JP3769268B2 - 飲料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、血圧降下作用等の生理効果を有し、味が良好で、かつ保存安定性の良好な飲料に関する。
【0002】
【従来の技術】
狭心症、心筋梗塞、心不全などの心疾患あるいは脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などの脳血管疾患は、高血圧と非常に深い関係があり、日本人の死因のそれぞれ第二位と第三位を占める。また、厚生省国民生活基礎調査(平成10年度)によれば、高血圧症で通院する患者数は我が国で千人あたり64人であり、病因の第一位を占めている。高血圧の対策としては、利尿薬、交感神経抑制薬、血管拡張薬、アンジオテンシン交換酵素阻害薬などの血圧降下医薬品が挙げられ、これらは主として重症高血圧患者に適用される。それに対して、食事療法、運動療法、飲酒・喫煙の制限などの生活習慣改善を目的とした一般療法は、軽症者から重症者までの高血圧者に広く適用されることから、一般療法の重要性が認識されている。なかでも食習慣の改善は重要であるといわれ、伝承として血圧降下作用を有すると言われる食品は数多く存在する。また従来から食品由来の血圧降下素材の探索が盛んに行われ、血圧降下作用を有する有効成分の分離・同定が数多くなされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人は食物素材の中から血圧降下作用を有する成分を検討し、クロロゲン酸類に優れた血圧降下作用があることを見出した(特許文献1、2)。しかしながら、クロロゲン酸類は、飲食品、特に飲料に配合した場合、苦味や渋味を与えるという問題があった。この苦味や渋味は、飲料において特に著しく、飲料を連続して飲用することが困難であった。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−53464号公報
【特許文献2】
特開2002−87977号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、血圧降下作用を有するクロロゲン酸類を高濃度で含有し、かつ味が良好で毎日飲用でき、かつ保存安定性の良好な飲料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者は、クロロゲン酸類に一定量の野菜又は果物由来のフレーバー物質を配合し、かつクロロゲン酸類中のイソクロロゲン酸量を一定範囲に調整すると、渋味や苦味が改善され、フレッシュな味で飲用し易く、かつ長期間安定な飲料が得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(a)、(b)及び(c):
(a)イソクロロゲン酸類を含むクロロゲン酸類混合物(ここで、成分(a)中のイソクロロゲン酸類含有重量比率は1/3〜1/20である) 0.05〜10重量%、
(b)野菜又は果物由来のフレーバー物質 0.65〜99重量%、
(c)水 99.3重量%以下
を含有する飲料を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の飲料に用いられるクロロゲン酸類混合物(成分(a))には、イソクロロゲン酸類、ネオクロロゲン酸、クリプトクロロゲン酸などのクロロゲン酸類及びそれらの誘導体が含まれる。ここで、クロロゲン酸は、キナ酸の5位の水酸基にカフェー酸がエステル結合した5−カフェオイルキナ酸であり、クリプトクロロゲン酸は、キナ酸の4位の水酸基にカフェー酸がエステル結合した4−カフェオイルキナ酸であり、ネオクロロゲン酸は、キナ酸の3位の水酸基にカフェー酸がエステル結合した3−カフェオイルキナ酸である。イソクロロゲン酸は、キナ酸の3位、4位及び5位の水酸基のうちの2つの水酸基にカフェー酸がエステル結合したジカフェオイルキナ酸(例えば3,4−ジカフェオイルキナ酸、3,5−ジカフェオイルキナ酸、4,5−ジカフェオイルキナ酸)である。その他のクロロゲン酸類としては、キナ酸の3位、4位及び5位の水酸基のうちの1つの水酸基にフェルラ酸がエステル結合したフェルリルキナ酸(例えば、5−フェルリルキナ酸)、キナ酸の3位、4位及び5位の水酸基のうちの2つの水酸基にカフェー酸とフェルラ酸がエステル結合したフェルリルカフェオイルキナ酸(例えば3−フェルリル−4−カフェオイルキナ酸)などが挙げられる。また、イソクロロゲン酸、クロロゲン酸等の誘導体としては、塩、糖エステル等の生理学的に許容されるものが挙げられる。このうち、イソクロロゲン酸、クロロゲン酸等の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0009】
成分(a)としては、植物抽出物が好ましい。成分(a)は単一植物又は植物の混合物のいずれかから抽出することができる。このうち、シソ、ヒマワリ、ヨモギ、サツマイモ、コーヒー生豆、南天の葉、リンゴ未熟果等の植物体から抽出したものが好ましく、さらにコーヒー生豆抽出物、特にアカネ科コーヒー(Coffea arabica LINNE)の種子より、温時アスコルビン酸、クエン酸酸性水溶液又は熱水で抽出して得られたものが好ましい。また抽出物を利用した成分(a)の化学修飾物をブレンドして使用してもよい。
【0010】
成分(a)中のイソクロロゲン酸量、すなわち成分(a)中のイソクロロゲン酸類含有重量比率は、1/3〜1/20であるが、1/4〜1/15がより好ましく、1/5〜1/10がさらに好ましい。この含有重量比率が1/3を超えると渋味と苦味が十分改善できず、一方、1/20未満だとオリが発生しやすくなり、飲料の安定性が良くない。含有重量比率の調整は、イソクロロゲン酸類の含有量の相違する植物抽出液をブレンドする方法;カラム分離、抽出、化学合成等によるクロロゲン酸類を用い、前記植物抽出物とブレンドする方法;特開平9−9603号記載のように樹脂への吸着・脱着処理等によりクロロゲン酸類を選択的に溶出し、これを前記植物抽出物とブレンドする方法等により行うことができる。
【0011】
本発明飲料中の成分(a)の含有量は、0.05〜10重量%であるが、0.07〜5.0重量%、特に0.10〜1.0重量%が好ましい。成分(a)の含有量が0.05重量%未満では十分な降圧効果が得られず、10重量%を超えると成分(a)による渋味や苦味が強くなる。
【0012】
本発明として用いられる野菜又は果物由来のフレーバー物質(成分(b))のうち、果物由来のフレーバー物質(フルーツフレーバー)としては、種子植物の食用生殖部分、特に種子に伴い甘味果肉を有する部分から得られるフレーバーが挙げられる。具体的には、例えば、オレンジ、ミカン、リンゴ、ブドウ、パイン、ピーチ、グレープフルーツ、レモン、和ナシ、洋ナシ、ウメ、ネーブル、イチゴ、パッションフルーツ、メロン、ライム、グアバ、アンズ、シークワーシャー、カボス、ポンカン、イヨカン、ハッサク、クランベリー、バナナ、スモモ、マンゴー、キウイフルーツ、カキ、アセロラ等から得られるフレーバーが挙げられる。また、フルーツフレーバーという用語は、天然源から得られるフルーツフレーバーを構成するために合成されたフレーバーも含まれる。特に好ましいフルーツフレーバーはオレンジ、レモン、ライム及びグレープフルーツフレーバーを含めたシトラスフレーバーである。アップル、グレープ、チェリー、パイナップル、ココナツ等のフルーツフレーバーも使用可能である。これらのフルーツフレーバーはフルーツジュース及び香油のような天然源から得ても又は合成してもよい。また、オレンジ、レモン、ライム、アップル及びグレープを含めたフルーツジュースもフレーバー成分として使用可能である。これらのフレーバー物質は濃縮物を使用するのが配合上好ましい。
【0013】
また、野菜由来のフレーバー物質としては、野菜の根、葉から得られるフレーバーが挙げられる。野菜フレーバー物質にも、フルーツフレーバー同様合成されたフレーバーも含まれる。具体的には、にんじん、トマト、ジェイレッド(甘藷)、アスパラガス、モロヘイヤ、パセリ、ほうれん草、小松菜、セロリ、キャベツ、ピーマン、ブロッコリー、大根葉、レタス、はくさい、だいこん、しょうが、かぼちゃ、アスパラガス、なす、ビート、クレソン等から得られるフレーバーが好ましい。これらのフレーバー物質も濃縮物を使用するのが配合上好ましい。
【0014】
本発明飲料中の成分(b)の含有量は、0.65〜99重量%であるが、5.0〜99重量%、特に10.0〜99重量%が好ましい。成分(b)が0.65重量%未満だと成分(a)の渋味、苦味改善効果が得られず、99重量%を超えると沈澱を生じやすくなる。
【0015】
本発明飲料には水(成分(c))を99.3重量%以下、好ましくは0.01〜99.3重量%、より好ましくは0.05〜99.3重量%含有する。
【0016】
本発明飲料には、さらにヒドロキシカルボン酸を含有させるのが渋味、苦味改善効果の点で好ましい。当該ヒドロキシカルボン酸としては、分子量60〜300のヒドロキシカルボン酸、例えば乳酸、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられる。天然物、特に植物中に本来含有されているもの、抽出及び/又は分画の際の化学的処理によって交換したもの、及び化学的修飾を行ったものなども含まれる。この天然物に由来するものとしては、例えば日本農林規格で定められる醸造酢等あるいはその抽出物、果汁、その抽出物等が挙げられる。
【0017】
ヒドロキシカルボン酸は、渋味、苦味改善効果の点で成分(a)に対して5〜30重量倍、さらに、5〜20重量倍、特に5〜15重量倍含有するのが好ましい。またヒドロキシカルボン酸は飲料中に0.25〜15重量%、さらに0.25〜10重量%、特に0.35〜5重量%含有するのが好ましい。
【0018】
本発明の飲料のpHは生理効果を有する成分(a)の長期安定性の点から2〜5、さらに2.5〜5が好ましい。また炭酸飲料とする場合のpHは2.5〜4が好ましい。本発明飲料のpHの調整は食用酸又は有機食用酸の添加によって行われる。使用可能な食用有機酸としては前記ヒドロキシカルボン酸の他、フマル酸、アジピン酸、アスコルビン酸、酢酸又はそれらの混合物が挙げられる。これらの酸はそれらの非解離形でも又はそれら各々の塩としても存在することができる。ここで塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の薬学上許容される塩が挙げられる。
【0019】
本発明の飲料には、前記成分の他、甘味料、増量剤、乳化剤、エマルション安定剤等を配合することができる。ここで甘味料としては、単糖、2糖甘味料、糖アルコール、無カロリー甘味料等が挙げられる。単糖、2糖類の例としてはスクロース、グルコース、フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、転化シロップ、精製シロップ、コーンシロップ、マルトース、高マルトースシロップ及びそれらの混合物が挙げられる。好ましい糖類はスクロース及び高フルクトースコーンシロップである。糖アルコールとしてはソルビトール、マンニトール及びキシリトールが挙げられる。無カロリー甘味料の例としてはアスパルテーム、サッカリン、シクラメート類、アセトスルファム、L−アスパルチル−L−フェニルアラニン低級アルキルエステル甘味料、L−アスパルチル−D−アラニンアミド類(米国特許第4,411,925号)、L−アスパルチル−D−セリンアミド類(米国特許第4,399,163号)、L−アスパルチルヒドロキシメチルアルカンアミド甘味料(米国特許第4,338,346号)、L−アスパルチル−1−ヒドロキシエチルアルカンアミド甘味料(米国特許第4,423,029号)、グリセリン類、合成アルコキシ芳香族等が挙げられる。これらの甘味料は、糖度(Brix)が0.001〜40%、さらに0.01〜30%、特に0.1〜20%となるように配合するのが好ましい。
【0020】
乳化剤及びエマルション安定剤の例としては、臭素化植物油、ロジンエステル、ガム、ペクチン類、セルロース、ポリソルベート類、ソルビタンエステル類及びプロピレングリコールアルギネート類が挙げられる。
【0021】
本発明の飲料は、容器詰飲料とするのが好ましく、例えば成分(a)、(b)、(c)及びその他の成分を混合し、容器に充填し、殺菌して製造することができる。なお殺菌手段は、レトルト殺菌、UHT殺菌のいずれでもよい。
【0022】
本発明の飲料の形態としては、果汁又は野菜汁添加のジュース飲料、炭酸入り清涼飲料等が挙げられる。また容器としては、金属缶、PETボトル、紙パック、チューブパック、ビン等が挙げられる。
【0023】
【実施例】
以下の実施例においてヒドロキシカルボン酸及びクロロゲン酸類の分析は次のようにして行った。
ヒドロキシカルボン酸の分析法
厚生省環境衛生局食品化学課編:“食品中の食品添加物分析法”講談社サイエンティフィク(1998.8.1 第6刷)に準じ、ガスクロマトグラフィー法により定量する。
クロロゲン酸類の分析法
ODS−2逆相カラムを用い、溶離液A(0.05M酢酸 3vol%アセトニトリル水溶液)と溶離液B(0.05M酢酸 100vol%アセトニトリル溶液)にてグラジエントをかけて溶出した。標準品とRTを比較し、同定した。
【0024】
実施例1〜12及び比較例1〜8
表1及び2の組成の容器詰飲料を調製し、下記項目を評価した。
1.味(苦味、渋味、フレッシュ感によるおいしさ)
習熟したパネル10人を選んで官能評価を行った。
この場合、対照としてはクロロゲン酸類を添加していないプラセボ飲料を使用し、香味を評価した。その結果は表1のとおりである。
なお、表1及び2中の評価の点数は、下記の基準で採点(1〜4点)した各パネルの平均点である。(採点基準)渋味、苦味を非常に強く感じる:4点、異味を強く感じる:3点、異味を感じる:2点、異味を若干感じる:1点、異味を感じない:0点
2.おり発生抑制
透明の100mLびんに移し、ふたをしっかりとした後。
80℃に加熱したあと、25℃の部屋に放置徐冷した。
24時間後に、軽く振っておりの発生を評価した。
Figure 0003769268
【0025】
【表1】
Figure 0003769268
【0026】
【表2】
Figure 0003769268
【0027】
表1及び2から明らかなように、成分(a)中のイソクロロゲン酸量が1/3よりも多い場合(比較例2)は、味が強く、おりが発生し、一方、当該イソクロロゲン酸量が1/20よりも少ない場合(比較例1、比較例3、5〜8)は、おりが発生し、かつ味も苦い等の異味があり、飲料として適さなかった。
【0028】
これに対し、本発明飲料は、味も良好でかつおりの発生もなく長期間安定であった。
【0029】
実施例13 ゼリー状飲料
ローカストビーンガム0.35重量%、グレープフルーツの50%濃縮果汁30.0重量%、クエン酸0.05重量%、コーヒー豆抽出物(長谷川香料(株)製フレーバーホルダー(クロロゲン酸類混合物30重量%、イソクロロゲン酸:クロロゲン酸類混合物=0.16/1))1.8重量%を混合し、これに水を加えて100重量%に調整し、65℃で溶解した。さらに少量のグレープフルーツフーレバーを添加して85℃で5分間保持して殺菌処理後、100mLの容器に分注した。8時間静置して徐冷しながら5℃に冷却して、ゲル化させ、口に含んだ時に口溶け性が良好で、果実風味を有し食感良好なゼリー状飲料を得た。
【0030】
Figure 0003769268
上記組成の飲料は保存安定性も高く、また、風味もよく美味であった。
【0031】
実施例15 果汁飲料
リンゴ100%果汁 97.1重量%
コーヒー豆抽出物(実施例5と同じ) 0.25重量%
レモン果汁 1重量%
はちみつ 1.5重量%
香料 0.15重量%
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、安定した血圧降下作用を有し、かつ味が良好で長期保存安定性の良好な飲料が得られる。

Claims (4)

  1. 次の成分(a)、(b)及び(c):
    (a)イソクロロゲン酸類を含むクロロゲン酸類混合物(ここで、成分(a)中のイソクロロゲン酸類含有重量比率は1/3〜1/20である) 0.05〜10重量%、
    (b)野菜又は果物由来のフレーバー物質 0.65〜99重量%、
    (c)水 99.3重量%以下
    を含有する飲料。
  2. 成分(b)が、果物由来のフレーバー物質である請求項1記載の飲料。
  3. 成分(a)が、植物抽出物である請求項1又は2記載の飲料。
  4. 容器詰飲料である請求項1〜3のいずれか1項記載の飲料。
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