JP3658287B2 - 回復ユニット及び該回復ユニットを用いるインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク吐出手段のインク吐出性能を維持回復するための回復ユニット及び該回復ユニットを用いるインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピューターやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置(プリント装置)としては、画像情報(記録情報)に基づいて、紙、布、プラスチックシート、OHP用シート等の被記録材(記録媒体)に向けてインクを吐出することで記録を実行するインクジェット記録装置が普及している。また、これら被記録材の材質に対する要求も様々なものがあり、近年では、これらの要求に対する開発が進み、通常の被記録材である紙(薄紙や加工紙を含む)や樹脂薄板(OHPシート等)などの他に、布、皮革、不織布、更には金属等を被記録材として用いる記録装置も使用されるようになっている。
【0003】
前記インクジェット記録装置は、低騒音、低ランニングコストで、装置の小型化が容易であり、カラー化も容易であるなどの観点から、プリンタ、複写機、ファクシミリ等へ広く応用されている。インクジェット記録装置の記録手段(インクジェット記録ヘッド)の前面にはインク滴を吐出するための吐出口(通常複数個)が形成されており、この吐出口の大きさは数十μ程度であるが、最近では高画質化とともに吐出口の大きさは益々小さくなりつつある。そして、ホスト機から送られてくる記録データをもとに記録装置内で処理された吐出信号に基づいて、前記吐出口からインク滴が吐出され、被記録材上に画像(文字や記号も含む)が記録される。
【0004】
記録手段から被記録材へインクを吐出して記録を行う上記インクジェット記録装置においては、微細な吐出口からインクを吐出して記録を行うことから、該吐出口に目詰まりが生じ、吐出不良(不吐出を含む)に起因して記録画像の品位が低下してしまうということがあり、そのための対策として、記録手段のインク吐出性能を維持回復するための回復ユニットを用いることが行なわれている。この回復ユニットとして、記録ヘッドの吐出口をキャッピングするキャッピング手段と、キャッピング状態において前記キャッピング手段に接続されてポンプを作動させて該キャッピング手段内部に負圧を発生させて吐出口から増粘インクや気泡等の異物を吸引排出することにより該吐出口内のインクをリフレッシュさせることでインク吐出性能を維持回復する吸引手段と、記録手段の吐出口面に付着したインク等を異物を拭き取り清掃(クリーニング)するワイピング手段とを備えたものが使用されている。
【0005】
すなわち、インクジェット記録装置においては、記録ヘッドの正常な吐出状態を維持するため、あるいは吐出口に目詰まりが生じた場合に正常なインク吐出状態に回復させるために回復用のポンプを配設し、ポンプ負圧によって吐出口からインクを吸い出す回復手段が使用されている。前記回復用のポンプとして弾性チューブ内の体積変化を利用して負圧を発生させるチューブポンプがある。このチューブポンプは、記録ヘッドの吐出口面を覆うキャッピング手段に接続されたチューブを該チューブに沿って移動するローラで順次押しつぶしていくことで発生する負圧を利用して記録ヘッド内のインクを吸引・排出するチューブ方式のポンプである。
【0006】
前記チューブポンプは構成が簡単であり、低コストで小型のポンプを構成できる利点がある。その中で、チューブの開放が簡単にできるように、ローラ保持手段を一方向に回転したときにローラがチューブ押圧状態となり、逆方向に回転したときにはローラをチューブ開放状態に移動させるものがある。従来例としては実開昭53−106802号に記載のものがあるが、この構成のチューブポンプではローラが開放されるときに弾性チューブの反発力によって勢いよくはじき出されてローラ保持部材との間で衝突音が発生する問題があった。この改善策として特開2000−12745号に記載されるようにローラの開放位置にゴムダンパーを配設し、衝突音を軽減するように構成されたものがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成のチューブポンプではローラ開放時の音はゴムダンパーで軽減されるものの、今度はローラがゴムダンパーを抜けるときにゴムダンパーの反発力によって勢いよくはじかれて同じような衝突音が発生してしまう。これを防ぐために、ローラがゴムダンパーを抜ける位置に次のゴムダンパーが必要になり、さらに次々とゴムダンパーが要ることになってしまう。つまり、ローラがチューブから離れてから再度押圧区域に入るまでの間を複数のゴムダンパーで連続的に保持できるようにしなければならなかった。これは、部品点数が増えるだけでなく、組立も難しくなるためコストアップにつながるものであった。
【0008】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ローラの衝突音の発生自体を無くすことで、ゴムダンパーに頼らなくても簡単な構成でローラ移動時の衝撃音の発生を防ぐことが可能な回復ユニット及び該回復ユニットを用いるインクジェット記録装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上記目的を達成するため、記録ヘッドの吐出口面を覆うキャップと、該キャップの内部に連通するチューブと、該チューブをはい回すための円弧状のガイドと、前記チューブを押圧するローラと、該ローラを保持するローラホルダと、該ローラホルダを揺動可能に保持する回転部材と、前記ローラホルダを付勢するバネと、を有し、前記回転部材を回転することにより前記ローラが前記チューブをしごいて該チューブ内に負圧を発生させる回復ユニットにおいて、前記ローラホルダに配され、前記ローラが前記チューブを押圧して密閉する第1の位置と、前記ローラによる前記チューブの密閉を開放する第3の位置と、を結ぶガイド溝を有し、該ガイド溝は、前記第1の位置と前記第3の位置との間に前記第1の位置に比べて前記ローラによる前記チューブの押圧量が増大する第2の位置を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、上記目的を達成するため、記録ヘッドから被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回復ユニットを備えることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を具体的に説明する。図10は本発明を適用するのに好適な回復ユニットを備えたインクジェット記録装置の一実施例を示す模式的斜視図である。図10において、キャリッジ101は、ガイドシャフト102及びガイドレール104によって、シャーシ103に保持された搬送ローラ(LFローラ)105及びプラテン106に対向して往復移動できるように案内支持されている。記録手段としての記録ヘッド107はキャリッジ101に搭載されていて、ベルト109を介して伝達されるキャリッジモータ108の駆動力によりガイドシャフト102に沿って往復移動する。
【0012】
被記録材(記録媒体)としての記録用紙110は、記録装置内部で、搬送ローラ105とピンチローラ111及び排紙ローラ112と排紙補助ローラ113の間に挟まれて保持されていて、搬送ローラ105が回転すると摩擦力によって該搬送ローラ105の軸線に対して垂直方向に搬送される。記録に際しては、キャリッジ101は停止状態から、加速された後に一定の速度で移動する。この状態のときに、記録装置内部に送られてくる記録データに従って記録ヘッド(記録手段)107を駆動して、インクを記録用紙110に向けて吐出する。そして、記録ヘッド107の1行分の駆動が終了した後、キャリッジ101は減速されて停止する。
【0013】
搬送ローラ105は、1行分の記録が終了したのち所定の量だけ回転して、記録用紙110の次に記録が行われるべき箇所が記録ヘッド107に対向するようになる位置まで、該記録用紙110を搬送(紙送り)する。この搬送動作が終了した後、キャリッジ101の移動を再開し、移動中に記録ヘッド107を駆動することで次の行の記録を行う。この一連の動作の繰り返しによって、規定の記録データが全て記録される。そして、記録用紙(被記録材)110を排紙ローラ112により記録装置外へ排出することで記録動作が終了する。
【0014】
前記記録ヘッド(記録手段)107は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録手段であって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。また、前記記録ヘッド107は、前記電気熱変換体によって印加される熱エネルギーにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化(状態変化)を利用して、吐出口よりインクを吐出させ、記録を行うものである。
【0015】
図11は、図10中の記録ヘッド107のインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。図11において、記録紙等の被記録材110と所定の隙間(例えば、約0.3〜2.0ミリ程度)をおいて対面する吐出口面81には、所定のピッチで複数の吐出口82が形成され、共通液室83と各吐出口82とを連通する各液路84の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体など)85が配設されている。本例においては、記録ヘッド107は、前記吐出口82が前記キャリッジ101の走査方向と交叉する方向に並ぶような位置関係で、該キャリッジ101に搭載されている。こうして、画像信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体85を駆動(通電)して、液路84内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口82からインクを吐出させる記録ヘッド107が構成されている。
【0016】
図10において、記録装置の記録領域を外れた所定位置には、記録手段(記録ヘッド)107の目詰まり等を防止してインク吐出性能を維持回復するための回復ユニット1が配設されている。この回復ユニット1には、非記録時に記録ヘッド107を保護したり、吐出口からのインク蒸発を軽減したりするために該記録ヘッド(その吐出口面)を覆う(キャッピングする)ためのキャップが設けられている。さらに、長期にわたってキャッピングされた後で記録を再開する場合、記録に先立って吐出口付近で固まりかけたインク(増粘インク)を除去することでインク吐出の安定化を図るために、吐出口からインクを吸引排出させる吸引回復処理が行なわれる。この吸引回復処理は、キャッピング状態でキャップに接続されたポンプ(吸引ポンプ)を作動させることにより実行される。そのための吸引手段を構成するポンプとして、キャップに接続されたチューブをローラ(加圧コロ)で押しつぶしながら該ローラを転動させて負圧を発生させ、この負圧によって記録ヘッド内のインクを吸引及び排出する方式のチューブポンプが使用されている。
【0017】
図1は本発明を適用したインクジェット記録装置用の回復ユニットの第1実施例を示す模式的斜視図であり、図2は図1の回復ユニットの内部を示す模式的斜視図である。図1及び図2において、回復ユニット1には、記録ヘッド(不図示)の吐出口面を覆うためにベース2のガイド2aに沿って上下動可能に装着されたキャップ3と、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするためにガイド2bに沿って往復動可能に装着されたワイパ4と、吐出口面をキャッピングしている間にキャリッジ(不図示)が不用意に動かないように掛止可能に(揺動可能に)装着されたキャリッジロック手段5と、を備えている。
【0018】
これらキャップ3、ワイパ4及びキャリッジロック手段5のそれぞれの動作は、モータ6の駆動力をギア列7、8、9によって伝達するとともに、ワンウエイクラッチギア10を介して、モータ6の一方向回転のみでメインカム11を回転させることにより行われる。すなわち、メインカム11には長手方向(軸方向)に複数のカムが形成されており、1つのカムによりメインカム11の回転がキャリッジロック手段5の回動に変換され、別の一つのカムとラック・ピニオン等によりメインカム11の回転がワイパ4の直線往復動に変換され、さらに別の一つのカムとレバー14によりメインカム11の回転がキャップ3の上下向往復動に変換されるように構成されている。
【0019】
図示のキャップ3は2室(2キャップ)一体型の構造をしており、チューブ12、13が2室のそれぞれに接続されており、各チューブ12、13はベース2の一部に形成された円弧状のガイド面に沿って配設されており、これらによって吸引手段としてのチューブポンプが構成されている。前記チューブ12、13のそれぞれの一端部はキャップホルダ(不図示)等を介して前記キャップ3の各室の内部に連通しており、これらのキャップ室を記録ヘッド107の吐出口面に密着させて吐出口を密閉した状態(キャッピング状態)でチューブポンプを作動させることにより吐出口からインクを増粘インクや気泡等とともに吸引する(吸い出す)ことができる。記録ヘッド107の吐出口から吸引された排インクは該チューブ12、13の他端部から回復ユニット1の外部へ排出される。
【0020】
図3は前記回復ユニット1の吸引手段としてのチューブポンプのローラ保持手段15の構造を示す模式的斜視図である。図1〜図3において、ベース2の内部には、該ベース2の円弧状ガイド面の中心と同一軸心を有するローラ保持手段(ローラホルダ)15が回転可能に配設されている。このローラ保持手段15には円周方向に2個配設されかつ2本のチューブ12、13に対応して軸方向に並列配置された合計4個のローラ(加圧コロ、加圧ローラ)17が回動可能に軸支されており、モータ6の駆動をギア7を介してローラ保持手段15の一端に固定されたポンプギア16に伝達し該ローラ保持手段(ローラホルダ)15を回転させることにより、ローラ17でチューブ12、13を押しつぶしながら吸引力を発生さるように構成されている。
【0021】
本実施例では、ローラ保持手段15の一方向の回転でローラ17がチューブ12、13を押圧してインクを吸引できるような構成になっている。つまり、モータ6が矢印A方向に回転するとチューブポンプ(ローラ保持手段15)が動作するが、そのときには、ワンウエイクラッチギア10が空転してメインカム11は回転せず、従ってキャップ3、ワイパ4及びキャリッジロック手段5は停止したままである。一方、モータ6が逆方向に回転すると、キャップ3、ワイパ4及びキャリッジロック手段5が所定のタイミングで動作する。そのときには、ローラ17はチューブ12、13の押圧を解除され、吸引手段としてのチューブポンプは動作しない。
【0022】
次に本発明の要旨であるチューブポンプの構成について詳しく説明する。ローラ保持手段15の構造を示す図3において、各ローラ17はローラホルダ18のガイド溝19によって保持されており、該ローラホルダ18は回転板20に対して支軸20aを中心として揺動可能に取り付けられている。揺動可能なローラホルダ18はバネ21で一方向に付勢されている。つまり、このバネ付勢力でローラ17がチューブ12、13を押圧することになる。チューブ12、13と対向しない位置(チューブを押圧つぶさない領域)では、ローラホルダ18はストッパ爪18aが回転板20の一部と係合した位置で保持される。本実施例では、ローラ17及びローラホルダ18から成るセットが4組構成されていて、これらのセットを回転板20に装着することにより各チューブ12、13のそれぞれを2個のローラで押圧できるように構成されている。
【0023】
すなわち、キャップ3の内部に連通するように接続されたチューブ12、13はポンプベース2の円弧状ガイド2cに沿ってはい回されており、ローラ17と該円弧状ガイド2cとの間で押しつぶされる。記録ヘッド107に対してキャップ3が密着した状態(キャッピング状態)で、チューブポンプ(その回転板20)が矢印B方向に回転すると、ローラ17がチューブ12、13を押しつぶした状態でしごきながら該チューブに沿って転動することで該チューブ内に負圧が発生し、記録ヘッド107とキャップ3との間の空間(密閉部)にこの負圧が導入されて圧力が低下し、記録ヘッド107内のインクが吸引され排出される。
【0024】
この吸引排出されたインクは、回転板20とともに回転するローラ17の動きに伴って、チューブ12、13内をつたって最終的にはチューブ12、13のもう一方の端部から外側へ排出される。ローラ17は、チューブ12、13を押しつぶしながら回転板20とともに回転し、ポンプベース2の円弧状ガイド2cから外側へ出るとチューブ17を押しつぶさなくなる。一方のローラ17がチューブ12、13の押しつぶさなくなくなるとき、もう一つのローラ17が該チューブを押しつぶし始めることになる。これによって、連続的に記録手段107の吐出口からのインクの吸引・排出を行うことができる。
【0025】
図4、図5及び図6は図1及び図2中のチューブポンプの各動作段階における状態を示す模式的断面図である。次にこれらの図を参照して本発明によるチューブポンプの動作について説明する。図4ではチューブ12は開放状態にある。モータ6が矢印A方向に回転して回転板20が矢印B方向に回動すると、加圧部材としてのローラ(加圧コロ)17がチューブ12と接触(係合)し始め、さらに矢印B方向に回動すると、図5に示すように、ローラ17がバネ21の付勢力によりチューブ12側へ押圧され、チューブ12は該ローラ17と円弧状ガイド2cとの間で完全に押しつぶされた(押圧密閉された)状態となる。この状態で回転板20が矢印B方向に回動してローラ17がチューブ12をしごくに伴って、チューブ12内に負圧が発生し、記録ヘッドの吐出口からインクを吸い出す(吸引排出する)ことができる。回転板20が矢印B方向に更に回転して図6に示す位置(円弧状ガイド2cが終了し、チューブ12が押しつぶされなくなる位置)にローラ17がきたとき、チューブ12の弾性復元力によりローラ17は矢印D方向の力を受ける。
【0026】
その場合、前記矢印D方向の力はローラホルダ18のガイド溝19の方向(ローラ17が移動可能な方向)と近い方向に作用するため、従来の回復ユニットにおけるように単なるガイド溝を形成するだけでは、ローラ17はこの位置でガイド溝19に沿って勢いよくはじき出され、該ローラ17がローラホルダ18の一部に衝突するなどして大きな衝撃音を発生していた。これに対し、図示の実施例では、ガイド溝19の形状でチューブ12の反力を受けるように構成されているので、ローラ17が勢いよくはじき出されることがなく、従って衝撃音の発生を防止又は軽減することができる。
【0027】
次に、本実施例における前記ガイド溝19の溝形状について具体的に説明する。図6において、吸引力を発生させるためにチューブ12を押圧密閉状態に押しつぶすときにローラ17が位置する第1の位置19a(回転板20の回転中心から回転半径r1の位置)と、ローラ17がチューブ12から離間して該チューブ12を開放するときにローラ17が位置する第3の位置19c(回転板20の回転中心から回転半径r3の位置)との間に、ローラ17のチューブ押圧力が吸引力発生時よりも増大して過押圧状態となる第2の位置19b(回転板20の回転中心から回転半径r2の位置)を設け、回転半径(周回半径)の大きさがr3<r1<r2の関係になるように構成されている。また、前記ガイド溝19は、図示のように、前記第2の位置を境に曲がっている。このような構成によれば、チューブ12からの反発力(弾性復元力)を、チューブ12を押圧密閉状態に押しつぶすときにローラ17が位置する第1の位置19aと、ローラ17のチューブ押圧力が吸引力発生時よりも増大して過押圧状態となる第2の位置19bとを結ぶガイド面によって受けることで、ローラ17を第1の位置19aに保持したまま徐々にチューブ12との係合を開放することができ、従ってローラ17の急激な移動に起因する衝撃音の発生を防ぐことができる。つまり、不快な衝撃音が発生することを無くすことができる。
【0028】
次にモータが逆回転して、回転板20が矢印C方向に逆転するときの状態について説明する。図3〜図6で説明した第1実施例においては、ポンプ動作終了後にローラ17が例えば図5に示すようなチューブ押圧位置(押しつぶし位置)で停止している場合には、回転板20を矢印C方向に逆転してもローラ17は過押圧状態となる第2の位置19bを乗り越えることができない。そのため、従来例のように、逆転によってチューブ12をすぐに開放することはできない。しかし、前述の第1実施例においては、このような技術的課題は前述のローラ17の第3の位置19cによって解決することができる。すなわち、前述の第1実施例においては、ローラ17が円弧状ガイド2cの領域を外れる位置までくると、当然チューブ12は開放され、逆転のまま次にローラ17がチューブ12と係合する場合にはローラ17は自重とチューブ12の抵抗とによって図5中の下側のローラで示すように第3の位置19cのまま円弧状ガイド2c内に入ることになる。そのため、図4中の右側のローラで示すように、チューブ12を開放状態に維持することができる。図4に示す例では、右側のローラ17とチューブ12とは僅かに接触しているが、これに代えて、前述の第3の位置19cをローラ17がチューブ12と接触しない位置に選定してもよい。
【0029】
実際の回復ユニット1の動作としては、まず記録ヘッドをキャップ上の位置に移動させた後、モータ6を逆転してメインカム11を回転させ、キャップ3を上昇させてキャッピング状態とする。次にモータ6を矢印A方向に正転させてポンプ動作(吸引動作)を行い、記録ヘッドの吐出口からインクを吸引排出させて吸引回復処理を行った後、キャッピング状態のまま記録ヘッドをわずかに移動させてキャップ密閉状態をリークさせる。そして再度ポンプ動作を行ってキャップ3内に溜まったインクを排出する空吸引動作を行う。次にモータ6を逆転してキャップを下降させることになるが、この時前述のようにローラ17の押圧状態はすぐには開放されないので、キャップ上昇位置でキャップ側に正圧が加わることとなる。しかし、すでにキャップ3と記録ヘッドはリーク状態にあるので、正圧により記録ヘッドにダメージを与えることはない。
【0030】
更なるモータ6の逆転によりワイパ動作等が行われるが、その動作中のモータ6の逆転によって一度円弧状ガイド2cの領域を外れたローラ17は前述のようにチューブ開放状態を維持できるので、次にキャッピング動作をするときにはチューブ開放状態となるように構成することができる。これによれば、ローラ17の軌道上(移動経路)にゴムダンパのような消音部材を設けるなどの余分な構成を必要とせずに、ローラ移動時の動作音が静かなチューブポンプを提供することができる。
【0031】
次に、本発明の第2実施例について説明する。図7は本発明を適用した回復ユニットの第2実施例における吸引手段としてのポンプのローラ保持手段を示す模式的斜視図であり、図8は本発明を適用した回復ユニットの第2実施例における吸引手段としてのポンプを駆動するためのポンプギアを示す模式的斜視図である。前述の第1実施例と同じ部分の説明は省略し、主として異なる部分を説明する。図7において、ローラ保持手段50の回転板51には係合突起52が設けられている。一方、図8に示すように、吸引手段としてのチューブポンプを駆動するためのポンプギア53には遊合凹部54が形成されていて、前記ローラ保持手段50と前記ポンプギア53を回復ユニット1に組み込んだときに、ポンプギア53に伝達された駆動力は、係合突起52が凹部54の係合壁54aもしくは係合壁54bに係合したときにだけ回転板51に伝わるようになっている。つまり、第2実施例に係る吸引手段(ポンプ)では所定角度分だけの遊びが設けられた構成になっている。そのため、モータ6の回転方向が切り替わるときに、回転板51は直ぐに追従せずに、所定角度だけ停止状態とすることができる。ここで、凹部54が2箇所形成されているが、どちら側に係合突起52を合わせて組み込んでもよい。
【0032】
前述の第1実施例では回転板20とポンプギア16とはいずれも固定されていたため、キャップ下降時には記録ヘッドの位置をずらしておくことが必要であったが、本実施例では、キャップ下降時に回転板51を停止させておくことができるので、記録ヘッドをずらしたりする必要はない。つまり、キャッピング状態でポンプ動作を行って記録ヘッドからインクを吸引した後、モータ6を逆転してキャップ下降動作を行っても、キャップ3が記録ヘッドから離れるまでは回転板51を停止させておくことができるので、記録ヘッドに正圧を加えることがない。これによれば、ゴムダンパのような消音部材を必要とせずに動作音の静かなチューブポンプを提供することができるのに加え、キャッピング中に記録ヘッドをずらすような余計な動作が不要になることから、安定したポンプ動作を実現することができる。
【0033】
図9は本発明の参考例としての回復ユニットの吸引手段であるポンプを示す模式的断面図である。本参考例の第1実施例及び第2実施例との違いは、ローラ保持手段60の構成にある。すなわち、前述の実施例のローラ保持手段15、50は回転板20とローラホルダ18とローラ17とバネ21によって構成されていたが、本参考例では回転板61とローラ(加圧コロ、加圧ローラ)63だけで構成され、より簡単な構成となっている。回転板61にはチューブ加圧部材としてのローラ63を支持するガイド溝62が形成され、このガイド溝62には、ローラ17がチューブ12を押しつぶし状態に押圧する第1の位置62a(回転板61の軸心からの回転半径r1)とローラ17がチューブ12を開放する第3の位置62c(回転半径r3)との間に、ローラ17がチューブ12を過押圧する第2の位置62b(回転半径r2)が設けられている。
【0034】
そして、前記各回転半径の大きさをr3<r1<r2の関係にあるように構成することで、第1及び第2実施例の場合と同様の作用効果を奏することができる。しかも、簡単な構成で実現できるので、コスト的に有利であり、回復ユニットの一層の小型化を図ることができる。ただし、第1の位置62aでのチューブ12の押圧力は押しつぶし量で決定されるので、円弧状ガイド2cの形状寸法、回転板61のガイド溝62の形状寸法、ローラ17の径寸法、チューブ12径寸法などを前の実施例よりも厳しく管理することが要請される。なお、以上説明した実施例及び参考例においては1つのチューブに対して2個のローラを配したチューブポンプについて説明したが、1個又は3個以上のローラを配したチューブポンプにも同様に適用でき、同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
なお、前述の実施例では、記録ヘッド(記録手段)7を主走査方向に移動させるシリアル記録方式の場合を例に挙げて説明したが、本発明は、被記録材の全幅または一部をカバーする長さのライン記録手段を用いて副走査のみで記録するライン記録方式の場合にも同様に適用することができ、同様の効果を達成しうるものである。また、本発明は、1個の記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置のみならず、異なる色のインクで記録するカラーインクジェット記録装置、同一色彩で異なる濃度のインクを用いる階調インクジェット記録装置、さらには、これらを組み合わせたインクジェット記録装置など、記録ヘッドの数や種類にも関係なく同様に適用することができ、同様の効果を達成しうるものである。
【0036】
さらに、本発明は、記録手段がインク吐出部とインク貯留部とを一体化した交換可能なインクジェットカートリッジ(ヘッドカートリッジ)である場合、あるいは記録手段がパーマネント式である場合など、記録手段及びインク貯留部が種々の形態を採る場合にも同様に適用することができ、同様の作用効果を達成しうるものである。なお、本発明は、インクジェット記録装置であれば、例えばピエゾ素子等の電気機械変換体等を用いる記録手段(記録ヘッド)を使用するものにも適用できるが、中でも、熱エネルギーを利用してインクを吐出する方式の記録手段を使用するインクジェット記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば、記録の高密度化及び高精細化を達成できるからである。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなごとく、本発明(請求項1)によれば、記録ヘッドの吐出口面を覆うキャップと、該キャップの内部に連通するチューブと、該チューブをはい回すための円弧状のガイドと、前記チューブを押圧するローラと、該ローラを保持するローラホルダと、該ローラホルダを揺動可能に保持する回転部材と、前記ローラホルダを付勢するバネと、を有し、前記回転部材を回転することにより前記ローラが前記チューブをしごいて該チューブ内に負圧を発生させる回復ユニットにおいて、前記ローラホルダに配され、前記ローラが前記チューブを押圧して密閉する第1の位置と、前記ローラによる前記チューブの密閉を開放する第3の位置と、を結ぶガイド溝を有し、該ガイド溝は、前記第1の位置と前記第3の位置との間に前記第1の位置に比べて前記ローラによる前記チューブの押圧量が増大する第2の位置を備える構成としたので、ローラの衝突音の発生自体を無くすことで、ゴムダンパーに頼らなくても簡単な構成でローラ移動時の衝撃音の発生を防ぐことができる回復ユニットが提供される。
【0038】
請求項2の発明によれば、上記請求項1の構成に加えて、前記ガイド溝は、前記第2の位置を境に曲がっている構成としたので、一層効率よく上記効果を奏することができる。
【0039】
請求項3の発明によれば、上記請求項1の構成に加えて、前記回転部材を駆動するためのポンプギアを有し、前記回転部材と前記ポンプギアとには所定角度分の遊びが設けられている構成としたので、ゴムダンパーのような消音部材を必要とせずに動作音の静かなチューブポンプが得られることに加え、キャッピング中に記録ヘッドをずらすような余計な動作が不要になることから、安定したポンプ動作を実現できる回復ユニットが提供される。
【0040】
請求項4の発明によれば、記録ヘッドから被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回復ユニットを備える構成としたので、ローラの衝突音の発生自体を無くすことで、ゴムダンパーに頼らなくても簡単な構成でローラ移動時の衝撃音の発生を防ぐことができる回復ユニットを備えたインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用したインクジェット記録装置用の回復ユニットの第1実施例を示す模式的斜視図である。
【図2】 図1の回復ユニットの内部を示す模式的斜視図である。
【図3】 図1の回復ユニットの吸引手段としてのチューブポンプのローラ保持手段の構造を示す模式的斜視図である。
【図4】 本発明を適用した回復ユニットの第1実施例における吸引手段としてのチューブポンプにおけるチューブ開放時の状態を示す模式的断面図である。
【図5】 図4のチューブポンプでローラがチューブを押しつぶしながら移動している時の状態を示す模式的断面図である。
【図6】 図4のチューブポンプでローラがチューブ押しつぶし終了直前の位置にある状態を示す模式的断面図である。
【図7】 本発明を適用した回復ユニットの第2実施例における吸引手段としてのポンプのローラ保持手段を示す模式的斜視図である。
【図8】 本発明を適用した回復ユニットの第2実施例における吸引手段としてのポンプを駆動するためのポンプギアを示す模式的斜視図である。
【図9】 本発明の参考例としての回復ユニットの吸引手段であるポンプを示す模式的断面図である。
【図10】 本発明を適用するのに好適な回復ユニットを備えたインクジェット記録装置の一実施例を示す模式的斜視図である。
【図11】 図10中の記録ヘッド(インク吐出手段)のインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【符号の説明】
1 回復ユニット
2 ベース
2c ガイド部材(円弧状ガイド)
3 キャップ
4 ワイパ
5 キャリッジロック手段
6 回復系のモータ
12 チューブ
13 チューブ
15 ローラ保持部材(ローラ保持手段)
16 ポンプギア
17 ローラ(加圧ローラ、加圧コロ)
18 ローラホルダ
19 ガイド溝
19a 第1の位置
19b 第2の位置
19c 第3の位置
20 回転部材(回転板)
21 バネ
50 ローラ保持部材(ローラ保持手段)
51 回転板
52 係合突起
53 ポンプギア
54 遊合凹部
54a 係合壁
60 ローラ保持部材(ローラ保持手段)
61 回転部材(回転板)
62 ガイド溝
62a 第1の位置
62b 第2の位置
62c 第3の位置
63 ローラ
81 吐出口面
82 吐出口
85 電気熱変換体
101 キャリッジ
102 ガイドシャフト
104 ガイドレール
105 搬送ローラ
107 記録ヘッド
108 キャリッジモータ
109 ベルト
110 被記録材(記録紙)
Claims (6)
- 記録ヘッドの吐出口面を覆うキャップと、該キャップの内部に連通するチューブと、該チューブをはい回すための円弧状のガイドと、前記チューブを押圧するローラと、該ローラを保持するローラホルダと、該ローラホルダを揺動可能に保持する回転部材と、前記ローラホルダを付勢するバネと、を有し、前記回転部材を回転することにより前記ローラが前記チューブをしごいて該チューブ内に負圧を発生させる回復ユニットにおいて、
前記ローラホルダに配され、前記ローラが前記チューブを押圧して密閉する第1の位置と、前記ローラによる前記チューブの密閉を開放する第3の位置と、を結ぶガイド溝を有し、該ガイド溝は、前記第1の位置と前記第3の位置との間に前記第1の位置に比べて前記ローラによる前記チューブの押圧量が増大する第2の位置を備えることを特徴とする回復ユニット。 - 前記ガイド溝は、前記第2の位置を境に曲がっていることを特徴とする請求項1に記載の回復ユニット。
- 前記回転部材を駆動するためのポンプギアを有し、前記回転部材と前記ポンプギアとには所定角度分の遊びが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回復ユニット。
- 記録ヘッドから被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置において、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回復ユニットを備えることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記記録ヘッドは、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換体を備えていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
- 前記記録ヘッドは、前記電気熱変換体が発生する熱エネルギーによりインクに生じる膜沸騰を利用して吐出口よりインクを吐出させることを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
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