g)、フェライト等の高磁化材料が好ましく、トナーが穂立ち状態となっている感光体への当りを弱くでき高画質化に有利である点で、銅−ジンク(Cu−Zn)系(30〜80emu/g)等の弱磁化材料が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記芯材の粒径としては、平均粒径(体積平均粒径(D50))で、10〜150μmが好ましく、40〜100μmがより好ましい。
前記平均粒径(体積平均粒径(D50))が、10μm未満であると、キャリア粒子の分布において、微粉系が多くなり、1粒子当たりの磁化が低くなってキャリア飛散を生じることがあり、150μmを超えると、比表面積が低下し、トナーの飛散が生じることがあり、ベタ部分の多いフルカラーでは、特にベタ部の再現が悪くなることがある。
【0064】
前記樹脂層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知の材料の中から選択することができるが、耐久性、長寿命性等の点で、例えばシリコーン樹脂、アクリル変性シリコーン系樹脂、フッ素変性シリコーン樹脂等のシリコーン樹脂類が好適に挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記樹脂層は、例えば、前記シリコーン樹脂等を溶剤に溶解させて塗布溶液を調製した後、該塗布溶液を前記芯材の表面に公知の塗布方法、例えば浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法等により均一に塗布し、乾燥した後、焼付を行なうこと等により形成することができる。
【0065】
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及び、セルソルブチルアセテート、などが挙げられる。
前記焼付としては、外部加熱方式であってもよいし、内部加熱方式であってもよく、例えば、固定式電気炉、流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉等を用いる方法、マイクロウエーブを用いる方法、などが挙げられる。
【0066】
前記樹脂層の前記キャリアにおける割合(樹脂被覆量)としては、前記キャリア総量に対し、0.01〜5.0質量%が好ましい。
前記割合(樹脂被覆量)が、0.01質量%未満であると、前記芯材の表面に均一な前記樹脂層を形成することができないことがあり、5.0質量%を超えると、前記樹脂層が厚くなり過ぎキャリア同士の造粒が発生し、均一なキャリア粒子が得られないことがある。
【0067】
前記電子写真用現像剤が前記二成分現像剤である場合、前記キャリアの前記二成分現像剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、50質量%超99質量未満が好ましく、90質量%超97質量%未満がより好ましい(即ち、前記電子写真用トナーの前記二成分現像剤における含有量としては、1〜50質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい)。
【0068】
本発明の電子写真用現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができ、以下の本発明のプロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法に特に好適に用いることができる。
【0069】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、後述する本発明の画像形成装置に着脱可能な部品であり、静電潜像を担持させる静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、現像剤を用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有する。
前記現像手段は、本発明の前記電子写真用トナー乃至前記電子写真現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容された電子写真用トナー乃至電子写真用現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有する。したがって、特に後述する本発明の画像形成装置に装着することにより、定着性及び耐ボイド性に優れた高品質の画像を形成することができる。
【0070】
(画像形成方法及び画像形成装置)
本発明の画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を本発明の前記電子写真用現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を光定着させる光定着工程とを少なくとも含む。
本発明の画像形成装置は、静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を本発明の前記電子写真用現像剤を用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を光定着させる光定着手段とを少なくとも有する。
【0071】
本発明の画像形成方法は、上述のように、静電潜像形成工程と、現像工程と、転写工程と、光定着工程とを含み、必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程、制御工程、などを含んでいてもよい。
本発明の画像形成装置は、上述のように、静電潜像担持体と、静電潜像形成手段と、現像手段と、転写手段と、光定着手段とを有してなり、必要に応じて適宜選択したその他の手段、例えば除電手段、クリーニング手段、リサイクル手段、制御手段、などを有していてもよい。
【0072】
本発明の画像形成方法は、本発明の画像形成装置により好適に実施することができ、前記静電潜像形成工程は前記静電潜像形成手段により行うことができ、前記現像工程は前記現像手段により行うことができ、前記転写工程は前記転写手段により行うことができ、前記光定着工程は前記光定着手段により行うことができ、前記その他の工程は前記その他の手段により行うことができる。
【0073】
−静電潜像形成工程及び静電潜像形成手段−
前記静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程である。
前記静電潜像担持体(「光導電性絶縁体」、「感光体」と称することがある)としては、その材質、形状、構造、大きさ、材質等について特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、その形状としてはドラム状が好適に挙げられ、その材質としては、例えばアモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体、などが挙げられる。これらの中でも、長寿命性の点でアモルファスシリコン等が好ましい。
【0074】
前記静電潜像の形成は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、前記静電潜像形成手段により行うことができる。
前記静電潜像形成手段は、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電器と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光器とを少なくとも備える。
【0075】
前記帯電は、例えば、前記帯電器を用いて前記静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。
前記帯電器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えたそれ自体公知の接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器、などが挙げられる。
【0076】
前記露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。
前記露光器としては、前記帯電器により帯電された前記静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザー光学系、液晶シャッタ光学系、などの各種露光器が挙げられる。
なお、本発明においては、前記静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0077】
−現像工程及び現像手段−
前記現像工程は、前記静電潜像を、本発明の前記電子写真用トナー乃至前記電子写真用現像剤を用いて現像して可視像を形成する工程である。
前記可視像の形成は、例えば、前記静電潜像を本発明の前記電子写真用トナー乃至前記電子写真用現像剤を用いて現像することにより行うことができ、前記現像手段により行うことができる。
前記現像手段は、前記電子写真用トナー乃至前記電子写真用現像剤を収容し、前記静電潜像に該電子写真用トナー乃至前記電子写真用現像剤を接触又は非接触的に付与する現像器を少なくとも有する。
【0078】
前記現像器は、乾式現像方式のものであってもよいし、湿式現像方式のものであってもよく、また、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよいが、例えば、前記電子写真用トナー乃至電子写真用現像剤を摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、回転可能なマグネットローラとを有してなるものなどが好適に挙げられる。
【0079】
前記現像器内では、例えば、前記電子写真用トナーと前記キャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦により該電子写真用トナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。該マグネットローラは、前記静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、該マグネットローラの表面に形成された前記磁気ブラシを構成する前記電子写真用トナーの一部は、電気的な吸引力によって該静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、前記静電潜像が該電子写真用トナーにより現像されて該静電潜像担持体(感光体)の表面に該電子写真用トナーによる可視像が形成される。
【0080】
前記現像器に収容させる現像剤は、本発明の前記電子写真用トナーを含む電子写真用現像剤であるが、該電子写真用現像剤としては一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよい。該電子写真用現像剤に含まれるトナーは、本発明の前記電子写真用トナーである。
【0081】
−転写工程及び転写手段−
前記転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であるが、最下層可視像と上層可視像とを中間転写体上にこの順に転写して複合転写像を形成する第一転写工程と、該複合転写像における前記最下層可視像が記録媒体の直上に位置するように該複合転写像を記録媒体上に転写する第二転写工程とを含む態様が好ましい。
前記転写は、例えば、前記可視像を転写帯電器を用いて前記静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、前記転写手段により行うことができる。前記転写手段としては、最下層可視像と上層可視像とを中間転写体上にこの順に転写して複合転写像を形成する第一転写手段と、該複合転写像における前記最下層可視像が記録媒体の直上に位置するように該複合転写像を記録媒体上に転写する第二転写手段とを有する態様が好ましい。
なお、前記中間転写体としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができる。
【0082】
なお、前記転写の際、ブラックトナーについては、色重ねにおける色再現性とは関係ないことから、任意の順番で転写することができるが、墨入れという観点からは、最後に転写するのが好ましい。
【0083】
前記転写手段(前記第一転写手段、前記第二転写手段)は、前記静電潜像担持体(感光体)上に形成された前記可視像を前記記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有する。前記転写手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
前記転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、などが挙げられる。
なお、前記記録媒体としては、特に制限はなく、公知の記録媒体(記録紙)の中から適宜選択することができる。
【0084】
−光定着工程及び光定着手段−
前記光定着工程は、記録媒体に転写された可視像を光定着装置を用いて光定着させる工程であり、各色の電子写真用トナーに対し前記記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色の電子写真用トナーに対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0085】
前記光定着の際の光エネルギー(「フラッシュエネルギー」と称することがある)としては、カラートナー1色当たり、1〜3J/cm程度が好ましく、4色まとめて定着を行う場合には、2〜7J/cm程度が好ましく、3〜5J/cm程度がより好ましい。
前記光エネルギーが、前記数値範囲に満たないと、良好に定着できないことがある一方、前記数値範囲を超えると、トナーボイド、用紙の焦げ等が発生することがある。
【0086】
前記光定着は、例えば、前記記録媒体に転写された前記可視像に対し光定着器を用いて光照射することにより行うことができ、前記光定着手段により行うことができる。
前記光定着手段は、赤外線を照射するフラッシュ定着器(フラッシュランプ)を少なくとも有する。前記光定着手段は、1つであってもよいし、2以上であってもよい。
前記フラッシュ定着器(フラッシュランプ)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、赤外線ランプ、キセノンランプなどが好適に挙げられる。
【0087】
前記光定着における前記光定着手段による発光波長としては、用いる赤外線吸収剤における吸収波長と近いのが好ましい。
前記フラッシュ定着器(フラッシュランプ)による発光の強度を示すフラッシュ光1回の単位面積当りの光エネルギー(J/cm)は、次式(1)、
S=((1/2)×C×V)/(u×l)/(n×f)、・・・・・式(1)
から算出することができる。
ただし、前記式(1)において、「n」はランプ本数(本)を表し、「f」は、点灯周波数(Hz)を表し、「V」は入力電圧(V)を表し、「C」はコンデンサ容量(μF)を表し、「u」はプロセス搬送速度(mm/s)を表し、「l」は印字幅(mm)を表し、「S」はエネルギー密度(J/cm)を表す。
【0088】
なお、本発明においては、目的に応じて、前記光定着工程及び前記光定着手段と共にあるいはこれらに代えて、例えば、熱ローラ定着器などの公知の定着器を用いてもよい。
【0089】
前記除電工程は、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電手段により好適に行うことができる。
前記除電手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0090】
前記クリーニング工程は、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去する工程であり、クリーニング手段により好適に行うことができる。
前記クリーニング手段としては、特に制限はなく、前記静電潜像担持体上に残留する前記電子写真トナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができ、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が好適に挙げられる。
【0091】
前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程により除去した前記電子写真用カラートナーを前記現像手段にリサイクルさせる工程であり、リサイクル手段により好適に行うことができる。
前記リサイクル手段としては、特に制限はなく、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0092】
前記制御手段は、前記各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0093】
本発明の画像形成装置を用いて本発明の画像形成方法を実施した一例を図1を参照しながら説明する。図1に示すように、画像形成装置100は、中間転写体10と、ブラック現像ユニット20と、シアン現像ユニット30と、マゼンタ現像ユニット40と、イエロー現像ユニット50と、第一転写手段60と、第二転写手段70と、光定着手段80と、クリーニング手段90とを備える。
【0094】
中間転写体10は、回転ベルトであり、4つの回転ローラにより回転可能に張設されており、その外周部には、ブラック現像ユニット20と、シアン現像ユニット30と、マゼンタ現像ユニット40と、イエロー現像ユニット50と、第二転写手段70とが、それぞれ中間転写体10に対向するようにしてこの順に配置されている。中間転写体10は、第二転写手段70側からブラック現像ユニット20方向に向かって回転する。なお、第二転写手段70は転写帯電器であり、二次転写電位供給手段72により駆動可能である。
【0095】
中間転写体10の内周部には、ブラック現像ユニット20と、シアン現像ユニット30と、マゼンタ現像ユニット40と、イエロー現像ユニット50とに対向するようにして、4つの第一転写手段60が配置されている。なお、第一転写手段60は転写帯電器であり、一次転写電位供給手段62により駆動可能である。
ブラック現像ユニット20と、シアン現像ユニット30と、マゼンタ現像ユニット40と、イエロー現像ユニット50とは、それぞれ、帯電手段1と、露光手段2と、静電潜像担持体(感光体)3と、現像手段4とを備えた現像器である。この内、静電潜像担持体(感光体)3は中間転写体10の外周部に対向して配置されている。そして、この静電潜像担持体(感光体)3の周囲に静電潜像担持体(感光体)3に対向するようにして帯電手段1と、露光手段2と、現像手段4とが配置されている。
【0096】
画像形成装置100においては、以下のようにして画像を形成することができる。先ず、ブラック現像ユニット20において、帯電手段1が静電潜像担持体(感光体)3の表面を一様に帯電する。次に露光手段2が静電潜像担持体(感光体)3の表面を、形成すべきブラック像と同じ像様に露光を行う。すると、静電潜像担持体(感光体)3上にブラック静電潜像が形成される。次に、現像手段4が、そこに収容されたブラックトナーを該ブラック静電潜像上に付与することによりこれを現像してブラック可視像を形成する。
【0097】
次に、シアン現像ユニット30において、帯電手段1が静電潜像担持体(感光体)3の表面を一様に帯電する。次に露光手段2が静電潜像担持体(感光体)3の表面を、形成すべきシアン像と同じ像様に露光を行う。すると、静電潜像担持体(感光体)3上にシアン静電潜像が形成される。次に、現像手段4が、そこに収容されたシアントナーを該シアン静電潜像上に付与することによりこれを現像してシアン可視像を形成する。
【0098】
次に、マゼンタ現像ユニット40において、帯電手段1が静電潜像担持体(感光体)3の表面を一様に帯電する。次に露光手段2が静電潜像担持体(感光体)3の表面を、形成すべきマゼンタ像と同じ像様に露光を行う。すると、静電潜像担持体(感光体)3上にマゼンタ静電潜像が形成される。次に、現像手段4が、そこに収容されたマゼンタトナーを該マゼンタ静電潜像上に付与することによりこれを現像してマゼンタ可視像を形成する。
【0099】
次に、イエロー現像ユニット50において、帯電手段1が静電潜像担持体(感光体)3の表面を一様に帯電する。次に露光手段2が静電潜像担持体(感光体)3の表面を、形成すべきイエロー像と同じ像様に露光を行う。すると、静電潜像担持体(感光体)3上にイエロー静電潜像が形成される。次に、現像手段4が、そこに収容されたイエロートナーを該イエロー静電潜像上に付与することによりこれを現像してイエロー可視像を形成する。
【0100】
そして、ブラック現像ユニット20、シアン現像ユニット30、マゼンタ現像ユニット40、イエロー現像ユニット50における各静電潜像担持体(感光体)3上に形成されたブラック可視像、シアン可視像、マゼンタ可視像及びイエロー可視像が、第一転写手段60による転写電位の作用により、この順に中間転写体10上に順次転写され積層されて、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローによるフルカラーの転写像が形成される。
【0101】
次に、前記転写像が、第二転写手段70による転写電位の作用により、この順に記録媒体上に一度に転写されて、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローによるフルカラーの転写像が記録媒体上に形成される。なお、このとき、該転写像においては、記録媒体側から、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの順にトナーが積層されている。
【0102】
そして、記録媒体上に形成された前記転写像は、光定着手段80のところまで搬送され、そこで光定着手段80から光の照射を受けて、溶融し、記録媒体上に光定着される。こうして、記録媒体上には前記複合転写像が強固に定着されて、該複合転写像によるフルカラー画像が形成される。
なお、中間転写体10上に残留するトナーは、クリーニング手段90としてのクリーニングブレードによって除去される。
【0103】
本発明の画像形成装置又は画像形成方法によると、定着性及び耐ボイド性を高次に両立しつつ、高品質な画像を効率良く形成することができる。
【0104】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(ポリエステルA〜Cの合成)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン25モル、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン25モル、テレフタル酸25モル、イソフタル酸25モル、及び5.0gのジブチル錫オキシドをガラス製の4つ口フラスコに入れ、温度計、ステンレス製撹拌棒、流下式コンデンサー、及び、窒素導入管を取り付け、マントルヒーター中で窒素気流下、220℃にて15時間、240℃にて15時間、更に同温度で60mmHgの減圧にて2時間反応させて反応を終了し、表1に示す組成のポリエステルA〜Cを合成した。
【0105】
【表1】
Figure 0003852354
【0106】
(実施例1〜16及び比較例1〜14)
−電子写真用トナーの製造−
表2〜4に基づき、各トナー組成物をヘンシェルミキサーに投入し、予備混合を行った後、強く脱気しながらエクストルーダにより混練し、次いでハンマーミルにて粗粉砕し、ジェットミルにて微粉砕した後、気流分級機にて分級を行い、体積平均粒径(D50)が8.5±0.5μmの着色微粒子を得た。次いで、疎水性シリカ微粒子(R974 日本エアロジル社製)の0.5質量部をヘンシェルミキサーで外添処理することにより、各電子写真用トナーを製造した。
【0107】
−画像の形成−
得られた各電子写真用トナーを、図1に概略的に示した構成のGL8300プリンタ(富士通(株)製)を用いて普通紙(NIP−1500LT、小林記録紙(株)製)上に画像形成を行った。
なお、図1に概略的に示した画像形成装置100における光定着手段80として、フラッシュプリンタPS2160(富士通(株)製)におけるフラッシュ(フラッシュランプ)定着器を用いた。また、該フラッシュ(フラッシュランプ)定着器の発光波形を図2に示した。該フラッシュ(フラッシュランプ)定着器の光エネルギーは3.5J/cmであった。
【0108】
<定着性評価(テープ剥離試験)>
前記各画像が形成された普通紙上の画像ステータスA濃度を測定した。次いで、普通紙のトナー像上に剥離テープ(商品名「スコッチメディングテープ」(住友3M社製))を粘着させた後、該剥離テープを剥離し、剥離後の普通紙上のステータス濃度を再度測定し、剥離テープを剥離する前の普通紙上の画像印字濃度を100とした場合の、剥離後の普通紙上の画像印字濃度(%)を、トナー定着率とし、下記評価基準に従い評価した。
・定着率が70%未満である場合・・・・・・・・×
・定着率が70%以上80%未満である場合・・・△
・定着率が80%以上90%未満である場合・・・○
・定着率が90%以上である場合・・・・・・・・◎
なお、ステータス濃度の測定には、分光計(938 Spectrodentitometer(X−Rite社製))を用いた。下記評価基準において、実用レベルは80%以上である。結果を表2〜4に示した。
【0109】
<ボイドの評価>
得られた各画像に対し、光学顕微鏡を用いて観察し、下記評価基準により評価した。結果を表2〜4に示した。
・明らかにボイドが発生していると観察される場合・・・×
・標準条件(トナー付着量が0.6mg/cm)でボイドが少し観察されるが、目視では確認できない場合・・・△
・標準条件(トナー付着量が0.6mg/cm)でボイドが観察されない場合・・・○
・トナー付着量が0.9mg/cm以上であっても、ボイドが観察されない場合・・・◎
【0110】
<光定着時の臭気評価>
前記画像の形成の際に発生する臭気を、10名のパネラーにより官能評価してもらい、以下の評価基準により評価した。結果を表2〜4に示した。
・8名以上が無臭であると評価した場合・・・◎
・6〜7名が無臭であると判断した場合・・・○
・5名以下が無臭であると判断した場合・・・×
【0111】
<解像性評価>
形成された画像について、2成分現像特有のブラシマークの有無を調査し、以下の評価基準により解像性を評価した。結果を表2〜4に示した。
・顕微鏡で観察してもブラシマークが観察されない場合・・・◎
・目視で観察してもブラシマークが観察されない場合・・・・○
・目視で観察するとブラシマークが若干観察される場合・・・△
【0112】
【表2】
Figure 0003852354
【0113】
【表3】
Figure 0003852354
【0114】
【表4】
Figure 0003852354
【0115】
なお、表2〜4で使用したワックスの詳細を表5に、顔料の詳細を表6に、各々示した。また、赤外線吸収剤は、ニッケル錯体(商品名;SIR−130、三井化学社製、最大吸収波長(nm);855nm、色調;茶色)を用いた。
【0116】
【表5】
Figure 0003852354
【0117】
表5において、「WEC−4」の化学構造は、C[CH−O−CO−(CH14−CHであり、「WEP−5F」の化学構造は、C[CH−O−CO−(CH20−CHであり、ワックスB−4における「200P/800P=1/1」は、200Pと800P(三井化学社製)との一対一ブレンド品であり、ワックスB−7における「200P/NL900P=1/1」は、200PとNL900Pとの一対一ブレンド品であり、「200P/C−10=1/1」は、200PとC−10との一対一ブレンド品である。
【0118】
【表6】
Figure 0003852354
【0119】
表4から、比較例2〜7で評価されるように、定着性に関しては、融点が90℃以下のワックス(即ち、DSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて、0〜90℃にピークを有するワックス)によって向上する(比較例2〜5、比較例7)ものの、重量平均分子量(Mw)が500以下の成分比率の高いワックスを用いた場合(比較例2〜3)、及び、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5を超えるワックスを用いた場合(比較例7)には、光定着時に、昇華による用紙の汚れ、装置汚染、臭気の発生等が観られた。また、ボイドは何れの電子写真用トナーにおいても観られた。
【0120】
表2から、融点が90℃以下で、重量平均分子量(Mw)が500以下の成分比率が低く、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5以下であるワックスと、融点が100〜150℃のワックスを併用した場合(実施例1〜4、比較例8〜11、比較例12〜14)、融点が100〜150℃のワックスとして、分子量分布(Mw/Mn)が5〜20のものを用いた場合(実施例1〜4)に、定着性及び耐ボイド性のいずれも優れることが判った。
【0121】
表3から、融点が90℃以下で、重量平均分子量(Mw)が500以下の成分比率が低く、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5以下であるワックスと、融点が150℃以上のワックスとを併用して評価したところ、融点が150℃以上のワックスにおける分子量分布(Mw/Mn)に関係なく、耐ボイド性に優れていた(実施例5〜6)。
融点が90℃以下で、重量平均分子量(Mw)が500以下の成分比率が低く、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5以下であるワックスと、融点が100〜150℃で、分子量分布(Mw/Mn)が5〜20のワックスと、融点が150〜170℃のワックスとを併用して評価したところ、ヒートロールと同等の優れた画質が得られた(実施例7)。
結着樹脂として、ソフトセグメント含有品を用いた場合には、定着性及び耐ボイド性は優れていたものの、残留モノマーにより、若干臭気が発生した(実施例8〜9)。
融点が90℃以下で、重量平均分子量(Mw)が500以下の成分比率が低く、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5以下であるワックスの含有量に関しては、含有量が0.1質量%では定着性がやや劣る結果となっており(実施例10)、また、含有量が5質量%ではトナー流動性が悪く、画像が乱れ、解像性が低下していた(実施例12)。
融点が100〜150℃で、分子量分布(Mw/Mn)が5〜20であるワックスの含有量に関しては、含有量が0.1質量%では耐ボイド性がやや劣っており(実施例13)、2質量%では、トナー流動性が悪く、画像が乱れ、解像性が低下していた(実施例14)。また、トナーの製造時の収率も10%程度低下していた。
実施例1〜14と異なる顔料を用いた実施例15〜16においても、定着性及び耐ボイド性に優れ、良好な結果であった。
【0122】
ここで、本発明の好ましい態様を付記すると、以下の通りである。
(付記1) 結着樹脂及びワックス成分を含有してなり、
前記ワックス成分が、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて60〜90℃の温度領域に吸熱ピークを有し、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)が500以下の成分を実質的に含有しない第一のワックスと、
示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて100〜150℃の温度領域に吸熱ピークを有し、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が5超20以下である第二のワックス、及び、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて150〜170℃の温度領域に吸熱ピークを有し、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.1以上である第三のワックスの少なくともいずれかとを含有することを特徴とする電子写真用トナー。
(付記2) 第一のワックスと第二のワックスと第三のワックスとを含有する付記1に記載の電子写真用トナー。
(付記3) 第一のワックスにおける、重量平均分子量(Mw)が500以下の成分の含有量が1.0質量%以下である付記1又は2に記載の電子写真用トナー。
(付記4) 第三のワックスにおける分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.0以上である付記1から3のいずれかに記載の電子写真用トナー。
(付記5) 重量平均分子量(Mw)が500以下の成分の含有量が4質量%以下である付記1から4のいずれか記載の電子写真用トナー。
(付記6) 第一のワックスが下記一般式で表されるエステルワックスから選択され、第二のワックスがポリエチレンワックスから選択され、第三のワックスがポリプロピレンワックス及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物ワックスから選択される付記1から5のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【化5】
C−[CH−O−CO−(CH)n−CH
前記一般式において、nは3以上の整数を表す。
(付記7) エステルワックスの含有量が0.1〜5質量%であり、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物ワックスの含有量が0.1〜1質量%である付記6に記載の電子写真用トナー。
(付記8) 結着樹脂がポリエステル樹脂から選択される付記1から7のいずれかに記載の電子写真用トナー。
(付記9) ポリエステル樹脂が、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を原料アルコール成分中の80モル%以上用いて得られた付記8に記載の電子写真用トナー。
(付記10) ポリエステル樹脂が、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を原料アルコール成分中の95モル%以上用いて得られた付記8に記載の電子写真用トナー。
(付記11) ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物が、下記構造式で表される付記9又は10に記載の電子写真用トナー。
【化6】
Figure 0003852354
但し、前記一般式(1)において、Rは、エチレン基又はプロピレン基を表す。x及びyは、各々1以上の整数を表す。
(付記12) ポリエステル樹脂におけるソフトセグメントの含有量が、モノマーユニットで2モル%未満である付記8から11のいずれかに記載の電子写真用トナー。
(付記13) 赤外線吸収剤を含む付記1から12のいずれかに記載の電子写真用トナー。
(付記14) 赤外線吸収剤の含有量が0.1〜1.5質量%である付記13に記載の電子写真用トナー。
(付記15) 付記1から14のいずれかに記載の電子写真用トナーを含むことを特徴とする電子写真用現像剤。
(付記16) 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に担持された静電潜像を、付記1から14のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段とを、少なくとも有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
(付記17) 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を、付記1から14のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を光定着させる光定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。
(付記18) 光定着工程における光定着の際の光エネルギーが2〜7J/cmである付記17に記載の画像形成装置。
(付記19) 静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像を、付記1から14のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、記録媒体に転写された転写像を光定着させる光定着工程とを少なくとも含むことを特徴とする画像形成方法。
(付記20) 電子写真用トナーが、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの4色フルカラーである付記19に記載の画像形成方法。
【0123】
【発明の効果】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、定着性及び耐ボイド性を高次に両立し、高品質な画像を形成可能な電子写真用トナー並びに電子写真用現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の画像形成装置を用いて実施した本発明の画像形成方法の一例を示す概略説明図である。
【図2】図2は、フラッシュ定着器の発光波形を示すグラフである。
【符号の説明】
1 帯電手段
2 露光手段
3 静電潜像担持体(感光体)
4 現像手段
10 中間転写体
20 ブラック現像ユニット
30 シアン現像ユニット
40 マゼンタ現像ユニット
50 イエロー現像ユニット
60 第一転写手段
62 一次転写電圧供給手段
70 第二転写手段
72 二次転写電圧供給手段
80 光定着手段
90 クリーニング手段

Claims (5)

  1. 結着樹脂及びワックス成分を含有してなり、
    前記ワックス成分が、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて60〜90℃の温度領域に吸熱ピークを有し、GPC法に基づく分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.5以下であり、かつ重量平均分子量(Mw)が500以下の成分を実質的に含有しない第一のワックスと、
    示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて100〜150℃の温度領域に吸熱ピークを有し、GPC法に基づく分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が5超20以下である第二のワックス、及び、
    示差走査熱量計により測定されるDSC曲線の昇温時の吸熱ピークにおいて150〜170℃の温度領域に吸熱ピークを有し、GPC法に基づく分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が1.1以上である第三のワックスの少なくともいずれかと、
    を含有することを特徴とする電子写真用トナー。
  2. 第一のワックスと第二のワックスと第三のワックスとを含有する請求項1に記載の電子写真用トナー。
  3. 第一のワックスが下記一般式で表されるエステルワックスから選択され、第二のワックスがポリエチレンワックスから選択され、第三のワックスがポリプロピレンワックス及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物ワックスから選択される請求項1又は2に記載の電子写真用トナー。
    Figure 0003852354
    前記一般式において、nは3以上の整数を表す。
  4. エステルワックスの含有量が0.1〜5質量%であり、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びポリエチレンとポリプロピレンとの共重合物ワックスの含有量が0.1〜1質量%である請求項3に記載の電子写真用トナー。
  5. 静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像を、請求項1から4のいずれかに記載の電子写真用トナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を光定着させる光定着手段とを少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。
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