JP4217435B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録手段から被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピューターやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置は、記録情報に基づいて紙、布、プラスチックシート、OHP用シート等の被記録材(記録媒体)に画像(文字や記号等を含む)を記録していくように構成されている。
記録媒体の搬送方向と交叉する方向に主走査しながら記録するシリアルタイプの記録装置においては、記録媒体に沿って移動するキャリッジに搭載した記録ヘッド(記録手段)によって画像を記録し、1行分の記録を終了した後に所定ピッチの紙送りを行い、その後に再び停止した被記録材に対して次の行の画像を記録するという動作を繰り返すことにより、記録媒体全体の記録が行われる。
一方、被記録材の搬送方向のみで記録するラインタイプの記録装置においては、被記録材を所定位置にセットし、一括して1行分の記録を行った後、所定ピッチの紙送りを行い、次の行を一括して記録する動作を繰り返すことにより、被記録材全体の記録が行われる。
【0003】
上記記録装置のうちの、記録ヘッドから被記録材へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置は、記録手段のコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができ、普通紙に特別の処理を必要とせずに記録することができ、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式であるため騒音が少なく、しかも、多種類のインク(例えばカラーインク)を使用してカラー画像を記録するのが容易であるなどの利点を有している。
また、インクジェット記録装置で使用される被記録材の材質に対する要求も様々なものがあり、近年では、これらの要求に対する開発が進み、通常の記録用紙や樹脂薄板(OHP等)などの他に、布、皮革、不織布、さらには金属等も使用されるようになっている。
【0004】
インクジェット記録装置においては、微細な吐出口からインクを吐出して記録を行うことから、吐出口近傍におけるインクの蒸発(溶剤の蒸発)によりインクが増粘・固着したり、吐出口面にインクや紙粉等のごみが付着したり、さらには吐出口内のインク中に気泡が侵入したりすると、インクの吐出が不安定になるばかりか、吐出インクのヨレやインク不吐出などの吐出不良が発生することがある。
【0005】
そこで、記録手段としての記録ヘッドのインク吐出性能を良好な状態に維持、回復するための回復機構部が設けられている。この回復機構部における回復手段としては、ワイピング手段、キャッピング手段、吸引手段などがある。
前記ワイピング手段は、インクミストや被記録材からのインク滴の跳ね返りによってインク吐出口面に付着した不要インクや、記録動作に伴ってインク吐出口面に付着した紙粉などの異物を清掃除去するため、ゴムなどの弾性部材で形成したワイパーを吐出口面に摺擦させて該吐出口面を拭掃(拭き取り清掃)するものである。
【0006】
長期にわたって記録ヘッドからインクを吐出していない場合、吐出口内のインクが蒸発・乾燥してしまい、増粘・固化したインクが吐出口内に詰まって吐出不安定や不吐出などの吐出不良を引き起こすことがあるが、前記キャッピング手段は、非記録時に記録ヘッドの吐出口面をキャッピング(密閉)することで、該記録ヘッドの吐出口内のインクが蒸発・乾燥して増粘・固化することを軽減又は防止するものである。
また、前記吸引手段は、記録ヘッド内に気泡が侵入した場合や、インク吐出口面に付着したインクが乾燥して増粘・固着した場合にはインク吐出口が目詰まりを起こした場合に、記録ヘッドの吐出口面をキャップで密閉した状態で、該キャップと連通した吸引ポンプにより該キャップ内に負圧を与えることで、インク吐出口内のインクを排出し、正常なインクと入れ替えることにより正常なインク吐出を維持・回復するものである。
【0007】
前述のワイピング手段の構成としては、ゴム状弾性材から成るワイパーを記録ヘッドのインク吐出口の配列方向に移動させて拭掃する構成を採用する場合が多い。また、記録装置の装置幅サイズの増大を防ぐ観点から、キャップとワイパーとをオーバーラップさせ、キャップが吐出口面から離隔したときに該キャップと該吐出口面との間をワイパーが通過するように構成されている。
さらに、前記キャップの駆動方法の一つとして、キャップ制御用のカム部材によって回動駆動されるレバー等を利用してキャップを吐出口面に対して接離させる方法が採用されている。
また、前記ワイパーの駆動方法の一つとして、カム、ラックアンドギア、あるいはリードスクリュー等によってワイパーを直線往復方向に(例えば前後方向に)移動させる方法が採られ、キャップが吐出口面から離隔したときにその間を通してワイパーを通過させるように構成される。この場合、ワイパーを吐出口列に沿って上流側から下流側へ向かって移動させながら、吐出口面に摺擦させて拭掃する場合が多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記カム又はラックアンドギアあるいはこれらを組み合わせた機構を用いてワイパーを駆動する方式のワイピング手段を有する回復機構部もしくは該回復機構部を備えたインクジェット記録装置においては、吐出口面の面積増大などによりワイパーの移動距離が長くなるにつれて、大きなカム部材や長いラック部材が要になり、装置本体が大きくなってしまい、記録装置の小型化を実施することが困難になってしまう。
また、前記リードスクリューを用いてワイパーを駆動する方式のワイピング手段を有する回復機構部もしくは該回復機構部を備えたインクジェット記録装置においては、キャップが吐出口面から十分に離隔するまではワイパーがキャップ上にオーバーラップしないように、ワイパー動作開始位置から所定距離の助走区間を設ける必要がある。
【0009】
しかし、上記助走区間を十分に取ると記録装置本体の前後方向寸法が増大してしまい、回復機構部あるいは記録装置の小型化が困難になってしまう。また、上記助走区間におけるリードスクリューのピッチを変えたとしても、該助走区間ではワイパーが移動するため、この移動距離の分、記録装置本体の前後方向寸法が大きくなってしまうことになる。
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、記録手段のインク吐出性能を維持、回復するための回復機構部を小型化することができ、それによって記録装置本体の小型化を図ることができるインクジェット記録装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、記録ヘッドの吐出口面に密着して該吐出口面を密閉するためのキャップと、該キャップが取り付けられるキャップホルダと、該キャップホルダを前記吐出口面と接離する方向へ移動させるためのキャップレバーと、前記吐出口面と摺接して該吐出口面を清掃するためのワイパーと、該ワイパーが取り付けられるワイパーホルダと、該ワイパーホルダに挿通され回転することで該ワイパーホルダを移動させるリードスクリューと、該リードスクリューの端部に固定されるワイパー駆動ギアと、前記キャップレバーの一端が当接するカム面と前記ワイパー駆動ギアと噛み合うギア部とを有するカム・ギア部材と、を備え、前記カム・ギア部材を回転させることにより、前記カム面と当接する前記キャップレバーを回動させて前記キャップを前記吐出口面から離間させるとともに、前記ギア部と噛み合う前記ワイパー駆動ギアを回転させて前記ワイパーを前記吐出口面と摺接させるインクジェット記録装置であって、前記キャップが前記吐出口面に密着しているときには前記ワイパー駆動ギアに駆動を伝達せず、前記キャップが前記吐出口面から離間しているときには前記ワイパー駆動ギアに駆動が伝達されるように、前記ギア部に欠歯部を設けるとともに、前記欠歯部が前記ワイパー駆動ギアと対向するときには前記ワイパー駆動ギアと噛み合い、前記ギア部が前記ワイパー駆動ギアと噛み合うときには前記ワイパー駆動ギアと噛み合わない歯形を前記キャップレバーに設けることで前記ワイパー駆動ギアの動きを阻止することを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。図1は本発明を適用したインクジェット記録装置の一実施例を示す模式的斜視図である。図1において、インクジェット記録装置は、記録紙等の被記録材を記録位置へ送り込むための給紙部1と、被記録材を搬送(紙送り)するための紙送り部2と、記録手段としての記録ヘッド3を搭載して被記録材に沿って移動(主走査)するためのキャリッジ4と、記録ヘッドのインク吐出性能を適正に維持回復するための回復機構部5と、を備えている。キャリッジ4は、ガイドシャフト6に沿って往復移動可能に案内支持されており、キャリッジモータ7を駆動源として図1中の両矢印A方向に移動するように駆動される。
【0013】
前記回復機構部5は、後述するように、非記録時に記録ヘッド3のインク吐出部を保護するためのキャッピング手段、インク吐出部(吐出口面)を拭掃するためのワイピング手段、並びに、インク吐出部をキャッピングした状態で吐出口からインクを吸引する吸引手段などを具備している。
記録手段としての前記記録ヘッド3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録手段であって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。また、前記記録ヘッド3は、前記電気熱変換体により印加される熱エネルギーによってインク内に膜沸騰を生じさせ、その時に生じる気泡の成長、収縮による圧力変化を利用して吐出口よりインクを吐出させ、記録(プリント)を行うものである。
【0014】
図2は、記録ヘッド3のインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。図2において、記録用紙等の被記録材(記録媒体)と所定の隙間(例えば、約0.2〜約2.0ミリ程度) をおいて対面する吐出口面81には、所定のピッチで複数の吐出口82から成る吐出口列が形成され、共通液室83と各吐出口82とを連通する各液路84の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体など)85が配設されている。記録ヘッド3は、前記複数の吐出口82が主走査方向(記録ヘッド3の移動方向)と交叉する方向に並ぶような位置関係で、キャリッジ4に搭載されている。こうして、画像信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体85を駆動(通電)して、液路84内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口82からインクを吐出させる記録ヘッド(記録手段)3が構成されている。
【0015】
図3は本発明を適用した回復機構部5の第1実施例の構成を示す模式的斜視図であり、図4は図3の回復機構部のキャップ駆動部分を示す模式的側面図である。
図3において、回復機構部5は、回復手段としてのキャッピング手段(キャップ部)20、ワイピング手段(ワイパー部)30及び吸引手段(吸引ポンプ部)40から構成されている。これらの回復手段は回復機構部5のベース部10上に配設されている。図3中の両矢印Aは、記録ヘッド3を搭載した前記キャリッジ4の移動方向に示す。
【0016】
図3及び図4において、21はゴムやエラストマー等の弾性材料から成るキャップであり、該キャップ21は記録ヘッド3の吐出口面81を密閉するためのものである。また、該キャップ21は、剛体であるキャップホルダ22に取り付けられており、記録を行わないとき、あるいは吸引回復を行うときに記録ヘッド3の吐出口面81に密着されるように構成されている。
前記キャップ21はインク吸引口21a及び大気連通口21bを有し、インク吸引口21aは吸引ポンプ41に接続され、大気連通口21bは大気に連通されている。なお、大気連通口21bは大気連通口開閉レバー(不図示)によって開閉される。
【0017】
また、キャップ21内にはキャップ吸収体(不図示)が収納されており、該キャップ吸収体はキャッピング時に所定の間隔をもって記録ヘッド3の吐出口面81と対向するように配置されている。
前記キャップホルダ22は、前記ベース部10に設けられたガイド溝11a、11b(一方のガイド溝11bは不図示)に沿って(図示の例では上下方向に)平行移動可能に取り付けられており、前記ベース部10との間に装着されたキャップばね23(図4)により記録ヘッド3に向けて付勢されている。
【0018】
キャップ21を記録ヘッド3の吐出口面81から離隔させる(図示の例では下げる)場合には、レバー部材(キャップレバー)24によりキャップホルダ22を吐出口面81から離れる方向へ押圧して移動させる(図示の例では、押し下げる)。
レバー部材としてのキャップレバー24は、回復機構部5のベース部10に設けられた軸心24a(図4)を中心に回動可能に取り付けられている。該キャップレバー24の一端部(カム面当接部)24bは、回転駆動されるカム・ギア部材12のカム部の曲面(周面カム)に倣って移動する。すなわち、前記カム・ギア部材12の駆動回転位置に基づくレバー部材(キャップレバー)24の回動位置によって、前記キャップ21の記録ヘッド3に対する位置(接離方向の位置)が決められる。
【0019】
図3において、記録ヘッド3の吐出口面81を拭掃(清掃)するワイパー31はワイパーホルダ32に取り付けられている。前記ベース部10には、リードスクリュー33が回動自在に軸支されている。前記ワイパーホルダ32は、その一端部に前記リードスクリュー33が挿通され、該リードスクリューの反対側の端部で案内部(ベース部10に設けられたレール、又は溝)34と嵌合している。前記案内部34は、前記リードスクリュー33とともに、記録ヘッド3の吐出口面81に形成された吐出口列と平行に設けられている。前記リードスクリュー33の表面に螺旋状に形成された溝には、前記ワイパーホルダ32の突起部(不図示)が係合している。そのため、該リードスクリュー33が回動することにより、ワイパーホルダ32が前記吐出口列の配列方向に平行移動する。この平行移動とともに、ワイパー31が記録ヘッド3の吐出口面81と摺擦し、吐出口列を含む領域を拭掃(拭き取り清掃)する。
【0020】
本実施例では、ワイパー31が記録装置本体の後方(図3中の奥の方)から前方へ(図3中の矢印B方向へ)移動する方向で吐出口面81の拭掃(クリーニング)を行い、該ワイパー31が吐出口面81を通過した後に、ワイパークリーナー(不図示)に当接し、該ワイパー31に付着したインクや異物を除去するように構成されている。
前記リードスクリュー33の一端部にはワイパー駆動ギア36が固定されており、また、ベース部10にはカム・ギア部材12が回動可能に軸支されている。前記カム・ギア部材12にはカム部12a及びギア部12bが形成されており、該ギア部12bは欠歯部12cを有する部分と欠歯部を有しない部分(全周ギア部分)とからなっている。
【0021】
前記ギア部12bの欠歯部12cを有する部分は前記ワイパー駆動ギア36と噛み合い可能に配置され、前記ギア部12bの欠歯部を有しない部分は伝動ギア13と常時噛み合っている。
こうして、前記ワイパー駆動ギア36に対し、前記カム・ギア部材12を介して、リードスクリュー33を回動させるための駆動が伝達されるように構成されている。ここで、ワイパー31の移動速度、すなわちリードスクリュー33の回転速度を調節するために、カム・ギア部材12のギア部12bとワイパー駆動ギア36との間にアイドラギア(不図示)を設けても良い。
【0022】
図5は図3及び図4中のカム・ギア部材12の模式的正面図であり、図6は図5のカム・ギア部材12の側面図である。図3〜図6において、カム・ギア部材12には、キャップ21を記録ヘッド3に対して接離方向に駆動するためのカム部12aと、ワイパー駆動ギア36に駆動を伝達してワイパー31を動作させるためのギア部12bとが設けられており、回復機構部5のベース部10に回動可能に軸支されている。
前記カム部12aには、キャップ21が記録ヘッド3から最も離間した位置(、最も退避した位置、図示の例では最下点)にあるときにワイパー31を動作させるワイピング領域(後述するギア部12bの欠歯部12cに対応する領域)、キャップ21を記録ヘッド3に対して接離方向に移動させるキャップ前進後退駆動領域、並びに、キャップを記録ヘッド3の吐出口面81に密着させるキャッピング領域が設けられている。
【0023】
前記キャッピング領域の範囲内には、大気連通口開閉レバー(不図示)によりキャップ21の大気連通口21bを開く部分が設けられている。前記ギア部12bの前記ワイピング駆動ギア36と噛み合うギア部には、カム・ギア部材12がワイピング領域(ワイピングのための角度範囲)にいる時にしかワイパー駆動ギア36に駆動が伝達されないように、一部に欠歯領域が設けられている。
図3において、41は吸引ポンプを示し、該吸引ポンプ41はチューブ42を介してキャップホルダ22のチューブジョイント部22cに接続され、さらに前記インク吸引口21aからキャップ21内部へと通じている。従って、吐出口面をキャップ21で覆った状態(キャッピング状態)で前記吸引ポンプ41を作動させることにより、該キャップ21内に負圧を発生させることができる。前記吸引ポンプ41としては、例えば、チューブポンプやシリンダポンプ等が使用される。
【0024】
図7は図3の回復機構部5のキャップ駆動部及びワイパー駆動部の記録ヘッドキャッピング時における状態を示す正面図であり、図8は図7のキャップ駆動部及びワイパー駆動部のキャップ離隔における状態を示す正面図である。次に、図7及び図8を参照して、キャップ21の接離動作及びワイパーの摺接動作(前後移動動作)について説明する。
回復系モータ等の駆動源(不図示)によって伝動ギア13を回転させ、該伝動ギア13を介してカム・ギア部材12を回転させると、キャップレバー24の一端部(カム当接部)24bがカム部12aの動き(回転)に倣って移動し、該キャップレバー24が回動する。図示の例では、カム・ギア部材12が図示時計方向に回転すると、キャップレバー(レバー部材)24はその軸(軸心)24aを中心に図示反時計方向に回動する。
【0025】
レバー部材としてのキャップレバー24が図示反時計方向に回動すると、該キャップレバーの面24d、24e(当接部、不図示の面24eは面24dの反対側に設けられている)がキャップホルダ22のボス部22d、22eを押し下げる。これによって、キャップ21は記録ヘッド3から離れる方向へ移動する。ただし、ワイパー駆動ギア36に駆動を伝達するための前記ギア部12bは所定範囲で欠歯になっており、従って、キャップ21がキャッピング位置にあるとき及び接離方向に移動する間には、ワイパー駆動ギア36には駆動が伝達されず、ワイパー31は記録ヘッド3から離れた待機位置(退避位置、ホームポジション)に止まっている。
【0026】
キャップレバー24がさら図示反時計方向に回動し、キャップ21が記録ヘッド3から最も離れた位置(図示の例では最下点)に達すると、カム・ギア部材12のギア部12bがワイパー駆動ギア36と噛み合い始め、さらにカム・ギア部材12を回転させるとワイパー駆動ギア36を介してリードスクリュー33に駆動力が伝えられ、該リードスクリュー33の回動によってワイパー31は図3中の矢印B方向(記録装置の後方から前方)へ移動する。このワイパー31の移動によって、該ワイパー31の先端部が記録ヘッド3の吐出口面81を摺接(摺擦)し、該吐出口面81の拭掃(拭き取り清掃)が実行される。そして、ワイパー31は吐出口面81を通過して反対側(記録装置の前方)の所定位置まで移動する。
【0027】
この状態から、回復系モータ等の駆動源(不図示)を逆転させ、カム・ギア部材12を図示反時計方向に回転させると、リードスクリュー33の逆回転によって先ずワイパー31が戻り方向(図示の例では記録装置の前方から後方)へ移動し、その後、キャップレバー24の一端部24bがカム部12aに倣って移動することにより、該キャップレバー24が図示時計方向に回動しキャップホルダ22のボス部22d、22eから離れる。これに伴って、キャップ21及びキャップホルダ22はキャップばね23のばね力により記録ヘッド3に向けて付勢され、キャップ21が記録ヘッド3の吐出口面81に密着することで吐出口82が密閉される(キャッピングされる)。
【0028】
レバー部材としての前記キャップレバー24には、図7及び図8に示すように、ストッパ手段としての歯形24cが設けられている。この歯形24cは、ワイパー駆動ギア36がカム・ギア部材12のギア部12bの欠歯部12cと対向することで該ワイパー駆動ギア36に駆動が伝達されないときに、図7に示すように、該ワイパー駆動ギア36と噛み合うことにより該ワイパー駆動ギア36の不要な動きを阻止するストッパ手段として機能するものである。そして、キャップ21が記録ヘッド3の吐出口面81から最も離間した位置(最も退避した位置、図示の最下点)に到達するまでキャップレバー24が回動すると(図8の状態になると)、前記歯形24cとワイパー駆動ギア36との噛み合いが外れ、ワイパー駆動ギア36は回転可能な状態になる。
【0029】
図9は本発明を適用したインクジェット記録装置の回復機構部5の第2実施例におけるカム・ギア部材12の構成を示す分解斜視図である。前述の第1実施例のカム・ギア部材12では、カム部(キャップ21を駆動するカム部)12aとギア部(ワイパー駆動ギア36に駆動を伝えるギア部)12bとを一つの部材として一体に形成したが、本実施例におけるカム・ギア部材12は、カム部12a及びギア部12bを別部品14及び15で形成し、これらを軸16に圧入することで同位相で回転するように組み付けることにより一体的に構成されている。
このようして一体化されたカム・ギア部材12は、前記軸16ごと、回復機構部5のベース部10に回転可能に取り付けられる。なお、図示の例では、カム14(カム部12a)とギア15(ギア部12b)が同位相で回転するように、別部品として製作したカム14及びギア15の中心に形成されたD形断面の孔に、同じくD形断面をした軸16を圧入する構成が採られている。
本実施例は、以上説明した点で前述の第1実施例と相違するが、その他の部分では、実質上同じ構成を有するものである。
【0030】
図10は本発明の参考例に係るインクジェット記録装置の回復機構部を示す斜視図である。前述の第1実施例では、ワイパー駆動ギア36に駆動が伝達されないときに該ワイパー駆動ギア36の動き(回動)を阻止するためのストッパ手段として、キャップレバー24と一体に形成した歯形24cを用いたが、本参考例では、前記歯形24cに代えて、回復機構部5のベース部10と一体に形成された弾性変位可能なクリック爪17が用いられている。このクリック爪17は、前記ワイパーホルダ32の側面に係合する爪部を有しており、該爪部を係合させることにより該ワイパーホルダ32を待機位置(図10)に弾性力によって離脱可能に保持するように形成されている。また、前記クリック爪17は、ベース部10と一体でなく、別部材で形成した弾性変位可能な部材を所定位置に固定するように構成しても良い。本参考例は、以上の点で前述の各実施例と相違するが、その他の点では実質上同じ構成を有しており、対応する部分を同一符号で示し、それらの詳細説明は省略する。
【0031】
図11は本発明を適用したインクジェット記録装置の回復機構部の第3実施例におけるカム・ギア部材12の模式的正面図である。前述の各実施例では、前記カム・ギア部材12を正逆両方向に回転可能とし、前記リードスクリュー33に一方向のリード溝のみを形成する構成が採られていた。しかしながら、カム・ギア部材12を比較的大きい直径の部材で形成することができるか、あるいは、ワイパー31の駆動ストローク(必要な移動距離)が比較的短くて良い場合には、図11に示す第3実施例のように、カム・ギア部材12を、ワイパー前進領域とワイパー後退領域並びにキャップ後退領域とキャップ前進領域をそれぞれ略左右対称に配置した形状構造にし、さらにリードスクリュー33に一方向の回転で往復動作可能な一連のリード溝(ガイド溝)を形成することにより、回復系モータ等の駆動源(不図示)の一方向の回転のみを利用してキャッピング動作及びワイピング動作を行うように構成しても良い。
【0032】
なお、以上の実施例では、記録手段としての記録ヘッド3を主走査方向に移動させながら記録するシリアル型のインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、本発明は、被記録材の全幅または一部をカバーする長さのラインタイプのインクジェットヘッドを用いて副走査のみで記録するライン方式のインクジェット記録装置の場合にも、同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。
また、本発明は、記録ヘッドの数にも関わりなく自由に実施できるものであり、1個の記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の他、異なる色のインクを使用する複数の記録ヘッドを用いるカラー記録用のインクジェット記録装置、あるいは同一色彩で異なる濃度のインクを使用する複数の記録ヘッドを用いる階調記録用のインクジェット記録装置、さらには、これらを組み合わせたインクジェット記録装置の場合にも、同様に適用することができ、同様の効果を達成し得るものである。
【0033】
さらに、本発明は、記録ヘッドとインクタンクを一体化した交換可能なヘッドカートリッジを用いる構成、記録ヘッドとインクタンクを別体にし、その間をインク供給用のチューブ等で接続する構成など、記録ヘッドとインクタンクの配置構成がどのような場合にも同様に適用することができ、同様の効果が得られるものである。
なお、本発明は、インクジェット記録装置の場合、例えば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を用いるインクジェット記録ヘッドを使用するものにも適用できるが、中でも、熱エネルギーを利用してインクを吐出する方式のインクジェット記録ヘッドを使用するインクジェット記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば、記録(プリント)の高密度化、高精細化が達成できるからである。
【0034】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなごとく、本発明によれば、記録手段のインク吐出性能を維持、回復するための回復機構部を小型化することができ、それによって記録装置本体の小型化を図ることができるインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用したインクジェット記録装置の一実施例の斜視図である。
【図2】 図1中の記録手段のインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【図3】 本発明を適用したインクジェット記録装置の回復機構部の第1実施例の斜視図である。
【図4】 図3の回復機構部のキャップ駆動部分の側面図である。
【図5】 図3及び図4中のカム・ギア部材の正面図である。
【図6】 図5のカム・ギア部材の側面図である。
【図7】 図3の回復機構部のキャップ駆動部及びワイパー駆動部の記録ヘッドキャッピング時の正面図である。
【図8】 図7のキャップ駆動部及びワイパー駆動部のキャップ離隔時の正面図である。
【図9】 本発明を適用したインクジェット記録装置の回復機構部の第2実施例におけるカム・ギア部材の分解斜視図である。
【図10】 本発明の参考例に係るインクジェット記録装置の回復機構部の斜視図である。
【図11】 本発明を適用したインクジェット記録装置の回復機構部の第3実施例におけるカム・ギア部材の正面図である。
【符号の説明】
3 記録手段(記録ヘッド)
4 キャリッジ
5 回復機構部
10 ベース部
11a、11b ガイド溝
12 カム・ギア部材
12a カム部
12b ギア部
12c 欠歯部
13 伝動ギア
14 別部品(カム部品)
15 別部品(ギア部品)
21 キャップ
22 キャップホルダ
22d、22e ボス部(キャップレバー)
23 キャップばね
24 キャップレバー
24a 軸心(軸)
24b 一端部(カム当接部)
24c ストッパ手段(歯形)
24d、24e 面(キャップレバーの当接部)
31 ワイパー
32 ワイパーホルダ
33 リードスクリュー
36 ワイパー駆動ギア
81 吐出口面
Claims (2)
- 記録ヘッドの吐出口面に密着して該吐出口面を密閉するためのキャップと、該キャップが取り付けられるキャップホルダと、該キャップホルダを前記吐出口面と接離する方向へ移動させるためのキャップレバーと、前記吐出口面と摺接して該吐出口面を清掃するためのワイパーと、該ワイパーが取り付けられるワイパーホルダと、該ワイパーホルダに挿通され回転することで該ワイパーホルダを移動させるリードスクリューと、該リードスクリューの端部に固定されるワイパー駆動ギアと、前記キャップレバーの一端が当接するカム面と前記ワイパー駆動ギアと噛み合うギア部とを有するカム・ギア部材と、を備え、前記カム・ギア部材を回転させることにより、前記カム面と当接する前記キャップレバーを回動させて前記キャップを前記吐出口面から離間させるとともに、前記ギア部と噛み合う前記ワイパー駆動ギアを回転させて前記ワイパーを前記吐出口面と摺接させるインクジェット記録装置であって、
前記キャップが前記吐出口面に密着しているときには前記ワイパー駆動ギアに駆動を伝達せず、前記キャップが前記吐出口面から離間しているときには前記ワイパー駆動ギアに駆動が伝達されるように、前記ギア部に欠歯部を設けるとともに、
前記欠歯部が前記ワイパー駆動ギアと対向するときには前記ワイパー駆動ギアと噛み合い、前記ギア部が前記ワイパー駆動ギアと噛み合うときには前記ワイパー駆動ギアと噛み合わない歯形を前記キャップレバーに設けることで前記ワイパー駆動ギアの動きを阻止することを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記キャップホルダを前記吐出口面に向けて付勢するキャップばねを備え、前記キャップホルダはベース部に設けられたガイド溝に沿って移動することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
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