JP3951486B2 - リチウム二次電池用電解液およびそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電池のサイクル特性や電気容量、保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を提供することができる新規なリチウム二次電池用電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、リチウム二次電池は小型電子機器などの駆動用電源として広く使用されている。リチウム二次電池は、主に正極、非水電解液および負極から構成されており、特に、LiCoO2などのリチウム複合酸化物を正極とし、炭素材料又はリチウム金属を負極としたリチウム二次電池が好適に使用されている。そして、そのリチウム二次電池用の電解液としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート類が好適に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性について、さらに優れた特性を有する二次電池が求められている。
正極活物質として、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2などを用いたリチウム二次電池は、充電時に非水電解液中の溶媒が局部的に一部酸化分解し、該分解物が電池の望ましい電気化学的反応を阻害するために電池性能の低下を生じる。これは、正極材料と非水電解液との界面における溶媒の電気化学的酸化に起因するものと思われる。
また、負極活物質として例えば天然黒鉛や人造黒鉛などの高結晶化した炭素材料を用いたリチウム二次電池は、炭素負極材料の剥離が観察され、現象の程度によって容量が不可逆となることがある。この剥離は、電解液中の溶媒が充電時に分解することにより起こるものであり、炭素負極材料と電解液との界面における溶媒の電気化学的還元に起因するものである。中でも、融点が低くて誘電率の高いPCは低温においても高い電気伝導を有するが、黒鉛負極を用いる場合にはPCの分解が起こって、リチウム二次電池用には使用できないという問題点があった。また、ECも充放電を繰り返す間に一部分解が起こり、電池性能の低下が起こる。このため、電池のサイクル特性および電気容量などの電池特性は必ずしも満足なものではないのが現状である。
【0004】
本発明は、前記のようなリチウム二次電池用電解液に関する課題を解決し、電池のサイクル特性に優れ、さらに電気容量や充電状態での保存特性などの電池特性にも優れたリチウム二次電池を構成することができるリチウム二次電池用の電解液、およびそれを用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、非水溶媒に電解質が溶解されている電解液において、該電解液中に下記一般式(I)、(II)、(III)
【0006】
【化7】
【0007】
【化8】
【0008】
【化9】
【0009】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、アリール基、または水素原子を示す。式中、Y1、Y2およびY3において、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、アリール基を示す。ただし、nは1または2の整数を示す。)で表されるアルキン誘導体のうち少なくとも1種が含有されていることを特徴とするリチウム二次電池用電解液に関する。
【0010】
また、本発明は、正極、負極および非水溶媒に電解質が溶解されている電解液からなるリチウム二次電池において、該電解液中に下記一般式(I)、(II)、(III)
【0011】
【化10】
【0012】
【化11】
【0013】
【化12】
【0014】
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、アリール基、または水素原子を示す。式中、Y1、Y2およびY3において、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、アリール基を示す。ただし、nは1または2の整数を示す。)で表されるアルキン誘導体のうち少なくとも1種が含有されていることを特徴とするリチウム二次電池に関する。
【0015】
電解液中に含有される前記アルキン誘導体類は、充電時に炭素負極表面で、電解液中の有機溶媒より先に還元分解して、該分解物の一部は、天然黒鉛や人造黒鉛などの活性で高結晶化した炭素負極表面に不働態皮膜を形成することにより、電解液中の有機溶媒の還元分解を未然に防ぐと推定される。
さらに、該分解物の一部は、正極材料表面の電位が過度に高くなった微少な過電圧部分において、電解液中の有機溶媒より先に酸化分解して、電解液中の有機溶媒の酸化分解を未然に防ぐと推定される。
これにより、電池の正常な反応を損なうことなく電解液の分解を抑制する効果を有するものと考えられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
非水溶媒に電解質が溶解されている電解液に含有されるアルキン誘導体類において、前記一般式(I)、(II)、(III)で表されるアルキン誘導体におけるR1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。アルキル基はイソプロピル基、イソブチル基のような分枝アルキル基でもよい。また、シクロプロピル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜6のシクロアルキル基でもよい。また、フェニル基、ベンジル基、p−トリル基のような炭素数1〜12のアリール基を含有するものでもよい。さらに、水素原子でもよい。
【0017】
また、前記一般式(I)、(II)、(III)で表されるアルキン誘導体におけるY1、Y2およびY3において、R5、R6およびR7は、それぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基のような炭素数1〜12のアルキル基が好ましい。アルキル基はイソプロピル基、イソブチル基のような分枝アルキル基でもよい。また、シクロプロピル基、シクロヘキシル基のような炭素数3〜6のシクロアルキル基でもよい。また、フェニル基、ベンジル基、p−トリル基のような炭素数1〜12のアリール基を含有するものでもよい。ただし、nは1または2の整数を示す。
【0018】
前記一般式(I)で表されるアルキン誘導体の具体例としては、例えば、2−ペンチン〔R1=メチル基、R2=エチル基〕、1−ヘキシン〔R1=水素原子、R2=ブチル基〕、2−ヘキシン〔R1=メチル基、R2=プロピル基〕、3−ヘキシン〔R1=R2=エチル基〕、1−ヘプチン〔R1=水素原子、R2=ペンチル基〕、1−オクチン〔R1=水素原子、R2=ヘキシル基〕、2−オクチン〔R1=メチル基、R2=ペンチル基〕、4−オクチン〔R1=R2=プロピル基〕、1−デシン〔R1=水素原子、R2=オクチル基〕、1−ドデシン〔R1=水素原子、R2=デシル基〕、フェニルアセチレン〔R1=フェニル基、R2=水素原子〕、1−フェニル−1−プロピン〔R1=フェニル基、R2=メチル基〕、1−フェニル−1−ブチン〔R1=フェニル基、R2=エチル基〕、1−フェニル−1−ペンチン〔R1=フェニル基、R2=プロピル基〕、1−フェニル−1−ヘキシン〔R1=フェニル基、R2=ブチル基〕、ジフェニルアセチレン〔R1=R2=フェニル基〕、4−エチニルトルエン〔R1=p−トリル基、R2=水素原子〕、ジシクロヘキシルアセチレン〔R1=R2=シクロヘキシル基〕、などが挙げられる。ただし、本発明はこれらの化合物に何ら限定されるものではない。
【0019】
また、前記一般式(II)で表されるアルキン誘導体の具体例としては、例えば、Y1=−COOR5の場合、2−プロピニルメチルカーボネート〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=メチル基、n=1〕、2−プロピニルエチルカーボネート〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=エチル基、n=1〕、2−プロピニルプロピルカーボネート〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=プロピル基、n=1〕、2−プロピニルブチルカーボネート〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=ブチル基、n=1〕、2−プロピニルフェニルカーボネート〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=フェニル基、n=1〕、2−プロピニルシクロヘキシルカーボネート〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=シクロヘキシル基、n=1〕、2−ブチニルメチルカーボネート〔R3=メチル基、R4=水素原子、R5=メチル基、n=1〕、3−ブチニルメチルカーボネート〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=メチル基、n=2〕、2−ペンチニルメチルカーボネート〔R3=エチル基、R4=水素原子、R5=メチル基、n=1〕、1−メチル−2−ブチニルメチルカーボネート〔R3=メチル基、R4=メチル基、R5=メチル基、n=1〕、などが挙げられる。
Y1=−COR5の場合、酢酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=メチル基、n=1〕、プロピオン酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=エチル基、n=1〕、酪酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=プロピル基、n=1〕、安息香酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=フェニル基、n=1〕、シクロヘキシルカルボン酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=シクロヘキシル基、n=1〕、酢酸2−ブチニル〔R3=メチル基、R4=水素原子、R5=メチル基、n=1〕、酢酸3−ブチニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=メチル基、n=2〕、酢酸2−ペンチニル〔R3=エチル基、R4=水素原子、R5=メチル基、n=1〕、酢酸1−メチル−2−ブチニル〔R3=メチル基、R4=メチル基、R5=メチル基、n=1〕などが挙げられる。
Y1=−SO2R5の場合、メタンスルホン酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=メチル基、n=1〕、エタンスルホン酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=エチル基、n=1〕、プロパンスルホン酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=プロピル基、n=1〕、p−トルエンスルホン酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=p−トリル基、n=1〕、シクロヘキシルスルホン酸2−プロピニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=シクロヘキシル基、n=1〕、メタンスルホン酸2−ブチニル〔R3=メチル基、R4=水素原子、R5=メチル基、n=1〕、メタンスルホン酸3−ブチニル〔R3=水素原子、R4=水素原子、R5=メチル基、n=2〕、メタンスルホン酸2−ペンチニル〔R3=エチル基、R4=水素原子、R5=メチル基、n=1〕、メタンスルホン酸1−メチル−2−ブチニル〔R3=メチル基、R4=メチル基、R5=メチル基、n=1〕などが挙げられる。ただし、本発明はこれらの化合物に何ら限定されるものではない。
【0020】
また、前記一般式(III)で表されるアルキン誘導体の具体例としては、例えば、Y2=−COOR6および/またはY3=−COOR7の場合、2−ブチン−1,4−ジオール ジメチルジカーボネート〔R6=R7=メチル基、nは全て1〕、2−ブチン−1,4−ジオール ジエチルジカーボネート〔R6=R7=エチル基、nは全て1〕、2−ブチン−1,4−ジオール ジフェニルジカーボネート〔R6=R7=フェニル基、nは全て1〕、2−ブチン−1,4−ジオール ジシクロヘキシルジカーボネート〔R6=R7=シクロヘキシル基、nは全て1〕などが挙げられる。
Y2=−COR6および/またはY3=−COR7の場合、2−ブチン−1,4−ジオール ジアセテート〔R6=R7=メチル基、nは全て1〕、2−ブチン−1,4−ジオール ジプロピオネート〔R6=R7=エチル基、nは全て1〕、2−ブチン−1,4−ジオール ジベンゾエート〔R6=R7=フェニル基、nは全て1〕、2−ブチン−1,4−ジオール ジシクロヘキサンカルボキシレート〔R6=R7=シクロヘキシル基、nは全て1〕などが挙げられる。
Y2=−SO2R6および/またはY3=−SO2R7の場合、2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネート〔R6=R7=メチル基、nは全て1〕、2−ブチン−1,4−ジオール ジプロパンスルホネート〔R6=R7=プロピル基、nは全て1〕、2−ブチン−1,4−ジオール ジ−p−トルエンスルホネート〔R6=R7=p−トリル基、nは全て1〕、2−ブチン−1,4−ジオール ジシクロヘキサンスルホネート〔R6=R7=シクロヘキシル基、nは全て1〕などが挙げられる。ただし、本発明はこれらの化合物に何ら限定されるものではない。
【0021】
前記アルキン誘導体類において、前記一般式(I)、(II)、(III)で表されるアルキン誘導体の含有量は、過度に多いと、電解液の電導度などが変わり電池性能が低下することがあり、また、過度に少ないと、十分な皮膜が形成されず、期待した電池特性が得られないので、電解液の重量に対して0.01〜20重量%、特に0.1〜10重量%の範囲が好ましい。
【0022】
本発明で使用される非水溶媒としては、高誘電率溶媒と低粘度溶媒とからなるものが好ましい。
高誘電率溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状カーボネート類が好適に挙げられる。これらの高誘電率溶媒は、1種類で使用してもよく、また2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0023】
低粘度溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンなどのエーテル類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、アセトニトリルなどのニトリル類、プロピオン酸メチルなどのエステル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。これらの低粘度溶媒は1種類で使用してもよく、また2種類以上組み合わせて使用してもよい。
高誘電率溶媒と低粘度溶媒とはそれぞれ任意に選択され組み合わせて使用される。なお、前記の高誘電率溶媒および低粘度溶媒は、容量比(高誘電率溶媒:低粘度溶媒)で通常1:9〜4:1、好ましくは1:4〜7:3の割合で使用される。
【0024】
本発明で使用される電解質としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3などが挙げられる。これらの電解質は、1種類で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。これら電解質は、前記の非水溶媒に通常0.1〜3M、好ましくは0.5〜1.5Mの濃度で溶解されて使用される。
【0025】
本発明の電解液は、例えば、前記の高誘電率溶媒や低粘度溶媒を混合し、これに前記の電解質を溶解し、前記一般式(I)、(II),(III)で表されるアルキン誘導体類のうち少なくとも1種を溶解することにより得られる。
【0026】
本発明の電解液は、二次電池の構成部材、特にリチウム二次電池の構成部材として好適に使用される。二次電池を構成する電解液以外の構成部材については特に限定されず、従来使用されている種々の構成部材を使用できる。
【0027】
例えば、正極活物質としてはコバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄およびバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の金属とリチウムとの複合金属酸化物が使用される。このような複合金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2などが挙げられる。
【0028】
正極は、前記の正極活物質をアセチレンブラック、カーボンブラックなどの導電剤およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して正極合剤とした後、この正極材料を集電体としてのアルミニウムやステンレス製の箔やラス板に圧延して、50℃〜250℃程度の温度で2時間程度真空下で加熱処理することにより作製される。
【0029】
負極(負極活物質)としては、リチウム金属やリチウム合金、およびリチウムを吸蔵・放出可能な黒鉛型結晶構造を有する炭素材料〔熱分解炭素類、コークス類、グラファイト類(人造黒鉛、天然黒鉛など)、有機高分子化合物燃焼体、炭素繊維〕や複合スズ酸化物などの物質が使用される。特に、格子面(002)の面間隔(d002)が0.335〜0.340nm(ナノメーター)である黒鉛型結晶構造を有する炭素材料を使用することが好ましい。なお、炭素材料のような粉末材料はエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの結着剤と混練して負極合剤として使用される。
【0030】
リチウム二次電池の構造は特に限定されるものではなく、正極、負極および単層又は複層のセパレータを有するコイン型電池、さらに、正極、負極およびロール状のセパレータを有する円筒型電池や角型電池などが一例として挙げられる。なお、セパレータとしては公知のポリオレフィンの微多孔膜、織布、不織布などが使用される。
【0031】
【実施例】
次に、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
実施例1
〔電解液の調製〕
PC−DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解して電解液を調製した後、さらにアルキン誘導体として2−プロピニルメチルカーボネートを電解液に対して1.0重量%となるように加えた。
【0032】
〔リチウム二次電池の作製および電池特性の測定〕
LiCoO2(正極活物質)を80重量%、アセチレンブラック(導電剤)を10重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にしてアルミ箔上に塗布した。その後、これを乾燥し、加圧成形して正極を調製した。天然黒鉛(負極活物質)を90重量%、ポリフッ化ビニリデン(結着剤)を10重量%の割合で混合し、これに1−メチル−2−ピロリドンを加えてスラリー状にして銅箔上に塗布した。その後、これを乾燥し、加圧成形して負極を調製した。そして、ポリプロピレン微多孔性フィルムのセパレータを用い、上記の電解液を注入してコイン電池(直径20mm、厚さ3.2mm)を作製した。
このコイン電池を用いて、室温(20℃)下、0.8mAの定電流及び定電圧で、終止電圧4.2Vまで5時間で充電し、次に0.8mAの定電流下、終止電圧2.7Vまで放電し、この充放電を繰り返した。初期放電容量は、EC−DMC(1/2)を電解液として用いた場合(比較例2)と比較してその相対容量として算出し、0.95であった。50サイクル後の電池特性を測定したところ、初期放電容量を100%としたときの放電容量維持率は87.8%であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0033】
実施例2
アルキン誘導体として酢酸2−プロピニルを電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は0.95であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は86.4%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0034】
実施例3
アルキン誘導体としてメタンスルホン酸2−プロピニルを電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は0.95であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は88.6%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0035】
実施例4
アルキン誘導体として2−ブチン−1,4−ジオール ジメチルジカーボネートを電解液に対して1重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は0.97であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は89.3%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0036】
実施例5
アルキン誘導体として2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネートを電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例1と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は0.97であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は89.5%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0037】
比較例1
PC−DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解した。このときアルキン誘導体は全く添加しなかった。この電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定したところ、初回充電時にPCの分解が起こり全く放電できなかった。初回充電後の電池を解体して観察した結果、黒鉛負極に剥離が認められた。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0038】
実施例6
PCの代わりにECを使って、EC−DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6を1Mの濃度になるように溶解して電解液を調製した後、さらにアルキン誘導体としてフェニルアセチレンを電解液に対して0.2重量%となるように加えた。この電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定したところ、初期放電容量は、EC−DMC(1/2)を電解液として用いた場合(比較例2)と比較してその相対容量として算出し、1.04であった。50サイクル後の電池特性を測定したところ、初期放電容量を100%としたときの放電容量維持率は92.2%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0039】
実施例7
アルキン誘導体として1−フェニル−1−プロピンを電解液に対して0.2重量%使用し、DMCの代わりにMECを使用したほかは実施例6と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は1.03であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は91.7%であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0040】
実施例8
アルキン誘導体として2−ブチン−1,4−ジオール ジメタンスルホネートを電解液に対して1.0重量%使用し、PC−EC−MEC(容量比)=1:1:2の非水溶媒を使用したほかは実施例1と同様にコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は1.01であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は92.6%であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0041】
実施例9
アルキン誘導体としてメタンスルホン酸2−プロピニルを電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例8と同様にコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は1.01であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は92.1%であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0042】
実施例10
アルキン誘導体として2−プロピニルメチルカーボネートを電解液に対して1.0重量%使用したほかは実施例8と同様にコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は1.01であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は91.8%であった。また、低温特性も良好であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0043】
実施例11
正極活物質として、LiCoO2に代えてLiMn2O4を使用し、アルキン誘導体としてフェニルアセチレンを電解液に対して0.2重量%使用したほかは実施例6と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は0.80であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は93.8%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0044】
実施例12
正極活物質として、LiCoO2に代えてLiCo0.1Ni0.9O2を使用したほかは実施例6と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は1.18であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は90.8%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0045】
実施例13
負極活物質として、天然黒鉛に代えて人造黒鉛を使用したほかは実施例7と同様に電解液を調製してコイン電池を作製し、初期放電容量の相対容量は1.05であり、50サイクル後の電池特性を測定したところ、放電容量維持率は91.2%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0046】
比較例2
EC:DMC(容量比)=1:2の非水溶媒を調製し、これにLiPF6 を1Mの濃度になるように溶解した。このときアルキン誘導体は全く添加しなかった。この電解液を使用して実施例1と同様にコイン電池を作製し、電池特性を測定した。この場合の初期放電容量の相対容量を1とする。初期放電容量に対し、50サイクル後の放電容量維持率は83.8%であった。コイン電池の作製条件および電池特性を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
なお、本発明は記載の実施例に限定されず、発明の趣旨から容易に類推可能な様々な組み合わせが可能である。特に、上記実施例の溶媒の組み合わせは限定されるものではない。更には、上記実施例はコイン電池に関するものであるが、本発明は円筒形、角柱形の電池にも適用される。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、広い温度範囲でのサイクル特性や電気容量、更には保存特性などの電池特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
Claims (4)
- 前記アルキン誘導体のうち少なくとも1種が、電解液の重量に対して0.01〜20重量%含有されている請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
- 前記アルキン誘導体のうち少なくとも1種が、電解液の重量に対して0.01〜10重量%含有されている請求項2に記載のリチウム二次電池用電解液。
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