JP3792168B2 - 光学的立体造形方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光硬化性樹脂組成物を用いる光学的立体造形方法および光学的立体造形装置に関する。より詳細には、本発明は、光硬化性樹脂組成物を用いて、小型から大型に至る各種の立体造形物を、高い造形精度で、硬化むら生ずることなく、速い造形速度で、生産性良く製造するための光学的立体造形方法および光学的立体造形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、三次元CADに入力されたデータに基づいて光硬化性樹脂を硬化させて立体造形物を製造する光学造形方法および装置が実用化されている。この光造形技術は、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル、部品の機能性をチェックするためのモデル、鋳型を製作するための樹脂型、金型を製作するためのベースモデルなどのような複雑な三次元物体を容易に造形できることから注目を集めている。
【0003】
光学造形方法によって造形物を製造するに当たっては、造形浴を用いる方法が汎用されており、その手順としては、造形浴に液状の光硬化性樹脂を入れ、液面に所望のパターンが得られるようにコンピューターで制御されたスポット状の紫外線レーザー光を選択的に照射して所定の厚みに光硬化させて硬化樹脂層を形成し、その硬化樹脂層を造形浴内で下方に移動させて造形浴内の光硬化性樹脂液を該硬化樹脂層上に流動させて光硬化性樹脂液の層を形成させ、その光硬化性樹脂液層にスポット状の紫外線レーザー光を照射して硬化樹脂層を形成し、前記の工程を所定の形状および寸法の立体造形物が得られるまで繰り返して行う方法が広く採用されている。
【0004】
しかしながら、スポット状の紫外線レーザー光を用いる上記した従来法による場合は、1個のスポット状レーザー光を光硬化性樹脂の表面に照射しながら移動させて面状の光硬化したパターンを形成するいわゆる点描方式であるため、造形に長い時間を要し、生産性が低いという問題がある。しかも、光源として用いられる紫外線レーザー装置は極めて高価であるため、この種の光学的立体造形装置を高価格なものにしている。
【0005】
上記した従来技術の欠点の解消を目的として、微小ドットエリアの遮光制御可能な光シャッターを連続的に一列配置したライン形状の露光マスクを用い、該露光マスクを光シャッターの配列方向と直交方向に走査させながら、所定の水平断面形状データに応じて光シャッターを制御することによって1層分の光硬化した樹脂層を順次形成する光学的立体造形法が提案されている(特開平4−305438号公報)。この方法による場合は、光源として高価な紫外線レーザー装置を必ずしも使用する必要がなく、通常の紫外線ランプのような安価な光源を用いることができ、またスポット状の紫外線レーザー光を用いる前記従来の方法に比べて造形速度を速くすることができる。しかしながら、この方法による場合は、線状の光硬化部を露光マスクの走査方向に1列つづ形成し、それを多数回繰り返すことによって1層分の断面形状パターンを形成してゆく方式であることにより、露光マスクの走査速度を速くすると、十分に光硬化した1列毎の光硬化部を形成することができなくなるため、露光マスクをゆっくり走査する必要がある。しかも、1列毎の光硬化部を次々と形成して面状の光硬化層を形成する方式のため造形に時間がかかる。そのため、造形速度が十分に速いとは言えず、生産性の点で十分に満足のゆくものではない。
【0006】
また、上記とは別の方法として、光源と光硬化性樹脂組成物の表面との間に、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な液晶シャッタよりなる面状描画マスクを固定配置し、面状描画マスクの停止状態で、形成しようとする1層分の断面形状パターンに応じて面状描画マスクに所定のマスクパターンを形成させ、そのマスクパターンを介して光硬化性樹脂組成物の表面に光を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させて1層分の断面形状パターンを形成させ、次いで該光硬化した断面形状パターンの上に次の1層分の光硬化性樹脂組成物を供給し、面状描画マスクの停止状態で、形成しようとする1層分の断面形状パターンに応じて面状描画マスクに次の所定のマスクパターンを形成させ、そのマスクパターンを介して光硬化性樹脂組成物の表面に光を照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させて次の1層分の断面形状パターンを形成させるという操作を繰り返して立体造形物を製造する方法が知られている。
【0007】
この方法による場合は、光硬化性樹脂組成物の表面への光照射および1層分の光硬化した断面形状パターンを、面状で一度に形成するため、スポット状の紫外線レーザーを用いる上記した従来法および微小ドットエリアの遮光制御可能な光シャッターを連続的に1列配置したライン形状の露光マスクを用いる上記した特開平4−305438号公報の方法に比べて、光造形速度を速くすることができる。
この方法によって立体造形物を製造するに当たっては、造形精度(解像度)の点から、面状描画マスクから投影される光硬化性樹脂組成物表面での隣接する微小ドットエリア間の距離は0.1mm以下であることが必要であるとされており、そのため、画素数は、例えば、造形エリアサイズが250mm×250mmの小型のもので少なくとも2500×2500ドット程度必要であり、また造形エリアサイズが600mm×600mmの中型のものでは少なくとも6000×6000ドット程度必要である。しかしながら、現存する液晶マスク(液晶シャッター)や、デジタルマイクロミラーシャッターではこれを実現する解像度のものは存在しないか、または存在しても極めて高価である。
【0008】
また、固定配置した面状描画マスクを停止した状態で光照射を行うこの方法による場合は、露光形状パターンの精細度は、面状描画マスクの精細度(粗さ)と面状描画マスクを介して光硬化性樹脂組成物表面に投影されるパターンとの拡大・縮小率によって決定され、拡大率が小さいほど(縮小率が大きいほど)光硬化性樹脂組成物の表面での光ドット間の距離が低減して形成される断面形状パターンの精細度が向上し、反対に拡大率が大きいほど光硬化性樹脂組成物の表面での光ドット間の距離が大きくなり形成される断面形状パターンの精細度が低下する。
そのため、面状描画マスクを固定配置したこの方法による場合は、精細度(造形精度)に優れる大型の立体造形物を製造することは困難であり、精細度(造形精度)の点から小型の立体造形物の製造にしか適用できないというのが現状である。
【0009】
固定配置した面状描画マスクを用いる上記した方法の欠点を解消して、小型の液晶シャッタを使用して大型の立体造形物の製造を可能にすることを目的として、特開平8−112863号公報には、光を選択的に透過または遮光する液晶シャッタ(液晶マスク)を光硬化性樹脂の液面に対して平行に走行し得るように配置すると共に、液晶シャッタの走行範囲を複数に分割し、液晶シャッタをその分割された走行範囲の第1の範囲まで移動して停止させ、液晶シャッタを停止させた状態で液晶シャッタの背部に設けた光源を該液晶シャッタの範囲で移送しながら該液晶シャッタを介して光硬化性樹脂表面に光を照射して該分割された第1の範囲に相当する硬化部分を形成させ、次いで液晶シャッタを第2の分割された走行範囲まで移動して停止させ、液晶シャッタを停止させた状態で液晶シャッタの背部に設けた光源を該液晶シャッタの範囲で移送しながら該液晶シャッタを介して光硬化性樹脂表面に光を照射して該分割された第2の範囲に相当する硬化部分を形成させ、それと同じ操作を1層分の所定の断面形状パターンが光硬化性樹脂組成物の表面に形成されるまで行い、そして前記工程を所定の立体造形物が形成されるまで繰り返して立体造形物を製造する方法が提案されている。
【0010】
しかしながら、上記特開平8−112863号公報に記載されている方法による場合は、液晶シャッタの分割された第1の走行範囲への移動−液晶シャッタの停止状態での光照射(光硬化性樹脂表面での光硬化部の形成)−液晶シャッタの分割された第2走行範囲への移動−液晶シャッタの停止状態での光照射(光硬化性樹脂表面での光硬化部の形成)・・・という操作の繰り返しによって1層分の硬化した断面形状パターンが形成され、それを更に多層にわたって繰り返すことによって立体造形物を製造しており、液晶シャッタが複数に分割されたそれぞれの走行範囲位置まで移動しているときには光照射が行われない。そのため、この方法による場合は、露光が継続して行われず、断続的になされるため、造形速度が遅くなる。しかも、この方法による場合は、液晶シャッタの走行範囲を複数に分割し、各々区分において液晶シャッタを停止させた状態で光硬化性樹脂組成物の硬化を行うために、互いに分割された走行区域の境界部分で硬化状態が不連続になったり不均一になり易く、それに伴って立体造形物全体の強度斑、強度不足、外観不良、寸法精度の低下などを生じ易い。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、小型、中型の立体造形物に限らず、大型の立体造形物であっても、高い造形精度で、且つ硬化ムラの発生を防ぎながら、速い造形速度で生産性良く製造することのできる光学的立体造形方法および光学的立体造形装置を提供することである。
さらに、本発明の目的は、高価な紫外線レーザー装置を用いずに、通常の紫外線ランプのような安価な光源を用いた場合にも、高い造形精度を有し且つ硬化むらのない高品質の立体造形物を、速い造形速度で円滑に製造することのできる光学的立体造形方法および光学的立体造形装置を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者は鋭意検討を重ねてきた。その結果、面状描画マスクを介して光硬化性樹脂組成物の表面に光を照射して、所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を順次形成して立体造形物を製造するに当たって、面状描画マスクを固定または停止した状態で光照射を行う上記した従来技術に代えて、光照射時に面状描画マスクを停止することなく連続的に移動させると共に、面状描画マスクの該連続移動に同期させて、面状描画マスクによるマスク画像(マスクパターン)を、形成しようとする所定の断面形状パターンに応じて連続的に変えながら光を照射して造形を行い(面状描画マスクのマスク画像を例えば映画やテレビ画面などの動画のように連続的に変えながら光を照射して造形を行い)、その際に、面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動先端が造形面の一方の端部にくるように面状描画マスクを位置させた後に面状描画マスクの前記連続移動を開始し、且つ面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動後端が造形面のもう一方の端部にきた時点で面状描画マスクの前記連続移動を停止すると、小型、中型の立体造形物に限らず、大型の立体造形物であっても、高い造形精度で、且つ硬化ムラの発生を防止しながら、高品質で、上記した従来技術よりも速い造形速度で生産性良く製造することができることを見出した。
【0013】
そして、本発明者は、この方法による場合は、高価な紫外線レーザー装置を用いずに通常の紫外線ランプのような安価な光源を用いた場合にも、高い造形精度を有し且つ硬化むらのない高品質の立体造形物を、速い造形速度で円滑に製造できることを見出した。
さらに、本発明者は、面状描画マスクとしては、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスク、特に液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクが好ましく用いられること、また光源と面状描画マスクとの間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる光集レンズを配置し、面状描画マスクと光硬化性樹脂組成物の表面との間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる投影レンズを配置するのが好ましいことを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1) 光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成した後、該光硬化した樹脂層の上に1層分の光硬化性樹脂組成物を施し、該光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を更に形成する操作を所定の立体造形物が形成されるまで順次繰り返すことによって立体造形物を製造する方法であって、面状描画マスクとしてマスク画像を連続的に変化させ得る面状描画マスクを使用し、面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に対して平行状態で連続的に移動させると共に、面状描画マスクのマスク画像を、形成しようとする光硬化した樹脂層の断面形状パターンに対応させて面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変えながら光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に面状描画マスクを介して光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成し、その際に、面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動先端が造形面の一方の端部にくるように面状描画マスクを位置させた後に面状描画マスクの前記連続移動を開始し、且つ面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動後端が造形面のもう一方の端部にきた時点で面状描画マスクの前記連続移動を停止することを特徴とする光学的立体造形方法である。
【0015】
そして、本発明は、
(2) 面状描画マスクとして、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスクを用い、面状描画マスクの連続移動時に、形成しようとする断面形状パターンに対応させて前記複数の微小光シャッターによりマスク画像を連続的に変えながら光硬化性樹脂組成物の表面への光照射を行う前記(1)の光学的立体造形法方法;
(3) 面状描画マスクが、デジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクである前記(2)の光学的立体造形方法;および、
(4) 所定の断面形状パターンを有する1層分の光硬化した樹脂層の形成時に、断面形状パターンの各部における光照射量が等しくなるように、面状描画マスクの連続移動速度および/または面状描画マスクのマスク画像の変化を調整する前記(1)〜(3)のいずれかの光学的立体造形方法;
である。
【0016】
さらに、本発明は、
(5) 載置台上または光硬化した樹脂層上に、1層分の光硬化性樹脂組成物を順次供給するための光硬化性樹脂組成物の供給手段;
光源;
マスク画像を連続的に変えることのできる面状描画マスク;
面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に対して平行状態で連続的に移動させるための移動手段;
面状描画マスクのマスク画像を、面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変化させるための手段;および、
面状描画マスクの連続移動の開始前に面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動先端が造形面の一方の端部にくる位置に面状描画マスクを配置させ且つ面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動後端がもう一方の造形面の端部にきた時に面状描画マスクの連続移動を停止させる手段;
を備えていることを特徴とする光学的立体造形装置である。
【0017】
そして、本発明は、
(6) 面状描画マスクが、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスクである前段(5)の光学的立体造形装置;
(7) 面状描画マスクが、デジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクである前段(5)または(6)の光学的立体造形装置;および、
(8) 光源と面状描画マスクとの間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる光集レンズを有し、面状描画マスクと光硬化性樹脂組成物の表面との間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる投影レンズを有する前段(5)〜(7)のいずれかの光学的立体造形装置;
である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は、光硬化性樹脂組成物よりなる造形面(以下これを「光硬化性樹脂組成物の表面」ということがある)に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成した後、該光硬化した樹脂層の上に1層分の光硬化性樹脂組成物を施し、該光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を更に形成する操作を所定の立体造形物が形成されるまで順次繰り返すことによって立体造形物を製造する造形操作を採用して行うものである。
【0019】
前記した本発明の造形操作は、一般に、液状の光硬化性樹脂組成物を充填した造形浴中に造形テーブルを配置し、造形テーブルを下降させることによって造形テーブル面に1層分の液状の光硬化性樹脂組成物層を形成させ、それに面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定のパターンおよび厚みを有する光硬化した樹脂層(以下「光硬化層」ということがある)を形成した後、造形テーブルを更に下降させて該光硬化層面に1層分の液状の光硬化性樹脂組成物層を形成させて面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定のパターンおよび厚みを有する光硬化層を一体に積層形成する工程を繰り返して行う、造形浴法を採用して行うことができる。
【0020】
また、前記した本発明の造形操作は、例えば、気体雰囲気中に造形テーブルを配置し、その造形テーブル面に1層分の液状、ペースト状、粉末状または薄膜状の光硬化性樹脂組成物を施して面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定のパターンおよび厚みを有する光硬化層を形成した後、該光硬化層面に1層分の液状、ペースト状、粉末状または薄膜状の光硬化性樹脂組成物を施して面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定のパターンおよび厚みを有する光硬化層を一体に積層形成する工程を繰り返して行う方法を採用して行うこともできる。この方法による場合は、造形テーブルまたは光硬化層を上向きにしておき、その上面に光硬化性樹脂組成物を施し面状描画マスクを介して光照射して光硬化層を順次積層形成してゆく方式を採用してもよいし、造形テーブルまたは光硬化層を垂直または斜めに配置しておいて造形テーブル面または光硬化層面上に光硬化性樹脂層を施し面状描画マスクを介して光照射して光硬化層を順次積層形成してゆく方式を採用してもよいし、或いは造形テーブルまたは光硬化層を下向きに配置しておいて造形テーブル面または光硬化層面に光硬化性樹脂層組成物を施し面状描画マスクを介して光照射して順次下方に光硬化層を積層形成してゆく方式を採用してもよい。造形テーブル面または光硬化層面へに光硬化性樹脂組成物を施すに当たっては、例えば、ブレード塗装、流延塗装、ローラー塗装、転写塗装、ハケ塗り、スプレー塗装などの適当な方法を採用することができる。
【0021】
本発明では、上記した造形操作を行うに当たって、面状描画マスクとしてマスク画像を連続的に変化させ得る面状描画マスクを使用して、面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物の表面に対して平行状態で連続的に移動させると共に、面状描画マスクのマスク画像を、形成しようとする光硬化した樹脂層の断面形状パターンに対応させて面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変えながら光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成する。
【0022】
上記した本発明の光学的立体造形方法は、本発明の光学的立体造形装置、すなわち、
・載置台上または光硬化した樹脂層上に、1層分の光硬化性樹脂組成物を順次供給するための光硬化性樹脂組成物の供給手段;
・光源;
・マスク画像を連続的に変えることのできる面状描画マスク、特に微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッター(液晶シャッター、デジタルマイクロミラーシャッターなど)を面状に配置した面状描画マスク;
・面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に対して平行状態で連続的に移動させるための移動手段;
・面状描画マスクのマスク画像を、面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変化させるための手段;および、
・面状描画マスクの連続移動の開始前に面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動先端が造形面の一方の端部にくる位置に面状描画マスクを配置させ且つ面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動後端がもう一方の造形面の端部にきた時に面状描画マスクの連続移動を停止させる手段;
を備える本発明の光学的立体造形装置を用いて円滑に実施することができる。
【0023】
面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物の表面に対して平行状態で連続的に移動させるための手段や方式は特に制限されない。例えば、リニアガイド、シャフト、フラットバーなどをガイドにし、駆動をボールネジ、台形ネジ、タイミングベルト、ラック&ピニオン、チェーンなどを用いて伝達し、駆動源はACサーボモータ、DCサーボモータやステッピングモータなどを用いることができる。また、ガイドと駆動を兼ねたリニアモーター方式、さらに多関節型のロボットのアーム先端部を利用することもできる。このように本システムの移動は任意の手段や方式を採用することができる。
光造形を行う際の面状描画マスクの連続移動の方向や速度は、光源の種類、光硬化性樹脂組成物の表面に照射される光の照射強度、面状描画マスクを通しての光硬化性樹脂組成物よりなる造形面での露光エリア(露光面積)、形成しようとする断面形状パターンの形状、光硬化性樹脂組成物の種類、光硬化性樹脂組成物の光硬化特性と光硬化層を形成するのに必要な露光時間などに応じて、コンピューターなどを使用して制御、調整する。光硬化性樹脂組成物よりなる造形面における露光エリアの一方の端部からそれと対向するもう一方の端部側へと、面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に対して平行状態で等速で直線状に連続移動させると、光硬化性樹脂組成物よりなる造形面への光照射量の均一制御を簡単に行うことができる。
【0024】
面状描画マスクの連続移動と同期させて面状描画マスクのマスク画像を連続的(動画的)に変化させるに当たっては、形成しようとする断面形状パターンの内容および面状描画マスクの連続移動速度などに対応させて、面状描画マスクによって形成されるべきマスク画像に関する情報を予めコンピューターなどに記憶させておき、その情報に基づいて面状描画マスクのマスク画像を連続的に変化させるようにするとよい。
【0025】
本発明で用いる面状描画マスクとしては、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスクを用いることが好ましい。そのような面状描画マスクの具体例としては、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターを挙げることができる。本発明における面状描画マスクとして好ましく用いられる液晶シャッターやデジタルマイクロミラーシャッターは、連続的(動画的)な画像形成が可能な手段として、他の分野(例えばテレビジョン、パソコン、プロジェクター、カーナビ、携帯電話など)において既に用いられている。
これらの面状描画マスクは、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状(X−Y方向)に並列配置した正方形状または長方形状の面状描画マスクであることが好ましい。面状描画マスクに配置する微小光シャッター(画素子)の数は特に制限されず、従来から知られているものなどを使用することができる。液晶シャッター(液晶表示素子)としては、例えば、QVGA(画素数=320ドット×240ドット)、VGA(画素数=640×480ドット)、SVGA(画素数=800×600ドット)、UXGA(画素数=1024×768ドット)、QSXGA(画素数=2560×2648ドット)などを用いることができ、これらの液晶シャッターは従来から広く販売されている。
また、デジタルマイクロミラーシャッターとしては、例えば、テキサスインスツルメンツ社製の「DLPテクノロジー」(登録商標)のDMD(登録商標)デバイスなどを使用することができる。
【0026】
本発明で好ましく用いられる上記した液晶シャッターおよびデジタルマイクロミラーシャッターよりなる面状描画マスクは、面状描画マスクの連続移動時に、形成しようとする断面形状パターンに対応させて前記複数の微小光シャッターにより遮光および/または透光を行うことによって、マスク画像を、例えばテレビジョンや映画などの動画のように連続的に変えることができる。そのため、連続的に移動しながら連続的に変わるそのようなマスク画像(動画的マスク画像)に対応した光が、その照射位置を連続的に移動させながら光硬化性樹脂組成物の表面に連続的に照射され、光照射された部分の光硬化性樹脂組成物の表面が連続的に硬化して、所定の1層分の断面形状パターンが形成される。
【0027】
前記で例示した液晶シャッターを用いて、光硬化性樹脂組成物の表面での1画素ピッチ(隣り合う画素間の距離)が0.1mm(光造形に必要とされる造形精度)になるようにして、液晶シャッターを停止させた状態で光照射を行う従来技術による場合には、その露光面サイズはQVGAで32mm×24mm、VGAで64mm×48mm、SVGAで80mm×60mm、UXGAで102.4mm×76.8mm、QSXGAで256mm×264.8mmであり、露光面(断面形状パターン)の一辺のサイズが300mmを超えるような大型の立体造形物の製造は困難であった。それに対して本発明による場合は、前記した従来市販の液晶シャッターなどを面状描画マスクとして用い、それを光硬化性樹脂組成物の表面に対して平行状態で連続的に移動させると同時に液晶シャッターによるマスク画像を液晶シャッターの移動と同期させて連続的に動画状に変化させながら光照射を行うために、露光面(断面形状パターン)のサイズは制限されず、任意の大きさの光硬化した断面形状パターンを形成することができる。そのため、本発明による場合は、一辺のサイズが300mmを超えるような大型の立体造形物をも、高い造形精度で、しかも速い造形速度で、簡単に、生産性良く製造することができる。
【0028】
光源は面状描画マスクの背部側に配置され、光源からの光は面状描画マスクを介して光硬化性樹脂組成物の表面に照射される。光源の種類は特に制限されず、光学的立体造形で使用され得る光源であればいずれでもよく、例えば、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀灯、蛍光灯、ハロゲンランプ、白熱ランプ、Arレーザー、He−Cdレーザー、LDレーザー(半導体励起固体レーザー)などを挙げることができる。特に、本発明による場合は、光学的立体造形法で従来用いられてきたレーザー光装置のような高価な光源を使用せずに、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀灯、蛍光灯、ハロゲンランプ、白熱ランプなどのような安価な汎用の光源を使用することができ、そのために、光学的立体造形装置を安価で使用し易いものとすることができる。
光源の形状、大きさ、数も特に制限されず、面状描画マスクの形状や寸法、形成しようとする光硬化断面形状パターンの形状やサイズなどに応じて適宜選択することができ、光源は、例えば、点状、球状、棒状、面状であってもよいし、また点状や球状の光源を面状描画マスクの背部側に直接状に一列または複数列で配置してもよい。
また、光源は、面状描画マスクの背部側に面状描画マスクと共に連続移動可能に設けてもよいし、または造形精度の向上、造形速度の向上、装置の軽量化、保守性の向上などの目的で、光源を固定位置に動かないように設ける共に光源からの光を光ファイバー、ライトガイドやその他の光伝達手段を通して面状描画マスクの背部に導き、光ファイバーやライトガイドやその他の光伝達手段を面状描画マスクと共に連続移動可能に設けてもよい。
また、造形速度の向上のために複数の光源を用いて集光し光エネルギーを高くさせる方式を採ってもよい。特に光ファイバーやライトガイドなどを使用する場合は複数光源を集光させ易いというメリットがある。
【0029】
本発明では、造形精度の向上、造形速度の向上、装置の軽量化、保守性の向上、装置コストのダウンなどの目的で、面状描画マスクの背部側に配置する光源の種類、形状、数、面状描画マスクの形状やサイズなどに応じて、光源からの光を面状描画マスクに良好に導くための手段(例えば集光レンズ、フレネルレンズなど)、また面状描画マスクによって形成されたマスク画像(面状描画マスクを通った光画像)を光硬化性樹脂組成物の表面の所定位置に高造形精度で照射させるための手段(例えば投影レンズ、プロジェクタレンズなど)を配置することが好ましい。それらの手段は、面状描画マスクの連続的な移動と同期して連続移動するようにしておくことが好ましい。
【0030】
本発明で用いる光硬化性樹脂組成物の種類は特に制限されず、光造形に用い得る液状、ペースト、粉末状、薄膜状などの光硬化性樹脂組成物のいずれもが使用できる。
本発明では、光硬化性樹脂組成物として、光造形において従来から用いられている、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、エステルアクリレートオリゴマー、多官能エポキシ樹脂などの各種オリゴマー;イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート、ジシクロペタニルアクリレート、ジシクロペタニルメタクリレート、ボルニルアクリレート、ボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、モルホリンアクリルアミド、モルホリンメタクリルアミド、アクリルアミドなどのアクリル系化合物やN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレンなどの各種の単官能性ビニル化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなど多官能性ビニル化合物;水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなどの各種エポキシ系化合物などの1種または2種以上と、光重合開始剤および必要に応じて増感剤などを含有するの光硬化性樹脂組成物を用いることができる。
また、本発明で用いる光硬化性樹脂組成物は、上記した成分以外にも、必要に応じて、レベリング剤、リン酸エステル塩系界面活性剤以外の界面活性剤、有機高分子改質剤、有機可塑剤などを含有していてもよい。
【0031】
本発明で用いる光硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、固体微粒子やウィスカーなどの充填材を含有していてもよい。充填材を含有する光硬化性樹脂組成物を用いると、硬化時の体積収縮の低減による寸法精度の向上、機械的物性や耐熱性の向上などを図ることができる。
充填材として用いる固体微粒子としては、例えば、カーボンブラック微粒子などの無機微粒子、ポリスチレン微粒子、ポリエチレン微粒子、ポリプロピレン微粒子、アクリル樹脂微粒子、合成ゴム微粒子などの有機重合体微粒子などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。固体微粒子の粒径は特に制限されないが、一般的には平均粒径が200μm以下、特に100μm以下のものが好ましく用いられる。
【0032】
また、ウィスカーとしては、径が0.3〜1μm、特に0.3〜0.7μm、長さが10〜70μm、特に20〜50μmおよびアスペクト比が10〜100、特に20〜70μmのものが好ましく用いられる。なお、ここで言うウイスカーの寸法およびアスペクト比は、レーザー回析/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した寸法およびアスペクト比である。ウイスカーの種類は特に制限されず、例えば、ホウ酸アルミニウム系ウイスカー、酸化アルミニウム系ウイスカー、窒化アルミニウム系ウイスカー水、酸化硫酸マグネシウム系ウイスカー、酸化チタン系ウイスカーなどを挙げることができ、前記したウイスカーの1種または2種以上を用いることができる。
【0033】
固体微粒子および/またはウィスカーを含有する光硬化性樹脂組成物を用いる場合は、固体微粒子を光硬化性樹脂組成物の全容量に基づいて5〜70容量%の割合で含有することが好ましく、またウィスカーの含有量を5〜30容量%とすることが好ましい。固体微粒子とウィスカーの両方を含有する場合は、両者の合計含有量が光硬化層の全容量に基づいて10〜75容量%であることが好ましい。
【0034】
固体微粒子および/またはウィスカーは、シランカップリング剤で表面処理されていても表面処理されていなくてもよいが、表面処理されていることが好ましい。固体微粒子および/またはウイスカーがシランカップリング剤で表面処理されている場合には、熱変形温度、曲げ弾性率、機械的強度の一層高い光硬化物を得ることができる。その場合のシランカップリング剤としては、充填剤の表面処理などに従来から用いられているシランカップリング剤のいずれもが使用でき、好ましいシランカップリング剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、ビニルシランおよび(メタ)アクリルシランを挙げることができる。
【0035】
【実施例】
以下に図を参照して本発明について具体的に説明するが、本発明は図に示されたものに何ら限定されるものではない。
図1〜図3は、本発明の光学的立体造形法(光造形法)で用いる光学的立体造形装置(光造形装置)の要部の具体例をそれぞれ示したものである。また、図4および図5は、図1〜図3に示したような光造形装置を用いて本発明の方法にしたがって光造形を行う際の工程(操作手順)を示したものである。
図1〜図5において、1は光源、2は集光レンズ、3は面状描画マスクであって、そのうち3aは液晶シャッターを面状に配置した面状描画マスク(以下「液晶式面状描画マスク」ということがある)、3bはデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスク(以下「DMD式面状描画マスク」ということがある)を示し、また4は投影レンズ、5は光硬化性樹脂組成物表面よりなる造形面(1層分の造形面)、5aは造形面の一方の端部、5bは造形面のもう一方の端部、6は前記造形面に形成される露光像(光硬化した樹脂層)、7は光ファイバーやライトガイドなどの光伝達手段を示す。
【0036】
図1〜図5に示すように、光源1からの光は、集光レンズ2を用いて、面状描画マスク3(3a、3bなど)にその全面をカバーするようにして照射される。その際に、図1および図2に示すように、光源1を集光レンズ2の背面側に直接配置して光源1からの光を集光レンズ2に直接導いてもよいし、または図3に示すように、光源1を集光レンズ2とは離れた場所に配置しておいて、光源1からの光を光ファイバーやライトガイドなどの光伝達手段7を介して集光レンズ2に導くようにしてもよい。
光源1を集光レンズ2の背面側に直接配置する図1および図2に示すような方式の場合には、光源1は、集光レンズ2、面状描画マスク3(3a,3bなど)および投影レンズ4と共に、光造形時にその走査方向に連続移動する。
また、図3に示すように、光源1からの光を光ファイバーやライトガイドなどの光伝達手段7を介して集光レンズ2の背面に導くようにした場合は、光源1を所定の位置に固定配置し、光ファイバーやライトガイドなどの可撓性の光伝達手段7を集光レンズ2、面状描画マスク3(3a,3bなど)および投影レンズ4と共に光造形時にその走査方向に連続移動させるようにすることができる。
光源1の種類や形状は特に制限されず、例えば、図1〜図4に示すような、光放出部が丸形の光源であってもよいし、図5に示すように光放出部が横長(又は縦長)の棒状の光源であってもよいし、または図示されていない他の形状の光源であってもよい。
【0037】
光造形操作時に、面状描画マスク3(3a,3bなど)には、形成しようとする光硬化した樹脂層の断面形状パターンに対応させて面状描画マスクの移動と同期して連続的に変化する所定のマスク画像が動画的に形成される。そのため、集光レンズ2を経て面状描画マスク3(3a,3bなど)の全面に照射された光は、面状描画マスク3(3a,3bなど)によって連続的に且つ刻々変化しつつ形成されている所定のマスク画像を介して通過または遮蔽され(反射され;DMD式面状描画マスクの場合)、マスク(遮蔽)されていない部分の光のみが投影レンズ4を経て光硬化性樹脂組成物よりなる造形面5に照射され、該造形面5に所定の形状パターンの露光像(光硬化部)6を形成する。
面状描画マスク3(3a,3bなど)の形状は特に制限されず、製造しようとする光造形物の形状や寸法(特に断面形状やその寸法)などに応じて適当な形状のものを採用することができる。面状描画マスク3(3a,3bなど)は、例えば、図1〜図4に示すような正方形またはほぼ正方形の形状であってもよいし、図5に示すような長方形状であってもよいし、またはその他の形状であってもよい。
さらに、面状描画マスク3(3a,3bなど)の寸法も、製造しようとする光造形物の形状や寸法(特に断面形状やその寸法)などに応じて適当な寸法のものを採用することができる。面状描画マスク3(3a,3bなど)は、例えば、図1〜図4に示すように、形成しようとする所定の光硬化した断面形状パターンの全幅(造形面の全幅)よりもその幅寸法が小さいものであってもよいし、図5に示すように、形成しようとする所定の光硬化した形状パターンの全幅(造形面の全幅)をカバーし得るような幅寸法を有するものであってもよい。
【0038】
面状描画マスク3として、液晶式面状描画マスク3aを用いた場合は、形成しようとする所定の断面形状と液晶面状描画マスク3aの連続移動に対応させてコンピューターなどに予め記憶させた情報に応じて、液晶面状描画マスク3aに配置された複数の微小な液晶シャッターのうち、光を通過させるべき箇所に位置する液晶シャッターは光を通過させるように開き、一方光を遮蔽させるべき箇所に位置する液晶シャッターは閉じて光の通過を阻止し、そのような操作を、所定の断面形状を有する光硬化した樹脂層が形成されるまで連続的(動画的)に繰り返すように設計されている。
また、面状描画マスク3として、DMD式面状描画マスク3bを用いた場合は、形成しようとする所定の断面形状とDMD式面状描画マスク3bの連続移動に対応させてコンピューターなどに予め記憶させた情報に応じて、面状に配置された複数の微小なミラーシャッターのうち特定のミラーシャッターは光が投影レンズ4および透光面5の方向に反射される(導かれる)方向に向き、一方光を遮蔽させるべき箇所に位置するミラーシャッターは光が投影レンズ4および造形面5の方向に反射されない(導かれない)方向に向き、そのような操作を、所定の断面形状を有する光硬化した樹脂層が形成されるまで連続的(動画的)に繰り返すように設計されている。
【0039】
図1〜図5に示した光造形装置では、光源1または光伝達手段7、集光レンズ2、面状描画マスク3aまたは3bおよび投影レンズ4は、光硬化性樹脂組成物の表面に光を照射して光硬化した樹脂層を形成させる光造形操作時に、移動手段(図示せず)によって、一体をなして、造形面5(光硬化性樹脂組成物の表面)に対して平行状態で連続的に移動する(図1〜図5では矢印の方向に連続移動する)ように設計されている。
そして、面状描画マスク3(3a,3bなど)におけるマスク画像(マスクパターン)が、上記したように、予めコンピューターなどに記憶されているマスク画像に関する情報に基づいて、例えば、図4および図5に例示するように、形成しようとする光硬化した樹脂層の所定の断面形状パターンに対応して、面状描画マスク3(3a,3bなど)の連続移動と同期して、動画的に連続的に変化しながら、造形面5(光硬化性樹脂組成物の表面)に光照射が行われて、所定の断面形状を有する光硬化した樹脂層(露光像6)が連続的に形成される。
【0040】
図4は、形成しようとする所定の光硬化した断面形状パターン(露光像6)の全幅(または造形面5の全幅)よりも幅寸法の小さい面状描画マスク3(図4の場合は造形面5の幅の約半分の幅を有する面状描画マスク3)を用いて、本発明の光造形を行う場合の一連の操作を例示したものである。
まず、光造形の開始時に、図4の(1)に示すように、面状描画マスク3および投影レンズ4を経た光の移動先端が造形面5の一方の端部5aにくるように位置させ、次いで図4の(2)〜(5)に示すように、光源1(または光伝達手段7)、集光レンズ2、面状描画マスク3および投影レンズ4を造形面5のもう一方の端部5bの方向へと、造形面5に対して平行状態で連続移動させ、図4の(5)に示す位置で停止する。その際に、面状描画マスク3によるマスク画像は、形成しようとする所定の断面形状パターンに対応して動画的に連続的に変化しながら、該マスク画像に対応した光が造形面5に照射されて露光像6が形成される。前記の光造形操作が、図4の(5)の段階まで進行したとき(面状描画マスク3および投影レンズ4を経た光の移動後端が造形面5のもう一方の端部5bにきたとき)に、形成しようとする所定の断面形状パターンのうちの半幅分の露光像6が形成されるので、その段階で、光源1(または光伝達手段7)、集光レンズ2、面状描画マスク3および投影レンズ4を造形面5の残りの半幅分の位置に移動し[図4の(6)]、その位置から図4の(6)〜(10)に示すように、造形面5の端部5bから造形面5の端部5a側へと、前記と同様の光造形操作を繰り返す。それによって、形成しようとする所定の断面形状パターンを有する1層分の光硬化した樹脂層(露光像6)が形成される。
【0041】
また、図5は、形成しようとする所定の光硬化した断面形状パターン(露光像6)の全幅(または造形面5の全幅)と同じかまたはほぼ同じ幅寸法を有する面状描画マスク3を用いて、本発明の光造形を行う場合の一連の操作を例示したものである。
まず、光造形の開始時に、図5の(1)に示すように、面状描画マスク3および投影レンズ4を経た光の移動先端を、造形面5における露光像6が形成されない一方の端部5aに近い位置に位置させ、次いで図5の(2)〜(5)に示すように、光源1、集光レンズ2、面状描画マスク3および投影レンズ4を造形面5のもう一方の端部5aの方向へと、造形面5に対して平行状態で連続移動させる。その際に、面状描画マスク3によるマスク画像は、形成しようとする所定の断面形状パターンに対応して動画的に連続的に変化しながら、該マスク画像に対応した光が造形面5に照射されて、形成しようとする所定の断面形状パターンを有する1層分の光硬化した樹脂層(露光像6)が形成される。
【0042】
図4および図5で例示した一連の光造形操作を行うに当たっては、1層分の光硬化した樹脂層(露光像6)の形成時(連続造形操作時)に、断面形状パターン(露光像6)の各部における光照射量を等しくするために、光源1(または光伝達手段7)、集光レンズ2、面状描画マスク3および投影レンズ4の連続移動時の速度を等速とし且つ面状描画マスク3および投影レンズ4を経て造形面5に到達する光の強度が光造形操作中に変化しないようにすることが好ましい。
【0043】
面状描画マスク3のマスク画像を、形成しようとする光硬化した樹脂層(露光像6)の断面形状パターンに対応させて面状描画マスク3の連続移動と同期させて動画的に連続的に変えながら光造形を行う本発明の光造形方法による場合は、、上記の図4および図5からも明らかなように、所定の断面形状パターン(露光像6)よりも小さな面状描画マスク3を使用して、面状描画マスク3から投影される光硬化性樹脂組成物表面での隣接する微小ドットエリア間の距離を小さく保ちながら、小型から大型に至る各種のサイズの光造形物を簡単に且つ高い造形精度で円滑に製造することができる。その上、光照射によって形成される露光像6(光硬化した樹脂層)の各部(例えば図4の6aで例示する)は、単に1回の光照射のみによって硬化されるのではなく、投影レンズ4を経て造形面5に照射される連続的に変化する動画的な所定パターンの光が、該各部(例えば6a部分)を完全に通過し終えるまでの間中、連続的に照射されて光硬化した樹脂層が形成される。そのため、本発明による場合は、光造形時の照射光の移動速度を速くしても十分な光硬化を行うことができ、目的とする光造形物を短時間で生産性良く製造することができる。しかも、本発明による場合は、形成される露光像6(所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂)の各部における光照射量が前記した連続的な光照射によって均一化されるので、面状描画マスク3を停止した状態で光を照射する上記した従来技術におけるような隣接する照射部間の不連続性や光照射の不均一が生じず、断面形状パターン全体に均一な斑のない光照射が行われて、光造形物の寸法精度および造形精度が向上し、さらに強度斑がなくなり、外観により優れたものとなる。
【0044】
さらに、本発明による場合は、投影描画面を縮小して光造形を行うことができ、それによって描画分解能を上昇させることができる。また、投影描画面を縮小することで、描画部での単位面積当たりの光強度が上昇し、照射部での照射時間を短縮できる効果がある。例えば、硬化感度が5mJの光硬化性樹脂組成物を使用し、この光硬化性樹脂組成物を停止した(固定した)面状描画マスクを用いて250mm×250mmのサイズに一括照射していた画像1mW/cm2があるとすると、この時の必要光照射時間は5secである。この画像(光照射面積)を1/4サイズ(125mm×125mm)に縮小して本発明の方法(面状描画マスクを連続移動させると共にマスク画像を該連続移動に同期させて動画的に連続的に変化させながら光硬化を行う方法)によって最終的に前記250mm×250mmと同じエリアサイズの露光層を形成する場合は、面状描画マスクを停止した状態(固定状態)で一括照射する場合と比較して、その描画分解能は4倍になる。また、単位面積当たりの光強度も一括照射時の4倍の4mW/cm2になる。このとき、250mm×250mmのエリアを連続的に移動して露光するのに要する時間は、一括露光時と同じ5秒となる。つまり、本発明の方法を縮小光学系を用いて実施することにより、停止した面状描画マスクを用いて一括露光する場合と同じ造形時間でありながら、造形精度を格段に向上させることができる。
【0045】
《実施例1》
光源1として150Wメタルハライドランプを備え、面状描画マスク3としてエプソン社製のTFT方式VGA(800×640画素)の液晶を備える図4に示す光造形装置を使用し、光硬化性樹脂組成物として旭電化工業株式会社製「アデカラスキュア HSX−V2」(硬化感度5mJ)を用いて、造形面5(光硬化性樹脂組成物表面)への投影サイズ=35mm(装置の進行方向)×47mm(進行方向と直角の方向)(方形)、造形面5での光エネルギー強度1mW/cm2の条件下に、図4に示す方法にしたがって、光源1、集光レンズ2、面状描画マスク3および投影レンズ4を一体にして約7mm/secの速度で造形面5に対して平行に進行方向に連続移動させ、その際に液晶よりなる面状描画マスク3のマスク画像を形成しようとする断面形状パターンに応じて動画的に連続的に変えながら光照射を行って、図4の断面形状パターンを有する立体造形物(縦×横×厚さ=90mm×90mm×15mm)を製造した。この光造形操作において、光硬化層各部での照射時間は5sec、該各部での光照射量は5mJであった。これによって、寸法精度に優れ、しかも硬化ムラのない、外観および強度に優れる光造形物を、速い造形速度で円滑に製造することができた。
【0046】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、本発明による場合は、小型、中型の立体造形物に限らず、大型の立体造形物であっても、形成しようとする所定の断面形状パターンよりもサイズが小さくて、比較的安価な面状描画マスクを用いて、高い造形精度で、且つ硬化ムラの発生を防止しながら、寸法精度、強度、外観に優れる高品質の立体造形物を、従来よりも速い造形速度で生産性良く製造することができることができる。
さらに、本発明による場合は、高価な紫外線レーザー装置を用いずに通常の紫外線ランプのような安価な光源を用いた場合にも、高い造形精度を有し且つ硬化むらのない高品質の立体造形物を、速い造形速度で円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いる光学的立体造形装置の一例を示す図である。
【図2】本発明で用いる光学的立体造形装置の別の例を示す図である。
【図3】本発明で用いる光学的立体造形装置のさらに別の例を示す図である。
【図4】本発明の光学的立体造形方法の一例を示す図である。
【図5】本発明の光学的立体造形方法の別の例を示す図である。
【符号の説明】
1 光源
2 集光レンズ
3 面状描画マスク
3a 液晶シャッターを面状に配置した面状描画マスク
3b デジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスク
4 投影レンズ
5 造形面
6 露光像
7 光伝達手段
Claims (8)
- 光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成した後、該光硬化した樹脂層の上に1層分の光硬化性樹脂組成物を施し、該光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を更に形成する操作を所定の立体造形物が形成されるまで順次繰り返すことによって立体造形物を製造する方法であって、面状描画マスクとしてマスク画像を連続的に変化させ得る面状描画マスクを使用し、面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に対して平行状態で連続的に移動させると共に、面状描画マスクのマスク画像を、形成しようとする光硬化した樹脂層の断面形状パターンに対応させて面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変えながら光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に面状描画マスクを介して光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成し、その際に、面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動先端が造形面の一方の端部にくるように面状描画マスクを位置させた後に面状描画マスクの前記連続移動を開始し、且つ面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動後端が造形面のもう一方の端部にきた時点で面状描画マスクの前記連続移動を停止することを特徴とする光学的立体造形方法。
- 面状描画マスクとして、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスクを用い、面状描画マスクの連続移動時に、形成しようとする断面形状パターンに対応させて前記複数の微小光シャッターによりマスク画像を連続的に変えながら光硬化性樹脂組成物の表面への光照射を行う請求項1に記載の光学的立体造形法方法。
- 面状描画マスクが、デジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクである請求項2に記載の光学的立体造形方法。
- 所定の断面形状パターンを有する1層分の光硬化した樹脂層の形成時に、断面形状パターンの各部における光照射量が等しくなるように、面状描画マスクの連続移動速度および/または面状描画マスクのマスク画像の変化を調整する請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学的立体造形方法。
- 載置台上または光硬化した樹脂層上に、1層分の光硬化性樹脂組成物を順次供給するための光硬化性樹脂組成物の供給手段;
光源;
マスク画像を連続的に変えることのできる面状描画マスク;
面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物よりなる造形面に対して平行状態で連続的に移動させるための移動手段;
面状描画マスクのマスク画像を、面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変化させるための手段;および、
面状描画マスクの連続移動の開始前に面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動先端が造形面の一方の端部にくる位置に面状描画マスクを配置させ且つ面状描画マスクを介して造形面に照射される光の移動後端がもう一方の造形面の端部にきた時に面状描画マスクの連続移動を停止させる手段;
を備えていることを特徴とする光学的立体造形装置。 - 面状描画マスクが、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスクである請求項5に記載の光学的立体造形装置。
- 面状描画マスクが、デジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクである請求項5または6に記載の光学的立体造形装置。
- 光源と面状描画マスクとの間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる光集レンズを有し、面状描画マスクと光硬化性樹脂組成物の表面との間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる投影レンズを有する請求項5〜7のいずれか1項に記載の光学的立体造形装置。
Priority Applications (5)
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