JP3396113B2 - Si含有ガラス状カーボン材およびその製造方法 - Google Patents
Si含有ガラス状カーボン材およびその製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Si成分を連続相とし
て含有する均質緻密な複合組織構造を備える改質された
ガラス状カーボン材、特に優れた耐酸化性を有するSi
含有ガラス状カーボン材とその工業的な製造方法に関す
る。
て含有する均質緻密な複合組織構造を備える改質された
ガラス状カーボン材、特に優れた耐酸化性を有するSi
含有ガラス状カーボン材とその工業的な製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ガラス状カーボン材は、熱硬化性樹脂の
成形体を焼成炭化して得られる巨視的にガラス質の緻密
な組織構造を有する異質な炭素材料で、一般のカーボン
材に比べてガス不透過性、耐摩耗性、耐蝕性、自己潤滑
性、表面の平滑性および堅牢性などに優れることから、
その特性を生かして多様の分野で各種工業部材に有用さ
れている。近年では、組織から微小な炭素粒子が離脱す
ることのない非汚染性の材質性状に着目して、シリコン
ウエハーのプラズマエッチング用電極やイオン注入装置
用部材など汚染を嫌う半導体分野での実用が図られてい
る。
成形体を焼成炭化して得られる巨視的にガラス質の緻密
な組織構造を有する異質な炭素材料で、一般のカーボン
材に比べてガス不透過性、耐摩耗性、耐蝕性、自己潤滑
性、表面の平滑性および堅牢性などに優れることから、
その特性を生かして多様の分野で各種工業部材に有用さ
れている。近年では、組織から微小な炭素粒子が離脱す
ることのない非汚染性の材質性状に着目して、シリコン
ウエハーのプラズマエッチング用電極やイオン注入装置
用部材など汚染を嫌う半導体分野での実用が図られてい
る。
【0003】ところが、ガラス状カーボン材は材質的に
脆弱であるうえ、一般のカーボン材と同様に高温酸化雰
囲気中では速やかに酸化が進行して物性を損ねる炭素材
固有の材質的欠点がある。このため、従来からガラス状
カーボン組織中にセラミックス成分を複合させて物性の
改善を図る試みがなされている。初期の段階では、原料
となる熱硬化性樹脂に乾式もしくは湿式法でSiCのよ
うなセラミックス微粒子を混合し、これを硬化した成形
体を焼成炭化する方法が行われたが、この方法ではセラ
ミックス粒子を炭素組織に均一に分散させることができ
ず、またセラミックス粒子と炭素組織間に粒界が存在す
るため、過酷な使用条件では材質破壊を起こしたり、セ
ラミックス粒子が離脱する現象が生じる問題があった。
脆弱であるうえ、一般のカーボン材と同様に高温酸化雰
囲気中では速やかに酸化が進行して物性を損ねる炭素材
固有の材質的欠点がある。このため、従来からガラス状
カーボン組織中にセラミックス成分を複合させて物性の
改善を図る試みがなされている。初期の段階では、原料
となる熱硬化性樹脂に乾式もしくは湿式法でSiCのよ
うなセラミックス微粒子を混合し、これを硬化した成形
体を焼成炭化する方法が行われたが、この方法ではセラ
ミックス粒子を炭素組織に均一に分散させることができ
ず、またセラミックス粒子と炭素組織間に粒界が存在す
るため、過酷な使用条件では材質破壊を起こしたり、セ
ラミックス粒子が離脱する現象が生じる問題があった。
【0004】このため、熱硬化性樹脂に珪素含有化合物
を混合して原料系とすることにより均一組織のSi含有
ガラス状カーボン材を得る方法が提案されている。例え
ば特開昭61−6111号公報には、液状珪素化合物、
官能基を有し加熱により炭素化する液状有機化合物、お
よび重合または架橋用の触媒を溶化したSi、Oおよび
Cを含む前駆体物質を炭化して耐酸化性の炭素材料を製
造する方法が開示されている。この方法では、液状珪素
化合物として水ガラスの脱アルカリで得られた珪酸ポリ
マー、水酸基を含有する有機化合物と珪酸とのエステ
ル、エチルシリケートのようなSiエステル、四塩化珪
素とエタノールの反応生成物等が挙げられ、触媒として
硫酸、塩酸、有機過酸化物、有機スルホン酸類などの併
用を必須要件としている。
を混合して原料系とすることにより均一組織のSi含有
ガラス状カーボン材を得る方法が提案されている。例え
ば特開昭61−6111号公報には、液状珪素化合物、
官能基を有し加熱により炭素化する液状有機化合物、お
よび重合または架橋用の触媒を溶化したSi、Oおよび
Cを含む前駆体物質を炭化して耐酸化性の炭素材料を製
造する方法が開示されている。この方法では、液状珪素
化合物として水ガラスの脱アルカリで得られた珪酸ポリ
マー、水酸基を含有する有機化合物と珪酸とのエステ
ル、エチルシリケートのようなSiエステル、四塩化珪
素とエタノールの反応生成物等が挙げられ、触媒として
硫酸、塩酸、有機過酸化物、有機スルホン酸類などの併
用を必須要件としている。
【0005】しかし、上記の方法は比較的多量のSi成
分(C/Si原子比;0.5〜19)を含有する炭素材
料を製造目的としている関係で、原料系に混合する液状
珪素化合物の量が多いため、Si、OおよびCを含む前
駆体物質を形成する過程で珪素化合物が相互に結合して
微細な凝集体を形成し、これがそのまま炭化組織中にS
i粒状体となって分散する不均一な組織性状になり易
い。また、シロキサン結合(Si-0-Si) のような複数のS
i原子が連鎖する重合エステルを珪素源として用いた場
合にも、同様に凝集化に伴う不均質な組織になるため、
液状有機化合物に対する配合量を少なくしても、Siが
粒子状態で分散することのない連続相の炭素質組織を得
ることはできない。そのうえ、併用する触媒が硫酸や塩
酸等の強酸の場合にはゲル化反応を急激に進行させて組
織の均一性を損ね、ナトリウムエチラートや有機スルホ
ン酸類などの触媒を使用すると含有無機成分が残留不純
物となって純度を低下させる要因となる。
分(C/Si原子比;0.5〜19)を含有する炭素材
料を製造目的としている関係で、原料系に混合する液状
珪素化合物の量が多いため、Si、OおよびCを含む前
駆体物質を形成する過程で珪素化合物が相互に結合して
微細な凝集体を形成し、これがそのまま炭化組織中にS
i粒状体となって分散する不均一な組織性状になり易
い。また、シロキサン結合(Si-0-Si) のような複数のS
i原子が連鎖する重合エステルを珪素源として用いた場
合にも、同様に凝集化に伴う不均質な組織になるため、
液状有機化合物に対する配合量を少なくしても、Siが
粒子状態で分散することのない連続相の炭素質組織を得
ることはできない。そのうえ、併用する触媒が硫酸や塩
酸等の強酸の場合にはゲル化反応を急激に進行させて組
織の均一性を損ね、ナトリウムエチラートや有機スルホ
ン酸類などの触媒を使用すると含有無機成分が残留不純
物となって純度を低下させる要因となる。
【0006】特開平5−43319号公報には、熱硬化
性樹脂と有機金属化合物を液状で均一に混合し、加熱
(焼成)して得られる超微細なセラミックスが高度に分
散した状態のガラス状炭素複合材料が開示されている。
この発明では、珪素源となる有機金属化合物として、S
iCを与えるポリカルボシランおよびポリシラン、Si
−Ti−C−Oを与えるTi含有ポリカルボシラン、S
ix Ny 、Si−N−CあるいはSi2 N4 −SiCを
与えるポリシラザン類が用いられている。しかしなが
ら、複数のシラン結合を有するポリカルボシランやポリ
シラン等のポリマーを熱硬化性樹脂と混合して原料系と
すると、セラミックス源が分子として分散する状態とな
るため、熱処理後に微細な金属炭化物粒子となって粒界
が生成することが避けられず、セラミックスと炭素が均
質な連続相を呈するガラス状カーボン組織を得ることが
できない。
性樹脂と有機金属化合物を液状で均一に混合し、加熱
(焼成)して得られる超微細なセラミックスが高度に分
散した状態のガラス状炭素複合材料が開示されている。
この発明では、珪素源となる有機金属化合物として、S
iCを与えるポリカルボシランおよびポリシラン、Si
−Ti−C−Oを与えるTi含有ポリカルボシラン、S
ix Ny 、Si−N−CあるいはSi2 N4 −SiCを
与えるポリシラザン類が用いられている。しかしなが
ら、複数のシラン結合を有するポリカルボシランやポリ
シラン等のポリマーを熱硬化性樹脂と混合して原料系と
すると、セラミックス源が分子として分散する状態とな
るため、熱処理後に微細な金属炭化物粒子となって粒界
が生成することが避けられず、セラミックスと炭素が均
質な連続相を呈するガラス状カーボン組織を得ることが
できない。
【0007】このほか、特開平5−339006号公報
には、液状のケイ素化合物と官能基を有し加熱により炭
素を生成する液状の有機化合物を原料とし、これを均一
に溶化する重合又は架橋触媒を加え、重合又は架橋反応
させ、得られた前駆体物質を非酸化性雰囲気中で加熱炭
化した中間体生成物を非酸化性雰囲気中で更に高温焼成
することからなるβ型炭化ケイ素−炭素混合粉末の製造
方法において、該原料および触媒が不純物元素を実質的
に含有しないものであり、中間体成形物の炭素/ケイ素
のモル比が2.5〜3.5であり、混合粉末中の炭化ケ
イ素と炭素が均質に混合され、その炭素量が3〜28重
量%であり、混合粉末中の各不純物元素の含有量が1pp
m 以下である高純度β型炭化ケイ素−炭素混合粉末の製
造方法が提案されている。しかし、この方法は焼結体用
のSiC−C系粉末を製造するものであって、主要成分
がガラス状カーボン組織からなるSi含有カーボン成形
体の製造技術ではない。
には、液状のケイ素化合物と官能基を有し加熱により炭
素を生成する液状の有機化合物を原料とし、これを均一
に溶化する重合又は架橋触媒を加え、重合又は架橋反応
させ、得られた前駆体物質を非酸化性雰囲気中で加熱炭
化した中間体生成物を非酸化性雰囲気中で更に高温焼成
することからなるβ型炭化ケイ素−炭素混合粉末の製造
方法において、該原料および触媒が不純物元素を実質的
に含有しないものであり、中間体成形物の炭素/ケイ素
のモル比が2.5〜3.5であり、混合粉末中の炭化ケ
イ素と炭素が均質に混合され、その炭素量が3〜28重
量%であり、混合粉末中の各不純物元素の含有量が1pp
m 以下である高純度β型炭化ケイ素−炭素混合粉末の製
造方法が提案されている。しかし、この方法は焼結体用
のSiC−C系粉末を製造するものであって、主要成分
がガラス状カーボン組織からなるSi含有カーボン成形
体の製造技術ではない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、Si成
分が粒界を生じることなく連続相として均質に分布する
組織性状のSi含有ガラス状カーボン材の開発を課題と
して鋭意研究を進めた結果、熱硬化性樹脂と1分子中に
Si単原子を含むSiアルコキシドを特定条件で混合し
た原料系を架橋反応させ、−O−Si−O−で架橋され
た熱硬化性樹脂の成形体を焼成炭化処理するとSiが原
子レベルでガラス状カーボン組織中に均一な連続相とし
て分布する性状のSi含有ガラス状カーボンに転化する
ことを見い出し、とくにSi含有量が0.1〜15重量
%の範囲にある場合に優れた組織性状とともに改善され
た耐酸化性を示すことを確認して、本発明を完成するに
至った。
分が粒界を生じることなく連続相として均質に分布する
組織性状のSi含有ガラス状カーボン材の開発を課題と
して鋭意研究を進めた結果、熱硬化性樹脂と1分子中に
Si単原子を含むSiアルコキシドを特定条件で混合し
た原料系を架橋反応させ、−O−Si−O−で架橋され
た熱硬化性樹脂の成形体を焼成炭化処理するとSiが原
子レベルでガラス状カーボン組織中に均一な連続相とし
て分布する性状のSi含有ガラス状カーボンに転化する
ことを見い出し、とくにSi含有量が0.1〜15重量
%の範囲にある場合に優れた組織性状とともに改善され
た耐酸化性を示すことを確認して、本発明を完成するに
至った。
【0009】したがって、本発明の目的は、Si成分が
連続相として分布する均一緻密な複合組織構造を備えた
耐酸化性に優れるSi含有ガラス状カーボン材とその工
業的な製造方法を提供することにある。
連続相として分布する均一緻密な複合組織構造を備えた
耐酸化性に優れるSi含有ガラス状カーボン材とその工
業的な製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明によるSi含有ガラス状カーボン材は、−O
−Si−O−で架橋された熱硬化性樹脂の成形体を焼成
炭化して得られ、原子レベルのSiがガラス状カーボン
組織中に0.1〜15重量%の範囲で均一な連続相とし
て分布する組織性状を備えることを構成上の特徴とす
る。
めの本発明によるSi含有ガラス状カーボン材は、−O
−Si−O−で架橋された熱硬化性樹脂の成形体を焼成
炭化して得られ、原子レベルのSiがガラス状カーボン
組織中に0.1〜15重量%の範囲で均一な連続相とし
て分布する組織性状を備えることを構成上の特徴とす
る。
【0011】本発明に係るSi含有ガラス状カーボン材
は、−O−Si−O−で架橋された熱硬化性樹脂の成形
体を焼成炭化して得られるSi成分がガラス状カーボン
組織中に分布する複合組成を有するものであるが、その
組織性状は原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中
に0.1〜15重量%の特定範囲で均一な連続相として
分布しているところに新規な材質的特徴がある。本発明
において、原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中
に均一な連続相として分布してなる組織性状とは、実質
的にSiとCとの粒界が存在せず、透過型電子顕微鏡(T
EM) の観察によってSi成分が識別できない連続相とし
て均質に分布している組織状態を指す。ガラス状カーボ
ン組織中のSi含有率を0.1〜15重量%の範囲に限
定した理由は、0.1重量%未満では耐酸化性の向上な
どの複合効果が得られず、15重量%を越えると組織中
のSiが粒状化して粒界が生じるようになり、原子レベ
ルの連続相が崩れて微細粒子の脱離や機械的強度特性等
の低下を招くからである。より好ましいSi含有量は
0.2〜10重量%であり、この範囲で機械的強度など
他の特性を損ねずに耐酸化性を効果的に向上させること
が可能となる。
は、−O−Si−O−で架橋された熱硬化性樹脂の成形
体を焼成炭化して得られるSi成分がガラス状カーボン
組織中に分布する複合組成を有するものであるが、その
組織性状は原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中
に0.1〜15重量%の特定範囲で均一な連続相として
分布しているところに新規な材質的特徴がある。本発明
において、原子レベルのSiがガラス状カーボン組織中
に均一な連続相として分布してなる組織性状とは、実質
的にSiとCとの粒界が存在せず、透過型電子顕微鏡(T
EM) の観察によってSi成分が識別できない連続相とし
て均質に分布している組織状態を指す。ガラス状カーボ
ン組織中のSi含有率を0.1〜15重量%の範囲に限
定した理由は、0.1重量%未満では耐酸化性の向上な
どの複合効果が得られず、15重量%を越えると組織中
のSiが粒状化して粒界が生じるようになり、原子レベ
ルの連続相が崩れて微細粒子の脱離や機械的強度特性等
の低下を招くからである。より好ましいSi含有量は
0.2〜10重量%であり、この範囲で機械的強度など
他の特性を損ねずに耐酸化性を効果的に向上させること
が可能となる。
【0012】上記のSi含有ガラス状カーボン材は、熱
硬化性樹脂と1分子中に単一のSi原子を有するSiア
ルコキシドの加水分解物を有機溶媒中で撹拌混合し、架
橋反応により得られるゲル化物を硬化成形したのち、硬
化成形体を非酸化性雰囲気下で800℃以上の温度で焼
成炭化処理するプロセスにより製造される。
硬化性樹脂と1分子中に単一のSi原子を有するSiア
ルコキシドの加水分解物を有機溶媒中で撹拌混合し、架
橋反応により得られるゲル化物を硬化成形したのち、硬
化成形体を非酸化性雰囲気下で800℃以上の温度で焼
成炭化処理するプロセスにより製造される。
【0013】熱硬化性樹脂は焼成炭化処理によりガラス
状カーボンに転化する炭素源となるもので、例えばフェ
ノール系樹脂、フラン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ
カルボジイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、
ピレン−フェナントレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹
脂、エポキシ系樹脂あるいはこれらの混合樹脂等が挙げ
られる。特に樹脂を非酸化性雰囲気下で800℃の温度
により焼成したときに残留する残炭率が45重量%以上
のフェノール系樹脂、フラン系樹脂もしくはこれらの混
合樹脂が好ましく使用される。
状カーボンに転化する炭素源となるもので、例えばフェ
ノール系樹脂、フラン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ
カルボジイミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、
ピレン−フェナントレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹
脂、エポキシ系樹脂あるいはこれらの混合樹脂等が挙げ
られる。特に樹脂を非酸化性雰囲気下で800℃の温度
により焼成したときに残留する残炭率が45重量%以上
のフェノール系樹脂、フラン系樹脂もしくはこれらの混
合樹脂が好ましく使用される。
【0014】珪素源としては、1分子中に単一のSi原
子を有するSiアルコキシドが選択的に使用される。す
なわち、一般式Si(OR)n またはRn Si(OR)
n (但し、Rはアルキル基またはアリール基、nは1以
上の整数を表す)で示される1個のSi原子が加水分解
性のアルコキシド基に結合した化合物であれば種類に限
定はないが、2個以上のSi原子が結合するポリシラ
ン、ポリシロキサンあるいはポリシラザン等の化合物は
対象とならない。使用可能な単一Si原子を有するSi
アルコキシドとしては、例えばメトキシシラン、エトキ
シシラン、ブトキシシラン、プロポキシシラン、イソプ
ロポキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラ
ン、ジブトキシシラン、ジプロポキシシラン、トリメト
キシシラン、トリエトキシシラン、トリブトキシシラ
ン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テ
トラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプ
ロポキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチ
ルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラ
ン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブ
チルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシ
ラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロ
ヘキシルエトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)
ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエト
キシシラン等を挙げることができる。しかし、本発明の
目的には反応性の良好な低分子量のテトラメトキシシラ
ン〔Si(OCH3)4 〕やテトラエトシキシラン〔Si(OC
2H5)4〕が好ましく、特に後者のテトラエトキシシラン
が好適に使用される。
子を有するSiアルコキシドが選択的に使用される。す
なわち、一般式Si(OR)n またはRn Si(OR)
n (但し、Rはアルキル基またはアリール基、nは1以
上の整数を表す)で示される1個のSi原子が加水分解
性のアルコキシド基に結合した化合物であれば種類に限
定はないが、2個以上のSi原子が結合するポリシラ
ン、ポリシロキサンあるいはポリシラザン等の化合物は
対象とならない。使用可能な単一Si原子を有するSi
アルコキシドとしては、例えばメトキシシラン、エトキ
シシラン、ブトキシシラン、プロポキシシラン、イソプ
ロポキシシラン、ジメトキシシラン、ジエトキシシラ
ン、ジブトキシシラン、ジプロポキシシラン、トリメト
キシシラン、トリエトキシシラン、トリブトキシシラ
ン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テ
トラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラプ
ロポキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチ
ルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラ
ン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−n−ブ
チルメトキシシラン、トリ−iso−ブチルメトキシシ
ラン、トリシクロヘキシルメトキシシラン、トリシクロ
ヘキシルエトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)
ジメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキシル)ジエト
キシシラン等を挙げることができる。しかし、本発明の
目的には反応性の良好な低分子量のテトラメトキシシラ
ン〔Si(OCH3)4 〕やテトラエトシキシラン〔Si(OC
2H5)4〕が好ましく、特に後者のテトラエトキシシラン
が好適に使用される。
【0015】上記の1分子中に単一のSi原子を有する
Siアルコキシド(以下、単に「Siアルコキシド」と
いう)は加水分解した状態で熱硬化性樹脂と共に有機溶
媒中で撹拌混合し、架橋反応させる。熱硬化性樹脂およ
びSiアルコキドは、それぞれ無水アルコール系の有機
溶媒に添加し、十分に撹拌したのち、さらに超音波分散
処理を施してから混合することが好ましく、この撹拌混
合と超音波分散処理を順次に施すことにより凝集してい
る構成分子を効果的に解体することができる。このた
め、その後の操作段階におけるSiアルコキシド相互の
反応および凝集化が抑制され、安定した単分子の分散状
態を保持することができる。
Siアルコキシド(以下、単に「Siアルコキシド」と
いう)は加水分解した状態で熱硬化性樹脂と共に有機溶
媒中で撹拌混合し、架橋反応させる。熱硬化性樹脂およ
びSiアルコキドは、それぞれ無水アルコール系の有機
溶媒に添加し、十分に撹拌したのち、さらに超音波分散
処理を施してから混合することが好ましく、この撹拌混
合と超音波分散処理を順次に施すことにより凝集してい
る構成分子を効果的に解体することができる。このた
め、その後の操作段階におけるSiアルコキシド相互の
反応および凝集化が抑制され、安定した単分子の分散状
態を保持することができる。
【0016】この際、Siアルコキシドは有機溶媒に対
し50容量%以下の濃度になるように添加し、熱硬化性
樹脂液と混合する前に適量の水を加えて予め加水分解す
る。添加する水の量は、Siアルコキシドに対して1〜
2モルの範囲とする。有機溶媒に対するSiアルコキシ
ド濃度が50容量%を越えると、局部的に偏った加水分
解および脱水縮合反応が起こり、また熱硬化性樹脂を混
合した際に部分的な架橋反応を生じてSiO2 ゲルが偏
在し、均一な分散状態が得られ難くなる。また水の添加
量が2モルを上回ると、SiアルコキシドがSiO2 ゾ
ルを形成し、最終的にSi成分が微粒子となって分散す
るようになって連続相を形成することができなくなる。
し50容量%以下の濃度になるように添加し、熱硬化性
樹脂液と混合する前に適量の水を加えて予め加水分解す
る。添加する水の量は、Siアルコキシドに対して1〜
2モルの範囲とする。有機溶媒に対するSiアルコキシ
ド濃度が50容量%を越えると、局部的に偏った加水分
解および脱水縮合反応が起こり、また熱硬化性樹脂を混
合した際に部分的な架橋反応を生じてSiO2 ゲルが偏
在し、均一な分散状態が得られ難くなる。また水の添加
量が2モルを上回ると、SiアルコキシドがSiO2 ゾ
ルを形成し、最終的にSi成分が微粒子となって分散す
るようになって連続相を形成することができなくなる。
【0017】上記のようにして加水分解したSiアルコ
キシド溶液を撹拌しながら、熱硬化性樹脂液を徐々に添
加し、均一に混合する。熱硬化性樹脂液の添加量は、最
終的にガラス状カーボン組織に占めるSiの含有量が
0.1〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%に
なる量比に調整する。この段階では、混合する溶液がア
ルカリ性であると急激に重縮合が進行して球状ポリマー
を形成するため、酸性域に保持する必要がある。このた
め、例えば蟻酸、酢酸、蓚酸、乳酸、琥珀酸、マレイン
酸、酒石酸などのようなアルコールに可溶なカルボン酸
類を水分除去した弱酸性で不純物成分が残留しない有機
酸性液を用い、溶液のpHを酸性域になるように調整す
る。このpH調整はSiアルコキシド溶液、熱硬化性樹
脂液あるいはこの両液について行うことができる。
キシド溶液を撹拌しながら、熱硬化性樹脂液を徐々に添
加し、均一に混合する。熱硬化性樹脂液の添加量は、最
終的にガラス状カーボン組織に占めるSiの含有量が
0.1〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%に
なる量比に調整する。この段階では、混合する溶液がア
ルカリ性であると急激に重縮合が進行して球状ポリマー
を形成するため、酸性域に保持する必要がある。このた
め、例えば蟻酸、酢酸、蓚酸、乳酸、琥珀酸、マレイン
酸、酒石酸などのようなアルコールに可溶なカルボン酸
類を水分除去した弱酸性で不純物成分が残留しない有機
酸性液を用い、溶液のpHを酸性域になるように調整す
る。このpH調整はSiアルコキシド溶液、熱硬化性樹
脂液あるいはこの両液について行うことができる。
【0018】Siアルコキシド溶液と熱硬化性樹脂液を
混合すると、熱硬化性樹脂中のC−OH基と加水分解さ
れたSiアルコキシドのシラノール基(Si-OH) 間で架橋
反応が起こり、次第にゲル化する。この架橋反応は、シ
ラノール間の脱水縮合反応に比べて極めて速いため、容
易に熱硬化性樹脂を−O−Si−O−で架橋した状態の
ゲル化物が得られる。したがって、混合液を注型成形す
る場合には、Siアルコキシド溶液と熱硬化性樹脂液の
混合液はゲル化する前に所定形状の型枠に流し込み、必
要により真空脱泡処理したのち室温から70℃に加温し
て架橋反応によりゲル化させ、同時に硬化して成形体を
得る。このほか、ゲル化物を型込成形もしくは押出成形
して成形体とすることもできる。
混合すると、熱硬化性樹脂中のC−OH基と加水分解さ
れたSiアルコキシドのシラノール基(Si-OH) 間で架橋
反応が起こり、次第にゲル化する。この架橋反応は、シ
ラノール間の脱水縮合反応に比べて極めて速いため、容
易に熱硬化性樹脂を−O−Si−O−で架橋した状態の
ゲル化物が得られる。したがって、混合液を注型成形す
る場合には、Siアルコキシド溶液と熱硬化性樹脂液の
混合液はゲル化する前に所定形状の型枠に流し込み、必
要により真空脱泡処理したのち室温から70℃に加温し
て架橋反応によりゲル化させ、同時に硬化して成形体を
得る。このほか、ゲル化物を型込成形もしくは押出成形
して成形体とすることもできる。
【0019】ついで、硬化成形体を非酸化性雰囲気に保
持された加熱炉に移し、800℃以上の温度域、好まし
くは1000〜2500℃の範囲で焼成炭化処理を施し
て熱硬化性樹脂成分をガラス状カーボンに転化する。該
焼成炭化段階において脱酸素反応が進行し、Siが0.
1〜15重量%の範囲でガラス状カーボン組織中に原子
レベルの均一な連続相として分布する組織性状となる。
持された加熱炉に移し、800℃以上の温度域、好まし
くは1000〜2500℃の範囲で焼成炭化処理を施し
て熱硬化性樹脂成分をガラス状カーボンに転化する。該
焼成炭化段階において脱酸素反応が進行し、Siが0.
1〜15重量%の範囲でガラス状カーボン組織中に原子
レベルの均一な連続相として分布する組織性状となる。
【0020】
【作用】本発明に係るSi含有ガラス状カーボン材は、
−O−Si−O−で架橋された熱硬化性樹脂の成形体を
焼成炭化して得られる炭素質構造体であって、原子レベ
ルのSiが熱硬化性樹脂の炭化により転化したガラス状
カーボン組織中に0.1〜15重量%の範囲で均一な連
続相として分布する複合組織性状を備えている。この組
織性状は、Si成分が微粒子状態で分散する組織とは異
なり、組織内にSiとCとの粒界が存在しないアロイ状
の連続固溶相を呈しており、巨視的にはガラス状カーボ
ン単独の組織構造と実質的に相違が認められず、他方、
微視的にはガラス状カーボン組織の一部のCがSiに置
換結合された独特の複合形態となっている。かかる特有
の組織性状により、Si含有量が0.1〜15重量%の
比較的少ない量比(C/Si原子比=約13〜233
3)でありながら、強度特性を損ねずに耐酸化性を効果
的に向上させるために機能し、過酷な条件下でも粒子の
脱落を伴うことなしに安定した使用状態が発揮される。
−O−Si−O−で架橋された熱硬化性樹脂の成形体を
焼成炭化して得られる炭素質構造体であって、原子レベ
ルのSiが熱硬化性樹脂の炭化により転化したガラス状
カーボン組織中に0.1〜15重量%の範囲で均一な連
続相として分布する複合組織性状を備えている。この組
織性状は、Si成分が微粒子状態で分散する組織とは異
なり、組織内にSiとCとの粒界が存在しないアロイ状
の連続固溶相を呈しており、巨視的にはガラス状カーボ
ン単独の組織構造と実質的に相違が認められず、他方、
微視的にはガラス状カーボン組織の一部のCがSiに置
換結合された独特の複合形態となっている。かかる特有
の組織性状により、Si含有量が0.1〜15重量%の
比較的少ない量比(C/Si原子比=約13〜233
3)でありながら、強度特性を損ねずに耐酸化性を効果
的に向上させるために機能し、過酷な条件下でも粒子の
脱落を伴うことなしに安定した使用状態が発揮される。
【0021】また、本発明の製造方法に従えば、ガラス
状カーボン源となる熱硬化性樹脂とSi源として1分子
中に単一のSi原子を有するSiアルコキシドの加水分
解物とを均一混合した状態で架橋反応させることによ
り、−O−Si−O−が熱硬化性樹脂のメチロール基に
結合したゲル化物が得られる。ここで得られるゲル化物
は、凝集粒子を全く含まない極めて均質な連続相を呈し
ている。このゲル性状は、例えばポリカルボシランやポ
リシランのようなSi原子を複数個含む有機珪素ポリマ
ーを珪素源とした場合に、シロキサン結合(Si-O-Si) で
互いに凝集した微細粒子として分散する形態とは異質の
ものであり、このゲル性状が連続相のSi含有ガラス状
カーボン組織を形成するための要因となる。したがっ
て、ゲル成形物を硬化成形したのち焼成炭化して得られ
るガラス状カーボン材は、組織中に原子レベルのSiが
均一な連続相として分布する組織性状に転化し、ガラス
状カーボン本来の機能を有しながら優れた高温耐酸化性
を発揮する物性が付与される。
状カーボン源となる熱硬化性樹脂とSi源として1分子
中に単一のSi原子を有するSiアルコキシドの加水分
解物とを均一混合した状態で架橋反応させることによ
り、−O−Si−O−が熱硬化性樹脂のメチロール基に
結合したゲル化物が得られる。ここで得られるゲル化物
は、凝集粒子を全く含まない極めて均質な連続相を呈し
ている。このゲル性状は、例えばポリカルボシランやポ
リシランのようなSi原子を複数個含む有機珪素ポリマ
ーを珪素源とした場合に、シロキサン結合(Si-O-Si) で
互いに凝集した微細粒子として分散する形態とは異質の
ものであり、このゲル性状が連続相のSi含有ガラス状
カーボン組織を形成するための要因となる。したがっ
て、ゲル成形物を硬化成形したのち焼成炭化して得られ
るガラス状カーボン材は、組織中に原子レベルのSiが
均一な連続相として分布する組織性状に転化し、ガラス
状カーボン本来の機能を有しながら優れた高温耐酸化性
を発揮する物性が付与される。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比しなが
ら詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限
定されるものではない。
ら詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限
定されるものではない。
【0023】実施例1〜5、比較例1〜3
テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕を濃度が50容量
%になるように脱水したエタノールに溶解し、スターラ
ーで30分間撹拌したのち超音波振動装置により2時間
分散処理を施した。この溶液にテトラエトキシシランに
対して0.03モル相当量の水分除去した酢酸と1モル
相当量の水を滴下し、スターラーで1時間撹拌混合して
テトラエトキシシランを加水分解させた。ついで、加水
分解後のテトラエトキシシランを撹拌しながら、予め脱
水したエタノールに溶解しスターラーで30分間撹拌し
たのち超音波振動装置により2時間分散処理を施したフ
エノール樹脂液を徐々に添加し、引き続きスターラーで
1時間撹拌して均一になるまで混合した。この混合液を
型枠に流し込み、真空装置内で脱泡処理を施し、室温か
ら70℃まで加温して架橋反応により生成したゲル化物
を硬化成形した。得られた硬化成形体を窒素雰囲気に保
持された加熱炉に移し、10℃/hrの昇温速度で20
00℃まで加熱して焼成炭化した。このようにしてSi
含有量の異なるSi含有ガラス状カーボン材(縦横150m
m 、厚さ4mm) を製造した。比較のために、テトラエト
キシシランを混合せず、その他は同様の条件でSi成分
を含まないガラス状カーボン材(比較例1)を製造し
た。
%になるように脱水したエタノールに溶解し、スターラ
ーで30分間撹拌したのち超音波振動装置により2時間
分散処理を施した。この溶液にテトラエトキシシランに
対して0.03モル相当量の水分除去した酢酸と1モル
相当量の水を滴下し、スターラーで1時間撹拌混合して
テトラエトキシシランを加水分解させた。ついで、加水
分解後のテトラエトキシシランを撹拌しながら、予め脱
水したエタノールに溶解しスターラーで30分間撹拌し
たのち超音波振動装置により2時間分散処理を施したフ
エノール樹脂液を徐々に添加し、引き続きスターラーで
1時間撹拌して均一になるまで混合した。この混合液を
型枠に流し込み、真空装置内で脱泡処理を施し、室温か
ら70℃まで加温して架橋反応により生成したゲル化物
を硬化成形した。得られた硬化成形体を窒素雰囲気に保
持された加熱炉に移し、10℃/hrの昇温速度で20
00℃まで加熱して焼成炭化した。このようにしてSi
含有量の異なるSi含有ガラス状カーボン材(縦横150m
m 、厚さ4mm) を製造した。比較のために、テトラエト
キシシランを混合せず、その他は同様の条件でSi成分
を含まないガラス状カーボン材(比較例1)を製造し
た。
【0024】得られた各Si含有ガラス状カーボン材の
曲げ強度および高温域での耐酸化性を測定し、その結果
を表1に示した。なお、耐酸化性は試料を乾燥空気中で
750℃および950℃の温度に40分間処理した際の
重量減少率として示した。
曲げ強度および高温域での耐酸化性を測定し、その結果
を表1に示した。なお、耐酸化性は試料を乾燥空気中で
750℃および950℃の温度に40分間処理した際の
重量減少率として示した。
【0025】
【表1】
【0026】表1の結果から、Si含有量が0.1〜1
5重量%の範囲で耐酸化性が効果的に向上しており、同
時に材質強度も改善されていることが確認される。しか
し、Si含有量が15重量%の実施例5では耐酸化性は
良好なものの、材質強度が低下する現象が認められた。
図1は実施例2と比較例1の750℃処理時における酸
化による重量減少率の経時変化を、また図2は実施例2
と比較例1の950℃処理時における酸化による重量減
少率の経時変化をそれぞれグラフとして示したものであ
る。これらの図からも、本発明のSi含有ガラス状カー
ボン材の耐酸化性の向上効果が十分に認められる。
5重量%の範囲で耐酸化性が効果的に向上しており、同
時に材質強度も改善されていることが確認される。しか
し、Si含有量が15重量%の実施例5では耐酸化性は
良好なものの、材質強度が低下する現象が認められた。
図1は実施例2と比較例1の750℃処理時における酸
化による重量減少率の経時変化を、また図2は実施例2
と比較例1の950℃処理時における酸化による重量減
少率の経時変化をそれぞれグラフとして示したものであ
る。これらの図からも、本発明のSi含有ガラス状カー
ボン材の耐酸化性の向上効果が十分に認められる。
【0027】図3は実施例2のSi含有ガラス状カーボ
ン材組織の微細粒子構造を示したTEM写真(拡大倍
率:900,000 倍) 、図4は比較例1のSi成分を含有し
ない純粋なガラス状カーボン材組織の微細粒子構造を示
したTEM写真(拡大倍率:900,000 倍) である。両者
の組織には実質的に相違は認められず、いずれもSiや
SiCの粒状物は確認されない。図5は実施例2のSi
含有ガラス状カーボン材につきエネルギー分散型X線分
光分析装置(EDAX社製、PV-9900)を用いて測定した分析
結果であり、明らかにC、OのほかにSi元素のピーク
が現出している。このように、本発明のSi含有ガラス
状カーボン材はSi成分を含有しているにも拘らず、S
iが原子レベルでガラス状カーボン組織中に均一な連続
相として分布しているため、Siを含まないガラス状カ
ーボン材と相違しない組織性状を呈していることが判
る。
ン材組織の微細粒子構造を示したTEM写真(拡大倍
率:900,000 倍) 、図4は比較例1のSi成分を含有し
ない純粋なガラス状カーボン材組織の微細粒子構造を示
したTEM写真(拡大倍率:900,000 倍) である。両者
の組織には実質的に相違は認められず、いずれもSiや
SiCの粒状物は確認されない。図5は実施例2のSi
含有ガラス状カーボン材につきエネルギー分散型X線分
光分析装置(EDAX社製、PV-9900)を用いて測定した分析
結果であり、明らかにC、OのほかにSi元素のピーク
が現出している。このように、本発明のSi含有ガラス
状カーボン材はSi成分を含有しているにも拘らず、S
iが原子レベルでガラス状カーボン組織中に均一な連続
相として分布しているため、Siを含まないガラス状カ
ーボン材と相違しない組織性状を呈していることが判
る。
【0028】実施例6
テトラエトキシシランをテトラメトキシシラン〔Si(OCH
3)4 〕に代え、その他は実施例1と同一条件でSi含有
率2.0重量%のSi含有ガラス状カーボン材を製造し
た。この材料の曲げ強度は1038kgf/cm2 であり、酸
化による重量減少率は750℃時で0.9重量%、95
0℃時で10重量%であった。
3)4 〕に代え、その他は実施例1と同一条件でSi含有
率2.0重量%のSi含有ガラス状カーボン材を製造し
た。この材料の曲げ強度は1038kgf/cm2 であり、酸
化による重量減少率は750℃時で0.9重量%、95
0℃時で10重量%であった。
【0029】比較例4
テトラエトキシシランをヘキサメチルジシロキサン〔(C
H3)3SiOSi(CH3)3 〕にの代え、70容量%の濃度で脱水
エタノールに溶解した。その他は実施例1と同一条件で
Si含有率2.0重量%のSi含有ガラス状カーボン材
を製造した。この材料の曲げ強度は1041kgf/cm2 で
あったが、酸化による重量減少率は750℃時で2.3
重量%であり、950℃時では33重量%であった。組
織の状態は、図6のTEM写真(拡大倍率;75,000倍)
に示すように一部にSiが凝集した粒子(100〜500nm)が
黒い塊として存在している。
H3)3SiOSi(CH3)3 〕にの代え、70容量%の濃度で脱水
エタノールに溶解した。その他は実施例1と同一条件で
Si含有率2.0重量%のSi含有ガラス状カーボン材
を製造した。この材料の曲げ強度は1041kgf/cm2 で
あったが、酸化による重量減少率は750℃時で2.3
重量%であり、950℃時では33重量%であった。組
織の状態は、図6のTEM写真(拡大倍率;75,000倍)
に示すように一部にSiが凝集した粒子(100〜500nm)が
黒い塊として存在している。
【0030】上記の実施例を含めて請求項以外の本発明
の好ましい実施態様を列挙すると、以下のようになる。 (1) ガラス状カーボン組織中のSiを0.2〜10重量
%の範囲で含有するSi含有ガラス状カーボン材。 (2) 製造方法において、有機溶媒に脱水したエタノール
を用い、Siアルコキシドに対して1〜2モル量の水に
よりSiアルコキシド溶液を加水分解するSi含有ガラ
ス状カーボン材の製造方法。 (3) 製造方法において、熱硬化性樹脂液および/または
Siアルコキシド溶液のpHを水分除去したカルボン酸
系有機酸を用いて酸性域に調整するSi含有ガラス状カ
ーボン材の製造方法。
の好ましい実施態様を列挙すると、以下のようになる。 (1) ガラス状カーボン組織中のSiを0.2〜10重量
%の範囲で含有するSi含有ガラス状カーボン材。 (2) 製造方法において、有機溶媒に脱水したエタノール
を用い、Siアルコキシドに対して1〜2モル量の水に
よりSiアルコキシド溶液を加水分解するSi含有ガラ
ス状カーボン材の製造方法。 (3) 製造方法において、熱硬化性樹脂液および/または
Siアルコキシド溶液のpHを水分除去したカルボン酸
系有機酸を用いて酸性域に調整するSi含有ガラス状カ
ーボン材の製造方法。
【0031】
【発明の効果】以上のとおり、本発明に従えばSi成分
を連続相として含有する均質緻密な複合組織を備え、耐
酸化性が向上したSi含有ガラス状カーボン材を提供す
ることが可能となる。したがって、組織中からの微細粒
子の脱離や酸化損傷が嫌われる苛酷な条件においても十
分に安定した使用状態が保てるから、半導体用部材をは
じめ多様の用途分野を対象とする工業用部材として極め
て有用である。
を連続相として含有する均質緻密な複合組織を備え、耐
酸化性が向上したSi含有ガラス状カーボン材を提供す
ることが可能となる。したがって、組織中からの微細粒
子の脱離や酸化損傷が嫌われる苛酷な条件においても十
分に安定した使用状態が保てるから、半導体用部材をは
じめ多様の用途分野を対象とする工業用部材として極め
て有用である。
【図1】実施例2と比較例1の750℃処理時における
酸化による重量減少率の経時変化を示したグラフであ
る。
酸化による重量減少率の経時変化を示したグラフであ
る。
【図2】実施例2と比較例1の950℃処理時における
酸化による重量減少率の経時変化を示したグラフであ
る。
酸化による重量減少率の経時変化を示したグラフであ
る。
【図3】実施例2のSi含有ガラス状カーボン材組織の
粒子構造を示したTEM写真(拡大倍率:900,000 倍)
である。
粒子構造を示したTEM写真(拡大倍率:900,000 倍)
である。
【図4】比較例1のガラス状カーボン材組織の粒子構造
を示したTEM写真(拡大倍率:900,000 倍) である。
を示したTEM写真(拡大倍率:900,000 倍) である。
【図5】実施例2のSi含有ガラス状カーボン材のエネ
ルギー分散型X線分光分析結果を示した測定チャートで
ある。
ルギー分散型X線分光分析結果を示した測定チャートで
ある。
【図6】比較例4のSi含有ガラス状カーボン材組織の
粒子構造を示したTEM写真(拡大倍率:75,000倍) で
ある。
粒子構造を示したTEM写真(拡大倍率:75,000倍) で
ある。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C04B 35/52
C01B 31/02
Claims (4)
- 【請求項1】 −O−Si−O−で架橋された熱硬化性
樹脂の成形体を焼成炭化して得られ、原子レベルのSi
がガラス状カーボン組織中に0.1〜15重量%の範囲
で均一な連続相として分布する組織性状を備えることを
特徴とするSi含有ガラス状カーボン材。 - 【請求項2】 熱硬化性樹脂と1分子中に単一のSi原
子を有するSiアルコキシドの加水分解物を有機溶媒中
で撹拌混合し、架橋反応により得られるゲル化物を硬化
成形したのち、硬化成形体を非酸化性雰囲気下で800
℃以上の温度により焼成炭化処理することを特徴とする
Si含有ガラス状カーボン材の製造方法。 - 【請求項3】 1分子中に単一のSi原子を有するSi
アルコキシドを50容量%以下の濃度で有機溶媒に撹拌
混合し、超音波分散処理を施したのち加水分解した溶液
に、予め有機溶媒に溶解し超音波分散処理を施した熱硬
化性樹脂液を、酸性条件下で撹拌しながら最終的にガラ
ス状カーボン組織に占めるSiの含有量が0.1〜15
重量%になる量比で添加混合し、架橋反応を行わせる請
求項2記載のSi含有ガラス状カーボン材の製造方法。 - 【請求項4】 Siアルコキシドが、テトラエトキシシ
ラン〔Si(OC2H5)4〕である請求項2又は3記載のSi含
有ガラス状カーボン材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15517795A JP3396113B2 (ja) | 1995-05-30 | 1995-05-30 | Si含有ガラス状カーボン材およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP15517795A JP3396113B2 (ja) | 1995-05-30 | 1995-05-30 | Si含有ガラス状カーボン材およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08325059A JPH08325059A (ja) | 1996-12-10 |
JP3396113B2 true JP3396113B2 (ja) | 2003-04-14 |
Family
ID=15600184
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP15517795A Expired - Fee Related JP3396113B2 (ja) | 1995-05-30 | 1995-05-30 | Si含有ガラス状カーボン材およびその製造方法 |
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JP (1) | JP3396113B2 (ja) |
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---|---|---|---|---|
JP2002029843A (ja) * | 2000-07-17 | 2002-01-29 | Tokai Carbon Co Ltd | プラズマ処理装置用保護部材 |
JP2002029844A (ja) * | 2000-07-17 | 2002-01-29 | Tokai Carbon Co Ltd | 気相成長装置用部材 |
JP2010176884A (ja) * | 2009-01-27 | 2010-08-12 | Dainippon Printing Co Ltd | 発光表示装置 |
CN112830784B (zh) * | 2021-01-20 | 2022-07-22 | 郑州大学 | 一种玻璃碳体材料及其制备方法 |
-
1995
- 1995-05-30 JP JP15517795A patent/JP3396113B2/ja not_active Expired - Fee Related
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---|---|
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