JP3945004B2 - リチウム二次電池用電解液およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池のサイクル特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる新規なリチウム二次電池用電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウム二次電池は小型電子機器などの駆動用電源として広く使用されている。リチウム二次電池は、主に正極、非水電解液および負極から構成されており、特に、LiCoO2 などのリチウム複合酸化物を正極とし、炭素材料又はリチウム金属を負極としたリチウム二次電池が好適に使用されている。そして、そのリチウム二次電池用の電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が好適に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性について、さらに優れた特性を有する二次電池が求められている。
負極として例えば天然黒鉛や人造黒鉛などの高結晶化した炭素材料を用いたリチウム二次電池は、炭素材料の剥離が観察され、現象の程度によって容量が不可逆となることがある。この剥離は、電解液中の溶媒が充電時に分解することにより起こるものであり、炭素材料と電解液との界面における溶媒の電気化学的還元に起因するものである。なかでも融点が低くて誘電率の高いPCは、低温においても高い電気伝導を有するが、黒鉛負極を用いる場合にはPCの分解が起こってリチウム二次電池用には使用できないという問題があった。ECも充放電を繰り返す間に一部分解が起こり、電池性能の低下が起こる。このため、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性は必ずしも満足なものではないのが現状である。
【0004】
本発明は、前記のようなリチウム二次電池用電解液に関する課題を解決し、電池のサイクル特性に優れたリチウム二次電池を構成することができるリチウム二次電池用の電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、正極、負極および非水溶媒に電解質が溶解されている電解液からなるリチウム二次電池において、該電解液中に下記一般式(I)
【0006】
【化3】
【0007】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を示す。ただし、R1とR2とがメチレン基を介して連結された炭素数3〜6のシクロアルキル基でもよい。R2は水素原子でもよい。R3は炭素数1〜12のアルキル基を示す。)で表される炭酸エステル誘導体が電解液の重量に対して0.01〜20重量%含有されているリチウム二次電池用電解液を用いることを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【0008】
また、本発明は、非水溶媒に電解質が溶解されている電解液において、該電解液として下記一般式(I)
【0009】
【化4】
【0010】
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を示す。ただし、R1とR2とがメチレン基を介して連結された炭素数3〜6のシクロアルキル基でもよい。R2は水素原子でもよい。R3は炭素数1〜12のアルキル基を示す。)で表される炭酸エステル誘導体が電解液の重量に対して0.01〜20重量%含有されていることを特徴とするリチウム二次電池用電解液に関する。電解液中に含有される前記化合物は、炭素材料表面での不働態皮膜形成に寄与して天然黒鉛や人造黒鉛などの活性で高結晶化した炭素材料を不働態皮膜で被覆し、電池の正常な反応を損なうことなく電解液の分解を抑制する効果を有するものと考えられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
非水溶媒に電解質が溶解されている電解液に含有される前記式(I)で表される炭酸エステル誘導体において、R1 およびR 2 はそれぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基またはヘキシル基のような炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。アルキル基はイソプロピル基、イソブチル基のような分枝アルキル基でもよい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のようにR1およびR2がメチレン基で連結されて形成された炭素数3〜6のシクロアルキル基でもよい。さらに、フェニル基、ベンジル基のような炭素数6〜12のアリール基を含有するものでもよい。R2は水素原子でもよい。R 3 は炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。
【0012】
前記式(I)で表される炭酸エステル誘導体の具体例としては、例えば2−ブタノンオキシムメチルカーボネート〔R1 =メチル基、R2 =エチル基、R3 =メチル基〕、2−ブタノンオキシムエチルカーボネート〔R1 =メチル基、R2 =エチル基、R3 =エチル基〕、2−プロパノンオキシムエチルカーボネート〔R1 =メチル基、R2 =メチル基、R3 =エチル基〕、2−ブタノンオキシムフェニルカーボネート〔R1 =メチル基、R2 =エチル基、R3 =フェニル基〕、2−ブタノンオキシムベンジルカーボネート〔R1 =メチル基、R2 =エチル基、R3 =ベンジル基〕、ベンズアルドオキシムメチルカーボネート〔R1 =フェニル基、R2 =水素原子、R3 =メチル基〕、アセトフェノンオキシムメチルカーボネート〔R1 =フェニル基、R2 =メチル基、R3 =メチル基〕、ペンタンアルドオキシムメチルカーボネート〔R1 =n−ブチル基、R2 =水素原子、R3 =メチル基〕などが挙げられる。また、R1 およびR2 がメチレン基で連結されて形成された炭素数3〜6のシクロアルキル基の具体例としては、以下のようなシクロアルカノンオキシムメチルカーボネート類が挙げられる。
【0013】
【化5】
【0014】
本発明における炭酸エステル誘導体としては、前記具体例に限定されず、R1 、R2 およびR3 が独立して炭素数1〜12のアルキル基であればよく、任意に選択された炭酸エステル誘導体が挙げられる。前記式(I)で表される炭酸エステル誘導体の含有量は、過度に多いと、電解液の電導度などが変わり電池性能が低下することがあり、また、過度に少ないと、十分は皮膜が形成されず、期待した電池性能が得られないので、電解液の重量に対して0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%の範囲が好ましい。
【0015】
前記式(I)で表される炭酸エステル誘導体は、次の(1)、(2)のような化学反応式により合成される。
【0016】
【化6】
【0017】
【化7】
【0018】
本発明で使用される非水溶媒としては、高誘電率溶媒と低粘度溶媒とからなるものが好ましい。
高誘電率溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状カーボネート類が好適に挙げられる。これらの高誘電率溶媒は、一種類で使用してもよく、また二種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0019】
低粘度溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンなどのエーテル類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、プロピオン酸メチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。これらの低粘度溶媒は一種類で使用してもよく、また二種類以上組み合わせて使用してもよい。
高誘電率溶媒と低粘度溶媒とはそれぞれ任意に選択され組み合わせて使用される。なお、前記の高誘電率溶媒および低粘度溶媒は、容量比(高誘電率溶媒:低粘度溶媒)で通常1:9〜4:1、好ましくは1:4〜7:3の割合で使用される。
【0020】
本発明で使用される電解質としては、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiN(SO2 CF3 )2 、LiN(SO2 C2 F5 )2 、LiC(SO2 CF3 )3 などが挙げられる。これらの電解質は、一種類で使用してもよく、二種類以上組み合わせて使用してもよい。これら電解質は、前記の非水溶媒に通常0.1〜3M、好ましくは0.5〜1.5Mの濃度で溶解されて使用される。
【0021】
本発明の電解液は、例えば、前記の高誘電率溶媒や低粘度溶媒を混合し、これに前記の電解質を溶解し、前記式(I)で表される炭酸エステル誘導体を溶解することにより得られる。
【0022】
本発明の電解液は、リチウム二次電池の構成部材として使用される。二次電池を構成する電解液以外の構成部材については特に限定されず、従来使用されている種々の構成部材を使用できる。
【0023】
例えば、正極材料(正極活物質)としてはコバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種類の金属とリチウムとの複合金属酸化物が使用される。このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2 、LiMn2 O4 、LiNiO2 などが挙げられる。
【0024】
正極は、前記の正極材料をアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して正極合剤とした後、この正極材料を集電体としてのアルミニウムやステンレス製の箔やラス板に圧延して、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製される。
【0025】
負極(負極活物質)としては、リチウム金属やリチウム合金、およびリチウムを吸蔵・放出可能な黒鉛型結晶構造を有する炭素材料〔熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類(人造黒鉛、天然黒鉛など)、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維、〕や複合スズ酸化物などの物質が使用される。特に、格子面(002)の面間隔(d002 )が3.35〜3.40Åである黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが好ましい。なお、炭素材料のような粉末材料はエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して負極合剤として使用される。
【0026】
リチウム二次電池の構造は特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、さらに、正極、負極およびロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池などが一例として挙げられる。
なお、セパレータとしては公知のポリオレフィンの微多孔膜、織布、不織布などが使用される。
【0027】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、これらは、本発明を何ら限定するものではない。以下の実施例に用いたオキシムアルキルカーボネートは全て含オキシム化合物とクロロギ酸エステルの反応によって合成して調製した。
【0028】
実施例1
〔電解液の調製〕
PC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6 を1Mの濃度になるように溶解して電解液を調製した後、さらに炭酸エステル誘導体(添加剤)として、2−ブタノンオキシムメチルカーボネートを電解液に対して1重量%となるように加えた。
【0029】
〔リチウム二次電池の作製および電池特性の測定〕
LiCoO2 (正極活物質)を80重量%、アセチレンブラック(導電剤)を10重量%、ポリテトラフルオロエチレン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これを圧縮成型して正極を調製した。天然黒鉛(負極活物質)を90重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これを圧縮成型して負極を調製した。そして、ポリプロピレン微多孔性フィルムのセパレータを用い、上記の電解液を注入してコイン電池(直径20mm、厚さ3.2mm)を作製した。
このコイン電池を用いて、室温(20℃)下、0.8mAの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで充電し、次に0.8mAの定電流下、終止電圧2.7Vまで放電し、この充放電を繰り返した。初期充放電容量は、EC−DMC(1/2)を電解液として用いた場合(比較例1)とほぼ同等であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、初期放電容量を100%としたときの放電容量維持率は85.4%であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0030】
実施例2
2−ブタノンオキシムメチルカーボネートの添加量を電解液に対して0.1重量%となるようにしたほかは実施例1と同様にして電解液を調製してコイン電池を作製し、50回サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は82.1%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0031】
比較例1
EC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6 を1Mの濃度になるように溶解して電解液を作製した。この時、炭酸エステル誘導体は全く添加しなかった。この電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定した。初期充電容量に対し、50回サイクル後の放電容量維持率は83.8%であった。しかしながら、電解液に融点が高いECを使用しているために低温特性に難点を有していた。コイン電池の作製条件および電池特性を表3に示す。
【0032】
比較例2
PC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6 を1Mの濃度になるように溶解した。この時、炭酸エステル誘導体は全く添加しなかった。この電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定したところ、初回充電時にPCの分解が起こり、全く放電できなかった。コイン電池の作製条件および電池特性を表3に示す。
【0033】
実施例3
2−ブタノンオキシムメチルカーボネートの添加量を電解液に対して5.0重量%となるようにしたほかは実施例1と同様にして電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は84.8%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0034】
実施例4
炭酸エステル誘導体として、2−プロパノンオキシムエチルカーボネート〔R1 =メチル基、R2 =メチル基、R3 =エチル基〕を電解液に対して3.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は84.5%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0035】
実施例5
炭酸エステル誘導体として、2−ブタノンオキシムエチルカーボネート〔R1 =メチル基、R2 =エチル基、R3 =エチル基〕を電解液に対して3.0重量%使用したほかは実施例3と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は85.0%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0036】
実施例6
炭酸エステル誘導体として、シクロペンタノンオキシムエチルカーボネート
【0037】
【化8】
【0038】
を電解液に対して3.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は83.9%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0039】
実施例7
炭酸エステル誘導体として、ベンズアルドオキシムメチルカーボネート〔R1 =フェニル基、R2 =水素原子、R3 =メチル基〕を電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は86.3%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表2に示す。
【0040】
実施例8〜実施例13
実施例1の添加剤および電解液組成を表2および表3記載のように代えた以外は実施例1と同様にしてコイン電池を作製し、電池特性を測定した。その電気特性の測定結果を表2および表3に示す。
【0041】
実施例14
正極活物質としてLiCoO2 に代えてLiMn2 O4 を使用した以外は実施例1と同様にしてコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は91.1%であった。測定結果を表3に示す。
【0042】
実施例15
負極活物質を天然黒鉛から人造黒鉛〔大阪ガスケミカル(株)製 MCMB〕に代えた以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製して充放電試験を行った。50サイクルでの放電容量維持率を表3に示す。
【0043】
実施例16〜実施例18
実施例1の添加剤の種類と添加量、および電解液組成を表4記載のように代えた以外は実施例1と同様にしてコイン電池を作製し、電池特性を測定した。その電気特性の測定結果を表4に示す。
【0044】
実施例19
正極活物質としてLiCoO2 に代えてLiMn2 O4 を使用した以外は実施例16と同様にしてコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は92.2%であった。測定結果を表4に示す。
【0045】
実施例20
負極活物質を天然黒鉛から人造黒鉛〔大阪ガスケミカル(株)製 MCMB〕に代え、添加剤を表4記載のように代えた以外は実施例17と同様にしてリチウム二次電池を作製して充放電試験を行ったところ、放電容量維持率は90.5%であった。測定結果を表4に示す。
【0046】
なお、本発明は記載の実施例に限定されず、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせが可能である。特に、上記実施例の溶媒の組み合わせは限定されるものではない。更には、上記実施例はコイン電池に関するものであるが、本発明は円筒型、角型の電池にも適用される。
【0047】
【発明の効果】
本発明によれば、電池のサイクル特性に優れ、しかも低温特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
Claims (3)
- 電解液中に前記一般式(I)で表される炭酸エステル誘導体が電解液の重量に対して0.1〜10重量%含有されていることを特徴とするリチウム二次電池。
- 請求項1に記載のリチウム二次電池用の電解液。
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