JP4758645B2 - ジメチルアミンの製造方法 - Google Patents
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Description
ジメチルアミンは、一般にアルミナ、シリカアルミナ等の脱水およびアミノ化作用をもつ固体酸触媒の存在下にメタノールとアンモニアを気相で高温(400℃前後)で反応させることにより製造される。この反応ではジメチルアミン(以下、DMAと記す。)の他にモノメチルアミン(以下、MMAと記す。)及びトリメチルアミン(以下、TMAと記す。)が副生し、これらの副生メチルアミンはその需要がDMAに較べ著しく少ないため反応生成物から分離された後、反応系に転送されて再利用される。
DMA製造コストの低減及び装置の小型化を実現するためには、反応において副生メチルアミン、特にTMAの生成を極力抑制し、DMAの生成を促進することが肝要である。しかしながら、3種のメチルアミンの選択率は、前記のアルミナ、シリカアルミナ等の通常の非晶質固体酸触媒上では熱力学的に決まり、通常の反応条件ではTMAの生成率がDMAを大幅に上回る。
例えば、反応温度400℃、反応器入口のアンモニアとメタノールの比率1:1(重量比)の場合、熱力学的に計算される各アミンの平衡生成比は、重量比でMMA:DMA:TMA=0.284:0.280:0.436である。このため、常に多量のMMA及びTMAを分離し、反応を平衡的にDMAに有利に進行させるために存在せしめる多量の過剰アンモニアと共に反応系へ再循環しなければならない。
近年、この問題の解決を目指し各種のゼオライト触媒が提案されている。例えば、ゼオライトAに関する特開昭56−69846号公報、FU−1に関する特開昭54−148708号公報、特開昭58−69846号公報、ZSM−5に関する米国特許第4,082,805号、フェリエライト及びエリオナイトに関する特開昭56−113746号公報、rho、ZK−5及びシャバサイトに関する特開昭61−178951号公報、特開昭63−8358号公報、モルデナイトに関する特開昭56−46846号公報、特開昭59−210050号公報、特開昭58−049340号公報等が挙げられる。
このようなゼオライト触媒を用いる方法は、全て熱力学平衡値を上回るDMA選択率を与えるが、DMA選択率およびTMA生成の抑制は必ずしも充分なものでなく、また通常DMA選択率はメタノール転化率が95〜96%を越えると急速に低下し、高いDMA選択率を維持するためには常に相当量の未反応メタノールを残さなければならないという問題も残っている。例えば、特開昭59−210050号公報は、Na−モルデナイトを用いてメタノール転化率が80から96%の範囲で反応を行うDMAの選択的製法を開示しており、この方法は過去に提案されたゼオライト触媒の中でも優れたDMA選択率及びメタノール消費反応活性を与えるものである。ここでは、通常、好ましいN/C範囲である1〜2.5の間、またメタノール転化率80%以上の条件で優れた成績は、重量百分率でDMA53.0%、TMA7.7%(メタノール転化率;86.1%、SV;2010)またはDMA53.9%、TMA12.9%(メタノール転化率;94.1%、SV;2020)となっている。
また、多くの場合、活性(メタノール消費反応速度)と選択性は両立せず、高い選択率を維持するためには或程度の活性を犠牲、あるいはこの逆で高い活性を維持するためには或程度の選択性を犠牲にしなければならない。例えば前記特開昭59−210050号公報の実施例1では、重量百分率でDMA39.5%をアルカリカチオン増量することにより49.3まで上げた場合、メタノール転化率約90%における反応活性はSV2010からSV1010に低下している。ゼオライト触媒を用いたDMAの選択的製法については「触媒、29巻4号322頁」に詳しく示されている。
メチルアミン製造において、処理を施したゼオライト触媒を使用することによりDMAの選択性を改善させる方法として、次のような方法が知られている。特開昭61−254256号公報には、チャバサイト、エリオナイト、ゼオライトrhoもしくはゼオライトZK−5を、珪素、アルミニウム、燐および硼素から選ばれた少なくとも1つの元素を含む化合物で処理して、ゼオライトの上に元素を沈澱させて変性したゼオライト触媒を使用する方法が記載されているが、変性剤のみを使用するために変性剤使用量が増大し、また、反応成績においても、活性は小さく、メタノールからのメチルアミン生成率は低く、ジメチルエーテル等の副生物を多く生成するという問題がある。特開平11−35527号公報には、結晶質シリコアルミノフォスフェートを液相にてシリル化処理した触媒を使用する方法が記載されている。また、モルデナイトに関しては、次のような方法が知られている。特開昭59−227841号公報には、モルデナイトを水蒸気処理した触媒を使用する方法、特開平6−179640号公報には、モルデナイトを液相にてシリル化処理した触媒を使用する方法、特開平3−262540号公報には、モルデナイトをSiCl4により気相において処理した触媒を使用する方法、特開平8−225498号公報等にはモルデナイトをキレート剤を含む溶液で処理した触媒を使用する方法、特開2000−302735号公報にはアルミニウムイオン交換したモルデナイトを使用する方法等が記載されている。
Na−モルデナイトを用いたDMAの製法として、特開昭56−46846号公報にはNa量を調節したモルデナイトを用いMMAよりDMAを選択的に得る方法、特開昭59−210050号公報にはNa量を調節したモルデナイトを用いDMAを選択的に得る方法が記載されている。また、高シリカモルデナイトを用いたDMAの製法として、特開平6−9510号公報にはMg含有高シリカモルデナイトを用いる方法が記載されている。
Na−モルデナイトを用いたDMAの製法として、特開昭56−46846号公報にはNa量を調節したモルデナイトを用いMMAよりDMAを選択的に得る方法、特開昭59−210050号公報にはNa量を調節したモルデナイトを用いDMAを選択的に得る方法が記載されている。また、高シリカモルデナイトを用いたDMAの製法として、特開平6−9510号公報にはMg含有高シリカモルデナイトを用いる方法が記載されている。
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意努力した結果、ゼオライトを有機リン化合物を溶解した溶液で処理をして得た変性ゼオライトは、メタノール及び/又はメチルアミン混合物とアンモニアとからジメチルアミンを製造する触媒として、極めて高いDMA選択性及び低いTMA選択性を示し、また高いメタノール消費反応活性も示すことを見い出し本発明に至った。
すなわち、本発明は、メタノールとアンモニア、メタノールとメチルアミン混合物とアンモニア、またはメチルアミン混合物とアンモニアをゼオライト触媒の存在下で気相にて反応させてジメチルアミンを製造する方法において、ゼオライトを有機リン化合物を溶解させた溶液で処理した変性ゼオライト触媒の存在下で反応させることを包含する、ジメチルアミンの製造方法に関する。
本発明において使用するゼオライトとしては、アンモニアとメタノールからメチルアミンを生成する反応に形状選択性を示すゼオライト、例えばモルデナイト、クリノプチロライト、レビナイト、ゼオライトA、FU−1、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−21、モンモリロナイト等が好ましい。特にモルデナイトが好ましい。その中でも100g当たりナトリウム含量が2g以下、特に0.01gから2g、の範囲にあるモルデナイトもしくは水素型モルデナイトが好ましい。Si/Al原子モル比が5.5〜9、特に5.5〜7の範囲に調整されたモルデナイトはさらに好ましい。
ゼオライトの処理に使用する有機リン化合物として、例を挙げると、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のホスフェート類、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート等のアシッドホスフェート類、トリメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、トリエチルホスファイト等のホスファイト類、フェニルホスホン酸等のホスホン酸類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類等が挙げられる。中でも、ホスフェート類、ホスファイト類、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類が好ましく、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスファイト、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシドがより好ましく、特にトリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリエチルホスファイトが好ましい。
ゼオライトの処理は有機リン化合物を溶解した溶液を用いて行う。溶媒にはヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族もしくは脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等の使用が好ましい。中でも、脂肪族もしくは脂環式炭化水素類、芳香族炭化水素類が好ましく、特にトルエンの使用が好ましい。通常、有機リン化合物を溶解した溶液にゼオライトを加え浸漬または攪拌処理、あるいはゼオライトに有機リン化合物を溶解した溶液を流通させる。ゼオライトに対する有機リン化合物の使用量は、好ましくは、ゼオライト100gに対し0.001〜20モル、より好ましくは0.01〜10モルの範囲、有機リン化合物の濃度は、好ましくは0.001〜20モル/リットル、より好ましくは0.01〜10モル/リットルの範囲、処理温度は、好ましくは室温〜110℃、より好ましくは40〜105℃、更に好ましくは60〜110℃の範囲、処理時間は、好ましくは1〜500時間、より好ましくは2〜100時間、更に好ましくは1〜10時間の範囲である。
このように有機リン化合物で処理して得られた変性ゼオライト触媒中のリン含有量は、好ましくは0.02wt%〜5wt%、より好ましくは0.05wt%〜1wt%である。
本発明による有機リン化合物で処理した変性ゼオライトは、上記以外のリン化合物、例えばホスホラストリクロリドで処理したものに比べて、優れたDMA選択性を与える。また、有機リン化合物処理の効果は、モルデナイトのSi/Al原子比が5.5から9の範囲内にあるものへの適用が特に優れている。
本発明によるジメチルアミンを製造する反応は、温度は、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜350℃、更により好ましくは250〜330℃の範囲で行われる。圧力は、好ましくは常圧〜50Kg/cm2G、より好ましくは5〜50kg/cm2G、更により好ましくは5〜30Kg/cm2Gの範囲、N/C(反応系における窒素原子と炭素原子の数のモル比)が、好ましくは1〜2.5、より好ましくは1.5〜2.3の範囲、空間速度は、好ましくは600〜3200/h、より好ましくは600〜2000/hrの範囲、およびメタノール転化率が、好ましくは80〜98%、より好ましくは85〜97%の範囲で実施する。
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
反応試験法
触媒を長さ800mm、1/2Bのステンレス反応管に充填し、反応温度322℃、圧力17.5kg/cm2Gで、アンモニアとメタノールの等重量混合物を毎分1.05gの速度で導入して反応を行った。
比較例1
実施例1と同様な方法でナトリウム0.4%を含むモルデナイトを調製し、それを直径3mmの円筒状ペレットに成形し触媒とした。得られたH型モルデナイト触媒を、有機リン化合物による処理を行わず、アンモニアとメタノールからジメチルアミンを製造する反応を行った。得られた触媒中のリン含有量は、0.00wt%であった。その結果、表2に示される組成のメチルアミン混合物を得た。
比較例2
実施例1で得られたH型モルデナイト25gを、ホスホラストリクロリド25gを溶解したトルエン溶液500g中に70℃、4時間浸漬処理をした。処理後、水洗し、130℃で4時間乾燥し、570℃で4時間焼成した。得られた触媒中のリン含有量は、0.17wt%であった。得られた修飾モルデナイト触媒を用いてアンモニアとメタノールからジメチルアミンを製造する反応を行った。その結果、表2に示される組成のメチルアミン混合物を得た。
比較例3
実施例1で得られたH型モルデナイト50gを1規定のリン酸水溶液500ml中に80℃、8時間浸漬処理した。処理後、水洗し、80℃で4時間乾燥し、570℃で4時間焼成した。得られた触媒中のリン含有量は、0.18wt%であった。得られた修飾モルデナイト触媒を用いてアンモニアとメタノールからメチルアミンを製造する反応を行った。その結果、表2に示される組成のメチルアミン混合物を得た。
Claims (5)
- メタノールとアンモニア、メタノールとメチルアミン混合物とアンモニア、またはメチルアミン混合物とアンモニアをゼオライト触媒の存在下で気相にて反応させてジメチルアミンを製造する方法において、ゼオライトを有機リン化合物を溶解した溶液で処理した変性ゼオライト触媒の存在下で反応させることを包含し、ゼオライトがモルデナイトである、ジメチルアミンの製造方法。
- 有機リン化合物がホスファイト類、ホスフェート類、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類より選ばれた少なくとも1種類である、請求項1記載の製造方法。
- ゼオライトが、100g当たりのナトリウム含量が2g以下のモルデナイトである、請求項1または2記載のジメチルアミンの製造法。
- ゼオライトが、Si/Al原子モル比が5.5〜9の範囲のモルデナイトである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のジメチルアミンの製造法。
- 気相反応を、温度200〜350℃、圧力常圧〜50気圧、N/C(反応系における窒素原子と炭素原子の数のモル比)1〜2.5、およびメタノール転化率80〜98%の範囲の条件下で行う、請求項1〜4の何れか1項記載のジメチルアミンの製造方法。
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