JP5071171B2 - リチウム二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解液を有するリチウム二次電池に関し、より詳しくは電極表面の改質に関する。
近年、小型携帯機器の発展に伴い、電池も小型、軽量化が求められている。とりわけ高容量、高エネルギー密度のリチウム二次電池に対する期待が大きく、さらなる高容量化のために、構成要素である正極、負極、電解液の改良が進められている。
リチウム二次電池は一般に、正極活物質としてLiCoO、LiNiO、LiMn等に代表されるリチウム含有遷移金属酸化物が用いられ、負極活物質として黒鉛やコークス等の炭素質材料が用いられている。中でも黒鉛質材料を電極として用いると体積当りのエネルギー密度の向上につながるため、黒鉛質材料が好適に使用されている。
電解液としては、エチレンカーボネートに代表される環状カーボネートとジエチルカーボネートやメチルエチルカーボネートに代表される鎖状カーボネートを混合溶媒とした電解液が多く使用されている。
特に、環状カーボネートはリチウム塩の解離度が高く、中でもエチレンカーボネートは電位窓が広く、酸化還元に強いため、リチウム二次電池非水電解液の主溶媒として用いることによって充放電特性に優れた電池を作製できることが知られている。
しかし、エチレンカーボネートは融点が高いため(約37℃)、室温を含む低温で凝固して固体となったり、低温での導電率が劣るといった問題がある。低温での凝固点を下げるために、鎖状カーボネートを多量に混合すると、鎖状カーボネートの沸点と引火点の低さに起因する高温保存時の電池の膨れや安全性の低下が懸念される。また、エチレンカーボネートは、サイクルに伴って徐々に分解を起こし、サイクル特性の劣化につながる。
そのため、エチレンカーボネートに代わるより融点の低い環状カーボネートとして、プロピレンカーボネートを用いる試みもなされている。プロピレンカーボネートは酸化、還元分解に強く、凝固点が低い(約−49℃)ため、負極としてリチウム金属を用いた場合や、低結晶性の炭素を用いた場合に好適に用いられる。
しかし、負極として黒鉛を用いた場合、プロピレンカーボネートを電解液の主溶媒として用いると、プロピレンカーボネートが負極上で激しく分解を起こし、充電できないという問題があった。
特に、高容量化が求められ、黒鉛化度の高い人造黒鉛が使用されるとプロピレンカーボネートが黒鉛の層状構造を破壊する現象が著しくなり、プロピレンカーボネートを高比率の主溶媒として使用できなくなる。
これまでに、添加剤を加えることによってプロピレンカーボネートと黒鉛の分解を抑制する例が報告がされている。特開平11−73990号公報ではエチレンサルファイトとプロピレンカーボネートの混合溶媒が用いられおり、エチレンサルファイトの分解物が負極上に皮膜を形成することでプロピレンカーボネートの分解を抑制する機構が提案されている。
また、特開2000−3724号公報では1,3−プロパンスルトンや1,4−ブタンスルトンがプロピレンカーボネートの分解を抑制する効果があることが示されている。しかし、これらの手法では、電池特性を向上させることが困難である。
電池の高エネルギー密度化を目指すには、電池全体に占める活物質の比率を上げる必要があり、活物質の比率を上げる手段として電極面積当りの活物質担持量を増やす方法がある。しかし、活物質担持量を増やすと添加剤を使用してもプロピレンカーボネートと黒鉛の分解が起こる。その原因としては、活物質担持量を増やすと電極が厚くなり、分極が増大し、均一な皮膜を形成し難くなることが可能性として考えられる。
特開平11−73990号公報 特開2000−3724号公報
本発明の目的は、前記のような問題を解決し、初期充放電効率、サイクル特性などに極めて優れる電池特性を備え、かつ高温時の安全性が高いリチウム二次電池を提供することである。
また、製造が容易で扱いやすく、プロピレンカーボネートにも対応可能で、充放電効率、低温特性、サイクル特性などに極めて優れた電池特性を備えたリチウム二次電池を提供することである。
また、プロピレンカーボネートの分解を抑制し、高レート特性および低温特性、サイクル特性の優れたリチウム二次電池を提供することである。
また、活物質担持量の大きい電極を用いた場合にも、高レート特性および低温特性、サイクル特性の優れたリチウム二次電池を提供することである。
また、簡単な構造でより安全性の高いリチウム二次電池を提供することである。
本発明者らの検討により、リチウム二次電池の電解質にプロピレンカーボネートを含有させて、安定した動作を得るには、下記に示す式(1)の化合物を所定の条件下で含有させることが有効であることがわかった。
すなわち、負極構成材料の一部としてカルボキシル基または水酸基を有する化合物を含有し、リチウムイオン導電性物質中にプロピレンカーボネートを含有するとき、プロピレンカーボネートを含有し、好ましくは他の媒質よりも過剰に含有する系でも安定した高性能のリチウム二次電池が得られることがわかった。
すなわち上記目的は、下記の本発明の構成により達成される。
(1)リチウムイオンを吸蔵/放出可能な正極および負極と、リチウムイオン導電性物質とを有し、リチウムイオン導電性物質は、下記式(1)で表される化合物および、プロピレンカーボネートを含有し、負極構成材料の一部としてカルボキシル基または水酸基を有する化合物を含有し、当該カルボキシル基または水酸基を有する化合物は、酢酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、トリフルオロ酢酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アクリル酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アルギン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、芳香族カルボン酸を具備するポリイミド樹脂、及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種である、リチウム二次電池。
(上記式(1)において、nは0または1の整数であり、R,R,RおよびRは、それぞれ水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基のいずれかを表す。)
(2) 電子分光化学分析(ESCA)による負極活物質表面分析において、硫黄元素の2p結合エネルギースペクトルの最大ピーク値が168〜172eVの間に存在する上記(1)のリチウム二次電池。
(3) 上記式(1)で表される化合物は、最低非占有軌道(LUMO)の分子軌道エネルギーが+0.005〜+0.07eVである上記(1)または(2)のリチウム二次電池。
(4) 上記プロピレンカーボネートを50体積%超含有する上記(1)〜(3)のいずれか1つのリチウム二次電池。
(5) 上記式(1)で表される化合物を、0.01〜30質量%含有する上記(1)〜(4)のいずれか1つのリチウム二次電池。
(6) 負極は、カルボシキル基または水酸基を有する化合物を0.01〜10質量%含有する上記(1)〜(5)のいずれか1つのリチウム二次電池。
(7) 前記負極は、活物質として人造黒鉛を含有する上記(1)〜(6)のいずれか1つのリチウム二次電池。
本発明によれば、初期充放電効率、サイクル特性などに極めて優れる電池特性を備え、かつ高温時の安全性が高いリチウム二次電池を提供することができる。
また、本発明によれば、製造が容易で扱いやすく、プロピレンカーボネートにも対応可能で、充放電効率、低温特性、サイクル特性などに極めて優れる電池特性を備えたリチウム二次電池を提供することができる。
また、プロピレンカーボネートの分解を抑制し、高レート特性および低温特性、サイクル特性の優れた電池を提供することができる。
また、活物質担持量が10mg/cm以上の電極を用いた場合にも、高レート特性および低温特性、サイクル特性の優れた電池を提供することができる。
また、簡単な構造でより安全性の高い電池を提供することができる。
本発明のリチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵/放出可能な正極および負極と、リチウムイオン導電性物質とを有し、このリチウムイオン導電性物質中に下記式(1)で表される化合物を含有し、
(a)この式(1)で表される化合物のR,R,RおよびRであらわされる置換基のうち、いずれか1つのみがアルキル基であるか、
(b)前記負極構成材料の一部としてカルボキシル基または水酸基を有する化合物を含有し、前記リチウムイオン導電性物質中にプロピレンカーボネートを含有するか、
(c)正極活物質がリチウムを含む遷移金属化合物であり、負極活物質が炭素材料であり、
リチウムイオン導電性物質中に非水電解液として、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートの混合溶媒に、低粘度溶媒として鎖状カーボネートを含有するか、
前記(a),(b)または(c)のいずれかの構成を有するものである。
上記式1において、nは0または1の整数であり、R,R,RおよびRは、それぞれ水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基のいずれかを表す。
このように所定の条件で式(1)の化合物を含有するか、所定の条件の式(1)の化合物を含有することにより、環状カーボネートを含有して高性能リチウム二次電池を実現することができる。
具体的には、式1に示す構造の化合物をリチウムイオン導電性物質中に含有し、少なくとも1回以上充電することにより、電極表面に少なくとも炭素、酸素、硫黄元素を含有する皮膜が形成される。そして、この特有の皮膜が電極による電解液の分解を抑制し、充放電効率、低温特性、サイクル特性などに極めて優れ、プロピレンカーボネートにも対応可能で、しかも高温保存時に発ガスのないリチウム二次電池が得られる。
さらに、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートの混合溶媒に、鎖状カーボネートを含有させた3成分系とし、さらに式1に示す構造の化合物を含有したものをリチウムイオン導電性物質とすることで、電解液の分解を抑制することができ、電池特性に優れ、発ガスの少ないリチウム二次電池が得られる。すなわち、上記式1の化合物を含有することで、電極活物質、特に黒鉛表面に少なくとも炭素、酸素、硫黄元素を含有する皮膜が形成される。そして、この特有の皮膜が電極活物質による電解液の分解を抑制し、充放電効率、低温持性、サイクル特性などに極めて優れ、かつ高温保存時に発ガスのないリチウム二次電池が得られる。
上記式(1)で表される化合物について説明すると、式1において、nは0または1の整数であり、R,R,RおよびRはそれぞれ水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基のいずれかを表す。
式1における−(CH)−基はあってもよいし、なくてもよいが、好ましくはn=0である。
,R,RおよびRはそれぞれ水素原子、または炭素数1〜5、特に1〜3のアルキル基である。また、少なくともR,R,RおよびRのうちの2個以上、特に3個以上、さらには全てが水素原子であることが好ましい。また、R,R,RおよびRの好ましいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられる。これらのなかでも、メチル基が好ましく、R,R,RおよびRのうちのいずれか1つがアルキル基、特にメチル基で、残りのものが水素であってもよい。
,R,RおよびRは同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
式1で表される具体的な化合物としては、例えば1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド、1,3,2−ジオキサチアン−2,2−ジオキサイド、4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド、4−エチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド等が挙げられる。なかでも1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドが好ましい。
式1で表される化合物の添加量は、非水電解液に対しては好ましくは0.01〜30質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、特に3〜7質量%である。また、正極や負極に混入させる場合、好ましくは電極材料に対し0.01〜30質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
本発明では、前記式(1)の化合物により負極活物質表面に形成される被膜が、この負極活物質表面をESCA(Electron Spectroscopyfor Chemical Analysis:電子分光化学分析)分析でスキャンしたときに、S(硫黄)元素の2p結合エネルギースペクトルの最大ピークが、168〜172eVの間に存在することが好ましい。
ESCAのSの2p最大ピークを前記範囲内とすることで、インピーダンスの小さい界面が形成される。
さらに、本発明では前記式(1)で表される化合物は、LUMO(電子を有していない分子軌道の中で最もエネルギー準位が低い軌道をいい、励起された電子は通常この軌道に移動する。)のエネルギー準位が好ましくは+0.005〜+0.07eV、より好ましくは+0.006〜+0.066eVである。また、そのHOMO(最高被占軌道)のエネルギー準位は特に規制されものではないが、通常−11〜−12eVである。LUMO、HOMOは、所定の理論値から算出することが出来る。
このような前記式(1)の化合物としては、例えば1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド、4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド、4−エチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド、4−プロピル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド等が挙げられる。
LUMOのエネルギー準位を前記範囲とすることで、電解溶媒よりも貴な電位で被膜を形成し、プロピレンカーボネートの分解を抑制できる。
〔第1の態様〕
本発明の第1の態様においては、上記式(1)で表される化合物のR,R,RおよびRであらわされる置換基のうち、いずれか1つのみがアルキル基である。つまり、本発明の第1の態様では、リチウム二次電池は、正極と、リチウムイオンを吸蔵/放出可能な負極と、リチウムイオン導電性物質とを有し、このリチウムイオン導電性物質中に下記式(2)で示される化合物を含有するものである。
上記式2において、Rは好ましくは炭素数1または2のアルキル基を表す。
このような、式2に示す構造の化合物をリチウムイオン導電性物質中に含有し、少なくとも1回以上充電することにより、電極表面に少なくとも炭素、酸素、硫黄元素を含有する皮膜が形成される。そして、この特有の皮膜が電極による電解液の分解を抑制し、充放電効率、低温特性、サイクル特性などに極めて優れ、プロピレンカーボネートにも対応可能で、しかも高温保存時に発ガスのないリチウム二次電池が得られる。
また、式2で表される化合物は、常温(室温:20℃)、常圧(大気圧)下で液体状態であり、溶媒中に溶解させる工程が省略できる。特に、近似した構造の1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド等は常温、常圧下で固体状態であり、溶媒の種類によっては溶解作業が困難なものとなる。このため、量産工程においては、液体状の上記化合物は、溶解させる手間が省略でき極めて有用な材料である。
さらに、上記化合物は固体状の物質と比較して水分吸着も少なく、水分含有量が少ない。上記1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドは、固体であることから蒸留やモレキュラシーブス等による乾燥を行うことが困難であり、通常0.3質量%以上の水分を含有する。これに対し、式(2)で表される化合物は、蒸留やモレキュラシーブス等による乾燥を行うことが可能であり、これにより、水分含有量300ppm 以下、特に100ppm 以下とすることができる。このため、電極等における水分による劣化を抑制することができ、電池の長寿命化にも貢献する。
上記式(2)で表される化合物について説明すると、式2において、Rは上記式(1)のR,R,RおよびRと同義であるが、好ましくは炭素数1または2のアルキル基を表す。Rの好ましいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基等が挙げられる。Rで表されるアルキル基は、さらに置換されていてもよいが、非置換のアルキル基が好ましい。
式2で表される具体的な化合物としては、例えば4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド、4−エチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド等が挙げられる。
式2で表される化合物の添加量は、非水電解液に対しては好ましくは0.05〜50質量%、さらに好ましくは1〜10質量%、特に3〜7質量%である。また、正極や負極に混入させる場合、好ましくは電極材料に対し0.05〜50質量%、さらに好ましくは1〜10質量%である。
本発明において、式2で示される化合物は、電池内部に具備されて1回以上充電されることにより、負極表面に形成される皮膜に取り込まれる。電池作製時にこれらを電解液に溶解させても、正極あるいは負極材料、特に負極材料に混入させてもよい。
通常、リチウム電池では、正極および/または負極表面において初回の充放電により、リチウムイオン導電物質の構成物質である非水溶媒との化学反応が生じ、酸素、炭素を含む皮膜が形成される。式2で示される化合物は、初回の充電により正極および/または負極表面において、この化学反応と共に硫黄、酸素、炭素を含む皮膜を形成する。この皮膜は式2の化合物を具備しない従来のリチウム電池の皮膜に比べて、リチウムイオンの透過性が良好で、正極・負極による電解液分解反応を防止する作用があると考えられる。
このように、充放電効率、低温特性、サイクル特性、長期安定性などに極めて優れる電池特性を備え、かつ高温保存時に発ガスのないリチウム電池を提供できる。
〔第2の態様〕
本発明の第2の態様は、上記式(1)の化合物を含有するに際し、負極構成材料の一部としてカルボキシル基または水酸基を有する化合物を含有し、前記リチウムイオン導電性物質中にプロピレンカーボネートを含有するものである。すなわち、第2の態様におけるリチウム二次電池は、リチウムイオンを吸蔵/放出可能な正極および負極と、リチウムイオン導電性物質とを有し、前記負極構成材料の一部としてカルボキシル基または水酸基を有する化合物を含有し、前記リチウムイオン導電性物質中にプロピレンカーボネートと上記式(1)で示される化合物を含有するものである。
カルボキシル基を有する化合物としては、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、トリフルオロ酢酸リチウム、酢酸アンモニウム等、カルボン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。
また、高分子の側鎖にカルボキシル基を含む場合として、カルボキシルメチルセルロース、アクリル酸、アルギン酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
カルボキシル基は、電極活物質の結着剤として含まれる高分子の側鎖であってもよい。例えば、ポリイミド樹脂が芳香族カルボン酸を含む場合が挙げられる。
水酸基を有する化合物としては、ポリビニルアルコールを挙げることができる。
このようなカルボキシル基、または水酸基を有する化合物を負極に有することで、電極上に効果的に上記皮膜を形成することができる。
ここで、初期充放電効率の点からは、カルボキシル基を有する化合物用をいるとよい。また、これらカルボキシル基、水酸基、特にカルボキシル基を有する高分子化合物として、熱硬化性樹脂も好ましい。
第2の態様において、式1で示される化合物は、電池内部に具備されて1回以上充電されることにより、負極表面に形成される皮膜に取り込まれる。その際負極上に存在するカルボキシル基または水酸基が作用し、良好な皮膜を形成することができる。そして、電解液、特にプロピレンカーボネートの分解を抑制し、長期間にわたって安定に動作させることができる。式1の化合物は、電池作製時に電解液に溶解させても、正極あるいは負極材料に混入させてもよい。
通常、リチウム電池では、正極および/または負極表面において初回の充放電により、リチウムイオン導電物質の構成物質である非水溶媒との化学反応が生じ、酸素、炭素を含む皮膜が形成される。式1で示される化合物は、初回の充電により正極および/または負極表面において、特に負極に存在するカルボキシル基または水酸基と作用し、化学反応と共に硫黄、酸素、炭素を含む皮膜を形成する。この皮膜は式1の化合物を具備しない従来のリチウム電池の皮膜に比べて、リチウムイオンの透過性が良好で、正極・負極による電解液分解反応を防止する作用があると考えられる。
このように、特にプロピレンカーボネートを電解質に有する系においても、充放電効率、低温特性、サイクル特性、長期安定性などに極めて優れる電池特性を備え、かつ高温保存時に発ガスのないリチウム電池を提供できる。
〔第3の態様〕
本発明の第3の態様は、上記式(1)で表される化合物を含有するに際し、正極活物質がリチウムを含む遷移金属化合物であり、負極活物質が炭素材料であり、リチウムイオン導電性物質中に非水電解液として、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートの混合溶媒に、低粘度溶媒として鎖状カーボネートを含有するものである。
すなわち、第3の態様のリチウム二次電池は、正極活物質がリチウムを含む遷移金属化合物であり、負極活物質が炭素材料であり、非水電解液として、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートの混合溶媒に、低粘度溶媒として鎖状カーボネート、および式1で表される化合物を含有するものである。
このように、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートの混合溶媒に、鎖状カーボネートを含有させた3成分系とし、さらに式1に示す構造の化合物を含有したものをリチウムイオン導電性物質とすることで、電解液の分解を抑制することができ、電池特性に優れ、発ガスの少ないリチウム二次電池が得られる。すなわち、上記混合溶媒中に式1の化合物を含有することで、電極活物質、特に黒鉛表面に少なくとも炭素、酸素、硫黄元素を含有する皮膜が形成される。そして、この特有の皮膜が電極活物質による電解液の分解を抑制し、充放電効率、低温持性、サイクル特性などに極めて優れ、かつ高温保存時に発ガスのないリチウム二次電池が得られる。
第3の態様において、式1で示される化合物は、電池内部に具備されて1回以上充電されることにより、負極表面に形成される皮膜に取り込まれ、良好な皮膜を形成する。そして、電解液、特にプロピレンカーボネートの分解を抑制し、長期間にわたって安定に動作させることができる。式1の化合物は、電池作製時に電解液に溶解させても、正極あるいは負極材料に混入させてもよい。
通常、リチウム電池では、正極および/または負極表面において初回の充放電により、リチウムイオン導電物質の構成物質である非水溶媒との化学反応が生じ、酸素、炭素を含む皮膜が形成される。式1で示される化合物は、初回の充電により正極および/または負極表面において、特に負極活物質である黒鉛表面に、化学反応による硫黄、酸素、炭素を含む皮膜を形成する。そしてこの皮膜により、黒鉛内部の層間に電解液が進入するのを防止し、電解液の分解およびそれに伴う層間の膨張による黒鉛層間の剥離や、割れなどの現象を防止する。また、この皮膜は式1の化合物を具備しない従来のリチウム電池の皮膜に比べて、リチウムイオンの透過性が良好で、正極・負極による電解液分解反応を防止する作用があると考えられる。
このように、特にプロピレンカーボネートを電解質に有する系においても、充放電効率、低温特性、サイクル特性、長期安定性などに極めて優れる電池特性を備え、かつ高温保存時に発ガスのないリチウム電池を提供できる。
第3の態様におけるリチウム塩を溶解させた非水電解液は、プロピレンカーボネート(PC)と、エチレンカーボネートとの混合溶媒であり、この混合溶媒にさらに低粘度溶媒として鎖状カーボネートを含有する。
プロピレンカーボネートとの共溶媒としては、リチウムイオンを溶解可能で、イオン導電性を与える極性を有し、リチウムと化学反応をしない非プロトン性の溶媒が好ましく、リチウムイオンを含む支持塩を溶解するものである。特に本発明ではエチレンカーボネートを用いることで、上記式(1)に示される化合物との相互作用によって、リチウムイオン透過性の良好な皮膜が形成される。
エチレンカーボネートの含有量は、非水電解質である混合溶媒全量に対し、体積比で20体積%未満であり、かつプロピレンカーボネートの含有量よりも少ない含有量とすることが好ましい。このように、エチレンカーボネートの含有量を少なくし、特にプロピレンカーボネートの含有量より少なくすることで、電解液の粘度と凝固点が下がり、低温特性、高レート特性等の電池特性を向上させることができる。
さらに、非水電解液中、エチレンカーボネートは、好ましくは2体積%以上、特に5〜15体積%含有されているとよい。
低粘度溶媒としては、25℃における粘性率ηが1.0mPa・s以下、特に0.8mPa・s以下のものが好ましい。その下限としては、通常0.5mPa・s程度である。低粘度溶媒を混合溶媒中に添加することにより、混合溶媒の濡れ性を改善し、均一な被膜を形成することができる。また、液の導電性を向上させ、電極内における電位分布を減少することができる。なお、粘性率は、JIS Z 8803「粘度試験法」によって測定される。
低粘度溶媒としては、鎖状カーボネートが好ましい。具体的には、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネートなどが挙げられる。特に、粘度が低い、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートが好ましい。
鎖状カーボネートの含有量は、混合溶媒全体に対して好ましくは20〜80体積%、より好ましくは60〜80体積%である。
リチウムイオンを含む支持塩としては、例えばLiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)およびLiN(CFCFCO)などの塩またはこれらの混合物が挙げられる。
電解液中のリチウム塩の濃度は0.5〜2.5モル/リットルが好ましく、より好ましくは1.2〜2.0モル/リットルである。リチウム塩の濃度がこの範囲より高いと電解液の粘度が高くなり、ハイレートでの放電容量や低温での放電容量が抵下し、低いとリチウムイオンの供給が間に合わなくなり、ハイレートでの放電容量や低温での放電容量が低下する。
〔リチウム二次電池〕
リチウム二次電池の構造は特に限定されないが、通常、正極、負極およびセパレータから構成され、積層型電池や円筒型電池等に適用される。このような正極、セパレータ、負極をこの順に積層し、圧着して電極群とする。
電極は、好ましくは電極活物質と結着剤、必要により導電助剤との組成物を用いる。
本発明において、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質は、好ましくはLixMyOz(ただし、Mは1種以上の遷移金属元素を表し、xは0.10≦1.10である)で表されるリチウム含有遷移金属酸化物である。このような正極活物質は、リチウムイオンがその層間にインターカレート、デインターカレート可能である。具体的には、遷移金属元素は、Co、Mn、NiおよびVから選択される1種または2種以上であり、特にLiCoO、LiMn、LiNiO、LiVなどが挙げられる。これらの酸化物の粉末の平均粒子径は好ましくは1〜40μm程度である。
本発明においてリチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質としては、炭素材料、金属リチウム、リチウム合金あるいは酸化物などが挙げられるが、炭素材料を用いる。
炭素材料では、例えば人造黒鉛、天然黒鉛、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズカーボンファイバー(MCF)、コークス類、ガラス状炭素、有機高分子化合物焼成体などが挙げられる。これらは通常粉末として用いられる。
これらのなかでも特に、黒鉛すなわち人造黒鉛、または天然黒鉛が好ましく、より好ましくは人造黒鉛であり、さらには格子面(002)面間の面間隔が0.335〜0.380nmの人造黒鉛が好ましい。なお、(002)面間の面間隔はX線回折により算出することができる。天然黒鉛は、不純物を含むので、式(1)で示される化合物が初回の充電時に皮膜を形成する際、その皮膜の質を低下させることがある。人造黒鉛を用いることにより、不純物の影響を回避できるので、イオン透過性の良好な皮膜を形成することができる。
これらを粉末で用いる場合、その平均粒子径は1〜30μm 、特に5〜25μm であることが好ましい。平均粒子径が小さすぎると、充放電サイクル寿命が短くなり、また、容量のばらつき(個体差)が大きくなる傾向にある。平均粒子径が大きすぎると、容量のばらつきが著しく大きくなり、平均容量が小さくなってしまう。平均粒子径が大きい場合に容量のばらつきが生じるのは、黒鉛等の負極活物質と集電体との接触や負極活物質同士の接触にばらつきが生じるためと考えられる。
電極には、必要により導電助剤が添加される。導電助剤としては、好ましくは黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維、ニッケル、アルミニウム、銅、銀等の金属が挙げられ、特に黒鉛、カーボンブラックが好ましい。
電極組成は正極では、重量比で活物質:導電助剤:結着剤=80〜94:2〜8:2〜18の範囲が好ましく、負極では、重量比で活物質:導電助剤:結着剤=70〜97:0〜25:3〜10の範囲が好ましい。
電極の製造は、まず、活物質と結着剤、必要に応じて導電助剤を、結着剤溶液に分散し、塗布液を調製する。
結着剤としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のようなエラストマーや、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のような樹脂材料を用いることができる。また、必要に応じてカルボキシメチルセルロース(CMC)等の添加剤を加えてもよい。
そして、この電極塗布液を集電体に塗布する。塗布する手段は特に限定されず、集電体の材質や形状などに応じて適宜決定すればよい。一般に、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が使用されている。その後、必要に応じて、平板プレス、カレンダーロール等により圧延処理を行う。
集電体は、電池の使用するデバイスの形状やケース内への集電体の配置方法などに応じて、適宜通常の集電体から選択すればよい。一般に、正極にはアルミニウム等が、負極には銅、ニッケル等が使用される。なお、集電体は、通常、金属箔、金属メッシュなどが使用される。金属箔よりも金属メッシュの方が電極との接触抵抗が小さくなるが、金属箔でも十分小さな接触抵抗が得られる。
そして、溶媒を蒸発させ、電極を作製する。塗布厚は、50〜400μm 程度とすることが好ましい。
本発明の電池は上記混合溶媒を用いることで、電極内の電位分布を減少させることができ、活物質担持量を増大させることができる。
得られた電極の単位面積あたりの活物質担持量は、好ましくは10mg/cm以上、特に12mg/cm以上が好ましい。その上限としては特に限定されるものではないが、通常300mg/cm程度である。
活物質担持量を増大させることで、電極、つまり集電体表面に存在する活物質含有層の膜厚を増大させることができ、電池の高エネルギー密度化およぴ高出力密度化が可能となる。
本発明において、リチウムイオン導電性物質としては、リチウム塩を溶解させた非水電解液やゲル状ポリマーのいずれかを用いることができる。
リチウム塩を溶解させた非水電解液は、リチウムイオンを溶解可能で、イオン導電性を与える極性を有し、リチウムと化学反応をしない非プロトン性の溶媒が好ましく、リチウムイオンを含む支持塩を溶解するものである。具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネートなとが拳げられる。これらのなかでも特にプロピレンカーボネートが好ましい。
2種以上の溶媒を混合して用いる場合、非水電解液中、プロピレンカーボネートを好ましくは50体積%超、より好ましくは60〜99体積%、特に80〜98体積%含有することが好ましい。
また、第1の態様においては、リチウム塩を溶解させた非水電解液は、プロピレンカーボネート単独または他の溶媒との混合溶媒が用いられる。プロピレンカーボネートの共溶媒としては、上記で例示したものが挙げられる。
リチウムイオンを含む支持塩としては、例えば上記のようにLiClO、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)およびLiN(CFCFCO)などの塩またはこれらの混合物が挙げられる。
電解液中のリチウム塩の濃度は0.5〜3モル/リットルが好ましく、より好ましくは0.8〜2.5モル/リットルである。リチウム塩の濃度がこの範囲より高いと電解液の粘度が高くなり、ハイレートでの放電容量や低温での放電容量が抵下し、低いとリチウムイオンの供給が間に合わなくなり、ハイレートでの放電容量や低温での放電容量が低下する。
ゲル状ポリマーとは、例えばポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコール、ポリフツ化ビニリデンなどに前記リチウム塩を溶解させた非水電解液を膨潤させたものが挙げられる。正極と負極の間の短絡を防止する必要があれば、高分子の多孔膜、例えばポリオレフィン1軸あるいは2軸延伸膜、ポリオレフイン不織布などをセパレータやリチウムイオン導電性ポリマーの基材として用いてもよい。
ゲル状ポリマーの膜厚は、5〜100μm、さらには5〜60μm、特に10〜40μmであることが好ましい。
そのほかのセパレータ構成材料として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフイン類の1種または2種以上(2種以上の場合、2層以上のフィルムの張り合わせ物などがある)、ポリエチレンテレフターレートのようなポリエステル類、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体のような熱可塑性フッ素樹脂類、セルロース類などがある。シートの形態はJIS−P8117に規定する方法で測定した通気度が5〜2000秒/100cc程度、厚さが5〜100μm程度の微多孔膜フィルム、織布、不織布などがある。
外装体は、例えばアルミニウム等の金属層の両面に、熱接着性樹脂層としてのポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂層や耐熱性のポリエステル樹脂層が積層されたラミネートフィルムから構成されている。外装体は、予め2枚のラミネートフィルムをそれらの3辺の端面の熱接着性樹脂層相互を熱接着して第1のシール部を形成し、1辺が開口した袋状に形成される。あるいは、一枚のラミネートフィルムを折り返して両辺の端面を熱接着してシール部を形成して袋状としてもよい。
ラミネートフィルムとしては、ラミネートフィルムを構成する金属箔と導出端子間の絶縁を確保するため、例えば内装側から熱接着性樹脂層/ポリエステル樹脂層/金属箔/ポリエステル樹脂層の積層構造を有するラミネートフィルムを用いることが好ましい。このようなラミネートフィルムを用いることにより、熱接着時に高融点のポリエステル樹脂層が溶けずに残るため、導出端子と外装袋の金属箔との離間距離を確保し、絶縁を確保することができる。そのため、ラミネートフィルムのポリエステル樹脂層の厚さは、5〜100μm程度とすることが好ましい。
本発明のリチウム二次電池は、好ましくは正極および負極が複数配置された電極構造体の最外層部に集電体金属の巻き込みによる電極同士の短絡を防止するために短絡防止層として負極を有するものである。
このように、電極構造体の最外層部に短絡防止の負極層を設けることにより、釘さし試験などにおいて想定されているような異常状態においても、ハードな内部短絡を生じることなく、安全に内部放電し、安全性の極めて高いリチウム二次電池を得ることができる。しかも、短絡防止の負極層は電極構造体の最外層にのみ設けられるので、電池特性を犠牲にすることもない。つまり、短絡防止の負極層は、電池構成要素としては、機能しない。
すなわち、通常の状態では電極構造体の最外層は、電池特性に全く寄与しないが、釘さし等、内部の電極構造体がハードな内部短絡する状態に陥った時に、内部の各構成要素(特に電極同士)の短絡を防止する。特に、電池構造が積層型電池の場合、最外層を金属集電体のみにした場合、釘さし等で強制的にハードな内部短絡を起こすことを試みると、金属集電体箔が釘と一緒に巻き込まれて内部で短絡を起こしている。これに対して、本発明の構造では、外側層表面がハードな内部短絡を防止する材料層で覆われているため、釘さしを行っても集電体箔の巻き込みは少なくなり、ハードな内部短絡を起こさない。
本発明のリチウム二次電池の好ましい構成を図1に示す。図示例の電池は、負極を構成する負極集電体2aと負極活物質含有層2bと、正極を構成する正極集電体3aと正極活物質含有層3bと、これらの電極間にセパレータ4aを挟んで固体電解質4bを有する電解質が配置されている。そして、これらが負極/電解質/正極/電解質/負極・・・負極/電解質/正極/電解質/負極と順次積層されている。そして、この電極積層体の最外層(図の最上端と最下端)には、短絡防止用の負極層(負極活物質含有層)11が形成・配置されている。なお、図1の電池において、積層体が収納される外装体は省略している。
短絡防止の負極層は、釘さし試験において、集電体金属箔に孔が開いた際にバリの発生を防ぐ機能を有する。この短絡防止層は、好ましくは電極の集電体上に直接形成されている。また、短絡防止層は、電極構造体の最外層、つまり電極構造体が積層型のものであれば、上下端の集電体の表面に形成されていればよく、その裏面側は何れの極の電極となっていてもよい。しかしながら、より安全性と、製造効率を高めるためには、負極集電体の最表面に形成されることが好ましい。
短絡防止層の材料としては、電気化学的に不活性なもの、特に電池電解液に対する耐溶剤性があればよく、具体的には電池の固体電解質材料、あるいは電極バインダーとして使用される樹脂、例えばPVdF等を挙げることができ、負極材料と同一組成、すなわち負極活物質含有層と同じものが好ましい。
具体的には、上記炭素質材料と樹脂との混合体が好ましい。特に、摩擦を減らし、滑り性を増すことができる黒鉛と樹脂の複合体が好ましい。また、生産性を考えると、最外層用の特別な電極を作製することなく、その効果の得られる両面塗布負極を最外層に用いることがより好ましい。本発明は、特に積層型の電池を構成した場合、ハードな内部短絡に対して効果的に機能する。
短絡防止の負極層の厚さは特に限定されるものではないが、薄すぎると短絡防止効果が得られにくくなり、厚すぎると電池特性に寄与しない部分の専有堆積が増大するなどの弊害が生じてくる。具体的には電極と同様に50〜400μm程度が好ましく、より好ましくは80〜200μmである。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
第1の態様
〔参考例A−1〕
正極活物質としてLiCoO(90重量部)と、導電助剤としてカーボンブラック(6重量部)および結着剤としてPVdF(4重量部)を混合して正極合剤とし、N−メチル−2−ピロリドンを溶剤として分散させ、スラリー状にした。集電体であるAl箔上に得られたスラリーを塗布して乾燥し、正極とした。
負極活物質として球状人造黒鉛粉末(90重量部)と、結着剤としてPVdF(10重量部)とをN−メチル−2−ピロリドンで分散させ、スラリー状とした。このスラリーを負極集電体であるCu箔上に塗布して乾燥し、負極とした。
電解液にはプロピレンカーボネートを溶媒とし、LiPFを1mol dm−3の割合で溶質とし、下記構造の4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を調整した。
上記の正極、負極にフッ化ビニリデン単位を有するポリマーを含んだゲル状電解質を挟み、電解液を含浸し、積層することによってセルを構成した。積層体をアルミラミネートフィルムに入れた後に密閉して積層型リチウムポリマー電池を作製した。
〔参考例A−2〕
電解液としてプロピレンカーボネート75容量%と、エチレンカーボネート25容量%を混合した混合溶媒に対して、4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した電解液を用いたこと以外は参考例A−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例A−3〕
電解液としてプロピレンカーボネート50容量%とエチレンカーボネート50容量%を混合した混合溶媒に対して、4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した電解液を用いたこと以外は参考例A−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例A−4〕
非水電解液の溶媒としてプロピレンカーボネートに4−エチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した電解液を用いたこと以外は参考例A−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例A−5〕
電解液としてエチレンカーボネート70容量%とジエチルカーボネート30容量%を混合した混合溶媒に対して、4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した電解液を用いたこと以外は参考例A−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例A−1〕
非水電解液の溶媒としてプロピレンカーボネートに1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を混合したこと以外は参考例A−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例A−2〕
非水電解液の溶媒としてプロピレンカーボネートにエチレンサルファイト(5重量部)を混合したこと以外は参考例A−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例A−3〕
非水電解液の溶媒としてプロピレンカーボネートに1,3−プロパンスルトン(5重量部)を混合したこと以外は参考例A−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例A−4〕
非水電解液の溶媒としてプロピレンカーボネートにビニレンカーボネート(5重量部)を混合したこと以外は参考例A−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例A−5〕
非水電解液の溶媒としてエチレンカーボネート70容量%とジエチルカーボネート30容量%を混合した混合溶媒を用いたこと以外は参考例A−1と同様にして電池を作製した。
2A(0.2C)の定電流で、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vの充放電試験を行った。初回サイクルの充放電効率および1C充放電を300サイクル行った後の容量保持率を表A−1に示す。
参考例A−1〜A−3は4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドが皮膜を形成、プロピレンカーボネートの分解を抑制するため、初期充放電効率が高く、サイクル特性も優れている。参考例A−4の4−エチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドも同様の効果が見られる。しかし、比較例A−2〜A−4の添加剤は皮膜形成が不十分であり、初期充放電効率やサイクル特性が劣っていることがわかる。
比較例A−1の1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドは初期充放電効率とサイクル特性が優れているが、固体であるために蒸留による水分の除去やモレキュラシープスによる乾燥ができず、水分を多く含む。そのため、水が電解液中で支持塩の分解を促進し、時間の経過と共に電解液が激しく劣化する。それに対して4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドは蒸留やモレキュラシーブスによる乾燥が容易であり、水分の影響を受け難い。従って、4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドを用いることにより、電解液の劣化を防ぐことができ、製造工程上の取扱いに優れている。
第2の態様
〔実施例B−1〕
負極の作製には、負極活物質として塊状人造黒鉛(96重量部)を、結着剤としてスチレンブタジエンゴム:SBR(3重量部)とカルボキシメチルセルロースCMC(1重量部)を用い、これらを混合して蒸留水を加え、スラリーとした。このスラリーをドクターブレード法によって集電体である電解銅箔に塗布し、110℃で乾燥し、乾燥後に圧延を行い、これを負極として用いた。
正極の作製には、正極活物質としてLiCoO(90重量部)を用い、導電助剤としてカーボンブラック(6重量部)、結着剤としてPVdF(4重量部)を用いた。これらを混合し、N−メチル−2−ピロリドンを溶剤として分散させ、スラリーとした。得られたスラリーを集電体であるアルミニウム箔上に塗布して乾燥し、圧延を行い、正極とした。
電解液はプロピレンカーボネートを溶媒とし、LiPFを1mol dm−3の割合で溶質とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いた。
上記正極、負極およびセパレーターを積層することによって積層体とした。この積層体をアルミラミネートパックに封入して真空シールを行い、電池を作製した。
上記の方法で作製した電池を初期充放電効率およびサイクル特性を表B−1に示す。
〔実施例B−2〕
電解液の溶媒としてプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート=体積比9:1を用いたこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−3〕
電解液の溶媒としてプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート=体積比1:1を用いたこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−4〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:CMC=95:1:4(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−5〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:CMC=96:2:2(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−6〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:CMC=96:3.3:0.7(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−7〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:CMC=96:3.7:0.3(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−8〕
負極活物質として人造黒鉛(92重量部)を、結着剤としてPVdF(7重量部)を用い、CMCを1重量部加えて混合した。N−メチル−2−ピロリドンを加えて分散させ、スラリーとし、ドクターブレード法によって集電体である電解銅箔に塗布し、110℃で乾燥した。乾燥後に圧延を行い、これを負極として用いた。
負極以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−9〕
電解液の溶媒としてプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート=体積比9:1を用いたこと以外は実施例B−8と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−10〕
電解液の溶媒としてプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート=体積比1:1を用いたこと以外は実施例B−8と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−11〕
負極の組成を人造黒鉛:PVdF:CMC=92:4:4(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−12〕
負極の組成を人造黒鉛:PVdF:CMC=92:6:2(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−13〕
負極の組成を人造黒鉛:PVdF:CMC=92:7.3:0.7(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−14〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:CMC=92:7.7:0.3(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−15〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:アクリル酸ナトリウム=96:1:3(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−16〕
負極の組成を人造黒鉛:PVdF:アクリル酸ナトリウム=92:7:1(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−17〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:アルギン酸ナトリウム=96:2:2(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−18〕
負極の組成を人造黒鉛:PVdF:アルギン酸ナトリウム=92:7:1(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−19〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:メチルセルロース:酢酸ナトリウム=95:2:2:1(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−20〕
負極の組成を人造黒鉛:PVdF:酢酸ナトリウム=92:7:1(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−21〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:メチルセルロース:トリフルオロ酢酸ナトリウム=95:2:2:1(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−22〕
負極の組成を人造黒鉛:PVdF:トリフルオロ酢酸ナトリウム=92:7:1(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−23〕
負極の組成を人造黒鉛:ポリイミド樹脂=92:8(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔実施例B−24〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:ポリビニルアルコール=90:2:8(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−2と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−1〕
負極活物質として人造黒鉛(92重量部)を用い、結着剤としてPVdF(8重量部)を用いて、実施例B−1と同様の手法によって負極を作製し、それ以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−2〕
電解液の溶媒としてプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート=体積比9:1を用いたこと以外は比較例B−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−3〕
電解液の溶媒としてプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート=体積比1:1を用いたこと以外は比較例B−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−4〕
負極の組成を人造黒鉛:SBR:メチルセルロース=96:2:2(重量比)となるように混合したこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−5〕
電解液の溶媒がプロピレンカーボネートであり、1mol dm−3のLiPFを溶質とした電解液を用いており、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を含んでいないこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−6〕
電解液の溶媒としてプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート=体積比9:1を用いたこと以外は比較例B−4と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−7〕
電解液の溶媒としてプロピレンカーボネート:エチレンカーボネート=体積比1:1を用いたこと以外は比較例B−4と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−8〕
電解液の溶媒がプロピレンカーボネートであり、1mol dm−3のLiPFを溶質とした電解液を用いており、エチレンサルファイト(5重量部)を含むこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−9〕
電解液の溶媒がプロピレンカーボネートであり、1mol dm−3のLiPFを溶質とした電解液を用いており、1,3−プロパンスルトン(5重量部)を含むこと以外は実施例1と同様にして電池を作製した。
〔比較例B−10〕
電解液の溶媒としてエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=体積比3:7を用いたこと以外は実施例B−1と同様にして電池を作製した。
上記各実施例、比較例の電池の初期充放電効率と200サイクル後の容量保持率を表B−1に示す。初回充電は120mA(0.2C)の定電流充電を行い、電池電圧が4.2Vに達した時点で定電圧充電を行った。定電圧充電時の電流値が20mAになった時点で充電を終了した。
初回放電は120mA(0.2C)の定電流放電を行い、電池電圧が3.0Vになった時点で放電を終了した。この充電容量に対する放電容量の比率を初回充放電効率とした。
サイクル特性は600mAh(1C)で4.2Vの定電流低電圧充電を行い、600mAh(1C)で3.0Vまで定電流放電を行う操作を繰り返し、初回の放電容量に対する200サイクル後の放電容量の比を容量保持率とした。
また、図2に実施例B−1〜B−3、およびB−8〜B−10のプロピレンカーボネート含有率(質量%)に対する200サイクル後の容量保持率を、図3にSBRを用いた場合におけるCMC含有率(質量%)と、初期充放電効率および200サイクル後の容量保持率を、図4にPVdFを用いた場合におけるCMC含有率(質量%)と、初期充放電効率および200サイクル後の容量保持率を、図5に実施例B−1と比較例B−10の160℃加熱試験結果を示す。
以上の結果から、実施例B−1〜B−3はすべて充放電が可能であり、サイクル特性も優れている。それに対して比較例B−5〜B−7はすべて充放電が不可能であった。これは1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドを含まないために、十分な皮膜が生成しなかったためと考えられる。
実施例B−8〜B−10は、水溶性バインダーのSBRを用いた場合よりは初期充放電効率が劣るものの、充放電が可能であった。プロピレンカーボネートの比率が高い比較例B−4〜B−5は充放電が不可能であった。比較例B−3はCMCを含まないものの、PC含有率が低いため、充放電可能であった。比較例B−4〜B−5は、CMCを含まないため皮膜形成が促進されず、充電できなかったものと考えられる。比較例B−3のように、プロピレンカーボネートの含有率が低いものは、CMCが存在しなくても充放電できるが、実施例B−10と比較すると初期充放電効率は低い。
実施例B−1〜B−3と、実施例B−8〜B−10、および図2のプロピレンカーボネートの含有率とサイクル特性の関係から、プロピレンカーボネートの比率が高いほどサイクル特性に優れていることがわかる。
実施例B−4〜B−7、図3,4はCMCの濃度を変更した結果であるが、CMCが1質量%を超えると初期充放電効率が高くなるが、CMCの濃度が高くなりすぎるとサイクル特性が劣る。これは、CMC濃度がバインダーに対して多くなると、集電体と活物質の接着が悪くなるため、サイクル途中に剥離が生じ、放電容量が減少したと考えられる。実施例B−11〜B−14についても同様の傾向が見られる。
比較例B−10はプロピレンカーボネートを含まないが、サイクル特性はプロピレンカーボネートを90%以上含む実施例B−1〜B−2より劣る。また、160℃過熱試験を行ったところ、図5に示すように、実施例B−1の電池では160℃に到達後、60分間破裂、発火がなかったのに対して、比較例B−10の電池は、160℃に達してから10分後に破裂、発火した。
上記実施例、比較例の結果から、電解液に含まれる1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドと負極に含まれるカルボキシル基、または水酸基の相互作用によってプロピレンカーボネートの分解を抑制したことが明らかである。
以上のように第2の態様は、プロピレンカーボネートを高い比率で使用することを可能にしたものであり、初期充放電効率およびサイクル特性が向上し、高温時の安全性が高い電池を提供することができる。
第3の態様
〔参考例C−1〕
正極活物質としてLiNi0.33Mn0.33Co0.33(90重量部)と、導電助剤としてカーボンブラック(6重量部)および結着剤としてPVdF(4重量部)を混合して正極合剤とし、N−メチル−2ピロリドンを溶剤として分散させ、スラリー状にした。集電体であるAl箔上に得られたスラリーを塗布して乾燥し、正極とした。
負極活物質として繊維状人造黒鉛粉末:格子面(002)面間の面間隔が0.3355nm(90重量部)と、結着剤としてPVdF(10重量部)とをN−メチル−2−ピロリドンで分散させ、スラリー状とした。このスラリーを負極集電体であるCu箔上に塗布して乾燥した。このとき、単位面積当りの人造黒鉛粉末の担持量を14mg/cmとした。
電解液にはプロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)、粘性率が0.75mPa・sのジエチルカーボネート(DEC)を体積比2:1:7で混合したものを溶媒とし、LiPFを1.5mol dm−3の割合で溶質とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を調整した。
上記の正極、負極の間にゲル状電解質を塗布したセパレーターを挟み、電解液を含浸し、積層することによってセルを構成した。なお、積層体の最外層には、集電体の両面に活物質含有スラリーが塗布された負極を配置する構造とした。このような積層体をアルミラミネートフィルムに入れた後に密閉して、容量2500mAh(1C)の積層型リチウムポリマー電池を作製した。
〔参考例C−2〕
電解液として1.5mol dm−3LiPFを溶質とし、PC+EC+DECの体積比1:1:8を溶媒とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例C−3〕
電解液として1.5mol dm−3LiPFを溶質とし、PC+EC+DECの体積比3:1:6を溶媒とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例C−4〕
電解液として1.5mol dm−3LIPFを溶質とし、PC+EC+DECの体積比4:1:5を溶媒とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例C−5〕
電解液として1.5mol dm−3LiPFを溶質とし、PC+EC+DECの体積比5:1:4を溶媒とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例C−6〕
電解液として1.5mol dm−3LiPFを溶質とし、PC+EC+DECの体積仕6:1:3を溶媒とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例C−7〕
電解液として1.5mol dm−3LiPFを溶質とし、PC+EC+DECの体積比7:1:2を溶媒とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例C−8〕
電解液として2.0mol dm−3LiPFを溶質とし、PC+EC+DECの体積比2:1:7を溶媒とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例C−9〕
電解液としてPCとEC、粘性率が0.65mPa・sのメチルエチルカーボネート(MEC)を体積比:2対1対7で混合したものを溶媒とし、LiPFを1.5mol dm−3の割合で溶質とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔参考例C−10〕
電解液としてPCとEC、粘性率が0.59mPa・sのジメチルカーボネート(DMC)を体積比:2対1対7で混合したものを溶媒とし、LiPFを1.5mol dm−3の割合で溶質とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例C−1〕
電解液として1.5mol dm−3LiPFを溶質とし、PC+EC+DECの体積比4対1対5を溶媒とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイドを混合しなかったこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例C−2〕
電解液として1.0mol dm−3LiPFを溶質とし、PC+ECの体積比1:1を溶媒とし、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例C−3〕
電解液として1.5mol dm−3LiPFを溶質とし、PC+ECの体積比1:1を溶媒とし、1,3,2ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド(5重量部)を溶解した非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
〔比較例C−4〕
電解液として1.5mol dm−3LiPFを溶質とし、EC+DECの体積比3:7を溶媒とした非水電解液を用いたこと以外は参考例C−1と同様にして電池を作製した。
上記参考例C−1〜C−9および比較例C−1〜C−4の各電池を25℃において1Cの定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0Vの充放電試験を行った。初回サイクルの充放電効率および1C充放電を100サイクル行った後の容量保持率を表C−1に示す。また、所謂釘さし試験を上記各サンプルについて行った結果も合わせて表C−1に示す。
また、低温特性を−10℃での1C放電放電容量と25℃での1C放電容量の比で表し、高レート特性を2Cと0.5Cの放電容量比で表したグラフを図6に示す。
参考例C−1〜C−10は初期充放電効率が良好であり、100サイクル後の劣化も少ない。特に参考例C−1および参考例C−2の電池は−10℃での放電特性にも優れている。しかし、比較例C−1の電池はガスが発生し、充電が不可能であった。比較例C−2および比較例C−3の電池は充電可能であるが、サイクル劣化が著しい。比較例C−2および比較例C−3の電池を試験後に分解したところ、黒鉛が分解されている様子が確認された。比較例C−2および比較例C−3の電池は電解液の粘度が高く、電極と電解液の親和性が低いため、電極と電解液の界面に不均一が生じて均一な皮膜が形成されなかったと考えられる。皮膜が不均一であるために、黒鉛上でプロピレンカーボネートと黒鉛の分解反応が進行したと推測される。特に塩濃度が高く、粘度が高い比較例C−3の電池では黒鉛の分解が激しかった。
〔参考例D−1〕ESCA分析
実施例B−1において得られた電池のサイクル前(但し1サイクル充放電後)と500サイクル後の負極活物質を取り出して洗浄し、その表面をESCA(Electron Spectroscopyfor Chemical Analysis:電子分光化学分析)でスキャンし、Sの2p結合エネルギーのピークを測定した。使用機器:島津製作所製「AXIS−HSX」・使用条件:X線源(Mg−Kα線)、12kV−20mA・スキャン速度:300ms/step、0.1eVstep・パスエネルギー:40eV。結果をそれぞれ図7,8に示す。なお、他の実施例でもほぼ同様な結果が得られた。
さらに、下記化合物の分子軌道エネルギーを計算した。1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド、4−メチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド、4−エチル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド、4−プロピル−1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−ジオキサイド。計算は所定の計算用ソフトウエアを使用することにより、容易に算出することができ、本実施例ではMOPACver.7.00、ハミルトニアンはPM3を用いて算出した。結果を表D−1に示す。
本発明のリチウム電池積層体の好ましい構成を示す概略断面図である。 実施例B−1〜B−3、およびB−8〜B−10のプロピレンカーボネート含有率(質量%)に対する200サイクル後の容量保持率を示したグラフである。 SBRを用いた場合におけるCMC含有率(質量%)と、初期充放電効率および200サイクル後の容量保持率を示したグラフである。 PVdFを用いた場合におけるCMC含有率(質量%)と、初期充放電効率および200サイクル後の容量保持率を示したグラフである。 実施例B−1と比較例B−10の160℃加熱試験結果を示したグラフである。 参考例(C〜)、比較例(C〜)において、低温特性を−10℃での1C放電放電容量と25℃での1C放電容量の比で表し、高レート特性を2Cと0.5Cの放電容量比で表したグラフである。 サイクル試験前の負極活物質表面に形成された薄膜のESCA分析におけるSピークを示すグラフである。 サイクル試験後の負極活物質表面に形成された薄膜のESCA分析におけるSピークを示すグラフである。
符号の説明
2a…負極集電体、2b…負極活物質含有層、3a…正極集電体、3b…正極活物質含有層、4a…セパレータ4a、4b…固体電解質4b、11…短絡防止の負極層。

Claims (7)

  1. リチウムイオンを吸蔵/放出可能な正極および負極と、リチウムイオン導電性物質とを有し、
    前記リチウムイオン導電性物質は、下記式(1)で表される化合物および、プロピレンカーボネートを含有し、
    前記負極構成材料の一部としてカルボキシル基または水酸基を有する化合物を含有し、
    前記カルボキシル基または水酸基を有する化合物は、酢酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、トリフルオロ酢酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アクリル酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、アルギン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、芳香族カルボン酸を具備するポリイミド樹脂、及びポリビニルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも一種である、
    リチウム二次電池。

    [式(1)中、nは0または1の整数であり、R,R,RおよびRは、それぞれ水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基のいずれかを表す。]
  2. 電子分光化学分析(ESCA)による負極活物質表面分析において、硫黄元素の2p結合エネルギースペクトルの最大ピーク値が168〜172eVの間に存在する請求項1のリチウム二次電池。
  3. 前記式(1)で表される化合物は、最低非占有軌道(LUMO)の分子軌道エネルギーが+0.005〜+0.07eVである請求項1または2のリチウム二次電池。
  4. 前記プロピレンカーボネートを50体積%超含有する請求項1〜3のいずれか一項のリチウム二次電池。
  5. 前記式(1)で表される化合物を、0.01〜30質量%含有する請求項1〜4のいずれか一項のリチウム二次電池。
  6. 前記負極は、カルボシキル基または水酸基を有する化合物を0.01〜10質量%含有する請求項1〜5のいずれか一項のリチウム二次電池。
  7. 前記負極は、活物質として人造黒鉛を含有する請求項1〜6のいずれか一項のリチウム二次電池。
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