JP3663897B2 - リチウム二次電池用電解液およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池のサイクル特性や電気容量、保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を提供することができる新規なリチウム二次電池用電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウム二次電池は小型電子機器などの駆動用電源として広く使用されている。リチウム二次電池は、主に正極、非水電解液および負極から構成されており、特に、LiCoO2などのリチウム複合酸化物を正極とし、炭素材料又はリチウム金属を負極としたリチウム二次電池が好適に使用されている。そして、そのリチウム二次電池用の電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が好適に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性について、さらに優れた特性を有する二次電池が求められている。負極として例えば天然黒鉛や人造黒鉛などの高結晶化した炭素材料を用いたリチウム二次電池は、炭素材料の剥離が観察され、現象の程度によって容量が不可逆となることがある。この剥離は、電解液中の溶媒が充電時に分解することにより起こるものであり、炭素材料と電解液との界面における溶媒の電気化学的還元に起因するものである。このため、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性は必ずしも満足なものではないのが現状である。
【0004】
本発明は、前記のようなリチウム二次電池用電解液に関する課題を解決し、電池のサイクル特性に優れ、さらに電気容量や充電状態での保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を構成することができるリチウム二次電池用の電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コバルト、マンガン、ニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属とリチウムとの複合酸化物からなる正極、負極およびエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種の環状カーボネート類およびジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートから選ばれる少なくとも1種の鎖状カーボネート類を含有する非水溶媒に電解質が溶解されている電解液からなるリチウム二次電池において、該電解液中に下記一般式(I)
【0006】
【化5】
【0007】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2または3のアルケニル基、アリール基、または水素原子を示す。)で表される鎖状アリルエステル誘導体および下記一般式(II)
【0008】
【化6】
【0009】
(式中、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、またはアリール基を示す。但し、R6、R7およびR8は、水素原子でもよい。)で表される鎖状アリルカーボネート誘導体からなるアリル誘導体類のうち少なくとも1種が含有されており、前記アリル誘導体類の含有量が電解液の重量に対して0.01〜20重量%であることを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【0010】
また、本発明は、前記リチウム二次電池に使用される非水溶媒に電解質が溶解されている電解液において、該電解液中に下記一般式(I)
【0011】
【化7】
【0012】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2または3のアルケニル基、アリール基、または水素原子を示す。)で表される鎖状アリルエステル誘導体および下記一般式(II)
【0013】
【化8】
【0014】
(式中、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基、またはアリール基を示す。但し、R6、R7およびR8は、水素原子でもよい。)で表される鎖状アリルカーボネート誘導体からなるアリル誘導体類のうち少なくとも1種が含有されており、前記アリル誘導体類の含有量が電解液の重量に対して0.01〜20重量%であることを特徴とするリチウム二次電池用電解液に関する。
【0015】
電解液中に含有される前記アリル誘導体類は、炭素材料表面に不働態皮膜を形成して、天然黒鉛や人造黒鉛などの活性で高結晶化した炭素材料を不働態皮膜で被覆し、電池の正常な反応を損なうことなく電解液の分解を抑制する効果を有するものと考えられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
非水溶媒に電解質が溶解されている電解液に含有されるアリル誘導体類において、前記式(I)で表される鎖状アリルエステル誘導体におけるR1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基のような炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。アルキル基はイソプロピル基、イソブチル基のような分枝アルキル基でもよい。また、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、あるいは、水素原子でもよい。
【0017】
また、前記式(II)で表される鎖状アリルカーボネート誘導体において、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基のような炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。アルキル基はイソプロピル基、イソブチル基のような分枝アルキル基でもよい。また、フェニル基、ベンジル基のような炭素数6〜12のアリール基を含有するものでもよい。さらに、R6、R7およびR8は、水素原子でもよい。
【0018】
前記式(I)で表される鎖状アリルエステル誘導体の具体例としては、例えば、酢酸アリル〔R1=メチル基、R2=R3=R4=水素原子〕、プロピオン酸アリル〔R1=エチル基、R2=R3=R4=水素原子〕、安息香酸アリル〔R1=フェニル基、R2=R3=R4=水素原子〕などが挙げられる。
【0019】
また、前記式(II)で表される鎖状アリルカーボネート誘導体の具体例としては、例えば、アリルメチルカーボネート〔R5=メチル基、R6=R7=R8=水素原子〕、アリルエチルカーボネート〔R5=エチル基、R6=R7=R8=水素原子〕、アリルベンジルカーボネート〔R5=ベンジル基、R6=R7=R8=水素原子〕などが挙げられる。
【0020】
前記アリル誘導体類において、前記式(I)で表される鎖状アリルエステル誘導体または前記式(II)で表される鎖状アリルカーボネート誘導体の含有量は、過度に多いと、電解液の電導度などが変わり電池性能が低下することがあり、また、過度に少ないと、十分な皮膜が形成されず、期待した電池特性が得られないので、電解液の重量に対して0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%の範囲が好ましい。
【0021】
本発明で使用される非水溶媒としては、高誘電率溶媒と低粘度溶媒とからなるものが好ましい。高誘電率溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)から選ばれる環状カーボネート類が使用される。これらの高誘電率溶媒は、一種類で使用してもよく、また二種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0022】
低粘度溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)から選ばれる少なくとも1種の鎖状カーボネート類が使用される。その他の低粘度溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンなどのエーテル類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、プロピオン酸メチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。これらの低粘度溶媒は一種類で使用してもよく、また二種類以上組み合わせて使用してもよい。高誘電率溶媒と低粘度溶媒とはそれぞれ任意に選択され組み合わせて使用される。なお、前記の高誘電率溶媒および低粘度溶媒は、容量比(高誘電率溶媒:低粘度溶媒)で通常1:9〜4:1、好ましくは1:4〜7:3の割合で使用される。
【0023】
本発明で使用される電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3などが挙げられる。これらの電解質は、一種類で使用してもよく、二種類以上組み合わせて使用してもよい。これら電解質は、前記の非水溶媒に通常0.1〜3M、好ましくは0.5〜1.5Mの濃度で溶解されて使用される。
【0024】
本発明の電解液は、例えば、前記の高誘電率溶媒や低粘度溶媒を混合し、これに前記の電解質を溶解し、前記式(I)で表される鎖状アリルエステル誘導体または前記式(II)で表される鎖状アリルカーボネート誘導体からなるアリル誘導体類のうち少なくとも1種を溶解することにより得られる。
【0025】
本発明の電解液は、リチウム二次電池の構成部材として使用される。二次電池を構成する電解液以外の構成部材については特に限定されず、従来使用されている種々の構成部材を使用できる。
【0026】
例えば、正極材料(正極活物質)としてはコバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種類の金属とリチウムとの複合金属酸化物が使用される。このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2などが挙げられる。
【0027】
正極は、前記の正極材料をアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して正極合剤とした後、この正極材料を集電体としてのアルミニウムやステンレス製の箔やラス板に圧延して、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製される。
【0028】
負極(負極活物質)としては、リチウム金属やリチウム合金、およびリチウムを吸蔵・放出可能な黒鉛型結晶構造を有する炭素材料〔熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類(人造黒鉛、天然黒鉛など)、ガラス状炭素類、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維、活性炭〕や複合スズ酸化物などの物質が使用される。特に、格子面(002)の面間隔(d002)が3.35〜3.40ナである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが好ましい。なお、炭素材料のような粉末材料はエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して負極合剤として使用される。
【0029】
リチウム二次電池の構造は特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、さらに、正極、負極およびロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池などが一例として挙げられる。なお、セパレータとしては公知のポリオレフィンの微多孔膜、織布、不織布などが使用される。
【0030】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例1
〔電解液の調製〕PC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解して電解液を調製した後、さらにアリル誘導体(添加剤)として、アリルメチルカーボネート〔R 5 =メチル基、R 6 =R 7 =R 8 =水素原子〕を電解液に対して1.0重量%となるように加えた。
【0031】
〔リチウム二次電池の作製および電池特性の測定〕LiCoO2(正極活物質)を80重量%、アセチレンブラック(導電剤)を10重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これを圧縮成型して正極を調製した。天然黒鉛(負極活物質)を90重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これを圧縮成型して負極を調製した。そして、ポリプロピレン微多孔性フィルムのセパレータを用い、上記の電解液を注入してコイン電池(直径20mm、厚さ3.2mm)を作製した。このコイン電池を用いて、室温(20℃)下、0.8mAの定電流定電圧で、終止電圧4.2Vまで充電し、次に0.8mAの定電流下、終止電圧2.7Vまで放電し、この充放電を繰り返した。初期充放電容量は、EC-DMC(1/2)を電解液として用いた場合(比較例2)とほぼ同等であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、初期放電容量を100%としたときの放電容量維持率は78.7 %であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0032】
比較例1
PC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解した。このときアリル誘導体類は全く添加しなかった。この電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定したところ、初回充電時にPCの分解が起こり全く放電できなかった。初回充電後の電池を解体して観察した結果、黒鉛負極に剥離が認められた。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0033】
実施例2
EC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解して電解液を調製した後、さらにアリル誘導体(添加剤)として、酢酸アリル〔R1=メチル基、R2=R3=R4=水素原子〕を電解液に対して1.0重量%となるように加えた。この電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定したところ、EC-DMC(1/2)のみを電解液として用いた場合(比較例2)とほぼ同等であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、初期放電容量を100%としたときの放電容量維持率は88.4%であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0034】
実施例3
添加剤として、アリルメチルカーボネート〔R5=メチル基、R6=R7=R8=水素原子〕を電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例2と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は90.1%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0035】
比較例2
EC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解した。このときアリル誘導体類は全く添加しなかった。この電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定した。初期放電容量に対し、50サイクル後の放電容量維持率は83.8%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
なお、本発明は記載の実施例に限定されず、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせが可能である。特に、上記実施例の溶媒の組み合わせは限定されるものではない。更には、上記実施例はコイン電池に関するものであるが、本発明は円筒形、角柱形の電池にも適用される。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、電池のサイクル特性、電気容量、保存特性などの電池特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
Claims (7)
- コバルト、マンガン、ニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属とリチウムとの複合酸化物からなる正極、負極およびエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートから選ばれる少なくとも1種の環状カーボネート類およびジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートから選ばれる少なくとも1種の鎖状カーボネート類を含有する非水溶媒に電解質が溶解されている電解液からなるリチウム二次電池において、該電解液中に下記一般式(I)
- 前記負極がリチウムを吸蔵・放出可能な黒鉛型結晶構造を有する炭素材料である請求項1記載のリチウム二次電池。
- 前記アリル誘導体類が酢酸アリル、プロピオン酸アリル、安息香酸アリル、アリルメチルカーボネート、アリルエチルカーボネート、アリルベンジルカーボネートから選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載のリチウム二次電池。
- 前記アリル誘導体類の含有量が電解液の重量に対して0.1〜10重量%である請求項1〜3のいずれか1項記載のリチウム二次電池。
- 前記請求項1記載のリチウム二次電池に使用される非水溶媒に電解質が溶解されている電解液において、該電解液中に下記一般式(I)
- 前記アリル誘導体類が酢酸アリル、プロピオン酸アリル、安息香酸アリル、アリルメチルカーボネート、アリルエチルカーボネート、アリルベンジルカーボネートから選ばれる少なくとも1種である請求項5記載のリチウム二次電池用電解液。
- 前記アリル誘導体類の含有量が電解液の重量に対して0.1〜10重量%である請求項5又は6記載のリチウム二次電池用電解液。
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