JP4669157B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェットヘッドの吐出口面をワイピングするためのワイパーを有する回復系ユニットを備えたインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の機能を有する記録装置、あるいはコンピューターやワードプロセッサ等を含む複合型電子機器やワークステーションなどの出力機器として用いられる記録装置は、記録情報に基づいて紙、布、プラスチックシート、OHP用シート等の記録媒体(被記録材)に画像(文字や記号等を含む)を記録していくように構成されている。前記記録装置は、記録方式により、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザービーム式等に分けることができる。
【0003】
記録媒体の搬送方向(紙送り方向、副走査方向)と交叉する方向に主走査しながら記録するシリアルタイプの記録装置においては、記録媒体に沿って移動(主走査)するキャリッジ上に搭載した記録手段としての記録ヘッドによって画像を記録し、1行分の記録を終了した後に所定量の紙送り(副走査としてのピッチ搬送)を行い、その後に再び停止した記録媒体に対して次の行の画像を記録(主走査)するという動作を繰り返すことにより、記録媒体全体の記録が行われる。
一方、記録媒体(被記録材)の搬送方向の副走査のみで記録するラインタイプの記録装置においては、記録媒体を所定の記録位置にセットし、一括して1行分の記録を行った後、所定量の紙送り(ピッチ送り)を行い、さらに次の行の記録を一括して行うという動作を繰り返すことにより、記録媒体全体の記録が行われる。
【0004】
そのうち、インクジェット式の記録装置(インクジェット記録装置)は、記録手段としてのインクジェットヘッドから記録媒体へインクを吐出して記録を行うものであり、記録手段のコンパクト化が容易であり、高精細な画像を高速で記録することができ、普通紙に特別の処理を必要とせずに記録することができ、ランニングコストが安く、ノンインパクト方式であるため騒音が少なく、しかも、多種類のインク(例えばカラーインク)を使用してカラー画像を記録するのが容易であるなどの利点を有している。
また、インクジェット記録装置においては、記録媒体(被記録材)の材質に対する要求も様々なものがあり、近年では、これらの要求に対する開発が進み、通常の記録媒体である紙(薄紙や加工紙を含む)や樹脂薄板(OHP等)などの他に、布、皮革、不織布、さらには金属等を記録媒体として用いる記録装置も使用されるようになっている。
【0005】
インクジェット記録装置は、インクジェットヘッドに供給されるインクを加熱あるいは振動によって用紙等の記録媒体に向かって噴出させることで記録(画像形成、プリント、印刷等)を行うように構成されており、現在のところ記録媒体に沿って移動するキャリッジに搭載したインクジェットヘッドを用いて記録するシリアル式のインクジェット記録装置が広く使用されている。
【0006】
また、上記インクジェット記録装置においては、インクジェットヘッドのメンテナンスを自動的に行うための回復系ユニットが使用されている。この回復系ユニットは、一般に、インクジェットヘッドの吐出口を保護するとともにその乾燥を抑制するためのキャッピング手段と、記録装置が長期に停止している場合にキャッピング状態でキャップ内に負圧を発生させることによりインクジェットヘッドの吐出口で固まりかけたインクや吐出口内の気泡等を強制的にヘッド外部に吸い出すための吸引回復手段と、インクジェットヘッドの吐出口面に付着したインクや埃等を拭き取り除去するためのワイピング手段(ヘッドクリーニング機構)と、を備えている。
【0007】
さらに、インクジェット記録装置においては、インクジェットヘッドの吐出性能を維持するために吐出口から吐出(予備吐出)されるインクを受けるためのインク受け(予備吐出受け)を設けることも行われている。
すなわち、従来より、インクジェット記録装置においては、記録手段としてのインクジェットヘッド(記録ヘッド)に設けられた吐出口(吐出口群)から記録媒体にインクを吐出して画像を形成する際に、吐出性能を維持し常に安定したインク吐出を可能とするために、記録領域外においてインクジェットヘッドからインクを吐出させる予備吐出(空吐出)を行うことが知られている。
【0008】
前記予備吐出されるインクを受ける予備吐出受けとしては、上記のキャッピング手段、吸引回復手段及びワイピング手段等を有する回復系ユニット内に配置され、インクジェットヘッドの吐出口を覆ってインクの蒸発を抑制するためのキャップを利用し、該キャップでインクを受ける構成のものがある。しかし、前記予備吐出受けは、キャリッジ走査上の記録領域を外れた位置であって、且つ前記回復系ユニットの外側に配置されたインク受けで構成されるのが一般的である。さらに、前記予備吐出受けとしては、回復系ユニットの外側ではあるが、該回復系ユニットの本体を形成する枠体の外周に付随させる形で該回復系ユニットと一体化したインク受けで構成されるものも存在する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のインクジェット記録装置における回復系ユニットにおいては、予備吐出受けを設けると、回復系ユニットの大型化を招いたり、記録領域外でのキャリッジ移動距離が増大したりするため、キャリッジの移動距離が長くなり、そのため、記録装置の大型化を招いたり、キャリッジの往復移動に要する時間の増大によりスループットが低下するなどの解決すべき技術的課題があった。
【0010】
本発明はこのような技術的課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、予備吐出受けを回復ユニット内に配置することで装置本体の省スペース化を図るとともに、キャリッジの移動距離を短縮することで非記録領域の短縮化を図ることができ、それによって、記録装置の大型化を防止でき、記録動作のスループットの向上を図ることができる回復系ユニットを備えたインクジェット記録装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、インクジェットヘッドを搭載して移動するためのキャリッジと、該キャリッジの移動方向と交差する方向に移動して前記インクジェットヘッドの吐出口面をワイピングするためのワイパーと、前記インクジェットヘッドから予備吐出されたインクを受けるための予備吐出受けと、前記ワイパー及び前記予備吐出受けを制御する制御手段と、を備えるインクジェット記録装置において、前記予備吐出受けは、前記ワイパーの移動領域内で前記吐出口面との距離が第1の距離である第1の位置と、前記ワイパーの移動領域外で前記吐出口面との距離が前記第1の距離よりも大きい第2の距離である第2の位置とに移動可能であり、前記制御手段は、前記インクジェットヘッドに予備吐出させる場合は前記予備吐出受けを前記第1の位置に移動させ、前記ワイパーに前記吐出口面をワイピングさせる場合は前記予備吐出受けを前記第2の位置に移動させることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を具体的に説明する。なお、各図面を通して同一符号は同一又は対応部分を示すものである。
図1は本発明を適用した回復系ユニットを備えたインクジェット記録装置の一実施例を示す模式的正面図である。図1において、記録手段としてのインクジェットヘッド3は、記録情報に応じて、該インクジェットヘッド3の吐出口面に形成された複数の吐出口群より記録媒体402にインク滴を吐出して画像を形成する。このインクジェットヘッド3の吐出方式としては、熱によるインクの発泡によってインク滴を吐出するバブルジェット(登録商標)方式やピエゾ素子等の圧電素子によってインク滴を吐出する圧電方式等を用いることができる。
【0014】
プラテン403は記録装置内へ送給された記録媒体(記録用紙等)402を支持することで該記録媒体の記録面をヘッド3の吐出口面に対して所定距離の位置に規制する。記録媒体402の搬送は周知の摩擦ローラ(搬送ローラ及びピンチローラ)等の記録媒体搬送機構によって行われる。インクジェットヘッド3はキャリッジ404に脱着自在に搭載されている。前記キャリッジ404は、ガイドシャフト405に沿って往復移動可能に案内支持されており、キャリッジ駆動機構により、記録媒体402及びプラテン403を横断して両方向に移動することができる。すなわち、前記キャリッジ404は、駆動モータ(キャリッジモータ)のモータプーリとその反対側に配設されたアイドラプーリとの間に張架されたベルト(タイミングベルト)又はワイヤに連結されており、前記駆動モータを正逆回転駆動することにより往復移動させられる。
なお、キャリッジ404には、インクジェットヘッド3に供給するインクを貯留しているインクカートリッジ(不図示)も脱着自在に搭載されている。また、記録媒体搬送機構及びキャリッジ駆動機構の駆動源としてはモータが使用されている。
【0015】
前記記録手段としてのインクジェットヘッド(記録ヘッド)3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット記録手段であって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。また、前記ヘッド3は、前記電気熱変換体により印加される熱エネルギーによってインク内に膜沸騰を生じさせ、その時に生じる気泡の成長、収縮による圧力変化を利用して吐出口よりインクを吐出させ、記録(プリント)を行うものである。
【0016】
図7は、インクジェットヘッド3のインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。図7において、記録用紙等の記録媒体402と所定の隙間(例えば、約0.2〜約2.0ミリ程度) をおいて対面する吐出口面181には、所定のピッチで複数の吐出口182が形成され、共通液室183と各吐出口182とを連通する各液路184の壁面に沿ってインク吐出用のエネルギーを発生するための電気熱変換体(発熱抵抗体など)185が配設されている。ヘッド3は、前記吐出口182が主走査方向(該ヘッド3及びキャリッジ404の移動方向)と交叉する方向に並ぶような位置関係で、キャリッジ404に搭載されている。こうして、画像信号または吐出信号に基づいて対応する電気熱変換体185を駆動(通電)して、液路184内のインクを膜沸騰させ、その時に発生する圧力によって吐出口182からインクを吐出させるインクジェットヘッド(記録手段)3が構成されている。
【0017】
図1において、キャリッジ404の移動範囲内であって記録領域(例えばプラテン403の範囲)を外れた領域内の所定位置には回復系ユニット50が配設されている。本実施例では、前記回復系ユニット50は、キャリッジ404の移動範囲内でかつ記録媒体402が搬送される領域の外側の一方の端部に配置されている。
【0018】
図2は本発明を適用した回復系ユニット(図1中の回復系ユニット)50の構成を上から見て示す模式的平面図である。図2において、回復系ユニット50の内部には、非記録時にインクジェットヘッド3の吐出口182を覆うためのキャップ52と、該キャップ52によってヘッド3の吐出口82を覆った状態(キャッピング状態)で該ヘッド3の吐出口182よりインクを吸引する(吸い出す)ための吸引ポンプ(不図示)と、ヘッド3の吐出口面181に付着したインクを拭き取り除去(ワイピング、クリーニング)するためのワイパー(ワイパーブレード)81と、安定した吐出性能を保つためにヘッド3の吐出口182から吐出(予備吐出)されるインクを受けるための予備吐出受け200とが設けられている。
なお、図示の例では、キャップ52としては、ブラックインクの吐出口群とカラーインクの吐出口群とを個別に覆う2個のキャップが設けられている。また、前記予備吐出の動作は、対応する吐出口群が前記予備吐出受け200と対面するような位置にヘッド3を停止させた状態で行われる。
【0019】
図3は図2の回復系ユニット50のキャッピング手段及び吸引回復手段の部位を断面して示す模式的縦断面図である。この図3には、本実施形態の回復系ユニット50のカム機構の構成及び動作を説明するための図面でもある。
図2及び図3において、インクジェットヘッド3はインクを吐出する吐出口群が形成された吐出口面181を有しており、該ヘッド3をキャリッジ404と共に一体に移動させることにより、紙面の搬送方向に直交する方向(主走査方向)の走査が行われる。回復ベース51は、前記ヘッド3に対する各種の回復手段(キャッピング手段、吸引回復手段、ワイピング手段、予備吐出受け等)の部品を支持・固定するものである。
【0020】
キャップ52はキャップホルダ60に一体的に固着されており、該キャップ52には吸引チューブ53が接続されており、該吸引チューブ53を通してキャップ52内に負圧を作用させることにより該キャップ(及び吐出口182)からインクを流出させることができる。図示の例では、前記吸引チューブ53は、円弧状のチューブフレーム54とポンプフレーム55との間を通して配設されている。
前記ポンプフレーム55には円盤状のコロホルダ56が回動可能に軸支されており、該コロホルダ56上には半径方向外部へ突出する2個の加圧コロ(ポンプコロ)57が取り付けられている。各加圧コロ57は前記コロホルダ56に対して回動自在に軸支されている。
各加圧コロ57は、ポンプバネ58によって、チューブフレーム54の円弧状の内面に圧接する方向に付勢されている。これら、チューブ53、チューブフレーム54、ポンプフレーム55、コロホルダ56、加圧コロ57、ポンプバネ58などによって、吸引回復用の吸引ポンプ(チューブポンプ)59が構成されている。
【0021】
前記回復ベース51内の所定位置(図示の例では右側の部位)には、コントロールカムとしてのカム部材(カム軸部材)65が回動可能に軸支されている。このコントロールカム(カム部材)65には、回復系ユニット50の各種の回復手段の動作を制御するために必要なカム板65a・・・が一体に設けられている。次に、回復系ユニット50に設けられた各回復手段の構成について説明する。
図3において、前記キャップ52には、前記吸引チューブ53とは別に、大気連通チューブ71が接続されている。この大気連通チューブ71の他端は大気連通弁72に接続されている。
【0022】
一方、前記回復ベース51には軸73が固定されており、該軸73には大気連通アーム74が回動可能に軸支されている。図3に示す状態では、前記大気連通アーム74は、大気連通バネ75によって図示反時計方向に付勢されることで前記大気連通弁72に圧接され、該大気連通弁72を密封状態に保っている。
図3の状態から前記カム部材65のカム板65aが回転すると、該カム板65aの突起部65aaに追従して大気連通アーム74が回動する。この大気連通アーム74の回動により該大気連通アームの一端部(弁アーム部)74bが揺動することで、前記大気連通弁72の開閉動作が行われる。
【0023】
前記キャップホルダ60は、キャップベース61に設けられた軸61aにより回動可能に支持されている。一方、前記キャップベース61は、そのガイド部61aが回復ベース51のスライドリブ51aに係合するとともに、該キャップベース61のスライド軸61bに回復ベース51のガイド孔51bが係合することにより、該回復ベース51に上下方向に摺動可能に支持されている。
一方、前記キャップベース61を上下動させるためのキャップアーム62は、回復ベース51に固定された前記軸73上に回動可能に支持されている。
前記キャップアーム62のカムフォロワ部62a、62bは、前記カム部材65のカム板65b、65cの回動に倣って揺動する。また、前記キャップアーム62の他端部にはキャップ駆動コロ部62cが形成されており、このキャップ駆動コロ部62cは前記キャップベース61の溝部61cと係合している。従って、前記キャップアーム62が前記軸73を中心に回動(揺動)すると、それに応じて、前記キャップベース61が上下方向にスライド(移動)するように構成されている。
【0024】
図4は図2の回復系ユニットの予備吐出受けの部位を断面して示す模式的縦断面図である。図4には、予備吐出口200とカム部材65との関連構成が示されている。図2及び図4において、回復ベース51に設けられた軸205にはベルクランク状の予備吐出受けアーム201が回動可能に軸支されており、該予備吐出受けアーム201は、その一端部を予備吐出受けばね202で時計回り方向に付勢することによりカム板65hに押圧されている。さらに、前記予備吐出受けアーム201の反対側の端部に形成された長孔が予備吐出受け200に設けられた予備吐出受け軸203に係合されている。そして、前記予備吐出受け200は、その両側面に2本づつ設けられたボスを介して、回復ベース51の縦方向のスライドリブ51c、51du 形成された溝部に摺動可能に係合されている。
【0025】
前述のような、予備吐出受けアーム201の長孔と予備吐出受け軸203との係合、予備吐出受け200の側面に設けられた4本のボスと回復ベース51のスライドリブ51c、51dとの係合によって、予備吐出受け200は回復ベース51に対して上下方向に摺動可能に案内支持されている。そして、予備吐出受けアーム201は、カム部材65の回転に伴う前記カム板65hの回転に倣って軸205を中心に揺動する。こうして、カム板65の回転に伴う予備吐出受けアーム201の揺動によって予備吐出受け200を上下方向にスライド(上下動)させ、その高さ位置(インクジェットヘッド3の吐出口面181との間隔)を制御できるように構成されている。
【0026】
また、予備吐出受け200の内部には予備吐出吸収体204が配置されている。この予備吐出吸収体204は、ヘッド3から予備吐出されたインク滴を速やかに吸収することにより周辺部のインク汚れを防止するためのものである。
なお、予備吐出受け200は、図2に示すように、回復系ユニット50内の後述するワイパー(ワイパーブレード)81の移動経路内(移動領域内)内に配置されている。
インクジェットヘッド3の予備吐出を行う時には、図4に示すように、該インクジェットヘッド3の吐出口面181を予備吐出受け200の上端面と対向させる。その際、予備吐出受け200の上端面が吐出口面181から距離Dだけ離れるように構成されている。
予備吐出によるインク滴を予備吐出受け200で確実に捕捉する点からは、前記距離Dはできるだけ小さい方が望ましい。そこで、本実施例においては、上下動可能(上下方向にスライド可能)な予備吐出受け200が最も上方に位置するときに、前記距離Dが十分に小さくなるように構成されている。
【0027】
図5は図2の回復系ユニットのワイピング手段の部位を断面して示す模式的縦断面図であり、図6は図2の回復系ユニットのワイパー及び予備吐出受けの動作を説明するための模式的縦断面図である。
図2〜図6において、インクジェットヘッド3の吐出口面181をワイピングするためのワイパー81は、ウレタン等の可撓性の材質で形成されており、ワイパーホルダ82に固定支持されている。ワイパーホルダ82は、回復ベース51に対し左右方向にスライド可能に支持されている。
図5において、ギアホルダ301には順に噛み合ったアイドラギア302、303、304が軸支されており、前記アイドラギア304は回復ベース51に設けられたワイパー用ラック51eと噛み合い、前記アイドラギア302はワイパーホルダ82が取り付けられたワイパーベース300に形成されたラックと噛み合っている。
【0028】
カム部材65が回転すると、該カム部材65に固定されたワイパーアーム306が回転し、ワイパーアーム306は前記ギアホルダ301の外周面305aに接触しながら該ギアホルダ301を図5中の左方へ押しやる。すると、前記ギア群(前記ラックを含む)の駆動伝達により、ワイパー81及びワイパーホルダ82はワイパーベース300と共に図5中の左方へ移動する。
ワイパー81が図5中で左方向へ移動することにより、回復系ユニット50に対向する位置にあるインクジェットヘッド3の吐出口面181が摺擦され、該吐出口面のクリーニング(ワイピング、拭き取り清掃)が行われる。ワイパー81が吐出口面181を通過すると、該ワイパー81の先端部81a(図6)がワイパークリーナ83に接触することで、該ワイパー81のクリーニングが行われる。このワイパークリーナ83は、ワイパー81のワイピング機能(クリーニング機能)を維持するためのものであり、インク吸収性に優れた材質で形成されている。
【0029】
前記ワイパーアーム306が更に回動して前記ギアホルダ301の外周面305aから離れると、該ギアホルダ301はギアホルダばね305によって図5中の右方向へ押し戻される。このギアホルダ301が右方向へ移動することで、前述の場合と逆方向の動きで、前記ワイパーベース300、前記ワイパーホルダ82、前記ワイパー81も図5中の右方向へ押し戻される。前記ギアホルダ301は、前記右方向の移動により、ワイパーベース300の端部が回復ベース51のワイパーストッパ51fに衝当(当接)する位置(図5に示す位置)まで押し戻される。
【0030】
図3において、回復ベース51に設けられた軸102を中心に回動可能に軸支された選択カム101が設けられている。この選択カム101が回動すると、大気連通アーム74のアーム部74cがこれに倣うことで、該大気連通アーム74が揺動する。この大気連通アーム74の揺動により、前記カム部材65の位相(回動)に関係なく、キャップ52の内部を大気連通状態に保つことができる。つまり、前記選択カム101は、前記大気連通アーム74による前記大気連通弁72の開閉を独自に制御する(切り換える)ためのものである。
【0031】
次に、回復系ユニット50の回復動作(回復手段)の一つであるワイピング動作(ワイピング手段)及び該ワイピング動作から記録動作への一連の動作について、主として図6を参照して説明する。図6において、カム板65b、65cの回転に応じてカムフォロワ部62bがカム板65cの斜面65baから外周面65bbに倣うことにより、キャップアーム62が軸73を中心に反時計回りに揺動すると、キャップベース61(図3)が下方向へ移動(スライド)し、キャップ52が下方向へ移動する。また、このキャップベース61の下方向スライドと同時に、予備吐出受け200も図4で説明した機構によって下方向へ移動(スライド)する。
【0032】
すなわち、図4において、インクジェットヘッド3が回復系ユニット50と対向する位置にあるときにカム部材65を回動させると、カム板65hの回転に応じて、予備吐出受けばね202によって該カム板65hに押圧されている予備吐出受けアーム201が軸205を中心に反時計回りに揺動し、予備吐出受け200が下方向に移動(スライド)する。
この状態(キャップ52及び予備吐出受け200が下方向の離隔位置にある状態)で、ワイパー(ワイパーブレード)81を図5で説明したワイピング手段の動作によって左方向へ移動させると、該ワイパー81の先端部81aがヘッド3の吐出口面を摺擦することで、インクジェットヘッド3のクリーニング(ワイピング、拭き取り清掃)が実行される。
【0033】
ワイパー81によるインクジェットヘッド3のクリーニングを行った後、キャリッジ404を主走査方向に駆動して該インクジェットヘッド3を図6中の紙面奥方向へ移動させることにより、該ヘッド3を回復系ユニット50と対向する領域から外れた位置へ移動(退避)させる。こうしてヘッド3を外れた位置へ移した状態で、図5で説明した機構を戻し方向へ動作させることにより、ワイパー81を右側へ移動させ、図5に示す位置へ戻す。こうしてワイパー81が戻り切ったところで、予備吐出受け200も図4で説明した予備吐出受け駆動機構の動作によって上方向に戻され、図4に示す元の位置(吐出口面から距離Dの上方位置)に復帰させられる。
【0034】
以上の実施例においては、図2において、キャップ52及び予備吐出受け200が下方向に位置すると共に、インクジェットヘッド3がキャップ52の真上に位置する状態で、ワイパー(ワイパーブレード)81を矢印B方向へ移動させて吐出口面181のクリーニング(ワイピング)を行い、ワイパー81が矢印B方向へ行き切ったところで、インクジェットヘッド3を矢印A方向(キャリッジ404の往復移動方向)へ移動させて回復系ユニット50から外れた位置へ退避させ、次いで、ワイパー81を矢印C方向(戻し方向)へ移動させるとともに、予備吐出受け200を上昇させる(図2の紙面に垂直方向手前へ移動させる)ことで、一連のワイピング動作が完了する。
ワイピング動作が完了した後、インクジェットヘッド3による記録動作を再開する。そして、記録動作中では、安定した予備吐出性能を保つために、例えばインクジェットヘッド3のスキャン毎に(主走査方向の往復移動毎に)、ヘッド3を回復系ユニット50に対向させ、予備吐出受け200の真上で予備吐出を行わせる。
【0035】
前述の通り、前記予備吐出受け200は、通常の状態では、予備吐出によるインク滴を確実に捕捉できるように吐出口面181からの距離Dが十分に小さい位置に配置されている。
そして、前記予備吐出受け200は、回復系ユニット50の内部に配設されているので、上記の通常の状態(吐出口面181から距離Dの位置)では、ワイパー81の通過領域(移動経路)に位置することから、そのままではワイパー81と干渉するおそれがある。
しかるに、前述の本実施例においては、吐出口面181をワイピング(クリーニング)する際には、キャップ52を下方向へ移動(すらいど)させるとともに予備吐出受け200も下方向へ移動(スライド)させ、ワイピングの後で予備吐出受けを上方向の位置(吐出口面181から距離Dの位置)に戻すように構成され、これらを自動的に動作させるので、予備吐出受け200とワイパー(ワイパーブレード)81との干渉を確実に避けることができる。同時に、確実で安定した予備吐出性能を維持することができる。
【0036】
以上説明した実施例においては、インクジェットヘッド3の吐出口面181をワイピングするためのワイパー81を有するインクジェット記録装置の回復系ユニット50において、前記回復系ユニット内の前記ワイパー81の移動領域に対応する位置に、前記インクジェットヘッド3から予備吐出されるインクを受けるための予備吐出受け200が配置されている構成としたので、予備吐出受け200を回復ユニット50内に配置することで記録装置本体の省スペース化を図るとともに、キャリッジ404の移動距離を短縮することで非記録領域の短縮化を図ることができ、それによって、記録装置の大型化を防止でき、記録動作のスループットの向上を図ることができる回復系ユニット及び該ユニットを備えたインクジェット記録装置がが提供される。
【0037】
また、以上説明した実施例においては、さらに、ワイピング動作に伴う前記ワイパー81の移動時に、前記予備吐出受け200を前記ワイパーの移動領域を外れた位置へ移動させるように構成し、その場合、前記予備吐出受け200は前記インクジェットヘッド3の通過領域に対して垂直方向にスライドすることで前記ワイパー81の移動領域を外れた位置へ移動するように構成し、さらに、ワイピング動作に伴う前記ワイパー81の移動時に、前記ワイパー81と前記予備吐出受け200は一体のコントロールカム65の動作に連動する構成としたので、一層効率よく、予備吐出受け200を回復ユニット50内に配置することで記録装置本体の省スペース化を図るとともに、キャリッジ404の移動距離を短縮することで非記録領域の短縮化を図ることができ、それによって、記録装置の大型化を防止でき、記録動作のスループットの向上を図ることができる回復系ユニット及び該ユニットを備えたインクジェット記録装置が提供される。
【0038】
また、本発明は、単色記録を行うインクジェット記録装置、1個または複数個のインクジェットヘッドを用いて複数の異なる色で記録するカラーインクジェット記録装置、同一色彩で異なる濃度の複数濃度で記録する階調記録用のインクジェット記録装置、さらには、これらを組み合わせたインクジェット記録装置などの場合にも、同様に適用することができ、同様の効果を達成しうるものである。
【0039】
また、本発明は、インクジェットヘッドとインクタンクを一体化した交換可能なヘッドカートリッジを用いる構成、インクジェットヘッドとインクタンクを別体にし、その間をインク供給用のチューブ等で接続する構成など、インクジェットヘッドとインクタンクの配置構成がどのような場合にも同様に適用することができ、同様の効果が得られるものである。
【0040】
さらに、本発明は、例えば、ピエゾ素子等の電気機械変換体等を用いるインクジェットヘッドを使用するものにも適用できるが、中でも、熱エネルギーを利用してインクを吐出する方式のインクジェットヘッドを使用するインクジェット記録装置において優れた効果をもたらすものである。かかる方式によれば、記録の高密度化、高精細化が達成できるからである。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、予備吐出受けを回復ユニット内に配置することで記録装置本体の省スペース化を図るとともに、キャリッジの移動距離を短縮することで非記録領域の短縮化を図ることができ、それによって、記録装置の大型化を防止でき、記録動作のスループットの向上を図ることができる回復系ユニットを備えたインクジェット記録装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した回復系ユニットを備えたインクジェット記録装置の一実施例を示す模式的正面図である。
【図2】本発明を適用したインクジェット記録装置の回復系ユニットの一実施例を示す模式的平面図である。
【図3】図2の回復系ユニットのキャッピング手段及び吸引回復手段の部位を断面して示す模式的縦断面図である。
【図4】図2の回復系ユニットの予備吐出受けの部位を断面して示す模式的縦断面図である。
【図5】図2の回復系ユニットのワイピング手段の部位を断面して示す模式的縦断面図である。
【図6】図2の回復系ユニットのワイパー及び予備吐出受けの動作を説明するための模式的縦断面図である。
【図7】図1中のインクジェットヘッドのインク吐出部の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【符号の説明】
3 インクジェットヘッド(記録手段、記録ヘッド)
50 回復系ユニット
51 回復ベース
52 キャップ
53 チューブ
54 チューブフレーム
55 ポンプフレーム
56 コロホルダ
57 加圧コロ
58 ポンプバネ
60 キャップホルダ
61 キャップベース
62 キャップアーム
65 コントロールカム
71 大気連通チューブ
72 大気連通弁
74 大気連通アーム
81 ワイパー(ブレード)
82 ブレードホルダ
83 ワイパークリーナ
101 選択カム
181 吐出口面
182 吐出口
185 電気熱変換体
200 予備吐出受け
201 予備吐出受けアーム
202 予備吐出受けばね
204 予備吐出吸収体
300 ワイパーベース
301 ギアホルダ
305 ギアホルダばね
306 ワイパーアーム
402 記録媒体(記録用紙)
403 プラテン
404 キャリッジ
405 ガイド

Claims (3)

  1. インクジェットヘッドを搭載して移動するためのキャリッジと、該キャリッジの移動方向と交差する方向に移動して前記インクジェットヘッドの吐出口面をワイピングするためのワイパーと、前記インクジェットヘッドから予備吐出されたインクを受けるための予備吐出受けと、前記ワイパー及び前記予備吐出受けを制御する制御手段と、を備えるインクジェット記録装置において、
    前記予備吐出受けは、前記ワイパーの移動領域内で前記吐出口面との距離が第1の距離である第1の位置と、前記ワイパーの移動領域外で前記吐出口面との距離が前記第1の距離よりも大きい第2の距離である第2の位置とに移動可能であり、
    前記制御手段は、前記インクジェットヘッドに予備吐出させる場合は前記予備吐出受けを前記第1の位置に移動させ、前記ワイパーに前記吐出口面をワイピングさせる場合は前記予備吐出受けを前記第2の位置に移動させることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記吐出口面には、複数の吐出口が前記交差する方向に配されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記ワイパー及び前記予備吐出受けを移動させるためのコントロールカムをさらに備え、前記制御手段は前記コントロールカムを回転させることにより前記ワイパー及び前記予備吐出受けを移動させることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
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