JP3760540B2 - リチウム二次電池用電解液 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム二次電池の電解液に関するものである。特にリチウム二次電池用有機溶媒電解液のサイクル特性の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の小型化、携帯化にともない、高エネルギー密度の電池の開発が求められている。その有力候補として、コークス、黒鉛等の炭素材料が、デンドライト状の電析リチウムの成長による内部短絡の危険性がない故に以前から提案されていた金属リチウム負極を用いたリチウム二次電池に変わる新しい負極材料として注目されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような炭素材料を負極に用いた場合でも、充放電サイクルの進行とともに炭素負極上で有機溶媒電解液が分解して電池容量が次第に低下するという問題があった。また、炭素材料の黒鉛化度が高くなると、容量が大きくなる反面、有機溶媒電解液を分解しやすくなり、サイクル特性が悪くなるという傾向がある。
本発明は、充放電サイクルの進行にともなう炭素負極上の分解が少ないリチウム二次電池用電解液の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溶質としてのリチウム塩、式(I)で示される環状硫酸エステル、
【化2】
〔式中、R1 及びR2 は各々独立して水素または炭素数1〜2のアルキル基を表す。また、式中のnは0か1である。〕
および前記リチウム塩を溶解する有機溶媒を含有するリチウム二次電池用電解液であって、前記環状硫酸エステルは、電解液中0.1〜50重量%の濃度で含有されるリチウム二次電池用電解液を提供するものである。
【0005】
【作用】
本発明において、リチウム二次電池用電解液は環状硫酸エステルを含有しており、この環状硫酸エステルが炭素電極と反応して、リチウムイオン透過性の高い皮膜を炭素電極表面に形成し、この皮膜が電解液の分解を抑制する。
【0006】
【発明の実施の形態】
リチウム塩:
溶質としてのリチウム塩としては、従来リチウム二次電池用電解液の溶質として使用されているものが使用できる。例えばLiPF6 、LiClO4 、LiBF4 、CF3 SO3 Li、(CF3 SO2 )2 NLi、LiAsF6 などである。
溶質は、有機溶媒に溶解される。電解液中の溶質の濃度は、0.5〜1.5M(モル/リットル)である。
【0007】
有機溶媒:
溶質を溶解する有機溶媒としては、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどから選ばれたものを単一溶媒として、あるいは複数の混合溶媒として用いる。
この有機溶媒の使用量は、電解液中18〜96重量%の割合で用いられる。
【0008】
環状硫酸エステル:
式(I)で示される環状硫酸エステルの例としては、エチレングリコール硫酸エステル、1,2−プロパンジオール硫酸エステル、1,2−ブタンジオール硫酸エステル、2,3−ブタンジオール硫酸エステル、2,3−ペンタンジオール硫酸エステル、3,4−ヘキサンジオール硫酸エステル、1,3−プロパンジオール硫酸エステル、1,3−ブタンジオール硫酸エステル、2,4−ペンタンジオール硫酸エステル、3,5−ヘプタンジオール硫酸エステル等が挙げられる。
【0009】
該環状硫酸エステルの含有量は、リチウム二次電池用電解液中0.1〜50重量%、好ましくは0.3〜10重量%である。同濃度が0.1重量%未満の場合は、十分な厚さの皮膜が炭素電極表面に形成されないため、炭素電極表面上における電解液の分解を抑制できず、サイクル特性が十分に改善できないためである。一方、同濃度が50重量%を越える場合は、皮膜が厚くなりすぎてリチウムイオン透過性が悪くなるために、極板の反応抵抗が増大し、サイクル特性が低下するためである。
環状硫酸エステルと前記有機溶媒の使用の和は、電解液中68〜96重量%となる量が好ましい。
【0010】
リチウム二次電池:
図1は、後で述べる実施例及び比較例において作製した炭素電極を正極とするリチウム二次電池(コイン型;直径20mm、厚さ16mm)の断面図である。このコイン型セルは、ステンレス製ケース1、ステンレス製封口板2、天然黒鉛を同シートに敷いた正極3、金属リチウムシートの負極4、有機溶媒電解液に浸された多孔性ポリプロピレンフィルムのセパレータ5、絶縁ガスケット6とから構成されている。
【0011】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
実施例1
図1に示すコイン型セル(リチウム二次電池)を作製した。
ここで電解液は、炭酸エチレン(EC)22.9gと炭酸プロピレン(PC)21.0gを体積比5:5で混合した混合溶媒にLiPF6 5.6gを電解質として溶解させ、さらにエチレングリコール硫酸エステルを0.5g含有させた。
電解液中のLiPF6 の濃度は1.0M(モル/リットル)で、エチレングリコール硫酸エステルの濃度は1重量%である。
【0012】
実施例2
環状硫酸エステルとして1,3−ブタンジオール硫酸エステルを用いる以外は実施例1と同様にしてコイン型セルを作製した。
【0013】
比較例1
環状硫酸エステルを含有しない電解液として、炭酸エチレン(EC)23.1gと炭酸プロピレン(PC)21.2gを体積比5:5で混合した混合溶媒に、LiPF6 5.7gを溶解させたものを用いる外は実施例1と同様にしてコイン型セルを作製した。
【0014】
(サイクル特性)
実施例1〜2および比較例1で得たコイン型セルについて、0.613mAで放電終止電圧0.0Vまで放電した後、0.613mAで充電終止電圧1.0Vまで充電して、各電解液を用いたコイン型セルのサイクル特性を調べた。その結果を図2に示す。
図2には、各コイン型セルのサイクル特性を、縦軸に炭素材料1g当たりの容量である炭素電極容量(mAh/g)を、横軸にサイクル数(回)をとったグラフを示した。同図が示すように本発明電解液を用いたコイン型セルの炭素電極容量は、比較電解液を用いた場合と比べ、初期サイクルから大きい。
【0015】
また、図3で示すように、本発明の電解液を用いたコイン型セルの20サイクルでの容量維持率(実施例1:93%、実施例2:92%)は、環状硫酸エステルを含有しない電解液を用いた場合の同じサイクルでの容量維持率(比較例1:85%)と比較して大きい。このことから、電解液に含有される環状硫酸エステルにより、炭素電極表面にリチウムイオン透過性の高い皮膜が生成し、充放電時の電解液の分解による容量低下が抑制されることが理解される。
【0016】
上記実施例では、環状硫酸エステルとしてエチレングリコール硫酸エステル、1,3−プロパンジオール硫酸エステル、1,3−ブタンジオール硫酸エステルを用いた場合を例に説明したが、1,2−プロパンジオール硫酸エステル、1,2−ブタンジオール硫酸エステル、2,3−ブタンジオール硫酸エステル、2,3−ペンタンジオール硫酸エステル、3,4−ヘキサンジオール硫酸エステル、1,3−プロパンジオール硫酸エステル、2,4−ペンタンジオール硫酸エステル、3,5−ヘプタンジオール硫酸エステルなどの他の環状硫酸エステルを用いた場合にも同様な優れたサイクル特性を示す電解液を得ることができる。
【0017】
【発明の効果】
リチウム二次電池用電解液中に含まれる環状硫酸エステルが炭素電極の表面で反応し、リチウムイオン透過性の高い皮膜(保護膜)が形成され、電極表面における電解液の分解劣化が抑制される。そのため本発明の電解液を用いたコイン型セルは、充放電サイクルの進行と共に起きる容量劣化が小さいなど、優れた特有の効果を発現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】コイン型セルの断面図である。
【図2】コイン型セルのサイクル特性を示すグラフである。
【図3】コイン型セルの容量維持率を示すグラフである。
Claims (4)
- 環状硫酸エステルが、エチレングリコール硫酸エステル、1,3−ブタンジオール硫酸エステルである請求項1記載のリチウム二次電池用電解液。
- リチウム塩が、LiPF6、LiClO4、LiBF4、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLiおよびLiAsF6より選ばれた化合物である請求項1記載のリチウム二次電池用電解液。
- 有機溶媒が、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタンおよび1,2−ジエトキシエタンから選ばれたものである請求項1記載のリチウム二次電池用電解液。
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