JP3836433B2 - 改良された水系現像可能なフレキソ印刷用感光性樹脂 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、水系現像可能な印刷版用感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常の水系現像可能な感光性樹脂印刷版は、寸法精度を維持する為の支持体層の上に、親水性共重合体、熱可塑性エラストマーなどの疎水性樹脂、光重合性不飽和単量体、及び光重合開始剤などを混合した感光性樹脂組成物からなる層を形成し、さらにその上に、スリップ層又は保護層と呼ばれる薄い可とう性フィルム層や、赤外線レーザーでアブレージョン可能な薄層を設けられた構成体からなっているのが一般的である。
その構成体から印刷版を製造する方法としては、可とうフィルム層を設けた場合は、その上に透明画像担体(ネガフィルム)を密着させ、そのネガフィルムを通じて活性光線を照射し、感光性樹脂組成物層の特定部分を選択的に光硬化することで画像を形成させた後、該組成物層の未露光部分を水系現像液を用いて除去(現像)することで印刷用レリーフを形成している。
【0003】
このようなフレキソ印刷用感光性樹脂組成物は、必要とする画像を忠実に得るには組成物中の各成分が細かく均一に分散していることが好ましく、また製版時間の短縮のためには現像速度が速いことが好ましい。このように水系現像液に対する良好な現像性が必要な一方で、製版後は、水性インキを使用した際の耐刷性が高く、更に印刷後に版に付着したインキを水等を用いて拭き取るときの印刷版の耐破壊性(耐版拭き性)を有している必要があり、高い耐水性や耐版拭き性が要求される。
水系現像可能な感光性樹脂として、目的に応じて種々の提案がなされている。特開平7−114180号公報には、リン酸エステル基を必須成分とする親水性共重合体を用いた感光性樹脂組成物が提案されている。ここでは、水系現像液で現像でき、感光性、透明性、加工性を有する樹脂組成物であって、硬化時には透明性、低温弾力性に優れる硬化物を提供することを目的としている。しかし、親水性共重合体の親水基の必須成分にリン酸エステル基が用いられているため、耐水性、耐版拭き性あるいは耐刷性が必ずしも十分でない。また、この公報の比較例2Cでは、リン酸エステルに代えて、メタクリル酸を使用しているが、その使用量が多すぎ、耐水性、耐刷性が不十分である。
【0004】
米国特許第5731129号明細書には、カルボキシル基を有する不飽和単量体、共役ジエン系単量体を必須成分とし、芳香族ビニル化合物及びアルキル(メタ)アクリレートを任意成分とする親水性共重合体を用いた感光性樹脂組成物が提案されている。この発明は水系現像液で現像した際に、水による膨潤、強度低下、寸法変化を抑止することを目的としている。しかし、親水性共重合体の重合に用いられる単量体に、カルボキシル基を有する不飽和単量体、共役ジエン系単量体、芳香族ビニル化合物及びアルキル(メタ)アクリレートのすべてが同時に用いられていないので、樹脂組成物の相溶性、水系現像性、あるいは耐刷性が必ずしも十分ではない。
【0005】
特開昭63−8648号公報には、多官能ビニル化合物により架橋した親水性共重合体粒子を用いた感光性樹脂組成物が提案されている。この発明は、マトリクス成分である疎水性樹脂と親水性樹脂粒子とが化学的及び光学的に近似した組成とすることで、光による
硬化効率及びレリーフ画像の再現性が損なわれるのを抑止することを目的としている。しかし、親水性共重合体の重合に用いられる単量体に、共役ジエンが用いられていないので、耐水性や耐刷性が必ずしも十分ではない。また、多官能ビニル化合物が多く使用されているので、十分な耐刷性が得られない。
【0006】
特公平5−5106号公報には、カルボキシル基を有する親水性高分子化合物を用いた感光性樹脂組成物が提案されている。この発明は、ポリマー成分に、この親水性高分子化合物と疎水性の共重合体を用いた組成とすることで、水やアルコールベースのインキに対する耐性の低下を抑制することを目的としている。しかし、親水性共重合体の重合に用いられる単量体に、カルボキシル基を有する不飽和単量体、共役ジエン系単量体、芳香族ビニル化合物及びアルキル(メタ)アクリレートのすべてが同時に用いられていないので、樹脂組成物の相溶性、水系現像性、あるいは耐刷性が必ずしも十分ではない。
【0007】
米国特許第5348844号明細書には、カルボキシル基を有する不飽和単量体、共役ジエン系単量体、多官能のビニル化合物を必須成分とし、芳香族ビニル化合物及びアルキル(メタ)アクリレートを任意成分とする親水性共重合体を用いた感光性樹脂組成物が提案されている。この発明は、弾性、耐刷性あるいはレリーフ画像の再現性が損なわれるのを抑制することを目的としている。しかし、カルボキシル基を有する不飽和単量体、共役ジエン系単量体、芳香族ビニル化合物及びアルキル(メタ)アクリレートのすべてが同時に用いられていないので、樹脂組成物の相溶性、水系現像性、あるいは耐刷性が必ずしも十分ではない。
【0008】
特表2001−512180公報には、界面活性剤モノマーを含むエチレン性不飽和モノマーからなる親水性共重合体を用いた感光性樹脂組成物が提案されている。原料として親水性モノマーを必須とせず、一段の重合工程でも親水性重合体を製造できるとの記載がある。しかし、親水性共重合体の重合に用いられる単量体に、カルボキシル基を有する不飽和単量体、共役ジエン系単量体、芳香族ビニル化合物及びアルキル(メタ)アクリレートのすべてが同時に用いられていないので、耐水性や耐刷性が必ずしも十分でない。
このように、従来の水系現像可能な感光性樹脂組成物は、上記したように親水性成分と疎水性成分の混合物のため、それらの相溶(分散)性に問題があったり、樹脂組成物の水系現像性が低かったり、露光作成した印刷版の耐刷性が低かったり、耐水性が低かったり、あるいは耐版拭き性が低かったりする問題を抱えていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明における技術的課題は、上記した問題点を解決するため、以下の6つの要求を同時に満たすことができる感光性樹脂組成物を提供することである。
1) 感光性樹脂の組成の相溶(分散)性が高いこと
2) 水系現像液での現像時間が早いこと
3) 印刷版の画像再現性が高いこと
4) 印刷版の耐水性が高いこと
5) 印刷版(特に、水性インクを使用した際)の耐刷性(耐摩耗性)が高いこと
6) 印刷版に付着したインクの除去時の耐版拭き性が高いこと
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、少なくとも(1)カルボキシル基を有する不飽和単量体(2)共役ジエン系単量体(3)芳香族ビニル化合物及び(4)アルキル(メタ)アクリレートを一定割合で同時に用いて得られる親水性重合体を用いることにより上記課題を解決できることを見出し本発明を完成した。
本発明の第一の態様は、
(A)親水性共重合体、
(B)熱可塑性エラストマー、
(C)光重合性不飽和単量体、及び
(D)光重合開始剤
を含有するフレキソ印刷用感光性樹脂組成物であって、親水性共重合体(A)が、その重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、少なくとも
(1)カルボキシル基を有する不飽和単量体2〜15質量部、
(2)共役ジエン系単量体50〜80質量部、
(3)芳香族ビニル化合物(但し、1分子中にビニル結合を2個以上有する単量体を除 く)3〜20質量部、及び
(4)アルキル(メタ)アクリレート3〜30質量部
を共重合させて得られる重合体であることを特徴とするフレキソ印刷用感光性樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明の第二の態様は、親水性共重合体(A)のトルエンを用いて測定したゲル分率が80〜95%である上記本発明の第一の態様のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物に関する。
本発明の第三の態様は、親水性共重合体(A)が乳化重合で合成され、その重合温度が60℃以上である上記本発明の第一又は第二の態様のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物に関する。
本発明の第四の態様は、重合温度が70℃以上である上記本発明の第三の態様のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物に関する。
本発明の第五の態様は、親水性共重合体(A)が、その重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、少なくとも
(1)カルボキシル基を有する不飽和単量体2〜15質量部、
(2)共役ジエン系単量体50〜80質量部、
(3)芳香族ビニル化合物(但し、1分子中にビニル結合を2個以上有する単量体を除 く)3〜20質量部、及び
(4)アルキル(メタ)アクリレート3〜30質量部
と、さらに多官能ビニル化合物0.5質量部以下とを、共重合させて得られる、上記本発明の第一から第四の態様のいずれかのフレキソ印刷用感光性樹脂組成物に関する。
【0012】
本発明の第六の態様は、親水性共重合体(A)の数平均粒子径の範囲が5〜100nmである上記本発明の第一の態様のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物に関する。
本発明の第七の態様は、親水性共重合体(A)の乳化重合に使用する乳化剤が、親水性共重合体100質量部に対して、非反応性乳化剤が1質量部未満で、且つ反応性乳化剤が1〜20質量部である上記本発明の第一から第六の態様のいずれかのフレキソ印刷用感光性樹脂組成物に関する。
本発明の第八の態様は、反応性乳化剤が、ポリオキシアルキレン構造を含有する上記本発明の第七の態様のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物に関する。
本発明の第九の態様は、支持体と、その面上に形成された上記本発明の第一から第八の態様いずれかの感光性樹脂組成物の層からなる積層構造を有するフレキソ印刷版用感光性構成体に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
親水性共重合体(A)の必須成分のカルボキシル基を有する不飽和単量体(1)としては、カルボキシル基を有する一塩基酸単量体、及び二塩基酸単量体等があげられる。
より具体的には一塩基酸単量体として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸、桂皮酸、及びこれらの一塩基酸単量体のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、等が例示できる。
二塩基酸単量体としては、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、ムコン酸、及びこれらの二塩基酸単量体のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、等が例
示できる。
本発明においては、1種又は2種以上のカルボキシル基を有する不飽和単量体を用いることができる。
これらのうち、入手性の点で、一塩基酸単量体では、アクリル酸やメタクリル酸が好ましく、二塩基酸では、イタコン酸やフマル酸が好ましい。
【0014】
カルボキシル基を有する不飽和単量体(1)は、親水性共重合体(A)の重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、2〜15質量部である。15質量部より低い場合に、良好な耐水性、加工性が得られ、2質量部より大きい時に十分な水系現像性が達成できる。好ましくは2〜10質量部である。
親水性共重合体(A)の必須成分の共役ジエン系単量体(2)としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、2−クロル−1,3−ブタジエン、シクロペンタジエン等が例示できる。
本発明においては、1種又は2種以上の共役ジエン系単量体を用いることができる。
これらのうちでは、入手性の点で、ブタジエンが好ましい。
【0015】
共役ジエン(2)は、親水性共重合体(A)の重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、50〜80質量部である。80質量部より低い場合には、良好な加工性が得られ、50質量部より大きい時には耐水性や耐刷性の低下を防ぐことができる。好ましくは60〜80質量部である。
親水性共重合体(A)の必須成分の芳香族ビニル化合物(3)としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、ビニルキシレン、ブロモスチレン、ビニルベンジルクロリド、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレン、及びアルキルスチレン等が例示できる。
本発明においては、1種又は2種以上の芳香族ビニル化合物を用いることができる。
これらのうちでは、重合のし易さの点で、スチレンが好ましい。
芳香族ビニル化合物(3)は、親水性共重合体(A)の重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、3〜20質量部である。20質量部より低い場合には、充分な画像再現性、水系現像性が得られ、3質量部より大きい時には感光性樹脂組成物の成分をそれら混合物内で充分均一に分散させることができる。好ましくは5〜20質量部である。
【0016】
親水性共重合体(A)の必須成分のアルキル(メタ)アクリレート(4)とは、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの総称であり、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0017】
本発明においては、1種又は2種以上のアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
これらのうちでは、合成のし易さの点で、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及び2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート(4)は、親水性共重合体(A)の重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、3〜30質量部である。30質量部より低い場合には、良好な耐水性が得られ、3質量部より大きい時には十分な水系現像性が達成できる。好ま
しくは、5〜25質量部である。
親水性共重合体(A)において、上記成分(1)〜(4)以外に使用することのできる不飽和単量体としては、多官能ビニル化合物、水酸基を有するエチレン系モノカルボン酸アルキルエステル単量体、不飽和二塩基酸アルキルエステル、無水マレイン酸、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ハロゲン化ビニル類、アミノ基を有する塩基性単量体、ビニルピリジン、オレフィン、ケイ素含有α,β−エチレン性不飽和単量体、アリル化合物、反応性乳化剤等が挙げられる。
本発明において必要に応じて用いることのできる多官能ビニル化合物とは、1分子中にビニル結合を2個以上有する単量体(ただし、共役ジエン単量体は除く)であり、芳香族多官能ビニル化合物や多官能(メタ)アルキルアクリレート等が挙げられる。
【0018】
芳香族多官能ビニル化合物としては、ジビニルベンゼンやトリビニルベンゼン等が挙げられる。多官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、メトキシポリエチリングリコール(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン等が例示できる。また、親水性基を有する多官能ビニル化合物も含まれる。
これらは、1種以上用いても良いし、2種以上組み合わせても良い。
【0019】
多官能ビニル化合物は、耐刷性や耐版拭き性の点で、少ない方が好ましく、親水性共重合体(A)に用いる単量体100質量部に対して0.5質量部以下が好ましい。
水酸基を有するエチレン系モノカルボン酸アルキルエステル単量体としては例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸1−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸1−ヒドロキシプロピル、ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
不飽和二塩基酸アルキルエステルとしてはクロトン酸アルキルエステル、イタコン酸アルキルエステル、フマル酸アルキルエステル、マレイン酸アルキルエステル、等を例示できる。
シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を例示できる。
【0020】
(メタ)アクリルアミド及びその誘導体としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド等を例示できる
。
ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルステアレート、ビニルラウレート、ビニルミリステート、ビニルプロピオネート、バーサティク酸ビニル等を例示できる。
ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等を例示できる。
ハロゲン化ビニル類としては、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等を例示できる。
アミノ基を有する塩基性単量体としては、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、等を例示できる。
オレフィンとしては、エチレン等を例示できる。
ケイ素含有α,β−エチレン性不飽和単量体としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン等を例示できる。
これらの単量体は単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
【0021】
本発明に用いられる親水性共重合体(A)の重合方法は特に限定されないが、乳化重合が好ましい。乳化重合例としては、重合可能な温度に調整された反応系にあらかじめ所定量の水、乳化剤、及びその他添加剤を仕込み、ついで、重合開始剤及び単量体、乳化剤、調整剤等を回分操作あるいは連続操作で反応系内に添加する事によって重合される。また必要に応じて反応系には所定量のシードラテックス、開始剤、単量体、その他の調整剤をあらかじめ仕込んでおくことも通常良く用いられる方法である。また不飽和単量体、乳化剤、その他の添加剤、調整剤を反応系へ後から添加する方法によって、重合される親水性共重合体粒子の層構造を段階的に変える事も可能である。各層の構造を代表する物性としては、親水性、ガラス転移点、分子量、及び架橋密度などが挙げられる。また、この層構造の段階数は特に制限されない。
乳化重合に使用される乳化剤(界面活性剤)は、耐水性や耐刷性の点で、反応性乳化剤が好ましい。
【0022】
本発明において用いることのできる反応性乳化剤とは、分子構造中にラジカル重合性の二重結合、親水性官能基及び疎水性基をそれぞれ有し、且つ一般の乳化剤と同様に、乳化、分散、及び湿潤機能を持つもので、親水性共重合体を乳化重合するときに、反応性乳化剤を除いた不飽和単量体100質量部に対して、単独で0.1質量部以上用いることで粒径が5〜500nmの重合物が合成できる乳化(界面活性)剤である。分子構造中のラジカル重合性の二重結合の構造例としてはビニル基、アクリロイル基、あるいはメタアクリロイル基などが上げられる。分子構造中の親水性官能基の例としては硫酸基、硝酸基、燐酸基、ホウ酸基、カルボキシル基等のアニオン性基、又はアミノ基等のカチオン性基、又はポリオキシエチレン、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン等のポリオキシアルキレン鎖構造等や水酸基等が挙げられる。分子構造中の疎水性基としてはアルキル基、フェニル基等が挙げられる。この反応性乳化剤はその構造に含まれる親水性官能基の構造の種類によりアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤等を含む。また、それらは分子構造中のラジカル重合性の二重結合、親水性官能基及び疎水性基は複数の種類の構造、官能基を有することも可能である。
このような反応性乳化剤(反応性界面活性剤)の例を下記(i)〜(viii)に示す。
【0023】
【化1】
【0024】
【化2】
【0025】
本発明において反応性乳化剤として使用できるもののうち一般的に市販されているものを以下に示すと、アニオン界面活性剤としては、アデカリアソープSE(旭電化工業、商品名)、アクアロンHSやBCやKH(第一工業製薬、商品名)、ラテムルS(花王、商品名)、アントックスMS(日本乳化剤、商品名)、アデカリアソープSDXやPP(旭電化工業、商品名)、ハイテノールA(第一工業製薬、商品名)、エレミノールRS(三洋化成工業、商品名)、スピノマー(東洋曹達工業、商品名)など、非イオン界面活性剤としては、アクアロンRNやノイゲンN(第一工業製薬、商品名)、アデカリアソープNE(旭電化工業、商品名)などを例示できるが、これらに限定されるものではない。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
乳化重合に用いる反応性乳化剤の使用量は、親水性共重合体(A)の重合に用いられる不飽和単量体100質量部のうち、良好な画像再現性の点で、1質量部以上、耐水性や耐
刷性の点で、20質量部以下が好ましい。
【0026】
本発明おいて非反応性乳化剤を用いても良い。
非反応性乳化剤とは、脂肪酸せっけん、ロジン酸せっけん、スルホン酸塩、サルフェート、リン酸エステル、ポリリン酸エステル、サリコジン酸アシル、等のアニオン界面活性剤、ニトリル化油脂誘導体、油脂誘導体、脂肪酸誘導体、α−オレフィン誘導体等のカチオン界面活性剤、アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、プロポキシレート、脂肪族アルカノールアミド、アルキルポリグリコシド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン界面活性剤が例示される。
スルホン酸塩としては、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、スルホン化油脂、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルグリセリルエーテルスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン酸塩、等が挙げられる。
乳化重合に用いる非反応性乳化剤の使用量は、耐水性や吸湿性の点で、少ない方が好ましく、親水性共重合体(A)100質量部に対して、1質量部以下が好ましい。
反応性乳化剤と非反応性乳化剤を併用しても良い。
【0027】
本発明に用いられる親水性共重合体(A)の重合には、既知の連鎖移動剤を用いることができる。例をあげれば、硫黄元素を含む連鎖移動剤として、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、等のアルカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール等のチオアルキルアルコール、チオグリコール酸、チオプロピオン酸等のチオアルキルカルボン酸、チオグリコール酸オクチルエステル、チオプロピオン酸オクチルエステル等のチオカルボン酸アルキルエステル、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド等のスルフィドがあげられる。その他に、連鎖移動剤の例としては、テルピノレン、ジペンテン、t−テルピネン及び四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素をあげることができる。これらの中で、アルカンチオールは連鎖移動速度が大であり、また得られる重合物の物性バランスが良いので好ましい。これらの連鎖移動剤は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。これらの連鎖移動剤は単量体に混合して反応系に供給するか、単独で所定の時期に所定量添加される。
これらの連鎖移動剤の使用量は、親水性共重合体(A)の重合に用いられる不飽和単量体100質量部のうち、加工性の点で、0.1質量部以上で、分子量の著しい低下を抑制する点で、10質量部以下が好ましい。
【0028】
本発明に用いられる親水性共重合体(A)の重合には必要に応じて重合反応抑制剤を用いることができる。重合反応抑制剤とは、乳化重合系に添加することにより、ラジカル重合速度を低下させる化合物である。より具体的には、重合速度遅延剤、重合禁止剤、ラジカル再開始反応性が低い連鎖移動剤、及びラジカル再開始反応性が低い単量体である。重合反応抑制剤は、重合反応速度の調整及びラテックス物性の調整に用いられる。これらの重合反応抑制剤は回分操作あるいは連続操作で反応系に添加される。重合反応抑制剤を用いた場合、ラテックス被膜の強度が向上する傾向がある。反応メカニズムの詳細は不明であるが、重合反応抑制剤はポリマーの立体構造に密接に関与していると思われ、このことによりラテックス被膜の物性の調整に効果があるものと推定している。これらの重合反応抑制剤の例としては、o−,m−,あるいはp−ベンゾキノンなどのキノン類、ニトロベンゼン、o−,m−,あるいはp−ジニトロベンゼンなどのニトロ化合物、ジフェニルアミンのようなアミン類、第三ブチルカテコールのようなカテコール誘導体、1,1−ジフェニルエチレンあるいはα−メチルスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンなどの1,1−ジ置換ビニル化合物、2,4−ジフェニル−4−メチル−2−ペンテン、シクロヘキセン等の1,2−ジ置換ビニル化合物などが挙げられる。この他にも、「POLYMER HANDBOOK 3rd Ed.(J.Brandup,E.H.
Immergut:John Wiley & Sons,1989)」、「改訂高分子合成の化学(大津:化学同人、1979.)」に重合禁止剤あるいは重合抑制剤として記載されている化合物があげられる。これらの中でも、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(α−メチルスチレンダイマー)が反応性の点で特に好ましい。これらの重合反応抑制剤は、単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
これらの重合反応抑制剤の使用量は、親水性共重合体(A)の重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、重合速度の著しい低下を抑制する点で、10質量部以下が好ましい。
【0029】
乳化重合に用いられるラジカル重合開始剤は、熱又は還元性物質の存在下ラジカル分解して単量体の付加重合を開始させるものであり、無機系開始剤及び有機系開始剤のいずれも使用できる。このようなものとしては、例えば水溶性又は油溶性のペルオキソ二硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等、具体的にはペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾビスブチロニトリル、クメンハイドロパーオキサイドなどがあり、また他に、「POLYMER HANDBOOK 3rd edition(J.Brandrup及びE.H.Immergut著、John Willy & Sons刊(1989))」に記載されている化合物が挙げられる。また、酸性亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸やその塩、エリソルビン酸やその塩、ロンガリットなどの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いる、いわゆるレドックス重合法を採用することもできる。これらの中で特にペルオキソ二硫酸塩が重合開始剤として好適である。
重合開始剤の使用量は、親水性共重合体(A)の重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、重合時の安定性の点で、0.2質量部以上が好ましく、樹脂組成物の耐吸湿性の点で、3質量部以下が好ましい。
【0030】
本発明においては、必要に応じ各種重合調整剤を添加することができる。例えば、pH調整剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムなどのpH調整剤を添加することができる。また、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどの各種キレート剤なども重合調整剤として添加することもできる。また、その他の添加剤としてはアルカリ官能ラテックス、ヘキサメタリン酸などの減粘剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子、増粘剤、各種老化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、ポリアクリル酸ナトリウムなどの分散剤、耐水化剤、亜鉛華等の金属酸化物、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物等の架橋剤、滑剤、保水剤等の各種添加剤を添加してもよい。これらの添加剤の添加方法は特に制限されず親水性共重合体の重合時、重合後に関わらず添加することができる。
【0031】
乳化重合の重合温度は、水系現像性、耐刷性及び耐版拭き性の点で、60℃以上が好ましく、重合時の圧力上昇による生産の困難を避ける点で、120℃以下が好ましい。70℃〜120℃の範囲がより好ましい。
得られた親水性共重合体(A)の数平均粒子径は、5〜500nmの範囲が好ましい。水系現像性や画像再現性の点で、500nm以下、耐刷性の点で、5nm以上が好ましい。5〜100nmの範囲がより好ましい。
得られた親水性共重合体(A)のトルエンゲル分率は、60〜99%の範囲が好ましい。印刷版の強度や耐刷性の点で、80%以上、感光性樹脂の混合性(相溶性)、加工性及び水系現像性の点で、95%以下が好ましい。
トルエンゲル分率とは、親水性共重合体(A)の乳化重合後の濃度が約30wt%の分散液を、テフロンシートの上に適当量垂らし、130℃で30分間乾燥させた(A)を0.5g取り、25℃のトルエン30mlに浸漬させ、振とう器を用いて3時間振とうさせた後に320SUSメッシュで濾過し、不通過分を130℃1時間乾燥させた後の重量を
0.5(g)で割った重量分率(%)から求められる。
親水性共重合体(A)の量は、フレキソ印刷用感光性樹脂組成物全量のうち、水系現像性の点で、20wt%以上が好ましく、吸湿性の抑制、耐水性あるいはインクの耐膨潤性の点で、60wt%以下が好ましい。
【0032】
本発明で使用される熱可塑性エラストマー(B)は、常温付近でゴム弾性を示し、塑性変形し難く、また押出機等で組成物を混合するときに熱で可塑化するエラストマーで、熱可塑性ブロック共重合体、1,2−ポリブタジエン、ポリウレタン系エラストマー等を例示することができる。
これらのうちでは、熱可塑性ブロック共重合体が好ましく、この中でも、モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーと共役ジエンモノマーを重合して得られるものがより好ましい。モノビニル置換芳香族炭化水素モノマーとしては、スチレン,α−メチルスチレン,p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン等が、また共役ジエンモノマーとしてはブタジエン,イソプレン等が用いられ、代表的な例としてはスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体や、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などが挙げられる。ここで熱可塑性エラストマー中におけるモノビニル置換芳香族炭化水素の含量については、露光前の感光性樹脂版が積層などされたときの耐コールドフロー性の抑制の点で、8wt%以上が好ましく、印刷版の硬度が高くなりすぎることにより生じる印刷品質の低下を抑制する点で、50wt%以下が好ましい。
【0033】
熱可塑性エラストマーの共役ジエンセグメント中のビニル結合の平均比率は、印刷版の画像再現性の点で、5%以上が好ましく、印刷版表面の粘着性を抑制する点で、40%以下が好ましい。10〜35%の範囲がさらに好ましい。
モノビニル置換芳香族炭化水素及び共役ジエンの平均含有量や、熱可塑性エラストマー中のビニル結合単位の平均比率は、IRスペクトルやNMRで求められる。
熱可塑性エラストマー(B)の使用量は、フレキソ印刷用感光性樹脂組成物全量のうち、印刷版の高物性(伸長率(伸び))、耐水性あるいは耐インキ膨潤性の点で、10wt%以上が好ましく、水系現像性の点で、40wt%以下が好ましい。
【0034】
本発明で使用される光重合性不飽和単量体(C)とは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などのエステル類、アクリルアミドやメタクリルアミドの誘導体、アリルエステル、スチレン及びその誘導体、N置換マレイミド化合物をあげられる。
その具体的な例としては、ヘキサンジオール、ノナンジオールなどのアルカンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート、あるいはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、あるいはトリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート、ペンタエリトリットテトラアクリレート及びテトラメタクリレート等や、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド及びメタクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアクリルフタレート、トリアリルシアヌレート、フマル酸ジエチルエステル、フマル酸ジブチルエステル、フマル酸ジオクチルエステル、フマル酸ジステアリルエステル、フマル酸ブチルオクチルエステル、フマル酸ジフェニルエステル、フマル酸ジベンジルエステル、マレイン酸ジブチルエステル、マレイン酸ジオクチルエステル、フマル酸ビス(3−フェニルプロピル)エステル、フマル酸ジラウリルエステル、フマル酸ジベヘニルエステル、N−ラウリルマレイミド等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
光重合性不飽和単量体(C)の使用量は、フレキソ印刷用感光性樹脂組成物全量のうち、細かい点や文字の形成性の点で、1wt%以上が好ましく、露光前の感光性樹脂版が積層などされたときの耐コールドフロー性や印刷版の硬度が高くなりすぎることによる印刷
品質の低下を抑制する点で、30wt%以下が好ましい。
本発明で使用される光重合開始剤(D)の例としては、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン類;ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;メチルベンゾイルホルメート;1,7−ビスアクリジニルヘプタン;9−フェニルアクリジン;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
光重合開始剤(D)の量は感光性樹脂組成物全量に対して、0.1〜10wt%が好ましい。細かい点や文字の形成性の点で0.1wt%以上、紫外線等の活性光の透過率低下による露光感度低下の点で10wt%以下が好ましい。
その他、本発明の感光性樹脂組成物には前記した必須成分の他に、所望に応じ種々の補助添加成分、例えば可塑剤、熱重合防止剤、紫外線吸収剤、ハレーション防止剤、光安定剤などを添加することができる。
可塑剤としては、常温で流動性のある液状のもので、ナフテン油、パラフィン油等の炭化水素油、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエンの変性物、液状アクリルニトリル−ブタジエン共重合体、液状スチレン−ブタジエン共重合体、数平均分子量2,000以下のポリスチレン、セバチン酸エステル、フタル酸エステルなどが挙げられる。これらの組成に光重合性の反応基が付与されていてもよい。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物は、印刷版としての精度を維持するために、ポリエステルなどの支持体をレリーフの反対側に設けても良い。本発明の感光性樹脂組成物は、その組成によっては粘着性を生じるので、その上に重ねられる透明画担体(ネガフィルム)との接触性を良くするためと、その画像担体の再利用を可能にするために、その表面に水系現像液で現像可能な可とう性フィルム層を設けても良い。
本発明の感光性樹脂組成物は上記各成分(A)〜(D)を押出機やニーダー等を用いて混合することにより製造することができる。樹脂組成物を混合した後に、熱プレス成型やカレンダー処理又は押出成型により所望の厚さの層を形成することが可能である。
支持体や可とう性フィルム層は、シート成型後ロールラミネートにより感光層に密着させることができる。ラミネート後に加熱プレスして精度の良い感光層を得ることもできる。
本発明の感光性樹脂組成物を光硬化するのに用いられる活性光線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、紫外線蛍光灯、カーボンアーク灯、キセノンランプ、ジルコニウムランプ、太陽光などがある。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物に透明画像担体を通じて光照射して画像を形成させた後、未照射部分を水系現像液を用いて除去(現像)することでレリーフが得られる。
本発明でいう水系現像液は、水にノニオン性、アニオン性などの界面活性剤、必要に応じてpH調整剤、洗浄促進剤などを配合してなる。ノニオン性界面活性剤の具体的な例としては、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニ
ルアミン、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルアミド、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロック附加物等がある。アニオン性界面活性剤の具体的な例としては、平均炭素数8〜16のアルキルを有する直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸塩、平均炭素数10〜20のα−オレフィンスルフォン酸塩、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が4〜10のジアルキルスルホコハク酸塩、脂肪酸低級アルキルエステルのスルフォン酸塩、平均炭素数10〜20のアルキル硫酸塩、平均炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均0.5〜8モルのエチレンオキサイドを附加したアルキルエーテル硫酸塩、及び平均炭素数10〜22の飽和又は不飽和脂肪酸塩等である。
【0039】
また、pH調整剤としては、ホウ酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、コハク酸塩、酢酸塩等がある。水に溶かしやすいことからケイ酸ソーダが好ましい。
さらに、洗浄助剤があるが、上記界面活性剤、pH調整剤と併用して用いることにより、洗浄能力が高まるものである。具体的例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン類、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等のアンモニウム塩類、グリコールエーテル類、パラフィン系炭化水素等がある。
これらは、適量の混合比で水に0.1〜50wt%、好ましくは、0.2〜10wt%の範囲で添加混合されて使用される。
また、必要に応じて、消泡剤、分散剤、腐食抑制剤、腐敗防止剤を併用しても良い。
現像後は版を、オーブン中で約60℃で15〜120分間乾燥するのが一般的である。本発明の感光性樹脂組成物は、その組成によっては乾燥が終わった後も版表面にベトツキが残っている場合がある。その場合、公知の表面処理方法により、ベトツキを除去することができる。表面処理方法としては波長300nm以下の活性光線による露光処理が望ましい。
【0040】
【実施例】
以下、製造例、実施例、及び比較例により本発明についてより具体的に説明する。
[製造例] 親水性共重合体(A)の重合
[製造例1]表1〜4の実施例1〜18及び比較例1〜7と、表5の実施例20〜22の親水性共重合体(A)の重合
撹拌装置と温度調節用ジャケットを取り付けた耐圧反応容器に水125質量部と表に示した乳化剤総量のうち3質量部を初期仕込みした。内温を80℃に昇温し、表1〜5に示した割合の単量体混合物及びt−ドデシルメルカプタンの油性混合液と、水28質量部、ペルオキソ二硫酸ナトリウム1.2質量部、水酸化ナトリウム0.2質量部及び表の残りの乳化剤1質量部からなる水溶液を、それぞれ5時間及び6時間かけて一定の流速で添加した。そして、80℃の温度をそのまま1時間保って、重合反応を完了した後、冷却した。ついで、生成した共重合体ラテックスを水酸化ナトリウムでpHを7に調整してからスチームストリッピング法により未反応の単量体を除去し、200メッシュの金網で濾過した。このようにして最終的には固形分濃度が40wt量%になるように調整して親水性共重合体(A)溶液を得た。
乳化重合した溶液を60℃で乾燥し各親水性共重合体を得た。
【0041】
[製造例2]表5の実施例19の親水性共重合体(A)の重合
表に示した反応性乳化剤総量のうち1質量部を初期仕込みし、残りの反応性乳化剤の1質量部を水溶液で添加すること以外は、製造例1に準じて親水性共重合体(A)を得た。
[製造例3]表5の実施例23の親水性共重合体(A)の重合
表に示した反応性乳化剤総量のうち13.5質量部を初期仕込みし、残りの反応性乳化剤の1.5質量部を水溶液で添加すること以外は、製造例1に準じて親水性共重合体(A)を得た。
[製造例4]表5の実施例24の親水性共重合体(A)の重合
表に示した反応性乳化剤総量のうち3質量部及び非反応性乳化剤0.5質量部を初期仕込みし、残りの反応性乳化剤の1質量部を水溶液で添加すること以外は、製造例1に準じて親水性共重合体(A)を得た。
【0042】
[実施例1〜24、比較例1〜7]
(1)感光性樹脂組成物及び感光性樹脂版の作成
製造例1〜4で得た親水性共重合体(A)35質量部と、スチレンブタジエンブロック共重合体[クレイトンD−KX405:シェル化学製]25質量部を、加圧ニーダーを用いて140℃で10分混合後に、液状ポリブタジエン[B−2000:日本石油化学製]30質量部と、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5質量部と、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート5質量部と、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン2質量部、及び2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール1質量部を15分かけて少しずつ加えて、加え終えてからさらに10分間混練し、感光性樹脂組成物を得た。
この組成物を取り出し、片面が熱可塑性エラストマーを用いた接着剤がコートされた厚さ100μmのポリエステルフィルム{以下PETと略す}ともう片方は厚さ5μmのポリビニルアルコール(PVA)がコートされた厚さ100μmのPETでサンドイッチしてプレス機を用いて130℃で厚み3mmの板状に成形した。
【0043】
(2)印刷版の作成
(1)で得た接着剤がコートされたPETの側から、硬化層の厚さが1.8mm程度となるように、紫外線露光機(日本電子精機製JE−A2−SS)を用いて露光した。次に、PVAがコートされた方のPETをPVAが樹脂面に残るようにして剥ぎ、印刷画像のネガフィルムを密着させ前記露光機で10分間露光した。露光後に、ネガフィルムを剥がして、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル5wt%、ホウ酸ソーダ2wt%及び、炭素数10のパラフィン0.7wt%の水溶液(水系現像液)を調整し、日本電子精機製洗浄機(JOW−A3−P)を用いて、40℃で洗浄し、未露光部を除去した。乾燥後、紫外殺菌線ランプ、紫外線ケミカルランプで後露光して印刷版を作成した。
【0044】
(3)評価方法
(a)相溶性(分散性)
感光性樹脂の組成物の混合物に粒が残っていないかを目視で判断する。粒が確認されたら×、粒がなければ○とした。×の評価を受けた混合物については以下の評価を行わなかった。
(b)水系現像液による現像性
上記の現像液と洗浄機を用いて、露光していない樹脂版を15分間洗浄し、洗浄により減少した樹脂版厚み(t)を測定し、15分/t(mm)を計算して、1mm現像するのに要する時間(分)を測定する。現像時間が短い方がよく、現像時間が17分以下/mm未満を◎、20分/mm未満を○、20分/mm以上を×とした。
(c)画像再現性
印刷版の画像再現性の評価は、レリーフ画像の500μmの凹細線と凸細線の形状を、顕微鏡を用いて評価した。凹細線の溝が深く、且つ凸細線がシャープで太りがないものを○とし、凹細線の溝が浅かったり、凸細線がシャープでなく太ったものを×とした。
【0045】
(d)耐水性(水膨潤率)
印刷版を水に24時間浸漬させ、浸漬前の重量からの増加分(%)を計算する。少ない方が良い。1.3%以下を合格とした。
(e)水性インキ付着膨潤後の耐刷性
印刷版の版面の強さ(耐刷性)を、擬似的に、摩耗輪(テスター産業株製テーバー摩耗試験器、硬質摩耗輪)を用いて評価した。全面ベタ部の印刷版を作成し、印刷版を水性インキの代替として10%イソプロピルアルコール水溶液に16h浸漬した後に、摩耗輪を
用いて1000回転後の版面の摩耗量を測定した。摩耗量は、減量分を摩耗輪がベタ部と接触する面積で割って求めた。摩耗量が、7mg/cm2以下を◎、10mg/cm2未満を○とし、10mg/cm2以上を×とした。
【0046】
(f)耐版拭き性
本明細書中で、「耐版拭き性」とは、水性インキを拭き取る作業における印刷版画像部の破損し難さの程度を指す。
耐版拭き性の強さを、擬似的に、図1に示すように測定した。8ポイントから12ポイントの大きさの文字を有する印刷版1(上から見た図)をネガフィルム2を用いて作成し、水性インキの代替の10%イソプロピルアルコール水溶液に16時間浸漬した後に、NP式耐刷力試験機(新村印刷株式会社製、被接触体3:8cm×6cmの大きさの布、荷重1kg)を用いて300回左右に擦ったときの文字の破壊の程度を顕微鏡で観察した。印刷版の耐版拭き性の評価として、文字が破壊されていなければ○、文字が破壊されていれば×とした。ただし、画像再現性が×のものは評価を中止した。
以上の手法により得られた、物性評価試験結果を表1及び2に記す。総合評価として、評価(a)〜(f)全て合格のものを○とする。以下これらの結果を、実施例及び比較例として説明する。
【0047】
実施例1〜5、及び比較例1〜2で得られた樹脂組成物及び印刷版の評価試験結果の一覧を表1に記載する。
表1より、カルボキシル基を有する不飽和単量体(1)が少なすぎると、現像時間が長くなり、多いと耐水性やインキ付着時の摩耗量が増加し耐刷性が低下することが分かる。
【表1】
【0048】
実施例1、6、及び7、並びに比較例3及び4で得られた樹脂組成物及び印刷版の評価試験結果の一覧を表2に記載する。
表2より、スチレン量が少なすぎると相溶性が低下したり、多すぎると現像時間が長くなったり、画像再現性が低下することが分かる。
比較例3は、相溶性が低く、肉眼で白い粒が多数確認されたので、その他の評価を中止した。
【表2】
【0049】
実施例1及び8〜11、並びに比較例5〜7で得られた樹脂組成物及び印刷版の評価試験結果の一覧を表3に記載する。
表3より、ブタジエン量が少なすぎると耐水性が低下したり、インキ付着時の耐刷性が低下することが分かる。また、アルキル(メタ)アクリレートが少なすぎると水系現像性が低下したり、多すぎると耐水性や耐刷性が低下することが分かる。
【表3】
【0050】
実施例1、10及び11についても、同じく表3よりブチルアクリレート、エチルアクリレート、あるいは2−エチルヘキシルアクリレートを用いてもすべての評価試験において良好な結果が得られることが分かる。
実施例12〜18で得られた樹脂組成物及び印刷版の評価試験結果の一覧を表4に示す。
表4より、各重合温度や各ゲル分率で良好な性能が得られた。その中では、重合温度が低いと、水系現像性が低下する傾向がみられた。また、ゲル分率が低いと、水系現像性や耐刷性が低下する傾向がみられた。
【表4】
【0051】
実施例19〜24で得られた樹脂組成物及び印刷版の評価試験結果の一覧表を表5に示す。
表5より、各種反応性乳化剤を用い、量を変更し、粒子径等を変更したものすべてで良好な性能が得られた。
【表5】
【0052】
【発明の効果】
本発明のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物を用いることにより、感光性樹脂組成物の親水性及び疎水性組成の相溶(分散)性を向上させ、水系現像液での現像時間を短縮でき、しかも、耐水性インキ性が高く、画像再現性に優れ、水性インキが付着しても高い耐刷性を保持し、さらに印刷版に付着したインクの除去時の耐版拭き性が高い印刷版を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、印刷版の耐版拭き性の評価のために行ったテストを概略的に示す図である。
Claims (9)
- (A)親水性共重合体、
(B)熱可塑性エラストマー、
(C)光重合性不飽和単量体、及び
(D)光重合開始剤
を含有するフレキソ印刷用感光性樹脂組成物であって、親水性共重合体(A)が、その重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、少なくとも
(1)カルボキシル基を有する不飽和単量体2〜15質量部、
(2)共役ジエン系単量体50〜80質量部、
(3)芳香族ビニル化合物(但し、1分子中にビニル結合を2個以上有する単量体を除 く)3〜20質量部、及び
(4)アルキル(メタ)アクリレート3〜30質量部
を共重合させて得られる重合体であることを特徴とするフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。 - 親水性共重合体(A)のトルエンを用いて測定したゲル分率が80〜95%である請求項1記載のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
- 親水性共重合体(A)が乳化重合で合成され、その重合温度が60℃以上である請求項1又は2記載のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
- 重合温度が70℃以上である請求項3記載のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
- 親水性共重合体(A)が、その重合に用いられる不飽和単量体100質量部に対して、少なくとも
(1)カルボキシル基を有する不飽和単量体2〜15質量部、
(2)共役ジエン系単量体50〜80質量部、
(3)芳香族ビニル化合物(但し、1分子中にビニル結合を2個以上有する単量体を除 く)3〜20質量部、及び
(4)アルキル(メタ)アクリレート3〜30質量部
と、さらに多官能ビニル化合物0.5質量部以下とを、共重合させて得られる、請求項1〜4のいずれかに記載のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。 - 親水性共重合体(A)の数平均粒子径の範囲が5〜100nmである請求項1記載のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
- 親水性共重合体(A)の乳化重合に使用する乳化剤が、親水性共重合体100質量部に対して、非反応性乳化剤が1質量部未満で、且つ反応性乳化剤が1〜20質量部である請求項1〜6のいずれかに記載のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
- 反応性乳化剤が、ポリオキシアルキレン構造を含有する請求項7記載のフレキソ印刷用感光性樹脂組成物。
- 支持体と、その面上に形成された請求項1〜8のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の層からなる積層構造を有するフレキソ印刷版用感光性構成体。
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