JP3760188B2 - 電子写真用キャリアおよびそれを用いた電子写真用現像剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用キャリアおよびそれを用いた電子写真用現像剤に関する。さらに詳しくは、電子写真を利用した画像形成方法において、静電潜像の現像に用いられる電子写真用キャリアおよびそれを用いた電子写真用現像剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、電子写真用静電潜像現像方式として、絶縁性非磁性トナーと磁性キャリア粒子とを混合することにより、トナーを摩擦帯電させるとともに現像剤を搬送させ、静電潜像と接触させて現像する二成分系現像方式が知られている。
【0003】
このような二成分系現像方式において使用される粒状キャリアは、キャリア表面へのトナーのフイルミング防止、キャリア均一表面の形成、現像剤の寿命の延長、感光体のキャリアによる傷または摩擦からの保護、帯電極性の制御または帯電量の調整等を目的として、磁性体であるキャリア芯材を適当な材料で被覆するのが通例である。
【0004】
しかし、従来の樹脂被覆キャリアは、使用時に加わる攪拌等の衝撃などにより被覆が剥落しやすく、耐久性の点で満足し得るものではなかった。
【0005】
このような問題点を解決する方法として、本発明者は、フェライト等のキャリア芯材粒子上で直接オレフィン系モノマーの重合を行ない、ポリオレフィン系樹脂被覆を形成する技術を開発し、先に提案した(例えば、特開平2−187771号公報等)。この方法により得られるポリオレフィン系樹脂被覆キャリアは、キャリア芯材粒子上で直接被覆が形成されるため、芯材粒子と被覆との接着性が強固で、長期連続コピーを続けても画質に劣化がなく、耐久性、耐スペント性にも優れている。
しかし、一方において、このポリオレフィン系樹脂被覆キャリアは、帯電極性の制御や帯電量の調節等を自在に行なうことに関しては、必ずしも十分に満足し得るものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、ポリオレフィン系樹脂被覆を有するキャリアのもつ優れた特性を生かしつつ、その帯電極性制御、帯電量調整を自在に行なうことが可能な、電子写真用キャリアおよびそれを用いた電子写真用現像剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明によれば、磁性を備えたキャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆する高分子量ポリエチレン樹脂とを有する電子写真用キャリアにおいて、キャリア芯材の表面を被覆する高分子量ポリエチレン樹脂の表面に、厚さが0.01〜2μmの荷電制御能を有する樹脂層、または厚さが0.01〜2μmの荷電制御能を有する微粒子層が形成されてなることを特徴とする電子写真用キャリアが提供される。
【0008】
また、その好ましい態様として、前記キャリア芯材の表面への高分子量ポリエチレン樹脂の被覆が、キャリア芯材を触媒で処理し、この処理されたキャリア芯材の表面上でエチレンモノマーを直接重合させることによるものであることを特徴とする電子写真用キャリアが提供される。
【0009】
さらに、請求項1または2に記載の電子写真用キャリアと、このキャリアに対し2〜10重量%の割合で混合されたトナーとからなることを特徴とする電子写真用現像剤が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電子写真用キャリアおよびそれを用いた電子写真用現像剤の実施の形態を具体的に説明する。
I.電子写真用キャリア
本発明の電子写真用キャリアは、キャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆する高分子量ポリエチレン樹脂とを有し、その高分子量ポリエチレン樹脂の表面に、所定厚さの荷電制御能を有する樹脂層または微粒子層が形成されている。
【0011】
1.キャリア芯材
(1)材質
本発明に用いられるキャリア芯材としては、特に制限はなく、電子写真用二成分系キャリアとして公知のもの、たとえば▲1▼フェライト,マグネタイト等、及び鉄,ニッケル,コバルト等の金属、▲2▼これらの金属等と、銅,亜鉛,アンチモン,アルミニウム,鉛,スズ,ビスマス,ベリリウム,マンガン,マグネシウム,セレン,タングステン,ジルコニウム,バナジウム等の金属との合金または混合物、▲3▼前記フェライト等と、酸化鉄,酸化チタン,酸化マグネシウム等の金属酸化物、窒化クロム,窒化バナジウム等の窒化物、炭化ケイ素,炭化タングステン等の炭化物との混合物、および▲4▼強磁性フェライト、並びに▲5▼これらの混合物等を挙げることができる。
【0012】
(2)形状,粒径
形状としては、特に制限はなく、球形,不定形等のいずれであってもよい。粒径としても特に制限はないが、たとえば20〜100μmのものを好適に用いることができる。20μm未満であると静電潜像担持体(一般には感光体)へのキャリア付着(飛散)を生ずることがあり、100μmを超えると、キャリアすじ等が発生し、画質の低下を来たすことがある。
【0013】
(3)組成割合
キャリア芯材の組成割合は、キャリア全体の90重量%以上、好ましくは95重量%以上に設定する。この組成割合は、キャリアの樹脂被覆層の厚さを間接的に規定する。組成割合が90重量%未満であると、被覆層が厚くなりすぎ、実際に現像剤に適用しても、被覆層の剥がれ、帯電量の増大等、現像剤が要求される耐久性、荷電の安定性を満足することができない。また、画質的にも細線再現性が劣り、画像濃度が低下する等の問題が生じる。上限については特に制限はないが、被覆樹脂層がキャリア芯材の表面を完全に覆う程度とする。この値はキャリア芯材の物性や被覆方法により異なる。
【0014】
(4)導電層
キャリア芯材粒子上には、必要に応じて、高分子量ポリエチレン樹脂による被覆に先立って、導電層を設けることもできる。
このキャリア芯材粒子上に形成される導電層としては、例えば導電性微粒子が適当な結着樹脂中に分散したものを用いることができる。このような導電層の形成は現像性を高めること、画像濃度が高くコントラストの鮮明な画像を得ることに効果がある。これは導電層の存在により、キャリアの電気抵抗が適度に低下し、電荷のリーク、蓄積がバランスよく行なわれるためと考えられる。
【0015】
導電層に添加する導電性微粒子としては、カーボンブラック,アセチレンブラックなどのカーボンブラック、SiCなどの炭化物、マグネタイトなどの磁性粉、SnO2 、およびチタンブラック等を挙げることができる。導電層の結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルホン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリブチラール系樹脂、尿素系樹脂、ウレタン/ウレア系樹脂、シリコン系樹脂、テフロン系樹脂等の各種熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂およびその混合物、並びに、これら樹脂の共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体およびポリマーブレンド等を挙げることができる。
【0016】
導電層は、上記導電性微粒子を上記した適当な結着樹脂に分散させた溶液をキャリア芯材粒子表面にスプレーコーティング法、ディッピング法等で塗布することにより形成することができる。また、芯材粒子、導電性微粒子および結着樹脂を溶融、混練粉砕することによっても形成可能である。また、導電性微粒子の存在下において、重合性モノマーを芯材粒子表面で重合することによっても形成可能である。上記導電性微粒子の大きさ、添加量等は最終的に得られる本発明のキャリアの電気抵抗等の諸特性を満足する限り特に制限はないが、導電性微粒子の大きさとしては、上記樹脂溶液中に均一に分散できる粒径、具体的には、平均粒径2〜0.01μm、好ましくは1〜0.01μm程度であればよい。導電性微粒子の添加量としても、その種類等にもより一概にその量を規定することができないが、導電層の結着樹脂に対して0.1重量%〜60重量%、好ましくは0.1重量%〜40重量%が適当である。特にキャリアの充填率が90重量%程度と小さく、被覆層の厚さが比較的厚い、場合、このようなキャリアを使用して細線の連続コピーを行なうと、その再現性が低下するという問題が発生するが、このような問題が上記導電性微粒子の添加により解決される。
なお、以下、キャリア芯材粒子上に導電層等の機能層が形成されたものについても、誤解のない範囲で単にキャリア芯材粒子と呼ぶ。
【0017】
2.高分子量ポリエチレン樹脂
(1)種類
高分子量ポリエチレン樹脂は、通常単にポリエチレンと呼ばれるが、本発明においては、中でもその分子量範囲が、数平均分子量として1万以上、または重量平均分子量として5万以上のものが好ましい。一般に数平均分子量が1万未満の、たとえば、ポリエチレンワックス(三井ハイワックス(三井石油化学社製)、ダイヤレン30(三菱化学社製)、日石レクスポール(日本石油社製)、サンワックス(三洋化成社製)、ポリレッツ(チュウセイワックス・ポリマー社製)、ネオワックス(ヤスハラケミカル社製)、ACポリエチレン(アライド・ケミカル社製)、エポレン(イーストマン・コダック社製)、ヘキストワックス(ヘキスト社製)、A−Wax(BASF社製)、ポリワックス(ペトロライト社製)、エスコマー(エクソンケミカル社製)等)は、本発明に用いられる高分子量ポリエチレン樹脂とは区別される。ポリエチレンワックスは、熱トルエン等に溶解することにより、通常の浸漬法、スプレー法により被覆することが可能であるが、樹脂の機械的強度が弱いため、長期間の使用に伴い現像機内でのシェア等により芯材から剥がれてしまう。
また、上記の高分子量ポリエチレン樹脂被覆中に、前記導電性微粒子、荷電制御能を有する微粒子などの機能性微粒子の1種以上を添加して特性を制御することもできる。
【0018】
(2)樹脂被覆の方法
本発明のキャリアを製造する方法(樹脂被覆の方法)としては、特に制限はなく、公知の方法、例えば浸漬法,流動床,乾式法,スプレードライ,重合法等を挙げることができるが、ポリエチレン系樹脂の被覆においては、樹脂被覆強度が強く、剥がれにくいことから次の重合法が好ましい。
【0019】
(3)重合法
重合法とは、キャリア芯材の表面をエチレン重合触媒で処理し、表面上で直接エチレンを重合(生成)させながらポリエチレン樹脂被覆キャリアを製造する方法のことをいい、例えば特開昭60−106808号公報および特開平2−187770号公報に記載の方法等を挙げることができる。すなわち、ポリエチレン樹脂被覆層は、チタンおよび/またはジルコニウムを含有するとともに炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン,ヘプタン等)に可溶な高活性触媒成分と、キャリア芯材とを予め接触処理して得られる生成物、並びに有機アルミニウム化合物を用い、前記炭化水素溶媒に懸濁させ、エチレンモノマーを供給し、キャリア芯材の表面で重合させることにより形成することができる。さらに前記荷電付与機能を有する微粒子または導電性微粒子を添加する場合は、上記高分子量ポリエチレン樹脂被覆層形成時にそれらを添加して存在させておけばよい。
この製造方法は、キャリア芯材の表面上に直接ポリエチレン被覆層を形成するので得られる被膜は強度,耐久性に優れたものとなる。
【0020】
このように、重合系中に導電性微粒子、荷電制御能を有する微粒子などの機能性微粒子を分散、共存させておくと、重合により高分子量ポリエチレン樹脂被覆が成長、形成されていく際に、この被覆中に機能性微粒子が取り込まれ、機能性微粒子を含有した高分子量ポリエチレン樹脂被覆が形成される。
【0021】
3.荷電制御樹脂および微粒子
(1)荷電制御樹脂
各種トナー(正帯電トナーまたは負帯電トナー)に対して、高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリアでの帯電量が低いかまたは高い場合、下記の(A),(B)各グループから樹脂を選択し、目的に応じて添加、被覆する。
樹脂に関しては、次の(A),(B)の各グループより適宜選択する。
(A)グループ
フッ素系樹脂(例えば、フッ化ビニリデン樹脂,四フッ化エチレン樹脂,三フッ化塩化エチレン樹脂,四フッ化エチレンン〜六フッ化プロピレン共重合体樹脂等),塩化ビニル系樹脂,セルロイド
(B)グループ
アクリル樹脂,ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン−6,ナイロン−66,ナイロン−11等),スチレン系樹脂(ポリスチレン,ABS,AS,AAS等),塩化ビニリデン樹脂,ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリアクリレート,ポリオキシベンゾイル,ポリカーボネート等),ポリエーテル系樹脂(ポリアセタール,ポリフェニレンエーテル等),エチレン系樹脂(EVE,EEA,EAA,EMAA,EAAM,EMMA等)
具体的には、
(+)トナーの帯電量を増加させる場合、(A)グループの樹脂種を用いる。
(+)トナーの帯電量を減少させる場合、(B)グループの樹脂種を用いる。
(−)トナーの帯電量を増加させる場合、(B)グループの樹脂種を用いる。
(−)トナーの帯電量を減少させる場合、(A)グループの樹脂種を用いる。
【0022】
(2)荷電制御微粒子
各種トナー(正帯電トナーまたは負帯電トナー)に対して、高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリアでの帯電量が低いかまたは高い場合、下記の(A),(B)各グループから荷電制御微粒子(剤)を選択し目的に応じて添加する。
荷電制御微粒子(剤)に関しては、次の(A),(B)の各グループより適宜選択する。
(A)グループ
サリチル酸金属錯体系(例えば、BONTRON E−48,BONTRONE−88;オリエント化学社製)
フェノール系縮合物(例えば、BONTRON E−89,BONTRON F−21;オリエント化学社製)
含金属アゾ錯体(例えば、BONTRON S−34,BONTRON S−44,BONTRON S−54;オリエント化学社製,T−95,TRH;保土ケ谷化学工業社製)
(B)グループ
第4級アンモニウム塩(例えば、BONTRON P−51;オリエント化学社製,TP−415;保土ケ谷化学工業社製)
アジン化合物(例えば、BONTRON N−01,BONTRON N−04,BONTRON N−07;オリエント化学社製)
トリフェニルメタン誘導体(例えば、Blue PR;ヘキスト社製)
具体的には、
(+)トナーの帯電量を増加させる場合、(A)グループの荷電制御剤を用いる。
(+)トナーの帯電量を減少させる場合、(B)グループの荷電制御剤を用いる。
(−)トナーの帯電量を増加させる場合、(B)グループの荷電制御剤を用いる。
(−)トナーの帯電量を減少させる場合、(A)グループの荷電制御剤を用いる。
【0023】
表面処理剤(荷電制御能樹脂および微粒子)は、高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリア表面に0.01〜2μmの厚さで被覆する。0.05〜2μmが好ましい。
表面処理剤による被覆量が0.01μm未満であると目的とする表面改質効果が得られない。一方、表面処理剤の被覆量が2μmを超えると、表面処理剤が剥がれやすくなり、耐久性に劣ることになる。
なお、被覆の厚さは、キャリアを切断し断面をSEM撮影することにより測定することができる。
【0024】
(3)荷電制御能を有する樹脂層、微粒子層の形成および固定化方法
本発明に用いられる荷電制御能を有する樹脂層、微粒子層の形成及び固定化方法は、用いる樹脂または荷電制御剤の物性(粒径,有機溶媒への溶解度,融点,硬さ等)によって次の三通りから選択して、単独に、またはこれらを組合わせて用いることができる。
▲1▼機械的衝撃による固定
ヘンシェルミキサ(三井三池化工機社製,FM10L型)等の解砕機を用い、高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリアと適量の樹脂や荷電制御剤を混合し荷電制御層を形成する。このとき加える樹脂や荷電制御剤の量は、変化させようとする帯電量の絶対値によって決まる。また、処理時間は、加える樹脂及び荷電制御剤の量、高分子量ポリエチレン量等によって異なるが、0.5〜5時間程度行なう必要がある。この機械的衝撃による樹脂及び荷電制御剤の固定では、ゴミ(樹脂微粉等)が発生するため追加分級処理を十分に行なわなければならない。
【0025】
▲2▼加熱による熱的な固定
熱球形化機(細川ミクロン社製,熱球形化機)等の加熱が可能な機器を用い、高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリアと適量の樹脂や荷電制御剤を混合し荷電制御層を形成する。このとき加える樹脂や荷電制御剤の量は、変化させようとする帯電量の絶対値によって決まる。熱球形化処理では、処理前に樹脂や荷電制御剤を高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリア表面に均一に付着させておく必要がある。そのため、ボールミル処理、Vブレンダ処理等の他、ヘンシェルミキサ処理(1分間程度)等による混合処理を行ない、樹脂や荷電制御剤の微粉を静電的または機械的に高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリア表面に付着させる。高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリア表面に均一に付着させた状態で瞬間加熱することにより、固定化され荷電制御層が形成される。
【0026】
▲3▼湿式による固定
万能混合攪拌機(ダルトン社製,5DMV−01−r)等の湿式コートが可能な機器を用い、高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリアと適量の樹脂や荷電制御剤を混合し荷電制御層を形成する。このとき加える樹脂や荷電制御剤の量は、変化させようとする帯電量の絶対値によって決まる。このとき溶媒の蒸発によって発生する温度低下を防ぐため、30〜40℃に加熱する。コート処理後に関することにより、固定化され荷電制御層が形成される。
【0027】
高分子量ポリエチレン樹脂被覆は、重量比で、[キャリア芯材粒子]/[高分子量ポリエチレン樹脂被覆]=99/1〜90/10となるように形成することが好ましく、より好ましくは99/1〜95/5である。
【0028】
高分子量ポリエチレン樹脂被覆中には、前述のように導電性微粒子、荷電制御能を有する微粒子などの機能性微粒子の1種以上を添加、担持せしてめて改質することもできる。
高分子量ポリエチレン樹脂被覆中に担持される導電性微粒子としては、従来公知のものが全て使用でき、例えば、前述のカーボンブラック、SiC等の炭化物、マグネタイト等の導電性磁性粉、SnO2 、チタンブラック等を用いることができる。導電性微粒子の平均粒径は0.01〜5.0μmが好ましい。
【0029】
4.キャリアの導電特性
キャリアの導電特性については、キャリアを用いた現像剤のシステムにより最適値はさまざまであるが、一般には102 〜1014( Ω・cm)の値を示すものが好ましい。
102 Ω・cm未満であるとキャリア現像のおそれがあり、1014Ω・cmを超えると画像濃度低下等画質劣化のおそれがある。
【0030】
II.電子写真用現像剤
本発明の電子写真用現像剤は、前記キャリアに各種トナーを混合することによって得ることができる。
1.トナー
本発明に用いられるトナーとしては、公知の方法で製造されたトナー、例えば懸濁重合法,粉砕法,マイクロカプセル法,スプレードライ法,メカノケミカル法で製造されたトナーが使用可能であり、少なくともバインダー樹脂、着色剤、及び必要に応じて他の添加剤、例えば荷電制御剤、滑剤、オフセット防止剤、定着向上助剤などを配合することができる。磁性材を添加して磁性トナーとすることもでき、現像特性の改善、トナーの機内飛散の防止に有効である。また、流動性向上のために、流動化剤を外部混合してもよい。バインダー樹脂としては、ポリスチレン,スチレン・ブタジエン共重合体,スチレン・アクリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン,エチレン・酢酸ビニル共重合体,エチレン・ビニルアルコール共重合体のようなエチレン系共重合体、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリルフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、マレイン酸樹脂などを用いることができる。着色剤としては、公知の染顔料、例えばカーボンブラック、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、ピーコックブルー、パーマネントレッド、ベンガラ、アリザリンレーキ、クロムグリーン、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ハンザイエロー、パーマネントイエロー、酸化チタンを;荷電制御剤としては、ニグロシン、ニグロシン塩基、トリフェニルメタン系化合物、ポリビニルピリジン、第4級アンモニウム塩等の正荷電制御剤、及びアルキル置換サリチル酸の金属錯塩(たとえばジ−tert−ブチルサリチル酸のクロム錯塩又は亜鉛錯塩)等の負荷電制御剤を;滑剤としてはテフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等を;オフセット防止剤、定着向上助剤としては低分子量ポリプロピレンまたはその変性物等のポリオレフィンワックス等を;磁性材としてはマグネタイト、フェライト、鉄、ニッケル等を;流動化剤としてはシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等を用いることができる。
【0031】
トナーの平均粒径は、20μm以下が好ましく、より好ましくは5〜15μmである。
【0032】
2.混合割合
本発明におけるキャリアとトナーの混合割合は、トナー2〜20重量%、好ましくは3〜15重量%、より好ましくは4〜12重量%である。トナーの混合割合が2重量%未満であると、トナー帯電量が高くなって、十分な画像濃度が得られなくなり、20重量%を超えると十分な帯電量が得られなくなるため、トナーが現像機から飛散し複写機内を汚染したり、画像上にトナーカブリが生じる。
【0033】
3.用途
本発明の現像剤は、2成分系及び1.5成分系現像方式の電子写真システム、例えば複写機(アナログ、デジタル、モノクロ、カラー)、プリンター(モノクロ、カラー)、ファックス等に用いられる。中でも現像機内で現像剤に加わるストレスが大きい高速・超高速の複写機,プリンター等において最適に用いられる。画像形成方式、露光方式、現像方式(装置)及び各種制御方式(例えば現像機内のトナー濃度制御方式等)にも特に制限はなく、システムによって最適なキャリア及びトナーの抵抗、粒径・粒径分布、磁気力、帯電量等に調整すればよい。
【0034】
【実施例】
<キャリアの製造>
(1)チタン含有触媒成分の調製
アルゴン置換した内容積500mlのフラスコに、室温にて脱水n−ヘプタン200mlおよび予め120℃で減圧(2mmHg)脱水したステアリン酸マグネシウム15g(25ミリモル)を入れてスラリー化した。攪拌下に四塩化チタン0.44g(2.3ミリモル)を滴下後昇温を開始し、還流下にて1時間反応させ、粘性を有する透明なチタン含有触媒(活性触媒)の溶液を得た。
(2)チタン含有触媒成分の活性評価
アルゴン置換した内容積1リットルのオートクレーブに脱水ヘキサン400ml、トリエチルアルミニウム0.8ミリモル、ジエチルアルミニウムクロリド0.8ミリモルおよび上記(1)で得られたチタン含有触媒をチタン原子として0.004ミリモルを採取して投入し、90℃に昇温した。このとき、系内圧は1.5kg/cm2 Gであった。次いで水素を供給し、5.5kg/cm2 Gに昇圧したのち、全圧が9.5kg/cm2 Gに保たれるようにエチレンを連続的に供給し、1時間重合を行い70gのポリマーを得た。重合活性は、365kg/g・Ti/Hrであり、得られたポリマーのMFR(190℃、荷重2.16kgにおける溶融流れ性;JIS K 7210)は40であった。
(3)ポリエチレン被覆キャリアの製造
アルゴン置換した内容積2リットルのオートクレーブに焼結フェライト粉F−300(パウダーテック社製、平均粒径50μm)960gを入れ、80℃まで昇温し1時間減圧(10mmHg)乾燥を行った。その後40℃まで降温して脱水ヘキサン800mlを入れ攪拌を開始した。次いでジエチルアルミニウムクロリド5.0ミリモル及び上記(1)のチタン含有触媒成分をチタン原子として0.05ミリモル添加して30分間反応を行った。その後90℃まで昇温し、エチレンを4g導入した。この時内圧は3.0kg/cm2 Gであった。その後水素を供給し3.2kg/cm2 Gに昇圧したのちトリエチルアルミニウム5.0ミリモルを添加し重合を開始したところ約5分間で系内圧は2.3kg/cm2 Gまで低下して安定した。その後、カーボンブラック(三菱化学社製;MA−100)5.5gを脱水ヘキサン100mlでスラリー状としたものを投入し、次いで系内圧を4.3kg/cm2 Gに保つようにエチレンを連続的に供給しながら45分間(系内にエチレンが合計で40g導入された時点で導入停止)重合を行い、全量1005.5gのカーボンブラック含有ポリエチレン樹脂被覆フェライトを得た。乾燥した粉末は均一に黒色を呈し、電子顕微鏡によるとフェライト表面は薄くポリエチレンに覆われ、カーボンブラックはそのポリエチレンに均一に分散していることが観察された。なお、この組成物をTGA(熱天秤)により測定したところ、フェライト、カーボンブラック、ポリエチレンの組成比は95.5:0.5:4.0(重量比)であった。
この段階を経て得られた中間段階のキャリアをキャリアAとする。被覆ポリエチレンの重量平均分子量は、206,000であった。
【0035】
[実施例1]
キャリアA,1000gを容量5リットルの万能混合攪拌機(ダルトン社製,5DMV−01−r)中に入れ、荷電制御を目的とした樹脂としてフッ素系樹脂(ダイキン工業社製フッ化ビニリデン樹脂,VT100)がアセトン溶媒,150ml中に4.0gが溶解している溶液を加えた。その後、攪拌しながら溶媒を蒸発させてキャリアA上にフッ素系樹脂被覆を形成した。この後、凝集した粗粉分を除去する目的で、篩を用いた大粒径キャリア及び凝集樹脂の除去を行なった。また、被覆されなかった微粉分等を除去する目的で、流動層型気流分級機を用い線速20cmで2時間処理した。この結果、キャリアBを得た。この時、フッ素系樹脂層の厚みは、0.18μmであった。
【0036】
[実施例2]
キャリアA,1000gを容量10リットルのヘンシェルミキサ(三井三池社,FM10L型)中に入れ、荷電制御剤としてフェノール系樹脂(オリエント化学社製,E−84)を45g混合した。この後、ヘンシェルミキサを用いて1時間攪拌し機械的衝撃を与えることによりキャリアA上にフェノール樹脂による荷電制御層を形成した。固定化されずに遊離の状態で存在する余分な荷電制御剤を除去する目的で、篩処理による大粒径キャリア及び凝集荷電制御剤の除去を行なった。また、固定化されなかった荷電制御剤微粉分等を除去する目的で、流動層型気流分級機を用い線速20cmで2時間処理した。この結果、キャリアCを得た。この時、フェノール系樹脂層の厚みは、1.99μmであった。
【0037】
[実施例3]
キャリアA,1000gを容量10リットルのヘンシェルミキサ(三井三池社,FM10L型)中に入れ、荷電制御剤として、含金属アゾ錯体(保土ケ谷化学工業社製,T−95)を1.0g混合した。この後、ヘンシェルミキサを用いて1分間攪拌し、キャリアA表面に静電的または機械的に付着させた。その後、熱球形機(細川ミクロン社製,熱球形化装置)により、200℃の熱風で加熱処理を行ない被覆ポリエチレン樹脂中に荷電制御剤を溶融固定化させ、キャリアA上に含金属アゾ錯体による荷電制御層を形成させた。固化されずに遊離の状態で存在する余分な荷電制御剤を除去する目的で篩処理による大粒径キャリア及び凝集荷電制御剤の除去を行なった。また、固定化されなかった荷電制御剤微粉分等を除去する目的で、流動層型気流分級機を用い線速20cmで2時間処理した。この結果、キャリアDを得た。この時、含金属アゾ錯体による荷電制御層の厚みは、0.05μmであった。
【0038】
[実施例4]
キャリアA,1000gを容量5リットルの万能混合攪拌機(ダルトン社製,5DMV−01−r)中に入れ、荷電制御を目的とした樹脂として、フッ素系樹脂(ダイキン工業社製フッ化ビニリデン樹脂,VT100)がアセトン溶媒,150ml中に2.0gが溶解している溶液を加えた。その後、攪拌しながら溶媒を蒸発させてキャリアA上にフッ素系樹脂被覆を形成した。この後、ヘンシェルミキサを用いて1時間攪拌し機械的衝撃を与えることにより荷電制御層の平滑化を行なうと共に、形成された荷電制御層をより強固な状態にした。固定化されずに遊離の状態で存在する余分な粗粉分を除去する目的で、篩を用いて大粒径キャリア及び凝集樹脂の除去を行なった。また、固定化されなかった樹脂微粉分等を除去する目的で、流動層型気流分級機を用い線速20cmで2時間処理した。この結果、キャリアEを得た。この時、フッ素系樹脂層の厚みは、0.09μmであった。
【0039】
[実施例5]
キャリアA,1000gを容量5リットルの万能混合攪拌機(ダルトン社製,5DMV−01−r)中に入れ、荷電制御を目的とした樹脂としてシリコン系樹脂(信越化学工業社製シリコンワニス,KBM−7103)が25g溶解しているメタノール溶媒を加えた。その後、攪拌しながら溶媒を蒸発させキャリアA上にシリコン系樹脂被覆を形成した。この後、凝集した粗粉分を除去する目的で、篩を用いて大粒径キャリア及び凝集樹脂の除去を行なった。また、被覆されなかった微粉分等を除去する目的で、流動層型気流分級機を用い線速20cmで2時間処理した。この結果、キャリアFを得た。この時、フッ素系樹脂層の厚みは、1.1μmであった。
【0040】
[応用例1]
キャリア製造例および実施例1〜5で得られたキャリアA〜FそれぞれについてトナーA〜トナーDについて各帯電量を帯電量測定装置(東芝ケミカル社製,TB−500形)を用いて測定した。このときの測定条件は、トナー0.5gとキャリア9.5gを混合し、50mlポリビン中に入れボールミルにより1時間攪拌、ブロー圧0.8kg/cm2 、ブロー時間50秒、500メッシュステンレス製金網使用で実施した。このときの各帯電量値を表−1に示す。
上記材料をボールミルで十分混合した後、140℃に加熱した3本ロール上で混練した。混合物を放置冷却後、フェザーミルを用いて粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕してトナーAを得た。
上記材料をボールミルで十分混合した後、140℃に加熱した3本ロール上で混練した。混合物を放置冷却後、フェザーミルを用いて粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕してトナーBを得た。
上記材料をボールミルで十分混合した後、140℃に加熱した3本ロール上で混練した。混合物を放置冷却後、フェザーミルを用いて粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕してトナーCを得た。
上記材料をボールミルで十分混合した後、140℃に加熱した3本ロール上で混練した。混合物を放置冷却後、フェザーミルを用いて粗粉砕し、更にジェットミルで微粉砕してトナーDを得た。
【0041】
この結果、キャリアAではトナーA〜Dにおいて不十分であった帯電量が、キャリアAに荷電制御処理を施した場合、実施例1〜5のキャリア(キャリアB〜F)のうち少なくとも1種類以上が、通常の機器の印字時に求められる帯電領域±18〜30μC/gに荷電制御可能なことが分かった。
【0042】
[応用例2]
帯電のしやすさを、コート処理後のキャリアA及びキャリアBにおいて比較した。この比較は、帯電量を測定する以前の攪拌時間(ボールミルを用いた攪拌)による帯電量の変化をトナーAについて確認した。その結果、樹脂コートを施したキャリアBが初期の帯電量及びその後の安定性に優れることが判明した。このような帯電量の初期の立ち上がりは画像の安定性に影響する。この結果を図1に示す。
【0043】
[比較例1]
キャリアの製造例で得られた荷電制御処理前のキャリアAを応用例1と同様に各トナーに対して帯電量を測定した。その結果を表1に示す。
【0044】
[比較例2]
キャリアA,1000gを容量10リットルのヘンシェルミキサ(三井三池社,FM10L型)中に入れ、荷電制御剤、フェノール系樹脂(オリエント化学社製,E−84)を50g混合した。この後、ヘンシェルミキサを用いて1時間攪拌し機械的衝撃を与えることによりキャリアA上にフェノール樹脂による荷電制御層を形成した。固定化されずに遊離の状態で存在する余分な荷電制御剤を除去する目的で、篩処理による大粒径キャリア及び凝集荷電制御剤の除去を行なった。また、固定化されなかった荷電制御剤微粉分等を除去する目的で、流動層型気流分級機を用い線速20cmで2時間処理した。この結果、キャリアGを得た。この時、フェノール系樹脂層の厚みは2.5μmであった。
キャリアG及びトナーBを用い、トナーとキャリアの混合比が5重量%になるように混合し、現像剤1kgを作製した。この現像剤を市販の中速複写機(富士ゼロックス社製:5039)(40枚/分・A4)に入れ、実印字1000枚の耐久評価を実施した。その結果、実印字耐久評価初期から画像の汚れが発生し、枚数の増加と共に悪化した。評価後の現像剤の電子顕微鏡観察から、汚れの原因はフェノール系樹脂の剥がれであった。
【0045】
[比較例3]
キャリアA,1000gを容量5リットルの万能混合攪拌機(ダルトン社製,5DMV−01−r)中に入れ、荷電制御を目的とした樹脂としてフッ素系樹脂(ダイキン工業社製フッ化ビニリデン樹脂,VT100)がアセトン溶媒,150ml中に0.2gが溶解している溶液を加えた。その後、攪拌しながら溶媒を蒸発させてキャリアA上にフッ素系樹脂被覆を形成した。この後、凝集した粗粉分を除去する目的で、篩を用いた大粒径キャリア及び凝集樹脂の除去を行なった。また、被覆されなかった微粉分等を除去する目的で、流動層型気流分級機を用い線速20cmで2時間処理した。この結果、キャリアHを得た。この時、フッ素系樹脂層の厚みは、0.008μmであった。
【0046】
【0047】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によって、耐久性,帯電性に優れるとともに、帯電極性の制御および帯電量の調節が自在な電子写真用キャリアおよびそれを用いた電子写真用現像剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1および比較例1のキャリアを用い、かつ、それぞれAトナーを用いた現像剤の、帯電量制御による帯電量立ち上がりの比較を示す説明図である。
Claims (4)
- 磁性を備えたキャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆する数平均分子量が1万以上の高分子量ポリエチレン樹脂とを有する電子写真用キャリアにおいて、キャリア芯材の表面を被覆する高分子量ポリエチレン樹脂の表面に、厚さが0.01〜2μmの荷電制御能を有する樹脂層、または厚さが0.01〜2μmの荷電制御能を有する微粒子層が固定化されて形成されてなることを特徴とする電子写真用キャリア。
- 前記キャリア芯材の表面への高分子量ポリエチレン樹脂の被覆が、キャリア芯材を触媒で処理し、この処理されたキャリア芯材の表面上でエチレンモノマーを直接重合させることによるものであることを特徴とする請求項1記載の電子写真用キャリア。
- 請求項1または2に記載の電子写真用キャリアと、このキャリアに対し2〜20重量%の割合で混合されたトナーとからなることを特徴とする電子写真用現像剤。
- 磁性を備えたキャリア芯材の表面を、数平均分子量が1万以上の高分子量ポリエチレン樹脂で被覆し、
前記高分子量ポリエチレン樹脂被覆キャリアの表面上に、厚さが0.01〜2μmの荷電制御能を有する樹脂層又は微粒子層を、解砕機又は熱球形化機を用いて固定化して形成する電子写真用キャリアの製造方法。
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