JP3816595B2 - スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は、ハードディスク用の高密度面内磁気記録媒体をスパッタリングを用いて製造するのに適したスパッタリングターゲットに関し、特に詳しくは酸化物分散型Co系合金スパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、高密度、大容量、高速アクセスを図るための磁気記録用材料の研究開発が精力的に行われている。
ハードディスク用の高密度面内磁気記録媒体としてCo系合金磁性膜が数多く使用されている。これはCo−Cr−Ta合金、Co−Ni−Cr合金、Co−Cr−Pt合金、Co−Ni−Cr−Pt合金、Co−Cr−Ta−Pt合金などのCo系合金の磁性膜が保磁力が高く、かつ媒体ノイズが少ないからである。
【0003】
最近の高密度記録化への更なる要求に応えるためには、スパッタリング法で得られるCo系合金磁気膜のより一層の保磁力の向上とノイズの低減化が図られる必要があり、このための様々な研究が続けられている。
【0004】
これらのCo系合金磁性膜の高保磁力化は、理論的には、磁性膜を構成する結晶粒子を更に微細化すること、およびその結晶粒界に非磁性相を分散させること、により達成できる。また、これらのCo系合金磁性膜のノイズは結晶粒子間に働く交換相互作用の影響により生じるため、Co系合金磁性膜の結晶粒界に非磁性相を分散させることは各々の結晶粒子間に働く交換相互作用を弱める作用があり、ノイズ低減につながると考えられる。
したがって、Co系合金磁性膜をスパッタリングにより作製する際に、その結晶粒界に非磁性相を均質に分散することができればよい。そのための非磁性相としては酸化物、窒化物や炭化物などが考えられる。
【0005】
この非磁性相として酸化物が分散したCo系合金磁性膜を作製する方法としては、Co系合金ターゲットと酸化物ターゲットの2枚を用い、それらを同時にスパッタリングすればよい。しかし、2枚のターゲットを同時に、しかもその非磁性相の量を制御しながらスパッタリングすることは難しい。そのため、実際にはCo系合金ターゲットの上に酸化物の小片(チップ)を乗せた、いわゆるオンチップ型と呼ばれる複合ターゲットが酸化物が分散したCo系合金磁性膜の研究に使用されている。
【0006】
上記のCo系合金ターゲットの上に酸化物の小片を乗せた、オンチップ型の複合ターゲットには、次のような問題点がある。
(1) Co系合金と酸化物とを同時にスバッタリングすることができても、それぞれの表面積が大きく異なるため、実際の生産において組成の均質な薄膜を得ることが非常に難しい。
(2) Co系合金と酸化物の間に異常放電が起こることがある。
(3) 下向きにまたは斜めに傾けてターゲットを使用するスパッタリング装置には対応できない。
【0007】
スパッタリングによる成膜にはその生産性の良さからマグネトロンスパッタリング装置が広く使用されている。このマグネトロンスパッタリング装置ではターゲットの背面に設置した永久磁石の磁界を使用するが、スパッタリング効果をあげるためには、ターゲット表面の磁界(漏れ磁界)を適当な値にすることが重要である。
一般的にCo系合金はその透磁率が高いため、使用するマグネトロンスパッタリング装置に適する値までその透磁率を下げる必要がある。
Co系合金が磁性材料であるためCo系合金ターゲットの厚さによってはターゲットの表面まで永久磁石の磁界が届かず、酸化物がうまくスバッタリングされない場合が生じる。
【0008】
また、アーク溶解炉や真空溶解炉により作製したCo系合金のインゴットを圧延、切断、研削等により仕上げる合金法では、Co系合金の溶解時に酸化物を添加しても、酸化物と金属は比重が異なり、また酸化物と金属の濡れ性が悪いため、スラグとして溶湯上に浮いてしまたっり、溶解るつぼの壁に堆積してしまい、Co系合金に酸化物を分散することは非常に難しい。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、保磁力に優れ、媒体ノイズの少ないCo系合金磁性膜をスパッタリング法によって形成するために、結晶組織が合金相とセラミックス相が均質に分散した微細混合相であるスパッタリングターゲットの製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記改善された磁性膜を得るための操作、取扱い易く、スパッタリング特性に優れたスパッタリングターゲットを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、Co系合金磁性膜の結晶粒界に非磁性相を均質に分散させれば、保磁力の向上とノイズの低減が改善されたCo系合金磁性膜が得られることから、そのような磁性膜を得るためには、使用されるスパッタリングターゲットの結晶組織が合金相とセラミックス相が均質に分散した微細混合相であればよいことに着目した。
そして、本発明者らは、セラミックス相として酸化物が均質に分散したCo系合金磁性膜を製造する方法について種々の実験、研究開発を行った。
【0011】
当初、本発明者らは、アーク溶解炉や真空溶解炉で作製したCo系合金のインゴットを圧延、切断、研削等により仕上げる合金法を採用した。しかし、Co系合金に溶解時に酸化物を添加しても、酸化物と金属との比重が異なるため、また濡れ性が悪いため、酸化物スラグとして溶湯上に浮いてしまったり、溶解るつぼの壁に堆積してしまい、Co系合金中に酸化物を分散することが非常に難しい。また、本発明者らは、アーク溶解炉や真空溶解炉で作製したCo系合金のインゴットは柔らかく、機械的に粉砕して粉末にすることは難かしいことに直面した。
【0012】
しかしながら、本発明者らは結局、下記の事項を見い出すに至った。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものである。
▲1▼アトマイズ法やメルトスピン法などの急冷凝固法を用いることによりCo系合金粉末が作製できる。また得られたCo系合金粉末は、酸化が著しく少なく、またこの粉末と酸化物とを混合した後、モールドに入れてホットプレスすると酸化物が分散したCo系合金ターゲットが製造できる。
【0013】
▲2▼急冷凝固法で作製したCo系合金粉末と酸化物とをメカニカルアロイングすると、酸化物がCo系合金粉末中に均質に分散した組織を有する複合合金粉末が得られ、この粉末をモールドに入れてホットプレスすると非常に均質な酸化物分散型Co系合金ターゲットが製造できる。
▲3▼酸化物の代わりに、窒化物や炭化物を用いても同様に、窒化物や炭化物がCo系合金粉末中に均質に分散した窒化物分散型Co系合金ターゲットや炭化物分散型Co系合金ターゲットが製造できる。
【0014】
本発明は、下記の通りのものである。
(1)保磁力が高く、かつ媒体ノイズが少ない高密度面内磁気記録媒体用スパッタリングターゲットであって、その組織が合金相とセラミックス相とが微細に、かつ均質に分散した混合相からなることを特徴とするスパッタリングターゲット。
(2)合金相が、クロム、ニッケル、タンタルおよびプラチナの金属元素のうち1種以上と残部がコバルトとの合金からなることを特徴とする前項(1)に記載のスパッタリングターゲット。
(3)セラミックス相が、酸素、窒素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、これらの元素に対して親和力のあるシリコン、アルミニウム、ホウ素、チタン、およびジルコニウムのうち少なくとも1種の元素との化合物からなることを特徴とする前項(1)に記載のスパッタリングターゲット。
(4)急冷凝固法で作製した合金相合金粉末とセラミックス相粉末とを混合した後、ホットプレスにより形成することを特徴とする、保磁力が高く、かつ媒体ノイズが少ない高密度面内磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの製造方法。
(5)急冷凝固法で作製した合金相合金粉末とセラミックス相粉末とをメカニカルアロイングしてセラミックス相粉末が均質に合金相合金粉末中に分散した組織を有する複合合金粉末を作製した後、ホットプレスにより成形することを特徴とする保磁力が高く、かつ媒体ノイズが少ない高密度面内磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの製造方法。
(6)合金相合金粉末が、クロム、ニッケル、タンタルおよびプラチナの金属元素のうち1種以上と残部がコバルトとの合金からなることを特徴とする前項(4)または(5)に記載の高密度面内磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの製造方法。
(7)セラミックス相粉末が、酸素、窒素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、これらの元素に対して親和力のあるシリコン、アルミニウム、ホウ素、チタンおよびジルコニウムのうち少なくとも1種の元素との化合物からなることを特徴とする前項(4)または(5)に記載の高密度面内磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの製造方法。
【0015】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により説明する。
実施例1
Co82Cr13Ta5 合金1.5kgを日新技研製超小型ガスアトマイズ装置でアトマイズすることにより粉末とした。アトマイズはCo−Cr−Ta合金を、底にノズルをもつアルミナるつぼ中に入れアルゴン雰囲気中で高周波溶解により約1600℃の温度で溶湯した後、その溶湯をノズルより落下して溶湯流とし、その溶湯流にアルゴンガスを50kg/cm2 の圧力で噴射することにより行なった。アトマイズした粉末は超小型ガスアトマイズ装置の下部にあるサイクロンで回収した。アトマイズにより得られた試料は直径150μm以下のきれいな球状の粉末であった。得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO2 の粉末を混合した後、ボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比を40:1とし、アルゴン雰囲気中で96時間行った。
得られた粉末を電子顕微鏡により組織観察したところ、酸化物が分散したCo−Cr−Ta合金粉末になっていることがわかった。この酸化物が分散したCo−Cr−Ta合金粉末を直径4インチのカーボン型中に入れ、真空中1100℃で300kg/cm2 でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0016】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られなかった。ホットプレスにより作製したターゲットはアルキメデス法で測定したところ約98%の高い相対密度をもつ。
図1にホットプレスにより作製したターゲットの断面組織写真を示す。これによれば、微細な黒い点(SiO2 )が均質に分布しているのが観察され、また、空孔やひびなどは観察されない。以上の結果より、このターゲットの組織はSiO2 がCo−Cr−Ta合金中に分散した微細混合相からなっていることがわかった。
【0017】
比較例1
実施例1で使用したと同様のCo82Cr13Ta5合金アトマイズ粉末(150μm以下)1.5kgに酸化物として3重量%のSiO2の粉末を添加し、V型混合器で1時間混合した後、直径4インチのカーボン型中に入れ、真空中1100℃で300kg/cm2でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0018】
このようにして作製したターゲットには、大きなひびや割れなどは見られなかった。ホットプレスにより作製したターゲットはその相対密度をアルキメデス法で測定したところ約96%の高い相対密度である。
図2にホットプレスにより作製したターゲットの断面組織写真を示す。この断面組織写真は大きな白い球状の組織(Co−Cr−Ta合金)のまわりを黒い部分(SiO2 )が取り囲んで分布しているのが観察され、また空孔やひびなどは観察されない。
以上の結果より、Co−Cr−Ta合金粉末と酸化物を混合した後ホットプレスすることにより作製したターゲットの組織は、酸化物(SiO2 )がCo−Cr−Ta合金粉末の粒界に分散した組織からなっていた。
【0019】
実施例3
実施例1で使用したと同様のCo82Cr13Ta5 合金アトマイズ粉末(150μm以下)1.5kgに酸化物として3重量%のSiO2 の粉末を混合した後、ボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比を40:1とし、アルゴン雰囲気中で96時間行った。得られた粉末を電子顕微鏡により組織観察したところ、酸化物が分散したCo−Cr−Ta合金粉末になっていることがわかった。この酸化物が分散したCo−Cr−Ta合金粉末を室温でプレスすることにより成形体を作製し、それを水素雰囲気中1300℃で1時間焼結することによりターゲットを作製した。
【0020】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られず、その相対密度は約95%であった。また、ターゲットの組織は、図1に示した組織とほぼ同様であった。このことにより、ホットプレスの代りに、冷間で成形した後、高温で焼結することによっても酸化物分散型Co系合金ターゲットを製造するできることがわかった。
【0021】
実施例4
Co82Cr11Ta4 Pt3 合金1.8kgをガスアトマイズ装置により実施例1と同様の方法で粉末とした。アトマイズには60kg/cm2 の圧力のアルゴンガスを用いた。得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に窒化物として3重量%のSi3 N4 の粉末を混合した後、ボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比を40:1とし、アルゴン雰囲気中で96時間行った。
得られた粉末の電子顕微鏡による組織観察を行ったところ、窒化物が分散したCo−Cr−Ta−Pt合金粉末になっていることがわかった。この窒化物が分散したCo−Cr−Ta−Pt合金粉末を直径3インチのカーボン型中に入れ、真空中1000〜1100℃で300〜500kg/cm2 でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0022】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られず、その相対密度は約98%であった。また、このターゲットの組織は、図1に示した酸化物(SiO2 )が分散した微細混合相とほぼ同様であった。このことにより、本製造プロセスで酸化物だけではなく窒化物も分散することができ、窒化物分散型Co系合金ターゲットを製造できることがわかった。
【0023】
実施例5
Co77Ni7 Cr4 Pt12合金1.8kgをガスアトマイズ装置により実施例1と同様の方法で粉末とした。アトマイズには60kg/cm2 の圧力のアルゴンガスを用いた。得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のZrO2 の粉末を混合した後、高エネルギーボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比10:1とし、アルゴン雰囲気中で10時間行った。
得られた粉末の電子顕微鏡による組織観察を行ったところ、酸化物が分散したCo−Ni−Cr−Pt合金粉末になっていることがわかった。この酸化物が分散したCo−Ni−Cr−Pt合金粉末を直径3インチのカーボン型中に入れ、真空中1000〜1100℃で300〜500kg/cm2 でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0024】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られず、その相対密度は約98%であった。また、このターゲットの組織は、図1に示した組織とほぼ同様であった。このことにより、ボールミル条件が多少異なっても酸化物の分散した合金粉末ができれば、微細な酸化物がCo−Ni−Cr−Pt合金中に分散したターゲットが製造できることがわかった。
【0025】
実施例6
Co62Ni20Cr13Ta5 合金1.5kgを日新技研製メルトスピナー装置により急冷薄帯とした。メルトスピンは、母合金を底に直径0.5−1.0mm程度の小さな穴(オリフィス)をもつ石英るつぼ中に入れアルゴン雰囲気中で高周波溶解により約1600℃の温度で溶湯した後、その溶湯をオリフィスよりアルゴンガスの圧力(0.3kg/cm2 )で、高速(50m/s)で回転している銅ロール上に噴射することにより作製した。メルトスピンにより得られた試料は、幅約2mm程度、厚さ約20μmm、長さ数mの急冷薄帯であった。得られた急冷薄帯を乳鉢で約200μm程度に粗粉砕した粉末に酸化物として3重量%のSiO2 の粉末を混合した後、高エネルギー型のボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件は、ボールと試料の重量比を10:1とし、アルゴン雰囲気中で10時間行なった。
得られた粉末を組織観察したところ、酸化物が分散したCo−Ni−Cr−Ta合金粉末になっていることがわかった。この酸化物が分散したCo−Ni−Cr−Ta合金粉末を直径3インチのカーボン型中に入れ、真空中1000〜1100℃で300〜500kg/cm2 でホットプレスを施し、ターゲットを作製した。
【0026】
このようにして作製したターゲットには、ひびや割れなどは見られず、その相対密度は約97%であった。また、このターゲットの組織は、図1に示した組織とほぼ同様であった。このことにより、アトマイズ合金粉末のかわりにメルトスピンで作製した急冷薄帯を原料粉末として使用しても微細な酸化物がCo−Ni−Cr−Pt合金中に分散したターゲットを製造できることがわかった。
【0027】
実施例7
Co82Cr11Ta4Pt3 合金1.8kgを、実施例1と同様の方法により、60kg/cm2 の圧力のアルゴンガスを用いたガスアトマイズ装置により粉末とした。得られたアトマイズ粉末(150μm以下)を直径4インチのカーボン型に入れ、真空中1100℃で300kg/cm2でホットプレスを施し、ターゲット(T1)(比較例)を作製した。また、上記得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO2の粉末を添加し、V型混合器で1時間混合した粉末を直径4インチのカーボン型に入れ、真空中1100℃で300kg/cm2でホットプレスを施し、ターゲット(T2)(比較例)を作製した。さらに、上記得られたアトマイズ粉末(150μm以下)に3重量%のSiO2の粉末を添加し、ボールミルでメカニカルアロイングし、次いで真空中1100℃で300kg/cm2でホットプレスを施し、ターゲット(T3)を作製した。
【0028】
これらのターゲットについてBHトレーサで透磁率を測定した。その結果を、表1に示す。また、比較のため真空溶解で作ったCo82Cr11Ta4 Pt3 合金の透磁率を、表1に併記する。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の結果から分るように、真空溶解で作製したCo−Cr−Ta−Pt合金は高い透磁率の値を示すが、アトマイズ粉末をホットプレスすることにより作製したCo−Cr−Ta−Pt合金の透磁率は低い。これらの透磁率の相違を調べるため、その断面組織観察を行なった。その結果を、図3に示す。
【0031】
図3から分るように、このように真空溶解で作製したCo−Cr−Ta−Pt合金の組織は典型的な鋳造組織である比較的粗く大きなデンドライト組織(図3(a))であるのに対し、アトマイズした合金粉末をホットプレスすることにより作製したCo−Cr−Ta−Pt合金はアトマイズ(急冷凝固法)を用いているため非常に微細で均質な組織(図3(b))になっている。
【0032】
また、アトマイズで作製した粉末に酸化物を混合した後、ホットプレスすることにより作製した酸化物分散型Co−Cr−Ta−Pt合金ターゲットや、アトマイズで作製した粉末に酸化物をメカニカルアロイングで分散させた後、ホットプレスすることにより作製したCo−Cr−Ta−Pt合金ターゲットの透磁率は、酸化物を混合しないでアトマイズ粉末のみをホットプレスすることにより作製したターゲットの透磁率よりさらに低い。これは、合金相のCo−Cr−Ta−Pt合金中にセラミックス相である酸化物が均質に分散し、磁気的な介在物として働き、磁束の流れを邪魔しているためであると思われる。
【0033】
実施例8
実施例1で使用したと同様のアトマイズ粉末(150μm以下)1.5kgに酸化物として3重量%のSiO2 の粉末を混合した後、ボールミルによりメカニカルアロイングを施した。メカニカルアロイング条件としては、ボールと試料の重量比を40:1とし、アルゴン雰囲気中で96時間行なった。
【0034】
次に、メカニカルアロイングの効果を調べるため、アトマイズで作製した合金粉末とメカニカルアロイングを施した粉末の断面写真を、図4(a)および図4(c)にそれぞれ示す。また、比較のため、アトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO2 の粉末を添加し、V型混合器で1時間混合した粉末の断面写真(図4(b))も示す。
【0035】
図4の断面写真から、アトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO2 の粉末を添加し、V型混合器で1時間混合した粉末(図4(b))は、元のアトマイズで作製した合金粉末(図4(a))と同様に球状であることがわかる。すなわち、アトマイズ粉末と酸化物を混合しても、アトマイズ粉末自体には変化が見られない。一方、アトマイズ粉末(150μm以下)に酸化物として3重量%のSiO2 の粉末を混合した後、ボールミル処理した粉末(図4(c))は、もはや元の球状の粉末ではなく機械的に変形した粉末となっている。これは該粉末がメカニカルアロイングにより機械的に粉砕・圧延・混合された結果である。
【0036】
これらの断面写真は粉末の形状の変化を示すため比較的低い倍率で撮影したが、高倍率で撮影した写真ではメカニカルアロイングで作製した粉末にのみ、酸化物が粉末内に分散している様子が観察された。このことにより、添加した酸化物もこのメカニカルアロイングにより同時に粉砕・圧延・混合され、その結果酸化物が合金中に分散した粉末となっている。
【0037】
また、ターゲットの相対密度が同一の場合、このメカニカルアロイングで作製した酸化物分散型Co82Cr13Ta5 合金粉末は、元のアトマイズ粉末よりも少し低温でまたは少し低い圧力でホットプレスできること、および同一温度、圧力であればより相対密度の高いものが得られるという長所があることがわかった。これは、メカニカルアロイングにより粉末中に蓄積された機械的なエネルギーの効果によるものであると思われる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、酸化物分散型Co系合金ターゲットとスパッタリングで形成される磁性薄膜との組成差、いわゆる組成ズレが少ない。またこの磁性薄膜は組成を均一で保磁力が高く、かつ媒体ノイズも少ない。
本発明により得られるターゲットは、Co系合金粉末を母相とした合金相とセラミックス相が均質に分散した微細混合相からなり、また一枚の板状体に微細な酸化物が均質に分散した複合ターゲットであるため、従来のオンチップ型に比較して生産性に優れ、透磁率が低く、密度が高いので異常放電がなく、また取扱いも容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】アトマイズにより作製したCo82Cr13Ta5 合金粉末(150μm以下)とSiO2 にメカニカルアロイングを施して酸化物分散型Co82Cr13Ta5 合金粉末を作製した後、真空中1100℃で300kg/cm2 でホットプレスを施すことにより得られた本発明のターゲットの断面組織写真である。
【図2】アトマイズにより作製したCo82Cr13Ta5 合金粉末(150μm以下)とSiO2 をV型混合器で1時間混合した後、真空中1100℃で300kg/cm2 でホットプレスを施すことにより得られた本発明のターゲットの断面組織写真である。
【図3】(a)真空溶解で作製したCo82Cr13Ta5 合金のターゲットおよび(b)アトマイズにより作製したCo82Cr13Ta5 合金粉末(150μm以下)を真空中1100℃で300kg/cm2 でホットプレスを施すことにより得られた本発明のターゲット、のそれぞれの断面組織写真である。
【図4】(a)アトマイズにより作製したCo82Cr13Ta5 合金粉末、(b)アトマイズ粉末と酸化物をV型混合器で1時間混合した粉末、および(c)アトマイズ粉末と酸化物をメカニカルアロイングした粉末、のそれぞれの断面組織写真である。
Claims (3)
- クロム、ニッケル、タンタルおよびプラチナの金属元素のうち1種以上と残部がコバルトとの合金からなる合金相合金粉末と、酸素、窒素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、これらの元素に対して親和力のあるシリコン、アルミニウム、ホウ素、チタンおよびジルコニウムのうち少なくとも1種の元素との化合物からなるセラミックス相粉末とをメカニカルアロイングして、セラミックス相粉末が合金相合金粉末中に均質に分散した組織を有する複合合金粉末を作製した後、ホットプレスにより成形することを特徴とする保磁力が高く、かつ媒体ノイズが少ない高密度面内磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの製造方法。
- 急冷凝固法で作製した、クロム、ニッケル、タンタルおよびプラチナの金属元素のうち1種以上と残部がコバルトとの合金からなる合金相合金粉末と、酸素、窒素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、これらの元素に対して親和力のあるシリコン、アルミニウム、ホウ素、チタンおよびジルコニウムのうち少なくとも1種の元素との化合物からなるセラミックス相粉末とをメカニカルアロイングして、セラミックス相粉末が合金相合金粉末中に均質に分散した組織を有する複合合金粉末を作製した後、成形することを特徴とする保磁力が高く、かつ媒体ノイズが少ない高密度面内磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの製造方法。
- 急冷凝固法で作製した、クロム、ニッケル、タンタルおよびプラチナの金属元素のうち1種以上と残部がコバルトとの合金からなる合金相合金粉末と、酸素、窒素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、これらの元素に対して親和力のあるシリコン、アルミニウム、ホウ素、チタンおよびジルコニウムのうち少なくとも1種の元素との化合物からなるセラミックス相粉末とをメカニカルアロイングして、セラミックス相粉末が合金相合金粉末中に均質に分散した組織を有する複合合金粉末を作製した後、ホットプレスにより成形することを特徴とする保磁力が高く、かつ媒体ノイズが少ない高密度面内磁気記録媒体用スパッタリングターゲットの製造方法。
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