JP3629644B2 - 樹脂組成物、その製造方法、およびそれからなるホットメルト接着剤 - Google Patents

樹脂組成物、その製造方法、およびそれからなるホットメルト接着剤 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は各種のプラスチック類、ゴム類、繊維類、金属類などの被着体に対して高い接着力を有し、特に接着した複合物が高温下に屈曲、圧縮、伸張などの動的外力を受けて、各層間に大きなずり変形が生じる過酷な条件下で使用されても長期間にわたって高い接着力を保持し、さらに溶融押出加工時の成形性に優れた樹脂組成物、その製造方法およびホットメルト接着剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリブチレンテレフタレート単位のような結晶性芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールのような脂肪族ポリエーテル単位および/またはポリラクトンのような脂肪族ポリエステル単位をソフトセグメントとするポリエステルブロック共重合体は、機械的強度が高く、また耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などのゴム的性質、低温および高温特性、耐水性などに優れ、さらに熱可塑性で成形加工が容易であるため、自動車部品および電気・電子部品、繊維、フィルムなどに用途を拡大している。また、これらの性質を利用した接着性材料としても、繊維積層物、フィルム積層物、各種ベルト、各種円筒状物などにおいてその使用が試みられている。
【0003】
しかし、ポリエステルブロック共重合体を接着性材料として使用した場合、用途によっては接着力が十分でなく、特に高温下で屈曲、圧縮、伸張などの動的外力を受けて、各層間に大きなずり変形が生じる過酷な条件下で使用される場合には耐久性が問題になることがあった。
【0004】
かかる過酷な条件下での耐久性を改良するために、被着体をポリイソシアネート化合物またはポリエポキシ化合物で処理したのち、熱可塑性ポリウレタンとポリエポキシ化合物で処理し、さらに熱可塑性ポリウレタンを塗布し、その後、ポリエステル系熱可塑性エラストマに密着させる方法が特開平2−151635号公報に開示されている。また、セグメントコポリエステルと熱可塑性ポリウレタンを含有するポリマ混合物、およびその混合物から得られるチューブを巻心や外装材として用い補強材と組み合わせたチューブ製品が特開昭52−102365号公報に開示されている。さらに、筒状布はくの外面に熱可塑性ポリウレタン弾性樹脂を主成分とする合成樹脂を内層とし熱可塑性ポリエステル弾性樹脂を主成分とする合成樹脂を外層とする積層皮膜を被覆した内張り材が特公平2−19785号公報に開示されており、該公報にはこの内層と外層の中間層として熱可塑性ポリエステル弾性樹脂と熱可塑性ポリウレタン弾性樹脂とのブレンド物を用いてもよいことも記載されている。また、熱可塑性ポリエステルブロック共重合体と熱可塑性ポリウレタンとの組成物については特公昭52−786にも開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記特開平2−151635号公報に開示された接着方法は、確かに耐久性の改良されたものであるが、工程が多いため作業性の点において十分満足できるものではない。また、前記特開昭52−102365号公報、特公平2−19785号公報、および特公昭52−786号公報に開示された熱可塑性ポリエステル弾性樹脂と熱可塑性ポリウレタン樹脂との混合物は、ある程度接着性の改良されたものであるが、高温下での耐久性においては必ずしも十分な効果を得られないことがあった。さらに、これらの樹脂組成物を溶融押出加工しようとすると、バラス効果が大きかったり曳糸性が悪かったりして均質な加工が困難であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは、高温下での耐久性に優れ、溶融押出加工時の成形性に優れた樹脂組成物について鋭意検討した結果、ポリエステルブロック共重合体にポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマとスチレン系樹脂を配合した樹脂組成物を見いだし本発明に到達した。
【0007】
すなわち本発明は、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)5〜95重量部と、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)95〜5重量部からなる配合物に、スチレン系樹脂(C)を配合してなる樹脂組成物であり、また、その配合が、押出機またはニーダーの中で加熱混合溶融することである樹脂組成物の製造方法であり、また、前記樹脂組成物を粉末状、顆粒状、フィルム状、シート状または円筒状に成形したホットメルト接着剤である。
【0008】
以下、本発明について詳述する。
【0009】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の高融点結晶性重合体セグメント(a)は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールから形成されるポリエステルであり、好ましくはテレフタル酸およびまたはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートであるが、この他にテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−タ−フェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオ−タ−フェニルなどの芳香族ジオールなどから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであっても良い。
【0010】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の低融点重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルである。脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。また、脂肪族ポリエスエテルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。これらの脂肪族ポリエーテルおよび/または脂肪族ポリエステルのなかで得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性からポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。また、これらの低融点重合体セグメントの数平均分子量としては共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。
【0011】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)における低融点重合体セグメント(b)の共重合量は、好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは15〜75重量%である。
【0012】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)は公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール、および低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル交換反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法。あるいはジカルボン酸と過剰量のグリコールおよび低融点重合体セグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法。また、あらかじめ高融点結晶性セグメントを作っておき、これに低融点重合体セグメント成分を添加してエステル交換反応によりランダム化せしめる方法。高融点結晶性セグメントと低融点重合体セグメントを鎖連結剤でつなぐ方法。さらにポリ(ε−カプロラクトン)を低融点重合体セグメントに用いる場合は、高融点結晶性セグメントにε−カプロラクトンモノマを付加反応させるなど、いずれの方法をとってもよい。
【0013】
本発明の接着性樹脂組成物に用いられるもう一つの成分であるポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)(以下、単に熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)と呼ぶ。)は、ポリウレタン成分をハードセグメントとし、分子量700〜8000程度の脂肪族ポリカーボネートをソフトセグメントとしたブロック共重合体である。脂肪族ポリカーボネートとしてはポリヘキサンジオールカーボネートが挙げられる。本発明の熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)は、このようなソフトセグメント成分と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、およびエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのグリコールから合成される。完全に鎖状のものよりも、若干の分岐と架橋を有する物の方がより好ましい。
【0014】
本発明の接着性樹脂組成物に用いられるさらにもう一つの成分であるスチレン系樹脂(C)とは、芳香族ビニル単独重合体あるいは芳香族ビニルとシアン化ビニルの共重合体である。芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどを挙げることができる。これらの中でもスチレンおよび/あるいはα−メチルスチレンが好ましく用いられる。シアン化ビニルとしてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどを挙げることができる。これらの中でもアクリロニトリルが好ましい。さらに上記したようなスチレン系樹脂に対して共重合可能な単量体を共重合してもよい。このような単量体として、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのα,β−不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和カルボン酸無水物類、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミドなどのα,β−不飽和カルボン酸のイミド化合物類などが挙げられる。これらのスチレン系樹脂の製造方法に関しては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、塊状−懸濁重合、懸濁重合、乳化重合など通常公知の方法が用いられる。
【0015】
本発明の樹脂組成物においては、ポリエステルブロック共重合体(A)を5〜95重量部、好ましくは10〜90重量部、さらに好ましくは20〜80重量部と、熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)を95〜5重量部、好ましくは90〜10重量部、さらに好ましくは80〜20重量部とからなる配合物に、スチレン系樹脂(C)を配合する。ポリエステルブロック共重合体(A)の配合量が5重量部より少なくなった場合、および95重量部より多くなった場合は、いずれも高温における接着力保持が不十分となり、スチレン系樹脂(C)を配合しない場合は、高温における接着力保持性とともに溶融押出加工時の成形性も不十分となる。スチレン系樹脂(C)の配合量は特に限定されないが、ポリエステルブロック共重合体(A)と、熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)からなる配合物100重量部に対し、スチレン系樹脂(C)を0.1〜60重量部程度配合するのが好ましく、さらに好ましくは1〜40重量部程度を配合する。配合比は被着材や使用条件によって適宜変更することが好ましい。本発明の樹脂組成物は接着性能が高く、溶融押出加工時の成形性も優れる。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、押出機やニーダーの中で加熱溶融混合することによって製造することができる。
【0017】
また本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、公知のヒンダードフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系、アミン系などの酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系などの耐候剤、エポキシ化合物やイソシアネート化合物などの増粘剤、染料や顔料などの着色剤、酸化チタン、カーボンブラックなどの紫外線遮断剤、ガラス繊維やカーボンファイバー、チタン酸カリウムファイバーなどの補強剤、シリカ、クレー、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ガラスビーズなどの充填剤、タルクなどの核剤、難燃剤などを任意に含有せしめることができる。
【0018】
本発明の組成物はそれ自体、耐熱性、耐薬品性に優れた柔軟材であり、かつ被着体との接着力にすぐれているので、他の層(樹脂、金属、木材、ゴム、織物等)と積層して2層積層物としたり、他の層と層の間に介在させ、多層積層物とすることができる。
【0019】
また、樹脂組成物を粉末状、顆粒状、フィルム状、シート状または円筒状に成形し、ホットメルト接着剤として用いることもできる。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、繊維積層物、フィルム積層物、各種多層ベルト、多層円筒状物、多層タイヤなどに有用である。
【0021】
【実施例】
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。なお、実施例中の%および部とは、ことわりのない場合すべて重量基準である。また、参考例中に示される物性は次のように測定した。
・相対粘度:o−クロロフェノールを溶媒とした0.5%のポリマ溶液を25℃で測定した。
・融点:差動走査熱量計(Du Pont 社製DSC−910 型)を使用して、窒素ガス雰囲気下、10℃/分の昇温速度で加熱した時の融解ピークの頂上温度を測定した。
・溶融粘度指数(MFR値):ASTM D−1238に従って、温度240℃、荷重2160gで測定した。
・硬度(ショアDスケ−ル):ASTM K−7215に従って測定した。
参考例1〜6
ポリエステルブロック共重合体(A−1)の製造
テレフタル酸222部、イソフタル酸95部、1,4−ブタンジオール344部および数平均分子量約1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール89部を、チタンテトラブトキシド0.15部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で3時間加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物に“イルガノックス”1010(CIBA−GEIGY社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.75部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間35分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
ポリエステルブロック共重合体(A−2)の製造
ジメチルテレフタレ−ト245部、1,4−ブタンジオール171部およびポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコ−ル(数平均分子量約1400)239部を、チタンテトラブトキシド0.15部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、210℃で2時間加熱して、理論メタノ−ル量の95%のメタノ−ルを系外に留出させた。反応混合物に“イルガノックス”1010(CIBA−GEIGY社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.75部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間20分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
ポリエステルブロック共重合体(A−3)の製造
ジメチルテレフタレ−ト162部、1,4−ブタンジオール113部、エチレンオキサイドで末端をキャッピングしたポリ(プロピレンオキシド)グリコ−ル(数平均分子量約2200,EO含量26.8%)332部を、チタンテトラブトキシド0.15部およびトリメリット酸無水物3部と共にヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、210℃で2時間30分加熱して、理論メタノ−ル量の95%のメタノ−ルを系外に留出させた。反応混合物に“イルガノックス”1010(CIBA−GEIGY社製ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤)0.75部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で1時間50分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。
ポリエステルブロック共重合体(A−4)の製造
テレフタル酸100部、1,4−ブタンジオ−ル110部、テトラブチルチタネ−ト0.05部を精留塔およびヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で加熱して反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。その後、反応物を重合缶に移液し、250℃に昇温しつつ、系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間重合を行わせた。得られたポリマを水中にスランド状で吐出し、カッティングを行なって相対粘度1.47、融点225℃のポリブチレンテレフタレ−トを得た。該ポリブチレンテレフタレ−トとε−カプロラクトンをそれぞれ900g/hr、1700g/hrで、内径30mmφ、L/D=40、中間部と先端部に長さ200mmの混練ユニットを有するスクリュ−を備えた単軸押し出し機の最後部供給口に供給し、シリンダ−中間部の設定温度を240℃、スクリュ−回転数30rpmで付加重合反応を行った。次に、ダイスからポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行なってペレットとした。該ペレット100部、トリフェニルホスフィン0.1部を内径30mmφ、L/D=40でフルフライトスクリュ−を備えたベント付き単軸押し出し機を使用して、ベント口の真空度10mmHg、押し出し温度200℃、スクリュ−回転数60rpmで混練し、脱ε−カプロラクトンと触媒失活を行ない、ダイスからポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレットとした。 1H−NMR分析の結果ポリカプロラクトンからなるセグメントの共重合量は55重量%であった。
ポリエステルブロック共重合体(A−5)の製造
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸80モル%、イソフタル酸20モル%、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを使用し、ジカルボン酸成分に対して0.05重量%のテトラチタンブトキシドで重合したポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体400部と、アジピン酸、1,4−ブタンジオール、アジピン酸に対して0.05重量%のテトラチタンブトキシドを用いて重合したポリブチレンアジペート100部とを、窒素雰囲気下、250℃で30分間溶融混合後、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体とポリブチレンアジペートとの合計量に対して0.1重量%のリン酸を添加した。得られたポリマを水中にストランド状に吐出し、カッティングを行ってペレットとした。
ポリエステルブロック共重合体(A−6)の製造
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸60モル%、イソフタル酸40モル%、ジオール成分として1,4−ブタンジオールを使用し、ジカルボン酸成分に対して0.05重量%のテトラチタンブトキシドで重合した相対粘度1.12のポリブチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体350部と、アジピン酸、エチレングリコール、アジピン酸に対して0.05重量%のテトラチタンブトキシドを用いて重合した数平均分子量が2000のポリエチレンアジペート150部、およびこのポリエチレンアジペートと当量のジフェニルメタンジイソシアネートとを、30mmφのスクリューを有する押出機を使用して160℃の温度で溶融混練し、水中にストランド状に吐出し、カッティングを行ってペレットとした。
表1にA−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6の組成と物性を示す。
【0022】
【表1】
Figure 0003629644
また、実施例と比較例に用いた熱可塑性ポリウレタンエラストマを表2に示す。
【0023】
【表2】
Figure 0003629644
なお、実施例と比較例に用いたスチレン系樹脂は、以下のものである。
C−1:“タフライト”950(三井東圧化学(株)製ポリスチレン樹脂)
C−2:“ライタックA”930PC(三井東圧化学(株)製アクリロニトリル/スチレン共重合体)
実施例1〜9
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A−1)〜(A−6)に、熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B−1)〜(B−8)、およびスチレン系樹脂(C−1)あるいは(C−2)を表3に示すような比率でドライブレンドし、45mmφのスクリューを有する二軸押出機を用いて220℃で溶融混練した。この際に押出機の口金から吐出されたガットの外観と曳糸性を観察した。その結果を表3に示す。このペレットを100℃で5時間乾燥後、成形温度220℃、金型温度40℃で、幅25mm、長さ120mm、厚み2mmの試験片に射出成形した。この射出成形片を射出成形片と同じ大きさの厚み2mmのアルミ板と重ね、わずかに加圧して230℃で1分間接着した。同様に被着体としてポリ塩化ビニルシート(厚み2mm)、あるいは上記の方法で同様に射出成形したポリエステルブロック共重合体(A−2)またはポリエーテル型熱可塑性ポリウレタン(B−4)の射出成形片を用いて接着した。接着試験片を室温で1日放置した後、常温における剥離接着強度を剥離速度200mm/分で測定した。また、同様に100℃における剥離接着強度を測定した。さらに被着体が熱可塑性ポリウレタン(B−4)のものについて、JIS K6301−15に準じ接着試験片を恒温槽付きデマッチャ屈曲試験機(東洋精機製作所製)にかけ、恒温槽温度100℃、屈曲回数300回/min、サンプル取り付けチャック間距離100mm、サンプルストローク距離20mmで試験を行い接着層間に剥離を生じるまでの回数を測定した。
その結果を表4に示す。
【0024】
【表3】
Figure 0003629644
【0025】
【表4】
Figure 0003629644
比較例1〜8
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A−1)、(A−2)、(A−3)、熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B−1)、(B−4)、(B−5)、(B−6)、スチレン系樹脂(C−1)を表5に示すような配合比率でドライブレンドして、実施例1〜9と同様に溶融混練し、スチレン系樹脂を含まない樹脂組成物、熱可塑性ポリウレタンエラストマを含まない樹脂組成物、ポリエステルブロック共重合体を含まない樹脂組成物を製造した。この際に押出機の口金から吐出されたガットの外観と曳糸性を観察した。結果を表5に示す。さらに実施例1〜9と同様に接着試験を行った。ポリエステルブロック共重合体のみ、または熱可塑性ポリウレタンエラストマのみを射出成形して得られた成形片を用いて接着試験を行った結果と合わせて表6に示す。
【0026】
【表5】
Figure 0003629644
【0027】
【表6】
Figure 0003629644
表3と表4から明かなように、ポリエステルブロック共重合体と熱可塑性ポリウレタンエラストマおよびスチレン系樹脂を配合した本発明の樹脂組成物は溶融押出成形性が良好で、高温での接着力および接着耐久性に優れている。一方、表5と表6のように、スチレン系樹脂を含まない樹脂組成物は溶融押出成形性が悪く、高温での接着力も接着耐久性も不十分である。また、熱可塑性ポリウレタンエラストマを含まない樹脂組成物およびポリエステルブロック共重合体を含まない樹脂組成物は溶融押出成形性は良好であるが、高温での接着力と接着耐久性が悪い。さらにポリエステルブロック共重合体あるいは熱可塑性ポリウレタンエラストマ単独でも、高温での接着力および接着耐久性は悪い。
実施例10〜13、比較例9〜15
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A−4)、(A−6)、熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B−1)、(B−3)、(B−5)、(B−7)とスチレン系樹脂(C−1)、(C−2)を表7に示すような比率でドライブレンドし、製膜装置を備えた30mmφのスクリューを有する二軸押出機を用いて200℃で溶融混練して厚み0.2mmのフィルムを成形することを試みた。実施例10〜13については問題なく製膜できたが、比較例9と比較例11は製膜できなかった。製膜したフィルムを2枚の厚み0.2mmのポリエステルフィルム(東レ(株)製“ルミラー”)の間にはさみ、わずかに加圧して230℃で1分間接着した。接着片を室温で1日放置した後、幅25mmの試験片を切り出し、23℃における剥離接着強度を剥離速度200mm/分で測定した。また、同様に100℃における剥離接着強度を測定した。ポリエステルブロック共重合体単独、または熱可塑性ポリウレタンエラストマ単独でフィルム製膜試験および接着試験を行った結果と合わせて表7に示す。
【0028】
【表7】
Figure 0003629644
表7から本発明の樹脂組成物が溶融押出加工時の成形性が良好で、高温での接着力および接着耐久性に優れていることが明白である。一方、スチレン系樹脂を含有しない樹脂組成物は溶融押出加工時の成形性が悪く、フィルム成形できない。また、熱可塑性ポリウレタンエラストマを含まない樹脂組成物、ポリエステルブロック共重合体を含まない樹脂組成物、ポリエステルブロック共重合体あるいは熱可塑性ポリウレタンエラストマ単体は、いずれも製膜可能であるが、高温での接着力と接着耐久性が悪い。
【0029】
【発明の効果】
本発明によればポリエステルブロック共重合体に熱可塑性ポリウレタンエラストマとスチレン系樹脂を配合することにより、溶融押出加工時の成形性が良好で、高温での接着力および接着耐久性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0030】
また、本発明の樹脂組成物は、押出機やニーダーの中で加熱溶融混合することによって製造することができる。
【0031】
さらに、本発明の樹脂組成物はホットメルト接着剤として有用である。
【0033】
実施例1〜3、比較例1〜6
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A−1)〜(A−6)に、熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B−1)〜(B−8)、およびスチレン系樹脂(C−1)あるいは(C−2)を表3に示すような比率でドライブレンドし、45mmφのスクリューを有する二軸押出機を用いて220℃で溶融混練した。この際に押出機の口金から吐出されたガットの外観と曳糸性を観察した。その結果を表3に示す。このペレットを100℃で5時間乾燥後、成形温度220℃、金型温度40℃で、幅25mm、長さ120mm、厚み2mmの試験片に射出成形した。この射出成形片を射出成形片と同じ大きさの厚み2mmのアルミ板と重ね、わずかに加圧して230℃で1分間接着した。同様に被着体としてポリ塩化ビニルシート(厚み2mm)、あるいは上記の方法で同様に射出成形したポリエステルブロック共重合体(A−2)またはポリエーテル型熱可塑性ポリウレタン(B−4)の射出成形片を用いて接着した。接着試験片を室温で1日放置した後、常温における剥離接着強度を剥離速度200mm/分で測定した。また、同様に100℃における剥離接着強度を測定した。さらに被着体が熱可塑性ポリウレタン(B−4)のものについて、JIS K6301−15に準じ接着試験片を恒温槽付きデマッチャ屈曲試験機(東洋精機製作所製)にかけ、恒温槽温度100℃、屈曲回数300回/min、サンプル取り付けチャック間距離100mm、サンプルストローク距離20mmで試験を行い接着層間に剥離を生じるまでの回数を測定した。
【0035】
【表3】
Figure 0003629644
【0036】
【表4】
Figure 0003629644
【0037】
比較例7〜14
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A−1)、(A−2)、(A−3)、熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B−1)、(B−4)、(B−5)、(B−6)、スチレン系樹脂(C−1)を表5に示すような配合比率でドライブレンドして、実施例1〜3と同様に溶融混練し、スチレン系樹脂を含まない樹脂組成物、熱可塑性ポリウレタンエラストマを含まない樹脂組成物、ポリエステルブロック共重合体を含まない樹脂組成物を製造した。この際に押出機の口金から吐出されたガットの外観と曳糸性を観察した。結果を表5に示す。さらに実施例1〜3と同様に接着試験を行った。ポリエステルブロック共重合体のみ、または熱可塑性ポリウレタンエラストマのみを射出成形して得られた成形片を用いて接着試験を行った結果と合わせて表6に示す。
【0038】
【表5】
Figure 0003629644
【0039】
【表6】
Figure 0003629644
【0040】
表3と表4から明かなように、ポリエステルブロック共重合体と熱可塑性ポリウレタンエラストマおよびスチレン系樹脂を配合した本発明の樹脂組成物(実施例1〜3)は溶融押出成形性が良好で、高温での接着力および接着耐久性に優れている。一方、表3と表4から明らかなように、ポリカーボネート系以外の熱可塑性ポリウレタンエラストマおよびスチレン系樹脂を配合した樹脂組成物(比較例1〜6)は、本発明の樹脂組成物に比較して高温での接着力および接着耐久性が劣っている。さらに、表5と表6のように、スチレン系樹脂を含まない樹脂組成物は溶融押出成形性が悪く、高温での接着力も接着耐久性も不十分である。また、熱可塑性ポリウレタンエラストマを含まない樹脂組成物およびポリエステルブロック共重合体を含まない樹脂組成物は溶融押出成形性は良好であるが、高温での接着力と接着耐久性が悪い。さらにポリエステルブロック共重合体あるいは熱可塑性ポリウレタンエラストマ単独でも、高温での接着力および接着耐久性は悪い。
【0041】
実施例4、比較例15〜24
参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A−4)、(A−6)、熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B−1)、(B−3)、(B−5)、(B−7)とスチレン系樹脂(C−1)、(C−2)を表7に示すような比率でドライブレンドし、製膜装置を備えた30mmφのスクリューを有する二軸押出機を用いて200℃で溶融混練して厚み0.2mmのフィルムを成形することを試みた。実施例4については問題なく製膜できたが、比較例18と比較例20は製膜できなかった。製膜したフィルムを2枚の厚み0.2mmのポリエステルフィルム(東レ(株)製“ルミラー”)の間にはさみ、わずかに加圧して230℃で1分間接着した。接着片を室温で1日放置した後、幅25mmの試験片を切り出し、23℃における剥離接着強度を剥離速度200mm/分で測定した。また、同様に100℃における剥離接着強度を測定した。ポリエステルブロック共重合体単独、または熱可塑性ポリウレタンエラストマ単独でフィルム製膜試験および接着試験を行った結果と合わせて表7に示す。
【0042】
【表7】
Figure 0003629644

Claims (8)

  1. 主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)5〜95重量部と、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)95〜5重量部からなる配合物に、スチレン系樹脂(C)を配合してなる樹脂組成物。
  2. ポリエステルブロック共重合体(A)がポリブチレンテレフタレート単位からなる高融点結晶性重合体セグメントとポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール単位からなる低融点重合体セグメントとを構成成分とする請求項1記載の樹脂組成物。
  3. ポリエステルブロック共重合体(A)における低融点重合体セグメント(b)の共重合量が10〜80重量%である請求項1記載の樹脂組成物。
  4. ポリエステルブロック共重合体(A)5〜95重量部と、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)95〜5重量部からなる配合物100重量部に対し、スチレン系樹脂(C)0.1〜60重量部を配合してなる請求項1記載の樹脂組成物。
  5. ポリエステルブロック共重合体(A)5〜95重量部と、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)95〜5重量部からなる配合物100重量部に対し、スチレン系樹脂(C)1〜40重量部を配合してなる請求項1記載の樹脂組成物。
  6. スチレン系樹脂(C)がポリスチレンあるいはスチレン/アクリロニトリル共重合体である請求項1記載の樹脂組成物。
  7. 主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)5〜95重量部と、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)95〜5重量部からなる配合物に、スチレン系樹脂(C)を配合し、押出機やニーダーの中で加熱溶融混合することによって製造する樹脂組成物の製造方法。
  8. 主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)5〜95重量部と、ポリカーボネート系熱可塑性ポリウレタンエラストマ(B)95〜5重量部からなる配合物に、スチレン系樹脂(C)を配合した樹脂組成物を、粉末状、顆粒状、フィルム状、シート状、または円筒状に成形したホットメルト接着剤。
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