JP6031965B2 - リチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池はニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池と比べ、軽量、高容量であるため、携帯電子機器用電源として広く応用されている。また、ハイブリッド自動車や、電気自動車用に搭載される電源としても使用され始めている。近年、携帯電子機器の小型化、高機能化が進んだことや、電気自動車等の走行距離を向上させるためにも、これらの電源となるリチウムイオン二次電池の更なる高容量化が期待されている。
リチウムイオン二次電池は、主として、正極、負極、セパレータ、非水電解液から構成されており、一般に、正極にリチウム金属複合酸化物、負極にリチウムイオンを吸蔵放出可能な炭素材等を用い、非水電解液として常温で液体の有機溶媒にリチウム塩を溶解させた液状の電解質が用いられている。しかし、負極の炭素材の表面では、有機溶媒が分解する副反応が生じ、期待される放電容量が得られないなど特性に悪影響を及ぼす。このため、負極が有機溶媒と直接反応しないように、負極表面に被膜を形成するとともに、この被膜の状態や性質を制御することが重要な課題となる。
この負極表面被膜を形成、制御するために、電解液中に特殊な添加剤を加えることが行われている。例えば、特許文献1、2に示されるように、炭素材を含むリチウムイオン二次電池の非水電解液にエチレングリコールサルフェートを添加することで、サイクル特性が向上することが記載されている。エチレングリコールサルフェート添加により、負極活物質の表面に被膜が形成されて、負極上での副反応が抑制されたことに起因すると考えられる。
一方、リチウムイオン二次電池の安全性、酸化安定性、熱安定性などを改善する目的で、様々なリチウム塩の検討もなされている。例えば、特許文献3〜5に示されるようなLi1212−x(xは0〜5の自然数、Zは水素、塩素、臭素のいずれか)を非水電解液に加えることで、過充電保護剤として働き、安全性向上に寄与する他、85℃での保存試験において、充電容量の保持率が改善することが記述されている。
特開平10−189042号公報 特開2002−237331号公報 特開2005−158695号公報 特開2005−302727号公報 特開2009−302064号公報
しかしながら、85℃における高温保存試験を行った場合、非水電解液にエチレングリコールサルフェートを添加していても、非水溶媒の分解を抑えることができず、リチウムイオン二次電池に膨れが発生し、放電容量も大きく劣化した。同様に、Li1212−x(xは0〜5の整数、Zは水素、塩素、臭素のいずれか)を添加した場合には、放電容量の劣化は多少あったものの、エチレングリコールサルフェートを添加した場合と同程度のリチウムイオン二次電池の膨れが観察された。この膨れは、非水溶媒の分解により発生したガスに起因するものであり、非水溶媒が消費されリチウムイオン二次電池中の非水電解液が不足することから、その後のリチウムイオン二次電池の安全性や安定性を脅かす恐れがある。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、優れた初期放電容量を持ち、高温保存時に容量劣化が小さく、膨れにつながるガス発生の少ないリチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明のリチウムイオン二次電池用非水電解液は、非水溶媒と、電解質として、Li1212−x(Zは水素、塩素、臭素のいずれかであり、xは10〜12のいずれかの自然数である)を1〜15質量%含み、更に、式(1)で示すエチレングリコールサルフェート誘導体を0.5〜6質量%含むことを特徴とする。
Figure 0006031965
〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基を表す。〕
電解質であるLi1212−xと、エチレングリコールサルフェート誘導体は、それ単独では高温保存時におけるリチウムイオン二次電池の容量劣化を抑え、かつ、ガス発生による膨れを抑える効果は少ないが、同時に適量加えることで、十分な初期放電容量が得られる上、高温保存時における劣化及び膨れを抑える効果を発揮する。特に満充電状態では、正極近傍での酸化反応が活発になるが、Li1212−xとエチレングリコールサルフェート誘導体が非水溶媒や他の電解質に先立ち酸化されるため、非水溶媒や他の電解質が分解されるのを防ぎ、リチウムイオン二次電池の劣化や膨れを抑えているのではないかと考えられる。
前記Li1212−xのZは水素であることが好ましい。
Zが水素である場合には、Zが塩素または臭素である場合と比較して、リチウムイオン二次電池用非水電解液の導電率が高くなる傾向にあるため、十分な初期放電容量を得やすくなる。
前記式(1)のエチレングリコールサルフェート誘導体は、R及びRが共に水素原子であることが好ましい。
これにより、高温保存時における容量劣化をより抑えることができる。
前記電解質として、Li1212−xに加えて、LiPF及び/またはLiBFを含むことが好ましい。
そこへLiPF及び/またはLiBFを加えることにより、より非水電解液の導電率が上昇し、十分な初期放電容量を得ることが可能となる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、非水溶媒及び電解質を有する非水電解液とを備え、電解質としてLi1212−x(Zは水素、塩素、臭素のいずれかであり、xは10〜12のいずれかの自然数である)を1〜15質量%含み、式(1)で示すエチレングリコールサルフェート誘導体を0.5〜6質量%含むことを特徴とする。
Figure 0006031965
〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基のいずれかを表す。〕
前記負極は、炭素材を主成分とすることが好ましい。
本発明によれば、高温保存時において容量劣化が小さく、かつ、ガス発生の少ないリチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池を提供することができる。
リチウムイオン二次電池の模式断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明にかかるリチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池は、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
(リチウムイオン二次電池)
続いて、本実施形態に係る電極、及びリチウムイオン二次電池について図1を参照して簡単に説明する。
リチウムイオン二次電池100は、主として、発電要素30、発電要素30を密閉した状態で収容するケース50、及び発電要素30に接続された一対のリード60,62を備えている。
発電要素30は、一対の電極10、20がセパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、正極集電体12上に正極活物質層14が設けられた物である。負極20は、負極集電体22上に負極活物質層24が設けられた物である。正極活物質層14及び負極活物質層24がセパレータ18の両側にそれぞれ接触している。正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部にリチウムイオン二次電池用非水電解液(以下、「非水電解液」という。)が含有されている。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60,62が接続されており、リード60,62の端部はケース50の外部にまで延びている。
(負極)
負極20は、負極集電体22の両面に負極活物質層24を備えて構成されている。さらに、負極活物質層24は、負極活物質材料と、導電助剤と、結着剤とを含む塗料を負極集電体22に塗布することによって形成されている。
負極活物質材料は、天然黒鉛、人造黒鉛(難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等)、MCF(メソカーボンファイバ)等の炭素材から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。中でも、良好な負極容量及びサイクル特性を示すことから人造黒鉛が好ましく、電極密度向上の観点から、人造黒鉛を天然黒鉛と混合して使用することが更に好ましい。
その他、例えば、Al、Si、Sn等のリチウムと化合物を形成することのできる金属、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)など公知の負極活物質材料を炭素材と混合させて使用してもよい。
導電助剤は特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、カーボンブラックのような熱分解炭素、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成材料、炭素繊維、あるいは活性炭などの炭素材が挙げられる。また、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛などの負極活物質材料を、形状を変えて添加してもよい。
カーボンブラックとしては、特に、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が好ましく、ケッチェンブラックが特に好ましい。電子伝導性の多孔体を含有させることにより負極活物質材料の粒子と結着剤の界面に空孔を形成でき、その空孔により負極活物質層24への非水電解液の染み込みを容易にするので好ましい。
結着剤は、前記の負極活物質材料の粒子と導電助剤の粒子とを結着可能なものであれば特に限定されない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂や、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)等が挙げられる。また、この結着剤は、前記の負極活物質材料の粒子と導電助剤の粒子との結着のみならず、負極集電体22への結着に対しても寄与している。
負極集電体22は、リチウムイオン二次電池用の集電体に使用されている各種公知の金属箔を用いることができる。具体的には、銅箔を用いることが好ましい。
(正極)
正極10は、正極集電体12の両面に正極活物質層14を備えて構成されている。さらに正極活物質層14は、正極活物質材料と、導電助剤と、結着剤とを含む塗料を正極集電体12に塗布することによって形成されている。
正極活物質材料は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、ClO )とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知の電極活物質材料を使用できる。例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、一般式:LiNiCoMn(x+y+z=1)やLiNiCoAl1−x−y(0.98<a<1.2、0<x,y<1)で表される複合金属酸化物、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、FeまたはVを示す)、リチウムバナジウム化合物(LiVOPO)等の複合金属酸化物が挙げられる。
更に、正極活物質材料以外の各構成要素(導電助剤、結着剤)は、負極20で使用されるものと同様の物質を使用することができる。したがって、正極10に含まれる結着剤も、前記の正極活物質材料の粒子と導電助剤の粒子との結着のみならず、正極集電体12への結着に対しても寄与している。
正極集電体12は、リチウムイオン二次電池用の集電体に使用されている各種公知の金属箔を用いることができる。具体的には、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
(セパレータ)
セパレータ18は絶縁性の多孔体から形成されていれば、材料、製法等は特に限定されず、リチウムイオン二次電池100に用いられている公知のセパレータを使用することができる。例えば、絶縁性の多孔体としては、公知のポリオレフィン樹脂、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどを重合した結晶性の単独重合体または共重合体が挙げられる。これらの単独重合体または共重合体は、1種を単独で使用することができるが、2種以上のものを混合して用いてもよい。また、単層であっても複層であってもよい。
(非水電解液)
非水電解液は、非水溶媒と、電解質として、Li1212−x(Zは水素、塩素、臭素のいずれかであり、xは10〜12のいずれかの自然数である。)を1〜15質量%、更に、式(1)で示すエチレングリコールサルフェート誘導体を0.5〜6質量%含む。
Figure 0006031965
〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基のいずれかを表す。〕
Li1212−xとエチレングリコールサルフェート誘導体を同時に含むことによる効果発現のメカニズムははっきりとしないが、本発明者らは以下のように考えている。
Li1212−xは分解温度が400℃以上、酸化電位が4.7V以上と電解質としては極めて安定な化合物であるため、高温保存時においても、電解質がその機能を失うことによる容量劣化は小さい。また、(B1212−x2−が特に正極活物質材料の表面被膜として働くことで、他の電解質が酸化されることを防ぐ効果も持つ。ただし、負極表面における非水溶媒の還元分解を抑えることはできず、ガス発生を抑えることはできなかった。
一方、エチレングリコールサルフェート誘導体は、負極活物質材料の表面に被膜を形成し、充放電サイクルにおける非水溶媒の還元分解を抑えることができていた。しかし、満充電状態での高温保存時には、正極近傍での電解質の酸化を防ぐことができず容量劣化が大きくなり、また、非水溶媒の酸化分解も防ぐことができずにガス発生を許していた。
そこで、Li1212−xとエチレングリコールサルフェート誘導体を同時に加えることにより、Li1212−xの(B1212−x2−による正極表面被膜効果と、エチレングリコールサルフェート誘導体による負極表面被膜効果を同時に得ることができ、満充電状態での高温保存時においても、容量劣化が小さく、ガス発生による膨れのないリチウムイオン電池を実現することが可能となる。
Li1212−xは、非水電解液中に1〜15質量%含まれる。Li1212−xの含有量が1質量%未満であると、高温保存時における放電容量が大きく劣化する。一方、15質量%を越えると、非水電解液の導電率が低くなり、十分な初期放電容量を得にくくなる傾向にある。
Li1212−xの非水電解液中の含有量は、初期放電容量、85℃保存後容量、体積膨張率がいずれも改善することから、好ましくは3〜13質量%であり、更に好ましくは3〜9質量%である。
ただし、Li1212−xだけでは十分な導電率を得にくいことから、他の電解質と混合されることが多い。その場合、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)等と混合されることが多く、特に、導電性の観点から、LiBFやLiPFと混合されることが好ましい。
Li1212−xをLiBFやLiPF等のリチウム塩と混合する際、非水電解液中のリチウムイオン含有量は0.5〜2.0mol/Lに調整することが好ましい。リチウムイオン含有量が0.5mol/L以上であると、非水電解液の導電性を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすい。また、リチウムイオン含有量が2.0mol/L以内に抑えることで、非水電解液の粘度上昇を抑え、リチウムイオンの移動度を充分に確保することができ、充放電時に十分な容量が得られやすくなる。
エチレングリコールサルフェート誘導体は、非水電解液中に0.5〜6質量%含まれる。
エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量を0.5質量%以上とすることで、高温保存時における放電容量の劣化を小さくすることができ、6質量%以下とすることで、十分な初期放電容量が得られるようになる。
エチレングリコールサルフェート誘導体としては、R及びRが水素原子であるエチレングリコールサルフェートや、R及びRの一方が水素原子で他方がメチル基であるプロパン1,2−サイクリックサルフェート、R及びRの一方が水素原子で他方がエチル基であるブタン1,2−サイクリックサルフェートなどが挙げられるが、高温保存特性向上の観点からエチレングリコールサルフェートであることが好ましい。
エチレングリコールサルフェート誘導体とともに、硫黄含有化合物やエーテル化合物、ジオール化合物を含んでいてもよい。これらの化合物を微量含むことで、エチレングリコールサルフェート誘導体の被膜がより強固になり、高温保存時において容量劣化がさらに小さくなる。
硫黄含有化合物として、エチレンサルファイトや1,3−プロパンスルトン、硫酸ジメチルなどが挙げられる。エーテル化合物としては、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテルなどが挙げられる。ジオール化合物としては、エチレングリコールやプロピレングリコールなどが挙げられる。
エチレングリコールサルフェート誘導体の非水電解液中の含有量は、好ましくは1〜5質量%であり、更に好ましくは2〜5質量%である。
非水溶媒は、環状カーボネートと、低粘度溶媒と、を含有していることが好ましい。環状カーボネートは電解質であるリチウム塩の解離を促す様、誘電率が20以上であり、低粘度溶媒はリチウムイオンの移動度を改善する様、粘度が1.0cP以下である有機溶媒のことを指す。
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート及びブチレンカーボネートなどを用いることができ、中でもエチレンカーボネートを含むことが好ましい。エチレンカーボネートをプロピレンカーボネートやブチレンカーボネートと混合して使用してもよい。
また、低粘度溶媒として、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどを用いることができる。特に、高温保存特性を向上させる点から、ジエチルカーボネートを含むことが好ましい。ジエチルカーボネートを他の低粘度溶媒と混合して使用してもよい。
非水溶媒中の環状カーボネートと低粘度溶媒の割合は体積にして1:9〜1:1にすることが好ましい。
(外装体)
ケース50は、その内部に発電要素30及び非水電解液を密封できるものであれば、その材質等は問わない。
リード60,62は、アルミやニッケル等の導電材料から形成されている。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明について更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。
以下に示す手順により、実施例1〜45、比較例1〜11のリチウムイオン二次電池用非水電解液及びリチウムイオン二次電池を作製し、評価を行った。
(実施例1)
先ず、負極を作製した。負極の作製においては、負極活物質材料として人造黒鉛(90質量%)、導電助剤としてカーボンブラック(2質量%)、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(8質量%)を混合し、溶剤のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーをドクターブレード法により集電体である電解銅箔に塗布し、110℃で乾燥させた。乾燥後に圧延を行い、負極を得た。
次に、正極を作製した。正極の作製においても、正極活物質材料としてLiNi1/3Co1/3Mn1/3(90質量%)、導電助剤としてカーボンブラック(6質量%)、結着剤としてPVDF(4質量%)を混合し、NMP中に分散させ、スラリーを得た。得られたスラリーを集電体であるアルミニウム箔に塗布して乾燥させ、圧延を行い、正極を得た。
次に、非水電解液を調製した。エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートを体積比3:7で混合した溶液中に、Li1211Hを0.2mol/L(6質量%)、LiPFを0.6mol/Lの割合で添加し作製した。更に、この溶液に対して、エチレングリコールサルフェートが0.5質量%となるように加え、非水電解液を得た。
得られた負極及び正極の間にポリエチレンからなるセパレータを挟んで積層し積層体(素体)を得た。得られた積層体をアルミラミネートパックに入れ、このアルミラミネートパックに非水電解液を注入した後に真空シールし、リチウムイオン二次電池(縦:60mm、横:65mm、厚さ:3mm)を作製した。なお、リチウムイオン二次電池の積層体の大きさは縦:42mm、横:31mm、厚さ:2.4mmである。アルミラミネートパックのフィルムには、非水電解液に接触する合成樹脂製の最内部の層(変性ポリプロピレンからなる層)、アルミニウム箔からなる金属層、ポリアミドからなる層がこの順で順次積層された積層体を使用した。そして、この複合包装フィルムを2枚重ね合せてその縁部を6mm熱圧着して作製した。
(実施例2〜45及び比較例1〜11)
非水溶媒の組み合わせと、Li1212−xの種類及びその含有量と、電解質Aの種類とその含有量と、エチレングリコールサルフェート誘導体の種類とその含有量を表1〜3に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜45及び比較例1〜11のリチウムイオン二次電池を作製した。なお、Li1212−xの含有量は質量%(wt%)とmol/Lの2通りで表記した。また、表1〜3中、非水溶媒の「EC」はエチレンカーボネートを、「DEC」はジエチルカーボネートを、「PC」はプロピレンカーボネートを、「EMC」はエチルメチルカーボネートを表し、電解質Aの「LiTFS」はLiCFSO、「LiTFSI」はLiN(CFSOを表す。エチレングリコールサルフェート誘導体は「EGS誘導体」とし、「EGS」はエチレングリコールサルフェート、「PCS」はプロパン−1,2−サイクリックサルフェート、「BCS」はブタン−1,2−サイクリックサルフェートを表す。
(初期放電容量評価試験)
リチウムイオン二次電池作製後、恒温槽にて25℃に設定された環境下で初回の充電を行い、その直後に初回放電を行った。なお、充電は30mAで4.2Vまで定電流定電圧充電を行い、放電は30mAで2.5Vまで定電流放電を行った。初回放電における放電容量(mAh)の測定値は表1〜3中、「初期放電容量(mAh)」として示す。
(85℃保存試験)
初期放電容量評価後、後述する85℃保存試験前のリチウムイオン二次電池の体積評価を行ってから、該電池を25℃において4.2Vまで定電流定電圧充電を行い、満充電状態にした。そして、該電池のリード部を絶縁テープで覆い、85℃に設定した恒温槽へ投入した。その状態で放置し、48時間後に恒温槽から取り出し、放電容量を測定した。その放電容量を初期放電容量で除して100倍にした値を表1〜3中、「85℃保存後容量(%)」として示す。
(リチウムイオン二次電池の体積変化測定)
リチウムイオン二次電池の体積変化量を、アルキメデス法を用いて評価した。85℃保存試験前にリチウムイオン二次電池を水中に入れた状態で質量を測定し、試験後にも同様の測定を行った。85℃保存試験前後の質量差が水から受けた浮力の差に相当することから、水の密度を考慮することで、85℃保存試験前後の体積変化量を求めることができる。この体積変化量を、85℃保存試験前の体積で除して100倍にすることで体積膨張率(%)を求めることができる。この手法により求めた85℃保存試験による体積変化量を表1〜3中、「体積膨張率(%)」として示す。
(実施例1〜6及び比較例1,2)
まず、エチレングリコールサルフェート誘導体はエチレングリコールサルフェートに固定した上で、その量を変化させた場合の評価結果を表1に示す。なお、非水溶媒はEC/DEC=3/7、電解質であるLi1212−xはLi1211Hを選択し、その量を0.2mol/Lに、電解質AにはLiPFを選択し、その量を0.6mol/Lに固定した。
初期放電容量においては、比較例のリチウムイオン二次電池ではいずれも140mAh未満であるのに対し、エチレングリコールサルフェートの含有量が0.5〜6質量%である実施例のリチウムイオン二次電池がいずれも140mAh以上と十分な放電容量を持つことが確認できた。特に、エチレングリコールサルフェートの含有量が1〜5質量%である場合には145mAhを超え、更に、エチレングリコールサルフェートの含有量が2〜5質量%の場合には150mAhを超え、優れた初期放電容量を示した。
85℃保存試験においては、エチレングリコールサルフェートの含有量が0.5質量%未満である場合の85℃保存後容量が70%未満であるのに対し、エチレングリコールサルフェートの含有量が0.5質量%以上である場合の85℃保存後容量は、いずれも70%以上であった。特に、エチレングリコールサルフェートの含有量が1質量%以上である場合、85℃保存後容量は80%を超え、更に、エチレングリコールサルフェートの含有量が2質量%以上である場合には、85℃保存後容量は90%を超え、優れた値を示した。
85℃保存試験前後での体積変化は、エチレングリコールサルフェートの含有量が0.5質量%未満である場合の体積膨張率が3%以上であるのに対し、エチレングリコールサルフェートの含有量が0.5質量%以上である場合の体積膨張率は、いずれも3%未満であった。特に、エチレングリコールサルフェートの含有量が1質量%以上である場合、体積膨張率は1%未満であり、更に、エチレングリコールサルフェートの含有量が2質量%以上である場合には、体積膨張率は0.5%未満と、非常に小さな体積変化であった。
Figure 0006031965
(実施例4,7〜11及び比較例3,4)
次に、Li1212−xをLi1211Hとし、その量を変化させた場合の評価結果を表2に示す。なお、非水溶媒はEC/DEC=3/7、電解質AにはLiPFを選択し、その量はLi1211HとLiPFのリチウムイオン濃度を足し合わせて1mol/Lになるよう変動させた。エチレングリコールサルフェート誘導体はエチレングリコールサルフェートを選択し、その含有量は3質量で固定した。
初期放電容量においては、比較例のリチウムイオン二次電池がいずれも140mAh未満であるのに対し、Li1211Hの含有量が1〜15質量%である実施例のリチウムイオン二次電池がいずれも140mAh以上と十分な放電容量を持つことが確認できた。特に、Li1211Hの含有量が3〜13質量%である場合には145mAhを超え、更に、Li1211Hの含有量が3〜9質量%である場合では150mAhを超え、優れた初期放電容量を示した。
85℃保存試験においては、Li1211Hの含有量が1質量%未満である場合の85℃保存後容量が70%未満であるのに対し、Li1211Hの含有量が1質量%以上である場合の85℃保存後容量は、いずれも70%以上であった。特に、Li1211Hの含有量が3質量%以上である場合、85℃保存後容量が90%を超え、優れた値を示した。
85℃保存試験前後での体積変化は、Li1211Hの含有量が1質量%未満である場合の体積膨張率が5%以上であるのに対し、Li1211Hの含有量が1質量%以上である実施例の体積膨張率は、いずれも5%未満であった。特に、Li1211Hの含有量が3質量%以上である場合、体積膨張率は1%未満であり、非常に小さな体積変化であった。
Figure 0006031965
(実施例12〜45及び比較例5〜11)
非水溶媒の組み合わせと、Li1212−xの種類とその含有量、電解質Aの種類とその含有量、エチレングリコールサルフェート誘導体の種類とその含有量を表3のようにした上で、各測定を行った。
初期放電容量においては、比較例のリチウムイオン二次電池がいずれも140mAh未満であるのに対し、Li1212−xの含有量が1〜15質量%、かつ、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が0.5〜6質量%である実施例のリチウムイオン二次電池がいずれも140mAhと十分な放電容量を持つことが確認できた。特に、Li1212−xの含有量が3〜13質量%、かつ、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が1〜5質量%である場合、145mAhを超え、更に、Li1212−xの含有量が3〜9質量%、かつ、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が2〜5質量%である場合、150mAhを超え、優れた値を示した。
特に、電解質AがLiPFまたはLiBFである場合、初期放電容量が大きくなる傾向が見られた。
85℃保存試験においては、Li1212−xの含有量が1質量%未満、または、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が0.5質量%未満である場合、85℃保存後容量が70%未満であるのに対し、Li1212−xの含有量が1〜15質量%、かつ、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が0.5〜6質量%である実施例の85℃保存後容量は、いずれも70%以上であった。特に、Li1212−xの含有量が3質量%以上、かつ、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が1質量%以上である場合、85℃保存後容量が80%を超え、更に、Li1212−xの含有量が3質量%以上、かつ、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が2質量%以上である場合、85℃保存後容量が90%を超え、優れた値を示した。
また、エチレングリコールサルフェート誘導体がエチレングリコールサルフェートである場合、85℃保存後容量が上昇した。
85℃保存試験前後での体積変化は、Li1212−xの含有量が1質量%未満、または、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が0.5質量%未満である場合、体積膨張率が5%以上であるのに対し、Li1212−xの含有量が1〜15質量%、かつ、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が0.5〜6質量%である実施例の体積膨張率は、いずれも5%未満であった。特に、Li1212−xの含有量が3質量%以上、かつ、エチレングリコールサルフェート誘導体の含有量が1質量%以上である場合、体積膨張率は1%未満であり、非常に小さな体積変化であった。
Li1212−xと電解質Aのリチウムイオン濃度の合計が少ないほど、体積膨張率は小さくなる傾向が見られた。
Figure 0006031965
10 リチウムイオン二次電池、20 負極、21 負極活物質層、22 負極集電体、30 正極、31 正極活物質層、32 正極集電体、40 セパレータ

Claims (9)

  1. 非水溶媒と、
    電解質として、Li12 12−x (Zは水素、塩素、臭素のいずれかであり、xは10〜12のいずれかの自然数である。)を1〜15質量%含み、
    式(1)で示すエチレングリコールサルフェート誘導体を0.5〜6質量%含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用非水電解液。
    Figure 0006031965
    〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基のいずれかを表す。〕
  2. Li12 12−x のZは水素であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用非水電解液。
  3. 前記式(1)のエチレングリコールサルフェート誘導体は、R及びRが共に水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用非水電解液。
  4. 前記電解質として、LiPF及び/またはLiBFを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用非水電解液。
  5. 正極と、負極と、セパレータと、非水溶媒及び電解質を有する非水電解液とを備え、
    電解質としてLi12 12−x (Zは水素、塩素、臭素のいずれかであり、xは10〜12のいずれかの自然数である。)を1〜15質量%含み、
    更に、式(1)で示すエチレングリコールサルフェート誘導体を0.5〜6質量%含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
    Figure 0006031965
    〔式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子及び炭素数1〜5の炭化水素基のいずれかを表す。〕
  6. 前記電解質Li12 12−x のZは水素であることを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン二次電池。
  7. 前記式(1)のエチレングリコールサルフェート誘導体は、R及びRが共に水素原子であることを特徴とする請求項5に記載のリチウムイオン二次電池。
  8. 前記電解質として、LiPF及び/またはLiBFを含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
  9. 前記負極は、炭素材を主成分とすることを特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池。
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