JP3663919B2 - 印刷装置および印刷方法並びに記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも一の色相について、単位面積当たりの濃度を表す濃度評価値が段階的に異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドを備え、該ヘッドを用いて多階調の画像を印刷可能な印刷装置および印刷方法並びに記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの出力装置として、数色のインクをヘッドから吐出するタイプのカラープリンタ(いわゆるインクジェット式のプリンタである)が広く普及し、コンピュータ等が処理した画像を多色多階調で印刷するのに広く用いられている。インクジェット式のプリンタでは、各領域におけるドットの発生比率を制御することにより、入力された階調データに応じた階調を表現している。
【0003】
かかる考え方に基づき、各画素ごとにドットの発生を制御する方法の一つとして誤差拡散法がある。これは、入力された階調データに基づき表現されるべき濃度とドットの形成の有無により現実に表現される濃度との不一致により各画素ごとに生じる誤差を、周辺の未処理画素に拡散することにより、画像全体として表現される濃度誤差が非常に小さくなるようにドットの形成を制御する方法である。各画素におけるドットの形成の有無は、入力された階調データに拡散された誤差を反映させた補正データに基づいて行われる。
【0004】
一方、近年インクジェット式のプリンタでは、階調表現を豊かにするための種々の技術が提案されている。その一つとして、濃淡インクを用いた印刷装置および印刷方法がある(例えば、特願平8−209232)。これは、同一色について濃度の高いインクと低いインクを用意し、両インクの吐出を制御することにより、階調表現に優れた印刷を実現しようとするものである。
【0005】
また、多階調を表現するための他の手段として、インク濃度とドット径の異なる2種類のドットを形成することにより、単位面積当たりの濃度を多段階に変化させて印刷可能な印刷装置も提案されている(例えば、特開昭59−201864)。これは、1画素を4ドットで構成し、濃度の高いドットと低いドットの画素中における出現頻度を変化させることにより、多段階の濃度での画像の印刷を可能とするものである。
【0006】
これらはいずれも各色相についてドットのオン・オフによる2値化ではなく、濃淡またはドット径の異なる種々のドットによる3値化以上の多値化を行うことにより多階調を表現しようとするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述の誤差拡散法はドットの形成を制御する他の方法に比較して画像全体としての誤差を非常に小さくすることができ画質を向上することができるため、2値化を行う方法としては優れたものである。ところが、誤差拡散法により3値化を行った場合にはドットの発生比率を所望の値に制御できないことが判明した。かかる結果の一例を図13に示す。
【0008】
図13は、入力階調値が値0〜255までを取る場合に径の小さいドット(以下、小ドットという)と径の大きいドット(以下、大ドットという)の発生比率を示したものである。両者の発生は、閾値を値64および94とし、小ドットの濃度評価値を128、大ドットの濃度評価値を255とすることにより、誤差拡散法を3値化に拡張して判定した。つまり、入力階調値に拡散された誤差を反映させた補正データが値64よりも小さい場合にはいずれのドットも形成せず、値64以上で94よりも小さい場合には小ドットを形成し、値94以上の場合には大ドットを形成するものとした。一の画素についてドットの形成を判定した後、濃度誤差、即ち該ドットの濃度評価値と入力階調値との差分を周辺の画素に拡散し、次の画素の処理を実行した。誤差を周辺の画素に拡散する割合については、ここでは本質的ではないため省略する。
【0009】
図13に示す通り、こうして得られた結果によれば、大ドットの発生比率は全体的には入力階調値に応じて増加傾向にあるものの、滑らかに変化せずいくつかの極値を有する状態となっており、さらにこれらの極値の中には大ドットの発生比率が急激な変化をしている部分もある(例えば、図13の点p,q等)。画像全体としては入力階調値に対応する濃度が表現されている場合であっても、例えば、少量の大ドットで表現されている場合と多量の小ドットで表現されている場合は視覚に与える影響は異なる。一般に大ドットの方が視認されやすいことから、大ドットを多用すれば画質は全体にザラザラした印象を与えるものとなる。この結果、例えば図13の点p.qに示すように大ドットの発生比率が急激に変化するような入力階調値においては、得られる画質が周辺の画質と異なったものとなり、いわゆる疑似輪郭を発生することになる。
【0010】
本発明は、以上の課題に鑑みなされたものであり、誤差拡散法を用いて3値化以上の多値化を行う印刷装置において、単位面積当たりの濃度の異なる各ドットの発生比率を入力階調値に応じて所望の値に制御し、印刷される画質を向上するための技術を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本発明では以下の手段を採用した。
本発明の第1の印刷装置は、
印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
単位面積当たりの濃度の異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能なヘッドと、
画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する入力手段と、
P種類(Pは2≦P≦Nなる整数)の前記ドットにそれぞれ対応した閾値である対応閾値を含む複数の閾値を、前記階調データが採りうる階調値に応じて記憶する閾値記憶手段と、
各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと前記閾値記憶手段に記憶された複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定する多値化ドット形成判定手段と、
前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記単位面積当たりの濃度の異なるドットをそれぞれ形成するドット形成手段とを備えることを要旨とする。
【0012】
本発明の第1の印刷方法は、
単位面積当たりの濃度の異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能なヘッドを用いて、印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷する印刷方法であって、
(a) 画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する工程と、
(b) P種類(Pは2≦P≦Nなる整数)の前記ドットに対応した閾値である対応閾値を含む複数の閾値を、前記階調データが採りうる階調値に応じて記憶したデータを参照することにより、前記階調データに応じた閾値を求める工程と、
(c) 各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと前記工程において求められた複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定し3値化以上の多値化をする工程と、
(d) 前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記単位面積当たりの濃度の異なるドットをそれぞれ形成する工程とを備えることを要旨とする。
【0013】
かかる印刷装置および印刷方法によれば、単位面積当たりの濃度の異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットのうちP種類(Pは2≦P≦Nなる整数)のドットの発生に関与する対応閾値を全階調値で一定値とするのではなく、階調値に応じた値に設定することにより、これらのドットの発生率を制御することができる。つまり、ドットの発生率が急激に変化し、疑似輪郭が生じるような状態を回避することができる。この結果、一定の閾値を用いてドットの形成を判定する場合に比較し画質を向上することができる。なお、閾値は階調値に対し、連続的に変化するものとしてもよいし、段階的に変化するものとしてもよい。また、単調増加や単調減少等の一定の傾向を有するものであってもよいし、増加する部分と減少する部分の双方を有するように変化させるものとしてもよい。
【0014】
なお、単位面積当たりの濃度の異なるN種類のドット(Nは2以上の整数)には、面積が0のドット、即ちドットを非形成の状態は含まない。従って、各画素ごとには、N種類のドットをそれぞれ形成した状態と、ドットを形成しない状態と併せてN+1値の濃度が表現されることになる。このことは言い換えれば各画素ごとのドットの形成に影響する閾値がN種類存在することを意味する。また、単位面積当たりの濃度の異なるドットとしては、ある色相について、ドットを形成するインクの濃度が異なるものであってもよいし、各画素ごとに吐出されるインク量が異なるものであってもよい。後者については、1回の吐出量が異なるものや各画素ごとへの吐出回数が異なるものが含まれる。
【0015】
上記印刷装置において、
前記対応閾値は、前記多値化ドット形成判定手段による両者の発生比率が前記階調値に応じて滑らかに変化するように設定された閾値とすることが望ましい。
【0016】
閾値をこのように設定することにより、上記P種類のドットの発生率が滑らかに変化するように制御することができるため、疑似輪郭の発生等を効果的に防止することができ、画質を向上することができる。なお、ここでいう発生比率は、所定の領域内における各ドットの発生数の比率の他、各ドットの発生数の比率に基づいて定められ視覚に影響を与える種々のパラメータを用いて表すことができる。
【0017】
例えば、前記発生比率は、一定の階調値からなる所定領域において形成された前記P種類のドットにより表現される濃度の該階調値に対する比とすることもできる。
【0018】
上記印刷装置において、
前記対応閾値は、さらに、互いの差分が前記階調値に応じて複数の極値を有する閾値とすることもできる。
【0019】
例えば、階調値に対し一定の閾値を用いた場合には、図15に示したようにドットの発生比率は複数の極値を有する状態となる。逆に複数の極値を有するように対応閾値を設定すれば、かかる極値が生じずに滑らかに変化するようにドットの発生率を制御することができる。
【0020】
上記印刷装置において、
前記ヘッドはインク量の異なる2種類のドットを形成可能なヘッドであり、
前記対応閾値は大小2種類の値とすることが望ましい。
【0021】
インク量の異なる2種類のドットの発生率は、画像のザラツキ感という形で視覚に影響を与えやすいため、その発生率が滑らかに変化するように制御する有効性が高い。
【0022】
また、上記印刷装置において、
前記発生比率は、前記階調データが採りうる階調値の一部の連続的な階調値においてのみ有意の値をとることも望ましい。
【0023】
低階調値の領域では、単位面積当たりの濃度の高いドットを使用する必要性が低いため、かかる印刷装置によればこのように濃度の高いドットを使用する必要性がある領域でのみ発生率を制御することができる。
【0024】
かかる印刷装置においては、
前記連続的な階調値の下限値を、前記対応閾値を階調値に対し一定値とした場合における前記多値化ドット形成判定手段により得られる前記発生率が急激に変化する階調値とは異なる階調値に設定することも望ましい。
【0025】
例えば、図15に示したように一定の閾値を用いた場合には、ドットの発生率が大きく変化する階調値が現れる。このような階調値は、わずかの階調値の変化でドットの発生率が急変するため、画質的に非常に不安定な階調値であるといえる。上記印刷装置は、かかる階調値を回避してドットの発生率を制御することから、より安定して適切にドットの発生率を制御することができる。
【0026】
本発明の第2の印刷装置は、
印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
単位面積当たりの濃度の異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能なヘッドと、
画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する入力手段と、
各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと前記予め定められた複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定する多値化ドット形成判定手段と、
前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記単位面積当たりの濃度の異なるドットをそれぞれ形成するドット形成手段とを備え、
前記多値化ドット形成判定手段による判定に先立ち、該階調データまたは前記複数の閾値の少なくとも一部に所定のノイズデータを付加するノイズ付加手段とを備えることを要旨とする。
【0027】
本発明の第2の印刷方法は、
単位面積当たりの濃度の異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能なヘッドを用いて、印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷方法であって、
(a) 画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する工程と、
(b) 各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと予め定められた複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定し、3値化以上の多値化を行う工程と、
(d) 前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記単位面積当たりの濃度の異なるドットをそれぞれ形成する工程と、
(e) 前記工程(b)におけるドットの形成の判定に先立ち、該階調データまたは前記複数の閾値の少なくとも一部に所定のノイズデータを付加する工程とを備えることを要旨とする。
【0028】
かかる印刷装置によれば、一定の閾値を用いてドットの多値化を行っても、画質を向上することができる。つまり、階調データおよび閾値の少なくとも一方に所定のノイズを付加することにより、入力階調値の周辺の階調値を平均的に使用することになる。この結果、例えば図13に示したように極値を有するドット発生率が平均化され、滑らかに変化するようになるため、画質の向上を図ることができる。なお、ノイズデータは平均化してみれば、値0となるデータであるため、入力された階調データに大きな誤差が生じることはない。
【0029】
かかる印刷装置において、
前記ノイズ付加手段は、前記階調データが予め定められた階調値に相当するときにのみ前記所定のノイズデータを付加するノイズ付加手段であり、
該ノイズ付加手段における前記予め定められた階調値を、P種類(Pは2≦P≦Nなる整数)の前記ドットについて、前記多値化ドット形成判定手段による両者の発生比率が急激に変化する階調値に設定することもできる。
【0030】
かかる印刷装置によれば、例えば図13においてドット発生比率が急激に変化する階調値においてのみ所定のノイズを付加する。この結果、かかる階調値においてドット発生率の変化を緩和することができるため、画質を向上することができる。
【0031】
また、かかる印刷装置において、
前記ノイズ付加手段は、
前記多値化ドット形成判定手段による判定に先立ち、該階調データまたは前記複数の閾値の少なくとも一部に第1のノイズデータを付加し、かつ、
該階調データが予め定められた階調値に相当するときには前記第1のノイズデータに代えて、該ノイズデータよりも絶対値が大きい第2のノイズデータを付加するノイズ付加手段とすることもできる。
【0032】
かかる印刷装置によれば、全体に所定のノイズを付加することにより、ドット発生率の変化を滑らかにしつつ、上記特定の階調値においてはさらに大きなノイズを付加することにより、これらの階調値付近でのドットの発生率をさらに滑らかにすることができるため、画質を向上することができる。
【0033】
以上で説明した本発明の印刷装置は、その一部の機能をコンピュータにより実現させることによっても構成することができるため、本発明は、かかるプログラムを記録した記録媒体としての態様を採ることもできる。
【0034】
本発明の第1の記録媒体は、
印刷装置により印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷するためのプログラムをコンピュータ読みとり可能に記録した記録媒体であって、単位面積当たりの濃度の異なる少なくとも2種類のドットに対応した閾値である対応閾値を含む複数の閾値を、入力された階調データが採りうる階調値に応じて記憶したデータを参照することにより、該階調データに応じた閾値を求める機能と、
各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと前記階調データに応じた閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定し3値化以上の多値化をする機能とをコンピュータにより実現するプログラムを記録した記録媒体である。
【0035】
本発明の第2の記録媒体は、
印刷装置により印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷するためのプログラムをコンピュータ読みとり可能に記録した記録媒体であって、単位面積当たりの濃度の異なる少なくとも2種類のドットの発生率を制御することで前記入力された階調データに応じた階調を表現するように、各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと予め定められた複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定し、3値化以上の多値化を行う機能と、
該多値化に先立ち、前記階調データまたは前記複数の閾値の少なくとも一部に所定のノイズデータを付加する機能とをコンピュータにより実現するプログラムを記録した記録媒体である。
【0036】
かかる記録媒体に記録されたプログラムがコンピュータにより実行されると、上述の各機能が実現される結果、本発明の印刷装置および印刷方法で説明した効果を奏することができる。
【0037】
なお、記憶媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。また、コンピュータに上記の発明の各工程または各手段の機能を実現させるコンピュータプログラムを通信経路を介して供給するプログラム供給装置としての態様も含む。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
(1)装置の構成
図2に本発明のプリンタ22の概略構造を示し、図1に本発明のプリンタ22を用いたシステム例としてのカラー画像処理システムの構成を示す。プリンタ22の機能を明確にするため、まず、図1によりカラー画像処理システムの概要を説明する。このカラー画像処理システムは、スキャナ12と、パーソナルコンピュータ90と、カラープリンタ22とを有している。パーソナルコンピュータ90は、カラーディスプレイ21とキーボード、マウス等からなる入力部92を備えている。スキャナ12は、カラー原稿からカラー画像データを読み取り、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の3色の色成分からなる原カラー画像データORGをコンピュータ90に供給する。
【0039】
コンピュータ90の内部には、図示しないCPU,RAM,ROM等が備えられており、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からはこれらのドライバを介して、最終カラー画像データFNLが出力されることになる。画像のレタッチなどを行うアプリケーションプログラム95は、スキャナ12から画像を読み込み、これに対して所定の処理を行いつつビデオドライバ91を介してCRTディスプレイ21に画像を表示している。このアプリケーションプログラム95が、印刷命令を発行すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像情報をアプリケーションプログラム95から受け取り、これをプリンタ22が印字可能な信号(ここではシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの各色についての2値化された信号)に変換している。図1に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、アプリケーションプログラム95が扱っているカラー画像データをドット単位の画像データに変換するラスタライザ97と、ドット単位の画像データに対してプリンタ22が使用するインク色および発色の特性に応じた色補正を行う色補正モジュール98と、色補正モジュール98が参照する色補正テーブルCTと、色補正された後の画像情報からドット単位でのインクの有無によってある面積での濃度を表現するいわゆるハーフトーンの画像情報を生成するハーフトーンモジュール99とが備えられている。プリンタ22は、印字可能な上記信号を受け取り、記録用紙に画像情報を記録する。
【0040】
次に、図2によりプリンタ22の概略構成を説明する。図示するように、このプリンタ22は、紙送りモータ23によって用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ31をプラテン26の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ31に搭載された印字ヘッド28を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御する機構と、これらの紙送りモータ23,キャリッジモータ24,印字ヘッド28および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とから構成されている。
【0041】
このプリンタ22のキャリッジ31には、黒インク(Bk)用のカートリッジ71とシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の4色のインクを収納したカラーインク用カートリッジ72が搭載可能である。キャリッジ31の下部の印字ヘッド28には計4個のインク吐出用ヘッド61ないし64が形成されており、キャリッジ31の底部には、この各色用ヘッドにインクタンクからのインクを導く導入管67(図3参照)が立設されている。キャリッジ31に黒(Bk)インク用のカートリッジ71およびカラーインク用カートリッジ72を上方から装着すると、各カートリッジに設けられた接続孔に導入管67が挿入され、各インクカートリッジから吐出用ヘッド61ないし64へのインクの供給が可能となる。
【0042】
インクが吐出される機構を簡単に説明する。図3はインク吐出用ヘッド28の内部の概略構成を示す説明図である。インク用カートリッジ71,72がキャリッジ31に装着されると、図3に示すように毛細管現象を利用してインク用カートリッジ内のインクが導入管67を介して吸い出され、キャリッジ31下部に設けられた印字ヘッド28の各色ヘッド61ないし64に導かれる。なお、初めてインクカートリッジが装着されたときには、専用のポンプによりインクを各色のヘッド61ないし64に吸引する動作が行われるが、本実施例では吸引のためのポンプ、吸引時に印字ヘッド28を覆うキャップ等の構成については図示および説明を省略する。
【0043】
各色のヘッド61ないし64には、後で説明する通り、各色毎に32個のノズルNzが設けられており(図6参照)、各ノズル毎に電歪素子の一つであって応答性に優れたピエゾ素子PEが配置されている。ピエゾ素子PEとノズルNzとの構造を詳細に示したのが、図4である。図示するように、ピエゾ素子PEは、ノズルNzまでインクを導くインク通路68に接する位置に設置されている。ピエゾ素子PEは、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行う素子である。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加することにより、図4下段に示すように、ピエゾ素子PEが電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路68の一側壁を変形させる。この結果、インク通路68の体積はピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、粒子Ipとなって、ノズルNzの先端から高速に吐出される。このインク粒子Ipがプラテン26に装着された用紙Pに染み込むことにより、印刷が行われる。
【0044】
以上説明したハードウェア構成を有するプリンタ22は、紙送りモータ23によりプラテン26その他のローラを回転して用紙Pを搬送しつつ(以下、副走査という)、キャリッジ31をキャリッジモータ24により往復動させ(以下、主走査という)、同時に印字ヘッド28の各色ヘッド61ないし64のピエゾ素子PEを駆動して、各色インクの吐出を行い、ドットを形成して用紙P上に多色の画像を形成する。
【0045】
用紙Pを搬送する機構は、紙送りモータ23の回転をプラテン26のみならず、用紙搬送ローラに伝達するギヤトレインを備える(図示省略)。また、キャリッジ31を往復動させる機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ31を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ31の原点位置を検出する位置検出センサ39等から構成されている。
【0046】
図5および図6は、インク吐出用ヘッド61〜64におけるインクジェットノズルNzの配列を示す説明図である。本実施例のプリンタ22は、各色について大中小3種類のドット径からなるドットを形成することができ、そのうち大小2種類のドットを使用している。ドット径の異なるドットを形成するためには、例えば図5に示すように、各色ごとに径の異なるノズルを備える方法も考えられるが、本実施例では図6に示す通り、全て同じ径からなるノズルを用い、後述する制御によりドット径の異なるドットを形成している。これらのノズルの配置は、各色ごとにインクを吐出する4組のノズルアレイから成っており、32個のノズルNzが一定のノズルピッチkで千鳥状に配列されている。各ノズルアレイの副走査方向の位置は互いに一致している。なお、各ノズルアレイに含まれる32個のノズルNzは、千鳥状に配列されている必要はなく、一直線上に配置されていてもよい。但し、図6に示すように千鳥状に配列すれば、製造上、ノズルピッチkを小さく設定し易いという利点がある。
【0047】
ここで、一定のノズル径を有するヘッドを用いてドット径の異なる3種類のドットを形成する原理について説明する。図7は、インクが吐出される際のノズルNzの駆動波形と吐出されるインクIpとの関係を示した説明図である。図7において破線で示した駆動波形が通常のドットを吐出する際の波形である。区間d2において一旦、マイナスの電圧をピエゾ素子PEに印加すると、先に図4を用いて説明したのとは逆にインク通路68の断面積を増大する方向にピエゾ素子PEが変形するため、図7の状態Aに示した通り、メニスカスと呼ばれるインク界面Meは、ノズルNzの内側にへこんだ状態となる。一方、図7の実線で示す駆動波形を用い、区間d2に示すようにマイナス電圧を急激に印加すると、状態aで示す通りメニスカスは状態Aに比べて大きく内側にへこんだ状態となる。次に、ピエゾ素子PEへの印加電圧を正にすると(区間d3)、先に図4を用いて説明した原理に基づいてインクが吐出される。このとき、メニスカスがあまり内側にへこんでいない状態(状態A)からは状態Bおよび状態Cに示すごとく大きなインク滴が吐出され、メニスカスが大きく内側にへこんだ状態(状態a)からは状態bおよび状態cに示すごとく小さなインク滴が吐出される。
【0048】
以上に示した通り、駆動電圧を負にする際(区間d1,d2)の変化率に応じて、ドット径を変化させることができる。本実施例では、駆動波形とドット径との間のこのような関係に基づいて、ドット径の小さい小ドットを形成するための駆動波形と、2番目のドット径からなるの中ドットを形成するための駆動波形の2種類を用意している。図8に本実施例において用いている駆動波形を示す。駆動波形W1が小ドットを形成するための波形であり、駆動波形W2が中ドットを形成するための波形である。両者を使い分けることにより、一定のノズル径からなるノズルNzからドット径が小中2種類のドットを形成することができる。
【0049】
また、図8の駆動波形W1,W2の双方を使ってドットを形成することにより、大ドットを形成することができる。この様子を図8の下段に示した。図8下段の図は、ノズルから吐出された小ドットおよび中ドットのインク滴IPs、IPmが吐出されてから用紙Pに至るまでの様子を示している。図8の駆動波形を用いて小中2種類のドットを形成する場合、中ドットの方がインク滴IPが勢いよく吐出される。このようなインクの飛翔速度差があるため、キャリッジ31が主走査方向に移動しながら、最初に小ドットを吐出し、次に中ドットを吐出した場合、キャリッジ31の走査速度、両ドットの吐出タイミングをキャリッジ31と用紙Pの間の距離に応じて調整すれば、両インク滴を同じタイミングで用紙Pに到達させることができる。本実施例では、このようにして図8の2種類に駆動波形から最もドット径が最も大きい大ドットを形成しているのである。
【0050】
プリンタ22の制御回路40の内部構成を説明するとともに、上述の駆動波形を用いて、図6に示した複数のノズルNzからなるヘッド28を駆動する方法について説明する。図9は制御回路40の内部構成を示す説明図である。図9に示す通り、この制御回路40の内部には、CPU41,PROM42,RAM43の他、コンピュータ90とのデータのやりとりを行うPCインタフェース44と、紙送りモータ23、キャリッジモータ24および操作パネル32などとの信号をやりとりする周辺入出力部(PIO)45と、計時を行うタイマ46と、ヘッド61〜64にドットのオン・オフの信号を出力する転送用バッファ47などが設けられており、これらの素子および回路はバスで相互に接続されている。また、制御回路40には、所定周波数で駆動波形(図8参照)を出力する発信器51、および発信器51からの出力をヘッド61〜64に所定のタイミングで分配する分配器55も設けられている。制御回路40は、コンピュータ90で処理されたドットデータを受け取り、これを一時的にRAM43に蓄え、所定のタイミングで転送用バッファ47に出力する。従って、多階調の画像を形成するための画像処理は、プリンタ22側では行っていない。制御回路40は、単にドット単位でのオン・オフ、即ちドットを形成するか否かの制御のみを行っているのである。
【0051】
制御回路40がヘッド61〜64に対して信号を出力する形態について説明する。図10は、ヘッド61〜64の1つのノズル列を例にとって、その接続について示す説明図である。ヘッド61〜64の一つのノズル列は、転送用バッファ47をソース側とし、分配出力器55をシンク側とする回路に介装されている。ノズル列を構成する各ピエゾ素子PEは、その電極の一方が転送用バッファ47の各出力端子に、他方が一括して分配出力器55の出力端子に、それぞれ接続されている。分配出力器55からは発信器51の駆動波形が出力されているから、CPU41から各ノズル毎にオン・オフを定め、転送用バッファ47の各端子に信号を出力すると、駆動波形に応じて、転送用バッファ47側からオン信号を受け取っていたピエゾ素子PEだけが駆動される。この結果、転送用バッファ47からオン信号を受け取っていたピエゾ素子PEのノズルから一斉にインク粒子Ipが吐出される。
【0052】
駆動波形は、図8に示す通り、小ドット用の波形W1と中ドット用n波形W2とが交互に出力されているから、ある画素について小ドットを形成したい場合には、小ドット用の駆動波形W1に同期させてノズル列にオンの信号を送るとともに、中ドットの駆動波形W2に同期させてノズル列にオフの信号を送ればよい。中ドットを形成する場合には、この逆に駆動波形W1に同期させてノズル列にオフの信号を送るとともに、駆動波形W2に同期させてノズル列にオンの信号を送ればよい。また、大ドットを形成する場合には両駆動波形に同期させてオンの信号を送ればよい。こうすることにより、本実施例のプリンタ22は、各ノズルアレイで一主走査中に大中小それぞれのドット径でドットを形成することができる。
【0053】
図6に示す通り、ヘッド61〜64は、キャリッジ31の搬送方向に沿って配列されているから、それぞれのノズル列が用紙Pに対して同一の位置に至るタイミングはずれている。従って、CPU41は、このヘッド61〜64の各ノズルの位置のずれを勘案した上で、必要なタイミングで各ドットのオン・オフの信号を転送用バッファ47を介して出力し、各色のドットを形成している。また、図6に示した通り、各ヘッド61〜64もノズルが2列に形成されている点も同様に考慮してオン・オフの信号の出力が制御されている。
【0054】
このように本実施例のプリンタ22は、大中小の3種類のドットを形成可能であるが、以下に説明するドット発生処理では、処理の容易その他の理由から、このうち大小ドットのみを用いるものとしている。大中小全てのドットを用いるものとしてもよい。また、ドット径の異なるドットの形成は、大小それぞれのドットを形成するための2種類の駆動波形およびそれぞれの駆動波形を出力する2つの発信器を用意し、形成すべきドット径に応じてこの駆動波形を選択的に使用することによるものとしてもよい。
【0055】
本実施例では、既に述べた通りピエゾ素子PEを用いてインクを吐出するヘッドを備えたプリンタ22を用いているが、他の方法によりインクを吐出するプリンタを用いるものとしてもよい。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によりインクを吐出するタイプのプリンタに適用するものとしてもよい。かかるプリンタにおいては、ヒータへの通電時間や通電面積を変化させることによりドット径の異なるドットを形成できるため、本発明を適用することができる。
【0056】
(2)第1実施例によるドット発生処理ルーチン
次に、本発明に係る実施例におけるドット発生処理ルーチンについて説明する。図11に第1実施例によるドット発生処理ルーチンの流れを示す。このルーチンはプリンタドライバ96のハーフトーンモジュール99における処理の一部であり、本実施例においてはコンピュータ90のCPUにより実行されるルーチンである。なお、以下では、簡単のためシアン1色について形成される大小2種類のドットの発生処理について説明する。他のインクについても、同様の処理が適用される。
【0057】
ドット発生処理ルーチンが実行されると、CPUは画素階調データを入力する(ステップS100)。ここで入力されるデータはカラー画像をドット単位の画像データに変換した上で、RGBからなるデータに対してプリンタ22が使用するインク色CMYおよび発色の特性に応じた色補正を施したデータである。本実施例では、画素階調データは8ビットで与えられ、各色相について階調値0〜255の範囲をとるものとした。
【0058】
次に、CPUは画素階調データに拡散誤差を加えた補正データCdxを作成する(ステップS105)。誤差拡散法では処理済みの画素について生じた濃淡の誤差を予めその画素の周りの画素に所定の重みを付けて予め配分しておくので、ステップS105では該当する誤差分を読み出し、これを今から印刷しようとする画素に反映させるのである。着目している画素PPに対して、周辺のどの画素にどの程度の重み付けで、この誤差を配分するかを図12に例示した。着目している画素PPに対して、キャリッジ30の走査方向で数画素、および用紙Pの搬送方向後ろ側の隣接する数画素に対して、濃度誤差が所定の重み(1/4,1/8、1/16)を付けて配分される。誤差拡散処理については後で詳述する。
【0059】
次にCPUは閾値th1,th2を設定する(ステップS110)。これらの閾値は、画素階調データCdに対応した値を予めROMに記憶されたテーブルから読みとることにより設定される。後述するが、閾値th1は小ドットの形成の有無に関与する値であり、閾値th2は大ドットの形成の有無に関与する値である。本実施例はこの閾値の設定に大きな特徴があるため、その設定については後で詳述する。
【0060】
次にCPUは、こうして設定された閾値th1と補正されたデータCdxの大小関係を比較する(ステップS115)。補正データCdxが閾値th1よりも小さい場合には、当該画素について表現すべき濃度が小ドットを形成すべき濃度よりも低いことを意味しているため、小ドットを形成すべきでないと判断し、結果値RVに値0を代入する(ステップS120)。
【0061】
補正データCdxが閾値th1以上である場合には、次にCPUは閾値th2との大小、即ちth1≦Cdx<th2であるか否かを判断する(ステップS125)。補正データCdxが閾値th2よりも小さい場合、即ちth1≦Cdx<th2である場合は、当該画素について表現すべき濃度が小ドットを形成すべき濃度よりも高く、かつ大ドットを形成すべき濃度よりも低いことを意味しているため、小ドットを形成するための処理を行うとともに、結果値RVに小ドットの濃度評価値であるVsを代入する(ステップS130)。小ドットを形成するための処理とは、インクを吐出するノズルNzに入力するためのドット形成データを設定する(図9参照)とともに、駆動波形の選択(図8参照)を行う処理である。
【0062】
補正データCdxが閾値th2以上である場合には、当該画素について表現すべき濃度が大ドットを形成すべき濃度よりも高いことを意味しているため、大ドットを形成する処理を行うとともに、結果値RVに大ドットの濃度評価値であるVlを代入する(ステップS135)。
【0063】
以上の処理によりドットの形成の有無も含めて、いずれのドットを形成するかが決定された。また、その結果に基づいて結果値RVの値が設定された。CPUはこの結果値RVに基づいて誤差計算および誤差拡散処理を実行する(ステップS140)。
【0064】
ここでいう誤差とは、ステップS105において補正された後の画像データCdxと実際に形成されたドットとの濃度評価値RVとの誤差をいう。この誤差は、画像データCdxの階調値は例えば0〜255までの値を連続的にとり得るのに対し、ドットの形成により表現し得る濃度は一定の離散的な値0,Vs,Vlしかとり得ないことにより生じる誤差である。例えば、大ドットの濃度の評価値が255であるとした場合、画像データCdxの階調値が199であるにも関わらず大ドットを形成したとすれば、そこには255−199=56なる濃度誤差が生じていることになる。これは、形成されたドットの濃度が表現されるべき濃度に比べて濃すぎることを意味する。つまり、形成されるドットに応じて定まる結果値RVを用いれば、誤差ERRはERR=Data−RVで求められる。
【0065】
誤差拡散とは、こうして求められた誤差を現在処理している画素PPの周辺の画素に所定の重み(図12参照)を付けて拡散する処理をいう。誤差は未処理の画素に拡散されるべきであるから、図12に示す通り、キャリッジの走査方向および用紙の搬送方向に並ぶ画素にのみ拡散されることになる。上述の例に基づき、誤差が56であったとすれば、現在処理している画素PPの隣の画素P1には、誤差56の1/4に相当する14が拡散されることになる。この誤差は、次に画素P1を処理する際に、ステップS105において反映される。例えば、画素P1のデータが階調値214であれば、そこから拡散された誤差14を引いて、補正データを値200とするのである。かかる処理を繰り返し実行することにより、各画素ごとには濃度誤差を含んでいるものの、画像全体としては入力された画像データに応じた階調の画像が印刷されることになる。なお、図12に示した重み値および誤差の拡散範囲は一例に過ぎないため、その他の重み値等を用いるものとしてもよい。
【0066】
以上で説明したドット発生処理ルーチンの結果に基づいて、CPUはプリンタ22が各ドットを形成するための処理を実行する。この処理についてはプリンタ22の構成に応じて種々の処理が知られているため、ここではフローチャートに基づく説明は省略する。
【0067】
ここで、上述した閾値th1およびth2の設定(ステップS110)について説明する。両者を階調値に対し一定値として設定した場合の大ドットの発生率を図13に示す。図13は閾値th1を値63,閾値th2を値93とし、小ドットの濃度評価値を値128、大ドットの濃度評価値を値255とした場合の入力階調値と大ドットの発生率との関係を示したグラフである。図13では大ドットの発生率として大小ドットの発生数の比ではなく、大ドットにより表現される濃度を基準とした比率を用いている(以下、この定義に基づく発生率を特別に大ドット率と呼ぶことにする)。その定義は、次の通りである。
大ドット率=Nl×Vl/(Nl×Vl+Ns×Vs);
ここで、Nl,Nsは所定領域内における大ドットおよび小ドットの発生数であり、Vl,Vsは大ドットおよび小ドットの濃度評価値である。
【0068】
上式より明らかな通り、大ドット率はドットの発生により全体に表現されている濃度のうち、大ドットの発生により表現されている濃度の割合を示すものである。かかるパラメータを用いるのは、大ドット率が視覚に与える画像のザラツキ感等に影響を与えるからである。つまり、大ドットは小ドットよりも視認されやすいことから、ある階調値であっても大ドット率が高い程、ザラツキ感が高くなるのである。図13から分かる通り、一定の閾値th1,th2を用いて3値化を行った場合には大ドット率が急激に変化する部分(例えば点p,q)が生じる。かかる領域ではザラツキ感が急変することから疑似輪郭を形成する可能性がある。
【0069】
本実施例ではかかる観点に鑑み入力階調値に応じた大ドット率の目標値を図14の破線L3に示すように設定した。図14に示す通り、まず入力階調値が値63以下の領域では大ドット率が0%であり、入力階調値が値191以上の領域では大ドット率が100%となるように設定した上で、これらの間の領域では大ドット率が直線的に増加するように設定した。大ドット率の設定は、このように一部の階調値のみならず全ての階調値で有意の大ドット率となるように設定するものとしてもよいし、またその増加は図14のように直線的に増加するもののみならず曲線的に増加するように設定するものとしてもよい。
【0070】
次に本実施例では、このように設定された大ドット率が実現されるように閾値th1,th2を入力階調値に応じて設定した。この際、大ドット率に影響を与えるのは、閾値th1およびth2の絶対値ではなく、両者の差分(以下、閾値間隔とよぶ)、つまり(th2−th1)であることが実験的に確認されたため、図14に示す通り、この閾値間隔を設定するものとした。
【0071】
閾値間隔の設定方法は次の通りである。まず第1次設定としてある閾値間隔を設定し、該閾値間隔に基づいて各階調値に対する大ドット率を算出する。この結果に応じて図14に示した所望の大ドット率に一致していない階調値の閾値間隔を修正する。こうした作業を繰り返すことにより逐次近似的に設定することができる。
【0072】
本実施例では具体的に次の通りである。入力階調値が値191以上で大ドット率が100%となることから、小ドットが発生する領域であるth1<Cdx<th2なる範囲がなくなるように設定する必要があり、閾値間隔を値0に設定すべきであることが分かる。また、入力階調値が値63以下となる範囲で大ドット率が0%となることから、かかる領域では閾値間隔を十分に大きい値に設定する必要があることが分かる。閾値間隔の第1次近似設定としては、両者を直線で結んだものを設定した(図14のL1参照)。
【0073】
かかる第1次近似設定に基づいて大ドット率を算出した結果は、ここでは省略するが、まだ図13に示したような複数の極値を有する結果となった。算出結果として得られた大ドット率が図13に示した所望の大ドット率よりも大きい階調値では閾値間隔が小さすぎることを意味しているため、閾値間隔を若干大きい値に修正した。逆に算出結果として得られた大ドット率が所望の大ドット率よりも小さい階調値では閾値間隔を上記第1次近似よりも若干小さい値に修正した。本実施例では、得られた大ドット率と図14の設定値との偏差に一致させて上記修正量を設定したが、かかる偏差と大ドット率とは明確な対応関係にはないため、単なる目安に過ぎない。
【0074】
このように設定された第2近似に基づいて大ドット率を算出したところ、第1近似よりは所望の設定値に近づいたものの、まだ極値が現れる状態であった。こうして何度も閾値間隔を修正しては大ドット率を算出することにより徐々に所望の大ドット率が得られる閾値間隔を求めていった。最終的に得られた閾値間隔を図14のL2に示す。図14に示す通り、閾値は複数の極値を有する状態となり、また非常に急激に、つまり1次微係数が不連続になる程度に変化する部分も有している。
【0075】
このように設定された閾値間隔に基づいて、閾値th1,th2の具体的値を設定する。本実施例では最も単純なパターンとして閾値th1を一定値とし、閾値th2を図14の設定値に基づいて複数の極値を有する状態に設定した。この設定結果を図15に示す。本実施例では、こうして設定された各閾値をテーブル形式でROMに記憶している。CPUはドット発生処理(図11)において、かかるテーブルから補正データCdxに対応した閾値を読み込むことにより多値化を行っている。
【0076】
なお、閾値th1,th2の設定は、かかる設定の他、図16に示すように閾値th1を直線的に増加するように設定した上で閾値th2を図14の設定値に基づいて設定するものとしてもよいし、図17に示すように閾値th1を折れ線状に設定するものとしてもよいし、図18に示すように閾値th1およびth2の両者が複雑に変化するように設定するものとしてもよい。図18は図16に閾値th1の値として示した直線を基準とし、これに図14の閾値間隔の半分を加えた値を閾値th2、減じた値を閾値th1として設定したものである。なお、図示は省略するが、閾値th1またはth2を曲線的に変化するように設定しても差し支えないことは当然である。
【0077】
かかる印刷装置によれば、入力階調値に対し所望の大ドット率が得られるように大小2種類のドットの発生率を制御することができる。特に本実施例では図14に設定した通り、これらのドットの発生率が一様に変化するように制御することができる。先に説明した通り、大ドット率は印刷された画像のザラツキ感という点で視覚に大きな影響を与えるものであるため、大ドット率が階調値に応じて急激に変化した場合には、該階調値で画質が大きく変化して疑似輪郭を発生することになる。上記印刷装置では、大ドット率を所望の状態に制御することができる結果、かかる疑似輪郭の発生を防止することができ、画質の向上を図ることができる。
【0078】
(4)第2実施例におけるドット発生処理ルーチン
次に第2実施例におけるドット発生処理ルーチンについて、図19に示すフローチャートに基づき説明する。このルーチンも第1実施例のドット発生処理ルーチンと同様、コンピュータ90のCPUにより実行されるルーチンである。なお、以下では、簡単のためシアン1色について形成される大小2種類のドットの発生処理について説明する。他のインクについても、同様の処理が適用される。
【0079】
ドット発生処理ルーチンが実行されると、CPUは画素階調データを入力し(ステップS200)、拡散誤差を反映した補正データCdxを生成する(ステップS205)。ここで入力されるデータも第1実施例と同様、8ビットで与えられ、各色相について階調値0〜255の範囲をとる。また、拡散誤差の反映についても第1実施例と同様である。
【0080】
次にCPUはかかる補正データCdxが所定の階調値であるか否かを判定する(ステップS210)。この所定の階調値は図13におけるp,q等、一定の閾値を用いた誤差拡散法により多値化を行った場合に、大ドット率が急激に変化する階調値であり、予め実験的に設定され、ROMに記憶された階調値である。
【0081】
補正データCdxがこのような所定の階調値に該当する場合には、CPUは該補正データCdxに所定のノイズデータを付加する(ステップS215)。かかる階調値は、大ドット率が非常に急激に変化する不安定な階調値であるため、ノイズデータを付加することにより、かかる階調値でドットの形成を判定することを回避するのである。補正データCdxが上述した階調値に該当しない場合には、かかる処理はスキップされる。
【0082】
表現すべき階調に対し誤差を生じないようにする必要があるため、ここで付加するノイズデータとしては平均値が値0となるようなデータが用いられる。かかるデータは種々考え得るが、例えば、−10から10の範囲内で発生する乱数を用いること等が可能である。なお、上記ステップS310においては、補正した階調データCdxが特定の階調値(図13の階調値p等)と一致するか否かのみならず、その周辺を含む一定の領域内に存在するか否かを判定するものとしてもよい(図13の範囲PD参照)。この範囲は上述したノイズデータの大きさ等に応じて良好な画質が得られるように実験的に設定すればよい。
【0083】
こうして補正データCdxが設定された後、CPUは該補正データCdxと閾値th1との大小を比較し(ステップS220)、補正データCdxが閾値th1よりも小さい場合には、結果値RVに値0を代入する(ステップS225)。第1実施例では閾値th1を補正データCdxに応じて変えるものとしたが、第2実施例では補正データCdxの値に関わらず一定値をとる点で相違する。この閾値th1は自由に設定可能であるが、例えば小ドットの濃度評価値Vsの1/2倍の値に設定することができる。
【0084】
補正データCdxが閾値th1以上である場合には、CPUは該補正データCdxと閾値th2との大小を比較し(ステップS230)、補正データCdxが閾値th2よりも小さい場合は、小ドットを形成すべきと判断して、そのための処理を行うとともに、結果値RVに小ドットの濃度評価値であるVsを代入する(ステップS235)。閾値th2も補正データCdxに関わらず一定値をとる点で第1実施例と相違する。閾値th2も閾値th1以上の値で自由に設定可能であるが、例えば小ドットの濃度評価値Vsと大ドットの濃度評価値Vlの平均値に設定することができる。
【0085】
補正データCdxが閾値th2以上である場合には、CPUは大ドットを形成すべきと判断して、そのための処理を行うとともに、結果値RVに大ドットの濃度評価値であるVlを代入する(ステップS240)。以上の処理により、ドットの形成の有無も含めて結果値RVが設定された。CPUはかかる結果値RVに基づき、誤差計算および誤差拡散処理を行う(ステップS245)。誤差計算および誤差拡散処理については第1実施例と同様である。
【0086】
かかる印刷装置によれば、ノイズデータを付加することにより、上述した特定の階調値に基づいてドットの形成を判定することがないようにしているため、大ドット率が急激に変化することを防止することができる。この結果、大ドット率を完全に所望の状態に制御することはできないまでも、疑似輪郭の発生をある程度防止することができ、画質を向上することができる。さらに、第1実施例のように全階調値に対し実験的に閾値を予め設定する必要がないため、比較的容易に画質の向上を図ることができるという利点もある。
【0087】
なお、第2実施例では補正データCdxが特定の階調値に相当する場合にのみノイズデータを付加するものとしているが、全ての場合にノイズデータを付加するとともに、特定の階調値に相当する場合にはレベルの大きいノイズデータを付加するものとしてもよい。全ての場合にノイズデータを付加するものとすれば、図13に示した階調値p,q等のように大ドット率が急激に変化する階調値のみならず、その他の階調値においても大ドット率の変化を緩和することができ、画質の向上を図ることができる。
【0088】
他の態様からなる実施例として、以上で説明した2つの実施例を併合して用いることも可能である。つまり、図13のp,q等、一定の閾値を用いた誤差拡散法により多値化を行った場合に、大ドット率が急激に変化する階調値については、第1実施例で図14を用いて説明した方法により大ドット率が比較的滑らかに変化するように実験的に設定された閾値を用い、他の階調値については一定の閾値を用いるものとした上で、全階調値に対しノイズデータを付加するものとしてもよい。かかる手段は、全ての階調値に対し実験的に閾値を設定する第1実施例よりは容易に実現することができ、かつ、単にノイズデータを付加するに過ぎない第2実施例よりは良好な画質を得ることが可能となる。
【0089】
なお、以上2つの実施例の説明では一画素ごとにかつ一色ずる処理を行うものとして説明したが、各画素についての結果をメモリに蓄えつつ、各ラスタまたは画像全体について繰り返し処理を行うものとしてもよい。
【0090】
上述の実施例では大小2種類のドットについて3値化を行う場合を例にとって説明したが、その他の3値化に適用するものとしてもよい。例えば、ある色相について濃淡2種類のインクを備えるヘッドを用いる印刷装置では、両インクにより形成されるドットの発生率を制御することもできる。また、3値化に限らずそれ以上の多値化に適用することもできる。かかる多値化の例としては、ドット径が大中小またはそれ以上存在する場合や、濃淡2種類のインクでドット径を変調して形成可能な場合等が考えられる。このように3値化以上の多値化を行う場合には、上述の実施例で説明した考え方に基づけば、全てのドットの発生率を制御が可能であることはもちろんであるが、一部のドットの発生率のみを制御するものとしてもよい。かかる場合には、少なくとも最も画質に影響するドット、即ち単位面積当たりの濃度が最も高いドットの発生率を制御するものとすることが望ましい。
【0091】
また、以上で説明した種々の実施例ではドットの発生率を表すパラメータとして、ドットの発生により全体に表現されている濃度のうち、大ドットの発生により表現されている濃度の割合を示す大ドット率を用いたが、得られた画像による視覚への影響を表し得る他の種々のパラメータを用いるものとしてもよい。例えば単純に各ドット径からなるドットの発生数に基づく比率をパラメータとすることもできる。
【0092】
さらに、上記2つの実施例における印刷装置はコンピュータによる処理を含んでいることから、上記で説明した各機能を実現するためのプログラムを記録した記録媒体としての実施の態様を採ることもできる。このような記憶媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。また、コンピュータに上記の発明の各工程または各手段の機能を実現させるコンピュータプログラムを通信経路を介して供給するプログラム供給装置としての態様も可能である。逆に上で説明した各処理またはその一部をハードウェアにて実現するものとしても構わない。
【0093】
以上、本発明の種々の実施例について説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の形態による実施が可能である。例えば、以上で説明した種々の処理はコンピュータ90で実行するものとしているが、かかる処理を実行する機能をプリンタ22に持たせ、プリンタ22側で行うものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリンタを用いた画像処理システムの概略構成図である。
【図2】本発明のプリンタの概略構成図である。
【図3】本発明のプリンタのドット記録ヘッドの概略構成を示す説明図である。
【図4】本発明のプリンタにおけるドット形成原理を示す説明図である。
【図5】プリンタにおけるノズル配置の一例を示す説明図である。
【図6】本発明のプリンタにおけるノズル配置を示す説明図である。
【図7】本発明によりドット径の異なるドットを形成する原理を示す説明図である。
【図8】本発明のプリンタ22におけるノズルの駆動波形および該駆動波形により形成されるドットの様子を示す説明図である。
【図9】プリンタ22の内部構成を示す説明図である。
【図10】ヘッドの駆動回路構成を示す説明図である。
【図11】第1実施例のドット発生処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【図12】誤差拡散処理における重み係数を示す説明図である。
【図13】一定の閾値を用いた場合の大ドット率を示すグラフである。
【図14】大ドット率および閾値間隔の設定結果を示すグラフである。
【図15】閾値th1,th2の第1の設定例を示すグラフである。
【図16】閾値th1,th2の第2の設定例を示すグラフである。
【図17】閾値th1,th2の第3の設定例を示すグラフである。
【図18】閾値th1,th2の第4の設定例を示すグラフである。
【図19】第2実施例のドット発生処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
12…スキャナ
21…カラーディスプレイ
22…カラープリンタ
23…紙送りモータ
24…キャリッジモータ
26…プラテン
28…印字ヘッド
31…キャリッジ
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置検出センサ
40…制御回路
41…CPU
42…プログラマブルROM(PROM)
43…RAM
44…PCインタフェース
45…PIO
46…タイマ
47…転送用バッファ
51…発信器
55…分配出力器
61、62、63、64…インク吐出用ヘッド
67…導入管
68…インク通路
71…黒インク用のカートリッジ
72…カラーインク用カートリッジ
90…パーソナルコンピュータ
91…ビデオドライバ
92…入力部
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…ラスタライザ
98…色補正モジュール
99…ハーフトーンモジュール

Claims (14)

  1. 印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
    単位面積当たりの濃度の異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能なヘッドと、
    画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する入力手段と、
    P種類(Pは2≦P≦Nなる整数)の前記ドットにそれぞれ対応した閾値である対応閾値を含む複数の閾値を記憶すると共に、前記対応閾値は、互いの差分が前記階調データの採りうる階調値に応じて変化するように設定されている閾値記憶手段と、
    各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと前記閾値記憶手段に記憶された複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定する多値化ドット形成判定手段と、
    前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記単位面積当たりの濃度の異なるドットをそれぞれ形成するドット形成手段とを備える印刷装置。
  2. 請求項1記載の印刷装置であって、
    前記対応閾値は、前記多値化ドット形成判定手段による両者の発生比率が前記階調値に応じて単調に変化するように設定された閾値である印刷装置。
  3. 請求項2記載の印刷装置であって、
    前記発生比率は、一定の階調値からなる所定領域において形成された前記P種類のドットにより表現される濃度の該階調値に対する比である印刷装置。
  4. 請求項1記載の印刷装置であって、
    前記対応閾値は、さらに、互いの差分が前記階調値に応じて複数の極値を有する閾値である印刷装置。
  5. 請求項1記載の印刷装置であって、
    前記ヘッドはインク量の異なる2種類のドットを形成可能なヘッドであり、
    前記対応閾値は大小2種類の値である印刷装置。
  6. 請求項2記載の印刷装置であって、
    前記発生比率は、前記階調データが採りうる階調値の一部の連続的な階調値においてのみ0とは異なる値をとる印刷装置。
  7. 請求項6記載の印刷装置であって、
    前記連続的な階調値の下限値、前記対応閾値を階調値に対し一定値とした場合における前記多値化ドット形成判定手段により得られる前記発生率の極値が現れる階調値とは異なっている印刷装置。
  8. 印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷装置であって、
    単位面積当たりの濃度の異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能なヘッドと、
    画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する入力手段と、
    各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと前記予め定められた複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定する多値化ドット形成判定手段と、
    前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記単位面積当たりの濃度の異なるドットをそれぞれ形成するドット形成手段とを備え、
    前記多値化ドット形成判定手段による判定に先立ち、該階調データまたは前記複数の閾値の少なくとも一部に所定のノイズデータを付加するノイズ付加手段とを備え、
    前記ノイズ付加手段は、前記階調データが予め定められた階調値に相当するときにのみ前記所定のノイズデータを付加するノイズ付加手段である印刷装置。
  9. 請求項8記載の印刷装置であって、
    該ノイズ付加手段における前記予め定められた階調値を、P種類(Pは2≦P≦Nなる整数)の前記ドットについて、前記多値化ドット形成判定手段による両者の発生比率の極値が現れる階調値に設定した印刷装置。
  10. 請求項8記載の印刷装置であって、
    前記ノイズ付加手段は、
    前記多値化ドット形成判定手段による判定に先立ち、該階調データまたは前記複数の閾値の少なくとも一部に第1のノイズデータを付加し、かつ、
    該階調データが予め定められた階調値に相当するときには前記第1のノイズデータに代えて、該ノイズデータよりも絶対値が大きい第2のノイズデータを付加するノイズ付加手段である印刷装置。
  11. 単位面積当たりの濃度の異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能なヘッドを用いて、印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷する印刷方法であって、
    (a) 画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する工程と、
    (b) P種類(Pは2≦P≦Nなる整数)の前記ドットに対応した閾値である対応閾値を含む複数の閾値を記憶したデータを参照することにより、前記階調データに応じた閾値を求めると共に、前記対応閾値は、互いの差分が前記階調データが採りうる階調値に応じて変化するように設定されている工程と、
    (c) 各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと前記工程において求められた複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定し3値化以上の多値化をする工程と、
    (d) 前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記単位面積当たりの濃度の異なるドットをそれぞれ形成する工程とを備える印刷方法。
  12. 単位面積当たりの濃度の異なるN種類(Nは2以上の整数)のドットを形成可能なヘッドを用いて、印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷し得る印刷方法であって、
    (a) 画像を構成する各画素ごとに、階調データを入力する工程と、
    (b) 各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと予め定められた複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定し、3値化以上の多値化を行う工程と、
    (d) 前記判定結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、前記単位面積当たりの濃度の異なるドットをそれぞれ形成する工程と、
    (e) 前記工程(b)におけるドットの形成の判定に先立ち、該階調データまたは前記複数の閾値の少なくとも一部に所定のノイズデータを付加する工程とを備え、
    前記工程(e)は、前記階調データが予め定められた階調値に相当するときにのみ前記所定のノイズデータを付加する印刷方法。
  13. 印刷装置により印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷するためのプログラムをコンピュータ読みとり可能に記録した記録媒体であって、
    単位面積当たりの濃度の異なる少なくとも2種類のドットに対応した閾値である対応閾値を含む複数の閾値を記憶したデータを参照することにより、前記階調データに応じた閾値を求めると共に、前記対応閾値は、互いの差分が前記階調データが採りうる階調値に応じて変化するように設定されている機能と、
    各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと前記階調データに応じた閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定し3値化以上の多値化をする機能とをコンピュータにより実現するプログラムを記録した記録媒体。
  14. 印刷装置により印刷媒体上に複数のドットを形成することにより画像を印刷するためのプログラムをコンピュータ読みとり可能に記録した記録媒体であって、
    単位面積当たりの濃度の異なる少なくとも2種類のドットの発生率を制御することで前記入力された階調データに応じた階調を表現するように、各画素ごとに、処理済みの画素において表現すべき濃度と形成されたドットにより表現される濃度との間に生じた誤差を前記階調データに反映して得られる濃度データと予め定められた複数の閾値とに基づいて、ドットのオン・オフおよび形成すべきドットの種類を判定し、3値化以上の多値化を行う機能と、
    該多値化に先立ち、前記階調データまたは前記複数の閾値の少なくとも一部に所定のノイズデータを付加する機能であって、前記階調データが予め定められた階調値に相当するときにのみ前記所定のノイズデータを付加する機能とをコンピュータにより実現するプログラムを記録した記録媒体。
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