JP3811205B2 - ジメチルアミンの製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メタノールとアンモニアの気相接触反応によりジメチルアミンを製造する方法に関する。さらに具体的には本発明は使用する触媒に特徴を有するジメチルアミンの製造法に関する。
ジメチルアミンは、各種の溶剤、医薬品、ゴム薬品、界面活性剤等の原料として重要な化学中間体である。
【0002】
【従来の技術およびその問題点】
ジメチルアミンは、一般にアルミナ、シリカアルミナ等の脱水およびアミネーション作用をもつ固体酸触媒の存在下にメタノールとアンモニアを気相で高温(400℃前後)で反応させることにより製造される。この反応ではジメチルアミン(以下、DMAと記す)の他にモノメチルアミン(以下、MMAと記す)及びトリメチルアミン(以下、TMAと記す)が副生し、これらの副生メチルアミンはその需要がDMAに較べ著しく少ないため反応生成物から分離された後、反応系に転送されて再利用される。
【0003】
メチルアミンの反応生成物からジメチルアミンを分離するため蒸留が行われるが、TMAがアンモニア、MMA、DMAと複雑な共沸系を形成することから非常に煩雑で大型な蒸留操作が必要となり、DMA回収プロセスの消費エネルギーコストはこのため大変大きなものとなる。回収プロセスについては、例えば「改訂製造工程図全集」(昭和53年4 月25日株式会社化学工業社発行)に詳しく示されている。
【0004】
DMA製造コストの低減及び装置の小型化を実現するためには、反応において副生メチルアミン、特にTMAの生成を極力抑制し、DMAの生成を促進することが肝要である。しかしながら、3種のメチルアミンの選択率は、前記のアルミナ、シリカアルミナ等の通常の非晶質固体酸触媒上では熱力学的に決まり、通常の反応条件ではTMAの生成率がDMAを大幅に上回る。
【0005】
例えば、反応温度400℃、反応器入口のアンモニアとメタノールの比率1:1(重量比)の場合、熱力学的に計算される各アミンの平衡生成比は、重量比でMMA:DMA:TMA=0. 284:0. 280:0. 436である。このため、常に多量のMMA及びTMAを分離し、反応を平衡的にDMAに有利に進行させるために存在せしめる多量の過剰アンモニアと共に反応系へ再循環しなければならない。
【0006】
近年、この問題の解決を目指し各種のゼオライト触媒が提案されている。例えば、ゼオライトAに関する特開昭56-69846号、FU−1に関する特開昭54-148708 号、特開昭58-69846号、ZSMー 5に関する米国特許第 4,082,805号、フェリエライト及びエリオナイトに関する特開昭56-113747 号、rho、ZK−5及びシャバサイトに関する特開昭61-178951 号、特開昭63-8358 号、モルデナイトに関する特開昭56-46846号、特開昭59-210050 号、特開昭58-049340 号等の各公報が挙げられる。
【0007】
このようなゼオライト触媒を用いる方法は、全て熱力学平衡値を上回るDMA選択率を与えるが、DMA選択率およびTMA生成の抑制は必ずしも充分なものでなく、また通常DMA選択率はメタノール転化率が95〜96%を越えると急速に低下し、高いDMA選択率を維持するためには常に相当量の未反応メタノールを残さなければならないという問題も残っている。例えば、特開昭59ー210050 号公報は、Naー モルデナイトを用いてメタノール転化率が80から96%の範囲で反応を行うDMAの選択的製法を開示しており、この方法は過去に提案されたゼオライト触媒の中でも優れたDMA選択率及びメタノール消費反応活性を与えるものである。ここでは、通常、好ましいN/C範囲である1〜2. 5の間、またメタノール転化率80%以上の条件で優れた成績は、重量百分率でDMA53. 0%、TMA7. 7%(メタノール転化率;86. 1%、SV;2010)またはDMA53. 9%、TMA12. 9%(メタノール転化率;94. 1%、SV;2020)となっている。
【0008】
また、多くの場合、活性(メタノール消費反応速度)と選択性は両立せず、高い選択率を維持するためには或程度の活性を犠牲、あるいはこの逆で高い活性を維持するためには或程度の選択性を犠牲にしなければならない。例えば前記特開昭59ー210050 号公報の実施例1では、重量百分率でDMA39. 5%をアルカリカチオン増量することにより49. 3まで上げた場合、メタノール転化率約90%における反応活性はSV2010からSV1010に低下している。ゼオライト触媒を用いたDMAの選択的製法については「触媒,29 巻4 号322 頁」に詳しく示されている。
【0009】
メチルアミン製造において、処理を施したゼオライト触媒を使用することによりDMAの選択性を改善させる方法として、次のような方法が知られている。特開昭61-254256 号公報には、チャバサイト、エリオナイト、ゼオライトrhoもしくはゼオライトZKー5を、珪素、アルミニウム、燐および硼素から選ばれた少なくとも1つの元素を含む化合物で処理して、ゼオライトの上に元素を沈澱させて変性したゼオライト触媒を使用する方法が記載されている。
また、モルデナイトに関しては、次のような方法が知られている。特開昭59-227841 号公報には、モルデナイトを水蒸気処理した触媒を使用する方法、特開平6-179640号公報には、モルデナイトを液相にてシリル化処理した触媒を使用する方法、また、特開平3-262540号公報には、モルデナイトをSiCl4 により気相において処理した触媒を使用する方法等が記載されている。
【0010】
Naー モルデナイトを用いたDMAの製法として、特開昭56-46846号公報にはNa量を調節したモルデナイトを用いMMAよりDMAを選択的に得る方法、特開昭59-210050 号公報にはNa量を調節したモルデナイトを用いDMAを選択的に得る方法が記載されている。
また、高シリカモルデナイトを用いたDMAの製法として、特開平6-9510号公報にはMg含有高シリカモルデナイトを用いる方法が記載されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
このようにメチルアミンの製造に用いる触媒としては、いろいろなゼオライト触媒が提案されているが、当該反応においてTMAの生成を抑制しながらより高いDMAを製造すことのできるゼオライト触媒の一層の改良、開発が望まれている。
【0012】
本発明は、メタノールあるいはメチルアミン混合物とアンモニアからジメチルアミンを製造する反応に使用する触媒として、従来のゼオライト触媒が有するメタノールの転化率が95%以上になるとDMA選択率が急激に低下するという欠点を改善し、より高いDMA選択性とより低いTMA選択性及びより高いメタノール消費反応活性を与える新規なゼオライト触媒を提供すことを目的とするもである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意努力した結果、後述の実施例に示したように、ゼオライトをキレート剤で処理をして得た変性ゼオライトは、メタノールあるいはメチルアミン混合物とアンモニアからジメチルアミンを製造する触媒として、極めて高いDMA選択性及び低いTMA選択性を示し、また高いメタノール消費反応活性も示すことを見い出し本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は、メタノールとアンモニア、またはメタノールとメチルアミン混合物とアンモニアを触媒の存在下に気相にて反応させてジメチルアミンを製造する方法において、触媒としてゼオライトをアミノポリカルボン酸またはピリジンカルボン酸から選ばれたキレート剤を含む溶液で処理した変性ゼオライトを使用することを特徴とするジメチルアミンの製法に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法における変性ゼオライト触媒はキレート剤で処理されたものであることが重要な点である。
【0016】
本発明において使用するゼオライトとしては、アンモニアとメタノールからメチルアミンを生成する反応に形状選択性を示すゼオライト、例えばモルデナイト、シャバサイト、クリノプチロライト、レビナイト、ゼオライトrho、ゼオライトA、FU−1、エリオナイト、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−21、モンモリナイト等が好ましい。特にモルデナイト、シャバサイトが好ましい。その中でも100g当たりナトリウム含量が0.01gから2. 0gの範囲にあるモルデナイトもしくは水素型モルデナイトが好ましい。Si/Al原子比が5. 5から9の範囲に調整されたモルデナイトはさらに好ましい。
【0017】
ゼオライトの処理に使用するキレート剤としては、アミノポリカルボン酸またはピリジンカルボン酸を使用するのが好ましく、特に一分子中に2〜6のカルボキシル基を有するアミノポリカルボン酸、またはピリジンジカルボン酸を使用するのが好ましい。また一分子中に2〜6のカルボキシル基を有し、且つその最高解離定数(全カルボキシル基、pKn )が9〜12の範囲であるアミノポリカルボン酸の使用は特に好ましい結果を与える。さらに好ましくは一分子中に3〜6のカルボキシル基を有しpKn が9.5〜12の範囲にあるアミノポリカルボン酸の使用である。このようなアミノポリカルボン酸およびピリジンジカルボン酸の具体例としては、下記の表1〜表2に記載の化合物が挙げられる。なお、当然のことながら、実施溶液中ではこれらのアミノポリカルボン酸またはピリジンジカルボン酸の塩も酸アニオンに解離することから、本発明におけるアミノポリカルボン酸およびピリジンジカルボン酸にはその塩も包含していることを意味する。
【0018】
【表1】
Figure 0003811205
【0019】
【表2】
Figure 0003811205
【0020】
ゼオライトの処理はキレート剤を溶解した溶液を用いて行う。溶媒には水の使用が好ましい。通常、キレート剤を水に溶解した溶液のpHを約3〜7の範囲に調整し、それにゼオライトを加え浸漬または攪拌処理、あるいはゼオライトにキレート剤溶液を流通させる。ゼオライトに対するキレート剤の使用量は、通常、ゼオライト100gに対し0.001〜20モルの範囲、キレート剤の濃度は0.01〜20モル/リットルの範囲、処理温度は室温〜100℃の範囲、処理時間1〜500時間の範囲である。
【0021】
本発明によるアミポリカルボン酸もしくはピリジンカルボン酸で処理した変性ゼオライトは、これ以外のキレート剤、例えばシュウ酸などのポリキシ酸で処理したものに比べて、優れたDMA選択性を与える。特に一分子中に2〜6のカルボキシル基を有し、且つその最高解離定数(全カルボキシル基、pKn )が9〜12の範囲であるアミノポリカルボン酸で処理した変性モルデナイトの使用はより高いDMA選択性を与える。
また、キレート剤処理の効果は、モルデナイトのSi/Al原子比が5. 5から9. 0の範囲内にあるものへの適用が特に優れている。
【0022】
本発明によるジメチルアミンを製造する反応は、温度230〜350℃、好ましくは250〜330℃の範囲で行われる。圧力は常圧〜50Kg/cm2 G、好ましくは5〜30Kg/cm2 Gの範囲、N/C(反応系における窒素原子と炭素原子の数の比)が1〜2.5の範囲、空間速度は600〜2000/hrの範囲、およびメタノール転化率80〜98%の範囲で実施するのがよい。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
反応試験法
触媒を長さ800mm、1/2Bのステンレス反応管に充填し、反応温度320℃、圧力18kg/cm2 Gで、アンモニアとメタノールの等重量混合物を毎分1. 0gの速度で導入して反応を行った。
【0024】
実施例1〜13
紛状のNa型モルデナイトを20倍量の3規定の硝酸アンモニウム溶液で6時間還流煮沸した。モルデナイトをろ別し、再度3規定の硝酸アンモニウム溶液を加えて6時間還流煮沸を合計4回繰り返し行った。ろ別したモルデナイトは水洗後、130℃で6時間乾燥し、450℃で3時間焼成することによってH型のモルデナイトを得た。このH型モルデナイト100gを1規定の硝酸ナトリウム溶液1リッター中で40℃、20時間還流煮沸することによって、ナトリウム0. 4%を含むモルデナイトを調製した。このモルデナイトは直径3mmの円筒状ペッレトに成形した。ついで、このモルデナイト100gを、水500gに表3中に記載する各種のキレート剤0.269モルを加えたのち、水酸化ナトリウムを用いてpH4〜5に調整することによってキレート剤を溶解した溶液中に80℃、8時間浸漬処理した。モルデナイトをろ別後、水洗、120℃で4時間乾燥した後、500℃で4時間焼成した。
得られたモルデナイト触媒を用いてアンモニアとメタノールからジメチルアミンを製造する反応を行った。その結果、表3〜表4に示される組成のメチルアミン混合物を得た。
【0025】
【表3】
Figure 0003811205
【0026】
【表4】
Figure 0003811205
【0027】
実施例14
エリオナイトを約20%含有する紛状のシャバサイトを20倍量の3硝酸ナトリウム溶液で4時間還流煮沸した。このシャバサイトをろ別後、水洗、130℃で6時間乾燥した後、450℃で3時間焼成した。このシャバサイトは直径3mmの円筒状ペッレトに成形した。ついで、このシャバサイトを実施例1と同様な方法でキレート剤による処理を行った。なお、キレート剤にはEDTAを使用した。
得られたシャバサイト触媒を用いてアンモニアとメタノールからジメチルアミンを製造する反応を行った。その結果、表5に示される組成のメチルアミン混合物を得た。
【表5】
Figure 0003811205
【0028】
比較例1
実施例1と同様な方法でナトリウム0. 4%を含むモルデナイトを調製し、それを直径3mmの円筒状ペッレトに成形し触媒とした。なお、キレート剤による処理は行わなかった。
得られたモルデナイト触媒を用いてアンモニアとメタノールからジメチルアミンを製造する反応を行った。その結果、表6に示される組成のメチルアミン混合物を得た。
【表6】
Figure 0003811205
【0029】
比較例2
実施例14と同様な方法でシャバサイトをを調製し、それを直径3mmの円筒状ペッレトに成形し触媒とした。なお、キレート剤による処理は行わなかった。得られたシャバサイト触媒を用いてアンモニアとメタノールからジメチルアミンを製造する反応を行った。その結果、表7に示される組成のメチルアミン混合物を得た。
【表7】
Figure 0003811205
【0030】
比較例3
実施例1と同様な方法でナトリウム0. 4%を含むモルデナイトを調製し、それを直径3mmの円筒状ペッレトに成形した。ついで、このモルデナイト100gを、キレート剤として2モル/リットルのシュウ酸溶液600ml中に70℃、1時間浸漬処理した。モルデナイトをろ別後、水洗、130℃で4時間乾燥した後、500℃で3時間焼成した。
得られたモルデナイト触媒を用いてアンモニアとメタノールからジメチルアミンを製造する反応を行った。その結果、表8に示される組成のメチルアミン混合物を得た。
【表8】
Figure 0003811205
【0031】
【発明の効果】
本発明におけるキレート剤処理により調製された変性ゼオライト触媒は、メチルアミン製造用触媒として高いメタノール消費反応活性を維持しつつDMA選択性を向上させ、TMA選択性を抑制する効果を発揮する。したがって、メタノールおよび/またはメチルアミン混合物とアンモニアを反応させジメチルアミンを製造する際、従来のゼオライト触媒とは異なり、98%という高いメタノール転化率でも高いジメチルアミン選択性を与え、さらには触媒の寿命を大きく向上させることができる。

Claims (5)

  1. メタノールとアンモニア、またはメタノールとメチルアミン混合物とアンモニアを触媒の存在下に気相にて反応させてジメチルアミンを製造する方法において、触媒としてゼオライトをアミノポリカルボン酸またはピリジンカルボン酸から選ばれたキレート剤を含む溶液で処理した変性ゼオライトを使用することを特徴とするジメチルアミンの製法。
  2. ゼオライトが、モルデナイトまたはシャバサイトである請求項1記載のジメチルアミンの製法。
  3. ゼオライトが、モルデナイト100g当たりナトリウム含量が2. 0g以下のモルデナイトである請求項1記載のジメチルアミンの製法。
  4. ゼオライトが、Si/Al原子比5. 5〜9の範囲のモルデナイトである請求項1記載のジメチルアミンの製法。
  5. 気相反応を、温度200〜350℃、圧力5〜50気圧、N/C1〜2. 5、およびメタノールの転化率80〜98%の範囲の条件下で行う請求項1記載のジメチルアミンの製法。
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