JP3926937B2 - 電子写真用キャリア、電子写真用キャリアの製造方法および電子写真用キャリアを用いた電子写真用現像剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真用キャリア(以下、単にキャリアと称する場合がある。)、電子写真用キャリアの製造方法および電子写真用キャリアを用いた電子写真用現像剤に関する。さらに詳しくは、電子写真を利用した画像形成方法において、静電潜像の現像に用いられる電子写真用キャリア、その電子写真用キャリアの製造方法およびその電子写真用キャリアを用いた電子写真用現像剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真用静電潜像現像方式として、一成分磁性ジャンピング現像方式、一成分非磁性接触現像方式、および絶縁性非磁性トナーと磁性キャリア粒子とを混合することにより、トナーを摩擦帯電させるとともに現像剤を搬送させ、静電潜像と接触させて現像する二成分系現像方式が知られており、特に、二成分系現像方式は、カラープリンタへの応用が今後の展開として見直されてきている。
【0003】
このような二成分系現像方式において使用される粒状キャリアは、キャリア表面へのトナーのフィルミング防止、キャリア均一表面の形成、現像剤の寿命の延長、感光体のキャリアによる損傷または帯電量の調整等を目的として、磁性体であるキャリア芯材を適当な材料で被覆した樹脂被覆キャリアとするのが通例である。しかしながら、このような樹脂被覆キャリアは、使用時に加わる攪拌等の衝撃などにより被覆が剥落しやすく、耐久性の点で満足し得るものではなかった。
【0004】
そこで、本発明者らは、フェライト等のキャリア芯材粒子上で直接オレフィン系モノマーの重合を行ない、ポリオレフィン系樹脂被覆を形成する技術を開発し、先に提案した(例えば、特開平2−187771号公報等)。この方法により得られるポリオレフィン系樹脂被覆キャリアは、キャリア芯材粒子上で直接被覆が形成されているため、芯材と被覆との接着性が強固で、長期連続コピーを続けても画質に劣化がなく、耐久性、耐スペント性にも優れている。
しかし、一方において、このポリオレフィン系樹脂被覆キャリアは、帯電極性の制御や帯電量の調節等を自在に行うことができない上、トナーの外添剤の付着によって発生する外添剤のスペント化等の問題が発生するなど、必ずしも十分に満足し得る耐久性を有していなかった。
また、抵抗値の微調整や画像濃度の調整、あるいは環境に対する帯電安定性に関しても必ずしも十分満足し得る性能を有していなかった。
【0005】
そこで、このような問題を解決する方法として、特開昭53−100242号公報には、キャリア被覆樹脂中にニグロシンを含有させて負帯電量を向上させたキャリアが開示されており、また、特開昭61−9661号公報には、流動性向上剤を添加し、流動性を向上させたキャリアが開示されている。さらに、特開平2−210365号公報には、導電性粒子、無機充填粒子、荷電制御剤のうちの一種を添加し、帯電性の均一化およびスペント化を防ぐ技術が開示されている。しかしながら、これらの技術は、いずれも前述したポリオレフィン系樹脂被覆キャリアの有する優れた特性を活かしつつ、帯電極性制御、帯電量調整、抵抗調整を自在に行なうこと、トナー外添剤のスペント化防止および環境による帯電量変化を防ぐことを全て満足させることはできなかった。
【0006】
そこで、特開平10−171168号公報には、キャリア芯材粒子上で直接エチレンモノマーの重合を行ない高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層を形成するとともに、少なくとも被覆層の最外殻層として、その立体形状が6以上の平面および/または曲面に囲まれた凸多面体である磁性粉を含む層、またはこの磁性粉とシリカおよび/もしくは微粒子樹脂とを含む層を有する電子写真用キャリアが開示されている。
この方法により得られた電子写真用キャリアは、キャリア芯材粒子上に直接被覆層が形成されているため、芯材と被覆との接着性が強固で耐久性や耐スペント性に優れており、長期間連続的にコピーを続けても画質の劣化(画像濃度の低下)が生じることが少ない。また、磁性粉が被覆層の外部に露出して最外殻層を形成しているため、帯電量の調整も可能であり、導電特性にも優れている。そのため、キャリアのチャージアップ等を防ぐことが可能であり、さらに、バイアス電圧による画像濃度の調整も可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平10−171168号公報に記載の電子写真用キャリアによれば、最外殻層に磁性粉を露出させて溶融固定化してあるため、長時間連続的にコピーを続けた場合に磁性粉の一部が脱落したり、あるいは使用環境(湿度や温度等)が激しく変化した場合に、最外殻層に露出した磁性粉がその影響を受けて、電子写真用キャリアにおける帯電特性が変化する場合が見られた。
すなわち、本発明は、耐久性、耐スペント性に優れ、帯電量の調整が容易であり、導電特性に優れ、しかも帯電特性について使用環境の影響を受けづらい電子写真用キャリア、その電子写真用キャリアの製造方法およびその電子写真用キャリアを用いた電子写真用現像剤を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、磁性を備えたキャリア芯材と、当該キャリア芯材の表面を被覆する高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層とを有する電子写真用キャリアにおいて、被覆層に磁性粉が埋設してあるとともに、当該磁性粉を被覆するように表面ポリエチレン被覆層が形成してあることを特徴とする電子写真用キャリアに関する。
このように構成すると、被覆層内に磁性粉が埋設され、磁性粉が実質的に外部に露出していないため、長時間使用した場合でも磁性粉が脱落することが少ない
。また、湿度等の使用環境が激しく変化した場合にも、磁性粉の影響による帯電特性の変化が少なくなる。
なお、表面ポリエチレン被覆層は、高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層と一体として設けられる。
【0009】
また、本発明の電子写真用キャリアを構成するにあたり、表面ポリエチレン被覆層の厚さを0.005〜0.05μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成すると、磁性粉が完全に被覆されて露出しない一方、この磁性粉が過度に埋設されずに被覆層内の所定位置に存在することになる。したがって、帯電特性について環境条件の影響を受けることがより少なくなる一方、電子写真用キャリアにおける耐久性、耐スペント性および帯電量の調整しやすさとのバランスを取ることがより容易となる。また、表面ポリエチレン被覆層の厚さをこのような範囲内の値とすると、電子写真用キャリアの表面が平滑化され、しかも形状が真球に近くなるため、流動性が向上する。
【0010】
また、本発明の電子写真用キャリアを構成するにあたり、磁性粉の形状を凸多面体とすることが好ましい。
このような磁性粉を使用すると、電子写真用キャリアにおける導電特性がより容易となる。なお、凸多面体とは、6以上の平面および曲面あるいはいずれか一方に囲まれた形状であり、例えば8面体やそれ以上の多面体であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の電子写真用キャリアを構成するにあたり、磁性粉の表面を疎水化処理することが好ましい。
このような磁性粉を使用すると、極端な環境の変化(特に、湿度変化)に対する帯電量変化が少なくなるばかりか、疎水化処理剤、例えば、シランカップリング剤やシリコンオイルの種類や処理量を選択することにより、電子写真用キャリアにおける帯電極性や帯電量の調整が容易となる。
【0012】
また、本発明の電子写真用キャリアを構成するにあたり、被覆層に、カーボンブラック、シリカおよび帯電特性樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料を配合することが好ましい。
このような材料を配合することにより、電子写真用キャリアにおける帯電量の立ち上がり性や帯電量の調整および帯電量を安定化させることがより容易となる。
【0013】
また、本発明の電子写真用キャリアを構成するにあたり、体積抵抗を1×102 〜1×1014Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成すると、電子写真用キャリアにおける帯電量の調整および導電特性の調整がより容易となる。
【0014】
また、本発明の電子写真用キャリアを構成するにあたり、平均粒径を20〜120μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように構成すると、電子写真用キャリアにおける耐久性、耐スペント性や帯電量の調整のしやすさおよび画像特性とのバランスを取ることがより容易となる。
【0015】
また、本発明の別の態様は、磁性を備えたキャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆する高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層とを有する電子写真用キャリアの製造方法において、被覆層を直接重合法により形成した後、当該被覆層に磁性粉を50〜120℃の範囲内の処理温度にて機械的衝撃により埋設するとともに、当該磁性粉を被覆するように表面ポリエチレン被覆層を形成することを特徴とする電子写真用キャリアの製造方法に関する。
このように電子写真用キャリアを製造すると、磁性粉を被覆層内に容易に埋設させるとともに、表面ポリエチレン被覆層を容易に形成することができる。また、優れた耐久性や耐スペント性を有し、しかも帯電量の調整が容易な電子写真用キャリアを効率的に得ることができる。
なお、表面ポリエチレン被覆層は、磁性粉を被覆層中に埋設する際に同時に設けても良く、あるいは磁性粉を被覆層中に埋設した後に、別個に被覆工程を設けて形成しても良い。
【0016】
また、本発明のさらに別の態様は、上述した電子写真用キャリアと、トナーとからなる電子写真用現像剤であり、トナーの添加量を全体量に対して2〜40重量%の範囲内の値とする電子写真用現像剤に関する。
このように構成した電子写真用現像剤は、耐久性に優れるとともに、優れた画像特性を長期間にわたって得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の電子写真用キャリア、その電子写真用キャリアの製造方法およびその電子写真用キャリアを用いた電子写真用現像剤の実施の形態を具体的に説明する。
[第1の実施形態]
I.電子写真用キャリア
第1の実施形態の電子写真用キャリアは、キャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆する高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層とを有しており、その最表面ポリエチレン被覆層の厚さが0.005〜0.05μmの範囲となる位置に、立体形状が6以上の平面および曲面あるいはいずれか一方に囲まれた凸多面体である磁性粉が埋設されている。以下、電子写真用キャリアにおける各構成要素について具体的に説明する。
【0018】
1.キャリア芯材
(1)材質
本発明に用いられるキャリア芯材の材質としては、特に制限はなく、電子写真用二成分系キャリアとして公知のものが使用可能である。
たとえば、▲1▼フェライト,マグネタイト、及び鉄,ニッケル,コバルト等の金属、▲2▼▲1▼に示す金属等と、銅,亜鉛,アンチモン,アルミニウム,鉛,スズ,ビスマス,ベリリウム,マンガン,マグネシウム,セレン,タングステン,ジルコニウム,バナジウム等の金属との合金または混合物、▲3▼▲1▼に示すフェライト等と、酸化鉄,酸化チタン,酸化マグネシウム等の金属酸化物、窒化クロム,窒化バナジウム等の窒化物、炭化ケイ素,炭化タングステン等の炭化物との混合物、および▲4▼強磁性フェライト、並びに▲5▼▲1▼〜▲4▼の混合物等を挙げることができる。
【0019】
(2)形状,粒径
キャリア芯材の形状としては特に制限されるものではなく、球形,不定形等のいずれであってもよい。また、キャリア芯材の平均粒径についても特に制限されるものではないが、たとえば20〜120μmの範囲内の値とするのが好ましく、より好ましくは、25〜80μmの範囲内の値とすることである。キャリア芯材の平均粒径が20μm未満となると、静電潜像担持体(一般には感光体)へのキャリア付着(飛散)を生ずる場合があり、一方、平均粒径が120μmを超えると、キャリアすじ等が発生し、画質特性の劣化(画像濃度の低下)を来たす場合がある。
【0020】
(3)キャリア芯材の組成割合
キャリア芯材の組成割合を、キャリア全体を100重量%としたときに、90重量%以上の値とするのが好ましく、95重量%以上の値に設定するのがより好ましい。キャリア芯材の組成割合は、キャリアの被覆層の厚さを間接的に規定することになるが、キャリア芯材の組成割合が90重量%未満となると、被覆層が過度や不均一な厚さとなる場合がある。したがって、実際に現像剤に適用した場合に、被覆層の剥がれ、帯電量の増大等の問題が生じたり、あるいは現像剤に要求される耐久性、荷電の安定性を満足できない場合がある。また、キャリア芯材の組成割合が90重量%未満となると、画質的にも細線再現性が劣り、画像濃度が低下する場合がある。
一方、キャリア芯材の組成割合の上限については、被覆樹脂層がキャリア芯材および磁性粉を完全に覆う程度とするのが好ましく、具体的に、99.5重量%以下とするのが好ましく、99.0重量%以下とするのがより好ましい。なお、キャリア芯材の組成割合の好ましい範囲は、キャリア芯材の物性や被覆方法により若干異なる場合がある。
【0021】
(4)導電層
キャリア芯材粒子上に、高分子量ポリエチレン樹脂による被覆に先立って、導電層を設けることも好ましい。このような導電層を設けることにより、より優れた現像性が得られ、画像濃度が高く、コントラストの鮮明な画像を得ることができる。これは導電層の存在により、キャリアの電気抵抗が適度に低下し、電荷のリーク、蓄積がバランスよく行なわれるためと考えられる。
【0022】
また、導電層の種類としては、導電性微粒子が適当な結着樹脂中に分散されたものを用いることが好ましい。このような導電性微粒子としては、カーボンブラック,アセチレンブラックなどのカーボンブラック、SiCなどの炭化物、マグネタイトなどの磁性粉、SnO2 、およびチタンブラック等を挙げることができる。導電層の結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスルホン酸系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリブチラール系樹脂、尿素系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の各種熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂およびその混合物、並びに、これら樹脂の共重合体、ブロック重合体、グラフト重合体およびポリマーブレンド等を挙げることができる。
【0023】
また、導電性微粒子の大きさ、添加量等は、最終的に得られるキャリアの電気抵抗等の諸特性を満足する限り特に制限されるものではないが、例えば、導電性微粒子の平均粒径を、樹脂溶液中に均一に分散できる程度の粒径、具体的には、0.01〜2.0μmの範囲内の値とするのが好ましく、0.01〜1.0μmの範囲内の値とするのがより好ましい。
【0024】
また、導電性微粒子の添加量としても、導電性微粒子の種類によっても多少変わるが、導電層の結着樹脂に対して0.1〜60重量%の範囲内の値、好ましくは0.1〜40重量%の範囲内の値とするのが適当である。特に、キャリアの充填率が90重量%程度と小さく、被覆層の厚さが比較的厚い場合、このようなキャリアを使用して細線の連続コピーを行なうと、その再現性が低下するという問題が発生する場合があるが、上述した導電性微粒子を添加することにより効率的に防止することができる。
【0025】
また、導電層の形成方法は特に制限されるものではないが、導電性微粒子を結着樹脂に分散させた溶液をキャリア芯材表面に対して、スプレーコーティング、ディッピング等を用いて塗布することにより形成することができる。また、キャリア芯材、導電性微粒子および結着樹脂を溶融、混練粉砕することによっても導電層を形成することが可能である。さらに、導電性微粒子の存在下において、重合性モノマーを芯材粒子表面で直接重合することによっても形成可能である。
なお、キャリア芯材粒子上に導電層等の機能層が形成されたものについても、単にキャリア芯材粒子と称する場合がある。
【0026】
2.高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層
(1)高分子量ポリエチレン樹脂
被覆層を構成する高分子量ポリエチレン樹脂は、通常単にポリエチレンと呼ばれるが、本発明においては、分子量範囲として、数平均分子量が1万以上、または重量平均分子量が5万以上のものが好ましい。したがって、一般に数平均分子量が1万未満であるポリエチレン樹脂、たとえば、ポリエチレンワックス(三井ハイワックス(三井石油化学社製)、ダイヤレン30(三菱化学社製)、日石レクスポール(日本石油社製)、サンワックス(三洋化成社製)、ポリレッツ(チュウセイワックス・ポリマー社製)、ネオワックス(ヤスハラケミカル社製)、ACポリエチレン(アライド・ケミカル社製)、エポレン(イーストマン・コダック社製)、ヘキストワックス(ヘキスト社製)、A−Wax(BASF社製)、ポリワックス(ペトロライト社製)、エスコマー(エクソンケミカル社製)等)は、本発明に使用される高分子量ポリエチレン樹脂とは区別されるものである。すなわち、数平均分子量が1万未満となると、これらのポリエチレン樹脂(ワックス)は、熱トルエン等に溶解させた後、通常の浸漬法やスプレー法により被覆することができるものの、機械的強度が弱いため、長期間使用すると現像機内での剪断力(シェア)等により、芯材から剥がれてしまう場合がある。
なお、高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層中に、導電性微粒子や、荷電制御能を有する帯電特性微粒子などの1種または2種以上の組合わせからなる機能性樹脂を添加するのも好ましい。
【0027】
(2)被覆層
▲1▼被覆層の形成方法
高分子量ポリエチレンからなる被覆層の形成方法としては、特に制限はなく、例えば浸漬法,流動床,乾式法,スプレードライ,直接重合法等を挙げることができる、ただし、被覆強度が強く、剥がれにくいことから直接重合法を採ることが好ましい。以下、直接重合法について、より詳細に説明する。
【0028】
直接重合法とは、キャリア芯材の表面を予めエチレン重合用触媒で処理しておき、次いで、表面上で直接エチレンを重合(生成)させながらポリエチレン樹脂被覆キャリアを製造する方法をいう。すなわち、エチレン重合用触媒として、チタンおよびジルコニウムあるいはいずれか一方を含有するとともに炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン,ヘプタン等)に可溶な高活性触媒成分およびキャリア芯材を予め接触処理して得られる固体生成物に有機アルミニウム化合物を添加した後、これを炭化水素溶媒に懸濁させ、さらにエチレンモノマーを供給して、キャリア芯材の表面で重合させることによりポリエチレン樹脂被覆層を形成する方法をいう。この製造方法によれば、キャリア芯材の表面上にポリエチレン被覆層を直接形成するので、得られる被覆層は強度が強く、耐久性に優れたものとなる。なお、このような直接重合法の詳細については、例えば特開昭60−106808号公報および特開平2−187770号公報に記載されており、それと同様の方法を挙げることができる。
【0029】
また、被覆層中に、荷電付与機能を有する微粒子または導電性微粒子をさらに添加する場合には、被覆層の形成時にそれらをエチレンモノマーに添加して共存在させておけばよい。例えば、重合系中に導電性微粒子や、荷電制御能を有する機能性微粒子を分散、共存させておくと、被覆層が重合されて形成されていく際に、被覆層中に機能性微粒子等が取り込まれ、機能性微粒子等を含有した被覆層を容易に形成することができる。
【0030】
▲2▼被覆量
高分子量ポリエチレンの被覆量を、[高分子量ポリエチレン樹脂被覆]/[キャリア芯材粒子]の重量比で表わした場合に、0.5/99.5〜10/90の範囲内の値となるように形成することが好ましく、より好ましくは1/99〜5/95の範囲内の値とすることである。この重量比が10/90よりも大きくなると、被覆層が相対的に厚くなり、被覆層が剥がれたり、荷電の安定性を満足することができない場合がある。また、画質的にも細線再現性が劣り、画像濃度が低下する等の問題が生じる場合がある。また、重量比が0.5/99.5よりも小さくなると、被覆層が相対的に薄くなり、キャリア芯材および磁性粉を完全に覆うことが困難となる場合がある。
【0031】
▲3▼磁性粉
次に、被覆層に埋設する磁性粉について説明する。このような磁性粉の種類は特に制限されるものではなく、キャリア芯材の材質において説明したものと同様の磁性粉を使用することができる。たとえば、マグネタイト,フェライト,鉄粉等の1種または2種以上の混合物を挙げることができる。
【0032】
また、使用する磁性粉の立体形状についても制限されるものではないが、6以上の平面および曲面あるいはいずれか一方に囲まれた凸多面体であることが好ましい。通常多面体とは平面のみによって囲まれた立体を意味するが、本発明においては全てのまたは一部の面が曲面であるものも含む。このような凸多面体は、平面又は曲面により形成される稜や頂点を有しており、これらの存在により、導電効率が向上すると考えられる。すなわち、面での導電機構から凸多面体の稜や頂点における点での導電機構に変わり、導電効率が向上すると考えられる。なお、このような凸多面体の磁性粉としては、三井金属社製のマグネタイトMG−1306(8面体)やマグネタイトMG−9300(多面体)などの市販品を挙げることができる。
【0033】
また、被覆層に埋設する磁性粉の表面に、疎水化剤、例えば、シランカップリング剤やシリコンオイルを用いて、磁性粉を表面処理することが好ましい。このように磁性粉表面に疎水化処理を施すことにより、極端な環境変化(特に、湿度変化)によって帯電量が変化することのないキャリアを得ることができる。
ここで、このようなシランカップリング剤等の種類についても特に制限されるものではないが、例えば、アルキル基を有するシランカップリング剤やこれとは帯電特性が異なるもののアミノ基を有するシランカップリング剤を使用することが好ましい。より具体的には、シランカップリング剤として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルジエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキメチルシラン、γ−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、等の一種またはニ種以上の組み合わせを挙げることができる。また、シリコンオイルについても、フッ素系シリコンオイルや含酸素シリコンオイル等の種類によって帯電特性が異なるものの、いずれのシリコンオイルも好適に使用することができる。より具体的には、ジメチルシリコンオイル、メチルハイドロジェンシリコンオイル、フッ素変性シリコンオイル、アミノ変性シリコンオイル等を挙げることができる。
また、疎水化剤の種類や処理量により帯電量が変化することから、適当な処理剤で疎水化処理された磁性粉の添加量を変更することで、さらに容易に帯電量を調整することが可能となる。具体的に、疎水化剤の処理量を、磁性粉100重量部に対して、0.01〜100重量部の範囲内の値とするのが好ましく、0.1〜50重量部の範囲内の値とするのがより好ましく、1.0〜20重量部の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
さらに、疎水化剤の処理方法としては、公知の処理方法を採用することができ、浸漬法やスプレー法等を採ることができる。例えば、浸漬法を用いた場合、撹拌機を用いて、磁性粉とシランカップリング剤とを均一に混合した後、30〜100℃の温度範囲で加熱することが好ましい。また、磁性粉とシランカップリング剤とを混合する際に、水を添加しシランカップリング剤を加水分解させることが好ましい。
【0034】
また、磁性粉の平均粒径を、0.1〜1.0μmの範囲内の値とするのが好ましく、0.2〜0.7μmの範囲内の値とするのがさらに好ましい。この理由は、磁性粉の平均粒径が0.1μm未満となると、接触抵抗値が上昇して放電特性が低下する場合があり、一方、磁性粉の平均粒径が1μmを超えると、被覆層への埋設が困難となる場合がある。
【0035】
また、磁性粉の電気抵抗(体積抵抗)を、1×107 〜1×1010Ω・cmの範囲内の値とするのが好ましく、1×107 〜1×109 Ω・cmの範囲内の値とするのがより好ましい。この理由は、磁性粉の電気抵抗が1×107 Ω・cm未満となると、帯電特性が著しく低下する場合があり、一方、1×1010Ω・cmΩ・cmを超えると、キャリアの抵抗調整ができなくなり、磁性粉としての機能を果たさなくなる場合があるためである。
【0036】
また、磁性粉の添加量についても特に制限されるものではないが、例えば、キャリアにおける高分子ポリエチレンの被覆量を100重量%したときに、0.1〜70重量%(被覆樹脂に対する添加物の重量%)の割合で加えるのが好ましい。この理由は、磁性粉の添加量が0.1重量%未満となると、導電特性を得ることが困難となる場合があり、一方、磁性粉の添加量が70重量%を超えると、磁性粉を均一に埋設することが困難となり、周囲の環境変化の影響を受けやすくなる場合がある。したがって、磁性粉の添加量を20〜60重量%の範囲内の値とするのがより好ましい。
【0037】
▲4▼シリカ粒子
次に、シリカ粒子について説明する。被覆層中に、たとえば表面疎水化処理し、正帯電特性または負帯電特性としたシリカ粒子を添加することが好ましい。
また、シリカ粒子の平均粒径を、一次粒径として40nm以下の値とするのが好ましく、10〜30nmの範囲内の値とするのがより好ましい。シリカ粒子の一次粒径が40nmを超えると、シリカ粒子同士の間隙が大きくなり、キャリア表面に凹凸が発生し、流動性が低下する場合がある。
【0038】
このようなシリカ粒子の市販品としては、正帯電特性シリカとして、日本アエロジル社製のRA200HS,ワッカーケミカルズ社製の2015EP,2050EPなどを、負帯電特性シリカとして、日本アエロジル社製のR812,RY200,ワッカーケミカルズ社製の2000,2000/4などを挙げることができる。
なお、正帯電トナーの帯電量を上げる場合には、負帯電特性シリカ粒子を使用する一方、負帯電トナーの帯電量を上げる場合には、正帯電特性シリカ粒子を添加し、トナーの帯電量を下げる場合には、トナーと同一極性のシリカを用いるのが好ましい。
【0039】
▲5▼機能性微粒子
次に、シリカ粒子以外の機能性微粒子について説明する。被覆層中には、導電性微粒子や荷電制御能を有する帯電特性粒子の1種または2種以上を添加、担持せしめて改質することも好ましい。このような導電性微粒子としては、従来公知のものが全て使用できる。例えば、カーボンブラック、SiC等の炭化物、マグネタイト等の導電性磁性粉、SnO2 、チタンブラック等を用いることができる。また、導電性微粒子の平均粒径は0.01〜2.0μmの範囲内が好ましい。
【0040】
また、帯電特性粒子としては、たとえば負帯電特性樹脂(A)および正帯電特性樹脂(B)を挙げることができる。
(A)負帯電特性樹脂
フッ素系樹脂(例えば、フッ化ビニリデン樹脂,四フッ化エチレン樹脂,三フッ化塩化エチレン樹脂,四フッ化エチレンン〜六フッ化プロピレン共重合体樹脂等),塩化ビニル系樹脂,セルロイド
【0041】
(B)正帯電特性樹脂
アクリル樹脂,ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン−6,ナイロン−66,ナイロン−11等),スチレン系樹脂(ポリスチレン,ABS,AS,AAS等),塩化ビニリデン樹脂,ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリアクリレート,ポリオキシベンゾイル,ポリカーボネート等),ポリエーテル系樹脂(ポリアセタール,ポリフェニレンエーテル等),エチレン系樹脂(EVE,EEA,EAA,EMAA,EAAM,EMMA等)
【0042】
なお、正帯電トナーの帯電量を上げる場合には、負帯電特性シリカ粒子を使用する一方、負帯電トナーの帯電量を上げる場合には、正帯電特性シリカ粒子を添加し、トナーの帯電量を下げる場合には、トナーと同一極性のシリカを用いるのが好ましい。
また、被覆層中に、シリカ粒子と帯電特性粒子との両方を含有してもよく、あるいはいずれか一方であってもよい。さらにシリカ粒子と帯電特性粒子とは、それぞれ単一種であっても、複数種であってもよい。
【0043】
3.キャリアの導電特性
キャリアの導電特性については、キャリアを用いた現像システムにより最適値はさまざまであるが、抵抗測定(体積抵抗値)において、1×102 〜1×1014(Ω・cm)の値を示すものが好ましい。
体積抵抗値が1×102 Ω・cm未満であるとキャリア現像や、かぶりが発生する場合があり、一方、体積抵抗値が1×1014Ω・cmを超えると画像濃度が低下したりして、画質が劣化する場合がある。
なお、キャリアの体積抵抗値は、上下の電極(電極面積5cm2 )間に測定するキャリアを挟み込み、荷重1kgの条件で押圧して0.5cmの厚さに調整した後、上下の電極間に1〜500Vの電圧を印加し、流れる電流値を測定することにより、換算することができる。
【0044】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、電子写真用キャリアの製造方法に関し、磁性を備えたキャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆する高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層とを有する電子写真用キャリアの製造方法において、被覆層を直接重合法により形成した後、当該被覆層に50〜120℃の範囲内の処理温度(ただし、処理時間は1〜6時間)にて機械的衝撃により磁性粉を埋設することを特徴としている。なお、第2の実施形態に使用するキャリア芯材、被覆層および磁性粉等については、第1の実施形態で説明した内容と同様のものが使用できるので、ここでの説明は省略する。
【0045】
まず、機械的衝撃を付与するには、ヘンシェルミキサ(例えば、三井三池化工機社製,20C/I型)等の解砕機を用いることが好ましい。
ここで、機械的衝撃の度合は、キャリア芯材における被覆量(ポリエチレン量)、磁性粉量、またはこの磁性粉と併用するシリカ粒子量や微粒子樹脂量により変わる場合があるが、具体的に、一回の処理量を3〜20kgの範囲内の値とするとともに、回転数を200〜3000rpmの範囲内の値とするのが好ましい。
【0046】
また、機械的衝撃を付与する際の処理温度を、50〜120℃の範囲内の値とするのが好ましく、60〜110℃の範囲内の値とするのがより好ましく、70〜100℃の範囲内の値とするのがさらに好ましい。この理由は、処理温度が50℃未満となると、磁性粉を被覆層中に埋設することが困難となる傾向があり、適度の厚さを有する表面ポリエチレン層が形成されない場合がある。したがって、高温高湿条件において帯電特性が大きく変化する場合がある。一方、処理温度が120℃を超えると、キャリア同士が溶着して、過大なキャリアが発生したり、あるいは表面ポリエチレン層の厚さが過度になり、低温低温条件において帯電特性が大きく変化する場合がある。
【0047】
この点、図1及び図2を参照して、より詳細に説明する。図1は、処理温度と表面ポリエチレン層の厚さとの関係を示す図であり、図2は、表面ポリエチレン層の厚さと帯電量の変化との関係を示す図である。
図1は、実施例1〜6および比較例2のデータをもとに作成しており、横軸に処理温度(℃)を採って示してあり、縦軸には、表面ポリエチレン層の厚さ(μm)を採って示してある。図1から理解されるように、処理温度と形成される表面ポリエチレン層の厚さとは密接に関係しており、処理温度が高くなるにつれて、形成される表面ポリエチレン層の厚さが厚くなる傾向がある。また、処理温度が100(℃)を過ぎたあたりから、表面ポリエチレン層の厚さが極端に厚くなる傾向も見られる。
【0048】
一方、図2は、実施例1〜6および比較例1〜2のデータをもとに作成しており、表面ポリエチレン層の厚さ(μm)を採って示してあり、縦軸には、帯電量差(μC/g)を採って示してある。なお、実線Aが、低温低湿環境下帯電量(LL帯電量)の値から常温常湿環境下帯電量(NN帯電量)の値を差し引いた帯電量差(帯電量差LL−NNと表記する。)を示しており、点線Bが、常温常湿環境下帯電量(NN帯電量)の値から高温高温環境下帯電量(HH帯電量)の値を差し引いた帯電量差(帯電量差NN−HHと表記する。)を示している。
【0049】
図2から理解されるように、表面ポリエチレン層の厚さが過度に厚くても、あるいは過度に薄くても、帯電量差が大きくなる傾向がある。また、表面ポリエチレン層の厚さが過度に厚い場合には、実線Aが示すように、帯電量差LL−NNの値がより大きくなる傾向があり、表面ポリエチレン層の厚さが過度に薄い場合には、点線Bが示すように、帯電量差NN−HHの値がより大きくなる傾向がある。
したがって、適当な処理温度で機械的衝撃を与えることにより、形成される表面ポリエチレン層の厚さを所定範囲内の値、例えば、0.005〜0.05μmに制限することができ、環境条件の変化に対して、キャリアの帯電特性の変化をより小さく、具体的に、2μC/g以下、より好ましくは1μC/g以下、さらに好ましくは0.5μC/g以下の値とすることができる。
【0050】
また、機械的衝撃を付与する際の処理時間についても、キャリア芯材における被覆量(ポリエチレン量)、磁性粉量、またはこの磁性粉と併用するシリカ粒子量や微粒子樹脂量により変わる場合があるが、例えば、0.5〜6時間程度行なうのが好ましい。
【0051】
さらに、解砕機を用いて機械的衝撃を付与すると、キャリアに埋設されない磁性粉等が存在する場合があるため、機械的衝撃処理を施した後に、篩処理や分級処理を十分に行うのが好ましい。
【0052】
[第3の実施形態]
第3の実施形態における電子写真用現像剤は、第1の実施形態のキャリアに、トナーを混合することによって得ることができる。
【0053】
1.トナー
第3の実施形態に用いられるトナーとしては、公知の方法で製造されたトナー、例えば懸濁重合法,粉砕法,マイクロカプセル法,スプレードライ法,メカノケミカル法で製造されたトナーが使用可能である。したがって、少なくともバインダー樹脂および着色剤を配合して構成することができる。
【0054】
ここで、好ましいバインダー樹脂としては、ポリスチレン,スチレン・ブタジエン共重合体,スチレン・アクリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン,エチレン・酢酸ビニル共重合体,エチレン・ビニルアルコール共重合体のようなエチレン系共重合体、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリルフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系樹脂、マレイン酸樹脂などを用いることができる。
また、好ましい着色剤としては、公知の染顔料、例えばカーボンブラック、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、ピーコックブルー、パーマネントレッド、ベンガラ、アリザリンレーキ、クロムグリーン、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ハンザイエロー、パーマネントイエロー、酸化チタンをなどを用いることができる。
【0055】
また、使用するトナーにおいて、必要に応じて他の添加剤、例えば荷電制御剤、滑剤、オフセット防止剤、定着向上助剤を内添したり、あるいは、流動性向上のための流動化剤を外添するのも好ましい。
このような荷電制御剤としては、ニグロシン、ニグロシン塩基、トリフェニルメタン系化合物、ポリビニルピリジン、第4級アンモニウム塩等の正荷電制御剤、及びアルキル置換サリチル酸の金属錯塩(たとえばジ−tert−ブチルサリチル酸のクロム錯塩又は亜鉛錯塩)等の負荷電制御剤を好適に用いることができる。
また、好ましい滑剤としてはテフロン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等を用いることができる。また、好ましいオフセット防止剤や定着向上助剤としては低分子量ポリプロピレンまたはその変性物等のポリオレフィンワックス等を用いることができる。また、好ましい流動化剤としてはシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等を用いることができる。
【0056】
さらに、使用するモノクロトナーにおいて、磁性材を添加して磁性トナーとすることも好ましい。このように構成することにより、現像特性の改善やトナーのプリンター内での飛散防止に有効である。このような磁性材としてはマグネタイト、フェライト、鉄、ニッケル等を好適に用いることができる。
【0057】
また、使用するトナーの平均粒径を20μm以下の値とするのが好ましく、より好ましくは5〜15μmの範囲内の値とすることである。
【0058】
2.混合割合
第3の実施形態におけるトナーの混合割合は、キャリアおよびトナーの合計量を100重量%としたときに、トナーの混合割合を2〜40重量%の範囲内の値、好ましくは3〜30重量%の範囲内の値、より好ましくは4〜25重量%の範囲内の値とすることである。トナーの混合割合が2重量%未満であると、トナー帯電量が高くなり、十分な画像濃度が得られなくなる場合があり、一方、40重量%を超えると十分な帯電量が得られなくなるため、トナーが現像機から飛散し機内を汚染したり、画像上にカブリが生じる場合がある。
【0059】
3.用途
第3の実施形態における電子写真用現像剤は、2成分系現像方式の電子写真システム、例えば複写機(アナログ、デジタル、モノクロ、カラー)、プリンター(モノクロ、カラー)、ファックス等に好適に用いられる。中でも現像機内で現像剤に加わるストレスが大きい高速・超高速の複写機,プリンター等において最適に用いられる。画像形成方式、露光方式、現像方式(装置)及び各種制御方式(例えば現像機内のトナー濃度制御方式等)にも特に制限はなく、システムによって最適なキャリア及びトナーの抵抗、粒径・粒径分布、磁気力、帯電量等に調整すればよい。
【0060】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、特に理由なく、本発明の範囲は以下の記載に限定されるものではない。また、以下の説明において特に断りがない限り、「部」および「%」は重量基準を意味する。
【0061】
(キャリアの製造)
(1)チタン含有触媒成分の調製
アルゴン置換した内容積500mlのフラスコに、室温にて脱水n−ヘプタン200mlおよび予め120℃で減圧(2mmHg)脱水したステアリン酸マグネシウム15g(25ミリモル)を入れてスラリー化した。攪拌下に四塩化チタン0.44g(2.3ミリモル)を滴下後に昇温を開始し、還流下にて1時間反応させ、粘性を有する透明なチタン含有触媒(活性触媒)の溶液を得た。
【0062】
(2)チタン含有触媒成分の活性評価
アルゴン置換した内容積1リットルのオートクレーブに脱水ヘキサン400ml、トリエチルアルミニウム0.8ミリモル、ジエチルアルミニウムクロリド0.8ミリモルおよび上記(1)で得られたチタン含有触媒をチタン原子として0.004ミリモルを採取して投入し、90℃に昇温した。このとき、系内圧は1.5kg/cm2 Gであった。次いで水素を供給し、5.5kg/cm2 Gに昇圧したのち、全圧が9.5kg/cm2 Gに保たれるようにエチレンを連続的に供給し、1時間重合を行い70gのポリマーを得た。重合活性は、365kg/g・Ti/Hrであり、得られたポリマーのMFR(190℃、荷重2.16kgにおける溶融流れ性;JIS K 7210)は40であった。
【0063】
(3)ポリエチレン被覆キャリアの製造
アルゴン置換した内容積2リットルのオートクレーブに焼結フェライト粉F−300(パウダーテック社製、平均粒径50μm)960gを入れ、80℃まで昇温し1時間減圧(10mmHg)乾燥を行った。その後40℃まで降温して脱水ヘキサン800mlを入れ攪拌を開始した。次いで、ジエチルアルミニウムクロリド5.0ミリモル及び上記(1)のチタン含有触媒成分をチタン原子として0.05ミリモル添加して30分間反応を行い、さらに90℃まで昇温し、エチレンを4g導入した。この時、内圧は3.0kg/cm2 Gであった。その後、水素を供給し3.2kg/cm2 Gに昇圧させ、トリエチルアルミニウム5.0ミリモルを添加して重合を開始したところ、約5分間で系内圧は2.3kg/cm2 Gまで低下して安定した。
【0064】
次いで、カーボンブラック(三菱化学社製;MA−100)5.5gを脱水ヘキサン100mlでスラリー状としたものを投入し、さらに、系内圧を4.3kg/cm2 Gに保つようにエチレンを連続的に供給しながら45分間(系内にエチレンが合計で40g導入された時点で導入停止)重合を行い、全量1005.5gのカーボンブラック含有ポリエチレン樹脂被覆フェライトを得た。
乾燥した粉末は、均一に黒色を呈し、電子顕微鏡によるとフェライト表面は薄くポリエチレンに覆われ、カーボンブラックはそのポリエチレンに均一に分散していることが観察された。
なお、この組成物をTGA(熱天秤)により測定したところ、フェライト、カーボンブラック、ポリエチレンの組成比は95.5:0.5:4.0(重量比)であった。
【0065】
この段階を経て得られた中間段階のキャリアをキャリアA1 とする。また、被覆ポリエチレンの重量平均分子量をGPCで測定したところ、206,000であった。次にキャリアA1 を、125μmの篩いで分級し、125μm以上の大粒径粒子を除去した。分級後のキャリアを塔径14cmの流動層型気流分級機中に入れ、分級機本体の気流線速が20(cm/s)になるように熱した空気(115℃)を入れ、キャリアを10時間流動させた。得られたキャリアをキャリアA2 とする。
【0066】
[実施例1]
キャリアA2 10Kgを容量20リットルのヘンシェルミキサ(三井三池化工機社製:FM20C/I型)中に入れ、ヘンシェルミキサの周囲に設けたジャケットに温水を流入し、ヘンシェルミキサ内の温度(処理温度)を70℃とした。その温度に保持したまま、ヘンシェルミキサを動作させて0.5時間攪拌し、機械的衝撃を与えることによりキャリアA2 の表面を平滑化した。
次いで、磁性粉マグネタイトMG1306(三井金属社製、8面体、平均粒子径0.2μm)を200g混合した後、3時間ヘンシェルミキサを動作させて機械的衝撃を与え、キャリアA2 上に磁性粉含有ポリエチレン樹脂層および表面ポリエチレン被覆層を形成した。また、固定化されずに遊離の状態で存在する磁性粉量は少なかったものの、それを完全に除去する目的で、篩処理(#125メッシュ)および分級処理(流動層型気流分級機使用、線速20cm、2時間)をしてキャリア(キャリアB)を得た。
【0067】
得られたキャリアBにおける表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図5に示すように、被覆層であるポリエチレン樹脂中に磁性粉が埋設されており、磁性粉の表面側、すなわちキャリア芯材と反対側に、表面ポリエチレン被覆層が形成されており、磁性粉が表面に露出していないことを確認した。また、図6に示すように、表面ポリエチレン被覆層が形成されたキャリアBの表面は、極めて平滑であり、全体として真球に近いことを確認した。
さらに、磁性粉の表面に形成された表面ポリエチレン被覆層の厚さが、0.005μmであることをオージェ電子分光測定装置JAMP−7100(日本電子社製)により確認した。より具体的には、走査型電子顕微鏡により、磁性粉の平面方向の位置を予め確認しておき、アルゴン(Ar+ )スパッタおよびオージェ電子分光測定を繰り返して測定チャート(厚さ方向プロフィール)を作成し、当該測定チャートを基に、ポリエチレン樹脂およびSiO2 のスパッタリング速度比率から換算して、磁性粉に含まれるFe元素が検出されるまでの時間を求め、表面ポリエチレン被覆層の厚さを算出した。
【0068】
また、得られたキャリアBの帯電特性を測定した。具体的には、キャリアBを、高温高湿条件(HH条件、温度33℃、湿度85%)、常温常湿条件(NN条件、温度25℃、湿度60%)および低温低湿条件(LL条件、温度10℃、湿度20%)に、それぞれのキャリアB 9.5gと、トナー(京セラ社製、型番TK−12)0.5gとを50mlのポリビン中に収容して、各環境下で48時間放置した後、ボールミルを用いて1時間攪拌して強制的に帯電させた。その後、ポリビン内からキャリアBおよびトナーを取り出し、帯電量測定装置(東芝ケミカル社製:TB−200型)を用いて、ブロー圧0.8kg/cm2 、ブロー時間50秒、500メッシュステンレス製金網使用の条件で、キャリアBの帯電量を測定した。結果を表1に示す。
結果から理解されるように、HH条件における帯電量と、NN条件における帯電量との差が0.3μC/gと小さく、同様に、LL条件における帯電量と、NN条件における帯電量との差も0.3μC/gと小さかった。したがって、キャリアBは、環境条件の変化にかかわらず帯電特性が変化しないことが確認された。
【0069】
【表1】
【0070】
[実施例2]
実施例1において磁性粉に対する機械的衝撃の処理時間を3時間から、1時間に変え、しかも、処理温度を70℃から100℃に変えたほかは、実施例1と同様にキャリア(キャリアC)を得た。得られたキャリアCにつき、実施例1と同様に走査型電子顕微鏡による観察を行い、被覆層であるポリエチレン樹脂中に磁性粉が埋設されており、表面ポリエチレン被覆層が形成されていることを確認した。また、実施例1と同様にオージェ電子分光測定を行い、磁性粉の表面に形成された表面ポリエチレン被覆層の厚さが、0.05μmであることを確認した。さらに、実施例1と同様にキャリアCの帯電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
[実施例3]
キャリアA2 10Kgを実施例1で使用したヘンシェルミキサ中に収容し、ヘンシェルミキサの周囲に設けたジャケットに温水を流入し、ヘンシェルミキサ内の温度(処理温度)を80℃とした。その温度に保持したまま、ヘンシェルミキサを動作させて0.5時間攪拌し、機械的衝撃を与えることによりキャリアA2 の表面を平滑化した。
次いで、実施例1で使用した磁性粉マグネタイトMG1306を200gおよび疎水性シリカ(日本アエロジル社製:R812、一次平均粒子径0.02μm)を120g混合した後、4時間ヘンシェルミキサを動作させて機械的衝撃を与え、キャリアA2 上に磁性粉および疎水性シリカ含有ポリエチレン樹脂層および表面ポリエチレン被覆層を形成した。また、固定化されずに遊離の状態で存在する磁性粉や疎水性シリカは少なかったものの、それを完全に除去する目的で、実施例1と同様に篩処理および分級処理をしてキャリア(キャリアD)を得た。
【0072】
得られたキャリアDにおける表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、被覆層であるポリエチレン樹脂中に磁性粉が埋設されており、表面ポリエチレン被覆層が形成されていることを確認した。また、実施例1と同様に、磁性粉の表面に形成された表面ポリエチレン被覆層の厚さが、0.01μmであることをオージェ電子分光測定装置JAMP−7100(日本電子社製)により確認した。さらにまた、実施例1と同様にキャリアDの帯電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
[実施例4]
キャリアA2 10Kgを実施例1で使用したヘンシェルミキサ中に収容し、ヘンシェルミキサの周囲に設けたジャケットに温水を流入し、ヘンシェルミキサ内の温度(処理温度)を90℃とした。その温度に保持したまま、ヘンシェルミキサを動作させて0.5時間攪拌し、機械的衝撃を与えることによりキャリアA2 の表面を平滑化した。
次いで、実施例1で使用した磁性粉マグネタイトMG1306を200gおよび帯電特性粒子MP2701(綜研化学社製、PMMA、平均粒子径0.4μm)を80g混合した後、3時間ヘンシェルミキサを動作させて機械的衝撃を与え、キャリアA2 上に磁性粉および帯電特性粒子含有ポリエチレン樹脂層および表面ポリエチレン被覆層を形成した。また、固定化されずに遊離の状態で存在する磁性粉や帯電特性粒子は少なかったものの、それを完全に除去する目的で、実施例1と同様に篩処理および分級処理をしてキャリア(キャリアE)を得た。
【0074】
得られたキャリアEにおける断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、被覆層であるポリエチレン樹脂中に磁性粉が埋設されており、表面ポリエチレン被覆層が形成されていることを確認した。また、実施例1と同様に、磁性粉の表面に形成された表面ポリエチレン被覆層の厚さが、0.009μmであることをオージェ電子分光測定により確認した。さらにまた、実施例1と同様にキャリアEの帯電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例5]
実施例2において、磁性粉混合後のヘンシェルミキサの処理時間(動作時間)を、1時間から3時間に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア(キャリアG)を得た。得られたキャリアGについて、実施例1と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、被覆層であるポリエチレン樹脂中に磁性粉が埋設されており、表面ポリエチレン被覆層が形成されていることを確認した。また、実施例1と同様に、磁性粉の表面に形成された表面ポリエチレン被覆層の厚さが、0.08μmであることをオージェ電子分光測定により確認した。さらにまた、実施例1と同様に帯電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例6]
実施例1において、磁性粉の種類をマグネタイトMG1306(三井金属社製、8面体)から、マグネタイトMG9300(三井金属社製、多面体、平均粒子径0.2μm)に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア(キャリアH)を得た。得られたキャリアHについて、実施例1と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、被覆層であるポリエチレン樹脂中に磁性粉が埋設されており、表面ポリエチレン被覆層が形成されていることを確認した。また、実施例1と同様に、磁性粉の表面に形成された表面ポリエチレン被覆層の厚さが、0.007μmであることをオージェ電子分光測定により確認した。さらにまた、実施例1と同様に帯電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例7]
実施例1において、磁性粉の種類をマグネタイトMG1306から、シランカップリング剤であるKBM703(γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)により疎水化処理したマグネタイトMG1306(三井金属社製、8面体、平均粒子径0.2μm、)に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア(キャリアI)を得た。なお、シランカップリング剤による疎水化処理は、まず、水/アルコール混合溶液にシランカップリング剤を希釈溶解させた溶液を調整し、次いで、この溶液と磁性粉とを万能混合撹拌機中に投入し、80℃の温度条件で、撹拌、乾燥して行った。なお、このように浸漬法により表面処理した磁性粉を、解砕機を用いて解砕し、疎水化処理した磁性粉を得た。得られたキャリアIについて、実施例1と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、被覆層であるポリエチレン樹脂中に磁性粉が埋設されており、表面ポリエチレン被覆層が形成されていることを確認した。また、実施例1と同様に、磁性粉の表面に形成された表面ポリエチレン被覆層の厚さが、0.005μmであることをオージェ電子分光測定により確認した。さらにまた、実施例1と同様に帯電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例8]
実施例1において、磁性粉の種類をマグネタイトMG1306から、シリコンオイルであるSH1107(メチルハイドロジェンシリコンオイル、東レ・ダウコーニング社製)により疎水化処理したマグネタイトMG1306(三井金属社製、8面体、平均粒子径0.2μm、)に変えたこと以外は、実施例1と同様にしてキャリア(キャリアJ)を得た。なお、シリコンオイルによる疎水化処理は、実施例7と同様に浸漬法を用いて行い、さらに解砕して、疎水化処理した磁性粉を得た。
得られたキャリアJについて、実施例1と同様に走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察したところ、被覆層であるポリエチレン樹脂中に磁性粉が埋設されており、表面ポリエチレン被覆層が形成されていることを確認した。また、実施例1と同様に、磁性粉の表面に形成された表面ポリエチレン被覆層の厚さが、0.005μmであることをオージェ電子分光測定により確認した。さらにまた、実施例1と同様に帯電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
[比較例1]
キャリアの製造例で得られたキャリアA2 に何の処理も施さなかった。このキャリアA2 について、実施例1と同様に帯電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例2]
キャリアA2 10Kgを実施例1で使用したヘンシェルミキサ中に収容し、ヘンシェルミキサの周囲に設けたジャケットに低温水(20〜25℃)を流入し、ヘンシェルミキサ内の温度(処理温度)を40℃とした。その温度に保持したまま、ヘンシェルミキサを動作させて0.5時間攪拌し、機械的衝撃を与えることによりキャリアA2 の表面を平滑化した。
次いで、実施例1で使用した磁性粉マグネタイトMG1306を200g混合した後、3時間ヘンシェルミキサを動作させて機械的衝撃を与え、キャリアA2 上に磁性粉含有ポリエチレン樹脂層を形成した。また、固定化されずに遊離の状態で存在する磁性粉が比較的多く存在しており、それを完全に除去する目的で、実施例1と同様に篩処理および分級処理をしてキャリア(キャリアF)を得た。
【0081】
得られたキャリアFにおける表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、図7に示すように、被覆層から露出した状態で、磁性粉が溶融固定されていることを確認した。また、得られたキャリアFについて、実施例1と同様に帯電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0082】
[実施例9、比較例3、4]
実施例1および比較例1,2で得られたキャリアB(実施例9)、キャリアA2 (比較例3)、およびキャリアF(比較例4)について、それぞれ、トナー(京セラ社製、型番TK−12)の添加量が全体量に対して5重量%になるように添加して、電子写真用現像剤を構成した。
次いで、得られた電子写真用現像剤をそれぞれエコシスFS−3550(京セラ社製)を改造したプリンター内に収容して、バイアス電圧を300Vに固定した状態で実印字を5万枚行い、定期的にベタ部の画像濃度を、マクベス濃度計により測定した。
なお、プリンターは、感光体表面電位およびマグネットローラバイアス電位を調整できるように改造した。結果を図1に示す。
【0083】
[実施例10、比較例5]
実施例1および比較例1で得られたキャリアB(実施例10)およびキャリアA2 (比較例5)について、それぞれ、トナー(京セラ社製、型番TK−12)の添加量が全体量に対して5重量%になるように添加して、電子写真用現像剤を構成した。
次いで、得られた電子写真用現像剤を上記プリンター内に収容して、バイアス電圧を150〜350Vに変えて実印字を5枚行い、ベタ部の画像濃度をマクベス濃度計により測定した。結果を図4に示す。
図4から明らかなように、電子写真用キャリアの被覆層に磁性粉を埋設するとともに、磁性粉を被覆するように表面ポリエチレン被覆層を形成することにより、バイアス電圧と画像濃度とが比例し、高バイアス電位域においても画像濃度が低下することが少なくなることが理解される。したがって、明確な印字濃淡(コントラスト)と安定した画像特性とを得ることが可能となった。
【0084】
【発明の効果】
本発明の電子写真用キャリアによれば、被覆層中に磁性粉が埋設してあるとともに、磁性粉を被覆するように表面ポリエチレン被覆層が形成してあることにより、耐久性、耐スペント性に優れ、帯電量の調整が容易であり、しかも帯電特性について使用環境の影響を受けづらい電子写真用キャリアを提供することができるようになった。さらには、本発明の電子写真用キャリアによれば、磁性粉の脱落が少なくなったため、篩処理や分級処理が簡便かつ短時間で済むようになり、結果として製造が容易であるという効果が得られるようになった。
【0085】
また、本発明の電子写真用キャリアの製造方法によれば、被覆層を直接重合法により形成した後、当該被覆層中に、50〜120℃の範囲内の処理温度にて機械的衝撃により磁性粉を埋設するとともに、当該磁性粉を被覆するように表面ポリエチレン被覆層を形成することにより、耐久性、耐スペント性に優れ、帯電量の調整が容易であり、しかも帯電特性について使用環境の影響を受けづらい電子写真用キャリアを効率的に提供することができるようになった。
【0086】
また、本発明の電子写真用現像剤によれば、耐久性、耐スペント性に優れ、帯電量の調整が容易であり、しかも帯電特性について使用環境の影響を受けづらい電子写真用キャリアを所定量使用しているため、長期間、しかもバイアス電圧の値に比例して印字することができ、結果として、優れた画像特性を得ることができるようになった。
また、従来の電子写真用現像剤によれば、印刷したベタ部においてカラートナーのにごりが観察される場合が見られたが、本発明の電子写真用現像剤によれば、このような問題も解決できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】処理温度と表面ポリエチレン層の厚さとの関係を示す図である。
【図2】表面ポリエチレン層の厚さと帯電量の変化との関係を示す図である。
【図3】印字枚数と画像濃度との関係を示す図である。
【図4】バイアス電圧と画像濃度との関係を示す図である。
【図5】実施例1のキャリアの表面を示す走査型顕微鏡写真である。
【図6】実施例1のキャリアの全体を示す走査型顕微鏡写真である。
【図7】比較例2のキャリアの表面を示す走査型顕微鏡写真である。
Claims (8)
- 磁性を備えたキャリア芯材と、当該キャリア芯材の表面を被覆する数平均分子量1万以上の高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層とを有する電子写真用キャリアにおいて、
前記被覆層中に磁性粉が埋設してあるとともに、前記被覆層中に当該磁性粉を被覆するように厚さが0.005〜0.05μmの表面ポリエチレン被覆層があることを特徴とする電子写真用キャリア。 - 前記磁性粉の形状を凸多面体とすることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の電子写真用キャリア。
- 前記磁性粉の表面を疎水化処理したことを特徴とする請求の範囲第1項または第2項に記載の電子写真用キャリア。
- 前記被覆層に、カーボンブラック、シリカおよび帯電特性樹脂からなる群から選択される少なくとも一つの材料を配合してなることを特徴とする請求の範囲第1項〜第3項のいずれか一項に記載の電子写真用キャリア。
- 体積抵抗を1×102 〜1×1014Ω・cmの範囲内の値とすることを特徴とする請求の範囲第1項〜第4項のいずれか一項に記載の電子写真用キャリア。
- 平均粒径を20〜120μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求の範囲第1項〜第5項のいずれか一項に記載の電子写真用キャリア。
- 磁性を備えたキャリア芯材と、このキャリア芯材の表面を被覆する数平均分子量1万以上の高分子量ポリエチレン樹脂からなる被覆層とを有する電子写真用キャリアの製造方法において、前記被覆層を直接重合法により形成した後、当該被覆層中に、70〜100℃の範囲内の処理温度にて機械的衝撃により、磁性粉を埋設するとともに、当該磁性粉を被覆するように厚さが0.005〜0.05μmの表面ポリエチレン被覆層を形成することを特徴とする電子写真用キャリアの製造方法。
- 請求の範囲第1〜6項のいずれか一項に記載の電子写真用キャリアと、トナーとからなり、当該トナーの添加量を全体量に対して2〜40重量%の範囲内の値とすることを特徴とする電子写真用現像剤。
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