JP3682094B2 - 炭素繊維強化炭素複合材の製造方法 - Google Patents

炭素繊維強化炭素複合材の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Si成分を原子レベルの連続相として含有するSi含有ガラス状カーボン材をマトリックス相とした耐酸化性に優れる炭素繊維強化炭素材(以下「C/C材」という)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
C/C材は、炭素繊維の複合化による卓越した比強度、比弾性率を有するうえに炭素材特有の軽量性と優れた耐熱性および化学的安定性を備えているため、航空・宇宙機用の構造材料をはじめホットプレス用ダイス、高温炉用部材など高温苛酷な条件下で安定な使用が要求される用途分野で有用されている。
【0003】
従来、C/C材を製造するための代表的な技術としては、 (1)炭化性樹脂液からなるマトリックス結合材を含浸等の手段で被着した炭素繊維の織布を積層し、プレス等で所定形状に圧縮成形したのち、プリプレグ成形体を非酸化性雰囲気下で焼成炭化処理する方法、 (2)マトリックス結合材の樹脂液に漬した炭素繊維のトウをフィラメントワインディング法で所定形状に成形し、このプリプレグ成形体を同様に焼成炭化処理する方法、 (3)炭素繊維のプリフォーム組織中にCVD(化学的気相蒸着法)を用いて炭素を沈着させる方法等が知られているが、大型のC/C材を工業的に製造するためには(1) の方法が最も実用性に優れている。
【0004】
ところが、C/C材には易酸化性という炭素材固有の材質的な欠点があり、大気中では500℃付近から酸化されて材質特性が急激に減退するため、高温大気中においては極く短時間内で使用される用途を除いては実用に供することが不可能である。このため、C/C材の表面に例えばZrO2 、Al2 3 、SiC、TiC、B4 C、WC、TaC、Al3 4 、Si3 4 、BNのような耐熱耐蝕性を有する各種のセラミック系物質で被覆処理して耐酸化性を向上させる試みが盛んに行われている。しかしながら、これら二次的に形成される耐酸化性被膜層はC/C基材との材質が異なる関係で、苛酷な熱履歴を伴う使用条件では往々にして材質間の熱膨張差に基づく層間剥離現象が発生し、高温域での十分な耐酸化性が損なわれる難点がある。このため、被覆条件を厳密に制御したり、SiO2 −B2 3 のようなガラス質を含む複層被膜として形成する等の手段が講じられている。
【0005】
上記のようなC/C材の表面に耐酸化性被覆を形成する方法と共に、マトリックス中に耐酸化性の充填材を分散させることにより酸化抵抗性を向上させる方法も開発されている。例えば特公平6−47513号公報には、炭素ファイバー基質が多くともマトリックスの20重量%の無定形炭化ケイ素でドープしてある炭素マトリックス中に埋め込まれ、その表面にホウ珪酸ガラスが充填された炭化ケイ素被覆が施されたC/C材が提案されている。該複合組織はC/C材のマトリックス部分がC/SiCで構成されており、この形成には例えばテトラシランやクロロシラン等のSi−O結合をもつシラン官能基をグラフトしたフェノール樹脂をマトリックス結合材として使用し、熱分解によりSiCが分散したガラス状炭素に転化させる方法が採られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
マトリックス相をC/SiCの複合組成とした上記のC/C材は、C成分単独のマトリックス相に比べて明らかに酸化抵抗性が改善されるから、得られたC/C材の表面に更にセラミックスやガラス質の被覆層を形成することにより高度の耐酸化性を付与することが可能になる。しかしながら、マトリックス相の耐酸化性は充填する材料の分散度合に大きく左右され、充填材料の分散が不連続になるような組織では優れた耐酸化性を期待することができなくなる。例えば複数のシラン結合を有するポリカルボシランやポリシラン等のポリマーを熱硬化性樹脂と混合してマトリックス結合材とすると、セラミックス源が分子として分散する状態となるため焼成炭化後に微細な金属炭化物粒子となって粒界が生成することが避けられず、セラミックスと炭素が均質な連続相を呈するガラス状カーボン組織のマトリックス相を得ることができなくなる。
【0007】
本発明者らは、C/C材のマトリックス相に耐酸化性を付与するための充填材および組織形成について鋭意研究を進めた結果、熱硬化性樹脂と1分子中にSi単原子を含むSiアルコキシドを特定条件で混合して架橋反応させ、−O−Si−O−で架橋された熱硬化性樹脂をマトリックス結合材とすると、焼成炭化後にSiが原子レベルでガラス状カーボン組織中に均一な連続相として分布する性状のSi含有ガラス状カーンボンに転化することを見い出し、とくにSi含有量が0.1〜15重量%の範囲にある場合に優れた組織性状とともに改善された耐酸化性を示すことを確認して、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、Si成分が連続相として分布する均一緻密な複合組織のSi含有ガラス状カーボン材をマトリックス相とする耐酸化性に優れたC/C材の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明によるC/C材の製造方法は、炭化性熱硬化性樹脂とSiアルコキシドまたはSiアルコキシドの加水分解物を有機溶媒中で撹拌混合し、該混合液を炭素繊維基材に被着させて複合成形したのち、得られたプリプレグ成形体を非酸化性雰囲気下で800℃以上の温度域で焼成炭化処理することによりマトリックス部分を原子レベルのSiが0.1〜15重量%の範囲でガラス状カーボン組織中に均一な連続相として分布する組織性状のSi含有ガラス状カーボン材に転化させることを構成上の特徴とする。
【0010】
本発明の強化基材となる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、ピッチ系等の各種原料から製造された平織、朱子織、綾織などの織布、これを一次元または多次元方向に配向した繊維成形体、フエルトまたはトウが挙げられ、必要に応じて濡れ性を改善するための表面処理を施して使用に供される。
【0011】
マトリックス結合材の主要成分となる炭化性熱硬化性樹脂は、焼成炭化処理によりガラス状カーボンに転化する炭素源となるもので、樹脂の種類としては例えばフェノール系樹脂、フラン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカルボジイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ピレン−フェナントレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂あるいはこれらの混合樹脂等が挙げられる。特に樹脂を非酸化性雰囲気下で800℃の温度により焼成したときに残留する残炭率が45重量%以上のフェノール系樹脂、フラン系樹脂もしくはこれらの混合樹脂が好ましく使用される。
【0012】
上記の炭化性熱硬化性樹脂には、SiアルコキシドまたはSiアルコキシドの加水分解物を有機溶媒中で撹拌混合してマトリックス結合材とする。Siアルコキシドとしては、1分子中に単一のSi原子を有する化合物が好ましく使用される。すなわち、一般式Si(OR)n またはRn Si(OR)n (但し、Rはアルキル基またはアリール基、nは1以上の整数を表す)で示される1個のSi原子が加水分解性のアルコキシド基に結合した化学組成であることが好適であり、2個以上のSi原子が結合するポリシラン、ポリシロキサンあるいはポリシラザン等の化合物では原子レベルでSiが分散する連続組織を得ることができない。
【0013】
単一のSi原子を有するSiアルコキシドとしては、例えばメトキシシラン、エトキシシラン、ブトキシシラン、プロポキシシラン、イソプロポキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラン、ジブトキシシラン、ジプロポキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリブトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブチルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロヘキシルエトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエトキシシラン等を挙げることができる。しかし、本発明の目的には反応性の良好な低分子量のテトラメトキシシラン〔Si(OCH3)4 〕やテトラエトシキシラン〔Si(OC2H5)4〕が好ましく、特に後者のテトラエトキシシランが好適に使用される。
【0014】
マトリックス結合材は、上記の炭化性熱硬化性樹脂とSiアルコキシドまたはSiアルコキシドの加水分解物を有機溶媒中で撹拌混合し、架橋反応させて調製される。炭化性熱硬化性樹脂およびSiアルコキシドは、それぞれ混合前にアルコール系の有機溶媒に添加し十分に撹拌したのち、さらに超音波分散処理を施してから混合することが好ましく、この撹拌混合と超音波分散処理を順次に施すことにより凝集している構成分子を効果的に解体することができる。このため、その後の操作段階におけるSiアルコキシド相互の反応および凝集化が抑制され、安定した単分子の分散状態を保持することができる。
【0015】
この際、Siアルコキシドは有機溶媒に対し50容量%以下の濃度になるように添加し、熱硬化性樹脂液が無水系の場合には混合前に予めSiアルコキシドに対して1〜2モルの範囲の水を加えて加水分解する。有機溶媒に対するSiアルコキシド濃度が50容量%を越えると、局部的に偏った加水分解および脱水縮合反応が起こり、炭化性熱硬化性樹脂を混合した際に部分的な架橋反応を生じてSiO2 ゲルが偏在し、均一な分散状態が得られ難くなる。また水の添加量が2モルを上回ると、SiアルコキシドがSiO2 ゾルを形成し、最終的にSi成分が微粒子となって分散するようになって連続相を形成することができなくなる。
【0016】
上記のようにして加水分解したSiアルコキシド溶液を撹拌しながら、炭化性熱硬化性樹脂液を徐々に添加し、均一に混合する。炭化性熱硬化性樹脂が水を含有する場合には混合時に加水分解する。炭化性熱硬化性樹脂液の添加量は、最終的にガラス状カーボン組織に占めるSiの含有量が0.1〜15重量%、好ましくは5〜15重量%になる量比に調整する。この段階では、混合する溶液がアルカリ性であると急激に重縮合が進行して球状ポリマーを形成するため、酸性域に保持する必要がある。このため、例えば蟻酸、酢酸、蓚酸、乳酸、琥珀酸、マレイン酸、酒石酸などのようなアルコールに可溶なカルボン酸類を水分除去した弱酸性で不純物成分が残留しない有機酸性液を用い、溶液のpHを酸性域になるように調整する。このpH調整はSiアルコキシド溶液、熱硬化性樹脂液あるいはこの両液について行うことができる。
【0017】
Siアルコキシド溶液と炭化性熱硬化性樹脂液を混合すると、熱硬化性樹脂中のC−OH基と加水分解されたSiアルコキシドのシラノール基(Si-OH) 間で架橋反応が起こり、次第にゲル化する。この架橋反応は、シラノール間の脱水縮合反応に比べて極めて速いため、炭化性熱硬化性樹脂を−O−Si−O−で架橋した状態の混合液が得られる。該炭化性熱硬化性樹脂液とSiアルコキシドの混合液は容易にゲル化するため、ゲル化が進行する前の溶液状態で炭素繊維基材に被着して複合成形する。
【0018】
炭化性熱硬化性樹脂液とSiアルコキシド溶液との混合液を炭素繊維基材に被着する方法としては、含浸あるいは塗布など常用の手段で行うことができる。このようにしてマトリックス結合材を被着した炭素繊維基材は半硬化してプリプレグを形成し、ついで積層加圧成形して複合成形体を作製する。この複合成形段階においては、炭素繊維量が一次焼成体とした場合の繊維体積含有率(Vf)として50〜65%になるように予め設定することが強度確保の面から望ましい。
【0019】
形成された複合成形体は、ついで非酸化性雰囲気に保持された炭化炉中で焼成炭化処理される。炭化炉としては、コークス粉のような炭素質パッキング材で被包しながら焼成炭化する形式のリードハンマー炉、系内を窒素、アルゴン等の不活性ガスで保持された電気炉等が用いられる。炭化処理温度は、800℃以上に設定する必要があり、800℃未満であるとマトリックス結合材の炭化が不完全となる。
【0020】
上記により得られたC/C材には、必要に応じて炭素繊維基材に対するマトリックス結合材の被着操作および焼成炭化処理を複数回反復して、マトリックス部分を原子レベルのSiが0.1〜15重量%の範囲でガラス状カーボン組織中に均一な連続相として分布する組織性状のSi含有ガラス状カーボン材に転化させる。マトリックス相を構成するガラス状カーボン組織中のSi含有率が0.1重量%未満では耐酸化性が効果的に向上せず、15重量%を越えると組織中のSiが粒状化して粒界が生じるようになり、原子レベルの連続相が崩れて微細粒子の脱離や機械的強度等の低下を招くようになる。より好ましいSi含有量は5〜15重量%であり、この範囲で機械的強度など他の特性を損ねずに耐酸化性を効果的に向上させることが可能となる。
【0021】
このようにして製造されたC/C材は、それ自体が優れた耐酸化性を保有するが、更に表面にSiC被覆層または/およびB2 3 −SiO2 被覆層を形成して一層の耐酸化性を付与することができる。この場合のSiC被覆層の形成は、例えばC/C複合基材の表層部に傾斜機能組織を呈して形成されるコンバージョン法、あるいはトリクロロメチルシランと水素ガスを混合した原料系を加熱されたC/C材にCVD法やパルスCVI法を用いて反復的に接触させる方法で行うことができ、また、B2 3 −SiO2 被覆層の形成はSiアルコキシドの加水分解物を被着したのち、Bアルキシド溶液で含浸処理し加水分解してから加熱処理する方法を採ることができる。
【0022】
本発明の製造方法に従えば、マトリックス結合材として炭化性熱硬化性樹脂と好ましくは1分子中に単一のSi原子を有するSiアルコキシドを架橋反応させた混合液を選択使用し、焼成炭化後に原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中に0.1〜15重量%の特定範囲で均一な連続相として分布するマトリックス相を形成するところに主要な特徴がある。原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中に均一な連続相として分布してなる組織性状とは、実質的にSiとCとの粒界が存在せず、透過型電子顕微鏡(TEM) の観察によってSi成分が識別できない連続相として均質に分布している組織状態を意味する。
【0023】
この組織は、Siアルコキシドの−O−Si−O−が炭化性熱硬化性樹脂のメチロール基に結合して架橋生成する凝集粒子を全く含まない極めて均質な混合液をマトリックス結合材とすることにより得ることができ、SiやSiC成分が微粒子状態で分散する組織とは異なるアロイ状の連続固溶相を呈している。すなわち、巨視的にはガラス状カーボン単独の組織構造と実質的に相違が認められず、微視的にはガラス状カーボン組織の一部のCがSiで置換された特有の複合形態となっており、この特有の組織性状により、Si含有量が0.1〜15重量%範囲の比較的少ない量比(C/Si原子比=約13〜2333)でありながら、強度特性を損ねずに耐酸化性を効果的に向上させることが可能となる。
【0024】
このような作用を介して耐酸化性に優れるマトリックス相で複合化されたC/C材が製造されるが、更にその表面にSiCやガラス質の被覆層を形成することにより一層耐酸化性を向上させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を比較例と対比しながら詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
【実施例】
実施例1〜5、比較例1〜3
(1) マトリックス結合材の調製;
テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕を濃度が50容量%になるように無水のエタノールに溶解し、スターラーで30分間撹拌したのち超音波振動装置により2時間分散処理を施した。この溶液にテトラエトキシシランに対して0.03モル相当量の無水化した酢酸と1モル相当量の水を滴下し、スターラーで1時間撹拌混合してテトラエトキシシランを加水分解させた。ついで、加水分解後のテトラエトキシシランを撹拌しながら、予め無水のエタノールに溶解しスターラーで30分間撹拌したのち超音波振動装置により2時間分散処理を施したフェノール樹脂液を徐々に添加し、引き続きスターラーで1時間撹拌して均一になるまで混合してSi含有量の異なるマトリックス結合材を調製した。
【0027】
(2) C/C材の製造;
ポリアクリロニトリル系高強度高弾性率タイプの平織炭素繊維布の表面に、上記のマトリックス結合材を均一に塗布して十分に含浸させ、48時間風乾してプリプレグシートを形成した。このプリプレグシートを16枚積層してモールドに入れ、温度110℃、加圧力20kg/cm2の条件により複合成形した。該複合成形体を250℃の温度に加熱して完全に硬化したのち、窒素雰囲気に保持された電気炉に移し、5℃/hr の昇温速度で1000℃に加熱し、この温度に5時間保持して焼成炭化処理を施した。引き続き、同様のマトリックス結合材の塗布含浸および焼成炭化の操作を3回反復し、最終的に2000℃の温度で焼成炭化した。
【0028】
(3) 耐酸化性の評価;
得られた各C/C材を大気に保持された電気炉中に入れ、750℃および950℃の温度に40分間処理したのち自然冷却した。この処理前後の重量減少率を酸化消耗として耐酸化性を評価し、同時に処理後のC/C材の組織状態を観察した。その結果をマトリックス相を構成するガラス状カーボン組織中のSi含有量と対比させて表1に示した。
【0029】
【表1】
Figure 0003682094
【0030】
表1の結果から、マトリックス相がSi含有量0.1〜15重量%、特に5〜15重量%範囲のSi含有ガラス状カーボンで構成されている場合に耐酸化性が効果的に向上していることが確認された。しかし、Si含有量が17重量%の比較例3では耐酸化性は良好なものの、材質強度が低下して微小亀裂の発生が認められた。なお、実施例で得られたC/C材のマトリックス相をTEMで観察したところ、いずれも均一緻密な連続相を呈しており、SiやSiCの粒状物は確認されなかった。
【0031】
実施例6
実施例1で製造したC/C材の表面に、以下の方法によりSiCの第1被覆層およびB2 3 −SiO2 からなるガラス質の第2被覆層を形成した。
【0032】
(1) 第1被覆層の形成;
SiO2 粉末とSi粉末をモル比2:1の配合比率になるように混合し、該混合粉末を黒鉛ルツボに入れ、その上部に実施例1で製造したC/C材をセットして黒鉛蓋を被せた。この黒鉛ルツボを電気炉に移し、内部をアルゴンガス雰囲気に保持しながら50℃/hr の昇温速度で1900℃まで上昇し、2時間保持してコンバージョン法によりC/C材の表面部に傾斜機能組織を備える多結晶質のSiC被膜を形成した。形成されたSiC被膜の厚さは約150μm であったが、その表面には幅10μm 程度の微小なクラックが所々に発生していることが認められた。
【0033】
(2) 第2被覆層の形成;
テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕とエタノールをモル比2:1となる量比で配合し、70℃の温度で還流撹拌を行った混合溶液に、前記テトラエトキシシラン1モルに対し25モル量の水と0.2モル量のNH4 OHの混合水溶液を滴下し、pHを12に調整した。引き続き、撹拌を継続して約0.2μm の球状SiO2 微粒子が均一に分散するサスペンジョンを得た。該サスペンジョンに第1被覆層を形成したC/C材を浸漬し、15分間減圧含浸を行った。ついで、風乾後、前記サスペンジョンを塗布・風乾する操作を3回反復し、100℃の温度で乾燥してSiO2 からなる被覆層を形成した。次に、このC/C材をB(OC4 9)3 溶液中に投入して15分間減圧含浸を施し、一昼夜風乾して空気中の水分により加水分解したのち100℃で乾燥し、更に500℃の温度で15分間加熱処理を行ってB2 3 ガラス層に転化した。
【0034】
テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕とエタノールをモル比1:4.5になる量比で配合し、室温で還流撹拌を行った混合溶液に、前記テトラエトキシシラン1モルに対し2.5モル量の水と0.03モル量のHClの混合水溶液を滴下してpHを3に調整したSiO2 前駆体溶液に、上記のC/C材を投入し1時間減圧含浸を行い乾燥した。処理後のC/C材を再度B(OC4 9)3 溶液中に投入して15分間減圧含浸を施し、一昼夜風乾して空気中の水分により加水分解したのち100℃で乾燥し、最終的にアルゴン雰囲気下に800℃の温度で60分間加熱処理してB2 3 −SiO2 からなるガラス質の第2被覆層を形成した。
【0035】
このようにして複層被膜を形成したC/C材につき、大気雰囲気の電気炉中で1700℃の温度に30分間保持したのち自然冷却する熱冷サイクルを10回反復し、処理後の重量減少率を測定して耐酸化性を評価した結果を表2に示した。
【0036】
実施例7
実施例6において、第1被覆層のSiC被覆層の膜厚を300μm と2倍の厚さに形成し、その他は実施例6と同一条件により複層被膜を形成した。このC/C材につき、実施例6と同様の耐酸化性試験を行った結果を表2に併載した。
【0037】
実施例8
実施例6により第1被覆層として傾斜機能組織のSiC被覆層(膜厚150 μm)を形成したC/C材に、次の条件により第2被覆層としてパルスCVI法によるSiC被膜を形成した。第1被覆層を形成したC/C材をパルスCVI装置の反応管内に設置し、管内をアルゴンガスで十分置換したのち、高周波誘導加熱によりC/C材の温度を1100℃に上昇した。ついで、真空ポンプで反応管内を2秒で2Torr以下に減圧し、直ちにトリクロロシラン(CH3SiCl3)と水素の混合ガス(モル比1:20) を1秒間で720Torrになるように導入し1秒間保持した。この管内減圧、反応ガス導入および保持操作を1000パルス繰り返し、C/C材の表面に微細多結晶質のSiC被膜(膜厚150 μm)を形成した。ついで、実施例6の第2被覆層の形成と同一条件によりB2 3 −SiO2 からなるガラス質の最外層を形成した。
【0038】
比較例4
テトラエトキシフランを配合せず、フェノール樹脂のみによるマトリックス結合材を用いてC/C材を製造し、ついでこのC/C材の表面に実施例6と同一条件で複層被膜を形成した。このC/C材につき、実施例6と同様の耐酸化性試験を行った結果を表2に併載した。
【0039】
比較例5
比較例4において、第1被覆層のSiC被覆層の膜厚を300μm に形成し、その他は実施例6と同一条件により複層被膜を形成した。このC/C材につき、実施例6と同様の耐酸化性試験を行った結果を表2に併載した。
【0040】
比較例6
テトラエトキシフランを配合せず、フェノール樹脂のみによるマトリックス結合材を用いてC/C材を製造し、ついでこのC/C材の表面に実施例6と同一条件で複層被膜を形成した。このC/C材につき、実施例6と同様の耐酸化性試験を行った結果を表2に併載した。
【0041】
【表2】
Figure 0003682094
【0042】
表2の結果から、本発明で得られるC/C材の表面にSiCやガラス質の被覆層を形成することにより一層耐酸化性が向上することが認められる。
【0043】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明に従えばSi成分を連続相として含有する均質緻密なSi含有ガラス状カーボン組織からなるマトリックス相が形成されるから、材質特性を高水準に保持しながら耐酸化性に優れるC/C材を製造することが可能となる。また、得られたC/C材の表面にSiCまたは/およびB2 3 −SiO2 などの被覆層を形成することにより一層耐酸化性の向上を図ることができる。したがって、高温酸化雰囲気に曝される苛酷な条件で用いられる用途に対しても十分に安定使用することができるC/C材を工業生産するための製造技術として極めて有用である。

Claims (3)

  1. 炭化性熱硬化性樹脂とSiアルコキシドまたはSiアルコキシドの加水分解物を有機溶媒中で撹拌混合し、該混合液を炭素繊維基材に被着させて複合成形したのち、得られたプリプレグ成形体を非酸化性雰囲気下で800℃以上の温度域で焼成炭化処理することによりマトリックス部分を原子レベルのSiが0.1〜15重量%の範囲でガラス状カーボン組織中に均一な連続相として分布する組織性状のSi含有ガラス状カーボン材に転化させることを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材の製造方法。
  2. Siアルコキシドが、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕である請求項1記載の炭素繊維強化炭素複合材の製造方法。
  3. 請求項1で得られた炭素繊維強化炭素複合材の表面に、SiC被覆層または/およびB2 3 −SiO2 被覆層を形成する炭素繊維強化炭素複合材の製造方法。
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