JP3675714B2 - 鉄道車両の妻の製作方法及び鉄道車両の車体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、板の端部にフランジを有する複数の成形品と他の板とを隙間なく接合して一つの鉄道車両の妻を製作する方法に関する。特に、鉄道車両の車体の長手方向の端部を構成する妻の製作に好適である。
【0002】
【従来の技術】
特許2692459号(USP5488770)のように、鉄道車両の車体は6面体である。車体の長手方向の端部は妻と呼ばれる。妻には、隣接する車両に行き来するための通路がある。このため、妻は、通路の左右を構成する板,通路の上部を構成する板を必要とする。この3つの板は車体の屋根構体,側構体に接合するので、3つの板の外側の端部にはそれぞれフランジを有する。また、通路側の3つの板の端部にも補強用のフランジを有する。
【0003】
従来、板の端部にフランジを有する成形品は、雌型と雄型との間に板を置いて、プレスすることによって製作している。雌,雄の金型が必要なため、高価である。
【0004】
このため、それぞれ板の端部にL状の板をスポット溶接して、L状の1辺を前記フランジとしている。
【0005】
金型を少なくする手段として、特開平11−310371号の図18から図20のような逐次成形方法が提案されている。これは、雌型に素材の外周部を固定し、棒状の工具で素材を押し、雌型の内周面に沿って移動させて、逐次的に板を張り出し加工するものである。一方、特開平10−76321号は逐次的に絞り加工するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
図13の構成を考える。3つの板1,2,3にそれぞれフランジ1b,1c,1d,2b,2c,2d,3b,3c,3dを設けた後、左右の板1,2のフランジ1b,2bと中央の板のフランジ3b,3bとを重ね、このフランジをスポット溶接して一体にする。フランジは板1,2,3を曲げて一体に設ける。さらに、フランジ1c,3c,2cを屋根構体30に重ね、溶接することを考える。7は乗員の通路である。3つの板1,2,3のそれぞれにおいて、フランジ同士は隣接するフランジに連続しており、連続部は円弧状である。この場合、左右の板1,2と中央の板3と屋根構体30との接合部には、空間が生じる。この空間は雨水等の浸入防止のため、他の板で閉鎖しなければならない。この閉鎖作業は高価になる。また、身栄えが悪くなる。
【0007】
また、フランジは板から曲げたので、その断面は円弧状である。このため、左右の板の間に溝ができ、身栄えが悪くなる。
【0008】
逐次成形方法は金型を一つにできるので、安価にできる。しかし、前記特開平11−310371号の方法で板の端部にフランジを形成した場合は、フランジの外周部に板が残る。この板が不要な場合は、フランジの外周部を切断除去することが必要である。
【0009】
また、この加工方法によってフランジを形成する場合は、フランジと底板とが成す角度を直角にしたくても直角にできない。例えば、筒をフランジに重ねて接合した場合に、フランジが直角でない場合は重ね接合ができにくい。また、高さの高いフランジの形成が困難である。このため、このフランジに他の部材や他の部材のフランジを重ねることが困難である。
【0010】
一方、前記特開平10−76321号の加工方法によってフランジを加工する場合は、フランジとフランジとの接合部にしわが発生しやすい。
【0011】
本発明の目的は、フランジを有する2つの板と第3の板とを接合した場合に接合部に空間が生じることを防止することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、鉄道車両の妻を構成する2つの第1の板(50,60)と該2つの第1の板の間の乗員の通路(45)の上部において該2つの第1の板に突き合わせ溶接する第2の板(70)とを準備し、前記第1の板(50,60)は、実質的に長方形であって、その第1の辺を前記第1の板(50,60)に対して直角方向に曲げた第1のフランジ(52d)と、これに実質的に平行な第2の辺を前記第1の板(50,60)に対して直角方向に曲げた、または前記第2の辺に沿った厚肉部(257)と、前記第1の辺と前記第2の辺との間であってこれらに実質的に直交する第3の辺を前記第1の板(50,60)に対して直角方向に曲げた第3のフランジ(52c)と、前記第3のフランジ(52c)の長手方向の端部と前記第2のフランジ(52b)または前記厚肉部の長手方向の端部との間は空間があり、前記第2のフランジ(52b)の長手方向の端部または前記厚肉部の長手方向の端部と前記第3のフランジ(52c)の長手方向の端部との間の近傍の板(51、61)の一部を凹状に除いた凹部と、からなり、該凹部は該第1の板(50,60)の前記第2の辺側に向けて開口しており、前記第2の板(70)は、実質的に長方形であって、該板(70)の第1辺を曲げたものであって、前記第1の板(50、60)の前記第3のフランジ(52c)の長手方向の端部に接続する第1のフランジ(72c)と、前記第1の辺に実質的に平行であって、前記第1のフランジの長手方向の端部よりも短い第2の辺と、前記第2の辺の長手方向の端部と前記第1の辺の長手方向の端部とを接続する第3の辺にあり、前記第1の辺の前記長手方向の端部において、前記第2の辺の長手方向の端部よりも突出した凸部(73)と、からなり、次に、前記第1の板(50,60)の前記凹部に、前記第2の板(70)の前記凸部(73)を挿入して前記第1の板(50,60)と前記凸部(73)とを突き合わせ、また、前記第2の板(70)の前記第1のフランジ(72c)の長手方向の端部と前記第1の板(50、60)の前記第3のフランジ(52c、62c)の長手方向の端部とを突き合わせ、前記突き合わせた部分のそれぞれを溶接すること、によって達成できる。
ここで、前記「第1の板」、「第3の板」、「厚肉部」とはそれぞれ実施例において「50,60」、「70」、「257」である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施例を図1〜図12により説明する。図1は主として左半分を示す。車体は床を構成する台枠10,側面を構成する側構体20,屋根を構成する屋根構体30,車体の端部を閉鎖する妻構体40からなる。
【0014】
妻構体40は、乗員の通路45、その左右を構成する板(第1の板)50,60、通路45の上部を構成する板(第2の板)70からなる。
【0015】
左右の板50,60はほぼ四角形で、板の下端の辺を除いて板の端部にフランジ52b,52c,52d,62b,62c,62dを有する。板60は板50に左右対象である。フランジ52b,62b(第2のフランジ)は通路45側のフランジである。このフランジのある辺(52b´,62b´)を第2の辺という。フランジ52c,62c(第3のフランジ)は屋根構体30に重なるフランジである。この第3のフランジのある辺(52c´,62c´)を第3の辺という。フランジ52d,52eが側構20に重なるフランジである。(このフランジを第1のフランジ52d,52e,62dといい、第1のフランジ52d,52e,62dのある辺を第1の辺52d´、52e´、62d´という。第1のフランジ52d,52e,62d、第2のフランジ52b,62b、第3のフランジ52c,62cは、側構体20、屋根構体30側に円弧状に曲げられている。)
【0016】
縦のフランジ52b(62b)の上端と上辺のフランジ52c(62c)との接合部にはフランジが無い。フランジは不連続になっている。この部分はフランジが無いばかりか、底板51(61)の部分も除かれ、四角形の凹部53を設けている。凹部53の大きさは後述する。
【0017】
乗員の通路45の上部を構成する板70はほぼ四角形で、下辺と上辺にフランジ72b,72cを有する。フランジ72c(第1のフランジ)は屋根構体30に重なるフランジである。この第1のフランジのある辺を第1の辺(72c´)という。下片のフランジ72bは第2のフランジであリ、この第2のフランジ(72b)のある辺(72b´)を第2の辺という。板70の左右の辺71b´,71c´(第3の辺)の端部は、板50(60)の底板51(61)からフランジ52b(62b)が突出するために曲がった円弧部の外面に突き合わせられている。この突き合わせ部を溶接している。板50(60)の底板51(61)と板70の底板71とは同一面にある。なお、この突き合わせ溶接は隅肉溶接ともいえる。
【0018】
フランジ72cの左右の端部の近傍の板は、板50,60の凹部53に入る凸部73,73を設けている。凹部53と凸部73,73との突き合わせ部は溶接している。凸部73,73の上辺はフランジ72cになっている。フランジ52c(62c)とフランジ72cの長手方向の端部とは突き合わせられ、溶接している。
【0019】
板70の下辺72b´の長手方向の端部はフランジ52b,62bに突き合わせられ、溶接している。凸部73とフランジ72bとの間の底板71の端部はフランジ72bの長手方向の端部よりも突出している。
【0020】
以上の突き合わせた部分は連続して溶接され、水漏れが無いようになっている。溶接部はグラインダで切削され、平滑になっている。
【0021】
フランジ52c(62c)とフランジ52d(62d)との接続部のフランジ52e(62e)は円弧状でである。
【0022】
フランジ52b,52c,52d,52e,62b,62c,62d,62e,70b,70cの突出方向は底板51,61,71の面に対して実質的に直交している。このため、フランジ52c,52d,52e,62c,62d,62e,70cに側構体20,屋根構体30の端部を重ねたとき、平行に重なり、良好な溶接ができる。左右の板50,60の下端は台枠10に重なり、溶接している。
【0023】
板50,60,70は車内側または車外側に補強用のリブを多数有するが、図示していない。例えば、リブは板50,60,70とは別部材であって、スポット溶接している。または、板50,60,70を塑性加工して一体に設けている。
【0024】
これによれば、板70,板60(60)および屋根構体30との接合部には隙間がなく、接合できるものである。また、板70と板50(60)との接合部にフランジの円弧部の溝もなく、身栄えをよくできるものである。
【0025】
次に、板50,60,70を製作する方法について、図7〜図10によって説明する。この製作方法は逐次成形方法による。図7は装置の左端部のみを示している。他の部分も適宜同様の構成になっている。
【0026】
板50の成形について説明する。金型120は雌型(外型)である。雌型120は水平に置かれている。雌型20の上面に素材の板50bが載っている。雌型120の内部に棒状の工具130が入る。工具130は雌型120の垂直面に沿って下降し、次に、雌型120の内周面に沿って移動する。雌型120の内周面の形状は板50の外径形状と同一である。工具130が1周すると、工具130は前記を繰り返す。これによって、素材の平板50bを絞り加工する。なお、工具130を下降させることを絞り加工方向に移動させるという。これは実質的に工具130の軸方向の移動であり、成形品の深さ方向への移動である。
【0027】
工具130の先端は平らである。先端から側面への角部は円弧状である。この円弧が板50の底板51とフランジ52b,52c,52dとが成す円弧となる。工具130は上方の移動体(図示せず)から回転自在に吊り下げられている。工具130は雌型120の内周面(フランジ52b,52c,52dの部分に相当する。)に沿って移動する。工具130が素材50bに接触して移動することによって、工具130は従動的に回転(自転)する。これによって、工具130は素材50bに一点で接しないので、焼き付きを防止できる。また、素材50bの上面には潤滑油を塗っている。
【0028】
雌型120の上面には素材50bの位置決め用のピン(ガイド)123を複数立てている。素材50bの平板を雌型120の上端に置いたとき、ピン123は素材50bの外周部に接する。これで位置決めされる。雌型120の内周側の上端(肩部という。)は円弧状である。この円弧は雌型120の全周に沿ってある。この円弧によって素材50bの外周部は滑らかに雌型120の内周側に移動する。なお、雌型120の肩部の円弧部の位置等については後述する。
【0029】
雌型120の内部の底はない。雌型120の内部には素材50bを載せる座140がある。座140は高さ位置を制御できる装置150で支えられている。座140は工具130の先端(下端)に対向した部分にもある。座140は工具130の周方向の移動軌跡に対応した個所にある。つまり、工具130の先端と座140とによって素材50bを挟んでいる。さらに、座140は雌型120の中央部にもある。このため、素材50bの中央部を固定することができる。
【0030】
座140は素材50bを載せて固定している。この固定は、座140に電磁石を設けて磁力で行う。または、座140の上面に真空吸着パットを設けて、真空吸着することによって行う。固定位置は座140の中央部等である。素材50bは鉄系,ステンレス系,アルミニウム合金系である。
【0031】
座140を昇降させる装置150について説明する。装置150は複数のネジ機構151で構成されている。図7にはネジ機構を1組示す。座140の下端の座145をネジ機構151のネジ棒152で支えている。座145には回転自在なナットがある。駆動装置155が回転することによって、ネジ棒152が回転し、座140が昇降する。また、座140または座145と基礎との間には、座140が垂直に昇降するためのガイド(図示せず)を複数設けている。装置150及び雌型120は基礎に設置している。
【0032】
成形方法を説明する。素材50bは成形後の形状を基に展開した平板である。前記展開は角筒の絞り加工成形と同様に成形品の表面積や体積を基に展開寸法を算出する。或いは実験によって定める。この展開寸法を基にターレットパンチプレス等によって板を切断する。フランジ52bとフランジ52cとの接続部は分離している。また、凹部53がある。素材50bの展開形状はこれを考慮して定める。
【0033】
次に、素材50bを雌型120の上端に載せる。この時、素材50bは上昇した座140にも載る。素材50bはピン123で位置決めさせる。
【0034】
次に、素材50bを座140に固定する。固定位置および手段は前記のとおりである。
【0035】
次に、座140を下降させ、次に、工具130を下降させる。工具130の下降位置は、工具130の側面と雌型120の垂直面(内周面,直線部)との間に素材50bが位置できる位置である。つまり、雌型120の内周面と工具130の側面との間に素材50bを挟むようにする。この状態で、工具130を下降させ、後述のように雌型120の内周面に沿って周方向に移動させる。工具130の下降量は、工具130の先端が下降した素材50bに接する位置である。例えば、座140が下降する以前に座140の上面が雌型120の上面(素材50bの端部が載った位置)と同一面にあるとき、工具130の先端が素材50bの上面に接していれば、座140と工具130の下降量は同一である。両者を同時に下降させることができる。
【0036】
この実施例のように底板51が広く、板厚が薄く、底板51の中央部を固定している場合は、底板51が撓むのみで外周部が雌型120によって曲がる必要はない。続いて工具130を下降させた際に曲がる。このため、素材50bが傾斜する恐れがある。また、後述するように、工具130を周方向に移動させる際に、素材50bが回転する恐れがある。このため、素材50bを座140へ固定している。
【0037】
工具130の下降位置は工具130の側面と雌型120の内周面との間にフランジ52b,52c,52dが位置できる位置である。また、フランジ52b,52c,52dの直角度を考慮する。直角度を考慮する場合は、工具130の側面と雌型120の内周面との間に素材50bを挟むように工具30を位置させる。
【0038】
次に、工具130を雌型20の内周面に沿って移動させる。工具30は従動的に回転する。素材50bは工具130の移動によって逐次的に成形される。
【0039】
次に、工具130が1周する毎に、前記のように、座140を下降させ、工具130を下降させる。両者の下降量、工具130の下降位置は前記のとおりである。次に、工具130を雌型の内周面に沿って周方向に移動させる。
【0040】
以後、座140と工具130の下降と、工具30の周方向の移動とを繰り返す。上記工程の繰り返しによって素材50bの外周部は雌型120の内周面に移動する。これによって絞り加工が行われる。工具130の軸方向が絞り加工方向である。雌型120の内周面に沿った工具130の移動方向は工具130の半径方向である。
【0041】
これによれば、素材50bは雌型120と工具130との狭い部分で変形され、逐次的に小さく均等な歪しか与えないので、底板51の平面度が良好に保たれる。
【0042】
加えて、雌型120でフランジ52b,52c,52dを全周に亘り拘束しながら成形するので、フランジが外側に膨らまず、平板部とフランジ部の直角度に優れた成形品を製造できる。特に、角部のフランジ52cとフランジ52dとの接続部の円弧状のフランジは成形によって外側に広がろうとするが、このフランジは雌型120によって外方から拘束されているので、垂直なフランジとなる。つまり、絞り工程の最初から最終までの全範囲において、フランジは雌型120の内周面と工具130の側面とで挟まれているので、フランジを内外から拘束して絞り加工を行うことができる。したがって、直角度などの精度のよい加工ができるものである。
【0043】
このように雌型120を用いた逐次成形において、雌型120の内周側に座140を設け、この座140に素材50bを固定するようにしているので、素材50bを固定でき、所定の成形ができるものである。なお、成形が進んで、フランジが雌型120の垂直面に位置した場合も同様である。また、素材50bの端部を雌型120の内周面に向けて移動させつつ絞り加工を行い、また、素材50bの端部を雌型120の内周面に位置させて絞り加工をしている。このため、フランジと底面51とが成す直角度をよくすることができる。また、フランジの高さを大きくできる。また、フランジの板厚の減少を抑制できる。
また、素材50bの端部を雌型120内に移動可能に絞り加工しているので、成形後の形状を考慮した素材50bにしておけば、成形後、フランジの端部を切断する必要がない。
【0044】
プレス成形のように高荷重を必要としないため、雌型120は一般の鋼材等による簡易的なもので良く、焼入れ等の熱処理や、プレス金型のような綿密な表面仕上げも必要としない。
【0045】
工具130の移動について詳細に説明する。板50は実質的に四角形の3辺にフランジ52b,52c,52dを有するが、他の1辺にはフランジが無い。このため、雌型120の肩部の円弧部はこの3辺に沿ってある。素材50bの他の1辺は雌型120の他の1辺に載っていない。両者の間には隙間がある。
【0046】
工具130はフランジ52bの一端側からフランジ52cに向けて移動し、フランジ52cを経由してフランジ52dの端部に向けて移動する。凹部53の部分の工具130の移動軌跡を図7に示す。
【0047】
図8において、工具130がフランジ52dに沿って移動してきて、フランジ52dの長手方向の端部を通過させる。次に、工具130の下方に素材50bが位置するように若干逆に移動させる。次に、座140および工具130を下降させる。次に、工具130をフランジ52c,52e,52cを順次経由してフランジ52bの長手方向の端部に至るように、移動させる。
【0048】
フランジ52bの端部を通過したら、図8で説明したように、工具130の下方に素材50bが位置するように若干逆に移動させる。次に、座140および工具130を下降させる。次に、工具130をフランジ52b,52e,52dを順次経由してフランジ52dの長手方向の端部に至るように、移動させる。以後、これを繰り返す。
【0049】
なお、板50のフランジは3辺にしかないので、このように工具130は往復動させている。当初の説明の「工具130を雌型120の内周面に沿って周方向に沿って移動させる」等の説明は、この3辺の場合も含む。また、3辺のみにフランジがある場合でも、往復動させなくて、周回させてもよい。
【0050】
フランジ52d,52bの長手方向の端部を通過させた後も工具130を移動させるのは、工具130の側面と雌型120の内周面との間にフランジ52d,52bの長手方向の端部を挟んで、フランジの長手方向の端部を所定の形状にするためである。フランジの長手方向の途中で工具130の移動を停止すると、それよりも端部側が直線状にならないためである。フランジの無い素材50bの端部と雌型120の端部との間には工具130の半径以上の隙間がある。前記凹部63の大きさは工具130が通過できる大きさが必要である。
【0051】
フランジ52bとフランジ52cとの接続部は分離している。また、凹部53がある。フランジ52bとフランジ52cとの距離、すなわち凹部63の大きさは、この部分のフランジ52b,52cの長手方向の端部を雌型120の内周面に工具130の側面で押さえることができるように定めている。工具130はフランジ52b,52cの長手方向の端部を押さえるように移動する。
【0052】
フランジ52bからフランジ52cに工具を移動させる際に、工具130の下端が底板51の端面に接触する場合は、工具130を若干上昇させてフランジ52c側に移動させ、加工させ、フランジの長手方向に沿って移動させる。すなわち、図8のように移動させる。
【0053】
板60も同様に製作する。板70も同様に製作する。フランジ72b,72cの長手方向の端部における工具130の移動も前記と同様に行う。
【0054】
この逐次成形を実施する加工機は数値制御式加工装置、例えは、NCフライス盤やマシニングセンターである。数値制御式加工装置の主軸に工具130を設置している。主軸を雌型20の内周面に沿って、また、垂直方向に、数値制御で移動させる。工具130を有する主軸は垂直方向および一方向の水平方向に移動できる。雌型120および座140はテーブル(基礎)に載っている。テーブルは主軸の水平方向の移動方向に対して直角方向の水平方向に移動できる。この2つの移動によって工具130を雌型120の内周面に沿って移動させることができる。昇降装置150はテーブルに載っている。工具130の垂直方向の移動に替えて、テーブルを昇降させることができる。
【0055】
例を説明する。工具130の径:25mm,素材10bの板厚:0.5mmから4mm程度,雌型120の内周面から工具130の側面までの距離:板厚の0.8倍から2倍程度,工具130の1回当たりの押し込み深さ(座140の1回当たりの下降量):素材50bの板厚の0.5倍から2倍程度,フランジの高さ:素材50bの板厚の5倍から20倍程度である。また、フランジの高さ:20mm,雌型120の円弧部(肩部)の半径:5.5〜13.5mm,工具130の径25mm,工具130の先端の半径:5.5mmから10mm,円弧部52eの半径:100mmである。
【0056】
素材50bの大きさについて説明する。図7のように、素材50bの端部は雌型120の肩部の円弧Rの中心の上方にあるかまたは前記中心の上方よりも雌型120の中心側に位置する大きさである。これよりも大きい場合はフランジ12の円弧部12aにおいて、フランジ12と底板11との接続部に割れが発生しやすい。
【0057】
上記実施例では座140を下降させた後に、工具130を下降させているが、同時に下降させることができる。また、工具130の先端は平らでなく、球状でもよい。また、工具130は回転しなくてもよい。
【0058】
座140を固定して、雌型120を上昇させて、絞り加工ができる。工具130も成形途中では垂直方向には移動しない。座140は工具130の軸方向の位置であって、雌型120の内周面に沿ってある。
【0059】
また、雌型120の肩の円弧部に沿って工具130を周回させ、次に、工具130を雌型の内周面に向けて移動させ、次に、工具130を周回させ、素材の端部を円弧状にした後、雌型120の内周面に沿って工具130を下降させると、よりフランジの高さを大きくできる。
【0060】
図11,図12の実施例を説明する。板50(60)に相当する板250(260)を押し出し形材で構成している。押し出し形材250(260)は複数のリブ255(265)を有する。この押し出し形材を逐次成形する。このため、押し出し形材の上下端部のリブ255(265)を切削して除いている。押し出し形材の上下端部および車体の側面側の部分(フランジ252(262)を設ける部分)の板の厚さが厚ければ、リブ255(265)側の面を切削して、逐次成形するに適した板厚にする。
【0061】
板270側および通路45側の端部には端部に沿ってリブ257(267)がある。板270の端部に溶接する板270の端部259の部分は切削して溶接用の開先を設けている。
【0062】
リブ257(267)の突出代はリブ255(265)の突出代よりも小さい。リブ267(267)は板に沿って溝258がある。リブ267(267)の通路45側の端面よりも板の端部259の方が通路45側にある。溝258は内装材(図示せず)の端部を挿入するものである。リブ257(267)によって通路45側の端部の板厚は厚くなっており、フランジ255(265)に相当する強度を確保するようにしている。このため、端部はリブ257(267)ではなく、板厚を厚くしたものでもよい。また、フランジを押し出し加工によって設けてもよい。このリブ257(267)、板厚を厚くしたもの、フランジを総称して厚肉部という。
【0063】
これによれば、フランジ52b(62b)に相当するフランジを板から曲げて設ける必要が無い。また、凹部53も設ける必要が無い。このため、容易に成形できるものである。
【0064】
板70は板250と同様に押し出し形材にできる。押し出し方向は車体の幅方向である。フランジ72bは板250(26)の厚肉部にできる。また、板220と板270の組み合わせは、板50と板70との組み合わせにできる。
【0065】
板250を1つの押し出し形材で構成できない場合は複数の押し出し形材を接合して大きくする。この接合は例えば摩擦攪拌接合によって行う。板270も押し出し形材にできる。
【0066】
雄型に素材を載せ、素材の外周部を雄型の外周面に沿って工具で曲げてフランジを作ることができる。また、プレス加工によって板50,60,70を製作することができる。
【0067】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の各請求項の記載の文言あるいは課題を解決するための手段の項に記載の文言に限定されず、当業者がそれから容易に置き換えられる範囲にもおよぶものである。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、板の端部にフランジを有する2つの成形品と第3の板とを隙間なく接合できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例の車体の妻の裏面図である。
【図2】 図1のII−II断面図である。
【図3】 図1のIII−III断面図である。
【図4】 図1のIV部の拡大図である。
【図5】 図4のV−V断面図である。
【図6】 本発明の一実施例の妻を備えた車体の斜視図である。
【図7】 逐次成形装置の要部の縦断面図である。
【図8】 成形途中のフランジ52bと52cとの間の平面図である。
【図9】 成形途中のフランジの長手方向の端部の平面図である。
【図10】 成形途中の円弧部の平面図である。
【図11】 本発明の他の実施例の車体の妻の正面図である。
【図12】 図11のIII−III断面図である。
【図13】 従来の図1相当図である。
【符号の説明】
45…乗員の通路、50,60,70,250,260,270…板、52d,…第1のフランジ、52b,62b…第2のフランジ、62c…第3のフランジ、52d´…第1の辺、52b´,62b´…第2の辺、62c´…第3の辺、72c…第1のフランジ、72b…第2のフランジ、72c´…第1の辺、72b´…第2の辺、71b´、71c´…第3の辺、53…凹部,73…凸部、257…厚肉部、51,61,71,251,261,271…底板。
Claims (10)
- 鉄道車両の妻を構成する2つの第1の板(50,60)と該2つの第1の板の間の乗員の通路(45)の上部において該2つの第1の板に突き合わせ溶接する第2の板(70)とを準備し、
前記第1の板(50,60)は、実質的に長方形であって、その第1の辺を前記第1の板(50,60)に対して直角方向に曲げた第1のフランジ(52d)と、これに実質的に平行な第2の辺を前記第1の板(50,60)に対して直角方向に曲げた第2のフランジ(52b)、または前記第2の辺に沿った厚肉部(257)と、前記第1の辺と前記第2の辺との間であってこれらに実質的に直交する第3の辺を前記第1の板(50,60)に対して直角方向に曲げた第3のフランジ(52b)と、前記第3のフランジ(52c)の長手方向の端部と前記第2のフランジ(52b)または前記厚肉部の長手方向の端部との間は空間があり、前記第2のフランジ(52b)の長手方向の端部または前記厚肉部の長手方向の端部と前記第3のフランジ(52c)の長手方向の端部との間の近傍の板(51、61)の一部を凹状に除いた凹部と、からなり、該凹部は該第1の板(50,60)の前記第2の辺側に向けて開口しており、
前記第2の板(70)は、実質的に長方形であって、該板(70)の第1辺を曲げたものであって、前記第1の板(50、60)の前記第3のフランジ(52c)の長手方向の端部に接続する第1のフランジ(72c)と、前記第1の辺に実質的に平行であって、前記第1のフランジの長手方向の端部よりも短い第2の辺と、前記第2の辺の長手方向の端部と前記第1の辺の長手方向の端部とを接続する第3の辺にあり、前記第1の辺の前記長手方向の端部において、前記第2の辺の長手方向の端部よりも突出した凸部(73)と、からなり、
次に、前記第1の板(50,60)の前記凹部に、前記第2の板(70)の前記凸部(73)を挿入して前記第1の板(50,60)と前記凸部(73)とを突き合わせ、また、前記第2の板(70)の前記第1のフランジ(72c)の長手方向の端部と前記第1の板(50、60)の前記第3のフランジ(52c、62c)の長手方向の端部とを突き合わせ、
前記突き合わせた部分のそれぞれを溶接すること、
を特徴とする鉄道車両の妻の製作方法。 - 請求項1の鉄道車両の妻の製作方法において、
前記第3の板(70)の前記第3の辺は、前記第1の板(50,60)の前記第2のフランジ(52b)の円弧部の外面に突き合わせ、この部分を溶接すること、
を特徴とする鉄道車両の妻の製作方法。 - 請求項1の鉄道車両の妻の製作方法において、
前記第2の板(70)には前記第2の辺に沿って厚肉部があり、
前記第2の板(70)の前記厚肉部の長手方向の端部及び前記第3の辺であって前記凸部を除く部分は前記第1の板(50、60)の前記第2のフランジ(52b)、または前記厚肉部(257)に突き合わせ、
該突き合わせた部分を溶接すること、
を特徴とする鉄道車両の妻の製作方法。 - 前記請求項1の鉄道車両の妻の製作方法において、
前記第1の板(50,60)は、押し出し形材であり、該押出し形材は、押し出し方向に沿った複数のリブ(255)と、前記第2の辺に沿った厚肉部(257)と、前記押し出し方向の端部の前記リブ(255)および前記押し出し方向の端部の前記厚肉部(257)を除いた板部と、前記板部の前記押出し方向の端部を前記リブ(255)側に曲げた前記第3のフランジ(252c)と、からなり、
前記第2の板(70)の前記第2の辺の前記長手方向の端部を前記厚肉部(257)に突き合わせ、また、前記第2の板の前記凸部を除く前記第3の辺を前記第2のフランジまたは前記厚肉部に付き合わせ、該突き合わせ部を溶接すること、
を特徴とする鉄道車両の妻の製作方法。 - 請求項1の鉄道車両の妻の製作方法において、
前記第2の板(70)は押し出し形材であり、その押し出し方向は前記第1のフランジ(72c)の前記長手方向であり、
前記第2の板(70)の前記第2の辺は厚肉部になっており、
前記第2の板(70)の押し出し方向の端部を前記第1の板(50,60)の前記厚肉部(257)に溶接すること、
を特徴とする鉄道車両の妻の製作方法。 - 鉄道車両の車体の妻は、2つの第1の板(50,60)、と第2の板(70)からなり、
前記第2の板(70)は乗員の通路(45)の上部と車体の屋根(30)との間を構成するものであって、前記屋根(30)に溶接しており、
前記第1の板(50,60)は前記第2の板(70)の左右にあり、
前記第1の板(50,60)は前記第2の板(70)と前記車体の側面との間を構成するものであり、その端部は前記車体の側面および前記屋根(30)に重ねて溶接しており、
前記第1の板(50,60)は、前記屋根(30)および前記車体の側面に沿って板(50,60)の第1の辺(52d´)を曲げた第1のフランジ(52d)と、前記乗員用通路(45)に沿った板(50,60)の第2の辺(52b´、62b´)を曲げた第2のフランジ(52b,62b)と、前記屋根(30)に沿った板(50,60)の第3の辺(52c´)を曲げた第3のフランジ(52c,62c)と、前記第2のフランジ(52b、62b)の長手方向の端部と前記第3のフランジ(52c,62b)の長手方向の端部との間は空間があり、さらに該部の板(50,60)には凹状の凹部(53)があり、
前記第2の板(70)は、実質的に長方形であって、該板(70)の第1辺(72c´)を円弧状に曲げたものであって、前記第1の板(50、60)の前記第3のフランジ(52c,62c)の長手方向の端部に接続する第1のフランジ(72c)と、前記第1の辺(72c´)に実質的に平行であって、前記第1のフランジの長手方向の端部よりも短い第2の辺(72b´)と、前記第1の辺(72c´)と前記第2の辺(72b´)とを接続する第3の辺(71b´)にあり、前記第2のフランジ(72b)の端部側から前記第1のフランジの長手方向の端部にまで突出した凸部(73)と、からなり、
前記第1の板(50,60)の第3のフランジ(52c,62c)の長手方向の端部と前記第2の板(70)の前記第1のフランジ(72c)の長手方向の端部とを突き合わせた部分、前記第1の板(50,60)の前記第2のフランジの円弧部の外側に、前記第2の板の前記第3の辺を重ねた部分、および、前記凸部(73)を前記凹部(53)に入れて突き合わせた部分、をそれぞれ溶接していること、
を特徴とする鉄道車両の車体。 - 請求項6の鉄道車両の車体において、
前記第2の板(70)には前記第1のフランジ(72c)に実質的に平行な第2の辺(72b´)を曲げた第2のフランジ(72b)があり、
該第2のフランジ(72b)の長手方向の端部は前記第1の板(50,60)の前記第2のフランジ(52b´、62b´)の円弧部に溶接していること、
を特徴とする鉄道車両の車体。 - 請求項6の鉄道車両の車体において、
前記第2の板(70)には前記第1のフランジ(72c)に実質的に平行な第2の辺(72b´)に沿って厚肉部があり、
前記厚肉部の長手方向の端部を前記第1の板(50、60)の第2のフランジ(52b,62b)に溶接していること、
を特徴とする鉄道車両の車体。 - 請求項6の鉄道車両の車体において、
前記第1の板(50,60)は押出し形材であり、該押出し形材は押し出し方向を垂直方向に向けており、車内側に複数のリブ(255、265)を有し、前記第1のフランジ(52d、62d)及び第3のフランジ(52c、62c)は前記リブ(255,265)側に曲げられており、前記第2の辺は前記厚肉部(257)を有していること、
を特徴とする鉄道車両の車体。 - 請求項6の鉄道車両の車体において、
前記第2の板(70)は押出し形材であり、その押し出し方向は水平方向であること、
を特徴とする鉄道車両の車体。
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