JP3548605B2 - 炭素繊維強化炭素複合材の耐酸化処理法 - Google Patents
炭素繊維強化炭素複合材の耐酸化処理法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高温酸化性雰囲気において優れた酸化抵抗性を示す炭素繊維強化炭素複合材(以下「C/C複合材」という。)の耐酸化処理法に関する。
【0002】
C/C複合材は、1000℃以上の高温においても高度の比強度、比弾性率を維持し、かつ低い熱膨張率を示す等の特異な性質を有する材料であり、航空宇宙用の部材をはじめ広い分野において各種の構造材料として注目されている。しかし、C/C複合材を含め炭素材料は一般に500℃以上の大気雰囲気下では酸化が進行して、物理的、化学的性質が損なわれる関係で高温大気中での使用は極く短時間に限られる材質上の欠点がある。このため、C/C複合材の表面に耐酸化性の被覆を施して改質化する試みが従来から盛んに行われている。このうち、被覆層の形成操作、性状特性など技術的、経済的な面からSiCの被膜形成が最も工業性に適している。
【0003】
従来、C/C複合材の表面にSiC被膜を形成する方法として、気相反応により生成するSiCを直接沈着させるCVD法(化学的気相蒸着法)と、C/C複合材の炭素を反応源に利用してSiOガスと反応させることによりSiCに転化させるコンバージョン法が知られている。前者のCVD法によればC/C複合基材面に緻密なSiC被膜を形成することができるが、C/C複合基材とSiC被膜の界面が明確に分離している関係で熱衝撃を与えると層間剥離現象が起こり易く、また層界面にクラックが発生する等の現象が多発し易い。この現象は、主にC/C複合基材とSiC被膜層との熱膨張差が大きく、最大歪みが追随できないことに起因するものであるため、C/C複合基材面をSiCの熱膨張率に近似するように改質すれば軽減化させることができる。このような観点から、C/C複合基材面に気相熱分解法により熱分解炭素層を形成し、ついでCVDまたはCVI法でSiCを被覆する方法(特開平2−111681号公報) が提案されているが、十分な効果は期待できない。
【0004】
これに対し、後者のC/C複合基材の炭素を反応源に利用してSiOガスと反応させることによりSiCに転化させるコンバージョン法は、基材の表層部が連続組織としてSiC層を形成する傾斜機能材質となるため界面剥離を生じることはない。一般にコンバージョン法は、石英、珪石、珪砂等のSiO2 含有粉末とコークス、ピッチ、黒鉛、カーボンブラック等の炭素質粉末とを混合し、これを加熱反応することによりSiOガスを発生させ、このSiOガスとC/C複合材を反応させることにより、C/C基材をSiCに転化させる方法(特開平1−252578号公報)で行われる。しかしながら、コンバージョン法により形成されるSiC層はCVD法に比べて緻密性に劣るうえ、反応時、被覆層に微小なクラックが発生して耐酸化性が低下する問題がある。
【0005】
このような問題の解消を図るため、本出願人は、例えばC/C複合基材面にコンバージョン法で形成したSiC被覆層に、さらにSiO2 微粒被覆層を介してSiO2 、B2 O3 等のガラス被覆層を形成する耐酸化性C/C材とその製造方法(特開平4−42883 号公報)、コンバージョン法で形成したSiC被膜からなる第1被覆層、アモルファス質または微細多結晶質SiC被膜からなる第2被覆層およびB2 O3 −SiO2 ガラス被膜からなる第3被覆層を積層形成した耐酸化性C/C複合材(特開平4−243989号公報)、あるいはコンバージョン法で形成したSiC被膜からなる内層、SiO2 微粒子被膜からなる中間層、Al2 O3 −SiO2 もしくはB2 O3 −Al2 O3 −SiO2 のガラス被膜からなる外層が積層被覆された耐酸化性C/C複合材(特開平5−43366 号公報)などを開発し、提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの先行技術においては、コンバージョン法により形成される第1被覆層のSiC被膜の膜厚を均一にすることが困難であるために、膜厚のばらつきが大きくなり、十分な耐酸化機能を付与するためには100μm 以上の被膜を形成する必要があった。その結果、C/C複合基材表層部のうちSiC被膜に転化する割合が大きくなり、C/C複合材の強度が低下するという問題点があった。更に、C/C複合材の形状が複雑になると、均一にSiC被膜を形成することが困難となる欠点もあった。
【0007】
本発明の目的は、これらの問題点の解消を図ることにあり、強度低下を伴うことなく、複雑形状のC/C複合材に対しても高温酸化性雰囲気において長期に亘り安定した耐酸化性を発揮することができるC/C複合材の耐酸化処理法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明によるC/C複合材の耐酸化処理法は、炭素繊維をマトリックス樹脂とともに複合成形し、硬化および焼成炭化処理して得られる炭素繊維強化炭素複合材を基材とし、該基材の表面にSiアルコキシドおよび熱硬化性樹脂液にアルコールを加えて均一に混合したのち加水分解して得られるSiC有機前駆体溶液を含浸し、非酸化性雰囲気中で熱処理してコンバージョン法によりSiC被膜を形成する第1被覆工程、CVD法あるいはパルスCVI法により気相析出させてセラミックス質被膜を形成する第2被覆工程、およびアルコキシド法で得られるガラス前駆体溶液を含浸したのち加熱処理してガラス質被膜を形成する第3被覆工程、を順次施すことをことを構成上の特徴とする。
【0009】
C/C複合基材を構成する炭素繊維には、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、ピッチ系など各種原料から製造された平織、綾織などの織布、フェルトあるいはトウが使用され、マトリックス樹脂としてはフェノール系、フラン系その他炭化性の良好な液状熱硬化性樹脂が用いられる。炭素繊維は、これらのマトリックス樹脂液を含浸して、十分に濡らしたのち半硬化してプリプレグを形成し、次いで積層加圧成形する。成形体は加熱して樹脂成分を完全に硬化し、引き続き焼成炭化処理または更に黒鉛化してC/C複合基材を得る。このC/C複合基材は、必要に応じてマトリックス樹脂液を含浸、硬化、炭化する処理を反復して組織の緻密化が図られる。
【0010】
上記のC/C複合基材の表面にコンバージョンによるSiC被膜を形成する第1被覆工程は、Siアルコキシドおよび熱硬化性樹脂液にアルコールを加えて均一に混合したのち加水分解して得られるSiC有機前駆体溶液をC/C複合基材に含浸し、不活性雰囲気中で熱処理する方法で行われる。SiO2 源原料となるSiアルコキシドとしては、テトラメトキシシランSi(OCH3 )4 やテトラエトキシシランSi(OC2 H5 )4 などが、また、炭素源原料となる熱硬化性樹脂液としては、フェノール樹脂、フラン樹脂などの初期縮合物が用いられる。これらの原料はメタノール、エタノール等のアルコールを溶媒として混合溶解したのち、撹拌しながら水を添加して加水分解を行うことにより、SiO2 成分とC成分とが微細かつ均質に混合、分散したSiC有機前駆体溶液が調製される。なお、Siアルコキシドと熱硬化性樹脂液の割合は、SiO2 :Cのモル比に換算して、1:1〜4の範囲になるように混合することが好ましい。
【0011】
次いで、このSiC有機前駆体溶液を、浸漬あるいは塗布などの方法によりC/C複合基材に含浸したのち、70〜200℃の温度で硬化し、更に窒素、アルゴンなどの非酸化性雰囲気中1600〜1900℃の温度範囲で熱処理される。この熱処理によりSiC有機前駆体溶液から反応生成したSiOガスがC/C複合基材を構成する炭素組織と反応して表層部にSiC被膜が形成される。この場合、形成するSiC被膜の膜厚は、C/C複合材の強度低下を抑止するために好ましくは30〜70μm の範囲に調整される。
【0012】
第2被覆工程は、前記SiC被膜を形成したC/C複合材にCVD法あるいはパルスCVI法を適用して気相析出させる方法により、セラミックス質被膜を形成する工程である。形成するセラミックス質被膜の材質は、CVD法やパルスCVI法により析出可能な物質のうち、特に本発明の目的にはSiまたはZrの炭化物もしくは窒化物が適している。CVD装置あるいはパルスCVI装置の反応室にC/C複合材をセットし、所定温度に加熱したのち、SiやZrの有機ハロゲン化物、炭化水素、水素、アンモニアなどの原料ガスを充填して気相反応させることにより、セラミックス質の被膜が形成される。この場合、第1被覆工程で形成したSiC被膜との密着性を高めるために、反応室の真空排気、原料ガスの瞬間導入および原料ガスの反応を短周期の減圧、昇圧下で間欠的に繰り返し行うパルスCVI法を適用することが望ましい。
【0013】
第3被覆工程は、Siアルコキシドにアルコールを加えて撹拌混合した溶液にHCl水溶液、又はAl塩を溶解したHCl水溶液を滴下し、加水分解するアルコキシド法によりSiO2 、あるいはAl2 O3 −SiO2 ガラス前駆体溶液を調製し、この中に上記第1および第2被覆工程による被膜を形成したC/C複合材を浸漬して含浸し、風乾したのち100℃で乾燥する。次いで、B( OC4 H9)3 溶液中に浸漬して減圧下に含浸させ、風乾して加水分解した後、更に不活性雰囲気中1000℃以上の温度で加熱処理することによりガラス質被膜を形成する方法で行われる。なお、本発明の目的には、ガラス質被膜としてAl2 O3 、B2 O3 およびSiO2 の組成からなる複合体が好ましい。
【0014】
【作用】
本発明によれば、第1被覆工程におけるコンバージョン法によるSiC被膜形成は、SiOガス発生用のSiO2 源およびC源としてSIC有機前駆体溶液を用いるものであるから、C/C複合基材表面に均一に含浸することができ、かつ含浸量を調節することも容易である。したがって、形成されるSiC被膜の膜厚を正確に制御することができると共に均一な膜厚の被膜形成が可能となる。その結果、SiO2 源およびC源として混合粉末を用いる従来の方法に比べて、膜厚精度を格段に向上させることができ、膜厚のばらつきは従来法の150〜300μm に比べて20〜40μm の範囲で制御することが可能となる。
【0015】
したがって、形成するSiC被膜を薄膜化することが可能となり、第2被覆工程で形成するセラミックス質被膜との間に生じる熱応力の緩和に効果的に機能すると共に、C/C複合材の強度低下を抑止することができる。更に、複雑形状を有するC/C複合材であっても均一に含浸することができるため、均一な膜厚のSiC被膜形成が可能となる。
【0016】
また、第2被覆工程で形成するセラミックス被膜は、第1被覆工程で形成したSiC被膜表面に生じる幅数μm 程度の微細クラックやピンホールを充填、目詰めし、更に、第3被覆工程でガラス質被膜を形成することによりクラックやピンホールを充填封止して、最終的に外面を無孔構造にして大気とC/C複合材を完全に遮断するバリア機能が付与される。
【0017】
このようにして、C/C複合材の材質強度の低下を伴うことなく、また複雑形状のC/C複合材に対しても優れた耐酸化性能を示す被膜形成が可能となる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
【0019】
実施例1
(1) C/C複合基材の作製
ポリアクリロニトリル系高弾性タイプの平織炭素繊維布にフェノール樹脂初期縮合物のマトリックス樹脂液を十分に塗布し、48時間風乾してプリプレグシートを作製した。このプリプレグシート16枚を積層してモールドに入れ、温度110℃、圧力20kg/cm2で複合成形した。次いで、成形体を250℃の温度に加熱して完全に硬化したのち、N2 雰囲気に保持された焼成炉に移し、5℃/hr の昇温速度で2000℃まで加熱し、5時間保持して焼成炭化した。このようにして、炭素繊維の体積含有率(Vf)65%、嵩密度1.65g/cm3 のC/C複合基材を作製した。
【0020】
(2) 第1被覆工程
テトラエトキシシラン〔Si(OC2 H5 )4 〕とエタノールをモル比1:2の割合で混合し、混合溶液中にSi(OC2 H5 )4 1モルに対してフェノール樹脂を1モルの割合で添加し、室温で還流撹拌を行った。この混合溶液に、Si(OC2 H5 )4 1モルに対して2モル量の水と0.2モル量のHClの混合水溶液を滴下し、引き続き1時間撹拌して褐色透明のSiC有機前駆体溶液を調製した。このSiC有機前駆体溶液中に、前記C/C複合基材を15分間浸漬し、3時間風乾したのち100℃の温度で乾燥した。次いで、このC/C複合基材を黒鉛坩堝に入れて電気炉内に移し、内部をアルゴンガスで十分に置換したのち、50℃/hrの昇温速度で1850℃に加熱し、1時間保持してC/C複合基材の表面にSiC被膜を形成した。形成されたSiC被膜の膜厚は50μm であったが、その表面には幅数μm の微細なクラックの発生が認められた。
【0021】
(3) 第2被覆工程
第1被覆工程によりSiC被膜を形成したC/C複合基材をパルスCVI装置の反応管内にセットし、反応管内をアルゴンガスで十分に置換したのち、高周波誘導加熱により1100℃の温度に加熱した。次いで、真空ポンプにより吸引して、反応管内を2秒間で2Torr以下に減圧し、直ちに原料ガスとしてトリクロロメチルシラン〔CH3 SiCl3 〕と水素の混合ガス(モル比1:20)を1秒間で720Torrになるように導入して1秒間保持した。このようにして反応管内の減圧、反応ガスの導入および保持するパルスCVI操作を10000回繰り返してSiCを析出、沈着させた。SiC被膜の膜厚は150μm であり、その表面には僅かながらクラックが認められた。
【0022】
(4) 第3被覆工程
Si(OC2 H5 )4 とエタノールをモル比1:4.5の量比で混合し、室温で還流撹拌を行った溶液に、前記Si(OC2 H5 )4 1モルに対して2.5モルの水と0.03モルのHClの混合水溶液を滴下混合した。滴下後の溶液のpHは3.0であった。引き続き1時間撹拌を継続してSiO2 ガラス前駆体溶液を得た。このSiO2 ガラス前駆体溶液に、前記第2被覆工程までの処理を施したC/C複合基材を浸漬して15分間減圧含浸し、風乾後、100℃の温度で乾燥した。次いで、B(OC4 H9 )3 溶液中に浸漬して15分間減圧含浸したのち、1昼夜風乾して空気中の水分により加水分解を行い、100℃の温度で乾燥した。乾燥処理後のC/C複合材を電気炉に入れ、アルゴンガス雰囲気中で800℃の温度で1時間加熱処理して表面にB2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成した。形成したガラス質被膜の膜厚は2μm であった。
【0023】
(5) 特性の評価
上記各工程の耐酸化処理を施したC/C複合材について、次の方法により材質強度の測定ならびに耐酸化性の評価を行った。
▲1▼強度試験:
150×10×5mmの試料について、支点間距離I=80mm、クロスヘッドスピード6mm/minの条件で3点曲げ強度試験(ASTM D790)を行った。
▲2▼耐酸化性試験
大気雰囲気に保持された電気炉に入れて、1700℃の温度に30分間保持したのち取り出し、室温まで自然冷却した。この操作を10回反復して行い、酸化によるC/C複合材の重量減少率および耐酸化被膜の状況を測定、観察した。
【0024】
実施例2
実施例1と同一の条件により第2被覆工程までの処理を施したC/C複合基材について、第3被覆工程としてSiO2 ガラス前駆体溶液を調製する際にHCl水溶液にAl(NO3 )3 をSi(OC2 H5 )4 1モルに対して1モルの割合で溶解させてAl2 O3 −SiO2 ガラス前駆体溶液を調製したほかは、実施例1と同一の条件により被覆処理を施してAl2 O3 −B2 O3 −SiO2 のガラス質被膜(膜厚2μm )を形成した。このC/C複合材について実施例1と同一の条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0025】
実施例3
実施例1と同一の条件により第1被覆工程の処理を施したC/C複合材について、第2被覆工程としてCVD装置の反応管内にC/C複合材をセットし、反応管内をアルゴンガスで十分に置換したのち、高周波誘導加熱により1300℃の温度に加熱した。次いで、真空ポンプでアルゴンガスを排気し、水素ガスをキャリアガスとしてSiCl4 :CH4 :H2 の混合ガス(モル比1:1:5)を導入し、反応圧力100Torrの条件でCVD法によりSiCを析出させて、SiC被膜(膜厚150μm )を形成した。次いで、第3被覆工程として実施例2と同一条件によりAl2 O3 −B2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成した。得られたC/C複合材について実施例1と同一の条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0026】
実施例4
実施例1と同一の条件により第1被覆工程の処理を施したC/C複合材について、第2被覆工程の原料ガスとしてZrCl4 :CH4 :H2 の混合ガス(モル比1:1:8)を導入し、反応温度を1350℃としたほかは、実施例1と同一の条件により第2被覆工程の処理を施してZrC被膜(膜厚150μm )を形成した。次いで、第3被覆工程として実施例2と同一の条件によりAl2 O3 −B2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成し、得られたC/C複合材について実施例1と同一の条件によって強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0027】
実施例5
実施例1と同一の条件により第1被覆工程の処理を施したC/C複合材について、第2被覆工程としてSiCl4 :NH3 :H2 の混合ガス(モル比1:1:6)を導入したほかは実施例3と同一の条件によりSi3 N4 の被膜(膜厚150μm )を形成した。次いで、第3被覆工程として実施例2と同一条件によりAl2 O3 −B2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成した。得られたC/C複合材について実施例1と同一の条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0028】
比較例1
SiO2 粉末とSi粉末をモル比2:1の配合比率になるように混合し、混合粉末を黒鉛坩堝に入れ、上部にC/C複合材をセットした。この黒鉛坩堝を電気炉内に移し、内部をアルゴンガスで十分に置換したのち、50℃/hr の昇温速度で1900℃の温度に加熱し、2時間保持してC/C複合材の表層部にSiC被膜(膜厚200μm )を形成した。次いで、実施例1の第3被覆工程と同一の条件によりB2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成した。得られたC/C複合材について実施例1と同一の条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0029】
比較例2
実施例1と同一の条件により第2被覆工程および第3被覆工程の被膜形成処理のみを行い、得られたC/C複合材について実施例1と同一条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0030】
これらの結果について、適用した耐酸化処理法を表1に、強度試験および耐酸化性試験の結果を表2に、それぞれ示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
上記の結果から、本発明の耐酸化処理を施したC/C複合材は、比較例に対比して、いずれも高い強度特性を有し、また1700℃の高温大気中においても優れた耐酸化性能を示すことが認められる。
【0034】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の耐酸化処理法によれば、C/C複合基材表面にSiC有機前駆体溶液を含浸し、熱処理するコンバージョン法によりSiC被膜を形成し、次いでCVD法あるいはパルスCVI法によりセラミックス質被膜を、更にアルコキシド法で得られるガラス前駆体溶液を含浸、熱処理してガラス質被膜を、順次形成することにより高強度ならびに高度の耐酸化性を備えるC/C複合材を提供することが可能となる。また、複雑形状のC/C複合材に対しても適用が容易であり、過酷な高温酸化性雰囲気に晒されるC/C複合材の耐酸化処理法として極めて有用である。
【産業上の利用分野】
本発明は、高温酸化性雰囲気において優れた酸化抵抗性を示す炭素繊維強化炭素複合材(以下「C/C複合材」という。)の耐酸化処理法に関する。
【0002】
C/C複合材は、1000℃以上の高温においても高度の比強度、比弾性率を維持し、かつ低い熱膨張率を示す等の特異な性質を有する材料であり、航空宇宙用の部材をはじめ広い分野において各種の構造材料として注目されている。しかし、C/C複合材を含め炭素材料は一般に500℃以上の大気雰囲気下では酸化が進行して、物理的、化学的性質が損なわれる関係で高温大気中での使用は極く短時間に限られる材質上の欠点がある。このため、C/C複合材の表面に耐酸化性の被覆を施して改質化する試みが従来から盛んに行われている。このうち、被覆層の形成操作、性状特性など技術的、経済的な面からSiCの被膜形成が最も工業性に適している。
【0003】
従来、C/C複合材の表面にSiC被膜を形成する方法として、気相反応により生成するSiCを直接沈着させるCVD法(化学的気相蒸着法)と、C/C複合材の炭素を反応源に利用してSiOガスと反応させることによりSiCに転化させるコンバージョン法が知られている。前者のCVD法によればC/C複合基材面に緻密なSiC被膜を形成することができるが、C/C複合基材とSiC被膜の界面が明確に分離している関係で熱衝撃を与えると層間剥離現象が起こり易く、また層界面にクラックが発生する等の現象が多発し易い。この現象は、主にC/C複合基材とSiC被膜層との熱膨張差が大きく、最大歪みが追随できないことに起因するものであるため、C/C複合基材面をSiCの熱膨張率に近似するように改質すれば軽減化させることができる。このような観点から、C/C複合基材面に気相熱分解法により熱分解炭素層を形成し、ついでCVDまたはCVI法でSiCを被覆する方法(特開平2−111681号公報) が提案されているが、十分な効果は期待できない。
【0004】
これに対し、後者のC/C複合基材の炭素を反応源に利用してSiOガスと反応させることによりSiCに転化させるコンバージョン法は、基材の表層部が連続組織としてSiC層を形成する傾斜機能材質となるため界面剥離を生じることはない。一般にコンバージョン法は、石英、珪石、珪砂等のSiO2 含有粉末とコークス、ピッチ、黒鉛、カーボンブラック等の炭素質粉末とを混合し、これを加熱反応することによりSiOガスを発生させ、このSiOガスとC/C複合材を反応させることにより、C/C基材をSiCに転化させる方法(特開平1−252578号公報)で行われる。しかしながら、コンバージョン法により形成されるSiC層はCVD法に比べて緻密性に劣るうえ、反応時、被覆層に微小なクラックが発生して耐酸化性が低下する問題がある。
【0005】
このような問題の解消を図るため、本出願人は、例えばC/C複合基材面にコンバージョン法で形成したSiC被覆層に、さらにSiO2 微粒被覆層を介してSiO2 、B2 O3 等のガラス被覆層を形成する耐酸化性C/C材とその製造方法(特開平4−42883 号公報)、コンバージョン法で形成したSiC被膜からなる第1被覆層、アモルファス質または微細多結晶質SiC被膜からなる第2被覆層およびB2 O3 −SiO2 ガラス被膜からなる第3被覆層を積層形成した耐酸化性C/C複合材(特開平4−243989号公報)、あるいはコンバージョン法で形成したSiC被膜からなる内層、SiO2 微粒子被膜からなる中間層、Al2 O3 −SiO2 もしくはB2 O3 −Al2 O3 −SiO2 のガラス被膜からなる外層が積層被覆された耐酸化性C/C複合材(特開平5−43366 号公報)などを開発し、提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの先行技術においては、コンバージョン法により形成される第1被覆層のSiC被膜の膜厚を均一にすることが困難であるために、膜厚のばらつきが大きくなり、十分な耐酸化機能を付与するためには100μm 以上の被膜を形成する必要があった。その結果、C/C複合基材表層部のうちSiC被膜に転化する割合が大きくなり、C/C複合材の強度が低下するという問題点があった。更に、C/C複合材の形状が複雑になると、均一にSiC被膜を形成することが困難となる欠点もあった。
【0007】
本発明の目的は、これらの問題点の解消を図ることにあり、強度低下を伴うことなく、複雑形状のC/C複合材に対しても高温酸化性雰囲気において長期に亘り安定した耐酸化性を発揮することができるC/C複合材の耐酸化処理法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明によるC/C複合材の耐酸化処理法は、炭素繊維をマトリックス樹脂とともに複合成形し、硬化および焼成炭化処理して得られる炭素繊維強化炭素複合材を基材とし、該基材の表面にSiアルコキシドおよび熱硬化性樹脂液にアルコールを加えて均一に混合したのち加水分解して得られるSiC有機前駆体溶液を含浸し、非酸化性雰囲気中で熱処理してコンバージョン法によりSiC被膜を形成する第1被覆工程、CVD法あるいはパルスCVI法により気相析出させてセラミックス質被膜を形成する第2被覆工程、およびアルコキシド法で得られるガラス前駆体溶液を含浸したのち加熱処理してガラス質被膜を形成する第3被覆工程、を順次施すことをことを構成上の特徴とする。
【0009】
C/C複合基材を構成する炭素繊維には、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、ピッチ系など各種原料から製造された平織、綾織などの織布、フェルトあるいはトウが使用され、マトリックス樹脂としてはフェノール系、フラン系その他炭化性の良好な液状熱硬化性樹脂が用いられる。炭素繊維は、これらのマトリックス樹脂液を含浸して、十分に濡らしたのち半硬化してプリプレグを形成し、次いで積層加圧成形する。成形体は加熱して樹脂成分を完全に硬化し、引き続き焼成炭化処理または更に黒鉛化してC/C複合基材を得る。このC/C複合基材は、必要に応じてマトリックス樹脂液を含浸、硬化、炭化する処理を反復して組織の緻密化が図られる。
【0010】
上記のC/C複合基材の表面にコンバージョンによるSiC被膜を形成する第1被覆工程は、Siアルコキシドおよび熱硬化性樹脂液にアルコールを加えて均一に混合したのち加水分解して得られるSiC有機前駆体溶液をC/C複合基材に含浸し、不活性雰囲気中で熱処理する方法で行われる。SiO2 源原料となるSiアルコキシドとしては、テトラメトキシシランSi(OCH3 )4 やテトラエトキシシランSi(OC2 H5 )4 などが、また、炭素源原料となる熱硬化性樹脂液としては、フェノール樹脂、フラン樹脂などの初期縮合物が用いられる。これらの原料はメタノール、エタノール等のアルコールを溶媒として混合溶解したのち、撹拌しながら水を添加して加水分解を行うことにより、SiO2 成分とC成分とが微細かつ均質に混合、分散したSiC有機前駆体溶液が調製される。なお、Siアルコキシドと熱硬化性樹脂液の割合は、SiO2 :Cのモル比に換算して、1:1〜4の範囲になるように混合することが好ましい。
【0011】
次いで、このSiC有機前駆体溶液を、浸漬あるいは塗布などの方法によりC/C複合基材に含浸したのち、70〜200℃の温度で硬化し、更に窒素、アルゴンなどの非酸化性雰囲気中1600〜1900℃の温度範囲で熱処理される。この熱処理によりSiC有機前駆体溶液から反応生成したSiOガスがC/C複合基材を構成する炭素組織と反応して表層部にSiC被膜が形成される。この場合、形成するSiC被膜の膜厚は、C/C複合材の強度低下を抑止するために好ましくは30〜70μm の範囲に調整される。
【0012】
第2被覆工程は、前記SiC被膜を形成したC/C複合材にCVD法あるいはパルスCVI法を適用して気相析出させる方法により、セラミックス質被膜を形成する工程である。形成するセラミックス質被膜の材質は、CVD法やパルスCVI法により析出可能な物質のうち、特に本発明の目的にはSiまたはZrの炭化物もしくは窒化物が適している。CVD装置あるいはパルスCVI装置の反応室にC/C複合材をセットし、所定温度に加熱したのち、SiやZrの有機ハロゲン化物、炭化水素、水素、アンモニアなどの原料ガスを充填して気相反応させることにより、セラミックス質の被膜が形成される。この場合、第1被覆工程で形成したSiC被膜との密着性を高めるために、反応室の真空排気、原料ガスの瞬間導入および原料ガスの反応を短周期の減圧、昇圧下で間欠的に繰り返し行うパルスCVI法を適用することが望ましい。
【0013】
第3被覆工程は、Siアルコキシドにアルコールを加えて撹拌混合した溶液にHCl水溶液、又はAl塩を溶解したHCl水溶液を滴下し、加水分解するアルコキシド法によりSiO2 、あるいはAl2 O3 −SiO2 ガラス前駆体溶液を調製し、この中に上記第1および第2被覆工程による被膜を形成したC/C複合材を浸漬して含浸し、風乾したのち100℃で乾燥する。次いで、B( OC4 H9)3 溶液中に浸漬して減圧下に含浸させ、風乾して加水分解した後、更に不活性雰囲気中1000℃以上の温度で加熱処理することによりガラス質被膜を形成する方法で行われる。なお、本発明の目的には、ガラス質被膜としてAl2 O3 、B2 O3 およびSiO2 の組成からなる複合体が好ましい。
【0014】
【作用】
本発明によれば、第1被覆工程におけるコンバージョン法によるSiC被膜形成は、SiOガス発生用のSiO2 源およびC源としてSIC有機前駆体溶液を用いるものであるから、C/C複合基材表面に均一に含浸することができ、かつ含浸量を調節することも容易である。したがって、形成されるSiC被膜の膜厚を正確に制御することができると共に均一な膜厚の被膜形成が可能となる。その結果、SiO2 源およびC源として混合粉末を用いる従来の方法に比べて、膜厚精度を格段に向上させることができ、膜厚のばらつきは従来法の150〜300μm に比べて20〜40μm の範囲で制御することが可能となる。
【0015】
したがって、形成するSiC被膜を薄膜化することが可能となり、第2被覆工程で形成するセラミックス質被膜との間に生じる熱応力の緩和に効果的に機能すると共に、C/C複合材の強度低下を抑止することができる。更に、複雑形状を有するC/C複合材であっても均一に含浸することができるため、均一な膜厚のSiC被膜形成が可能となる。
【0016】
また、第2被覆工程で形成するセラミックス被膜は、第1被覆工程で形成したSiC被膜表面に生じる幅数μm 程度の微細クラックやピンホールを充填、目詰めし、更に、第3被覆工程でガラス質被膜を形成することによりクラックやピンホールを充填封止して、最終的に外面を無孔構造にして大気とC/C複合材を完全に遮断するバリア機能が付与される。
【0017】
このようにして、C/C複合材の材質強度の低下を伴うことなく、また複雑形状のC/C複合材に対しても優れた耐酸化性能を示す被膜形成が可能となる。
【0018】
【実施例】
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
【0019】
実施例1
(1) C/C複合基材の作製
ポリアクリロニトリル系高弾性タイプの平織炭素繊維布にフェノール樹脂初期縮合物のマトリックス樹脂液を十分に塗布し、48時間風乾してプリプレグシートを作製した。このプリプレグシート16枚を積層してモールドに入れ、温度110℃、圧力20kg/cm2で複合成形した。次いで、成形体を250℃の温度に加熱して完全に硬化したのち、N2 雰囲気に保持された焼成炉に移し、5℃/hr の昇温速度で2000℃まで加熱し、5時間保持して焼成炭化した。このようにして、炭素繊維の体積含有率(Vf)65%、嵩密度1.65g/cm3 のC/C複合基材を作製した。
【0020】
(2) 第1被覆工程
テトラエトキシシラン〔Si(OC2 H5 )4 〕とエタノールをモル比1:2の割合で混合し、混合溶液中にSi(OC2 H5 )4 1モルに対してフェノール樹脂を1モルの割合で添加し、室温で還流撹拌を行った。この混合溶液に、Si(OC2 H5 )4 1モルに対して2モル量の水と0.2モル量のHClの混合水溶液を滴下し、引き続き1時間撹拌して褐色透明のSiC有機前駆体溶液を調製した。このSiC有機前駆体溶液中に、前記C/C複合基材を15分間浸漬し、3時間風乾したのち100℃の温度で乾燥した。次いで、このC/C複合基材を黒鉛坩堝に入れて電気炉内に移し、内部をアルゴンガスで十分に置換したのち、50℃/hrの昇温速度で1850℃に加熱し、1時間保持してC/C複合基材の表面にSiC被膜を形成した。形成されたSiC被膜の膜厚は50μm であったが、その表面には幅数μm の微細なクラックの発生が認められた。
【0021】
(3) 第2被覆工程
第1被覆工程によりSiC被膜を形成したC/C複合基材をパルスCVI装置の反応管内にセットし、反応管内をアルゴンガスで十分に置換したのち、高周波誘導加熱により1100℃の温度に加熱した。次いで、真空ポンプにより吸引して、反応管内を2秒間で2Torr以下に減圧し、直ちに原料ガスとしてトリクロロメチルシラン〔CH3 SiCl3 〕と水素の混合ガス(モル比1:20)を1秒間で720Torrになるように導入して1秒間保持した。このようにして反応管内の減圧、反応ガスの導入および保持するパルスCVI操作を10000回繰り返してSiCを析出、沈着させた。SiC被膜の膜厚は150μm であり、その表面には僅かながらクラックが認められた。
【0022】
(4) 第3被覆工程
Si(OC2 H5 )4 とエタノールをモル比1:4.5の量比で混合し、室温で還流撹拌を行った溶液に、前記Si(OC2 H5 )4 1モルに対して2.5モルの水と0.03モルのHClの混合水溶液を滴下混合した。滴下後の溶液のpHは3.0であった。引き続き1時間撹拌を継続してSiO2 ガラス前駆体溶液を得た。このSiO2 ガラス前駆体溶液に、前記第2被覆工程までの処理を施したC/C複合基材を浸漬して15分間減圧含浸し、風乾後、100℃の温度で乾燥した。次いで、B(OC4 H9 )3 溶液中に浸漬して15分間減圧含浸したのち、1昼夜風乾して空気中の水分により加水分解を行い、100℃の温度で乾燥した。乾燥処理後のC/C複合材を電気炉に入れ、アルゴンガス雰囲気中で800℃の温度で1時間加熱処理して表面にB2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成した。形成したガラス質被膜の膜厚は2μm であった。
【0023】
(5) 特性の評価
上記各工程の耐酸化処理を施したC/C複合材について、次の方法により材質強度の測定ならびに耐酸化性の評価を行った。
▲1▼強度試験:
150×10×5mmの試料について、支点間距離I=80mm、クロスヘッドスピード6mm/minの条件で3点曲げ強度試験(ASTM D790)を行った。
▲2▼耐酸化性試験
大気雰囲気に保持された電気炉に入れて、1700℃の温度に30分間保持したのち取り出し、室温まで自然冷却した。この操作を10回反復して行い、酸化によるC/C複合材の重量減少率および耐酸化被膜の状況を測定、観察した。
【0024】
実施例2
実施例1と同一の条件により第2被覆工程までの処理を施したC/C複合基材について、第3被覆工程としてSiO2 ガラス前駆体溶液を調製する際にHCl水溶液にAl(NO3 )3 をSi(OC2 H5 )4 1モルに対して1モルの割合で溶解させてAl2 O3 −SiO2 ガラス前駆体溶液を調製したほかは、実施例1と同一の条件により被覆処理を施してAl2 O3 −B2 O3 −SiO2 のガラス質被膜(膜厚2μm )を形成した。このC/C複合材について実施例1と同一の条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0025】
実施例3
実施例1と同一の条件により第1被覆工程の処理を施したC/C複合材について、第2被覆工程としてCVD装置の反応管内にC/C複合材をセットし、反応管内をアルゴンガスで十分に置換したのち、高周波誘導加熱により1300℃の温度に加熱した。次いで、真空ポンプでアルゴンガスを排気し、水素ガスをキャリアガスとしてSiCl4 :CH4 :H2 の混合ガス(モル比1:1:5)を導入し、反応圧力100Torrの条件でCVD法によりSiCを析出させて、SiC被膜(膜厚150μm )を形成した。次いで、第3被覆工程として実施例2と同一条件によりAl2 O3 −B2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成した。得られたC/C複合材について実施例1と同一の条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0026】
実施例4
実施例1と同一の条件により第1被覆工程の処理を施したC/C複合材について、第2被覆工程の原料ガスとしてZrCl4 :CH4 :H2 の混合ガス(モル比1:1:8)を導入し、反応温度を1350℃としたほかは、実施例1と同一の条件により第2被覆工程の処理を施してZrC被膜(膜厚150μm )を形成した。次いで、第3被覆工程として実施例2と同一の条件によりAl2 O3 −B2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成し、得られたC/C複合材について実施例1と同一の条件によって強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0027】
実施例5
実施例1と同一の条件により第1被覆工程の処理を施したC/C複合材について、第2被覆工程としてSiCl4 :NH3 :H2 の混合ガス(モル比1:1:6)を導入したほかは実施例3と同一の条件によりSi3 N4 の被膜(膜厚150μm )を形成した。次いで、第3被覆工程として実施例2と同一条件によりAl2 O3 −B2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成した。得られたC/C複合材について実施例1と同一の条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0028】
比較例1
SiO2 粉末とSi粉末をモル比2:1の配合比率になるように混合し、混合粉末を黒鉛坩堝に入れ、上部にC/C複合材をセットした。この黒鉛坩堝を電気炉内に移し、内部をアルゴンガスで十分に置換したのち、50℃/hr の昇温速度で1900℃の温度に加熱し、2時間保持してC/C複合材の表層部にSiC被膜(膜厚200μm )を形成した。次いで、実施例1の第3被覆工程と同一の条件によりB2 O3 −SiO2 のガラス質被膜を形成した。得られたC/C複合材について実施例1と同一の条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0029】
比較例2
実施例1と同一の条件により第2被覆工程および第3被覆工程の被膜形成処理のみを行い、得られたC/C複合材について実施例1と同一条件により強度試験および耐酸化性試験を行った。
【0030】
これらの結果について、適用した耐酸化処理法を表1に、強度試験および耐酸化性試験の結果を表2に、それぞれ示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
上記の結果から、本発明の耐酸化処理を施したC/C複合材は、比較例に対比して、いずれも高い強度特性を有し、また1700℃の高温大気中においても優れた耐酸化性能を示すことが認められる。
【0034】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明の耐酸化処理法によれば、C/C複合基材表面にSiC有機前駆体溶液を含浸し、熱処理するコンバージョン法によりSiC被膜を形成し、次いでCVD法あるいはパルスCVI法によりセラミックス質被膜を、更にアルコキシド法で得られるガラス前駆体溶液を含浸、熱処理してガラス質被膜を、順次形成することにより高強度ならびに高度の耐酸化性を備えるC/C複合材を提供することが可能となる。また、複雑形状のC/C複合材に対しても適用が容易であり、過酷な高温酸化性雰囲気に晒されるC/C複合材の耐酸化処理法として極めて有用である。
Claims (3)
- 炭素繊維をマトリックス樹脂とともに複合成形し、硬化および焼成炭化処理して得られる炭素繊維強化炭素複合材を基材とし、該基材の表面にSiアルコキシドおよび熱硬化性樹脂液にアルコールを加えて均一に混合したのち加水分解して得られるSiC有機前駆体溶液を含浸し、非酸化性雰囲気中で熱処理してコンバージョン法によりSiC被膜を形成する第1被覆工程、CVD法あるいはパルスCVI法により気相析出させてセラミックス質被膜を形成する第2被覆工程、およびアルコキシド法で得られるガラス前駆体溶液を含浸したのち加熱処理してガラス質被膜を形成する第3被覆工程、を順次施すことを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材の耐酸化処理法。
- 第2被覆工程で形成するセラミックス質被膜が、SiまたはZrの炭化物もしくは窒化物である請求項1記載の炭素繊維強化炭素複合材の耐酸化処理法。
- 第3被覆工程で形成するガラス質被膜が、Al2 O3 ,B2 O3 およびSiO2 の複合体である請求項1又は2記載の炭素繊維強化炭素複合材の耐酸化処理法。
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