JP3615910B2 - ポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを主成分とする紙コート剤および水性エマルジョン組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、作業性と耐水性に優れたポリビニルアルコール系樹脂組成物、それを主成分とする紙コート剤および水性エマルジョン組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)系樹脂は、その造膜性や皮膜強度、および接着強度が優れていることから、紙コート剤、各種バインダー、接着剤、乳化分散剤、繊維糊剤、表面処理剤、フィルム等に広く使用されている。しかし、PVA系樹脂は水溶性であるため、その水溶液やPVA系樹脂を乳化分散剤とする水性エマルジョン組成物より得られる皮膜は耐水性が乏しく、従来より、これを改良する目的で種々の方法が検討されてきた。
【0003】
例えば、PVAや水性エマルジョン組成物にグリオキザール等のジアルデヒド類、金属塩類などの架橋剤を添加し、耐水化する方法が知られているが、この方法で十分な耐水性を得るためには、加熱処理や、酸触媒を用いた強酸条件での処理が必要となり、使用することのできる用途が限られるほか、PVAや水性エマルジョン組成物に架橋剤を添加した場合の粘度安定性が悪く、使用中にゲル化してしまう等の問題を有している。また、PVAや水性エマルジョン組成物に尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂等を添加する耐水化方法なども知られているが、これらを添加した場合、高温多湿下でホルムアルデヒドが遊離するため、安全性に問題があり、また粘度安定性もよくなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一方、これらの問題点を解決する方法として、アセトアセチル基を有するPVAにヒドラジン化合物を反応させる耐水化方法(特公平1−60192号公報)が提案されており、これらの耐水化方法は、加熱や強酸添加などの特別な処理を必要とせず、ホルムアルデヒドなどの有害物質の発生なども見られない。しかしながら、この系に架橋剤を添加した場合、架橋反応が急速に起こるため、溶液状態での可使時間が短いという問題点があった。また、アセトアセチル基を有するPVAを用いた水性エマルジョン組成物にヒドラジン化合物を反応させる際に、水溶性有機アミンを共存させてポットライフの長い水性エマルジョン組成物を得る方法(特開平8−113687号公報)が提案されている。この耐水化方法は、水性エマルジョン組成物から得られる皮膜の耐水性に優れ、比較的作業性も良いが、水溶性有機アミンが塩基性であるため、ポットライフをさらに改良する目的で添加量を増やすと、系のpHが高くなり、使用できる用途が限られると同時に、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンの場合には添加して放置すると、ポリ酢酸ビニル樹脂が加水分解し、着色や変質が起こるという問題があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような従来技術の欠点を解決し、比較的低温で乾燥しても、優れた耐水性を発揮し、その水溶液に架橋剤が共存しても、十分にポットライフが長く、保存安定性、作業性に優れたPVA系樹脂組成物、それを主成分とした紙コート剤および前記PVA樹脂組成物を含有する水性エマルジョン組成物を提供することを目的としたもので、(A)ジアセトンアクリルアミド単位を0.1〜15モル%含有するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA、(B)ヒドラジン化合物および(C)アミノカルボン酸化合物を配合してなることを特徴とするPVA系樹脂組成物、それを主成分とする紙コート剤および前記PVA樹脂組成物を含有する水性エマルジョン組成物である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のPVA系樹脂組成物は、(A)ジアセトンアクリルアミド単位を0.1〜15モル%含有するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA、(B)ヒドラジン化合物および(C)アミノカルボン酸からなるものである。
【0007】
本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)は、脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとを共重合して得た重合体を鹸化するなどの公知の方法により製造することができる。
上記の共重合に使用する脂肪酸ビニルエステルとして、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に好ましい。
上記の脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとの共重合方法は、従来より公知のバルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの各種の重合方法が可能であり、中でもメタノールを溶剤として用いる溶液重合が工業的に好ましい。
【0008】
脂肪酸ビニルエステルとジアセトンアクリルアミドとを共重合して得た重合体の鹸化方法としては、従来より公知のアルカリ鹸化や酸鹸化を適用することができ、中でも重合体のメタノール溶液またはメタノールと水、酢酸メチル、ベンゼン等の混合溶液に水酸化アルカリを添加して加アルコール分解する方法が工業的に好ましい。
【0009】
本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、脂肪酸ビニルエステルまたはジアセトンアクリルアミドと共重合可能な、例えば、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸およびそのエステル・塩・無水物・アミド・ニトリル類、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等の不飽和二塩基酸モノアルキルエステル類、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類とともに共重合したものであっても良い。この他、得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを本発明の効果を阻害しない範囲でアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、アセトアセチル化などの反応によって後変性したものでも良い。
【0010】
本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)のジアセトンアクリルアミド単位の含有量は0.1〜15モル%の範囲であり、好ましくは0.5〜10モル%である。ジアセトンアクリルアミド単位の含有量が0.1モル%未満であると、耐水化の目的を達成することができない。また、含有量が15モル%を超えても、耐水化効果が飽和状態になるだけでなく、水溶性が低下し作業性に問題が生じる。
また、本発明で使用されるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)の重合度、鹸化度は特に制限されないが、20℃における4%水溶液粘度が3mPa・s以上、鹸化度85モル%以上が好ましい。
【0011】
本発明で使用されるヒドラジン化合物(B)としては、各種のものが使用され、例えばヒドラジン、ヒドラジンヒドラート、ヒドラジンの1水和物もしくは塩、フェニルヒドラジン、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、n−プロピルヒドラジン、n−ブチルヒドラジン、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジンなどの芳香族もしくは脂肪族ヒドラジンおよびその塩、カルボヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、ギ酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、n−酪酸ヒドラジド、イソ酪酸ヒドラジド、n−吉草酸ヒドラジド、イソ吉草酸ヒドラジド、ピバリン酸ヒドラジドなどのモノカルボン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのジカルボン酸ジヒドラジド、N−アミノポリアクリルアミドなどのヒドラジノ基を有する高分子化合物などが挙げられる。これらのヒドラジン化合物は、単独または2種以上を併用して使用してもよい。
【0012】
また、本発明で使用されるヒドラジン化合物(B)の添加量は、種々の量とすることができるが、PVA系樹脂100重量部に対して、0.05〜20重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜15重量部である。ヒドラジン化合物の添加量が0.05重量部未満の場合には、耐水化効果が低く、また20重量部を超える場合には耐水化効果が飽和になるばかりでなく、未反応のヒドラジン化合物が水中に溶出する恐れがある。
【0013】
本発明で使用されるアミノカルボン酸(C)とは、分子内にアミノ基とカルボキシル基を両方持っている化合物で、例えばグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシンなどのアミノ酸、アミノ安息香酸、アミノカプロン酸、アミノ酪酸、アミノドデカン酸およびアミノエチル化アクリルポリマーなどのアミノ基とカルボキシル基の両方を有する高分子化合物などが挙げられるが、これらに限られるわけではない。また、これらの化合物のカルボキシル基は金属塩の形で存在していてもよい。
【0014】
本発明で使用されるアミノカルボン酸(C)の添加量は、種々の量とすることができ、使用目的に応じて選択することができるが、ヒドラジン化合物(B)に対して等モル以上で、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)100重量部に対して30重量部未満が好ましい。ヒドラジン化合物に対して、等モルより少ない場合、ポットライフの改良効果は小さく、またアミノカルボン酸の添加量がジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA100重量部に対して30重量部以上の場合、アミノカルボン酸自体の溶出のため、耐水性が低くなる場合がある。
【0015】
上記のジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジン化合物(B)およびアミノカルボン酸(C)からなる本発明のPVA系樹脂組成物は、紙コート剤として使用することができるが、この際は、通常、本発明のPVA系樹脂組成物の水溶液を作製し、これを主成分として紙コート剤とする。これはエアーナイフコーター、ロールブレードコーター、ドクターブレードコーターなどを使用する通常の方法を用いて、一般上質紙のほか、撥水紙、感熱紙、感圧紙、転写紙、防錆紙、剥離紙、着色紙、艶紙、アート紙、コート紙、板紙、段ボール紙等に塗工した後、乾燥するなどの方法により使用される。
【0016】
その際の水溶液は、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)の水溶液にヒドラジン化合物(B)およびアミノカルボン酸(C)またはそれぞれの水溶液を添加、混合することにより得られる。この際、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)のジアセトンアクリルアミド単位とヒドラジン化合物(B)との反応が、アミノカルボン酸の非存在下では急速に起こり、本発明の効果を発揮することが困難となるため、アミノカルボン酸(C)を予め該PVA系樹脂(A)の水溶液に添加、混合した後、ヒドラジン化合物(B)を添加する方法が望ましい。水溶液の濃度、塗工量は使用目的に応じて任意にすることができるが、通常、濃度は0.5〜40%であり、塗工量は0.1〜50g/m2 である。
【0017】
また、本発明のPVA系樹脂組成物を含有する水性エマルジョン組成物とは、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジン化合物(B)、アミノカルボン酸(C)、ビニル系重合体(D)および水(E)を主成分とするものであって、一例としてジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)を分散剤とし、エチレン性不飽和単量体の重合体を分散質とする水性エマルジョンに、ヒドラジン化合物(B)およびアミノカルボン酸(C)を配合してなる水性エマルジョン組成物などが挙げられる。
【0018】
この水性エマルジョン組成物の製造方法としては、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)の水溶液を分散剤に用いて、重合開始剤の存在下に1種以上のエチレン性不飽和単量体を一時または連続的に添加して、乳化重合する方法、また、エチレン性不飽和単量体をジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)の水溶液を用いて乳化した混合液を、連続的に重合反応系に添加して重合する方法およびジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)および/またはそれ以外のPVA系樹脂および/または他の界面活性剤を分散剤に用いて重合した水性エマルジョンに後添加でジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)を添加する方法などにより得られた水性エマルジョン組成物にヒドラジン化合物(B)およびアミノカルボン酸(C)またはそれぞれの水溶液を添加するなどの方法が挙げられる。
【0019】
また、水性エマルジョン組成物におけるジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA、ヒドラジン化合物、アミノカルボン酸の使用量は、使用目的に応じて決められるが、好ましくは、水性エマルジョン組成物100重量部におけるPVA系樹脂組成物の使用量は1〜20重量部であり、ヒドラジン化合物の使用量は0.05〜10重量部であり、アミノカルボン酸の使用量は0.1〜10重量部である。
【0020】
本発明の水性エマルジョン組成物の分散質のビニル系重合体の原料となるエチレン性不飽和単量体の例としては、エチレン、プロピレン、イソプレンなどのオレフィン、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化オレフィン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどのビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの4級化物、さらには、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系単量体、その他N−ビニルピロリドン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体などが挙げられる。また、分子内にカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体の使用および前記単量体との併用は、水性エマルジョン組成物の耐水化効果が高くなり好ましい。分子内にカルボニル基を有するエチレン性不飽和単量体の例としては、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセト酢酸アリル、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトンが挙げられ、これらのエチレン性不飽和単量体の1種以上を用いることができる。添加量は必要な性能に応じて決めることができる。
【0021】
本発明のPVA系樹脂組成物および水性エマルジョン組成物には、必要に応じて本発明以外のPVAや澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸誘導体、ゼラチン等の他の天然高分子、合成高分子、クレー、カオリン、タルク、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填剤、グリセリン、ソルビトール、ジブチルフタレート等の可塑剤、界面活性剤、消泡剤、キレート剤およびpH調整剤として塩酸、硫酸などの各種酸性物質、水酸化ナトリウム、アンモニア、アミン系化合物などの各種塩基性物質等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0022】
本発明のPVA系樹脂組成物および水性エマルジョン組成物は、水溶液やエマルジョンの状態では該PVA系樹脂中のジアセトンアクリルアミド基とヒドラジン化合物との反応が抑制されており、その乾燥する過程で、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA中のジアセトンアクリルアミド基とヒドラジン化合物が反応するものである。その際、常温でも、加熱乾燥してもPVA系樹脂組成物および水性エマルジョン組成物の耐水化の目的を達成することができる。
【0023】
本発明のPVA系樹脂組成物は、紙コート剤、各種バインダー、接着剤、乳化分散剤、繊維糊剤、表面処理剤、塗料、フィルム等の高度の耐水性を要求される用途に有用であり、特に紙コート剤、エマルジョンとして有用である。また、本発明の水性エマルジョン組成物は、接着剤、粘着剤、塗料、繊維加工剤、紙加工剤、セメント混和剤、土壌改良剤、化粧品などに有用であるが、これに制限されるものではない。
【0024】
本発明において、アミノカルボン酸の存在下で、ジアセトンアクリルアミド単位を有するPVA系樹脂とヒドラジン化合物の混合水溶液およびエマルジョン混合液のポットライフが改善される作用機構については十分に解明されていないが、アミノカルボン酸が何らかの形で、ジアセトンアクリルアミド単位とヒドラジン化合物との反応を阻害しているものと考えられる。これらの混合水溶液は、乾燥の過程で濃縮されると同時にジアセトンアクリルアミド単位とヒドラジン化合物が反応することにより、最終的に組成物の耐水化が達成されると考えられる。
【0025】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
なお、得られた紙コート剤および水性エマルジョン組成物の性能は以下の試験により評価した。
【0026】
(1)紙コート剤
1.フィルムの耐水性試験
PVA系樹脂組成物の水溶液をポリエチレンテレフタレート製のシート上に流延して20℃、65%RH中で4日間乾燥し、厚み100μのキャストフィルムを作製し、以下のように熱水不溶分率を測定した。
試料(乾燥重量W1 )を95℃の熱水に1時間浸漬して可溶成分を溶解させ、不溶残留物を105℃で乾燥し、その重量W2 を測定して下記の式(1)により算出した。
熱水不溶分率(%)=(W2 /W1 )×100 (1)
【0027】
2.塗工紙の耐水性試験
PVA系樹脂組成物の5%水溶液を50g/m2 の上質紙に乾燥後の塗工量が1g/m2 になるようにワイヤーバーを用いて塗工し、乾燥ドラムを使用して50℃で乾燥して塗工紙を得た。上記塗工紙を20℃の水中に一昼夜浸漬した後、指でこすって塗工物が溶出する程度を2段階にて判定する耐水性の試験を行った。
○:粘つきがない。
×:粘つきがあるか、塗工物が溶出している。
【0028】
3.水溶液の安定性試験
PVA系樹脂組成物の水溶液を60℃で放置し、ゲル化するまでの時間を測定した。
【0029】
4.総合評価
上記の試験結果に基づいて以下の基準で評価を行った。
○:水溶液がゲル化するまでの時間が1週間以上で耐水性が共に非常に優れている。
×:水溶液がゲル化するまでの時間が1週間未満であるか、耐水性が実用レベルに達していない。
【0030】
(2)水性エマルジョン組成物
1.水性エマルジョン組成物の安定性(ポットライフ)試験
水性エマルジョン組成物を30℃で放置し、ゲル化するまでの時間を測定した。また、1週間後の水性エマルジョン組成物の着色の有無を観察した。
【0031】
2.耐水性試験(水滴試験)
水性エマルジョン組成物をスライドガラス上に流延して20℃、65%RH中で4日間乾燥し、厚み200μのエマルジョン皮膜を作製し、その上に純水を1滴落とし、下に敷いた新聞紙の8ポイント活字のひらがなが読めなくなるまでの時間を測定した。
【0032】
3.接着強度
25mm×30mm×10mmの2片のカバ材を以下の接着条件で貼りあわせ、養生後、JIS K−6804の圧縮剪断強さ試験法に基づき、常態での接着強度および30℃の水中に3時間浸漬を行った後の耐水接着強度を測定し、下記の式(2)により常態接着強度に対する浸漬後の接着強度保持率を算出した。
(接着条件)
温度 : 20±1℃ 圧締時間: 24時間
養生 : 7日間 圧締圧力: 0.5〜0.7MPa
塗布量 : 200g/ m2
【0033】
4.総合評価
上記の試験結果に基づいて以下の基準で評価を行った。
○:水性エマルジョン組成物の耐水性、接着強度、安定性が共に実用レベルに達している。
×:水性エマルジョン組成物の耐水性、接着強度、安定性のいずれかが実用レベルに達していない。
【0034】
ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAの合成例
合成例1
撹拌機、温度計、および滴下ロート還流冷却器を取り付けたフラスコ中に、酢酸ビニル672重量部、ジアセトンアクリルアミド10重量部、およびメタノール178重量部を仕込み、系内の窒素置換を行った後、内温を60℃まで昇温した。この系に2,2−アゾビスイソブチリロニトリル1重量部をメタノール50重量部に溶解した溶液を添加し、重合を開始した。重合開始後、5時間かけて、ジアセトンアクリルアミド55重量部をメタノール35重量部に溶解した溶液を一定速度で滴下し、6時間後に重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼンを添加し、重合を停止した。重合収率は78%であった。得られた反応混合物にメタノール蒸気を加えながら残存する酢酸ビニルを留出し、ジアセトンアクリルアミド共重合成分を含有する酢酸ビニル系重合体の50%メタノール水溶液を得た。この混合物500重量部にメタノール50重量部と水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液10重量部とを加えてよく混合し、40℃で鹸化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノールでよく洗浄した後に乾燥して、ジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを得た。また、元素分析測定により、この樹脂中のジアセトンアクリルアミド単位の含有率は5.0モル%であることが判明した。この樹脂の20℃における4%水溶液粘度は26.8mPa・s、鹸化度は98.4モル%であった。なお、この粘度はB型粘度計を用いて60rpmの回転速度で測定した。
【0035】
合成例2〜5
仕込み組成を変えることにより、合成例1と同様にして表1のようなジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAを得た。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1
合成例1で得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA系樹脂100重量部を900重量部の水に溶解した水溶液にγ−アミノ酪酸5重量部を添加し、よく混合した後、水酸化ナトリウムで系のpHを9.0に調整した。さらにN−アミノポリアクリルアミドの10%水溶液50重量部を加え、再び混合し、水溶液を作製した。
この水溶液を60℃で放置して安定性試験を行ったところ、1週間ではゲル化は起こらなかった。また、フィルムの耐水性試験では、得られたキャストフィルムの熱水不溶分率を調べたところ、97.4%であり、さらに塗工紙の耐水性試験でも、表面の粘つきは見られず、いずれも耐水性は良好であった。結果を表4に示す。
【0038】
実施例2〜10
使用するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジン化合物(B)およびアミノカルボン酸(C)を表2に示すように変えた以外は実施例1と同様にして水溶液を作製し、水溶液の安定性、キャストフィルムおよび塗工紙の耐水性試験を行った。結果を表4に示す。水溶液の安定性、耐水性は良好であった。
【0039】
【表2】
【0040】
実施例11
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えたガラス製重合容器に、イオン交換水500重量部、合成例1で得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(20℃における4%水溶液粘度26.8mPa・s、鹸化度98.4モル%、変性度5.0モル%)39重量部を仕込み、95℃で完全に溶解した。これを70℃まで冷却し、過硫酸アンモニウム0.5重量部を添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら、酢酸ビニル460重量部を2時間かけて連続的に添加した後、80℃に昇温し、さらに2時間熟成反応を行い、乳化重合を完結させ、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンを得た。
このエマルジョン100重量部に10%γ‐アミノ酪酸水溶液2重量部を加え、よく混合した後、N−アミノポリアクリルアミドの10%水溶液2重量部を加え、再び混合し、水性エマルジョン組成物を作製し、トリエタノールアミンでpHを8.0に調整した。
【0041】
この水性エマルジョン組成物について安定性試験および耐水性試験を行い、さらに接着強度の測定を行った。結果を表5に示す。
この水性エマルジョン組成物は一カ月以上放置してもゲル化せず、着色等も見られなかった。また、耐水性試験では再乳化による白化は起こらず、耐水接着強度は1,210kgf/cm2 、浸漬後の接着強度保持率も72%と良好な耐水性を示した。
【0042】
実施例12〜20
使用するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジン化合物(B)およびアミノカルボン酸(C)を表3に示すように変えた以外は実施例11と同様にして水性エマルジョン組成物を作製し、水性エマルジョン組成物のについて安定性試験および耐水性試験を行い、さらに接着強度の測定を行った。結果を表5に示す。水性エマルジョン組成物は安定であり、耐水性、耐水接着強度、浸漬後の接着強度保持率も良好な性能を示した。
【0043】
【表3】
【0044】
比較例1
合成例1で得られたジアセトンアクリルアミド共重合変性PVAに変えて、鹸化度98.4モル%、20℃における4%水溶液粘度が27.6mPa.sである未変性PVAを使用した以外は実施例1と同様にして水溶液を作製した。
この水溶液を60℃で放置して安定性試験を行ったところ、1週間でゲル化は起こらなかったが、フィルムの耐水性試験ではキャストフィルムは熱水にすべて溶解し、さらに塗工紙の耐水性試験でも塗工物の溶出が起こり、いずれも耐水性は非常に低かった。結果を表4に示す。
【0045】
比較例2〜7
使用するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジン化合物(B)および添加剤(C)の種類を表3に示すように変えた以外は実施例1と同様にして水溶液を作製し、水溶液の安定性、キャストフィルムおよび塗工紙の耐水性試験を行った。結果を表4に示す。水溶液の安定性および耐水性のどちらかあるいは両方が実用レベルに達していなかった。
【0046】
【表4】
【0047】
比較例8〜14
使用するジアセトンアクリルアミド共重合変性PVA(A)、ヒドラジン化合物(B)およびアミノカルボン酸(C)を表3に示すように変えた以外は実施例11と同様にして水性エマルジョン組成物を作製し、水性エマルジョン組成物について安定性試験、耐水性試験を行い、さらに接着強度の測定を行った。結果を表5に示す。水性エマルジョン組成物の安定性および耐水性、耐水接着強度、浸漬後の接着強度保持率のいずれかが実用レベルに達していなかった。
【0048】
【表5】
【0049】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明のPVA系樹脂組成物は、水溶液および水性エマルジョン混合液の状態で架橋剤が共存する場合でも、保存安定性、作業性が優れ、かつそれを比較的低温で乾燥しても、十分な耐水効果を得ることができる。本発明のPVA系樹脂組成物は紙コート剤として有用であり、特に熱処理が行えない感熱紙のコート剤として有用である。また、耐水性を必要とするフィルム、成型物等のバインダー、顔料やエマルジョンの乳化・分散剤、紙・木工・織物等の接着剤、表面処理剤としても有用である。
また、本発明のPVA系樹脂組成物を含有する水性エマルジョン組成物は接着剤、粘着剤、塗料、化粧品、紙および繊維の加工剤等に有用であるが、これらの用途に限られるわけではない。
Claims (3)
- (A)ジアセトンアクリルアミド単位を0.1〜15モル%含有するジアセトンアクリルアミド共重合変性ポリビニルアルコール、(B)ヒドラジン化合物および(C)アミノカルボン酸を配合してなることを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂組成物。
- 請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂組成物の水溶液を主成分とすることを特徴とする紙コート剤。
- 請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂組成物を含有することを特徴とする水性エマルジョン組成物。
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