JP4417911B2 - 光学的立体造形方法および装置 - Google Patents
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Description
この方法によって立体造形物を製造するに当たっては、造形精度(解像度)の点から、面状描画マスクから投影される光硬化性樹脂組成物表面での隣接する微小ドットエリア間の距離は0.1mm以下であることが必要であるとされており、そのため、画素数は、例えば、造形エリアサイズが250mm×250mmの小型のもので少なくとも2500×2500ドット程度必要であり、また造形エリアサイズが600mm×600mmの中型のものでは少なくとも6000×6000ドット程度必要である。しかしながら、現存する液晶マスク(液晶シャッター)や、デジタルマイクロミラーシャッターではこれを実現する解像度のものは存在しないか、または存在しても極めて高価である。
そのため、面状描画マスクを固定配置したこの方法による場合は、精細度(造形精度)に優れる大型の立体造形物を製造することは困難であり、精細度(造形精度)の点から小型の立体造形物の製造にしか適用できないというのが現状である。
さらに、本発明の目的は、高価な紫外線レーザー装置を用いずに、通常の紫外線ランプのような安価な光源を用いた場合にも、高い造形精度を有し、且つ硬化ムラや強度ムラのない高品質の立体造形物を、速い造形速度で円滑に製造することのできる光学的立体造形方法および光学的立体造形装置を提供することである。
さらに、本発明者は、面状描画マスクとしては、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスク、特に液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクが好ましく用いられること、また光源と面状描画マスクとの間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる光集レンズを配置し、面状描画マスクと光硬化性樹脂組成物の表面との間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる投影レンズを配置するのが好ましいことを見出して、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
(1) 光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成した後、該光硬化した樹脂層の上に1層分の光硬化性樹脂組成物を施し、該光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を更に形成する光造形工程を所定の立体造形物が形成されるまで順次繰り返すことによって立体造形物を製造する方法であって;
面状描画マスクとしてマスク画像を連続的に変化させ得る面状描画マスクを使用し;
光造形工程の少なくとも一部で、面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物の表面に対して連続的に移動させると共に、面状描画マスクのマスク画像を、形成しようとする光硬化した樹脂層の断面形状パターンに対応させて面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変えながら光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成する造形操作を行い;且つ、
光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分が、最終的に得られる立体造形物において目立たないようにするために、下記の(i)〜(iii)の操作;
(i)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分での光照射強度の合計を、境界部分以外の部分における光照射強度と同じにする;
(ii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界形状を、曲線形状にする;および
(iii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分の位置を、上下に積層した光硬化した樹脂層間で互いにずらせる;
のうちの少なくとも1つを行う;
ことを特徴とする光学的立体造形方法である。
(2) 面状描画マスクとして、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスクを用い、面状描画マスクの連続移動時に、形成しようとする断面形状パターンに対応させて前記複数の微小光シャッターによりマスク画像を連続的に変えながら光硬化性樹脂組成物の表面への光照射を行う前記(1)の光学的立体造形法方法;および、
(3) 面状描画マスクが、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクである前記(1)または(2)の光学的立体造形方法;
である。
(4) 載置台上または光硬化した樹脂層上に、1層分の光硬化性樹脂組成物を順次供給するための光硬化性樹脂組成物の供給手段;
光源;
マスク画像を連続的に変えることのできる面状描画マスク;
面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物の表面に対して連続的に移動させるための移動手段;
面状描画マスクのマスク画像を、面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変化させるための手段;並びに、
光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分が、最終的に得られる立体造形物において目立たないようにするための、下記の(i)〜(iii)の手段;
(i)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分での光照射強度の合計を境界部分以外の部分における光照射強度と同じにする手段;
(ii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界形状を、曲線形状にする手段;および、
(iii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分の位置を、上下に積層した光硬化した樹脂層間で、上下で互いにずらせる手段;
のうちの少なくとも1つ;
を備えていることを特徴とする光学的立体造形装置である。
(5) 面状描画マスクが、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスクである前記(4)の光学的立体造形装置;
(6) 面状描画マスクが、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクである前記(4)または(5)の光学的立体造形装置;および、
(7) 光源と面状描画マスクとの間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる光集レンズを有し、面状描画マスクと光硬化性樹脂組成物の表面との間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる投影レンズを有する前記(4)〜(6)のいずれかの光学的立体造形装置;
である。
そして、本発明による場合は、小型、中型の立体造形物に限らず、大型の立体造形物であっても、高い寸法精度および速い造形速度で円滑に製造することができる。
さらに、本発明による場合は、高価な紫外線レーザー装置を用いずに通常の紫外線ランプのような安価な光源を用いた場合にも、前記した高品質の立体造形物を、速い造形速度で円滑に製造することができる。
第2図は描画領域間に境界部分(重なり部分)を有する断面形状パターンを形成する際の別の例を示す図である。
第3A図、第3B図は描画領域間に境界部分(重なり部分)を有する断面形状パターンを形成する際の更に別の例を示す図である。
第4A図、第4B図は本発明の光学的立体造形方法において、描画領域間の境界部分(重なり部分)の位置が、上下の光硬化した樹脂層間でずれるようにして光造形を行う場合の一例を示す図である。
第5図は本発明で用いる光学的立体造形装置の一例を示す図である。
第6図は本発明で用いる光学的立体造形装置の別の例を示す図である。
第7図は本発明で用いる光学的立体造形装置のさらに別の例を示す図である。
第8図は本発明で用いる光学的立体造形装置のさらに別の例を示す図である。
第9図は本発明の光学的立体造形方法の一例を示す図である。
第10図は第9図の光学的立体造形方法で形成される断面形状パターンを示す図である。
図中の符号で、1は光源、2は集光レンズ、3は面状描画マスク、3aは液晶シャッターを面状に配置した面状描画マスク、3bはデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスク、4は投影レンズ、5は造形面、6は露光像、7は光伝達手段、8はロッドレンズ、9は結像レンズ、10は反射鏡である。
本発明では、光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成した後、該光硬化した樹脂層の上に1層分の光硬化性樹脂組成物を施し、該光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を更に形成する操作を所定の立体造形物が形成されるまで順次繰り返すことによって立体造形物を製造する。
その際に、境界部分[1回目の描画領域と2回目の描画領域との隣接部分(境界部分)、2回目の描画領域と3回目の描画領域との隣接部分(境界部分)など]では、得られる立体造形物の強度向上などの点からは、端部において重複して光照射を行うことが好ましいが、それによって、境界部分では硬化が重複して行われた部分(以下これを「重なり部分」ということがある)が生ずる。そのような操作が、目的とする立体造形物が得られるまで多層にわたって繰り返されると、最終的に得られる立体造形物では、隣接する描画領域間の境界部に相当する部分に線、筋、突条などが出現し、立体造形物の外観が不良になり易く、それと共に場合によっては寸法精度の低下や強度ムラなどを生じやすくなる。
例えば、第1図に示すように、A、B、C、Dで包囲される光硬化した断面形状パターンを、面状描画マスク3のマスク画像を動画的に連続的に変化させて光造形を行って形成するに当たっては、1回の連続移動−光照射では、その断面形状パターンを形成できないため、1回目の連続移動−光照射によって描画領域(一)に相当する部分の光硬化を行い、2回目の連続移動−光照射によって描画領域(二)に相当する部分の光硬化を行い、3回目の連続移動−光照射によって描画領域(三)に相当する部分の光硬化を行って、A、B、C、Dで包囲される光硬化した断面形状パターンを形成する。その場合に、互いに隣接する描画領域(一)と描画領域(二)との重なり部分a1(境界部)、描画領域(二)と描画領域(三)の重なり部分a2(境界部)では、得られる立体造形物の強度維持などの点から、光照射が重複して行なわれることが多い。その結果、重なり部分a1(境界部)および重なり部分a2(境界部)における光照射の程度(硬化程度)が、他の部分(重なり部分a1とa2以外の部分)に比べて高くなり、それに伴って重なり部分a1および重なり部分a2における硬化状態が他の部分と異なったものになり(硬化の程度が高くなり)、最終的に得られる立体造形物において、重なり部分a1および重なり部分a2に相当する場所に、線、筋、突条などが出現し、立体造形物の外観が不良になり易く、それと共に場合によっては寸法精度の低下や強度ムラなどが生じやすくなる。
しかしながら、その場合にも、得られる立体造形物の強度向上などのために、描画領域間の境界を重複して光硬化した場合には、重なり部分a1および重なり部分a2が生じ、それらの重なり部分a1(境界部)および重なり部分a2(境界部)における光照射の程度(硬化程度)は他の部分(重なり部分a1とa2以外の部分)に比べて高くなり、それに伴って最終的に得られる立体造形物において、重なり部分a1およびa2に相当する場所に、線、筋、突条などが出現し、立体造形物の外観不良、寸法精度の低下、強度ムラなどが生じやすくなる。
さらに、描画領域の境界部分を重ねずに(重複して光照射せずに)、単に端部同士が接合するようにして光造形を行った場合にも、重ねた場合(重複して光照射を行った場合)に比べるとその程度は小さいが、最終的に得られる立体造形物において、描画領域の端部同士が接合した境界部分に相当する位置に、線、筋などが生じて、外観の不良などを招き易い。
かかる点から、本発明でいう「光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分」は、光硬化した所定の断面形状パターンを面状描画マスクの連続移動−光照射を複数列にわたって行って形成する際の光硬化した樹脂層の境界部分(例えば第1図の場合)だけでなく、光硬化した所定の断面形状パターンを一筆書きのように面状描画マスクの一連続の連続移動−光照射で形成する際の光硬化した樹脂層の境界部分(例えば第2図の場合)、および前記以外の造形操作によって形成される光硬化した樹脂層における境界部分を意味する。さらに、本発明でいう前記「境界部分」は、描画領域の端部が重複して光硬化されている境界部分(光硬化が重なっている「重なり部分」)、および重複して光硬化されておらず光硬化された描画領域のそれぞれの端部同士が接合しているだけの境界部分の両方を意味する。
(i)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分での光照射強度の合計を、境界部分以外の部分における光照射強度と同じにする方法(操作)および手段;
(ii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界形状を、曲線形状にする方法(操作)および手段;および
(iii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分の位置を、上下に積層した光硬化した樹脂層間で互いにずらせる方法(操作)および手段;
のうちの少なくとも1つを採用する。
上記した(i)〜(iii)の方法(操作)および手段は単独で採用してもよいし、2つ以上を併用してもよい。
特に、(i)〜(iii)のうちの2つまたは3つを併用した場合には、光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分が目立つのを一層効果的に抑制することができる。
例えば、第1図において、1回目の面状描画マスクの連続移動−光照射を行う描画領域(一)において、重なり部分a1(境界部)に相当する部分への光照射強度を、描画領域(一)内の他の部分への光照射強度よりも低くして、重なり部分a1における硬化度合いを該他の部分における硬化度合いよりも低くして光硬化を行い、次に2回目の面状描画マスクの連続移動−光照射を行う描画領域(二)において、重なり部分a1とa2に相当する部分への光照射強度を描画領域(二)内の他の部分への光照射強度よりも低くして光硬化を行って、描画領域(二)の光硬化を終了した時点において、重なり部分a1における硬化度合いを、描画領域(一)および(二)内の他の部分(重なり部分a1とa2以外の部分)の硬化度合いと同じになるようにし、描画領域(三)の光硬化についても前記と同様に行って、描画領域(三)の光硬化を終了した時点において、重なり部分a2における硬化度合いを、描画領域(一)、(二)および(三)内の他の部分(重なり部分a1とa2以外の部分)の硬化度合いと同じになるようにすることによって、ABCDで包囲される光硬化した断面形状パターン全体でその硬化度合いを均一にすることができる。
そして、目的とする立体造形物が得られるまで、前記した造形操作を多層にわたって繰り返すことによって、描画領域の重なり部分に相当する箇所に線、筋、突条などが発生せず、外観および寸法精度に優れ、しかも強度ムラや硬化ムラのない立体造形物を得ることができる。
例えば、第3A図に示すように、描画領域(一)と描画領域(二)との間の重なり部分c1(境界部分)および描画領域(二)と描画領域(三)との間の重なり部分c2(境界部分)が曲線状になるようにして光造形を行った場合にも、重なり部分c1とc2が直線状である場合に比べて、最終的に得られる立体造形物では、重なり部分c1とc2に相当する箇所における線、筋、突条などの発生が抑制されて、外観および寸法精度に優れ、しかも強度ムラや硬化ムラの低減した立体造形物を得ることができる。第3A図に示す方法において、描画領域(一)、描画領域(二)および描画領域(三)の光硬化時に、重なり部分c1およびc2になる部分への光照射強度を他の部分への光照射強度よりも低減させない場合であっても、重なり部分c1およびc2を直線状にした場合に比べて重なり部分c1とc2に相当する箇所における線、筋、突条などの発生は抑制されるが、この(ii)の方法と共に上記(i)の方法を組み合わせて行うと、重なり部分c1とc2に相当する箇所における線、筋、突条などの発生を一層効果的に抑制することができる。
また、上記(ii)の方法を、描画領域(一)と描画領域(二)との間の境界部分および描画領域(二)と描画領域(三)との間の境界部分で光照射を重複して行わずに、描画領域の端部同士を単に接合させて光造形する際に適用して、その接合端部(境界部分)d1およびd2を、第3B図に示すように、曲線状にした場合にも、最終的に得られる立体造形物において、境界部分(接合部分)に相当する箇所に線、筋などが発生するのを低減されて、外観に優れる立体造形物を得ることができる。
この(iii)の方法を採用した場合の例としては、第4A図および第4B図を挙げることができる[第4A図および第4B図はいずれも縦断面図)。第4A図は、隣接する描画領域間の境界部分を重複して光照射して形成された立体造形物の部分構造を示したものであり、境界部分に相当する重なり部分e1、e2、e3、e4、e5、・・・・・を、立体造形物を構成する上下に積層した光硬化した樹脂層間で互いにずらして形成した場合の模式図である。また、第4B図は、隣接する描画領域間の境界部分で光照射を重複して行わずに、描画領域の端部同士を単に接合させて光造形して得られる立体造形物の部分構造を示したものであり、境界部分f1、f2、f3、f4、f5、・・・・・を、立体造形物を構成する上下に積層した光硬化した樹脂層間で互いにずらして形成した場合の模式図である。
第4A図および第4B図にみるように、この(iii)の方法による場合は、描画領域間の境界部分(重なり部分または端部同士の接合部分)が上下層間でずれていて同じ箇所に集中していないので、最終的に得られる立体造形物に線、筋、突条などが発生せず、外観および寸法精度に優れ、しかも強度ムラや硬化ムラの低減した立体造形物が得られる。
面状描画マスクの造形面に対する移動は、一方向(X軸方向およびY軸方向の一方)のみに行うようにしてもよいが、X軸方向とY軸方向の両方に移動可能にしておくことが好ましい。面状描画マスクをX軸方向とY軸方向の両方に移動可能にしておくことによって、面状描画マスクを直線状、曲線状、その他の任意の軌跡で連続移動させて種々の形状の光硬化した断面形状パターンを良好な造形精度で且つ速い造形速度で形成することができ、例えば一筆書きで円を描いて中空状の光硬化した断面形状パターンなども速い造形速度で且つ高い造形精度で形成することができる。
これらの面状描画マスクは、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状(X−Y方向)に並列配置した正方形状または長方形状の面状描画マスクであることが好ましい。面状描画マスクに配置する微小光シャッター(画素子)の数は特に制限されず、従来から知られているものなどを使用することができる。液晶シャッター(液晶表示素子)としては、例えば、QVGA(画素数=320ドット×240ドット)、VGA(画素数=640×480ドット)、SVGA(画素数=800×600ドット)、UXGA(画素数=1024×768ドット)、QSXGA(画素数=2560×2648ドット)などを用いることができ、これらの液晶シャッターは従来から広く販売されている。
また、デジタルマイクロミラーシャッターとしては、例えば、テキサスインスツルメンツ社製の「DLPテクノロジー」(登録商標)のDMD(登録商標)デバイスなどを使用することができる。
光源の形状、大きさ、数も特に制限されず、面状描画マスクの形状や寸法、形成しようとする光硬化断面形状パターンの形状やサイズなどに応じて適宜選択することができ、光源は、例えば、点状、球状、棒状、面状であってもよいし、また点状や球状の光源を面状描画マスクの背部側に直接状に一列または複数列で配置してもよい。
また、光源は、面状描画マスクの背部側に面状描画マスクと共に連続移動可能に設けてもよいし、または造形精度の向上、造形速度の向上、装置の軽量化、保守性の向上などの目的で、光源を固定位置に動かないように設ける共に光源からの光を光ファイバー、ライトガイドやその他の光伝達手段を通して面状描画マスクの背部に導き、光ファイバーやライトガイドやその他の光伝達手段を面状描画マスクと共に連続移動可能に設けてもよい。
また、造形速度の向上のために複数の光源を用いて集光し光エネルギーを高くさせる方式を採ってもよい。特に光ファイバーやライトガイドなどを使用する場合は複数光源を集光させ易いというメリットがある。
本発明では、光硬化性樹脂組成物として、光造形において従来から用いられている、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、エステルアクリレートオリゴマー、多官能エポキシ樹脂などの各種オリゴマー;イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルメタクリレート、ジシクロペタニルアクリレート、ジシクロペタニルメタクリレート、ボルニルアクリレート、ボルニルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、モルホリンアクリルアミド、モルホリンメタクリルアミド、アクリルアミドなどのアクリル系化合物やN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、酢酸ビニル、スチレンなどの各種の単官能性ビニル化合物;トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなど多官能性ビニル化合物;水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなどの各種エポキシ系化合物などの1種または2種以上と、光重合開始剤および必要に応じて増感剤などを含有する光硬化性樹脂組成物を用いることができる。
また、本発明で用いる光硬化性樹脂組成物は、上記した成分以外にも、必要に応じて、レベリング剤、リン酸エステル塩系界面活性剤以外の界面活性剤、有機高分子改質剤、有機可塑剤などを含有していてもよい。
充填材として用いる固体微粒子としては、例えば、カーボンブラック微粒子などの無機微粒子、ポリスチレン微粒子、ポリエチレン微粒子、ポリプロピレン微粒子、アクリル樹脂微粒子、合成ゴム微粒子などの有機重合体微粒子などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。固体微粒子の粒径は特に制限されないが、一般的には平均粒径が200μm以下、特に100μm以下のものが好ましく用いられる。
第5図〜第8図は、本発明の光学的立体造形法(光造形法)で用いる光学的立体造形装置(光造形装置)の要部の具体例をそれぞれ示したものである。また、第9図は、第5図〜第8図に示したような光造形装置を用いて本発明の方法にしたがって光造形を行う際の工程(操作手順)を示したものである。
第5図〜第9図において、1は光源、2は集光レンズ、3は面状描画マスクであって、そのうち3aは液晶シャッターを面状に配置した面状描画マスク(以下「液晶式面状描画マスク」ということがある)、3bはデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスク(以下「DMD式面状描画マスク」ということがある)を示し、また4は投影レンズ、5は光硬化性樹脂組成物表面よりなる造形面(1層分の造形面)、5aは造形面の一方の端部、5bは造形面のもう一方の端部、6は前記造形面に形成される露光像(光硬化した樹脂層)、7は光ファイバーやライトガイドなどの光伝達手段、8はロッドレンズ、9は結像レンズ、10は反射鏡を示す。
その際に、第5図に示すように、光源1からの光をロッドレンズ8、結像レンズ9を通してから反射鏡10で反射させて集光レンズ2に導くようにしてもよいし、第6図および第7図に示すように、光源1を集光レンズ2の背面側に直接配置して光源1からの光を集光レンズ2に直接導いてもよいし、または第8図に示すように、光源1を集光レンズ2とは離れた場所に配置しておいて、光源1からの光を光ファイバーやライトガイドなどの光伝達手段7を介して集光レンズ2に導くようにしてもよい。
光源1を集光レンズ2の背面側に配置する第5図〜第7図に示すような方式の場合には、光源1は、集光レンズ2、面状描画マスク3(3a,3bなど)、投影レンズ4、ロッドレンズ8、結像レンズ9、反射鏡10と共に光造形時にその走査方向に連続移動する。
また、第8図に示すように、光源1からの光を光ファイバーやライトガイドなどの光伝達手段7を介して集光レンズ2の背面に導くようにした場合は、光源1を所定の位置に固定配置し、光ファイバーやライトガイドなどの可撓性の光伝達手段7を集光レンズ2、面状描画マスク3(3a,3bなど)および投影レンズ4と共に光造形時にその走査方向に連続移動させるようにすることができる。
光源1の種類や形状は特に制限されず、例えば、第5図〜第9図に示すような、光放出部が丸形の光源であってもよいし、または図示されていない他の形状の光源であってもよい。光源1は、第5図および第7図に示すように、横向きに配置することが好ましい。
面状描画マスク3(3a,3bなど)の形状は特に制限されず、製造しようとする光造形物の形状や寸法(特に断面形状やその寸法)などに応じて適当な形状のものを採用することができる。面状描画マスク3(3a,3bなど)は、例えば、第5図〜第9図に示すような正方形またはほぼ正方形の形状であってもよいしまたはその他の形状であってもよい。
さらに、面状描画マスク3(3a,3bなど)の寸法も、製造しようとする光造形物の形状や寸法(特に断面形状やその寸法)などに応じて適当な寸法のものを採用することができる。例えば、第5図〜第9図に示すように、形成しようとする所定の光硬化した断面形状パターンの全幅(造形面の全幅)よりもその幅寸法が小さい面状描画マスク3(3a,3bなど)を使用して、該面状描画マスク3よりも大きな寸法を有する所定の光硬化した断面形状パターンを製造することができる。
また、面状描画マスク3として、DMD式面状描画マスク3bを用いた場合は、形成しようとする所定の断面形状とDMD式面状描画マスク3bの連続移動に対応させてコンピューターなどに予め記憶させた情報に応じて、面状に配置された複数の微小なミラーシャッターのうち特定のミラーシャッターは光が投影レンズ4および透光面5の方向に反射される(導かれる)方向に向き、一方光を遮蔽させるべき箇所に位置するミラーシャッターは光が投影レンズ4および造形面5の方向に反射されない(導かれない)方向に向き、そのような操作を、所定の断面形状を有する光硬化した樹脂層が形成されるまで連続的(動画的)に繰り返すように設計されている。
そして、面状描画マスク3(3a,3bなど)におけるマスク画像(マスクパターン)が、上記したように、予めコンピューターなどに記憶されているマスク画像に関する情報に基づいて、例えば、第9図に例示するように、形成しようとする光硬化した樹脂層の所定の断面形状パターンに対応して、面状描画マスク3(3a,3bなど)の連続移動と同期して、動画的に連続的に変化しながら、造形面5(光硬化性樹脂組成物の表面)に光照射が行われて、所定の断面形状を有する光硬化した樹脂層(露光像6)が連続的に形成される。
まず、光造形の開始時に、第9図の(1)に示すように、面状描画マスク3および投影レンズ4を経た光の移動先端が造形面5の端部5aにくるように位置させ、次いで第9図の(2)〜(5)に示すように、光源1(または光伝達手段7)、集光レンズ2、面状描画マスク3および投影レンズ4を造形面5のもう一方の端部5aの方向へと、造形面5に対して平行状態で連続移動させる。その際に、面状描画マスク3によるマスク画像は、形成しようとする所定の断面形状パターンに対応して動画的に連続的に変化しながら、該マスク画像に対応した光が造形面5に照射されて露光像6が形成される。前記の光造形操作が、第9図の(5)の段階まで進行したときに、形成しようとする所定の断面形状パターンのうちの半幅分の露光像6が形成されるので、その段階で、光源1(または光伝達手段7)、集光レンズ2、面状描画マスク3および投影レンズ4を造形面5の残りの半幅分の位置に移動し[第9図の(6)]、その位置から第9図の(6)〜(10)に示すように、造形面5の端部5bから造形面5の端部5a側へと、前記と同様の光造形操作を繰り返す。それによって、形成しようとする所定の断面形状パターンを有する1層分の光硬化した樹脂層(露光像6)が形成される。
光源1として120W超高圧水銀ランプを備え、面状描画マスク3としてカシオ社製のTFT方式VGA(640×480画素)の液晶を備える第5図に示す光造形装置を使用し、光硬化性樹脂組成物としてシーメット株式会社製「CPX−1000」(硬化感度2.5mJ)を用いて、造形面5(光硬化性樹脂組成物表面)への投影サイズ=28.8mm(装置の進行方向)×38.4mm(進行方向と直角の方向)(方形)、造形面5での光エネルギー強度2.5mW/cm2の条件下に、第9図に示したのと同様の工程で、光源1、ロッドレンズ8、結像レンズ9、反射鏡10、集光レンズ2、面状描画マスク3、投影レンズ4を一体にして28.8mm/secの速度で造形面5に対して平行に進行方向に連続移動させ、その際に液晶よりなる面状描画マスク3のマスク画像を形成しようとする断面形状パターンに応じて動画的に連続的に変えながら光照射を行って、第10図の断面形状パターンを有する立体造形物(縦×横×厚さ=70mm×70mm×15mm)を製造した。この光造形操作において、光硬化層各部での照射時間は7sec、境界部分(重なり部分)g以外の部分での光照射量は2.5mJであった。また、この光造形操作において、第10図の向かって右側の描画領域と向かって左側の描画領域との間の境界部分(重なり部分)gの幅は6.8mmであり、境界部分(重なり部分)gでの各々の連続移動−照射工程での液晶の表示に階調を付けることにより光照射量は1.25mJであり、最終的に形成される光硬化した断面形状パターンにおける境界部分(重なり部分)gでの合計の光照射は、他の部分と同じように、2.5mJであった。これによって、境界部分(重なり部分)gに相当する箇所に線、筋、突条が発現していない、外観および寸法精度に優れ、しかも硬化ムラのない、強度に優れる光造形物を、速い造形速度で円滑に製造することができた。
本出願は、2003年9月11日出願の日本特許出願(特願2003−319572)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
そして、本発明の光学的立体造形方法および装置は、小型から大型に至る各種の立体造形物の製造に有効に使用することができる。
本発明の方法および装置による場合は、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型などのためのモデルや加工用モデル、複雑な熱媒回路の設計用の部品、複雑な構造の熱媒挙動の解析企画用の部品、その他の複雑な形状や構造を有する各種の立体造形物を、高い造形速度および寸法精度で円滑に製造することができる。
Claims (7)
- 光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成した後、該光硬化した樹脂層の上に1層分の光硬化性樹脂組成物を施し、該光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して制御下に光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を更に形成する光造形工程を所定の立体造形物が形成されるまで順次繰り返すことによって立体造形物を製造する方法であって;
面状描画マスクとしてマスク画像を連続的に変化させ得る面状描画マスクを使用し;
光造形工程の少なくとも一部で、面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物の表面に対して連続的に移動させると共に、面状描画マスクのマスク画像を、形成しようとする光硬化した樹脂層の断面形状パターンに対応させて面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変えながら光硬化性樹脂組成物の表面に面状描画マスクを介して光を照射して所定の断面形状パターンを有する光硬化した樹脂層を形成する造形操作を行い;且つ、
光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分が、最終的に得られる立体造形物において目立たないようにするために、下記の(i)〜(iii)の操作;
(i)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分での光照射強度の合計を、境界部分以外の部分における光照射強度と同じにする;
(ii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界形状を、曲線形状にする;および
(iii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分の位置を、上下に積層した光硬化した樹脂層間で互いにずらせる;
のうちの少なくとも1つを行なう;
ことを特徴とする光学的立体造形方法。 - 面状描画マスクとして、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスクを用い、面状描画マスクの連続移動時に、形成しようとする断面形状パターンに対応させて前記複数の微小光シャッターによりマスク画像を連続的に変えながら光硬化性樹脂組成物の表面への光照射を行う請求項1に記載の光学的立体造形法方法。
- 面状描画マスクが、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクである請求項1または2に記載の光学的立体造形方法。
- 載置台上または光硬化した樹脂層上に、1層分の光硬化性樹脂組成物を順次供給するための光硬化性樹脂組成物の供給手段;
光源;
マスク画像を連続的に変えることのできる面状描画マスク;
面状描画マスクを光硬化性樹脂組成物の表面に対して連続的に移動させるための移動手段;
面状描画マスクのマスク画像を、面状描画マスクの移動と同期させて連続的に変化させるための手段;並びに、
光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分が、最終的に得られる立体造形物において目立たないようにするための、下記の(i)〜(iii)の手段;
(i)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分での光照射強度の合計を境界部分以外の部分における光照射強度と同じにする手段;
(ii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界形状を、曲線形状にする手段;および、
(iii)光硬化した樹脂層における隣接する描画領域間の境界部分の位置を、上下に積層した光硬化した樹脂層間で、上下で互いにずらせる手段;
のうちの少なくとも1つ;
を備えていることを特徴とする光学的立体造形装置。 - 面状描画マスクが、微小ドットエリアでの遮光および透光が可能な複数の微小光シャッターを面状に配置した面状描画マスクである請求項4に記載の光学的立体造形装置。
- 面状描画マスクが液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターを面状に配置した面状描画マスクである請求項4または5に記載の光学的立体造形装置。
- 光源と面状描画マスクとの間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる光集レンズを有し、面状描画マスクと光硬化性樹脂組成物の表面との間に面状描画マスクと同期させて連続的に移動させることのできる投影レンズを有する請求項4〜6のいずれか1項に記載の光学的立体造形装置。
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