JP3804703B2 - 水性塗料用樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、車両、自動車部品、家電、機器他等の金属素材又はその電着塗装膜に対し利用され、0.5〜5mmの1コート厚膜塗装を行った場合においても140℃×30分程度の焼付時にフクレ、クラックを生ずる事なく、厚膜化が可能であり、制振性が良好でかつ耐水性、チッピング性等の性能を合わせ持つ事ができるため、特に自動車のタイヤハウス、床裏、フロントエプロン等のアンダーコート材に利用できる水性塗料用樹脂組成物。
【0002】
【従来の技術】
[特開平02−208379号]
特開平02−208379号には、塗膜に、優れた外観と、高い耐衝撃性を付与する塗料組成物に関する技術が開示されている。
すなわち、特定の性状を有する重合体粒子の溶解性パラメ−タSP値と塗膜マトリックスのSP値と特定の関係にして、塗膜中に多重ドメイン構造を形成させることにより、外観に優れ、高い耐衝撃性を有する塗膜が得られるようにすることができる。
その構成は、
(A) α,β−エチレン性不飽和単量体と多官能α,β−エチレン性不飽和単量体との共重体粒子(ガラス転移温度:−30〜+60℃、平均粒径:0.02μm〜20μm、溶剤膨潤度:1.0〜6.0):1〜40重量%、
(B) ポリオ−ル樹脂を主体とする樹脂連続相(水酸基と反応し得る硬化剤を含み、ポリオ−ル樹脂/硬化剤の重量比:95/5〜50/50):99〜60重量%で構成され、
Aの溶解性パラメ−タ(SPA)と樹脂連続相中のポリオ−ル樹脂の溶解性パラメ−タ−(SPB)とが、0.30≦|SPA−SPB|≦2.50の関係を有し、造膜に際して多重ドメイン構造を内包する高分子膜を形成し得るようにする。しかるに、本願発明は、塗料組成物を構成する重合体粒子は、コア/シェル構造のような多相構造を有しておらず、塗料組成物の開示されている態様は、溶剤型である。
【0003】
[特公平1−53310号]
特公平1−53310号には、厚塗り性およびレベリング性の良好なエマルジョン塗料組成物に関する技術が開示されている。
すなわち、このエマルジョン塗料組成物は、エマルジョン塗料に特定の水溶性樹脂を含有させてなる、相溶性と乾燥性に優れ、厚塗り性とレベリング性の良好なエマルジョン塗料組成物である。
その構成は、
(A)エマルジヨン塗料(例:アクリル樹脂系、酢酸ビニル樹脂系等の合成樹脂エマルジヨン)を樹脂固形分として100重量部に、
(B) ▲1▼水溶性溶剤の存在下でα,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル及びアルケニルベンゼンから選ばれる1種以上の単量体70〜90重量%、
▲2▼α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸0.5〜15重量%、及び、
▲3▼親水性の非イオン性α,β−モノエチレン性不飽和単量体0.5〜15重量%を重合させ、
さらに、アミン又はアンモニアで水溶性化した水溶性樹脂を樹脂固形分として2〜65重量部、添加してなる塗料である。
この塗料は、厚塗り性とレベリング性に優れ、従来溶剤系塗料を使用してきたマスチック基材のトツプコ−ト、金属のトツプコ−ト等にも使用できる。
しかるに、本願発明は、塗料組成物を構成する重合体粒子は、コア/シェル構造のような多相構造を有しておらず、塗料組成物の開示されている態様は、硬化剤が必須構成要素ではない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、環境保護対策の観点から、ドイツ等の動向に倣い、自動車等の車輌を廃車とした際に廃材として廃出される種々の車輌部品をリサイクルや再利用しようとする努力がなされている。
しかしながら、再利用率は、漸増してはいるものの、依然として低迷しており、車輌廃材処理の問題は、年を追うごとに大きなものとなっている。
車輌廃材のうち、塩素等のハロゲンを含有する樹脂は、焼却炉の炉材を傷めたり、ダイオキシン発生の原因となるので、特に問題となっている。
塩素等のハロゲンを含有する樹脂の車輌廃材の具体例としては、例えば、塩ビゾル(ポリ塩化ビニルのゾル)を挙げることができる。
塩ビゾルは、通常、耐チッピング性塗料として、車輌の床裏、ボディーやシャーシに塗装される。ここで、耐チッピング性とは、小石が等が車輌のボディーやシャーシに衝突(チッピング)した際に、傷を負うことを免れる性質をいう。
このような背景から、耐チッピング性塗料として、非塩ビ系の樹脂開発が求められている。
【0005】
一方、自動車のエンジンやタイヤからの振動やは雑音の室内への伝搬を抑制する目的により室内側にアスファルトシート等の制振材を用いている。しかしシート等の貼り付けに工数がかかる等、組立ラインにおける生産性に問題がある。さらに作業環境及び安全性から塗料も有機溶剤系から水系への転換が要望されている。
【0006】
従来から自動車のチッピング材としての塩ビゾルは、アンダーコート材といわれ、タイヤハウス、床裏、フロントエプロン等に厚膜塗装された後、予備乾燥され中塗り塗装及び焼付さらに上塗り塗装及び焼付といった工程がなされる。
【0007】
これまでアンダーコート材として、チッピング性及び制振性を合わせ持つ非塩ビ系の水性樹脂が提案されているものの、水系のために耐水性が劣ったり、熱可塑性のために使用温度範囲での強度等が充分ではない等の問題が一般的に指摘される。
【0008】
本発明では、従来のチッピング材及び制振材としての問題点である廃材処理及び生産性が同時に改善できる水性樹脂であり、更に具体的に言えば、自動車のチッピングが用いられている塩ビゾル代替として用いた場合、耐水性、チッピング性が充分で、かつ室内側に用いられるアスファルトシート代替としての制振性を合わせ持つことができる水性塗料用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本出願に係る発明は、以下の[1]〜[7]に記載した事項により特定される。
【0010】
[1] 重合体粒子成分(A)固形分重量と水溶性アクリル樹脂成分(B)固形分重量を基準として、
重合体粒子成分(A)40〜90重量%(固形分)と水溶性アクリル樹脂成分(B)10〜60重量%(固形分)を含有する水性塗料用樹脂組成物であって、
該重合体粒子成分(A)を構成する重合体粒子が、
少なくとも一つの20〜150℃のガラス転移温度(Tg)と9.0〜11.0のSP値を有する重合体成分を含有する相と、
少なくとも一つの−60〜20℃のガラス転移温度(Tg)と8.0〜10.0のSP値を有する重合体成分を有する相とを含んで構成される重合体粒子であって、
該重合体粒子を構成する全ての相が、
他の任意の相との対比において、
ガラス転移温度(Tg)が10〜200℃の範囲の温度差をもって相異なり、
かつ、
該重合体粒子を構成する全ての相が、
隣接する相との対比において、
SP値が0.5以上をもって相異なることにより、
隣接する相相互間の相溶性が抑制されていることを特徴とする、
多相構造重合体粒子である、水性塗料用樹脂組成物。
【0011】
[2] 重合体粒子成分(A)固形分重量と水溶性アクリル樹脂成分(B)固形分重量を基準として、
重合体粒子成分(A)40〜90重量%(固形分)と水溶性アクリル樹脂成分(B)10〜60重量%(固形分)を含有する水性塗料用樹脂組成物であって、
該重合体粒子成分(A)を構成する重合体粒子が、
少なくとも一つの20〜150℃のガラス転移温度(Tg)と9.0〜11.0のSP値を有する重合体成分を含有するシェル相と、
−60〜20℃のガラス転移温度(Tg)と8.0〜10.0のSP値を有する重合体成分を有するコア相とを含んで構成されるコア/シェル構造重合体粒子であって、
該コア/シェル構造重合体粒子を構成する全ての相が、
他の任意の相との対比において、
ガラス転移温度(Tg)が10〜200℃の範囲の温度差をもって相異なり、
かつ、
該コア/シェル構造重合体粒子を構成する全ての相が、
隣接する相との対比において、
SP値が0.5以上をもって相異なることにより、
隣接する相相互間の相溶性が抑制されていることを特徴とする、
コア/シェル構造重合体粒子である、水性塗料用樹脂組成物。
【0012】
[3] 水溶性アクリル樹脂成分(B)が、
−50〜+50℃のガラス転移温度を有し、
重合体粒子成分(A)を構成する各相が有する各SP値における最大SP値よりも0.5以上高いSP値を有することを特徴する、
[1]又は[2]に記載した水性塗料用樹脂組成物。
【0013】
[4] 水溶性アクリル樹脂成分(B)が、
水酸基とカルボキシル基を有し、
水酸基価が10〜100KOHmg/gであり、
酸価が10〜100KOHmg/gであり、
3,000〜100,000の重量平均分子量を有する水溶性アクリル樹脂から構成されることを特徴する、
[1]乃至[3]の何れかに記載した水性塗料用樹脂組成物。
【0014】
[5] [3]に記載した水性塗料用樹脂組成物に、
重合体粒子成分(A)及び水溶性アクリル樹脂成分(B)に含有される重合体が有する官能基と、架橋反応が可能な官能基を有する水性硬化剤成分(C)を、
重合体粒子成分(A)固形分重量と水溶性アクリル樹脂成分(B)固形分重量を基準として、
1〜30重量%(固形分)添加したことを特徴とする、
水性塗料用樹脂組成物。
【0015】
[6] コア/シェル構造重合体粒子が、
コア相とシェル相の重量比が、(80〜20):(20〜80)であり、
該重合体粒子を構成する全ての重合体を合計した、
ガラス転移温度が−30〜+30℃であることを特徴とする、
[2]に記載した水性塗料用樹脂組成物。
【0016】
[7] 重合体粒子成分(A)及び/又は水溶性アクリル樹脂成分(B)が、補助架橋成分及び/又は自己架橋性成分を含有するものであることを特徴とする、
[1]乃至[6]の何れかに記載した水性塗料用樹脂組成物。
【0017】
本発明者らは前記の問題点を解決するため塩ビゾル代替として用いる、水性塗料用樹脂で制振性を有するアンダーコート材に必要とされる性能としては、制振性、チッピング性をはじめ、耐水性、素材密着性等が主に上げられるが、制振性としては−20℃から+60℃程度の温度、あるいは0〜1000Hz程度の周波数領域でも、温度、周波数に依存性が少なく有効に制振性能を保持しなければならない。又、制振性、いわゆる振動を減衰するためには振動エネルギーを熱エネルギーに変換させ振動を減衰させる事が考えられる。このため、樹脂的な粘弾性でいえば粘性の要素で有る損失弾性率あるいはtanδが振動の減衰に有効な考えから、温度、周波数に依存性の少ない制振性を得るためには、例えばtanδいわゆるTgを多く又は幅広く(以下「ブロード化」と表す)持たせた塗膜構成になる様に樹脂を構成するといった事が大切であり、又制振性が質量にも依存するするため、厚膜化することも有効である。
【0018】
チッピング性としても−30℃程度の低温領域から飛石による衝撃に耐えうる様にするため、低いTgを有する軟質成分等を導入し応力緩和するといった手法が考えられる。
【0019】
こういった考え方に基づき、鋭意検討した結果、本発明のポリマー粒子成分(A)と水溶性アクリル樹脂成分(B)及び水性硬化剤成分(C)により構成される水性塗料用樹脂組成物は、ハイソリッド化が出来ていわゆる揮発成分が少ないこと、高Tg成分等により造膜を遅らせることができるため等によりフクレがなく厚膜化が良好であり、又、特に(A)中の各相及び(B)とのSP値及びTgが離れて設定させることにより、各成分が相溶化の抑制ができ独自のTg点を塗膜中に持たせることができるため、制振性、チッピング性としての幅広い温度、周波数領域で良好な塗膜性能が得られる。さらに水性硬化剤を含んだ(A)/(B)/(C)との構成とした場合、架橋構造が塗膜中により多く持たせることが可能であり、耐水性等をより向上させることができる。
【0020】
この結果、車両、自動車部品、家電、機器等の金属素材又はその電着塗装膜等に対し、1コート厚膜塗装を行ない130〜140℃×30分程度の焼付工程においても、フクレ、クラックを生ずることなく厚膜化が可能であり、かつ厚膜化された塗膜が制振性、チッピング性、耐水性といった性能を合わせ持つことができることを見い出し本発明に至った。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いる「多相構造重合体粒子」なる語の「多相構造」の概念は、特に限定されないが、具体例としては、例えば、コア/シェル構造、サラミ状構造、海島構造、積層構造等が挙げられる。
本出願の明細書では、「多相構造」については、多相構造の典型的な例である「コア/シェル構造」を中心に説明するが、本発明において、多相構造は、コア/シェル構造に限定されるものではない。
【0022】
本出願の明細書において用いる「粒子」なる語の概念には、これらの語が高分子化学において一般的に有する概念を完全に包含するが、必ずしも等価なものではない。本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「粒子」の走査電子顕微鏡的形態の態様に関しては、例えば、ラズベリー状又は金米糖(こんぺいとう、ポルトガル語のconfeito)状の多くの突起を有するような態様、赤血球状の偏平な態様、ラグビーボール状の回転楕円体様の態様、大腸菌状の紡錘形様の態様等をも包含する。
本出願の明細書において用いる「粒子」なる語の概念には、例えば、ポリマーエマルジョン、ラテックス、ポリマーサスペンジョンを構成するマイクロスフィアをも包含し、本出願に係る発明においては、これらの例が一般的な態様である。このように、本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「粒子」なる語は、これらの語が高分子化学において一般的に有する概念と、必ずしも等価なものではないのではあるが、本発明に係るヘテロポリマー系の本質的「態様」について屡々言及するに当たり便宜的に用いるものとする。
【0023】
本出願の明細書において用いる「コア」、「シェル」及び「コア/シェル」なる語は、これらの語が高分子化学において一般的に有する概念を完全に包含するが、必ずしも等価なものではない。例えば、本発明に係る「コア/シェル」粒子に関しては、「コア」が少なくとも部分的に「シェル」に包まれている態様を包含する。このように、本出願の特許請求の範囲及び明細書において用いる「コア」、「シェル」及び「コア/シェル」なる語は、これらの語が高分子化学において一般的に有する概念と、必ずしも等価なものではないのではあるが、本発明に係るヘテロポリマー系の本質的「態様」について屡々言及するに当たり便宜的に用いるものとする。
なお、高分子化学においては、一般的に、「コア」なる語は、「核(core,center,nucleus)」、「芯(core,center)」及び「種(seed)」なる語と等価に用いられ、「シェル(shell)」なる語は、「殻(shell,skin,husk)」、「鞘(sheath)」及び「おおい(robe)」なる語と等価に用いられる。
したがって、本出願の明細書において用いる「コア」なる語については、「核(core,center,nucleus)」、「芯(core,center)」及び「種(seed)」なる語と同等に用いることもできる。同様に、「シェル」なる語については、「殻(shell,skin,husk)」、「鞘(sheath)」及び「おおい(robe)」なる語と同等に用いることもできる。
本発明に用いられる、ポリマー粒子(A)は各種ビニル性単量体あるいは官能基成分等を多段的に乳化重合あるいは反応して得られる水分散性共重合体であって、ポリマー粒子(A)中には、特許請求の範囲の請求項2に記載されている水性硬化剤(C)との架橋反応が可能なビニル基以外に官能基を含有する単量体を有し、補助架橋性又は自己架橋性を有するビニル性単量体あるいは官能基成分を含有させることができる。
ポリマー粒子成分(A)のコア/シェル構造とは、コア相の少なくとも一部がシェル相により被覆されてなる事であり、一般的には、多段的な乳化重合で1段目にコア相成分としてのビニル性単量体と開始剤により共重合しその後2段目としてシェル相成分としてのビニル性単量体を共重合して製造される。
【0024】
本発明の(A)及び(B)に用いられるビニル系単量体としては特に限定されるものではないが、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリル酸エステル又は、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、等の窒素含有ビニル性単量体が挙げられ、官能基含有ビニル性単量体としては、ヒドロキシル基含有ビニル性単量体の2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンとヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物(プラクセルFシリーズ:商品名、ダイセル化学工業社製)ポリエチレングリコールとメタクリル酸との付加物(ブレンマーPEシリーズ:商品名、日本油脂社製)、ポリプロピレングリコールとメタクリル酸との付加物(ブレンマーPPシリーズ:商品名、日本油脂社製)等のヒドロキシ基含有ビニル性単量体、又、カルボキシル基含有ビニル性単量体としては(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸及びそれらのモノエステル化物、又、グリシジル基含有ビニル性単量体としてはグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジル(メタ)アクリレート等があり、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外で、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン、プロピレン、等が挙げられる。
【0025】
さらに特許請求の範囲の請求項7に記載した自己架橋性を有するビニル性単量体の具体例としては、例えば、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−i−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、これらのビニル性単量体を1種以上用いて共重合される。
【0026】
特許請求の範囲の請求項7記載の補助架橋性を有するビニル性単量体の具体例としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
ここで更に(A)及び(B)に用いるビニル性単量体以外の官能基成分としては、例えばエポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド樹脂、ブロックイソシアネート樹脂等が挙げられる。
【0027】
本発明の(A)は以上のビニル性単量体等を用いて、乳化重合により共重合するが、乳化重合する際に以下の様な界面活性剤を用いることができる。
アニオン系としては、ドデシルベンゼンスルホン酸Na、ラウリル硫酸Na、ジオクチルスルホコハク酸Na、ジオクチルコハク酸K、ラウリルメチルタウリン酸Na、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸Na、ラウリルリン酸K。
カチオン系としてはオクタデシルアミン酢酸塩、テトラデシルアミン酢酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オキシエチレンドデシルアミン、
ノニオン系としてはポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリエチレントリデシルエーテル、
界面活性剤の使用量は、界面活性剤の乳化能力又は乳化するビニル性単量体に関係するため、適宜選択する必要性があるが、通常、ビニル性単量体100重量%に対し0.05〜5重量%程度使用する。
【0028】
(A)の乳化重合に際し用いる重合開始剤としては以下の様な開始剤を用いることができる。
例えば有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等が挙げられ、
無機過酸化物としては、過硫酸Na、過硫酸K、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が挙げられ、アゾ系としては、N,N−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタ酸)等が挙げられ、
レドックス開始剤としては過酸化水素−第1鉄塩、過硫酸塩−酸性亜硫酸Na等を用いることができる。
又、必要に応じて連鎖移動剤として、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メチルスチレンダイマー等を用いることができる。
この様なビニル性単量体等を選択し乳化重合されてなるポリマー粒子(A)であり、シェル相成分のTgが20℃以上150℃以下、SP値が9.0以上11.0以下の範囲でコア相成分のTgが−60℃以上20℃以下、SP値が8.0以上10.0以下の範囲であり、又、コア相及びシェル相のTgが10℃以上200℃以下の範囲の温度差を有し、更にコア相よりもシェル相成分のSP値が少なくとも0.5以上大きく設定される。
ここで用いているTgは、公知の方法フォックス(Fox)の式により求めることができる。フォックスの式とは、共重合体を形成する個々の単量体について、その単量体の単独重合体のTgに基ずいて、
共重合体のTgを算出するためのものであり、その詳細は、ブルテン・オブ・ザ・アメリカン・フィジカル・ソサエティー、シリーズ2(Bulletin of the American Physical Society、Series 2)1巻・3号・123項(1956年)に記載されている。フォックスの式による共重合体のTgを算出するための基礎となる各種ビニル性単量体についてのTgは、例えば、新高分子文庫・第7巻・塗料用合成樹脂入門(北岡協三著、高分子刊行会、京都、1974年)168〜169項の表10−2(塗料用アクリル樹脂の主な原料単量体)に記載されている数値を用いることができる。さらに、ここで用いられているSP値は、公知の方法( R.F.Fedors, polym. Eng. Sci., 14,(2),147〜154頁(1974年) に記載)により求めることができる。すなわち式(1)〔数式1〕により(A)、(B)成分中の各単量体等のSP値(δj)を、更に式(2)〔数式2〕により樹脂のSP値(δp)を計算する。この際に必要なΔeiとΔυiは、上記の文献中に表示されている。
【0029】
【数式1】
Figure 0003804703
ここで
δj (cal/cm31/2 :単量体(j)のSP値
ΔE (cal/mol) :単量体(j)の凝集エネルギー密度
V (cm3 /mol) :単量体(j)のモル体積
Δei(cal/mol) :原子又は原子団の(i)の蒸発エネルギー
Δυi(cm3 /mol) :原子又は原子団の(i)のモル体積
【0030】
【数式2】
Figure 0003804703
【0031】
ここで
δp(cal/cm31/2 :単量体(j)からなる樹脂のSP値
δj(cal/cm31/2 :単量体(j)のSP値
Xj :単量体(j)のモル分率
【0032】
通常、ここでコア相のTgが+20を超えるとTgすなわちtanδのブロード化が充分でなくなり、延いては低温又は低周波数領域の制振性が不足する傾向となる。
【0033】
通常、シェル相のTgが+150を超えると塗膜として硬すぎるため、焼付時のクラックが生じ易く、制振性も不足する。又、+20℃未満では焼付時の造膜性が速くなり、フクレが不良となる。
一般的には、特許請求の範囲の請求項6に記載したコア/シェル成分としての合計のTgも、シェル相Tgと同様な傾向が見られ+30℃を超えると、硬成分が多すぎてしまうため、応力緩和が不充分でクラックを生じ易く、又、−30℃未満では、軟質成分が多すぎてしまうため、焼付時の熱での造膜が速くなりフクレ性が不良となり厚膜化不充分となる。
【0034】
通常、コア相のSP値が10.0を超えるとポリマー粒子としての安定性が不足しフクレ性が不良となる。
【0035】
通常、シェル相のSP値が11.0を超えると、水溶性樹脂(B)との融着等で増粘が起きやすく塗料安定性が不良となる。
特許請求の範囲の請求項6に記載したコア相/シェル相の比において、コア相が80重量%を超えると低Tg化により造膜しやすくフクレが生じやすく、20重量%未満では高Tg化によるクラックが生じやすくなることから、好ましくはコア相メシェル相の重量比で70/30以上30/70以下であり、更に好ましくは60/40以上40/60以下である。
又、コア相よりもシェル相成分のSP値が少なくとも0.5以上大きくする意味としては、コア/シェル各相の相溶化の抑制が目的であり、Tgもふまえてさらに言えばコア相として、低Tg、低SPとし、シェル相を高Tg、中SPとすることにより、粒子の全体としてコア相には疎水成分が多く、シェル相の特に表層部にはコアの疎水成分等の影響により親水成分が存在し易くなり、結果として粒子が安定化し又、Tgの効果により焼付時の造膜を遅らせることができ揮発成分が揮発しやすくなるため、フクレがなく厚膜化も良好となると考えられる。
【0036】
本発明の特許請求の範囲の請求項1に記載の(A)/(B)の樹脂比率でいえば、(A)が40重量%未満であると(B)成分が増えすぎるため、多成分によるTgのブロード化が不充分になったり、有機溶剤量が多くなり、乾燥時の臭気問題が生ずる場合があり、又(A)が90重量%を超える場合、(B)成分が少なすぎるため、充分な高固型分化が出来ず、揮発成分が増えフクレが生じやすくなったり、(B)成分に依存性のあるフィラー、顔料等の分散性が不充分となる、このため好ましくは(A)/(B)の比の重量%でいえば80/20以上50/50以下でありさらに好ましくは80/20以上60/40以下である。
【0037】
本発明の水溶性樹脂(B)は水溶性有機溶剤の存在下にビニル性単量体を共重合させて得られる樹脂であり、Tgが−50℃以上+50℃以下、SP値が10.0以上で、少なくともコア/シェル構造ポリマー粒子(A)中のシェル相のSP値よりも0.5以上の値で、水酸基価10〜100KOHmg/gで酸価が10〜100KOHmg/gで又、重量平均分子量が3,000以上100,000以下からなり、さらに水性化のため、樹脂中の酸基が塩基成分により0.5以上1.5以下の当量で添加れて成る水溶性樹脂である。ここで重量平均分子量は、ポリスチレンを標準としたゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる。使用するビニル性単量体は特に限定されるものではなく、前記(A)に用いるビニル性単量体例として記載したものが選択的に用いることができる。共重合に必要な開始剤としては、前記(A)に用いる開始剤例として記載した中で有機過酸化物又はアゾ系が好適に用いることができる。又、必要に応じ、連鎖移動剤を使用するがこれも前記(A)に用いる連鎖移動剤例として記載したものが使用できる。
又、水溶性有機溶剤としては、親水性であれば使用が可能であり、例えばアルコール系、エチレングリコール系、プロピレングリコール系を用いることができる。
【0038】
ここで水溶性樹脂(B)のTgが−50℃未満とした場合、造膜しやすくなり、フクレが起きやすく厚膜化が不充分となり、又、+50を超えると硬質成分が増えるために、クラックが起きやすくなり厚膜化として不充分となったり、低温時の物性が不充分となる。
【0039】
SP値が少なくとも(A)成分中のシェル相SP値の0.5以上としないと(A)成分中シェル相と(B)成分との相溶化抑制が不充分となり、多成分によるTgのブロード化も不充分で、かつ塗料安定性が確保出来ない。
樹脂(B)中の水酸基価が10KOHmg/g未満では水性硬化剤(C)との架橋性が不充分となり耐水性等の物性が劣り、100KOHmg/gを超えると親水成分として塗膜中に存在しやすく耐水性が劣る。
【0040】
(B)の重量平均分子量が3,000未満では、耐水性、チッピング性等の物性が低下し、又100,000を超えると、塗料化時のハイソリッド化が出来なかったり、造膜しやすいため、フクレが起き厚膜化が不充分となる。
主に(B)の水性化に必要な樹脂中の酸価が10KOHmg/g未満では水性化が不充分で100KOHmg/gを超えると塗膜の耐水性が劣る。
ここで(B)を水性化するために、樹脂中の酸価いわゆる酸基に対し、塩基性成分により0.5以上1.5以下の当量比で添加されるが、塩基性成分としては、例えば三級アミン、アンモニア水、NaOH等用いることができるが、塗膜の耐水性等を考慮し、塗膜の加熱時に揮散が可能な、揮発性塩基成分としてトリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等の三級アミン又はアンモニア水が好適に用いられる。
又、さらには(B)の水性化に用いる塩基成分量では、(A)及び(B)と(C)の架橋反応性から言えば、塩基成分量が多い程架橋反応が進みにくくなることから(B)の水性化が確保される範囲で塩基成分量を少なくする方が良く、好ましくは0.5以上1.0以下の当量比である。
【0041】
上記(B)は塗料に際しフィラー分散用樹脂として有効である。
特許請求の範囲の請求項2に記載した水性硬化剤(C)は、(A)及び(B)樹脂中の主に水酸基との架橋成分として用いるが、例えばメラミン化合物等が挙げられ、中でも水性化のために1部又は全て、メチロール化又はアルキルエーテル化されたメラミン樹脂であり、アルキル化ではメチルエーテル化が好適に用いることができるが水性化が可能であればプロピレンエーテル化、ブチルエーテル化等又は混合アルキルエーテル化されたメラミン樹脂も使用できる。
ここで(C)が固型分として(A)と(B)の固型分に対し30重量%を超えると架橋度が高すぎるために塗膜が硬くなり、クラックが生じたり、低温時のチッピング性が低下し、1%未満では、(A)、(B)成分中に補助架橋性成分又は自己架橋性成分等をあらかじめ含有しない場合においては、架橋が不充分で塗膜強度が不足しチッピング性が低下したり、耐水性も低下する。
【0042】
又、(A)及び(B)と(C)の架橋反応において架橋性を促進させる意味で、酸触媒を必要に応じ用いるが、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等あるいは酸触媒のアミンブロック体等を添加することができる。
【0043】
本発明の水性塗料用樹脂組成物を用い塗料化する場合、必要に応じてフィラー、チクソ剤、消泡剤などを配合することができる。
フィラーは塗膜としての硬質あるいは軟質成分の1つとして又は、コスト低減として用いられるが、フィラーとしては例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マイカ、タルク、シリカ、ゴム粉等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
フィラーの配合量としては、樹脂固型分100重量部に対し100から400重量部であり、100重量部より少ないとフクレが生じやすく、400重量部を超えると塗膜が硬くなりすぎたり、クラックが生じやすくなる。
【0044】
チクソ剤はフィラーの沈降性防止又は、塗装時、加熱焼付時の塗膜のタレを防止する目的で用いるもので、例えば水分散可能なセルロース系ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸Na等が使用できる。
消泡剤は塗料化のフィラー分散時ディスパー等により発生する泡の消泡に用いることができる。 本発明の水性塗料用樹脂組成物は以上の成分を塗料化に際し混合、分散することにより調製できる。例えば、(A)及び塩基成分を含んだ(B)
と(C)の樹脂成分を混合し炭酸カルシウム等のフィラーを入れディスパー等の分散機により分散後、チクソ剤等を加えさらに混合、分散を行い調製することができる。
さらに粘度調製はエアレススプレー塗装が可能な粘度とするが、ディスパー分散時に発生する気泡の多少により粘性が変化するため、粘度を安定化させる目的で消泡剤の添加あるいは機器を用いて脱泡することが好ましい。
又、塗料化時に(C)は分散による発熱が高くなる場合、分散後に添加し発熱が少ない(40℃以下)様にして混合させることが好ましい。
この様にして、水性塗料用樹脂組成物を塗料化調製した塗料は自動車のチッピング等に用いられている塩ビゾル代替として、又タイヤハウス、床裏ネフロントエプロン等のアンダーコート用塗料としてスプレー塗装が可能であり、130℃から140℃で30分程度の加熱乾燥後において0.5mmから5mm程度のフクレ、クラックが生じることがない塗膜が形成できる。
【0045】
【実施例】
以下、本発明を更に具体的に説明するために製造例、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、例中の%とは重量%を、部とは重量部を表わす。
【0046】
製造例1 ((A)製造実施例 (A)−1〜5)
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたセパラブルフラスコに脱イオン水、ドデシルベンゼンスルホン酸Naを仕込み、72℃に昇温した。次に重合開始剤として過硫酸カリウム30%水溶液を加えた後、表−1に記載したコア相成分としてのビニル性単量体と脱イオン水とドデシルベンゼンスルホン酸Naで水分散された水分散液を定量ポンプにより2時間かけて連続滴下し共重合した。次いで1時間後シェル相成分としてのビニル性単量体と脱イオン水とドデシルベンゼンスルホン酸Naで水分散された分散液を同様にして連続滴下し共重合を行なった後冷却し8%アンモニア水でpHを8に調製し、表−1に記載した組成、Tg及び恒数を有するコア/シェル構造ポリマー粒子成分(A)の水分散液を得た。
(製造比較例 (A)−6〜7)
また、同様な方法で(A)の製造例に比較させるため、組成変更等をして製造した比較製造例を併せて表−1−▲1▼〜▲2▼[表1、表2]に記載した。
【0047】
【表1】
Figure 0003804703
Figure 0003804703
【0048】
【表2】
Figure 0003804703
【0049】
製造例2 ((B)製造実施例 (B)−1〜3)
撹拌機、温度計、窒素導入管、還流コンデンサーを備えた4ツ口フラスコにエチレングリコールモノイソプロピルエーテル42.9部仕込み、窒素パージを行ないながら120℃まで昇温した。次に昇温後ただちに表−2に記載したビニル性単量体100部及び重合開始剤を定量ポンプにて5時間かけて連続滴下し、その後95℃にて重合開始剤を更に加え3時間保ち、表−2に示す組成、Tg、SP値、OHV、AV、MW等を有する水溶性アクリル樹脂(B)を得た。
又、その製造例を表−2[表3]中に記載した。
【0050】
【表3】
Figure 0003804703
【0051】
実施例1(塗料調製例)
製造例1、及び製造例2において合成され、表−1及び表−2に記載した水性塗料用樹脂と水性硬化剤、フィラー、及びチクソ剤、酸触媒等の助剤を用いて塗料化を行なった。
塗料化の方法としては、まず、塩基成分を加えた水溶性樹脂(B)と(C)と(A)及びフィラーを加え、ディスパーを用いて分散し、さらにチクソ剤、酸触媒を加え再分散後、粘度安定化のため、遠心型脱泡器により脱泡を行ないながら粘度調整を行ない、塗料を調製した。尚、脱泡工程は消泡剤を用いてもよいが、影響を鑑み、遠心型脱泡器を使用した。調整する粘度としては、現実的にはエアレススプレー塗装等が考えられるため、その塗装可能な粘度として400ポイズ程度に調整した。
ここで塗料化時の成分量及び性状を表−3−▲1▼〜−▲3▼[表4、表5、表6]に示した。
【0052】
【表4】
Figure 0003804703
Figure 0003804703
Figure 0003804703
【0053】
【表5】
Figure 0003804703
Figure 0003804703
Figure 0003804703
【0054】
【表6】
Figure 0003804703
Figure 0003804703
Figure 0003804703
【0055】
実施例2 (塗膜評価例)
(塗装板の作成)
表−3に記載した塗料を用いて、調製から1日後市販されている厚さ0.8mmの電着塗装鋼板に、5mmスペーサーを用いて塗装し、10〜30分セッティング後135℃で30分加熱乾燥し塗装板を作成した。
又、作成した塗装板の塗膜を観察、及び評価を行ない結果を表−4−▲1▼〜▲3▼[表7、表8、表9]に示す。
さらに用いた塗料安定性として、40℃×10日後に粘度を測定、初期からの粘度に比較し下記判断方法により評価し、合わせて表−4に結果を記載した。
ここで塗膜の評価項目及び方法は次の通りである。
(塗料安定性)
○・・・・・初期の1.5倍以下
△・・・・・初期の2倍未満
×・・・・・初期の2倍以上
【0056】
(塗膜状態)
(1) フクレ性
フクレ性は、前記に記載した方法により作成した、乾燥後塗膜のフクレを、又、塗膜断面で気泡の連続層がないかを目視観察し、下記の判定方法により評価した。
▲1▼塗膜フクレ;乾燥後膜厚をノギスによりフクレの発生しにくいエッジ部と塗膜最大膜厚部を測定し、エッジ部膜厚を1として最大膜厚の倍率により判定した。◎・・・・・1.04倍以内
○・・・・・1.1倍以内
△・・・・・1.2倍以内
×・・・・・1.2を超える
▲2▼塗膜断面の気泡連続層;塗膜をカッター等で切断し、断面をルーペ又は顕微鏡により大きな気泡の連続層の有無により判定した。
◎・・・・・φ1mm以上の気泡がない
○・・・・・φ1mm程度の気泡が1ケ/cm2 以内
△・・・・・φ1mm程度の気泡が1ケ/cm2 以上
×・・・・・φ2mm程度の気泡の気泡あるいは気泡連続層がある。
【0057】
(2) クラック性
クラック性は、乾燥後塗膜のクラック性を目視により観察し、下記の方法により評価した。
○・・・・・クラックなし
△・・・・・若干のクラック
×・・・・・クラック多い
(3) 硬さ
硬さは、塗装板の塗膜をJIS A硬度計により測定した。
【0058】
(塗膜物性)
(1) 耐水性
耐水性は、塗膜を60℃の温水に10日間浸漬し、膜の膨潤性を膜厚にて、下記判定方法により評価した。
○・・・・・塗膜膨潤ほとんどなし
△・・・・・塗膜膨潤若干有り
×・・・・・塗膜膨潤かなり有り
(2) 制振性
制振性は、前記塗装板を幅×長さ各々15×120mmの大きさに切断し、エッジ部を処理したサンプルを25℃において損失係数測定システム機器により中央加振法で損失係数(η)を求め制振性を測定した。
また、自動車制振材として、0〜1000Hz程度の低周波数領域の必要性が高く、0〜1000Hz周辺の共振周波数での損失係数(η)を記載した。
(3) チッピング性
チッピング性は、前記塗装板の塗膜に素材まで達する様にカッターでクロスカットを入れ、ナット落下法(ナットの落下方向に対し角度30で塗装板を固定した後、素材が露出するまでナット落下させ、その落下量により塗膜を判定する方法)にてテストを行い、塗膜の1mm当たりの落下量として求めチッピング性の初期性能を評価した。
又、上記塗装板の様にクロスカットし、今度は40℃×7日間温水に浸漬した塗装板を引き上げ4時間後にナット落下法にてテストを行い、同様にして素材が露出するまでのナット落下量を塗膜の1mm当たりの落下量として求めチッピング性の耐水後性能を評価した。
(4) 塗膜Tg
塗膜Tgは、前記(塗装板の作成)と同様な方法で、膜厚のみを測定の精度向上のために乾燥塗膜として200μm程度とし、サンプルを作り剛体振子型粘弾性測定器により、硬化塗膜としてのTgを測定した。
【0059】
【表7】
Figure 0003804703
【0060】
【表8】
Figure 0003804703
【0061】
【表9】
Figure 0003804703
【0062】
以上、表−4−▲1▼〜▲3▼に記載した結果によれば、実施例においては、塗料安定性をはじめ塗膜状態としてのフクレが無く良好な塗膜が得られ、かつ物性として制振性、チッピング性が良好であり、低温から高温にわたりTgを有している。一方、比較例においては、塗膜状態のクラックあるいはフクレのため物性評価が出来なかったり、低温領域のTgがない影響で制振性が劣っている。
【0063】
【発明の効果】
水性樹脂系で、車両、自動車部品、家電、機械等の金属素材又はその電着塗装膜に対して0.5〜5mmの1コート厚膜塗装を行い130〜140℃×30分程度の焼付時においても、フクレ、クラックを生ずる事なく厚膜化が可能であり、かつ厚膜化された塗膜が耐水性、チッピング性、制振性といった性能を合わせ持つことをできる水性塗料用樹脂組成物に関する。

Claims (7)

  1. 重合体粒子成分(A)固形分重量と水溶性アクリル樹脂成分(B)固形分重量を基準として、
    重合体粒子成分(A)40〜90重量%(固形分)と水溶性アクリル樹脂成分(B)10〜60重量%(固形分)を含有する水性塗料用樹脂組成物であって、
    該重合体粒子成分(A)を構成する重合体粒子が、
    少なくとも一つの20〜150℃のガラス転移温度(Tg)と9.0〜11.0のSP値を有する重合体成分を含有する相と、
    少なくとも一つの−60〜20℃のガラス転移温度(Tg)と8.0〜10.0のSP値を有する重合体成分を有する相とを含んで構成される重合体粒子であって、
    該重合体粒子を構成する全ての相が、
    他の任意の相との対比において、
    ガラス転移温度(Tg)が10〜200℃の範囲の温度差をもって相異なり、
    かつ、
    該重合体粒子を構成する全ての相が、
    隣接する相との対比において、
    SP値が0.5以上をもって相異なることにより、
    隣接する相相互間の相溶性が抑制されていることを特徴とする、
    多相構造重合体粒子である、水性塗料用樹脂組成物。
  2. 重合体粒子成分(A)固形分重量と水溶性アクリル樹脂成分(B)固形分重量を基準として、
    重合体粒子成分(A)40〜90重量%(固形分)と水溶性アクリル樹脂成分(B)10〜60重量%(固形分)を含有する水性塗料用樹脂組成物であって、
    該重合体粒子成分(A)を構成する重合体粒子が、
    少なくとも一つの20〜150℃のガラス転移温度(Tg)と9.0〜11.0のSP値を有する重合体成分を含有するシェル相と、
    −60〜20℃のガラス転移温度(Tg)と8.0〜10.0のSP値を有する重合体成分を有するコア相とを含んで構成されるコア/シェル構造重合体粒子であって、
    該コア/シェル構造重合体粒子を構成する全ての相が、
    他の任意の相との対比において、
    ガラス転移温度(Tg)が10〜200℃の範囲の温度差をもって相異なり、
    かつ、
    該コア/シェル構造重合体粒子を構成する全ての相が、
    隣接する相との対比において、
    SP値が0.5以上をもって相異なることにより、
    隣接する相相互間の相溶性が抑制されていることを特徴とする、
    コア/シェル構造重合体粒子である、水性塗料用樹脂組成物。
  3. 水溶性アクリル樹脂成分(B)が、
    −50〜+50℃のガラス転移温度を有し、
    重合体粒子成分(A)を構成する各相が有する各SP値における最大SP値よりも0.5以上高いSP値を有することを特徴する、
    請求項1又は2に記載した水性塗料用樹脂組成物。
  4. 水溶性アクリル樹脂成分(B)が、
    水酸基とカルボキシル基を有し、
    水酸基価が10〜100KOHmg/gであり、
    酸価が10〜100KOHmg/gであり、
    3,000〜100,000の重量平均分子量を有する水溶性アクリル樹脂から構成されることを特徴する、
    請求項1乃至3の何れかに記載した水性塗料用樹脂組成物。
  5. 請求項3に記載した水性塗料用樹脂組成物に、
    重合体粒子成分(A)及び水溶性アクリル樹脂成分(B)に含有される重合体が有する官能基と、架橋反応が可能な官能基を有する水性硬化剤成分(C)を、
    重合体粒子成分(A)固形分重量と水溶性アクリル樹脂成分(B)固形分重量を基準として、
    1〜30重量%(固形分)添加したことを特徴とする、
    水性塗料用樹脂組成物。
  6. コア/シェル構造重合体粒子が、
    コア相とシェル相の重量比が、(80〜20):(20〜80)であり、
    該重合体粒子を構成する全ての重合体を合計した、
    ガラス転移温度が−30〜+30℃であることを特徴とする、
    請求項2に記載した水性塗料用樹脂組成物。
  7. 重合体粒子成分(A)及び/又は水溶性アクリル樹脂成分(B)が、補助架橋成分及び/又は自己架橋性成分を含有するものであることを特徴とする、
    請求項1乃至6の何れかに記載した水性塗料用樹脂組成物。
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