JP3775258B2 - フィルタリング方法及びフィルタ機能を有するa/d変換装置 - Google Patents

フィルタリング方法及びフィルタ機能を有するa/d変換装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アナログ入力信号から不要な高周波信号成分を除去したデジタルデータを生成するフィルタリング方法及びフィルタ機能を有するA/D変換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、マイクロコンピュータ等からなる制御装置において、制御対象の動作状態等を検出する各種センサからの検出信号(アナログ入力信号Vin)を取り込む際には、図12(a)に示すように、アナログCRフィルタ3と、A/D変換器4と、デジタル移動平均フィルタ6とからなるA/D変換装置が使用されている。
【0003】
ここで、デジタル移動平均フィルタ6は、A/D変換器4によるA/D変換結果であるデジタルデータDadから不要なノイズ成分(高周波信号成分)を除去するためのものであり、例えば、図12(c)に示すように、A/D変換器4からのデジタルデータDadを、一定周期のクロックCKSDに同期して動作する複数段のラッチ回路LTで順次ラッチし、各ラッチ回路LTからの出力をアダー回路ADDで加算することにより、デジタルデータDadを移動平均処理するように構成される。
【0004】
つまり、デジタル移動平均フィルタ6では、複数段のラッチ回路LTを用いることにより、クロックCKSDに同期してデジタルデータDadを順次サンプリングし、そのサンプリングした過去複数回分のデジタルデータDadをアダー回路ADDで加算することにより、デジタルデータDadの平均化し、これを、真のA/D変換結果を表すデジタルデータDTとして出力するのである。
【0005】
尚、デジタル移動平均フィルタ6は、図12(c)に示したようなデジタル回路ではなく、制御装置を構成するマイクロコンピュータの演算処理(所謂なまし処理)により実現されることもある。
一方、アナログCRフィルタ3は、A/D変換器4を用いてアナログ入力信号VinをA/D変換する際、アナログ入力信号Vinの周波数がA/D変換器4のサンプリング周波数fadの1/2以上になると、高周波信号成分の折り返し現象(エイリアシング)が発生するので、アナログ入力信号VinからA/D変換器4のサンプリング周波数fadの1/2以上の周波数成分を除去するために、A/D変換器4の前段に所謂前置フィルタとして設けられるものである。
【0006】
そして、このアナログCRフィルタ3は、例えば、図12(b)に示すように、オペアンプOP1の非反転入力端子(+)をグランドに接地し、オペアンプOP1の反転入力端子(−)と出力端子との間にコンデンサC1及び抵抗R1を並列に接続し、入力信号(アナログ)を抵抗R2を介してオペアンプOP1の反転入力端子(−)に入力するように構成される。
【0007】
つまり、このアナログCRフィルタ3は、抵抗R1,R2の抵抗値とコンデンサC1の容量と決まる時定数にてアナログ入力信号Vinを積分処理することにより、A/D変換器4に入力されるアナログ入力信号Vinの周波数を、周知の「サンプリングの定理」に則って、A/D変換器4のサンプリング周波数fadの1/2未満に制限するのである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のように構成された従来のフィルタ機能を有するA/D変換装置においては、デジタル移動平均フィルタ6による信号の減衰量が、そのサンプリング周波数fsd(クロックCKSDの周波数)のn倍(nは値1を含む正の整数)の周波数域で極めて小さく(略零)なり、この周波数域では不要な信号成分が通過することになるため、前置フィルタとして用いるアナログCRフィルタ3の周波数対減衰量特性を、カットオフ周波数を超える周波数領域で減衰量ができるだけ急峻に変化するようにする必要があり、このためには、アナログCRフィルタ3の次数を高くしたり、そのカットオフ周波数をより低くする必要があった。
【0009】
つまり、図13(a)は、サンプリング周波数fsdを100kHzとし、過去16回分のデジタルデータを平均化する移動平均処理を2回行うデジタル移動平均フィルタ6の周波数対減衰量特性を表しているが、この図から明らかなように、サンプリング周波数fsdを100kHzとしたデジタル移動平均フィルタ6では、100kHz、200kHz、300kHz…というように、サンプリング周波数fsdのn倍の周波数域で減衰量が略零となってしまい、この周波数域では不要な信号成分を除去することができなくなる。
【0010】
このため、例えば、アナログCRフィルタ3に次数の低いフィルタ(具体的にはCR一次フィルタ)を用いた場合には、図13(b)に一点鎖線で示すように、デジタル移動平均フィルタ6で生じる高周波信号通過域(n×fsdの周波数域)での信号減衰量を充分大きくすることができず、この周波数域で不要な高周波信号成分が通過してしまうことになる。
【0011】
従って、この問題を防止するには、アナログCRフィルタ3の次数をできるだけ高くして、デジタル移動平均フィルタ6で減衰させることのできない高周波信号成分をアナログCRフィルタ3で減衰させる必要があるが、このためには、図12(b)に示したようなフィルタを多段接続する必要があり、アナログCRフィルタ3、延いては、A/D変換装置の大型化を招き、また、A/D変換装置のコストアップにも繋がるという問題が発生する。
【0012】
また、デジタル移動平均フィルタ6で減衰させることのできない高周波信号成分をアナログCRフィルタ3で減衰させるには、アナログCRフィルタ3のカットオフ周波数をより低くする方法もあるが、カットオフ周波数を低くするには、アナログCRフィルタ3を構成するコンデンサCの容量や抵抗Rの抵抗値を大きくしなければならず、このような対策でも、アナログCRフィルタ3、延いては、A/D変換装置の大型化を招き、A/D変換装置のコストアップに繋がるという問題がある。
【0013】
尚、図13(a)、(b)に示すデジタル移動平均フィルタの周波数対減衰量特性において、デジタル移動平均フィルタ6のサンプリング周波数fsd(100kHz)よりも低周波側で減衰量が所定周波数間隔で最大(無限大)になっているのは、デジタル移動平均フィルタ6が実行する移動平均処理によるものであり、減衰量のピークの数は、平均化するデジタルデータの数に対応する。具体的には、デジタル移動平均フィルタ6が平均化するデジタルデータの数が「2」(つまり過去2回分の平均化)であれば、減衰量のピークの数は「1」となり、平均化するデジタルデータの数が「4」(つまり過去4回分の平均化)であれば、減衰量のピークの数は「3」となる。
【0014】
従って、図13(a)、(b)は、横軸に周波数を対数表示し、縦軸に減衰量を線形表示したものであるため、サンプリング周波数:100kHz以下の周波数領域で生じる減衰量のピークの数は判りにくいが、実際には、デジタル移動平均フィルタ6が平均化するデジタルデータの数が「16」であるため、減衰量が最大となるピークの数は「15」となり、そのピークは、サンプリング周波数fsd(100kHz)を16当分した周波数間隔(6.25kHz)で現れる(後述実施例で説明する図3参照)。このため、デジタル移動平均フィルタのカットオフ周波数は、平均化するデジタルデータの数(デジタルデータのサンプリング数)が多い程、低くなる。
【0015】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、前置フィルタとしてアナログCRフィルタを用いることなく、デジタル移動平均フィルタで減衰させることのできない不要な高周波信号成分を減衰させることのできるフィルタリング方法及びフィルタ機能を有するA/D変換装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載のフィルタリング方法においては、まず、サンプリング周波数fsaのクロックに同期した一定周期毎に入力信号を平均化するアナログ移動平均フィルタを用いて、アナログ入力信号を移動平均処理する。そして、その移動平均処理後のアナログ入力信号をA/D変換器にてA/D変換し、更に、サンプリング周波数fsaのn倍(但し、nは値1を含む正の整数)のサンプリング周波数fsdで動作するデジタル移動平均フィルタにより、A/D変換結果であるデジタルデータを移動平均処理する。
【0017】
つまり、本発明方法では、前置フィルタとして、従来のようなアナログCRフィルタを用いるのではなく、アナログ移動平均フィルタを用いる。
これは、アナログ移動平均フィルタは、サンプリング周波数fsaのクロックに同期した一定周期毎に入力信号を平均化するものであるので、サンプリング周波数fsaのn倍(例えば、サンプリング周波数fsaが100kHzであれば、100kHz、200kHz、300kHz…)の周波数域で減衰量が最大(理論上は無限大)となるためである(後述実施例で説明する図2(a)参照)。
【0018】
つまり、本願発明者らは、デジタル移動平均フィルタでは、そのサンプリング周波数fsdのn倍の周波数域で減衰量が最小(略零)となるのに対し、アナログ移動平均フィルタでは、そのサンプリング周波数fsaのn倍の周波数域で減衰量が無限大となるのに着目し、アナログ移動平均フィルタをA/D変換器の前置フィルタとして用いることにより、デジタル移動平均フィルタで生じる不要な信号通過域に対応する高周波信号成分を、アナログ移動平均フィルタのフィルタ特性で減衰させるようにしたのである。
【0019】
そして、アナログ移動平均フィルタは、どのように構成しても、その動作特性から、サンプリング周波数fsaのn倍の周波数域で減衰量が無限大となるため、前置フィルタとしてアナログCRフィルタを用いた従来装置のように、デジタル移動平均フィルタで生じる不要な信号通過域に対応する高周波信号成分を減衰させるために、フィルタの次数を高くするとか、カットオフ周波数を低くする、といった対策を施す必要がない。よって、本発明方法を利用すれば、ノイズの影響を受けることなく所望のA/D変換特性が得られるA/D変換装置を、従来に比べて簡単な構成で実現できることになる。
【0020】
尚、本発明方法では、デジタル移動平均フィルタのサンプリング周波数fsdを、アナログ移動平均フィルタのサンプリング周波数fsaのn倍に設定するものとしているが、これは、デジタル移動平均フィルタのサンプリング周波数fsdをこのように設定すれば、デジタル移動平均フィルタで生じる不要な信号通過域が、周波数「fsa×n」を更にn倍した周波数域となり、アナログ移動平均フィルタで減衰量が無限大となる周波数域に必ず重なるためである。
【0021】
ところで、アナログ移動平均フィルタは、サンプリング周波数fsaのクロック一周期(サンプリング周期)毎に入力信号を平均化するものであることから、その動作特性は、次式(1) のように、連続関数x(t) の所定時間t〜(t+τ)の間の積分結果を時間τで除算したものと定義することができる。このため、アナログ移動平均フィルタは、次式(1) を満たすアナログ回路を用いて実現すればよいが、具体的には、例えば、特開平8−32408号公報に開示されたディレイラインフィルタを用いることができる。
【0022】
【数1】
Figure 0003775258
【0023】
また、上式(1)で定義されるアナログ移動平均フィルタの位相周波数特性φaは、サンプリング周波数をfsa、入力信号の周波数をfとすれば、次式(2) のように表すことができ、入力信号に対して進み位相で、且つ、入力信号の周波数fに比例する直線特性を持つことになる。
【0024】
φa=(1/2)×(1/fsa)×2πf …(2)
これに対して、デジタル移動平均フィルタの位相周波数特性φdは、サンプリング周波数をfsd、移動平均のデータ数をNとすれば、次式(3) のように表すことができ、入力信号に対して遅れ位相で、且つ、入力信号の周波数fに比例する直線特性を持つことになる。
【0025】
φd=−((N−1)/2×(1/fsd)×2πf …(3)
従って、本発明方法のように、アナログ移動平均フィルタとデジタル移動平均フィルタとを用いて、A/D変換の前後で入力信号を移動平均処理するようにすれば、各フィルタで生じる位相変化を相殺して、得られるデジタルデータのアナログ入力信号に対する位相変化を少なくすることができる。
【0026】
特に、後述するように、上記各サンプリング周波数fsa、fsbを同一周波数にし、デジタル移動平均フィルタでの移動平均のデータ数Nを2にすれば、各フィルタでの位相周波数特性を、位相のずれ方向(進み位相・遅れ位相)を除いて、完全に一致させることができ、この結果、最終的に得られるデジタルデータとアナログ入力信号との位相を完全に一致させることが可能になる。
【0027】
尚、アナログ移動平均フィルタは、従来のアナログCRフィルタの代わりに用いるものであることから、A/D変換器に入力されるアナログ入力信号の周波数をA/D変換器のサンプリング周波数の1/2以下(好ましくは1/5以下)に制限するよう構成することが望ましい。
【0028】
つまり、アナログ移動平均フィルタのカットオフ周波数fcは、サンプリング周波数fsaに応じて変化し、fc=0.44×fsaとなるが、A/D変換器のサンプリング周波数fadには、余裕を見て、アナログ移動平均フィルタを通過してくるアナログ入力信号の最大周波数の5倍以上に設定することが望ましい。
【0029】
一方、請求項2に記載のフィルタリング方法においては、遅延ユニットを複数段縦続接続してなるパルス遅延回路を用いて、アナログ入力信号をA/D変換し、更に、そのA/D変換結果であるデジタルデータを、デジタル移動平均フィルタにて、移動平均処理する。
【0030】
また、パルス遅延回路を用いてアナログ入力信号をA/D変換するに当たっては、アナログ入力信号を、パルス遅延回路に対して、各遅延ユニットの遅延時間を制御する信号として入力すると共に、パルス遅延回路にパルス信号を入力して、パルス信号を各遅延ユニットの遅延時間にて順次遅延しながら伝送させる。そして、サンプリング周波数fstadのクロックに同期した一定周期毎に、パルス遅延回路内でパルス信号が通過した遅延ユニットの段数をカウントすることにより、アナログ入力信号の信号レベルを表すデジタルデータを生成する。
【0031】
また、デジタル移動平均フィルタのサンプリング周波数fsdは、パルス遅延回路を用いてアナログ入力信号をA/D変換する際のサンプリング周波数fstadのn倍(但し、nは値1を含む正の整数)に設定する。
つまり、パルス遅延回路を本発明方法に従い動作させた場合、パルス信号がパルス遅延回路内の各遅延ユニットを通過する際の遅延時間は、アナログ入力信号の信号レベルに応じて変化し、アナログ入力信号に不要な高周波信号成分が重畳されていればその高周波ノイズ成分によって変動する。しかし、パルス信号が各遅延ユニットを通過するに従い、高周波ノイズ成分による変動成分は相殺され、パルス信号が複数の遅延ユニットを通過した際の各遅延ユニットでの平均遅延時間を見ると、高周波信号成分を除去した真のアナログ入力信号の信号レベルに対応するものとなる。
【0032】
そこで、本発明方法では、パルス遅延回路を上記のように動作させ、サンプリング周波数fstadの周期(サンプリング周期)で決まる一定時間毎にパルス遅延回路内でパルス信号が通過した遅延ユニットの段数をカウントすることにより、パルス信号が各遅延ユニットを通過するのに要した時間の移動平均をとり、これを、高周波ノイズ成分を除去したアナログ入力信号の真の信号レベルを表すデジタルデータとして出力するようにしているのである。
【0033】
従って、本発明方法のように、パルス遅延回路内でパルス信号を伝送させた場合、パルス遅延回路は、請求項1に記載のアナログ移動平均フィルタとして機能することになり、サンプリング周波数fstadの周期(サンプリング周期)で決まる一定時間内にパルス信号が通過した遅延ユニットの段数は、請求項1に記載のA/D変換器を用いて移動平均処理後のアナログ入力信号をA/D変換したデジタルデータに対応する。
【0034】
つまり、本発明方法では、パルス遅延回路を用いて請求項1に記載のアナログ移動平均フィルタとA/D変換器とを実現し、それにより得られたA/D変換値であるデジタルデータを、デジタル移動平均フィルタにて移動平均処理するようにしているのである。
【0035】
そして、本発明方法においても、パルス遅延回路を用いたアナログ入力信号の平均化により、その平均化に用いるサンプリング周波数fstadのn倍の周波数域で減衰量が無限大となるフィルタ特性を実現できることから、請求項1に記載の発明方法と同様に、デジタル移動平均フィルタのサンプリング周波数fsdを、パルス遅延回路を用いてアナログ入力信号を平均化する際のサンプリング周波数fstadのn倍に設定することにより、デジタル移動平均フィルタで生じる不要な信号通過域に対応する高周波信号成分を、パルス遅延回路を用いたアナログ入力信号の平均化動作によって充分減衰させることができ、上述した本発明の目的を達成することができる。
【0036】
また、本発明方法においても、パルス遅延回路を用いて、サンプリング周波数fstadのクロック一周期(サンプリング周期)毎に入力信号を平均化することから、その動作特性は、前述の(1) 式のように定義することができ、パルス遅延回路を用いて実現されるアナログ移動平均フィルタの位相周波数特性φdは、前述の(2) 式のように、アナログ移動平均フィルタを単独で構成した場合と同様になる。
【0037】
よって、本発明方法においても、請求項1に記載の発明方法と同様、デジタル移動平均フィルタを介して最終的に得られるデジタルデータのアナログ入力信号に対する位相変化を少なくすることができ、特に、各サンプリング周波数fstad、fsbを同一周波数にし、デジタル移動平均フィルタでの移動平均のデータ数Nを2にすれば、得られるデジタルデータとアナログ入力信号との位相を完全に一致させることができる。
【0038】
また、本発明方法によれば、パルス遅延回路を用いて、請求項1に記載のアナログ移動平均フィルタとしての機能とA/D変換器としての機能を実現できることから、装置構成をより簡単にすることができ、請求項1記載の発明方法に比べて、A/D変換装置をより小型化することができる。
【0039】
尚、本発明方法の場合、アナログ移動平均フィルタとしての機能とA/D変換器としての機能とを、パルス遅延回路を用いて実現することから、アナログ移動平均フィルタとA/D変換器とのサンプリング周波数が一致することになる。そして、パルス遅延回路を用いて実現されるアナログ移動平均フィルタとしての機能においても、そのフィルタのカットオフ周波数fcは、サンプリング周波数fstadを用いて、fc=0.44×ftadと表すことができるので、サンプリング周波数fstadの1/2以上の高周波信号成分は、充分減衰されないままA/D変換され、低周波成分として折り返す(前述の折り返し現象,エイリアシング)ことが考えられる。
【0040】
しかし、本発明方法では、A/D変換により得られたデジタルデータを後段のデジタル移動平均フィルタを用いて移動平均処理するようにされているため、この処理によって、アナログ移動平均フィルタを用いた場合と同様に高周波信号成分を減衰させることができる。
【0041】
また、本発明方法において、パルス遅延回路に対して、アナログ入力信号を各遅延ユニットの遅延時間を制御する信号として入力するのは、アナログ入力信号に応じて各遅延ユニットの遅延時間を制御するためであるが、その具体的な入力方法としては、遅延ユニットをゲート回路にて構成し、アナログ入力信号を各ゲート回路の駆動電圧としてパルス遅延回路に入力するようにしてもよく、あるいは、遅延ユニットをゲート回路にて構成し、アナログ入力信号を各遅延ユニットに流す駆動電流を制御する信号としてパルス遅延回路に入力するようにしてもよい。
【0042】
つまり、ゲート回路は、駆動電圧や駆動電流が大きい程高速に動作することから、遅延ユニットをゲート回路にて構成し、アナログ入力信号を、そのゲート回路の駆動電圧若しくは駆動電流制御用信号として、パルス遅延回路に入力するようにすれば、パルス遅延回路を構成する各遅延ユニットの遅延時間を、アナログ入力信号の信号レベルに応じて簡単に変化させることができるようになる。
【0043】
次に、請求項3に記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置は、サンプリング周波数fsaのクロックに同期した一定周期毎に、アナログ入力信号を平均化するアナログ移動平均フィルタと、このアナログ移動平均により平均処理されたアナログ入力信号をデジタルデータにA/D変換するA/D変換器と、このA/D変換器にてA/D変換されたデジタルデータを、サンプリング周波数fsaのn倍のサンプリング周波数fsdでサンプリングし、そのサンプリングにより得られた過去複数回分のサンプリングデータの平均値を演算するデジタル移動平均フィルタとを備える。
【0044】
従って、請求項3に記載のA/D変換装置によれば、請求項1記載のフィルタリング方法に則ってアナログ入力信号をデジタルデータに変換することができ、前置フィルタとして設けられるアナログ移動平均フィルタにより、デジタル移動平均フィルタで生じる不要な信号通過域に対応する高周波信号成分を効率よく減衰させることができるようになる。よって、この装置によれば、従来のように、ノイズの影響を受けることなく所望のA/D変換特性が得られるようにするために、前置フィルタ(アナログCRフィルタ)の次数を高めたりカットオフ周波数を低くする必要がなく、簡単な構成(延いては低コスト)で実現できることになる。
【0045】
また、請求項4に記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置は、請求項3に記載の装置において、デジタル移動平均フィルタを、アナログ移動平均フィルタのサンプリング周波数fsaと同じサンプリング周波数fsdで動作し、しかも、サンプリングにより得られたサンプリングデータの過去2回分の平均値を演算するように構成したものである。
【0046】
このため、請求項4に記載の装置によれば、上述したように、アナログ移動平均フィルタで生じる位相変化と、デジタル移動平均フィルタで生じる位相変化とを互いに相殺させることができるようになり、A/D変換装置全体では、アナログ入力信号に対して位相のずれがないデジタルデータを生成することが可能となる。
【0047】
一方、請求項5に記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置は、アナログ入力信号の信号レベルに応じた遅延時間で入力パルスを遅延させて出力する遅延ユニットが複数段縦続接続され、パルス信号を各遅延ユニットの遅延時間にて順次遅延しながら伝送させるパルス遅延回路と、サンプリング周波数fstadのクロックに同期した一定周期毎に、パルス遅延回路内で前記パルス信号が通過した遅延ユニットの段数をカウントするカウント手段とを備え、カウント手段によるカウント値をアナログ入力信号の信号レベルを表すデジタルデータとして出力する、フィルタ機能付き時間A/D変換器を有する。
【0048】
そして、この時間A/D変換器から出力されるデジタルデータは、サンプリング周波数fstadのn倍(但し、nは値1を含む正の整数)のサンプリング周波数fsdでサンプリングし、そのサンプリングにより得られた過去複数回分のサンプリングデータの平均値を演算するデジタル移動平均フィルタに入力され、このデジタル移動平均フィルタにて移動平均処理される。
【0049】
つまり、請求項5に記載のA/D変換装置は、請求項2に記載のフィルタリング方法に則ってアナログ入力信号をデジタルデータに変換する装置であり、時間A/D変換器が、パルス遅延回路を用いて、アナログ入力信号を移動平均処理すると同時にA/D変換する。
【0050】
従って、請求項5に記載のA/D変換装置によれば、請求項3に記載の装置と同様の効果を得ることができるだけでなく、時間A/D変換器が、請求項3に記載のアナログ移動平均フィルタ及びA/D変換器として機能するため、請求項3に記載の装置に比べて、装置構成をより簡単にすることができ、請求項3と同様のフィルタ機能を有するA/D変換装置をより低コストで実現できることになる。
【0051】
また次に、請求項6に記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置は、請求項5に記載の装置において、デジタル移動平均フィルタを、時間A/D変換器のサンプリング周波数fstadと同じサンプリング周波数fsdで動作し、しかも、サンプリングにより得られたサンプリングデータの過去2回分の平均値を演算するように構成したものである。
【0052】
このため、請求項6に記載の装置によれば、請求項4に記載の装置と同様、時間A/D変換器で生じる位相変化と、デジタル移動平均フィルタで生じる位相変化とを互いに相殺させることができるようになり、A/D変換装置全体では、アナログ入力信号に対して位相のずれがないデジタルデータを生成することが可能となる。
【0053】
ところで、請求項5及び請求項6に記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置において、時間A/D変換器は、アナログ入力信号を用いてパルス遅延回路を構成する各遅延ユニットの遅延時間を制御し、サンプリング周波数fstadの周期(サンプリング周期)で決まる一定時間毎に、パルス遅延回路内でパルス信号が通過した遅延ユニットの段数を検出することにより、アナログ移動平均フィルタとしての機能とA/D変換器としての機能を実現するが、パルス信号が通過した遅延ユニットの段数を検出するためのカウント手段としては、例えば、請求項7に記載のように構成するとよい。
【0054】
即ち、請求項7に記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置においては、カウント手段が、パルス遅延回路内でのパルス信号の到達位置を所定ビットのデジタルデータに変換するエンコーダと、このエンコーダによってサンプリング周波数fstadのクロックに同期して変換されたデジタルデータの最新値と前回値との差を演算する演算手段とから構成され、時間A/D変換器は、その演算手段による演算結果を、アナログ入力信号の信号レベルを表すデジタルデータとして出力する。
【0055】
このため、請求項7に記載のA/D変換装置によれば、サンプリング周波数fstadのクロックに同期して、パルス遅延回路内でパルス信号が通過した遅延ユニットの段数を表すデジタルデータが繰り返し出力されることになり、デジタル移動平均フィルタ側での移動平均処理を繰り返し連続的に実行できることになる。
【0056】
一方、時間A/D変換器を請求項7に記載のように構成した場合、後段のデジタル移動平均フィルタで移動平均のためにサンプリングするデジタルデータの個数が多くなると、A/D変換一回当たりの時間が長くなるため、これに応じて、パルス遅延回路内でパルス信号を通過させる遅延ユニットの数を増加させる必要がある。しかし、遅延ユニットの数を増やせば、パルス遅延回路を構成するトランジスタの数も増加することになり、回路規模の大型化を招くことになってしまう。そこで、このような問題を防止するには、時間A/D変換器を、請求項8に記載のように構成するとよい。
【0057】
即ち、請求項8に記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置において、時間A/D変換器に設けられるパルス遅延回路は、遅延ユニットがリング状に連結されることによりパルス信号を周回させるリングディレイラインにて構成され、カウント手段は、リングディレイラインでのパルス信号の到達位置を所定ビットのデジタルデータに変換して出力するエンコーダと、リングディレイラインでのパルス信号の周回回数を検出するカウンタとを備える。
【0058】
またカウント手段には、サンプリング周波数fstadのクロックに同期して、エンコーダからの出力を下位ビットデータ、カウンタによるカウント値を上位ビットデータとするデジタルデータを取り込み、その取り込んだデジタルデータの最新値と前回値との差を演算する演算手段が設けられ、時間A/D変換器は、その演算手段による演算結果を、アナログ入力信号の信号レベルを表すデジタルデータとして出力する。
【0059】
つまり、このようにすれば、時間A/D変換器において、パルス遅延回路としてのリングディレイラインではパルス信号が周回し、A/D変換結果であるデジタルデータは、リングディレイライン内でのパルス信号の周回回数(カウンタによるカウント値)とリングディレイライン内でのパルス信号の到達位置(エンコーダ出力)とに基づき、クロックに同期して繰り返し生成されることから、パルス遅延回路(リングディレイライン)を構成する遅延ユニットの数を、A/D変換一回当たりの時間を考慮することなく、自由に設定できることになる。よって、請求項8に記載のA/D変換装置によれば、A/D変換に用いる時間A/D変換器、延いては装置全体の小型化を図ることができる。
【0060】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
[第1実施例]
図1は、第1実施例のA/D変換装置の構成を表すブロック図である。
【0061】
本実施例のA/D変換装置は、請求項1及び請求項3に記載の発明を適用したものであり、サンプリング周波数fsaのクロックCKSAに同期した一定周期(サンプリング周期)毎に、その周期内に入力されたアナログ入力信号Vinを平均化(積分)するアナログ移動平均フィルタ2と、このアナログ移動平均フィルタ2を通過したアナログ入力信号を、サンプリング周波数fadのクロックCKADに同期してA/D変換するA/D変換器4と、A/D変換器4から出力されるデジタルデータDadを、サンプリング周波数fsdのクロックCKSDに同期して平均化するデジタル移動平均フィルタ6とから構成されている。
【0062】
ここで、A/D変換器4は、図12(a)に示した従来装置と同様のものであり、例えば、逐次比較型、並列比較型等の一般的なA/D変換器が用いられる。また、デジタル移動平均フィルタ6も、図12(a)に示した従来装置と同様のものであり、例えば、図12(c)に示したように、ラッチ回路LTとアダー回路ADDとから構成できるし、或いは、マイクロコンピュータの演算処理によっても実現できる。
【0063】
一方、アナログ移動平均フィルタ2は、サンプリング周波数fsaのクロックCKSAの一周期毎に、アナログ入力信号Vinを平均化するものであり、その動作特性は、前述した(1) 式にて定義されている。そして、このアナログ移動平均フィルタ2の具体例としては、例えば、特開平8−32408号公報に開示されたディレイラインフィルタを挙げることができる。
【0064】
また、本実施例において、A/D変換器4のサンプリング周波数fadは、上記各フィルタ2,6のサンプリング周波数fsa,fsdよりも大きく、しかも、アナログ移動平均フィルタ2を通過した移動平均処理後のアナログ入力信号の最大周波数の5倍以上となるように設定されている。これは、前述の「サンプリングの定理」に基づくものであり、本実施例では、この周波数設定により、A/D変換によって高周波信号成分の折り返し現象(エイリアシング)が生じるのを防止している。
【0065】
また、デジタル移動平均フィルタ6のサンプリング周波数fsdは、アナログ移動平均フィルタ2のサンプリング周波数fsaと同じか、そのサンプリング周波数fsaを整数倍した周波数に設定される。
これは、前述したように、アナログ移動平均フィルタ2では、サンプリング周波数fsaのn倍(nは正整数;1,2,3,…)の周波数域で減衰量が最大(理論上は無限大)となり、デジタル移動平均フィルタ6のサンプリング周波数fsdを上記のように設定すれば、アナログ移動平均フィルタ2において減衰量が無限大となる周波数域と、デジタル移動平均フィルタ6において減衰量が略零となる周波数域(図13(a)参照)とが重なるためである。
【0066】
つまり、例えば、図2(a)は、サンプリング周波数fsaを100kHzとした場合のアナログ移動平均フィルタ2の周波数対減衰量特性を表しているが、この図から明らかなように、サンプリング周波数fsaが100kHzであれば、アナログ移動平均フィルタ2において減衰量が理論上無限大となる周波数域は、100kHz、200kHz、300kHz…というように、サンプリング周波数fsdをn倍した周波数域となる。
【0067】
これに対して、デジタル移動平均フィルタ6のサンプリング周波数fsdを100kHzとした場合、デジタル移動平均フィルタ6で減衰量が略零となる周波数域は、図13(a)に示したように、サンプリング周波数fsdをn倍した周波数域、即ち、100kHz、200kHz、300kHz…となる。
【0068】
そして、本実施例では、A/D変換器4の前後に、こうしたフィルタ特性を有するアナログ移動平均フィルタ2とデジタル移動平均フィルタ6とを配置していることから、A/D変換装置全体では、図13(b)に示すように、これら各フィルタ2、6の特性を合成した周波数対減衰量特性が得られることになり、デジタル移動平均フィルタ6で高周波信号を減衰させることのできない周波数域での減衰量を、アナログ移動平均フィルタ2を用いて、最大の減衰量が得られるように補正できることになる。
【0069】
また例えば、図3(a)は、横軸を周波数の線形軸として、デジタル移動平均フィルタ6の周波数対減衰特性を記載したグラフであり、図3(b)は、同じく、横軸を周波数の線形軸として、サンプリング周波数:100kHz付近での各フィルタ2、4の周波数対減衰量特性とその合成特性を記載したグラフであるが、これら各図から明らかなように、デジタル移動平均フィルタ6では、サンプリング周波数100kHz付近(及びそのn倍の周波数付近)で減衰量が山形に減少するが、アナログ移動平均フィルタ2は、デジタル移動平均フィルタ6において減衰量が最小(略零)となる山のピークに楔を打ち込む形で、減衰量を補正することになるので、本実施例のように前置フィルタとしてアナログ移動平均フィルタ2を用いれば、デジタル移動平均フィルタ6で生じる不要な信号通過域を極めて効率よく補正できる。
【0070】
従って、本実施例のA/D変換装置によれば、前置フィルタとしてアナログCRフィルタを用いた従来装置のように、デジタル移動平均フィルタで生じる不要な信号通過域に対応する高周波信号成分を減衰させるために、フィルタの次数を高くするとか、カットオフ周波数を低くする、といった対策を施す必要がなく、極めて簡単な構成で、不要な高周波信号成分を除去することのできるA/D変換装置を実現できる。
【0071】
また、既述したように、アナログ移動平均フィルタ2の位相周波数特性φaは、前述の(2) 式で記述でき、デジタル移動平均フィルタ6の位相周波数特性φdは、前述の(3) 式で記述できることから、本実施例のA/D変換装置によれば、これら各フィルタ2、6で生じる位相変化を相殺して、得られるデジタルデータのアナログ入力信号に対する位相変化を少なくすることができる。
【0072】
そして、例えば、図4(a)に示すように、デジタル移動平均フィルタ6を、一つのラッチ回路LTと一つのアダー回路ADDとで構成し、そのクロックCKSDの周波数(サンプリング周波数fsd)を、アナログ移動平均フィルタ2のサンプリング周波数fsaと一致させるようにすれば、図4(b)に示すように、アナログ移動平均フィルタ2での位相周波数特性φaと、デジタル移動平均フィルタ6での位相周波数特性φdとが、位相のずれ方向(進み位相・遅れ位相)を除いて、完全に一致することになり、この結果、デジタル移動平均フィルタ6から出力されるデジタルデータDTとアナログ入力信号Vinとの位相を完全に一致させることが可能になる。
【0073】
つまり、図4(a)に示したデジタル移動平均フィルタ6では、クロックCKSDに同期して、A/D変換器4で得られた最新のデジタルデータDadとラッチ回路LTでラッチされた一周期前のデジタルデータDadとの和をとることにより、A/D変換器4で得られたデジタルデータDadを移動平均処理することになるため、その移動平均のデータ数Nは「2」となり、上記のように、位相周波数特性φdがアナログ移動平均フィルタ2の位相周波数特性φaに一致し、A/D変換装置全体では、アナログ入力信号Vinに対して位相のずれのないデジタルデータを生成することができるようになるのである。
【0074】
尚、図4(a)に示したデジタル移動平均フィルタ6は、請求項4に記載のデジタル移動平均フィルタに相当する。
[第2実施例]
次に、図5は、第2実施例のA/D変換装置の構成を表すブロック図である。
【0075】
本実施例のA/D変換装置は、請求項2及び請求項5に記載の発明を適用したものであり、図5(a)に示すように、サンプリング周波数ftadのクロックCKTADに同期してアナログ入力信号Vinをデジタルデータに変換する時間A/D変換器(以下、TADという)8と、上記実施例と同様のデジタル移動平均フィルタ6とから構成されている。
【0076】
また、TAD8は、図5(b)に示すように、パルス信号Pinを所定の遅延時間だけ遅延させて出力する遅延ユニット12を複数段縦続接続することにより構成されたパルス遅延回路10と、パルス遅延回路10を構成する各遅延ユニット12に対し、アナログ入力信号Vinを駆動電圧として供給するバッファ14と、クロックCKTADの立上がり(又は立ち下がりタイミング)で、パルス遅延回路10内でのパルス信号の到達位置を検出し、その到達位置を表すデジタルデータを出力するエンコーダ16と、クロックCKTADの立上がり(または立下がり)タイミングでエンコーダ16からの出力データをラッチし、今回ラッチした出力データと前回ラッチした出力データとの差をA/D変換結果(デジタルデータDad)として出力する演算回路18とから構成されている。
【0077】
尚、本実施例において、TAD8は、請求項7に記載の時間A/D変換器に相当し、演算回路18は、請求項7に記載の演算手段に相当し、エンコーダ16及び演算回路18、請求項7に記載のカウント手段に相当する。
また、パルス遅延回路10を構成する各遅延ユニット12は、後述するインバータ(図4参照)等からなるゲート回路にて構成されている。そして、このパルス遅延回路10には、パルス信号Pinとして、HighレベルからLow レベル若しくはLow レベルからHighレベルへと変化するパルス信号のエッジが入力され、各遅延ユニット12は、パルス信号Pinのエッジを、所定の遅延時間だけ遅延させて次段の遅延ユニット12に順次出力する。
【0078】
このように構成された本実施例のTAD8においては、各遅延ユニット12の遅延時間が、アナログ入力信号Vinの信号レベル(電圧レベル)に対応した時間となり、アナログ入力信号Vinに高周波ノイズ成分が重畳されている場合には、その高周波ノイズ成分によって各遅延ユニット12の遅延時間が変動する。
【0079】
つまり、図6(a)は、パルス遅延回路10にパルス信号Pinが入力されて、パルス信号Pinがパルス遅延回路10内で伝送されているときの、各遅延ユニット12からの出力波形を表しているが、この図から明らかなように、アナログ入力信号Vinに高周波ノイズ成分が重畳されている場合には、高周波ノイズ成分によって各遅延ユニット12の駆動電圧が変動することから、パルス信号Pinが各遅延ユニット12を通過する際の遅延時間が変動する。具体的には、アナログ入力信号Vinに正の高周波ノイズ成分が重畳されたタイミングでパルス信号Pinを通過させる遅延ユニット12の遅延時間は、アナログ入力信号Vinに高周波ノイズ成分が重畳されていない標準時に比べて短くなり(図に示す「小」参照)、逆に、アナログ入力信号Vinに負の高周波ノイズ成分が重畳されたタイミングでパルス信号Pinを通過させる遅延ユニット12の遅延時間は、標準時に比べて長くなる(図に示す「大」参照)。
【0080】
そこで、本実施例のTAD8は、クロックCKTADに同期して、その一周期内にパルス信号Pinが通過した遅延ユニット12の段数を、エンコーダ16と演算回路18とを用いて検出し、その検出結果(パルス信号Pinが通過した遅延ユニット12の段数)を、アナログ入力信号VinのA/D変換結果を表すデジタルデータDadとして出力するように構成されているのである。
【0081】
即ち、パルス遅延回路10を構成する遅延ユニット12の遅延時間は、図6(b)に示すように、アナログ入力信号Vinの信号レベルに応じて、アナログ入力信号Vinの信号レベルが高くなる程短くなるが、アナログ入力信号Vinに重畳された正負の高周波ノイズ信号成分による遅延時間の変動分については、パルス信号Pinをパルス遅延回路10に入力して各遅延ユニット12を順次伝送させることにより相殺(換言すれば平均化)することができることから、本実施例では、図6(c)に示すように、クロックCKTADの一周期をサンプリング周期として、その時間内にパルス信号Pinが通過した遅延ユニット12の段数を検出することにより、各サンプリング周期毎に、アナログ入力信号Vinの信号レベルの移動平均をとった値と同等のデジタルデータDad(D1,D2…)を生成するようにしているのである。
【0082】
従って、TAD8は、単体で、アナログ入力信号Vinから高周波信号成分を除去するアナログ移動平均フィルタ2としての機能と、アナログ入力信号Vinの信号レベルをデジタルデータDadに変換するA/D変換器4としての機能を有することになる。
【0083】
そして、このTAD8によれば、図7(a)に示すように、パルス遅延回路10を用いたアナログ入力信号Vinの平均化により、その平均化に用いるサンプリング周波数fstadのn倍の周波数域で減衰量が最大となるフィルタ特性(図2(a)に示したアナログ移動平均フィルタ2の特性と同様のフィルタ特性)を実現できることから、第1実施例のA/D変換装置と同様に、デジタル移動平均フィルタ6のサンプリング周波数fsdを、TAD8のサンプリング周波数fstadのn倍に設定することにより、デジタル移動平均フィルタ6で生じる不要な信号通過域に対応する高周波信号成分を、TAD8を用いて充分減衰させることができるようになる。尚、図7(a)は、サンプリング周波数ftadを100kHzとしたときのTAD8の周波数対減衰量特性を表す。
【0084】
また、TAD8は、パルス遅延回路10を用いて、サンプリング周波数fstadのクロック一周期(サンプリング周期)毎に入力信号を平均化することから、その動作特性は、第1実施例のアナログ移動平均フィルタ2と同様、前述の(1) 式のように定義することができ、TAD8の位相周波数特性も、アナログ移動平均フィルタ2と同様、前述の(2) 式のように記述できる。
【0085】
従って、本実施例のA/D変換装置全体の位相周波数特性は、第1実施例のA/D変換装置と同様のものとなり、TAD8のサンプリング周波数fstadとデジタル移動平均フィルタ6のサンプリング周波数fsdとを一致させ、デジタル移動平均フィルタ6での移動平均のデータ数Nを2回に設定すれば、アナログ入力信号Vinに対して位相のずれのないデジタルデータDTを生成することができるようになる。
【0086】
一方、本実施例のように、第1実施例のアナログ移動平均フィルタ2及びA/D変換器4に代えて、TAD8を用いるようにした場合、TAD8では、アナログ移動平均の際のサンプリング周波数とA/D変換の際のサンプリング周波数とを異なる周波数に設定できないことから、TAD8で得られるデジタルデータDadにおいて、図7(b)に示すように、図7(a)に示したサンプリング周波数ftadの1/2以上の高周波信号成分▲2▼、▲3▼、▲4▼…が、見かけ上低い周波数成分として現れる折り返し減少(エイリアシング)が発生し、TAD8で得られるデジタルデータDadに波形歪が生じることが考えられる。尚、図7(b)において、▲1▼は0〜50kHzの領域の信号成分、▲2▼は50kHz〜100kHzの領域の不要な信号成分、▲3▼は100kHz〜150kHzの領域の不要な信号成分、▲4▼は150kHz〜200kHzの領域の不要な信号成分を表す。
【0087】
つまり、TAD8のカットオフ周波数fcは、アナログ移動平均フィルタ2と同様に、fc=0.44fsと表されるため、サンプリング周波数fstadの1/2以上の高周波信号成分は十分減衰されないままA/D変換されてしまい、例えば、図7(a)に示した特性(fstad=100kHz)を有するTAD8の場合には、80kHzの入力信号は20kHzに、110kHzの入力信号は10kHzに、というように、fstad/2=50kHzを対称にして、高周波信号成分の折り返しが起こり、デジタルデータDadに波形歪が生じることが考えられる。
【0088】
しかし、本実施例では、TAD8の後段にデジタル移動平均フィルタ6が設けられているため、折り返しによって生じた波形歪は、デジタル移動平均フィルタ6の移動平均処理によって抑制できる。例えば、図7(b)には、上記折り返しにより50kHz以下の領域に現れる不要な高周波信号成分▲2▼、▲3▼、▲4▼…に加えて、サンプリング周波数fsd=100kHz、移動平均のデータ数Nを「16」とした場合のデジタル移動平均フィルタ6の周波数対減衰量特性を記載しているが、この図から明らかなように、折り返しによって生じた高周波信号成分▲2▼、▲3▼、▲4▼…は、デジタル移動平均フィルタ6によって充分減衰させることができる。従って、本実施例のA/D変換装置においても、第1実施例と同様、減衰効率の高いフィルタ特性を実現できる。
【0089】
以上説明したように、第2実施例のA/D変換装置によれば、アナログ移動平均フィルタ2及びA/D変換器4としての機能を有するTAD8を用いて、第1実施例のA/D変換装置と同じフィルタ効果(高周波信号低減効果)を有するA/D変換装置を実現できる。
【0090】
よって、第2実施例のA/D変換装置は、第1実施例のA/D変換装置と同様の効果を有するA/D変換装置をより小型化したものとなり、従来より小型軽量化が要求されている自動車用の各種制御装置に組み込むようにすれば、優れた効果を発揮することができる。
【0091】
ところで、本実施例のように時間A/D変換器(TAD8)を用いる場合、パルス遅延回路10を構成する遅延ユニット12としては、パルス信号Pinを、所定の遅延時間だけ遅延させて出力することができ、駆動電圧によってその遅延時間が変化する回路であれば、どのようなものでも使用することができるが、その回路構成をより簡単にするには、各遅延ユニット12を、例えば、図8(a)若しくは(b)に示すように構成するとよい。
【0092】
即ち、図8(a)は、パルス遅延回路10を構成する各遅延ユニット12を、Pチャネルトランジスタ(FET)とnチャネルトランジスタ(FET)とからなるCMOSインバータ(否定回路)INV2段で構成し、パルス信号Pinを、前後のCMOSインバータINVを構成するPチャネルトランジスタとnチャネルトランジスタとの動作時間で決まる所定時間だけ遅延させるようにしたものであり、図3(b)は、パルス遅延回路10を構成する遅延ユニット12を、Pチャネルトランジスタ(FET)とnチャネルトランジスタ(FET)とからなるCMOSインバータ(否定回路)INV1段で構成し、パルス信号Pinを、CMOSインバータINVの動作時間で決まる所定時間だけ遅延させるようにしたものであるが、遅延ユニット12をこのように構成すれば、遅延ユニット12を4個若しくは2個のトランジスタにて構成でき、しかも、これら各トランジスタは、CMOS集積回路を製造する際に極めて簡単に作製できることから、パルス遅延回路10、延いては、TAD8を安価に実現できることになる。
【0093】
また、上記説明では、パルス遅延回路10を構成する各遅延ユニット12の遅延時間をアナログ入力信号Vinの電圧レベルに応じて制御するために、アナログ入力信号Vinを駆動電圧として各遅延ユニット12に供給するものとしたが、例えば、図8(c)に示すように、遅延ユニット12を構成するCMOSインバータINVに、駆動電流を外部から制御するための制御トランジスタ(FET)Trcが設けられている場合には、この制御トランジスタTrcの制御端子(ゲート)に、アナログ入力信号Vinを入力するようにしてもよい。
【0094】
つまり、インバータINV等のゲート回路は、直流電源から供給される駆動電流によっても、その動作時間が変化することから、図8(c)に示すように、その駆動電流をアナログ入力信号Vinに基づき制御するようにしても、パルス遅延回路10(延いてはTAD8)を上記と同様に動作させることができる。
【0095】
また、本実施例で用いる時間A/D変換器(TAD8)としては、図9に示すように、パルス遅延回路10を構成する遅延ユニット12をリング状に連結することにより、パルス遅延回路10を、パルス遅延回路10内でパルス信号を周回させることができるリングディレイラインとして構成し、このパルス遅延回路10でのパルス信号の周回位置を検出するためのエンコーダ16に加えて、パルス遅延回路10でのパルス信号の周回回数をカウントするカウンタ20を設け、演算回路18では、エンコーダ16からの出力データを下位ビットデータ、カウンタ20からの出力データを上位ビットデータとして、エンコーダ16及びカウンタ20からデジタルデータを取り込み、そのデジタルデータの最新値と前回値との差を、アナログ入力信号VinのA/D変換結果を表すデジタルデータDadとして出力するように構成してもよい。
【0096】
そして、このように構成されたTAD8では、パルス遅延回路10としてのリングディレイラインではパルス信号が周回し、A/D変換結果であるデジタルデータDadは、リングディレイライン内でのパルス信号の周回回数(カウンタ20によるカウント値)とリングディレイライン内でのパルス信号の到達位置(エンコーダ16の出力)とに基づき、クロックに同期して繰り返し生成されることから、図5(b)に示したTAD8に比べて、パルス遅延回路(リングディレイライン)10を構成する遅延ユニット12の数を少なくして、TAD8(延いてはA/D変換装置)をより小型化することができる。
【0097】
尚、こうしたリングディレイラインの構成については、特開平3−220814号公報、特開平7−154256号公報等に詳しく説明されており、従来より周知であるため、その説明は省略する。また、図9に示したTAD8は、請求項8に記載の時間A/D変換器に相当し、演算回路18は、請求項8に記載の演算手段に相当し、エンコーダ16、演算回路18、及びカウンタは、請求項8に記載のカウント手段に相当する。
[実験例]
次に、本発明のフィルタ機能を有するA/D変換装置による高周波信号成分(ノイズ)低減効果を確認するために、上記第2実施例のA/D変換装置を、共振型スキャナ30の走査位置検出用センサ(センサコイル)からの検出信号をA/D変換してマイクロコンピュータ等に入力する入力装置として使用し、検出信号とA/D変換後のデジタルデータDTとを夫々測定した。以下、この実験例について説明する。
【0098】
実験に使用した共振型スキャナ30は、図10に示すように、光走査のために前面に光反射部32が形成され、薄肉の支持板34にて共振振動可能に支持されたスキャナ本体36と、このスキャナ本体36の後端から突出されたロッド38に取り付けられた磁石40と、この磁石40の左右に配置された駆動コイル42とを備え、駆動コイル42への通電により磁束を発生させて、磁石40、延いては、スキャナ本体36を共振駆動させるように構成されている。また、磁石40の後方には、センサコイル44が設けられており、センサコイル44は、磁石40の共振駆動(変位)によって生じる磁束変化を検出する。
【0099】
そこで、このセンサコイル44からの検出信号(電圧信号)を、アンプ46で増幅して、A/D変換装置(第2実施例)に入力するようにし、そのときの入力信号(アナログ入力信号Vin)と、A/D変換結果であるデジタルデータDTとを測定した。その測定結果を図11に示す。
【0100】
尚、実験では、TAD8として、図9に示したTAD(つまり、パルス遅延回路10としてリングディレイラインを備えた時間A/D変換器)を備え、デジタル移動平均フィルタ6として、過去16回分のデジタルデータを平均化する移動平均処理を2回行うデジタル移動平均フィルタを備え、これら各部のサンプリング周波数fstad、fsdを、夫々、100kHzに設定したA/D変換装置を使用した。
【0101】
図11(a)は、アンプ46の出力(アナログ入力信号Vin)をオシロスコープで観測した図であり、図11(b)は、A/D変換装置から一定周期(この場合0.01msec.周期)で出力されるデジタルデータDTを、図11(a)に対応した時間軸に沿ってプロットしたA/D変換結果を表す図であり、図11(c)は、図11(b)の一部(A部分)を拡大した拡大図である。
【0102】
そして、これら各図から、TAD8とデジタル移動平均フィルタ6とを組み合わせた第2実施例のA/D変換装置であっても、アナログ入力信号Vinに重畳された不要な高周波信号成分を完全に除去できることが判る。
つまり、本発明のように、アナログ移動平均フィルタとA/D変換器とデジタル移動平均フィルタとの組み合わせ、若しくは、時間A/D変換器とデジタル移動平均フィルタとの組み合わせにより、各種信号をA/D変換して入力するA/D変換装置(換言すれば信号入力装置)を構成すれば、従来のようなアナログCRフィルタを使用することなく、良好なノイズ低減効果が得られるA/D変換装置(信号入力装置)を実現できるようになるのである。
【0103】
尚、上記実験では、第2実施例のA/D変換装置を、共振型スキャナに設けられたセンサコイルからの検出信号の入力装置として使用したが、本発明のA/D変換装置は、アナログ入力信号VinをA/D変換してマイクロコンピュータ等に入力する装置であれば、どのような装置にも適用できる。つまり、例えば、本発明のA/D変換装置は、温度センサ、トルクセンサ、角速度センサ、位置センサ等、多種多様なセンサからの検出信号をA/D変換するのに利用することができるし、単にアナログ入力信号からノイズを除去するフィルタ装置として利用することもできる。
【0104】
また、第2実施例のA/D変換装置において、TAD8には、演算回路18が設けられるものとして説明したが、例えば、デジタル移動平均フィルタ6としての機能をマイクロコンピュータの移動平均処理にて実現するような場合には、演算回路18としての機能も、マイクロコンピュータの演算処理にて実現するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例のA/D変換装置の構成を表すブロック図である。
【図2】 第1実施例のアナログ移動平均フィルタの特性及び第1実施例の効果を説明する説明図である。
【図3】 第1実施例のデジタル移動平均フィルタの特性及び第1実施例の効果を説明する説明図である。
【図4】 第1実施例におけるデジタル移動平均フィルタの構成例及びこの構成により得られる位相周波数特性を説明する説明図である。
【図5】 第2実施例のA/D変換装置及びTADの構成を表すブロック図である。
【図6】 第2実施例のA/D変換装置を構成するTADの動作を説明する説明図である。
【図7】 第2実施例のTADの特性を説明する説明図である。
【図8】 第2実施例のTADのパルス遅延回路を構成する遅延ユニットの構成例を表す説明図である。
【図9】 第2実施例のTADの他の構成例を表す説明図である。
【図10】 第2実施例のA/D変換装置の応用例を表す説明図である。
【図11】 図10の構成で得られる高周波ノイズの低減効果を説明する説明図である。
【図12】 従来のA/D変換装置の構成を表す説明図である。
【図13】 従来のA/D変換装置の問題を説明する説明図である。
【符号の説明】
2…アナログ移動平均フィルタ、3…アナログCRフィルタ、4…A/D変換器、6…デジタル移動平均フィルタ、8…TAD(時間A/D変換器)10…パルス遅延回路、12…遅延ユニット、14…バッファ、16…エンコーダ、18…演算回路、20…カウンタ、30…共振型スキャナ、32…光反射部、34…支持板、36…スキャナ本体、38…ロッド、40…磁石、42…駆動コイル、44…センサコイル、46…アンプ。

Claims (8)

  1. サンプリング周波数fsaのクロックに同期した一定周期毎に入力信号を平均化するアナログ移動平均フィルタを用いて、アナログ入力信号を移動平均処理すると共に、
    該移動平均処理後のアナログ入力信号をA/D変換器にてA/D変換し、
    更に、前記サンプリング周波数fsaのn倍(但し、nは値1を含む正の整数)のサンプリング周波数fsdで入力データをサンプリングして該サンプリングにより得られた過去複数回分のサンプリングデータの平均値を演算するデジタル移動平均フィルタにて、前記A/D変換により得られたデジタルデータを移動平均処理する、
    ことにより、前記アナログ入力信号から不要な高周波信号成分を除去したデジタルデータを生成することを特徴とするフィルタリング方法。
  2. 遅延ユニットを複数段縦続接続してなるパルス遅延回路に対して、アナログ入力信号を、前記各遅延ユニットの遅延時間を制御する信号として入力すると共に、前記パルス遅延回路にパルス信号を入力して該パルス信号を前記各遅延ユニットの遅延時間にて順次遅延しながら伝送させ、
    サンプリング周波数fstadのクロックに同期した一定周期毎に、前記パルス遅延回路内で前記パルス信号が通過した遅延ユニットの段数をカウントすることにより、前記アナログ入力信号の信号レベルを表すデジタルデータを生成し、
    更に、前記サンプリング周波数fstadのn倍(但し、nは値1を含む正の整数)のサンプリング周波数fsdで入力データをサンプリングして該サンプリングにより得られた過去複数回分のサンプリングデータの平均値を演算するデジタル移動平均フィルタにて、前記カウントにより得られたデジタルデータを移動平均処理する、
    ことにより、前記アナログ入力信号から不要な高周波信号成分を除去したデジタルデータを生成することを特徴とするフィルタリング方法。
  3. サンプリング周波数fsaのクロックに同期した一定周期毎に、アナログ入力信号を平均化するアナログ移動平均フィルタと、
    該アナログ移動平均により平均処理されたアナログ入力信号をデジタルデータにA/D変換するA/D変換器と、
    該A/D変換器にてA/D変換されたデジタルデータを、前記サンプリング周波数fsaのn倍(但し、nは値1を含む正の整数)のサンプリング周波数fsdでサンプリングし、該サンプリングにより得られた過去複数回分のサンプリングデータの平均値を演算するデジタル移動平均フィルタと、
    を備えたことを特徴とするフィルタ機能を有するA/D変換装置。
  4. 前記デジタル移動平均フィルタは、前記アナログ移動平均フィルタのサンプリング周波数fsaと同じサンプリング周波数fsdで動作し、且つ、前記サンプリングにより得られたサンプリングデータの過去2回分の平均値を演算することを特徴とする請求項3記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置。
  5. アナログ入力信号の信号レベルに応じた遅延時間で入力パルスを遅延させて出力する遅延ユニットが複数段縦続接続され、パルス信号を各遅延ユニットの遅延時間にて順次遅延しながら伝送させるパルス遅延回路と、サンプリング周波数fstadのクロックに同期した一定周期毎に、前記パルス遅延回路内で前記パルス信号が通過した遅延ユニットの段数をカウントするカウント手段とを備え、該カウント手段によるカウント値を前記アナログ入力信号の信号レベルを表すデジタルデータとして出力する、フィルタ機能付き時間A/D変換器と、
    該時間A/D変換器から出力されるデジタルデータを、前記サンプリング周波数fstadのn倍(但し、nは値1を含む正の整数)のサンプリング周波数fsdでサンプリングし、該サンプリングにより得られた過去複数回分のサンプリングデータの平均値を演算するデジタル移動平均フィルタと、
    を備えたことを特徴とするフィルタ機能を有するA/D変換装置。
  6. 前記デジタル移動平均フィルタは、前記時間A/D変換器のサンプリング周波数fstadと同じサンプリング周波数fsdで動作し、且つ、前記サンプリングにより得られたサンプリングデータの過去2回分の平均値を演算することを特徴とする請求項5記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置。
  7. 前記カウント手段は、
    前記パルス遅延回路内でのパルス信号の到達位置を所定ビットのデジタルデータに変換するエンコーダと、
    該エンコーダにより前記サンプリング周波数fstadのクロックに同期して変換されたデジタルデータの最新値と前回値との差を演算する演算手段と、
    を備え、前記時間A/D変換器は、前記演算手段による演算結果を、前記アナログ入力信号の信号レベルを表すデジタルデータとして出力することを特徴とする請求項5又は請求項6記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置。
  8. 前記パルス遅延回路は、
    前記遅延ユニットがリング状に連結されることにより前記パルス信号を周回させるリングディレイラインからなり、
    前記カウント手段は、
    前記リングディレイラインでのパルス信号の到達位置を所定ビットのデジタルデータに変換して出力するエンコーダと、
    前記リングディレイラインでのパルス信号の周回回数を検出するカウンタと、
    前記サンプリング周波数fstadのクロックに同期して、前記エンコーダからの出力を下位ビットデータ、前記カウンタによるカウント値を上位ビットデータとするデジタルデータを取り込み、該デジタルデータの最新値と前回値との差を演算する演算手段と、
    を備え、前記時間A/D変換器は、前記演算手段による演算結果を、前記アナログ入力信号の信号レベルを表すデジタルデータとして出力することを特徴とする請求項5又は請求項6記載のフィルタ機能を有するA/D変換装置。
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