JP4168575B2 - 印刷装置、画像記録方法、および記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、単位面積当たりの濃度の異なる2種類以上のドットを、印字対象物上に形成可能なヘッドを備え、このヘッドにより形成されるドットにより多階調の画像を記録する印刷装置およびその画像記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの出力装置として、数色のインクをヘッドから吐出するタイプのカラープリンタが広く普及し、コンピュータ等が処理した画像を多色多階調で印刷するのに広く用いられている。シアン、マゼンタ、イエロー(CMY)の三色のインクにより多色の画像を印刷する場合、多階調の画像を形成しようとするにはいくつかの方法が考えられる。一つは、従来のプリンタで採用されている手法であり、一度に吐出するインクにより用紙上に形成されるドットの大きさを一定として、印刷される画像の階調を、ドットの密度(単位面積当たりの出現頻度)により表現するものである。もう一つの方法は、用紙上に形成するドット径を調整して、単位面積当たりの濃度を可変するものである。最近では、インク粒子を形成するヘッドの微細加工が進み、所定長さ当たりに形成できるドットの密度やドット径の可変範囲などは、年々向上しているが、プリンタの場合には、印字密度(解像度)で300dpiないし720dpi程度、粒径で数十ミクロンに留まっており、銀塩写真の表現力(フィルム上では解像度で数千dpiと言われる)との間の隔たりは未だ大きい。
【0003】
特に、画像濃度の低い領域、即ち印刷されるドット密度の低い領域では、ドットがまばらに形成され(いわゆる粒状化)、これが目に付いてしまう。そこで、印刷品位の更なる向上を目的とし、濃淡インクを用いた印刷装置および印刷方法が提案されている。これは、同一色について濃度の高いインクと低いインクを用意し、両インクの吐出を制御することにより、階調表現に優れた印刷を実現しようとするものである。例えば、特開昭61−108254号公報には、同一色について濃淡2種類のドットを形成するヘッドを備え、入力された画像の濃度情報に応じて、所定のドットマトリックス内に形成する濃淡ドットの数およびその重なりを制御することで、多階調の画像を記録する記録方法およびその装置が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の濃淡インクを用いた印刷装置では、濃度の高いインクと低いインクとを、元の画像の階調信号に対してどのように対応させるかという点については、特に配慮されておらず、画像の階調信号に対して単純に濃度の低いインクから順に割り当てているに過ぎなかった(例えば、特開平2−215541号公報、第9図)。
【0005】
本発明は、単位面積当たりの濃度の異なる2種類以上のドット(例えば濃淡2種類以上のインクによるドット)を形成可能な印刷装置において、元の画像の階調信号に対して、2種類以上のドットを適切に対応させ、記録される画像の品位を向上することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
本発明の印刷装置は、
単位面積当たりの濃度の異なる有彩色インクによる2種類以上のドットと無彩色のインクによるドットとを、印字対象物上に形成可能なヘッドを備え、該ドットの分布により多階調の画像を記録する印刷装置であって、
印刷すべき画像の階調信号を画素毎に順次入力する入力手段と、
該入力した階調信号に基づいて、前記有彩色インクが分担する濃度と前記無彩色インクが分担する濃度とを求める濃度演算手段と、
該求められた無彩色インクの濃度に基づいて、該無彩色インクについて、2以上の多値化を行なって、無彩色インクのドットの形成を判断する無彩色ドット形成判断手段と、
該無彩色についての多値化の結果に基づいて、前記有彩色インクの濃度に反映すべき補正データを求め、前記有彩色インクが分担する濃度を補正する濃度補正手段と、
該補正された有彩色インクの濃度に基づいて、前記単位面積当たりの濃度が異なる2種類以上のドットによる多値化を行ない、該2種類以上のドットの形成を判断する有彩色ドット形成判断手段と、
前記無彩色ドット形成判断手段および前記有彩色ドット形成判断手段の判断結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、単位面積当たりの濃度の異なる有彩色インクの2種類以上のドットおよび前記無彩色インクのドットを形成させるヘッド駆動手段と
を備えたことを要旨としている。
【0022】
この印刷装置は、無彩色についてのドット形成の有無により有彩色の単位面積当たりの濃度が異なる2種類以上のドットの形成に影響を与える。無彩色のドットには、有彩色の成分が含まれていると考えることができるから、こうした構成を取ることにより、無彩色(例えば黒色のドット)のオン・オフにより、有彩色のドットのオン・オフを適正に制御することが可能となる。
【0029】
また、単位面積当たりの濃度が異なる態様としては、記ヘッドが、ドット径の異なる2種類以上のドットを形成可能な場合がある。いわゆるドット径変調可能な印刷装置がこれに相当する。もとより、濃度の異なる2種類以上のインクを用意し、染料濃度の異なるインクによりドットを形成する構成や、同一の濃度のインクを略同一箇所に吐出する回数を可変することにより濃度の異なるドットを形成する構成なども可能である。
【0030】
こうした濃度の異なるインクまたはドット径の異なるインクを形成可能なヘッドとしては、インク通路に設けられた電歪素子への電圧の印加によりインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構が考えられる。また、インク通路に設けられた発熱体への通電により発生する気泡により該インク通路のインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構によって、濃度の異なるインクによりドットを形成することや、径の異なるドットを形成することも可能である。これらの構成に拠れば、インク粒子を微細にし、かつそのインク量を適切に制御することが容易であり、更に多数の吐出ノズルをヘッド上に用意することも容易である。多数のノズルを設ける場合には、インク粒子の吐出用ノズルは、各色および各濃度のインク毎に、印刷される用紙の搬送方向に沿って複数個配列することができる。複数個のノズルを用意することにより、印刷速度の向上に資することができる。
【0038】
この発明は、以下のような他の態様も含んでいる。第1の態様は、印刷装置の入力手段,誤差拡散手段,第1のドット形成判断手段,濃度誤差演算手段および第2のドット形成判断手段のうちの一つまたは関連するいくつかの手段を、印刷装置の筐体内部ではなく、印刷しようとする画像を出力する装置の側に置く構成である。誤差拡散手段や第1,第2のドット形成判断手段等は、ディスクリートな回路によっても実現可能であるが、CPUを中心とした算術論理演算回路におけるソフトウェアによっても実現可能である。後者の場合には、印刷しようとする画像を出力する側、例えばコンピュータ側にドットの生成に関する処理まで行なわせ、印刷装置の筐体内には、生成されたドットを、ヘッドからのインクの吐出を制御して、用紙上などに形成する機構のみを収納する形態も考えることができる。もとより、これらの手段を適当な箇所で二つのグループに分け、その一方を、印刷装置の筐体内で実現し、残りを、画像を出力する側で実現すると言った構成も可能である。
【0039】
本発明の第2の態様は、コンピュータシステムにロードされて実行されるソフトウェアを記録した携帯型記憶媒体としての形態であり、上記の入力手段,ドット生成手段の少なくとも一部を、CPUを中心とした算術論理演算回路(ハードウェア)とその上で実行されるソフトウェアプログラムとにより実現するものとし、そのソフトウェアプログラムの少なくとも一部を、この携帯型記憶媒体に格納したものである。
【0040】
第3の形態は、上記のソフトウェアプログラムを通信回線を介して供給する供給装置としての形態である。
【0041】
更に、第4の形態として、上述した印刷装置に用いられるインクカートリッジの発明がある。例えば、本発明の印刷装置が、単位面積当たりの濃度が異なる2種類以上のドットを形成するのに染料濃度の異なる濃淡2種類以上のインクを用いてカラー印刷を行なう場合、濃度の異なる濃淡2種以上のカラーインクを、黒色インクとは別体の容器に収納してなるインクカートリッジを考えることができる。このインクカートリッジは、黒色のインクとは別の容器に収納されていることから、その交換の時期が、通常の文字を中心とした印刷に用いられる黒色インク単体の消尽とその交換時期に影響されることがない。
【0042】
こうした濃淡インクを用いた印刷装置に使用するインクカートリッジでは、色相を同じくし濃度の異なる濃淡2種以上のインクを、互いに隣接する位置に配設することができる。具体的には、濃度の異なる濃淡2種以上のインクが、一端から順に、シアンインク、該シアンインクより染料濃度の低いインク、マゼンタインク、該マゼンタインクより染料濃度の低いインク、イエロインクの順に配設することが可能である。
【0043】
【発明の実施の形態】
発明を実施するための最良の形態:
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。図1は、この発明の一実施例であるプリンタ20の概略構成図である。図示するように、このプリンタ20は、紙送りモータ22によって用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30をプラテン26の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ30に搭載された印字ヘッド28を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御する機構と、これらの紙送りモータ22,キャリッジモータ24,印字ヘッド28および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とから構成されている。
【0044】
用紙Pを搬送する機構は、紙送りモータ22の回転をプラテン26のみならず、図示しない用紙搬送ローラに伝達するギヤトレインを備える(図示省略)。また、キャリッジ30を往復動させる機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ30を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモータ24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ30の原点位置を検出する位置検出センサ39等から構成されている。
【0045】
制御回路40を中心にこのプリンタ20の構成を示したのが、図2である。図示するように、この制御回路40は、周知のCPU41,プログラムなどを記憶したP−ROM43,RAM44,文字のドットマトリクスを記憶したキャラクタジェネレータ(CG)45などを中心とする算術論理演算回路として構成されており、この他、外部のモータ等とのインタフェースを専用に行なうI/F専用回路50、このI/F専用回路50に接続されヘッド28を駆動するヘッド駆動回路52、同じく紙送りモータ22およびキャリッジモータ24を駆動するモータ駆動回路54を備える。また、I/F専用回路50は、パラレルインタフェース回路を内蔵しており、コネクタ56を介してコンピュータに接続されて、コンピュータが出力する印刷用の信号を受け取ることができる。コンピュータからの画像信号の出力については後述する。
【0046】
次にキャリッジ30の具体的な構成と、キャリッジ30に搭載された印字ヘッド28によるインクの吐出原理について説明する。図3は、キャリッジ30の形状を示す斜視図である。また、図4は、キャリッジ30の下部に配列された印字ヘッド28における各色インクを吐出するノズル部分を示す平面図である。図3に示すように、キャリッジ30は、略L字形状をしており、図示しない黒インク用カートリッジとカラーインク用カートリッジ70(図5参照)とを搭載可能であって、両カートリッジを装着可能に仕切る仕切板31を備える。キャリッジ30の下部の印字ヘッド28には計6個のインク吐出用ヘッド61ないし66が形成されており、キャリッジ30の底部には、この各色用ヘッドにインクタンクからのインクを導く導入管71ないし76が立設されている。キャリッジ30に黒インク用のカートリッジおよびカラーインク用カートリッジ70を上方から装着すると、各カートリッジに設けられた接続孔に導入管71ないし76が挿入される。
【0047】
インクが吐出される機構を簡単に説明する。図6に示すように、インク用カートリッジ70がキャリッジ30に装着されると、毛細管現象を利用してインク用カートリッジ内のインクが導入管71ないし76を介して吸い出され、キャリッジ30下部に設けられた印字ヘッド28の各色ヘッド61ないし66に導かれる。なお、初めてインクカートリッジが装着されたときには、専用のポンプによりインクを各色ヘッド61ないし66に吸引する動作が行なわれるが、本実施例では吸引のためのポンプ、吸引時に印字ヘッド28を覆うキャップ等の構成については図示および説明を省略する。
【0048】
各色ヘッド61ないし66には、図4および図6に示したように、各色毎に32個のノズルnが設けられており、各ノズル毎に電歪素子の一つであって応答性に優れたピエゾ素子PEが配置されている。ピエゾ素子PEとノズルnとの構造を詳細に示したのが、図7である。図示するように、ピエゾ素子PEは、ノズルnまでインクを導くインク通路80に接する位置に設置されている。ピエゾ素子PEは、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行なう素子である。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加することにより、図7下段に示すように、ピエゾ素子PEが電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路80の一側壁を変形させる。この結果、インク通路80の体積は、ピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、粒子Ipとなって、ノズルnの先端から高速に吐出される。このインク粒子Ipがプラテン26に装着された用紙Pに染み込むことにより、印刷が行なわれることになる。
【0049】
印字ヘッド28における各色ヘッド61ないし66の配列は、上述したピエゾ素子PEを配置する関係上、図4に示したように、2つのヘッドを一組として、3組に分けて配設されている。黒インク用カートリッジに近接した側の端に黒インク用のヘッド61が配設されており、その隣がシアン用のインクヘッド62である。また、この組に隣接するのが、シアン用インクヘッド62に供給されるシアンインクより濃度の低いインク(以下、ライトシアンインクと呼ぶ)用のヘッド63とマゼンタ用のインクヘッド64である。更にその隣の組には、通常のマゼンタインクより濃度の低いインク(以下、ライトマゼンタインクと呼ぶ)用のヘッド65と、イエロ用のヘッド66とが配置されている。各インクの組成および濃度については後述する。
【0050】
以上説明したハードウェア構成を有する本実施例のプリンタ20は、紙送りモータ22によりプラテン26その他のローラを回転して用紙Pを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印字ヘッド28の各色ヘッド61ないし66のピエゾ素子PEを駆動して、各色インクの吐出を行ない、用紙P上に多色の画像を形成する。なお、プリンタ20は、図8に示すように、コンピュータ90などの画像形成装置からコネクタ56を介して受け取った信号に基づいて、多色の画像を形成する。この例では、コンピュータ90内部で動作しているアプリケーションプログラムは、画像の処理を行ないつつビデオドライバ91を介してCRTディスプレイ93に画像を表示している。このアプリケーションプログラム95が、印刷命令を発行すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像情報をアプリケーションプログラムから受け取り、これをプリンタ20が印字可能な信号に変換している。図8に示した例では、プリンタドライバ96の内部には、アプリケーションプログラム95が扱っている画像情報をドット単位の色情報に変換するラスタライザ97、ドット単位の色情報に変換された画像情報(階調データ)に対して画像出力装置(ここではプリンタ20)の発色の特性に応じた色補正を行なう色補正モジュール98、色補正された後の画像情報からドット単位でのインクの有無によりある面積での濃度を表現するいわゆるハーフトーンの画像情報を生成するハーフトーンモジュール99が備えられている。これらの各モジュールの動作は、周知のものなので、説明は原則として省略し、ハーフトーンモジュール99の内容については、後述する。
【0051】
以上説明したように、本実施例のプリンタ20は、その印字ヘッド28に、いわゆるCMYKの4色のインク以外に、ライトシアンインクとライトマゼンタインク用のヘッド63,65を備える。これらのインクは、図9にその成分を示すように、通常のシアンインクおよびマゼンタインクの染料濃度を低くしたものである。図示するように、通常濃度のシアンインク(図9中C1で示す)は、染料であるダイレクトブルー99を3.6重量パーセント、ジエチレングリコール30重量パーセント、サーフィノール465を1重量パーセント、水65.4重量パーセントとしたものであるのに対して、ライトシアンインク(図9中C2で示す)、染料であるダイレクトブルー99を、シアンインクC1の1/4である0.9重量パーセントとし、粘度調整のためにジエチレングリコールを35重量パーセント、水を63.1重量パーセントに変更したものである。また、通常濃度のマゼンタインク(図9中M1で示す)は、染料であるアシッドレッド289を2.8重量パーセント、ジエチレングリコール20重量パーセント、サーフィノール465を1重量パーセント、水79重量パーセントとしたものであるのに対して、ライトマゼンタインク(図9中M2で示す)は、染料であるアシッドレッドを、マゼンタインクM1の1/4である0.7重量パーセント、ジエチレングリコール25重量パーセント、水74重量パーセントに変更したものである。
【0052】
なお、図9に示したように、イエロインクYと、ブラックインクKは、染料としてダイレクトイエロ86とフードブラック2とを用い、それぞれ1.8重量パーセント、4.8重量パーセントとしたものである。いずれのインクも、粘度がおよそ3[mPa・s]程度に調整されている。本実施例では、各色インクの粘度の他、表面張力も同一に調整しているので、各色ヘッド毎のピエゾ素子PEの制御を、ドットを形成するインクに拠らず同一にすることができる。
【0053】
これらの各色インクの明度を測定したものを図10に示した。図10の横軸はプリンタの記録解像度に対する記録率であり、ノズルnから吐出したインク粒子Ipにより白色の用紙Pにドットを記録した割合を示している。即ち、記録率100とは、用紙Pの全面がインク粒子Ipにより覆われた状態を示している。本実施例では、シアンインクC1に対してライトシアンインクC2は、染料の濃度が重量パーセントで約1/4としており、このときの両インクの明度は、ライトシアンインクC2の記録率が100パーセントの場合の明度が、シアンインクC1の記録率が約35パーセントの場合の明度と等しくなっている。この関係は、マゼンタインクM1,ライトマゼンタインクM2においても同様である。濃度の異なるインクが同一明度となる記録率の割合は、両インクを混在して印刷した場合の混色の美しさの点から定めたものであるが、実用上は、20ないし50パーセントの範囲に調整することが望ましい。この関係を、両インクにおける染料の重量パーセントの割合で表現すると、濃度の高いインク(シアンインクC1およびマゼンタインクM1)における染料の重量パーセントに対して、濃度の低いインク(ライトシアンインクC2およびライトマゼンタインクM2)における染料の重量パーセントの関係を、後者が前者の約1/5ないし1/3程度に調整することとほぼ等価である。
【0054】
次に、プリンタドライバ96のハーフトーンモジュール99内の処理に沿って、本実施例のプリンタ20における濃淡インクを用いた印刷の様子について説明する。図11は、ハーフトーンモジュール99の処理の概要を示すフローチャートである。図示するように、印刷の処理が開始されると、一つの画像の左上隅を原点として各画素を順にスキャンし、まず色補正モジュール98から、キャリッジ30のスキャン方向に沿った順に、一つの画素の色補正済みの階調データDS(CMYK各8ビット)を入力する(ステップS100)。
【0055】
なお、以下では、シアンインクのみにより印刷が行なわれるものとして説明するが、実際には多色の印刷が行なわれることになり、マゼンタについては、濃度の高いマゼンタインクM1と濃度の低いライトマゼンタインクM2とにより、濃ドットおよび淡ドットが形成される。またイエロについては、イエロインクYによりドットが形成され、黒色についてはブラックインクKによりドットが形成されることになる。また、所定の領域内に異なる色のインクによるドットが形成される場合には、混色による色の再現性を良好なものとするために必要な制御、例えば異なる色のドットを同位置箇所に印刷しないものとする制御などが行なわれる。
【0056】
次に、入力した階調データDSに基づき、濃ドットのオン・オフを決定する処理を行なう(ステップS120)。この濃ドットのオン・オフを決定する処理の詳細を、図14の濃ドット形成判断処理ルーチンに示した。この処理ルーチンでは、まず、階調データDSに基づいて図13のテーブルを参照して、濃レベルデータDthを生成する処理を行なう(ステップS122)。図13は、元の画像の階調データに対して、淡インクと濃インクの記録率をどの程度にするかを設定するテーブルを示す。階調データは、各色について0〜255までの値をとるものしているから(各色8ビット)、以下階調データの大きさを16/256等のように表現する。図13のテーブルは、最終的に得られる印刷物における濃インクと淡インクの割合を示すものであり、ある階調データが与えられたとき、一意に濃インクの記録率と淡インクの記録率を与えて、着目している画素の濃インクまたは淡インクによるドットのオン・オフを定めるものではない。この関係を簡単に説明すると、本実施例では、図11に示したように、まずこのテーブルを利用して濃ドットのオン・オフを判定し(ステップS120)、その結果を参照して淡ドットのオン・オフを判定する(ステップS140)。従って、淡ドットの記録率が図13に示したテーブルに一致するのは、次の理由による。
【0057】
単位面積当たりの画像の濃度は、そこに形成される濃ドットと淡ドットの数により表すことができる。図13に従って、単位面積当たりに形成された濃ドットの数を、濃度が最大の場合を値255としてこれに対する割合として考え、これをKsとする。同様に淡ドットの数をUsとする。このとき、形成される画像の濃度を入力した画像の階調データDSに等しくしようとすれば、
DS=Ks×(濃ドットの評価値)/255
+Us×(淡ドットの評価値)/255
となる。濃ドットの評価値(形成されたドットの濃さ)は255と見なすことができるので、濃ドットのテーブルと淡ドットの評価値をいくつにとるかにより、図13に示した淡ドットのテーブルが決まることになる。図13に示した例では、たとえば淡ドットの記録率が最大となる点(階調データが95、濃ドットデータが18、淡ドットデータが122)のデータを上式に入力すると、淡ドット評価値をZとして
95=18×255/255+122×Z/255
となり、淡ドット評価値は、160となる。なお、この濃ドット評価値、淡ドット評価値は、後述する濃ドット、淡ドットのオン・オフの決定手法のフローチャートで結果値RVとして扱われているものと同じものである。
【0058】
入力した階調データDSに基づいて、図13のテーブルを参照することにより、予め定めた濃インクの記録率に対応した濃レベルデータDthを得る(図13右側縦軸)。例えば、入力したシアンの階調データが50/256のベタの領域を印刷する場合には、濃インクであるシアンインクC1の記録率は0パーセントであり、濃レベルデータも値0となる。階調データが95/256のベタの領域を印刷する場合には、濃インクであるシアンインクC1の記録率は7パーセントであり、濃レベルデータDthは値18となる。更に、階調データが191/256のベタ領域を印刷する場合にはシアンインクC1の記録率は75パーセントであって、濃レベルデータは値191となる。これらの場合に、後述する手法で淡ドットのオン・オフを判断すると、それぞれ、淡インクであるライトシアンインクC2の記録率は36パーセント、58パーセント、0パーセントとなる。
【0059】
次に、こうして得られた濃レベルデータDthが閾値Dref1より大きいか否かの判断を行なう(ステップS124)。この閾値Dref1は、着目した画素に濃インクによるドットを形成するか否かの判定値であって、単純に濃レベルデータDthの最大値の1/2程度に固定することもできる。本実施例では、この閾値の設定に分散型ディザの閾値マトリックスを採用し、特に64×64程度の大域的マトリックス(ブルーノイズマトリックス)を利用し、組織的ディザ法を適用した。従って、濃ドットのオンオフを定める閾値Dref1は、着目する画素毎に異なった値となる。図16に、組織的ディザ法における閾値の考え方を示す。図16では、マトリックスの大きさは図示の都合上4×4としたが、実施例では、64×64の大きさのマトリックスを用い、その内部のいずれの16×16の領域をとっても閾値(0〜255)の出現に偏りがないように閾値を決めている。こうした大域的なマトリックスを用いると、疑似輪郭などの発生が抑制される。分散型ディザとは、その閾値マトリックスにより決定されるドットの空間周波数が高いものであり、ドットが領域内でバラバラに発生するタイプを言う。具体的には、Beyer型の閾値マトリックスなどが知られている。分散型のディザを採用すると、濃ドットの発生がバラバラに行なわれるので、濃淡ドットの分布が偏らず、画質が向上する。なお、濃ドットのオンオフを決定するには、その他の手法、例えば濃度パターン法や画素配分法などを採用しても差し支えない。
【0060】
濃ドットデータDthが閾値Dref1より大きい場合には、その画素の濃ドットをオンにするものと判断し、更に結果値RVを演算する処理を行なう(ステップS126)。結果値RVは、その画素の濃度に相当する値(濃ドット評価値)であり、濃ドットがオン、即ちその画素に濃度の高いインクによるドットを形成すると判断した場合には、その画素の濃度の対応した値(例えば値255)が設定される。この結果値RVは、固定値でも良いが、濃レベルデータDthの関数として設定しても良い。
【0061】
他方、濃レベルデータDthが閾値Dref1以下の場合には、濃ドットをオフ、即ち形成しないと判断し、更に結果値RVに値0を代入する処理を行なう(ステップS128)。濃度の高いインクによるドットが形成されない箇所は、用紙の白地が残ることから、結果値RVを値0とするのである。
【0062】
こうして濃ドットのオン・オフを決定し、結果値RVを演算する処理(図11ステップS120)を行なった後、次に、淡ドットのオン・オフを決定するための淡ドット用データDxを求める処理を行ない(ステップS130)、これに処理済み画素からの拡散誤差ΔDuを加えて補正データDCを求める処理を行なう(ステップS135)。淡ドット用データDxは、次式によって求める。
【0063】
Dx=Dth・Z/255+Dtn・z/255
ここで、Dtnは、図13のグラフに基づいて階調データDSから求めた淡ドットデータである。また、Zは濃ドットがオンの場合の評価値、zは淡ドットがオンの場合の評価値である。Dxは淡データと濃データにそれぞれの評価値に応じた重み係数を掛けて合計したものになっている。このように、淡ドットのオン・オフを決定するに当たっては、淡ドットデータではなく、濃淡両ドットのデータを総合したDxを用いているのが本発明の大きな特徴である。ここでは上述したとおりZ=255であるから、上記式は
Dx=Dth+Dtn・z/255
となる(ステップ130)。淡ドットの評価値zは、当然濃ドット評価値と比べれば小さい。本実施例では、z=160とした。
【0064】
また、ステップS135で、拡散誤差ΔDuを加えて補正データDCを求めるのは、淡ドットについては、誤差拡散の処理を行なっているからである。誤差拡散で印刷を行なう場合、処理済みの画素について生じた濃淡の誤差を予めその画素の周りの画素に所定の重みを付けて予め配分しておく。そこで、該当する誤差分を読み出し、これを今から印刷しようとする画素に反映させるのである。淡ドットについてのオン・オフを決定した処理済みの画素PPに対して、周辺のどの画素にどの程度の重み付けで、この誤差を配分するかを、図15に例示した。オン・オフを決定した画素PPに対して、キャリッジ30の走査方向で数画素、および用紙Pの搬送方向後ろ側の隣接する数画素に対して、濃度誤差が所定の重み(1/4,1/8、1/16)を付けて配分される。
【0065】
補正データDCを求めた後、濃ドットをオフ(シアンインクC1によるドット形成)としたか否かを判断し(ステップS138)、濃ドットをオフ、すなわち形成していない場合には、濃度の低いドット、即ちライトシアンインクC2によるドット(以下、淡ドットと呼ぶ)のオン・オフを決定する処理を行なう(ステップS140)。淡ドットのオン・オフを決定する処理について、図16に示した淡ドット形成判断処理ルーチンに拠って説明する。淡ドットのオン・オフを決定する処理では、ライトシアンインクC2によるドットの形成は、この例では、誤差拡散法を適用し、誤差拡散の考え方で補正した階調データDCが淡ドット用の閾値Dref2より大きいか否かの判断を行なう(ステップS144)。この閾値Dref2は、着目した画素に濃度の低い淡インクによるドットを形成するか否かの判定値であって、単純に固定値とすることもできるが、ここでは、補正済みのデータDCに応じて可変される値として設定した。閾値Dref2と補正データDCとの関係を図17に示す。図示するように、閾値Dref2を、判断の対象である補正データDCの関数として設定することにより、階調の下限または上限近くのドット形成の遅延や、領域の階調が急変した場合の走査方向に一定の範囲で生じるドット形成の乱れ(いわゆる尾引き)などを抑制することができる。
【0066】
補正データDCが閾値Dref2より大きければ淡ドットをオンすると判断し、結果値RV(淡ドット評価値)を演算する(ステップS146)。結果値RVは、本実施例では、値122を基準値とし、補正データDCにより補正される値としたが、固定値とすることも可能である。他方、補正データDCが閾値Dref2以下と判断された場合には、淡ドットをオフにすると判断し、結果値RVに値0を算入する処理を行なう(ステップS148)。
【0067】
上述した結果値RVの決定の手法としては、様々なアプローチが考えられる。例えば、濃ドットについては濃レベルデータDthに基づいて決定し、淡ドットについては入力データDSに基づいて決定することができる。濃ドットについての結果値RVを求める関数の一例を図18の実線Jnとして、淡ドットについての結果値RVの求める関数の一例を図18の破線Btとして、各々示した。更に、後でオン・オフを決定する側(ここでは淡ドット)については、両方のデータに基づいて結果値RVを決定することも可能である。例えば、図19に示すように、淡ドットの密度Stと濃ドット密度Snを用いて、結果値RVを、Sn×α+St(αは1より大きい係数)の関数として決定しても良い。
【0068】
こうして淡ドットのオン・オフと結果値RVの演算とを行なった後(図11、ステップS140)、次に誤差計算を行なう(ステップS150)。誤差計算は、補正データDCから結果値RVを減算することにより求める。濃淡いずれのドットも形成されなかった場合には結果値RVは値0に設定されているから、誤差ERRには、補正値DCが算入される。即ち、その画素において実現されるべき濃度が全く得られなかったので、その濃度が誤差として計算されるのである。他方、濃ドットもしくは淡ドットが形成された場合には、各ドットに対応した結果値RVが代入されているから、判断の元になったデータDCとの差分が、誤差ERRとなる。
【0069】
次に、誤差拡散の処理を行なう(ステップS160)。ステップS150で得られた誤差に対して、着目している画素の周辺画素に所定の重み(図12参照)を付けて、この誤差を拡散する。以上の処理の後、次の画素に移動して、上述したステップS100以下の処理を繰り返す。
【0070】
こうして淡ドットと濃ドットによる記録が行なわれることになるが、この様子をシアンインクC1とライトシアンインクC2とについて模式的に示したのが、図20である。入力された階調データが低い領域(実施例では、階調データが0/256〜63/256の領域)では、図20(a),(b)に示すように、ライトシアンインクC2によるドットだけが形成され、かつ階調データが高くなるにつれて、所定の領域内に存在する淡ドットの割合は増加して行く。
【0071】
階調データが所定値を越える領域(実施例では、64/256以上の領域)では、図20(c)に示すように、淡ドットの割合も増加するが濃ドットの記録も開始され、徐々に増加する。更に、階調データが高い領域(実施例では95/256以上の領域)では、図20(d),(e)に示すように、濃ドットは増加し、淡ドットの割合は減少して行く。
【0072】
階調データが更に高い領域(実施例では191/256以上の領域)となると、淡ドットの形成は行なわれなくなり、図20(f),(g)に示すように、濃ドットだけが形成される。階調データが最大となれば、図20(h)に示すように、濃ドットによる記録率が100パーセントとなり、用紙Pの全面が濃度の高いインク(シアンインクC1)により印刷されることになる。
【0073】
以上説明した本実施例によれば、先に濃度の高いインクによるドットを形成するか否かについて決定し、濃ドットのオン・オフに応じて結果値RVを決定する。その後、濃ドットを形成しないと判断した時のみ、濃度の低いインクによるドットの形成を行なうか否かを決定し、淡ドットのオン・オフに応じて結果値RVを決定する。しかも、濃ドットについての判断は組織的ディザ法により行ない、淡ドットについての判断は誤差拡散法によっている。この結果、印刷される画像の濃度は、淡ドットのオン・オフにより誤差が最少になるよう調整される。また、濃ドットについての判断を先に行なっているので、図13のテーブルにおける入力データと濃レベルデータDthとの関係を適切に設定することにより、濃ドットの分布が見た目に違和感がなく、階調表現に優れた分布となるよう設定することが容易である。
【0074】
更に、入力データの濃度が所定値範囲のときに淡ドットをオン、この範囲により濃度が高いときに濃ドットをオン、というように単純に濃淡ドットのオン・オフを決める場合には、入力データがこの範囲の上限または下限値の近傍にあると疑似輪郭を発生することがあるが、本実施例の手法では、こうした疑似輪郭の発生といった問題は一切生じない。また、本実施例では、濃ドットの淡ドットのオン・オフを順次決定して行くので、濃ドットと淡ドットの混在の割合を制御しやすいという利点も得られる。
【0075】
なお、本実施例では、ライトシアンインクC2とシアンインクC1の記録率を図13に示したものとしたことにより、次の特徴が得られた。
【0076】
(1)入力される階調データが低い領域(実施例では0/256から63/256)では、ライトシアンインクC2のみが記録される。その記録率は、階調データの大きさに応じて単調増加する。
【0077】
(2)入力される階調データの増加に応じて大きな値となるライトシアンインクC2の記録率が最大値(実施例では58パーセント)となるよりも以前から、階調データの増加に応じて、濃度の高いインクであるシアンインクC1によるドットの形成が開始され、記録率が徐々に増加する。実施例では、入力される階調データが63/256を越えると、シアンインクC1によるドットが形成されることになる。なお、ライトシアンインクC2による記録率が最大となる階調データの値は、実施例では95/256である。
【0078】
(3)ライトシアンインクC2の記録率が最大値となる値より階調データが大きくなると、ライトシアンインクC2の記録率は急速に低減する。一方、シアンインクC1の記録率は、階調データの増大にほぼ比例して増加する。実施例では、階調データが127/256を越えるとライトシアンインクC2の記録率は急減し、階調データが191/256を越えると、その記録率はほぼ0となる。
【0079】
(4)ライトシアンインクC2の記録率がほぼ0となる値より階調データが大きな領域では、シアンインクC1の記録率は、階調データの増加に応じて最大値100パーセントまで順次増加するが、それ以前の領域と比べると、階調データの増加に対する記録率の増加の割合は、やや低くなっている。
【0080】
したがって、本実施例の濃淡インクを用いたプリンタ20では、濃度の低いインク(図13ではライトシアンインクC2)による淡ドットの記録率が最大となる階調データ以下の領域から濃度の高いインク(図13ではシアンインクC1)による濃ドットの形成を開始しているので、淡ドットによる記録から濃ドットによる記録へのつなぎ目における混色が極めてスムースであり、印刷の品質が極めて高いという特徴を有する。
【0081】
更に、濃インクによるドットの形成を淡インクの記録率が最大となる階調データ以下の領域から開始しているので、淡インクについては、その記録率の最大を60パーセント程度にすることができる。この結果、階調が低い領域で淡インクによるベタ塗りの状態が生じることがなく、この近傍の階調で疑似輪郭が生じると言ったことがない。また、濃インクによるドットの分布の自由度が高く、見た目に違和感のない綺麗な分布とすることができる。即ち、濃度の高いインクと低いインクとが混じり始める階調近傍の表現が極めて自然なものとなっている。
【0082】
また、淡インクの記録率が最大となる階調より大きな領域では、淡インクの記録率を急速に低下している。従って、階調が大きくなるにつれて、淡インクのドットは濃インクのドットに置き換えられることになり、同一の階調を表現するのに必要なインクのドット数、即ち吐出量は低減され、全体としてインクの使用量を低減することができる。淡インクの記録率を急速に低下する結果、淡インクの記録率は、濃インクの記録率が100パーセント(入力データ255)に達するかなり以前でほぼ0となっている。したがって、画像の階調が濃い領域を印刷する際、無駄に淡インクを使用することがないばかりか、全体としての吐出インク量を低減することができるので、用紙に対する単位面積当たりのインク量の制限という面からも好ましい。
【0083】
以上単位面積当たりの濃度が異なる2種類以上のドットを、濃度の異なる2種類のインクによりドットを形成することで実現したプリンタの構成例について説明したが、濃度の異なる2種類以上のインクを用いた態様は、上記実施例に限定されるものではない。例えば、濃度の異なる三種類以上のインクを用いることも可能である。この場合は、インクの染料濃度の比を、等比級数的(1:n:2×n・・)としてもよいし、累乗的な関係(1:n2 :n4 ・・)としてもよい。なお、ここでn=2,3・・・(2以上の正の整数)である。また、本実施例では、濃ドットの判断について組織的ディザ法を用い、淡ドットの判断については誤差拡散の考え方を適用したが、これらの手法に限定するものではなく、公知の種々の2値化手法を、濃ドットおよび淡ドットの判断に適用することができる。更に、本実施例では、濃ドットの判断を先行したが、淡ドットの判断を先に行なう構成とすることも可能である。
【0084】
また、本実施例では、シアンとマゼンタについてのみ濃度の異なる2種類のインクを用意したが、イエロやブラックについても濃度の異なるインクを組み合わせて用いることも差し支えない。インクは、CMYKの組合せに限定されるものではなく、他の組合せに適用しても差し支えないし、金や銀等の特色について濃度の異なる2種類以上のインクを用いることも可能である。
【0085】
次に、他の構成例について簡単に説明する。上記実施例では、濃度の高いインクと低いインクとを用意し、濃度の高いインクによるドット(濃ドット)と低いインクによるドット(淡ドット)とを用紙P上に形成するものとしたが、インク濃度は1種類とし、ドット径の異なる2種類以上のドットを形成することによっても同様の効果を得ることができる。用紙P上に形成されるドットの大きさは、インク吐出用のノズルの直径やピエゾ素子PEに印可する電圧パルスの強さ(電圧及び継続時間)等を調整することにより制御することができる。例えば、上記実施例のシアンインクC1用のノズル62を大径ドット用のノズルとして形成し、ライトシアンインクC2用のノズル63を小径ドット用のノズルとして形成すれば、上記実施例の制御を、濃ドット→大径ドット、淡ドット→小径ドットと置き換えることにより、そのまま実施可能である。この場合、入力データの階調に応じて、まず大径のドットのオン・オフをディザ法等により決定し、その後、小径のドットのオン・オフを誤差拡散の手法を利用しつつ決定する。大径のドットと小径のドットが形成される様子を、図21に例示した。
【0086】
この実施例によれば、階調表現の滑らかさ、大径のドットと小径のドットの混在の割合の制御の容易さなどについては、第1実施例とほぼ同様の効果を奏する上、用意するインクが各色毎に1種類で済むという利点がある。また、ドット径を変えるドット径変調であるため、上記実施例の淡ドットに相当する小径ドットでは、用紙Pに吐出されるインク量が少なくなり、用紙Pにおける許容可能なインク量であるインクデューティの点からも有利である。
【0087】
なお、大径のドットと小径のドットが同じ場所に印字されることはないから、ノズルは一種類とし、ピエゾ素子PEに印可する電圧パルスの強さを可変することで、大径ドットと小径ドットを打ち分ける構成とすることも可能である。この場合には、ヘッド部28におけるノズル列の数を減らすことができ、しかも同一のノズルにより大小のドットを形成するので、大径ドットと小径ドットの印字位置のずれを生じることがない。ドット径変調についても、大小2段階に限定されるものではなく、3種類以上の径のドットによる印刷も可能である。また、この実施例では、第1実施例同様、大径ドットの判断について組織的ディザ法を用い、小径ドットの判断については誤差拡散の考え方を適用することもできるが、各ドットのオン・オフの判断は、これらの手法に限定されるものではなく、公知の種々の2値化手法を、大径ドットおよび小径ドットの判断に適用することができる。更に、本実施例では、大径ドットの判断を先行しても良いし、小径ドットの判断を先に行なう構成としても良い。
【0088】
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例の印刷装置は、上述した構成例と同一のハードウェア構成を備え、黒インクK,シアンインクC1,ライトシアンインクC2,マゼンタインクM1,ライトシアンインクM2,イエロインクYの計6色によって画像を記録することが可能である。この実施例では、図22に示した画像記録処理ルーチンが起動されると、まず着目画素の階調データを入力する処理を行ない(ステップS200)、続いてまず黒インクについての2値化の処理を実行する(ステップS210)。この黒インクについての2値化の処理は、図22に示したが、その詳細は後述する。
【0089】
黒インクについての2値化の処理を行なった後、濃度の異なる2種類のシアンインクC1,C2についての2値化の処理を行ない(ステップS220)、同様に濃度の異なる2種類のマゼンタインクM1,M2についての2値化の処理を行ない(ステップS230)、更にイエロインクYについての2値化の処理を行なう(ステップS240)。即ち、着目している画素について、全部で6種類のインク(K,C1,C2,M1,M2,Y)の2値化の処理を順次行なうのである。
【0090】
黒インクについての2値化の処理は、図23に示したように、組織的ディザ法により行なわれる。組織的ディザ法については、第1実施例で説明した。黒インクについては、同様に64×64程度の大域的マトリックス(ブルーノイズマトリックス)を利用し、分散性の良い2値化を行なっている。2値化、即ち黒インクによるドットのオン・オフを決定した後(ステップS212)、黒ドットがオンであるか否かを判断し(ステップS214)、オンの場合には、フラグFCおよびFMに値1を設定する処理を行なう(ステップS216)。他方、黒インクのドットを形成しないと判断した場合には、これらのフラグに値0を設定する処理を行なう(ステップS218)。これらのフラグFCおよびFMは、黒インクによるドットのオン・オフを、シアンインクおよびマゼンタインクについての2値化の処理(ステップS220,230)において参照するためのものである。
【0091】
次に、図24によって、シアンまたはマゼンタインクのハーフトーン処理(ステップS220,230)について説明する。なお、この処理は、第1実施例で説明したハーフトーン処理(図11)と同様の処理を含むので、図11の処理と同じもしくは類似のステップについては、下2桁の番号を同じにしてある。また、図24は、シアンインクについての処理を基本として示し、マゼンタインクの場合の処理については(括弧)内に示した。本ルーチンが開始されると、まずフラグFCが値1であるか否かの判断を行なう(ステップS313)。マゼンタインクについての処理ルーチンであれば、フラグFMが値1であるか否かの判断を行なうことになる。フラグFC(FM)が値1なければ、黒インクの2値化処理(図23)において黒インクによるドットはオンになっていないと判断でき、以下、第1実施例同様、濃ドット(C1)のオン・オフの決定、結果値RVC(RVM)を演算する処理(ステップS320)、および着目している画素の近傍の処理済みの画素からの拡散誤差ΔDuを加えた補正データDCC(マゼンタの場合はDCM)を作成する処理を行なう(ステップS325)。
【0092】
他方、黒インクについての2値化の処理において黒インクのドットをオンとした場合(FCおよびFM=1)には、シアンインクについての濃ドットを、入力した階調データの如何に関わらずオンにしたものとみなし、結果値RVC,RVMを演算する処理を行なう(ステップS315)。即ち、黒インクKによるドットが打たれた場合、黒インクには減色混合の考え方によればシアンやマゼンタが既に存在するとみなして差し支えなく、黒インクに重ねてシアンやマゼンタのインクによるドットを形成するには及ばないから、シアンインクC1及びマゼンタインクM1によるドットをオンにしたものとみなして、結果値RVC(RVM)に所定値(rvckおよびrvmk)を設定するのである。その後、ステップS325同様、着目している画素の近傍の処理済みの画素からの拡散誤差ΔDuを加えた補正データDCC(マゼンタの場合はDCM)を作成する処理を行なう(ステップS318)。
【0093】
黒インクKによるドットが形成されていなかった場合(FC,FM=0の場合)には、上記の補正データDCC(DCM)の作成を行なった後、濃ドットをオン(シアンインクC1またはマゼンタインクM1によるドットを形成)としたか否かを判断し(ステップS330)、濃ドットを形成していない場合には、濃度の低いドット、即ちライトシアンインクC2(またはライトマゼンタインクM2)によるドット(以下、淡ドットと呼ぶ)のオン・オフを決定する処理を行なう(ステップS340)。淡ドットのオン・オフを決定する処理については、第1実施例(図15)と同様なので図示は省略する。淡ドットのオン・オフを決定する処理では、ライトシアンインクC2(マゼンタインクM2)によるドットの形成は、実施例では、誤差拡散法を適用し、誤差拡散の考え方で補正した階調データDCC(DCM)が淡ドット用の閾値Dref2より大きいか否かの判断を行なう。この閾値Dref2は、着目した画素に濃度の低い淡インクによるドットを形成するか否かの判定値である。
【0094】
補正データDCC(DCM)が閾値Dref2より大きければ淡ドットをオンすると判断し、結果値RVC,RVM(淡ドット評価値)を演算する。他方、補正データDCが閾値Dref2以下と判断された場合には、淡ドットをオフにすると判断し、結果値RVC(RVM)に値0を算入する処理を行なう。
【0095】
こうして淡ドットのオン・オフと結果値RVC(RVM)の演算とを行なった後(ステップS340)、次に誤差計算を行なう(ステップS350)。誤差計算は、補正データDCC(DCM)から結果値RVC(RVM)を減算することにより求める。濃淡いずれのドットも形成されなかった場合には結果値RVC(RVM)は値0に設定されているから、誤差ERRには、補正値DCC(DCM)が算入される。即ち、その画素において実現されるべき濃度が全く得られなかったので、その濃度が誤差として計算されるのである。他方、濃ドットもしくは淡ドットが形成された場合には、各ドットに対応した結果値RVが代入されているから、判断の元になったデータDCC(DCM)との差分が、誤差ERRとなる。また、本実施例では、黒インクによるドットが形成された場合には、シアン及びマゼンタの濃ドットがオンされた(形成された)とみなして、結果値RVC(RVM)を求め、補正データを作成した上で、直接上記ステップS350以下の処理を行なっているから、着目画素に対応して黒インクによるドットが形成された場合には、シアン及びマゼンタインクのドットは形成されないが、結果値RVC(RVM)には、所定値rvck(rvmk)が設定され、これにより誤差計算(ステップS350)が行なわれることになる。
【0096】
以上の誤差計算の処理の後、誤差拡散の処理を行なう(ステップS360)。ステップS350で得られた誤差に対して、着目している画素の周辺画素に所定の重み(第1実施例図12参照)を付けて、この誤差を拡散する。以上の処理の後、次の画素に移動して、上述した処理を繰り返す。なお、シアンインク及びマゼンタインクの2値化の処理(ステップS220,230)に引き続いて行なわれるイエロインクの2値化の処理(ステップS240)では、シアンインクやマゼンタインクのような処理は行なわず、組織的ディザ法による2値化の処理を行なっている。但し、黒インクについて使用した閾値マトリックスを同じマトリックスを使用し、黒インクによるドットが形成される場合には、イエロインクのドットは形成しないようにしている。
【0097】
以上説明した本実施例によれば、多色の画像を黒インクを含む複数種類のインクにより記録する場合、黒インクによるドットが形成されると、シアン及びマゼンタのインクによるドットが形成されたものとみなし、着目している画素に対応してシアン及びマゼンタのドットを形成することがない。またイエロインクによるドットも形成しない。この結果、無駄なインクを吐出することがなく、インクの使用量を低減できるだけでなく、用紙に対するインク吐出量の制限(インクデューティ)の面からも好ましい。更に、シアンインク,マゼンタインクについては、黒インクによるドットが形成された場合には、あたかもシアンインク,マゼンタインクによるドットが形成されたものとみなして、結果値RVC,RVMの計算を行なっているので、黒インクによるドットがオンになった場合には、そのドットの周辺には、シアン,マゼンタのドットは形成されにくくなる。この結果、例えば各色インクがまばらに記録されるような領域で、黒インクのドットの間近にシアンインクやマゼンタインクはもとより、ライトシアンインク,ライトマゼンタインクのドットも記録されにくくなり、画像の粒状感は著しく低減される。
【0098】
なお、上記の実施例では、黒インクとシアンインク,マゼンタインクの関係について説明したが、有彩色のインクであれぱシアン,マゼンタインクに限るものではなく、イエロインクに適用することも可能である。また、ヘッドから吐出されるインクがCYM以外の組み合わせによっている場合にも適用することができる。更に、無彩色のインクとしては黒インクに以外に、灰色のインクなど、濃度の低いインクを用いることもできる。こうした濃度の低い無彩色インクを用いたり、用紙のにじみの状態が異なる場合には、無彩色のインクによるドットが形成された場合の結果値RVを、変更することが妥当である。
【0099】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。この実施例では、第1実施例と同様、黒インクのドットを形成するか否かの判断結果をシアンおよびマゼンタインクのドットの形成に反映させているが、第1実施例とは反映の手法が異なっている。第2実施例でのハーフトーン処理を、図25ないし図27に示した。なお、ここでは、黒インクのドットの形成の判断とシアンインクのドットの形成の判断のみを示したが、同様のマゼンタインクについても処理が行なわれている。
【0100】
図25に示した処理が開始されると、まず着目する画素の位置を初期化する処理が行なわれる(ステップS400)。即ち水平方向位置を示す変数xおよび垂直方向位置を示す変数yに、それぞれ値0を代入するのである。次にこの画素の無彩色の濃度K(x,y)に基づきね黒インクを2値化する処理を行ない、結果値KRSTを求める処理を行なう(ステップS410)。ここで黒インクの2値化は、前述した通り、組織的ディザ法により行なった。組織的ディザ法の処理の概要を図26に示した。即ち、予め用意した分散型ディザの閾値マトリックスから読み出された閾値Kdthと無彩色の濃度K(x,y)とを比較し(ステップS411)、その結果により閾値より大きければ黒インクによるドットを形成するとしてKdot(x,y)をオンとし(ステップS412)、それ以外ではオフとする(ステップS413)。また、結果値は、黒インクによるドットが形成された場合には値255が、またドットか形成されなかった場合には値0が、それぞれ設定される(ステップS415,S416)。
【0101】
次に、黒インクについての2値化の処理を受けて、シアンについての修正データCxを求める処理を行なう(ステップS420)。修正データCxは、着目している画素のシアン成分の階調データC(x,y)に、黒インクの階調データK(x,y)を加えることにより求める。シアン成分についての修正データCxを求めるのに、黒インクの階調データを加えるのは、黒インクによるドットが形成されやすい場所(K(x,y)の値が大きい場所)には、シアンインクのドットが打たれにくくするようにするためである。なお、修正データCxを求めるのに、
Cx=C(x,y)+K(x,y)・KCW
のように、重み付け係数KCWを用いても良い。
【0102】
上記実施例は、重み付け係数KCWは、値1としたものと等価であるが、値1より小さい値、あるいは大きな値としてもよい。小さい値とすれば、シアンインクのドットは平均的には形成されやすくなり、値1より大きな値とすれば、シアンインクのドットは平均的には形成されにくくなる。
【0103】
シアン成分に関する階調データを補正した後(ステップS420)、次にシアンについての3値化処理を行なう(ステップS430)。この処理の詳細は図26に示したが、単純化して言えば、シアン成分についての拡散誤差補正済みデータCcrに基づいて、シアンインクC1,ライトシアンインクC2によるドット形成のオンオフを判断するものである。この処理については後述するものとし、図25により、全体の処理を先に説明する。
【0104】
シアン成分についての3値化処理を行なった後、シアン成分について生じた誤差を周辺の誤差に拡散する処理を行なう(ステップS450)。3値化処理により、濃度の高いシアンインクC1によるドットを形成するか,濃度の低いライトシアンインクC2によるドットを形成するかあるいはいずれのドットも形成されないかのいずれかの結果が得られるが、いずれの場合も、もとの画素の階調データと一致するとは限らず、通常は幾分かの誤差を生じる。そこで、これを第1実施例図12に示した重み付けを施して、周辺の画素に配分するのである。
【0105】
その後、主走査方向(ヘッド搬送方向)の位置を示す変数xを値1だけインクリメントし(ステップS460)、主走査方向の位置が端(Hmax)を越えたかを判断する(ステップS470)。主走査方向端を越えていなければ、上述したステップS410から処理を繰り返す。一方、処理が主走査方向の端を越えていれば、変数xを値0に戻し、副走査方向(用紙搬送方向)の位置を示す変数yを値1だけインクリメントする処理を行なう(ステップS480)。その後、副走査方向の位置が用紙端(Vmax)を越えているか判断し(ステップS490)、越えていなければ、上述したステップS410に戻って、処理を繰り返す。
【0106】
次に、図27に拠って、シアン成分についての3値化処理について説明する。この処理が開始されると、まずシアン成分について図25ステップS420で求めた修正データCxに、同じくステップS450で処理した拡散誤差Cdferを加えて、補正データCcrを求める処理を行なう(ステップS431)。即ち、着目している画素の階調データC(x,y)に、対応する黒インクの階調データと結果値との誤差を加えて求めた修正データに、更に周辺の画素から拡散された誤差を加えて、その画素で実現すべき濃度を求めるのである。次に、その画素について、黒インクのドットを形成したか否かの判断を行なう。Kdot(x,y)がオフ、即ち黒インクのドットを形成していない場合には、次に上記の補正データCcrが第1の閾値EdTh1より大きいか否かの判断を行なう(ステップS433)。補正データCcrが、第1の閾値EdTh1より大きければ、その画素で実現すべき濃度は高く、その点に濃ドットを形成するとしてCdot(x,y)について、シアンインクC1のドットをオンとする処理を行なう(ステップS434)。また、濃ドットをオンとしたことから結果値CRSTには値255を入れ(ステップS435)、補正データCcrと結果値CRSTとの偏差を、濃度誤差Cerrとして求める処理を行なう(ステップS440)。この濃度誤差Cerrは、上述した誤差拡散処理(図25、ステップS450)により、周辺の画素に拡散される量子化誤差である。
【0107】
ステップS433において、補正データCcrが第1の閾値EdTh1より大きくないと判断され場合には、第1の閾値EdTh1により小さな第2の閾値EdTh2より大きいか否かの判断を行なう(ステップS441)。補正データCcrが、第1の閾値EdTh1以下で第2の閾値EdTh2より大きいと判断された場合には、その画素で実現すべき濃度は淡ドットをオンにすべき程度の濃度であると判断する。即ち、その点に淡ドットを形成するとしてCdot(x,y)について、ライトシアンインクC2のドットをオンとする処理を行なう(ステップS442)。また、淡ドットをオンとしたことから結果値CRSTには値128を設定する(ステップS443)。更に、補正データCcrが、第2の閾値EdTh2以下であると判断された場合には、その点には濃淡を問わずドットを形成しないと判断し、Cdot(x,y)について、濃淡のシアンインクC1,C2のドットを共にオフとする処理を行なう(ステップS444)。また、濃淡のドットをオフとしたことから結果値CRSTには値0を設定する(ステップS445)。
【0108】
以上で、着目している画素に黒インクによりドットが形成されていない場合(ステップS432)、シアン成分について3値化し、濃ドットC1,淡ドットC2のいずれを形成するかあるいはいずれも形成しないかの処理が行なわれる。これに対して、黒インクのドットが形成されている場合には、ステップS446に処理は移行し、シアンインクC1,ライトシアンインクC2については、ドットを形成しないものとし(ステップS446)、他方、結果値CRSTには、値255を設定する処理を行なう(ステップS447)。即ち、色インクによりドットが形成されていることから、シアン成分のドットは形成せず、しかしあたかもシアンの濃ドットが形成されたものとしみなして結果値CRSTを設定するのである。
【0109】
上述した濃淡ドットの形成の判断(ステップS434,S442,S444およびS446)および結果値CRSTの設定(ステップS435,S443,S445およびS447)を行なった後、上述した濃度誤差の演算処理を行なう(ステップS440)。
【0110】
以上説明した第2実施例によれば、黒インクのドットの形成の有無により、シアンインクの濃淡ドットの形成に影響を与えることができる。即ち、黒インクによるドットが形成された場合には、その周辺にシアンインクのドットが形成され難くなる。このため、黒インクとシアンインク(あるいはマゼンタインク)について、それぞれ単独の分散性が高い場合でも、両方のドットが隣接して形成されてしまい、結果的に粒状性が視認されると言った不具合を生じることがない。しかも、この実施例では、シアンインク,マゼンタインクについては濃淡のインクを記録することができるから、仮に形成されるとすれば淡ドットが形成されやすく、画像の品質は極めて高いものとなる。
【0111】
ここで、上記実施例において、ステップS447において、シアンインクのドットを形成しないにも関わらず、シアンインクについての結果値CRSTに値255を代入していることの意味について、説明する。本実施例では、図25に示すステップS420でシアンインクについての修正データCxを求めるのに、シアンインクについての階調データC(x,y)に黒インクの階調データK(x,y)を加えている。したがって、図27に示したステップS431で求めた補正データCcrは、
Ccr=Cx+Cdfer
=C(x,y)+K(x,y)+Cdfer
となる。
【0112】
ステップS447において、黒インクのドットを形成した場合に、シアンインクについての結果値CRSTに値255を代入し、これを補正データCcrから減算して求める濃度誤差Cerrは、
Cerr=Ccr−CRST
=C(x,y)+K(x,y)−CRST+Cdfer
となる。ここで、黒インクのドットを形成した場合に、シアンインクについてのドットの形成を何ら判断することなく、シアンインクについての結果値CRSTに値255を設定していることから、この場合の結果値CRSTは、結局、黒インクのドットを形成した場合の結果値を反映している。即ち、
K(x,y)−CRST=Ker
とみなすことができる。この結果、黒インクのドットを形成した場合には、その誤差分がステップS450で周りのシアンインクのドットの形成に反映されることになる。なお、黒インクのドットが形成されない場合には、黒インクについての結果値KRSTは、値0に設定されるのが通常なので、黒インクの階調データK(x,y)を加える処理(図25ステップS420)は、結局黒インクについての濃度誤差を加える処理に相当し、黒インクのドットを形成した場合と同様、黒インクのドットのオン・オフの影響を、周辺のシアンインクのドットのオン・オフに反映させていることになる。
【0113】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。この実施例は、第2実施例と同様、黒インクのドットのオンオフを濃淡シアンシンクのドットの形成に反映させるものであり、印刷装置のハードウェア構成およびその他の処理は、第2実施例と類似している。第2実施例の図25に対応させて図28を示す。即ち、第3実施例は、第2実施例のハーフトーン処理(ステップS410処理)まで、およびシアンについての誤差拡散処理(ステップS450の処理)以下は、同一である。図28に示したように、第5実施例では、黒インクについての2値化の処理(ステップS510)の後、修正データCxを求める処理を行なうが、この処理の内容が第4実施例とは異なっている。即ち、第3実施例では、修正データCxを、シアンインクについての階調データC(x,y)に、黒インクの階調データから黒インクのドットについての結果値KRSTを減算した値に、所定の重み付け係数KCWを掛けたものを加えている。これを数式で表現すると、
Cx=C(x,y)+{K(x,y)−KRST}・KCW
である。
【0114】
その後、シアンインクについての3値化処理を行なう(ステップS530)。この3値化処理の詳細を図29に示した。第3実施例の3値化処理では、第2実施例の3値化処理と比べて、黒インクのドットがオフであるか否かの判断(図27ステップS432)と、その判断結果が「NO」であった場合に実行されるシアンのドットC1,C2をオフにする処理(ステップS446)および結果値CRSTを値255に設定する処理(ステップS447)とが、存在しない点以外は、全く同一である。
【0115】
したがって、この実施例によれば、黒インクのドットをオフにした場合には常にシアンインクのドットC1,C2をオフにするとはしていないので、黒インクのドットを形成すると判断した場合でも、シアンインクのドットが形成される可能性が存在する。但し、黒インクのドットを形成した場合には、黒インクの階調データK(x,y)から結果値KRSTを減算した結果(正確には、これに重み付け係数KCWを掛けた値)を加えているので、黒インクのドットが形成されている場合には(KRST=255)、シアンインクの修正データCxは、シアンインクの階調データC(x,y)より小さな値となることから、シアンインクのドットは形成されにくくなる。
【0116】
即ち、シアン成分についての修正データCxを求めるのに、黒インクの階調データを減算しているのは、黒インクによるドットが形成された場合(結果値KRST=255)、黒インクのドットの近傍にシアンインクのドットが打たれにくくするようにするためである。第3実施例では、黒インクの階調データと結果値との差分を加えていることから、所定領域でみればシアン成分に加えている黒インクによる補正分は、ほとんど0であるが、局所的には黒ドットの近傍にシアンインクのドットが生成されにくくするよう作用していることが分かる。なお、実施例では、重み付け係数KCWは、値1としたが、値1より小さい値、あるいは大きな値としてもよい。小さい値とすれば、シアンインクのドットは平均的には形成されやすくなり、値1より大きな値とすれば、シアンインクのドットは平均的には形成されにくくなることは、第2実施例と同様である。
【0117】
また、既述したように、黒インクのドットの影響は、重み付け係数KCWにより自由に調整でき、しかも重み付け係数を値1に近づければ、局所的には影響を与えても平均的には、シアンインクの濃度には何の影響も与えないようにすることができる。なお、上記実施例では、シアンインクを3値化したが、濃度の異なる3種類の以上のインクを吐出可能なヘッドを用意すれば、4値化以上の階調を表現することかも容易である。また、濃度の低いインクを重ね打ちすることで、多階調を表現する構成と組み合わせて、2値化以上を実現しても良い。また、シアンインクに限るものではなく、マゼンタインクその他、プリンタが採用したインクについて適用することができる。
【0118】
以上説明した第2,第3実施例は、黒インクのドットのオン・オフの影響をシアンインクC1,C2のドットの形成の判断に反映させたが、第3実施例の手法は、シアンインクC1とライトシアンインクC2(同様にマゼンタインクM1,M2)の形成の判断に適用することができる。この場合のハーフトーン処理の一例を図30に示した。図30において、ステップS605ないし650を除く他の処理は、第2実施例と同一なので、その下2桁の符号を同一として示した。これらの処理の詳細については説明を省略する。図30は、シアンインクについてのハーフトーン処理を示したが、他の色相の濃淡インクにも適用可能なことはもちろんである。
【0119】
図30に示したハーフトーン処理が開始されると、初期化の処理(ステップS600)の後、シアンインクの階調データC(x,y)に基づいて、シアンインクC1とライトシアンインクC2がそれぞれ実現すべき記録濃度、即ちドット記録率C1(x,y)、C2(x,y)を決定する処理を行なう(ステップS605)。両インクにより実現すべきドット記録率(記録濃度)は、例えば第1実施例で説明した図13に示した関係を用いて定めることができる。次に、こうした求めたシアンインクC1についての記録濃度C1(x,y)に基づいてシアンインクC1を2値化し、結果値CRSTを求める処理を行なう(ステップS610)。シアンインクC1について2値化を行ない、結果値を求める処理は、第1実施例にならっても良いし、第2実施例にならっても良い。
【0120】
こうして求めた結果値CRSTを用いて、次に、シアンインクについての修正データCxを求める処理を行なう(ステップS620)。修正データCxは、ライトシアンインクC2についての記録濃度C2(x,y)に、シアンインクC1の記録濃度C1(x,y)からシアンインクC1のドットについての結果値CRSTを減算した値に、所定の重み付け係数WCを掛けたものを加えている。これを数式で表現すると、
Cx=C2(x,y)+{C1(x,y)−CRST}・WC
である。
【0121】
こうして修正データCxを求めた後、ライトシアンインクC2についての2値化の処理(ステップS630)を行なう。2値化の処理は、第3実施例にならっても良い。2値化の処理の後、ライトシアンインクC2についての誤差拡散処理を行ない(ステップS650)、シアンインクC1,ライトシアンインクC2のオン・オフにより生じた誤差を、周辺の画素に反映させる。以上の処理を画面の全体(0<x≦Hmax、0<y≦Vmax)に適用する(ステップS660ないしS690)。
【0122】
以上説明した第4実施例によれば、濃度の高いインクC1と濃度の低いインクC2とを、一方のオン・オフの影響を他方に反映して全体として適正なハーフトーン処理を実現することができる。この場合、第1実施例のように、濃度が高い側のインクのドットをオンとした場合には濃度が低い側のインクのドットを必ずオフにするという処理は行なっていないので、濃度の高い側のインクのドットが形成されると濃度が低い側のインクのドットは形成させにくくはなるが、必要に応じて形成されることもあり、ハーフトーン処理を一層精密に行なうことが可能となっている。例えば、濃淡両ドットにより実現すべき濃度が100パーセントを超えるような場合、第4実施例の手法は、適正な結果を与える。こうした利点は、例えば紙質により、濃淡両ドットにより実現する濃度を可変する様な場合に極めて大きなメリットとなる。また、同一濃度のインクを同じ場所に2度吐出して、一度しか吐出しない場合との間で濃度差を作り出しているような印刷装置では、インクの吐出回数により単位面積当たりの濃度が異なる2種類以上のドットを結果的に形成することになるが、第4実施例の構成で、シアンインクC1とライトシアンインクC2とが同じものであるとして、処理を行なえばよいのである。このように、第4実施例の構成は、ハードウェア構成やインク濃度の相違を越えて適用することができる極めて汎用性の高い手法である。
【0123】
なお、第4実施例において、修正データCxを求める処理(S620)を、
Cx=C2(x,y)+C1(x,y)−CRST・WC
とすれば、C2(x,y)+C1(x,y)は、シアンインク全体が実現すべき濃度に相当するから、入力した階調データDSそのものと見なせるから、修正データCxは、
Cx=DS(x,y)−CRST・WC
として求めることができる。この場合には、ステップS605で求めたように、濃度の高いインクと低いインク両方の記録濃度を予め決定するのではなく、濃度が高い側のインクの記録濃度だけを決定すれば良いことになる。但しこの手法では、重み付け係数WCが値1以外の時には、重み付け係数WCの影響は、結果値CRSTにしか及ばない。
【0124】
上記いくつかの実施例では、ドットの形成を制御するプログラムは、プリンタ20側ではなくコンピュータ90のプリンタドライバ96側に用意したが、プリンタ20内に用意することも可能である。例えば、コンピュータ90からは、ポストスクリプトなどの言語により印刷する画像情報が送られてくる場合には、プリンタ20側にハーフトーンモジュール99などを持つことになる。また、これらの機能を実現するソフトウェアプログラムは、本実施例では、コンピュータ90内のハードディスク等に記憶されており、コンピュータ90が起動する際にプリンタドライバの形態でオペレーティングシステムに組み込まれるが、フロッピディスクやCD−ROM等の携帯型記憶媒体(可搬型記憶媒体)に格納され、携帯型記憶媒体からコンピュータシステムのメインメモリまたは外部記憶装置に転送されるものとすることも可能である。また、コンピュータ90からプリンタ20の内部に転送して利用する形態とすることも可能である。なお、通信回線を介して、これらのソフトウェアプログラムを提供する装置を設け、上記ハーフトーンモジュールの処理内容を、通信回線を介して、このコンピュータやプリンタ20に転送して利用する形態とすることもできる。
【0125】
これらの構成を実現するには、コンピュータ90は、次の構成をとればよい。図31は、コンピュータ90の内部構成を示すブロック図である。図示するように、このコンピュータ90は、プログラムに従って画像処理に関わる動作を制御するための各種演算処理を実行するCPU81を中心に、バス80により相互に接続された次の各部を備える。ROM82は、CPU81で各種演算処理を実行するのに必要なプログラムやデータを予め格納しており、RAM83は、同じくCPU81で各種演算処理を実行するのに必要な各種プログラムやデータが一時的に読み書きされるメモリである。入力インターフェイス84は、スキャナ12やキーボード14からの信号の入力を司り、出力インタフェース85は、プリンタ20へのデータの出力を司る。CRTC86は、カラー表示可能なCRT21への信号出力を制御し、ディスクコントローラ(DDC)87は、ハードディスク16やフレキシブルドライブ15あるいは図示しないCD−ROMドライブとの間のデータの授受を制御する。ハードディスク16には、RAM83にロードされて実行される各種プログラムやデバイスドライバの形式で提供される各種プログラムなどが記憶されている。このほか、バス80には、シリアル入出力インタフェース(SIO)88が接続されている。このSIO88は、モデム18に接続されており、モデム48を介して、公衆電話回線PNTに接続されている。画像処理装置30は、このSIO88およびモデム18を介して、外部のネットワークに接続されており、特定のサーバーSVに接続することにより、画像処理に必要なプログラムをハードディスク16にダウンロードすることも可能である。また、必要なプログラムをフレキシブルディスクFDやCD−ROMによりロードし、コンピュータ90に実行させることも可能である。
【0126】
したがって、上述した実施例で実行された各種プログラムは、記録媒体としてのフレキシブルディスクやCD−ROMに記録しておくことができる。コンピュータ90は、これをディスクドライブ15などにより読み取ることにより、上述した画像記録方法を実現することができる。
【0127】
また、上述した実施例では、濃淡いずれのインクの吐出も、ピエゾ素子PEを用い、ピエゾ素子PEに所定時間幅の電圧を印可することにより行なっているが、この他のインク吐出方式を採用することも容易である。実用化されているインク吐出方式としては、大まかに分けると、連続したインク噴流からインク粒子を分離して吐出する方式と、上述した実施例でも採用された方式であるオンデマンド方式に大別される。前者には、荷電変調によりインクの噴流から液滴を分裂させる荷電変調方式、インクの噴流から大径粒子が分裂する際に生じる微少なサテライト粒子を印字に利用するマイクロドット方式などが知られている。これらの方式も、複数種類の濃度のインクを利用した本発明の印刷装置に適用可能である。
【0128】
また、オンデマンド方式は、ドット単位でインク粒子が必要となったとき、インク粒子を生成するものであり、上述した実施例で採用したピエゾ素子を用いた方式の他、図32(A)〜(E)に示すように、インクのノズルNZ近傍に発熱体HTを設け、インクを加熱することでバブルBUを発生させ、その圧力によりインク粒子IQを吐出する方式などが知られている。これらのオンデマンド方式のインク吐出方式も、複数種類の濃度のインクあるいは径の異なる複数のドットを利用する本発明の印刷装置に適用可能である。また、上記実施例の中でも触れたが、同一濃度のインクを複数回吐出して濃度の異なるドットを形成する構成にも適用することができる。
【0129】
以上説明した本発明の印刷装置、画像記録方法および画像記録方法を記憶したプログラム製品は、濃度の異なる2種類以上のインクを用いて、多階調の画像を、用紙などの印字対象に印字することができ、ドッと当たりの階調数が少ないプリンタなどの印刷装置により、高品質の画像の形成を行なうのに適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のプリンタ20の概略構成図である。
【図2】プリンタ20における制御回路40の構成を示すブロック図である。
【図3】キャリッジ30の構成を示す斜視図である。
【図4】印字ヘッド28における各色ヘッド61ないし66の配置を示す説明図である。
【図5】カラーインク用カートリッジ70の形状を示す斜視図である。
【図6】各色ヘッド61ないし66におけるインク吐出のための構成を示す説明図である。
【図7】ピエゾ素子PEの伸張によりインク粒子Ipが吐出される様子を示す説明図である。
【図8】コンピュータ90が扱う画像情報から印刷が行なわれるまでの処理の様子を例示するブロック図である。
【図9】各色インクの成分を示す説明図である。
【図10】各色インクの記録率と明度との関係を例示するグラフである。
【図11】ハーフトーンモジュール99における処理を例示するフローチャートである。
【図12】誤差拡散における周辺ドットへの誤差の配分の様子を例示する説明図である。
【図13】本実施例における淡インクと濃インクとによる記録率と階調データとの関係を例示するグラフである。
【図14】濃ドット形成判断処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図15】淡ドット形成判断処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図16】組織的ディザ法を用いた濃ドットの決定手法を示す説明図である。
【図17】データDCに対して閾値Dref2を与えるグラフである。
【図18】濃ドットおよび淡ドットのオン・オフの決定時に結果値RVを与えるグラフである。
【図19】淡ドットについての結果値RVを濃ドット密度Snおよび淡ドット密度Stから求めるグラフである。
【図20】濃淡インクによるドット形成の過程を例示した説明図である。
【図21】径の異なるドットの形成過程を例示した説明図である。
【図22】 本発明の第1実施例の画像記録処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図23】 第1実施例における黒インクの2値化処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図24】シアン(マゼンタ)についてのハーフトーン処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図25】 第2実施例のハーフトーン処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図26】 第2実施例における黒インクの2値化の処理を示すフローチャートである
【図27】 第2実施例におけるシアン成分についての3値化処理を示すフローチャートである。
【図28】 第3実施例の要部を示すフローチャートである。
【図29】 第3実施例におけるシアンインクCについての3値化処理を示すフローチャートである。
【図30】 第4実施例におけるハーフトーン処理を示すフローチャートである。
【図31】コンピュータ90の内部構成と共に、ネットワークとの接続について説明する説明図である。
【図32】インク粒子の吐出機構の他の構成例を示す説明図である。
【符号の説明】
20…プリンタ
22…紙送りモータ
24…キャリッジモータ
25…ジエチレングリコール
26…プラテン
28…印字ヘッド
30…キャリッジ
31…仕切板
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置検出センサ
40…制御回路
41…CPU
43…ROM
44…RAM
50…I/F専用回路
52…ヘッド駆動回路
54…モータ駆動回路
56…コネクタ
61〜66…インク吐出用ヘッド
70…カラーインク用カートリッジ
71…導入管
80…インク通路
90…コンピュータ
91…ビデオドライバ
93…CRTディスプレイ
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…ラスタライザ
98…色補正モジュール
99…ハーフトーンモジュール
P…用紙
PE…ピエゾ素子
n…ノズル
Claims (9)
- 単位面積当たりの濃度の異なる有彩色インクによる2種類以上のドットと無彩色のインクによるドットとを、印字対象物上に形成可能なヘッドを備え、該ドットの分布により多階調の画像を記録する印刷装置であって、
印刷すべき画像の階調信号を画素毎に順次入力する入力手段と、
該入力した階調信号に基づいて、前記有彩色インクが分担する濃度と前記無彩色インクが分担する濃度とを求める濃度演算手段と、
該求められた無彩色インクの濃度に基づいて、該無彩色インクについて、2以上の多値化を行なって、無彩色インクのドットの形成を判断する無彩色ドット形成判断手段と、
該無彩色についての多値化の結果に基づいて、前記有彩色インクの濃度に反映すべき補正データを求め、前記有彩色インクが分担する濃度を補正する濃度補正手段と、
該補正された有彩色インクの濃度に基づいて、前記単位面積当たりの濃度が異なる2種類以上のドットによる多値化を行ない、該2種類以上のドットの形成を判断する有彩色ドット形成判断手段と、
前記無彩色ドット形成判断手段および前記有彩色ドット形成判断手段の判断結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、単位面積当たりの濃度の異なる有彩色インクの2種類以上のドットおよび前記無彩色インクのドットを形成させるヘッド駆動手段と
を備えた印刷装置。 - 請求項1記載の印刷装置であって、
更に、前記無彩色ドット形成判断手段および有彩色ドット形成判断手段によるドット形成の有無の判断に基づき、前記階調信号に対応した印刷濃度と該無彩色インクおよび有彩色インクのドットにより実現される印刷濃度との差を濃度誤差として求め、該濃度誤差を、ドット形成の対象となっている画素の周辺の画素についての前記有彩色ドット形成判断手段における前記ドット形成の判断に反映させるよう配分する誤差拡散手段を備えた印刷装置。 - 請求項1記載の印刷装置であって、
前記濃度補正手段は、前記無彩色インクのドットの多値化の結果による局所的な無彩色インク濃度を反映し、かつ所定範囲についての平均的な無彩色濃度が該無彩色インクが分担する濃度に実質的に等しくなるよう補正する手段である印刷装置。 - 請求項3記載の印刷装置であって、
前記濃度補正手段は、前記無彩色インクが分担する濃度と前記無彩色ドット形成判断手段による多値化の結果により実現される無彩色インクの濃度との差を、前記有彩色インクが分担する濃度に加える手段である印刷装置。 - 前記ヘッドが、ドット径の異なる2種類以上のドットを形成可能なヘッドである請求項1記載の印刷装置。
- 前記ヘッドは、インク通路に設けられた電歪素子への電圧の印加によりインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた請求項1記載の印刷装置。
- 前記ヘッドは、インク通路に設けられた発熱体への通電により発生する気泡により該インク通路のインクに付与される圧力によってインク粒子を吐出する機構を備えた請求項1記載の印刷装置。
- 単位面積当たりの濃度の異なる有彩色インクによる2種類以上のドットと無彩色のインクによるドットとを、印字対象物上に記録可能なヘッドを備え、該ドットの分布により多階調の画像を記録する方法であって、
印刷すべき画像の階調信号を画素毎に順次入力し、
該入力した階調信号に基づいて、前記有彩色インクが分担する濃度と前記無彩色インクが分担する濃度とを求め、
該求められた無彩色インクの濃度に基づいて、該無彩色インクについて、2以上の多値化を行なって、無彩色インクのドットの形成を判断し、
該無彩色についての多値化の結果に基づいて、前記有彩色インクの濃度に反映すべき補正データを求め、前記有彩色インクが分担する濃度を補正し、
該補正された有彩色インクの濃度に基づいて、前記単位面積当たりの濃度が異なる2種類以上のドットによる多値化を行ない、該2種類以上のドットの形成を判断し、
前記無彩色インクのドットおよび前記有彩色インクのドットの多値化の判断結果に基づいて、前記ヘッドを駆動して、単位面積当たりの濃度の異なる有彩色インクの2種類以上のドットおよび前記無彩色インクのドットを形成する
画像記録方法。 - 単位面積当たりの濃度の異なる有彩色インクによる2種類以上のドットと無彩色のインクによるドットとを、印字対象物上に形成可能なヘッドを制御し、該ドットの分布により多階調の画像を記録する処理をコンピュータに行なわせるプログラムを、コンピュータにより読み取り可能に記録した記録媒体であり、
画素毎に順次入力した印刷すべき画像の階調信号に基づいて、前記有彩色インクが分担する濃度と前記無彩色インクが分担する濃度とを求める処理をコンピュータに実行させる第1のプログラムコードと、
該求められた無彩色インクの濃度に基づいて、該無彩色インクについて、2以上の多値化を行なって、無彩色インクのドットの形成を判断する処理をコンピュータに実行させる第2のプログラムコードと、
該無彩色についての多値化の結果に基づいて、前記有彩色インクの濃度に反映すべき補正データを求め、前記有彩色インクが分担する濃度を補正する処理をコンピュータに実行させる第3のプログラムコードと、
該補正された有彩色インクの濃度に基づいて、前記単位面積当たりの濃度が異なる2種類以上のドットによる多値化を行ない、該2種類以上のドットの形成を判断する処理をコンピュータに実行させる第4のプログラムコード
とを、コンピュータに読み取り可能に記録した記録媒体。
Applications Claiming Priority (4)
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JP8-209232 | 1996-07-18 | ||
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