JP4042082B2 - 非水電解液およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池のサイクル特性や電気容量、保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を提供することができる非水電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウム二次電池は小型電子機器などの駆動用電源として広く使用されている。リチウム二次電池は、主に正極、非水電解液及び負極から構成されており、特に、LiCoO2などのリチウム複合酸化物を正極とし、炭素材料又はリチウム金属を負極としたリチウム二次電池が好適に使用されている。そして、そのリチウム二次電池用の非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が好適に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性について、さらに優れた特性を有する二次電池が求められている。
正極として、例えばLiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2などを用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の溶媒が充電時に局部的に一部酸化分解することにより、該分解物が電池の望ましい電気化学的反応を阻害するために電池性能の低下を生じる。これは正極材料と非水電解液との界面における溶媒の電気化学的酸化に起因するものと思われる。
また、負極として例えば天然黒鉛や人造黒鉛などの高結晶化した炭素材料を用いたリチウム二次電池は、非水電解液中の溶媒が充電時に負極表面で還元分解し、非水電解液溶媒として一般に広く使用されているECにおいても充放電を繰り返す間に一部還元分解が起こり、電池性能の低下が起こる。
このため、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性は必ずしも満足なものではないのが現状である。
【0004】
本発明は、前記のようなリチウム二次電池用非水電解液に関する課題を解決し、電池のサイクル特性に優れ、さらに電気容量や充電状態での保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を構成することができるリチウム二次電池用の非水電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、非水溶媒が環状カーボネートと鎖状カーボネートとが1:9〜4:1の容量比にて組み合わされてなる非水溶媒であって、該非水電解液中に下記一般式(I)
R1−S−S−R2 (I)
(式中、R1、R2はそれぞれ独立して、ベンジル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。)で表されるジスルフィド誘導体が0.001〜2重量%含有されていることを特徴とする黒鉛型結晶構造を有する炭素材料からなる負極を備えたリチウム二次電池用の非水電解液を提供する。
また、本発明は、正極、負極および非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池において、負極が黒鉛型結晶構造を有する炭素材料からなる負極であって、非水溶媒が環状カーボネートと鎖状カーボネートとが1:9〜4:1の容量比にて組み合わされてなる非水溶媒であり、該非水電解液中に下記一般式(I)
R1−S−S−R2 (I)
(式中、R1、R2はそれぞれ独立して、ベンジル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。)で表されるジスルフィド誘導体が0.001〜2重量%含有されていて、50サイクル放電容量維持率が89.3%以上であることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【0006】
本発明の非水電解液は、リチウム二次電池の構成部材として使用される。二次電池を構成する非水電解液以外の構成部材については特に限定されず、従来使用されている種々の構成部材を使用できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液に含有される前記一般式(I)で表されるジスルフィド誘導体において、R1、R2はそれぞれ独立して、ベンジル基、トリル基、ピリジル基またはピリミジル基のような複素環の置換基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基のような置換基である。
【0008】
前記一般式(I)で表されるジスルフィド誘導体の具体例としては、例えば、ジベンジルジスルフィド、ジ−p−トリルジスルフィド、2,2’−ジピリジルジスルフィド、5,5’−ジピリジルジスルフィド、2,2’−ジピリミジルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ−iso−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィドなどが挙げられる。
【0009】
非水電解液中に含有される前記一般式(I)で表されるジスルフィド誘導体の含有量は、過度に多いと電池性能が低下することがあり、また、過度に少ないと期待した十分な電池性能が得られない。したがって、その含有量は非水電解液の重量に対して0.001〜2重量%、特に0.01〜0.5重量%の範囲がサイクル特性が向上するので好ましい。
【0010】
本発明で使用される非水溶媒としては、環状カーボネートと鎖状カーボネートとからなるものが好ましい。
環状カーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが好適に挙げられる。これらの環状カーボネートは、一種類で使用してもよく、また二種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0011】
鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などが挙げられる。これらの鎖状カーボネートは一種類で使用してもよく、また二種類以上組み合わせて使用してもよい。
環状カーボネートと鎖状カーボネートとはそれぞれ任意に選択され組み合わせて使用される。なお、環状カーボネートおよび鎖状カーボネートは、容量比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)で通常1:9〜4:1、好ましくは1:4〜7:3の割合で使用される。
【0012】
本発明で使用される電解質としては、例えば、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3などが挙げられる。これらの電解質は、一種類で使用してもよく、二種類以上組み合わせて使用してもよい。これら電解質は、前記の非水溶媒に通常0.1〜3M、好ましくは0.5〜1.5Mの濃度で溶解されて使用される。
【0013】
本発明の非水電解液は、例えば、前記の環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合し、これに前記の電解質を溶解し、前記一般式(I)で表されるジスルフィド誘導体を溶解することにより得られる。
【0014】
例えば、正極活物質としてはコバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも一種類の金属とリチウムとの複合金属酸化物が使用される。このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2などが挙げられる。
【0015】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤および溶剤と混練して正極合剤とした後、この正極材料を集電体としてのアルミニウム箔やステンレス製のラス板に塗布して、乾燥、加圧成型後、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製される。
【0016】
負極活物質としては、格子面(002)の面間隔(d002)が3.35〜3.40Å(オングストローム)である黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが好ましい。なお、粉末材料はエチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して負極合剤として使用される。
【0017】
リチウム二次電池の構造は特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、さらに、正極、負極およびロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池などが一例として挙げられる。なお、セパレータとしては公知のポリオレフィンの微多孔膜、織布、不織布などが使用される。
【0018】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
実施例1
〔非水電解液の調製〕
EC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解して非水電解液を調製した後、さらにジスルフィド誘導体(添加剤)としてジ−p−トリルジスルフィド[R1=R2=p−トリル基]を非水電解液に対して0.1重量%となるように加えた。
【0019】
〔リチウム二次電池の作製および電池特性の測定〕
LiCoO2(正極活物質)を80重量%、アセチレンブラック(導電剤)を10重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン溶剤を加えて混合したものをアルミニウム箔上に塗布し、乾燥、加圧成型、加熱処理して正極を調製した。天然黒鉛(負極活物質)を90重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドン溶剤を加え、混合したものを銅箔上に塗布し、乾燥、加圧成型、加熱処理して負極を調製した。そして、ポリプロピレン微多孔性フィルムのセパレータを用い、上記の非水電解液を注入させてコイン電池(直径20mm、厚さ3.2mm)を作製した。
このコイン電池を用いて、室温(20℃)下、0.8mAの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで5時間充電し、次に0.8mAの定電流下、終止電圧2.7Vまで放電し、この充放電を繰り返した。初期充放電容量は、EC−DMC(1/2)を非水電解液として用いた場合(比較例1)とほぼ同等であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、初期放電容量を100%としたときの放電容量維持率は92.4%であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0020】
実施例2
添加剤として、ジ−n−ブチルジスルフィド[R1=R2=n−ブチル基]を非水電解液に対して0.1重量%使用したほかは実施例1と同様に非水電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は92.1%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0021】
実施例3
添加剤として、2,2’−ジピリジルジスルフィド[R1=R2=2−ピリジル基]を非水電解液に対して0.1重量%使用したほかは実施例1と同様に非水電解液を調製してコイン電池を作製し、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は89.3%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0022】
比較例1
EC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解した。このときジスルフィド誘導体は全く添加しなかった。この非水電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定した。初期放電容量に対し、50サイクル後の放電容量維持率は83.8%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
なお、本発明は記載の実施例に限定されず、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせが可能である。特に、上記実施例の溶媒の組み合わせは限定されるものではない。更には、上記実施例はコイン電池に関するものであるが、本発明は円筒形、角柱形の電池にも適用される。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、電池のサイクル特性、電気容量、保存特性などの電池特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
Claims (4)
- 非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液において、非水溶媒が環状カーボネートと鎖状カーボネートとが1:9〜4:1の容量比にて組み合わされてなる非水溶媒であって、該非水電解液中に下記一般式(I)
R1−S−S−R2 (I)
(式中、R1、R2はそれぞれ独立して、ベンジル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。)で表されるジスルフィド誘導体が0.001〜2重量%含有されていることを特徴とする黒鉛型結晶構造を有する炭素材料からなる負極を備えたリチウム二次電池用の非水電解液。 - 非水電解液中にジスルフィド誘導体が0.01〜0.5重量%含有されていることを特徴とする請求項1記載の非水電解液。
- 正極、負極および非水溶媒に電解質が溶解されている非水電解液からなるリチウム二次電池において、負極が黒鉛型結晶構造を有する炭素材料からなる負極であって、非水溶媒が環状カーボネートと鎖状カーボネートとが1:9〜4:1の容量比にて組み合わされてなる非水溶媒であり、該非水電解液中に下記一般式(I)
R1−S−S−R2 (I)
(式中、R1、R2はそれぞれ独立して、ベンジル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数3〜6のシクロアルキル基を示す。)で表されるジスルフィド誘導体が0.001〜2重量%含有されていて、50サイクル放電容量維持率が89.3%以上であることを特徴とするリチウム二次電池。 - 非水電解液中にジスルフィド誘導体が0.01〜0.5重量%含有されていることを特徴とする請求項3記載のリチウム二次電池。
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